2024/2/3〜4に開催された、118回医師国家試験 皮膚科関連問題の解答・解説を作成しました
受験された方はお疲れ様でした
※一部皮膚科というより膠原病・アレルギー寄りの問題もあります
117回の解答解説は下記
-
第117回医師国家試験 皮膚科問題を解く(全23問)
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見出し
118A10
118A10
梅毒で誤っているのはどれか。
- TPHAは疾患活動性の指標となる。
- 他の性感染症の合併について検索する。
- 神経梅毒は感染からの期間を問わず起こる。
- 妊婦が未治療の場合、児の先天梅毒の原因となる。
- 日本では10年前と比較して報告数が増加している。
解答:a
- a. TPHAは罹患後生涯陽性となり疾患活動性を反映しない。病勢を反映するSTS(RPR)は治療の目安として用いられる※
- b. 梅毒は他の性感染症、とくにHIVとの重複感染例が多い(HIV感染症を有するMSMは有さないMSMと比較して梅毒罹患率が5倍)
- c. 神経梅毒はいずれの病期でも起こりうる。HIV感染者では梅毒感染早期から以降しやすいとされる。
- d. 未治療妊婦は児先天梅毒の原因となる(TORCH症候群のO)
- e. 2010年ごろまでは1,000人/年程度だったが、近年大きく増加傾向。2022年は1999年(感染症法の制度変更)以来最多となる10,000人以上の報告があり、2023年もこれを上回るペースとされる
※STS抗体価が自動化法では1/2、用手法では1/4以下に低減していれば治癒と判定
関連問題
- 117C9 (梅毒が増加傾向)
118A17
118A17
1歳の女児。全身に皮疹が広がってきたため母親に連れられて来院した。3日前から上肢に発疹が出現した。2日前から発疹が顔面、体幹および上肢に拡大した。昨日から発熱を伴うようになった。既往にアトピー性皮膚炎がある。MRワクチンを含むすべての定期予防接種が行われている。発疹は瘙痒を伴い一部に水疱と痂皮を認める。イチゴ舌を認めない。皮膚の写真を別に示す。
診断はどれか。
- 麻疹
- 猩紅熱
- 手足口病
- 突発性発疹
- Kaposi水痘様発疹症
解答:e
全身とくに右上肢に強い水疱・びらんや発熱からカポジ水痘様発疹症や伝染性膿痂疹(とびひ)/SSSSを考える
発熱があることや水疱形成が見られる点から、カポジがより疑わしい(とびひやSSSSはびらんが主体)
- a. 麻疹:二峰性の発熱に合わせた皮疹で、皮疹も紅斑が中心でびらん・水疱ではない。MRワクチン接種済みな点からも否定的
- b. 猩紅熱:A群β溶連菌が原因となり咽頭痛を伴う。皮疹は紅斑・丘疹が主体で、いちご舌を認めない点からも否定的
- c. 手足口病:手足(四肢末端)や殿部に小水疱が見られ、発熱を伴う。水疱はみられるが部位から否定的
- d. 突発性発疹:解熱後の皮疹が特徴。皮疹も紅斑で水疱やびらんはない
- e. Kaposi水痘様発疹症:単純ヘルペスウイルスが原因となり、湿疹病変+水疱・びらんをきたし発熱も伴う。アトピー性皮膚炎の既往からも考えやすい
118A20
118A20
36歳の女性。右上腕の皮疹を主訴に来院した。約10年前から右上腕に長径3mmほどで平坦な皮疹が出現した。約3か月前から次第に拡大し隆起してきた。2週間前から出血するようになった。右上腕に18 x 16mmの褐色結節を認める。右腋窩に径1cmのリンパ節1つを触知する。右上腕の写真とダーモスコピー像を別に示す。
診断はどれか。
- Bowen病
- 悪性黒色腫
- 色素性母斑
- 日光角化症
- 脂漏性角化症
解答:b
従来からあった色素斑が急速に拡大・隆起し出血を伴っている。ダーモスコピーでは周囲への染み出しや境界不鮮明が見られ、転移を疑うリンパ節腫脹もあることからメラノーマ(悪性黒色腫)の診断
メラノーマを疑う所見としてABCDEルールが知られる
- A:Asymmetry (不規則形)
