2025/2/8〜9に開催された、119回医師国家試験 皮膚科関連問題の解答・解説を作成しました
受験された方はお疲れ様でした
※一部皮膚科というより膠原病・アレルギー寄りの問題もあります
118・117回の解答解説は下記
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第118回医師国家試験 皮膚科問題を解く(全16+2問)
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第117回医師国家試験 皮膚科問題を解く(全23問)
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見出し
119A4
119A4
疾患と好発部位の組み合わせで誤っているのはどれか。
- 疥癬 - 外陰部
- ケロイド - 耳介
- 脂腺母斑 - 頭部
- 血管性浮腫 - 口唇
- ケラトアカントーマ - 臍部
解答:e
- a. 疥癬では手指の角化や、とくに男性陰嚢部の結節病変が特徴的とされる
- b. 耳介はピアスケロイドが好発する。その他前胸部や肩などテンションのかかりやすい部位に好発
- c. 脂腺母斑は頭部で黄色の脱毛斑として見られることが一般的。成長すると隆起し腫瘍が発生する
- d. 血管性浮腫≒粘膜の蕁麻疹なので口唇や眼瞼に好発する
- e. 顔面に好発するドーム状結節をきたす。臍部は消化器癌の臍転移で生じるSister Mary Joseph結節や尿膜管遺残など、そもそも皮膚疾患?というものが多い
119A20
119A20
54歳の男性。瘙痒を伴う体幹と四肢の皮疹を主訴に来院した。20年前から頭痛に対してNSAIDを頓用している。2年前から6か月に1回程度、同様の皮疹が同じ部位に生じ、約2週間で自然消退して、色素沈着が残るようになった。3日前にNSAIDを内服後、いつもと同じ部位に皮疹が出現した。薬剤リンパ球刺激試験でNSAIDは陽性であった。体幹の写真(別冊No.4)を別に示す。
診断はどれか。
- 固定薬疹
- 尋常性乾癬
- 薬剤性過敏症症候群
- Gibertばら色粃糠疹
- Stevens-Johnson症候群
解答:a
薬剤を内服するたび同一部位に皮疹を生じ、色素沈着を残して消退するという特徴的経過を取るのが固定薬疹の特徴
- a. 固定薬疹:病歴と合致する。ちなみに検査ではDLST以外にパッチテストも有用(皮疹部のみパッチテスト陽性、正常部は陰性になる)
- b. 尋常性乾癬:銀白色の鱗屑を伴う紅斑が特徴で、関節痛や爪甲変化を伴うことがある
- c. 薬剤性過敏症症候群:抗てんかん薬などが原因となり、"原因薬剤を中止しても2週間以上遷延する皮疹"が特徴
- d. Gibertばら色粃糠疹:体幹部に鱗屑をともなう紅斑がみられるが、1度罹患して治癒すれば基本的に再発しない
- e. Stevens-Johnson症候群:粘膜疹を伴うことが特徴。固定薬疹のなかに水疱を形成して重症化する病型がある(汎発性水疱性固定薬疹)
119A22
119A22
56歳の女性。指先の着白化を主訴に来院した。3か月前から寒いところで指先が白くなることを自覚したため受診した。白くなった後は紫、その後に赤へと変化するという。体温36.2℃。脈拍72/分、整。血圧120/76 mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜に貧血を認めない。関節の腫脹や圧痛を認めない。手の写真(No.6A、B)を別に示す。血液生化学所見:CK 121 U/L(基準41~153)。免疫血清学所見:CRP 0.1 mg/dL、抗核抗体640倍(基準20以下)、リウマトイド因子(RF)86 IU/mL(基準20未満)、血清補体値(CH50)34 U/mL(基準30~40)、C3 88 mg/dL(基準52~112)、C4 36 mg/dL(基準16~51)。爪郭部のダーモスコピー像(別冊No.6C)を別に示す。
診断はどれか。
- 皮膚筋炎
- 関節リウマチ
- 全身性強皮症
- 結節性多発動脈炎
- 抗リン脂質抗体症候群
解答:c
レイノー症状(6A)と指尖部の陥凹瘢痕(6B)、ダーモスコピーでは爪上皮延長や爪上皮出血点(NFB nail fold bleeding)が見られ全身性強皮症の診断
レイノー症状は膠原病で見られやすいが、とくに多いのは全身性強皮症(SSc)と混合性結合組織病(MCTD)
- a. 皮膚筋炎:手指では手背関節部のGottron丘疹や爪囲紅斑・毛細血管拡張が特徴、検査上はCK上昇が見られることが一般的
- b. 関節リウマチ:とくにPIP関節で腫脹や圧痛がみられる。補体が低下する悪性関節リウマチでなければ、通常皮膚症状はあまり目立たない
- c. 全身性強皮症:レイノー症状で初発し、手指の皮膚硬化や潰瘍をきたしやすい。抗セントロメア抗体や抗トポイソメラーゼⅠ抗体が陽性となる
- d. 結節性多発動脈炎:皮膚症状では下腿に好発する潰瘍やリベドをきたす。腎病変や末梢神経障害を伴う
- e. 抗リン脂質抗体症候群:SLEに合併する病型が多い。皮膚症状ではリベドが特徴で、血栓症状を伴いやすい(習慣性流産など)
疾患特異的自己抗体をあえて出さず、身体診察を重視するのは近年の流れ(118F55, 117C50のSLEなど)
119A23
119A23
9か月の女児。けいれんを主訴に両親に連れられて来院した。生後5か月で腹部に皮疹があることに母親が気付いていた。2週間前から両上肢を伸展させ、しばしば頭部を前屈する動作が出現した。約5秒間隔で10回以上反復し、次第に頻度が増加して毎日みられるようになった。同時期からあやし笑いが乏しくなり、ひとり座りが不安定になった。
身長70.5 cm、体重8.2 kg。体温36.3℃。脈拍108/分、整。血圧82/48 mmHg。呼吸数32/分、SpO₂ 99%(room air)。心音と呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。体幹と大腿部に皮疹を3個認める。頭部単純MRIのT2強調水平断像(別冊No.7A)と大腿部の皮疹の写真(別冊No.7B)を別に示す。
最も考えられる疾患はどれか。
- 尋常性白斑
- 結節性硬化症
- 神経線維腫症1型
- Sturge-Weber症候群
- von Hippel-Lindau病
解答:b
葉状白斑とてんかんが見られ、結節性硬化症の診断
- a. 尋常性白斑:皮膚で白斑がみられるが、内臓症状は伴わない(117A31)
- b. 結節性硬化症:出生早期から見られる葉状白斑が早期診断に重要。思春期以降では顔面に血管線維腫が見られるようになる
- c. 神経線維腫症1型:神経皮膚症候群の一つ。出生早期からみられるカフェオレ斑が早期診断に重要。思春期以降で神経線維腫が多発する
- d. Sturge-Weber症候群:顔面