- B:Borderline irregularity (境界不鮮明)
- C:Color variegation (色調多彩)
- D:Diameter enlargement (拡大傾向 直径≧6mm)
- E:Evolution (性状の変化)
本例はすべて当てはまっている
対照的にどれも当てはまらないのが、昨年出題された色素性母斑の臨床問題(117A39)
- a. Bowen病:黒褐色調になることもあるが、紅斑・鱗屑がみられ湿疹との鑑別が問題となることが多い。また表皮内癌なので転移することはない
- b. 悪性黒色腫:表在拡大型ないし結節型メラノーマで、BRAF遺伝子変異陽性例が多い。白人で多いが日本人では比較的少ない病型とされる(日本人では四肢末端に生じる末端黒子型が多い)
- c. 色素性母斑:ABCDEルールから良性の色素性母斑は考えづらい
- d. 日光角化症:高齢者の顔面など露光部(紫外線暴露を受ける部位)に好発する。境界不明瞭な紅斑となる。こちらも表皮内癌なので転移することはない
- e. 脂漏性角化症:臨床像はやや類似するが良性腫瘍なので境界は明瞭。ダーモスコピーでは面疱様開大(comedo-ilke opening)や多発性稗粒腫様嚢腫(multiple milia-like cysts)が特徴
実際に試験を解く際に臨床画像から判断するのはなかなか難易度が高いので、リンパ節転移があるかどうかで考えるのが妥当と思われる
118A45
118A45
50歳の女性。両手掌と両足底の皮疹を主訴に来院した。数年前から両手掌と両足底の皮疹が出現し消長を繰り返す。掻痒と疼痛がある。しばしば扁桃炎に罹患する。喫煙は20本/日を30年間。皮疹部の真菌検査は陰性。右手掌の写真と右足の写真を別に示す。
この患者に合併しやすい関節炎の部位はどれか。
- 顎関節
- 胸鎖関節
- 遠位指節間関節
- 仙腸関節
- 足関節
解答:b
掌蹠の膿疱で慢性扁桃炎や喫煙歴があり、真菌検査陰性なことから掌蹠膿疱症の診断
関節炎は胸鎖関節部がほぼ必発で、脊椎炎や仙腸関節炎も見られることがあるが頻度は下がる
- b. 胸鎖関節:掌蹠膿疱症における関節炎では、胸肋鎖関節炎はほとんどに認められる
- c. 遠位指節間関節(DIP関節):乾癬性関節炎で炎症をきたしやすい部位(117E13)。対照的に近位指節間関節(PIP)が障害されやすいがDIPは保たれやすいのが関節リウマチ
- d. 仙腸関節:強直性脊椎炎など。乾癬性関節炎で症状をきたすこともある
- e. 足関節:乾癬性関節炎ではアキレス腱付着部炎が特徴的とされる
118A72
118A72
35歳の女性。2週間前から両下肢に皮疹が複数出現したため来院した。皮疹は皮膚面からわずかに盛り上がり、浸潤を触れ熱感と圧痛を認める。左下腿の写真を別に示す。
考えられる基礎疾患はどれか。3つ選べ。
解答:b, c, e
両下腿で圧痛を伴う紅斑が多発しており、結節性紅斑を考える
基礎疾患に伴うことが多く、炎症性腸疾患(Crohn病/潰瘍性大腸炎)やベーチェット病、サルコイドーシスなどが代表疾患
結節性紅斑では圧痛があるが掻痒感をきたしづらいことも重要(117B15)
- a. 糖尿病:皮膚科疾患ではDupuytren拘縮(110I58 / 107A6)や環状肉芽腫の合併が知られる
- b. クローン病/潰瘍性大腸炎:結節性紅斑のほか、壊疽性膿皮症の原疾患としても有名(110G58 / 107E47 / 106A49)
- c. ベーチェット病:口腔内アフタや外陰部潰瘍、ぶどう膜炎とならびBehçet病の主症状となっている
- d. 全身性強皮症:皮膚硬化やレイノー症状、指尖部潰瘍が特徴。肺高血圧症(117D29)や間質性肺炎を合併する
- e. サルコイドーシス:結節性紅斑の原疾患で、皮膚症状は多彩
118B13
118B13
Which of the following clinical conditions occurs in patients acutely after severe burns?
- polyuria
- hyperlipidemia
- hypovolemic shock
- venous thrombosis
- compartment syndrome
解答:c
和訳
重症熱傷後早期に生じる臨床所見は以下のうちどれか?
- 多尿症
- 高脂血症
- 循環血液量減少性ショック
- 静脈血栓
- コンパートメント症候群
- a. 多尿症:重症熱傷後は脱水により"尿量減少"が生じる
- b・d. 高脂血症・静脈血栓:いずれも熱傷との関連は薄い
- c. 循環血液量減少性ショック:重症(広範囲)熱傷では皮膚からの蒸散量増加により脱水をきたしやすいので、大量輸液を行う(Baxter法)
- e. コンパートメント症候群:四肢などの全周性熱傷では浮腫に伴い生じることがあるが、"早期"ではない
118B37
118B37
32歳の女性。頚部リンパ節腫大を主訴に来院した。3週間前から左頚部の腫れに気付いていた。その後、右頚部も腫れてきたので受診した。発熱、体重減少および盗汗はない。生来健康。ペット飼育歴とアレルギー歴はない。夫は3か月前、陰茎に無痛性潰瘍があり治療歴がある。意識は清明。身長168cm、体重61kg。体温36.7℃。脈拍78/分、整。血圧106/68mmHg。呼吸数16/分。SpO2100%(room air)。手掌と足底にびまん性の一部癒合した径3mmの紅斑・丘疹を認める。口腔内には潰瘍性病変を認めない。咽頭は発赤を認めない。左頚部に径5cmの可動性があり、柔軟なリンパ節を1個触知する。右頚部にも同様に径3cmのリンパ節腫大を1個触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部に肝・脾を触知しない。
最も適切な治療薬はどれか。
- 抗真菌薬
- 抗ウイルス薬
- セフェム系薬
- ペニシリン系薬
- カルバペネム系薬
解答:d
手掌と足底の紅斑・丘疹(バラ疹)や無痛性リンパ節腫脹、夫の陰茎部無痛性潰瘍から性感染症である梅毒を考える
梅毒では所属リンパ節腫脹がみられるが、(通常の炎症性疾患と異なり)無痛性であることが特徴:無痛性横痃
口腔内は潰瘍性病変がないが、1期梅毒疹は自覚症状がないため気付かれずに消退したものと思われる
薬剤アレルギー歴はないため、治療の第一選択はペニシリン系抗菌薬となる
なおペニシリンアレルギーがある場合、テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン)が第二選択薬となる
メモ
日本では従来内服薬であるアモキシシリン4週間内服する治療が行われていたが、治療期間が長くアドヒアランスが低下しやすいという問題があった
しかし2022年に筋注製剤であるステルイズ®が発売され、早期梅毒であれば1回筋注で治療可能となった
関連問題
118C8
118C8
局所振動による健康障害でみられるのはどれか。
- Gottron徴候
- Heberden結節
- Osler結節
- Raynaud現象
- Romberg徴候
解答:d
レイノー現象は振動工具による物理的刺激で生じる場合がある
- a. Gottron徴候:皮膚筋炎で見られる肘頭部や膝蓋など関節伸側に生じる紅斑
- b. Heberden結節:遠位指節間関節(DIP関節)で生じる変形性関節症のこと
- c. Osler結節:感染性心内膜炎で見られる有痛性結節。痛くないのがJaneway病変
- d. Raynaud現象:膠原病(全身性強皮症や混合性結合組織病)に伴うものが一般的には有名
- e. Romberg徴候:両足をそろえてつま先を閉じて立位をとった際、閉眼によってふらつきが著しく悪化する現象で陽性だと深部感覚障害を示唆する所見
118D19
118D19
73歳の女性。筋力低下と嚥下困難を主訴に来院した。2か月前から階段昇降が困難になり1か月前から布団の上げ下ろしができなくなった。2週間前から上眼瞼の浮腫および全身の紅斑が出現し、7日前からむせのため食事摂取が困難になったため受診した。意識は清明。身長154cm、体重40kg。体温37.5℃。脈拍96/分、整。血圧134/70mmHg。呼吸数16/分。SpO2 97%(room air)。上眼瞼に淡い浮腫性紅斑および両手指の関節背面に紅色丘疹を認める。両耳介、前頸部、背部、上肢伸側および殿部外側に紅斑を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。表在リンパ節腫脹を認めない。四肢近位筋に対称性筋力低下を認める。四肢に感覚異常を認めない。尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球372万、Hb11.3g/dL、Ht33%、白血球5,900(好中球75%、好酸球1%、単球12%、リンパ球12%)、血小板26万。血液生化学所見:総蛋白5.6g/dL、アルブミン3.0g/dL、AST 108U/L、ALT79U/L、LD628U/L(基準123〜222)、γ-GT30U/L(基準9〜32)、CK1,620U/L(基準41〜153)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.4mg/dL、血糖111mg/dL、TSH3.8μU/mL(基準0.2〜4.0)、Ft3 2.7pg/mL(基準2.3〜4.3)、FT4 1.1ng/dL(基準0.8〜2.2)。免疫血清学所見:CRP0.8mg/dL、抗TIF1-γ抗体陽性。胸部エックス線写真に以上を認めない。
この患者で最も注意すべき合併症はどれか。
- 肝不全
- 悪性腫瘍
- 間質性肺炎
- 急性腎障害
- 膀胱直腸障害
解答:b
成人TIF1-γ抗体陽性皮膚筋炎では悪性腫瘍の合併が特徴で、嚥下障害の合併も多い
Gottron徴候やヘリオトロープ疹(+)で、筋力低下にASTやCK上昇など筋炎所見も揃っている(甲状腺機能正常から甲状腺機能低下症によるミオパチーが除外される)
皮膚筋炎は自己抗体により特徴的な症状が異なる
-
皮膚筋炎 自己抗体と臨床症状 まとめ
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- a. 肝不全:ASTやALT上昇は筋炎によるもので肝不全とは関連しない
- b. 悪性腫瘍:成人の抗TIF1γ抗体陽性例は悪性腫瘍合併が多い
- c. 間質性肺炎:抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は間質性肺炎合併が多い。筋炎症状を伴わないのも特徴
- d. 急性腎障害:膠原病では全身性強皮症に伴う腎クリーゼが代表例
- e. 膀胱直腸障害:脊髄障害による症状
関連問題
118D21
118D21
21歳の女性。顔面の皮疹を主訴に来院した。8年前から顔面の皮疹が出現し軽快と増悪を繰り返している。月経前に悪化することがある。2か月前から精神的ストレスと食生活の偏りがあり皮疹が悪化してきた。副腎皮質ステロイド外用薬は使用していない。掻痒はないが、軽度の痛みがある。顔面の写真を別に示す。
- 結節性痒疹
- 尋常性ざ瘡
- 尋常性狼瘡
- 酒さ様皮膚炎
- 脂漏性皮膚炎
解答:b
前額部および頬部〜下顎部に紅色丘疹・膿疱・面疱が混在しており、尋常性ざ瘡(ニキビ)の診断
女性では月経周期に併せて増悪する例が多く、ストレスや食生活の偏りも悪化要因。思春期頃に初発する
- a. 結節性痒疹:掻痒が強い結節病変をきたすが痛みはない。顔面には好発しない
- b. 尋常性ざ瘡:思春期は前額部に多いが、成人(いわゆる大人ニキビ)では頬部や下顎部に病変をきたすことが多い
- c. 尋常性狼瘡:皮膚結核の一つで顔面に好発する(近年は稀)。有棘細胞癌の前がん病変として重要
- d. 酒さ様皮膚炎:紅色丘疹や膿疱をきたし尋常性ざ瘡と臨床像は類似するが、ステロイド外用薬の不適切使用が原因となる
- e. 脂漏性皮膚炎:脂漏部(前額や鼻背部、鼻唇溝など)に好発し紅斑をきたすが膿疱や丘疹は乏しい
118D60
118D60
56歳の女性。頭痛を主訴に来院した。10年前から高血圧症でカルシウム拮抗薬を内服している。2年前の冬から両手指が蒼白になることに気付いた。6か月前から両手指の腫れが出現した。2週間前から頭痛が出現し持続したため受診した。意識は清明。身長165cm、体重52kg。体温36.5℃。脈拍100/分、整。血圧176/102mmHg(1か月前は120/80mmHg)。呼吸数16/分。SpO2 96%(room air)。手指から前腕まで皮膚硬化を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両下腿に圧痕性浮腫を認める。神経診察で異常を認めない。尿所見:蛋白1+、潜血1+。血液所見:赤血球406万、Hb10.9g/dL、Ht40%、網赤血球1.2%、白血球4,300(好中球69%、好酸球1%、好塩基球1%、単球8%、リンパ球21%)、血小板15万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン3.6g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、AST28U/L、ALT16U/L、LD197U/L(基準124〜222)、γ-GT32U/L(基準9〜32)、CK122U/L(基準41〜153)、尿素窒素40mg/dL、クレアチニン1.8mg/dL(1か月前は0.7mg/dL)、Na139mEq/L、K4.8mEq/L、Cl97mEq/L、血漿レニン活性8.6ng/mL(基準1.2〜2.5)。免疫血清学所見:CRP0.5mg/dL、抗核抗体160倍(基準20倍以下)、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性。腹部超音波で腎尿路系に異常を認めない。
この患者に適切な治療薬はどれか。
- β遮断薬
- ループ利尿薬
- グルココルチコイド
- 抗コリンエステラーゼ薬
- アンジオテンシン変換酵素<ACE>阻害薬
解答:e
手指〜前腕までの皮膚硬化やレイノー症状から限局皮膚硬化型全身性強皮症を考える
急性の腎機能障害や高血圧から腎クリーゼの状態に至っており(抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性例で多い合併症)、治療としてACE阻害薬が適切
カルシウム拮抗薬も腎クリーゼ治療として併用されることがある
- c. グルココルチコイド:副腎皮質ステロイド投与は皮膚硬化に対して使われることがあるが、腎クリーゼを誘発するリスク因子となる
118D65
118D65
8歳の女児。顔面および体幹部の発疹を主訴に父親に連れられて来院した。昨日から微熱があり、本日、顔面や体幹部に皮疹が出現したため受診した。体温37.7℃。顔面の皮膚所見を別に示す。全身状態は良好である。咽頭発赤を認める。A群β溶連菌迅速検査は陽性だった。
この患児の注意すべき合併症はどれか。
- 冠動脈瘤
- 間質性肺炎
- 血小板現象
- 急性糸球体腎炎
- 亜急性硬化性全脳炎
解答:d
A群β溶連菌陽性で、咽頭痛や紅斑をきたしていることから猩紅熱を考える
急性期後の合併症として溶連菌感染後糸球体腎炎がある
- a. 冠動脈瘤:川崎病の合併症として重要
- c. 血小板減少:風疹では血小板減少性紫斑病を合併することがある
- d. 急性糸球体腎炎:A群β溶連菌感染後ではIgA腎症やリウマチ熱も合併症として重要
- e. 亜急性硬化性全脳炎:麻疹の晩期合併症として重要
118E1
118E1
褥瘡ができやすい部位はどこか。
- 耳介
- 手掌
- 臍
- 外陰部
- 踵部
解答:e
褥瘡は仙骨部や坐骨結節のほか、踵部も好発部位
118F40
118F40
74歳の女性。鼻尖部の皮疹を主訴に来院した。20年前から鼻尖部に皮疹があり、徐々に隆起してきた。顔面の写真を別に示す。皮疹から生検した病理診断の結果は有棘細胞癌であった。
最も考えられる病院はどれか。
- 飲酒
- 肥満
- 紫外線
- アスベスト
- EBウイルス
解答:c
鼻尖部の皮疹で、有棘細胞癌の診断がついている。20年前からあったという病歴からは表皮内癌である日光角化症が長期間を経て浸潤癌になったというシナリオが考えやすい
日光角化症は紫外線が原因となる
基底細胞癌も鼻尖部など顔面の正中部に好発するが、一般的に黒色変化・潰瘍をきたす
- e. EBウイルス:種痘様水疱症(小児の光線過敏症)や蚊刺過敏症はEBウイルスが関与する
118F55
118F55
17歳の女子。労作時息切れと下腿浮腫を主訴に来院した。3か月前から屋外プールで水泳の練習をしているが、1か月前から倦怠感、労作時息切れ及び両下腿浮腫が出現したため受診した。意識は清明。体温37.4℃。脈拍110/分、整。血圧120/70mmHg。顔面に紅斑を認める。その他の部位には皮疹を認めない。両側の手関節と膝関節に腫脹と圧痛とを認める。尿所見:蛋白3+、糖(-)、潜血1+。血液所見:赤血球323万、Hb8.6g/dL、Ht38%、網赤血球2.5%、白血球2,300(桿状核好中球2%、分葉核好中球76%、単球10%、リンパ球12%)、血小板11万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dL、アルブミン2.6g/dL、IgG 2,622mg/dL(基準861〜1,747)、IgA 261mg/dL(基準93〜393)、IgM 122mg/dL(基準50〜269)、総ビリルビン2.1mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST66U/L、ALT56U/L、LD462U/L(基準124〜222)、ALP110U/L(基準38〜113)、γ-GT64U/L(基準9〜32)、CK42U/L(基準41〜153)、尿素窒素28mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、TSH3.6μU/mL(基準0.2〜4.0)。CRP0.1mg/dL。
この患者で陽性となる自己抗体はどれか。
- 抗CCP抗体
- 抗Jo-1抗体
- 抗Mi-2抗体
- 抗Scl-70抗体
- 抗dsDNA抗体
解答:e
若年女性で汎血球減少、尿蛋白を伴う腎障害、関節痛からSLEを疑う
顔面の皮疹はSLEによる蝶形紅斑が想定される
自己抗体では抗dsDNA抗体が陽性
- a. 抗CCP抗体:関節リウマチで陽性となる。関節痛はあるがその他症状が説明できない
- b. 抗Jo-1抗体(抗ARS抗体):皮膚筋炎で陽性となり、"機械工の手"と呼ばれる示指橈側の角化性病変や慢性進行性間質性肺炎の合併が特徴
- c. 抗Mi-2抗体:皮膚筋炎で陽性となる抗体。CK高値や強い筋炎症状が特徴だが本例ではいずれも見られない
- d. 抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼⅠ抗体):びまん皮膚硬化型全身性強皮症で陽性となる抗体。皮膚所見は皮膚硬化が特徴
- e. 抗dsDNA抗体:SLEで特異性が高い自己抗体で、疾患活動性を反映する
関連問題:117C50 (SLEによる脱毛・凍瘡様皮疹)
118F58
118F58
40歳の男性。右胸部から右背部の皮疹を主訴に来院した。7日前から右胸部の痛みを自覚した。5日前に右胸部から右背部にかけて皮疹が出現した。痛みが増強したため来院した。最近、過労気味であった。胸部の写真(A 胸部, B:胸部の拡大)を別に示す。
写真Bでみられる皮疹の種類はどれか。2つ選べ。
- 血疱
- 紫斑
- 水疱
- 膿疱
- 膿瘍
解答:c, d
痛みが先行してから神経走行に沿って(乳頭部なのでTh4)紅暈を伴う小水疱が出現しており、帯状疱疹の診断
水疱や膿疱が混在して見られている
- a. 血疱:水疱の内容物が血液のものを血疱と呼ぶ
- b. 紫斑:血管外漏出であり、硝子圧法により退色しない(退色するのは紅斑)。IgA血管炎などが代表疾患
- c. 水疱:透明な水様性の内容をもつものを水疱とよぶ
- d. 膿疱:水疱のうち、内容物が膿性(白色〜黄色)のものを呼ぶ
- e. 膿瘍:真皮〜皮下脂肪組織で膿が貯留している状態(皮下膿瘍)で、一般に膿疱より大きい
ここからはおまけで皮膚科主体ではないけど、皮膚症状が特徴的な問題
おまけ 118A22
118A22
57歳の男性。発熱を主訴に来院した。2週間前から38℃前後の発熱と悪寒があり、自宅近くの診療所を受診した。解熱薬が処方されたが、その後も発熱が続き、労作時の息苦しさを自覚するようになったため救急外来へ紹介受診となった。10年前から糖尿病で内服加療中。約1か月前からう歯の治療中。アレルギー歴はない。意識は清明。体温38.2℃。脈拍104/分、整。血圧136/82mmHg。呼吸数26/分。Sp0294%(room air)。心尖部を最強点とするLevine 3/6の汎<全>収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認める。右手掌に有痛性皮疹を認めた。血液所見:赤血球478万、Hb 14.0g/dL、Ht41%、白血球13,400、血小板15万。血液生化学所見:尿素窒素32mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、血糖175mg/dL、HbA1c8.1%(基準4.9〜6.0)、Na134mEq/L、K4.2mEq/L。CRP12mg/dL。胸部X線写真で心胸郭比は56%であり、肺血管陰影の増強を認める。心電図は洞性頻脈。心エコー図傍胸骨長軸像とカラードプラ心エコー図傍胸骨長軸像を別に示す。血液培養2セットからともに緑色レンサ球菌<viridans streptococci>が検出された。
薬剤感受性試験結果を待つ間に投与する抗菌薬で適切なのはどれか。
- ミノサイクリン
- リファンピシン
- レボフロキサシン
- クラリスロマイシン
- ベンジルペニシリン
解答:e
う歯/歯科処置に伴う感染性心内膜炎の問題
117B6で問われていたOsler結節(手指の有痛性結節)がみられる
おまけ 118E32
118E32
34歳の女性。発熱と皮疹を主訴に来院した。昨日から咽頭痛があったが、日常生活は普通に送っていた。本日からガタガタ震える悪寒を伴う39.6℃の発熱、頭痛、悪心および関節痛を認める。生来健康である。意識は清明。身長165cm、体重60kg。体温39.8℃。脈拍120/分、整。血圧90/58mmHg。呼吸数28/分。SpO2 96%(room air)。瞳孔は左右差なく、対光反射は正常。眼球結膜に点状出血と黄染とを認める。口腔内はやや乾燥している。咽頭は発赤を認めない。頸静脈の怒張を認めない。項部硬直を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、腸雑音を聴取する。肝・脾を触知しない。両上肢手掌と下肢足底とにびまん性の出血斑を認める。入院時の血液培養からグラム陰性球菌を認めた。
最も可能性の高い原因微生物はどれか。
- Escherichia coli
- Group A Streptococcus
- Moraxella catarrhalis
- Neisseria gonorrhoeae
- Neisseria meningitidis
解答:e
侵襲性髄膜炎菌感染症
手掌や下肢に出血斑がみられ、電撃性紫斑をきたしている
症状だけなら肺炎球菌も鑑別だが"グラム陰性球菌"からは髄膜炎菌を想定するのが妥当
電撃性紫斑
全身に急速に拡大する紫斑や壊疽をきたす病状の総称で、感染性と非感染性に分けられる
感染性(敗血症性) | 肺炎球菌 |
ブドウ球菌 | |
髄膜炎菌 | |
非感染性 | プロテインC/S欠乏症 |
抗リン脂質抗体症候群 | |
全身性血管炎 |
この中でとくに肺炎球菌によるものが最も頻度が高く、背景に脾摘/脾臓低形成があることが多い
全体の感想
流行を反映してか梅毒の問題が多かった。神経梅毒は4期梅毒として記載されていることもあるので、118A10は選択肢cで引っかかった人が一定数いそう
116回のDarier病(116A39 正答率43%)や、117回の色素性母斑(117A39 正答率37%)、尋常性白斑(117A31 正答率83%)のような過去問で出題の少ない疾患はなし
昨年117回は新規問題以外も難しめの問題が多かったので、今年はややトーンダウンした印象でした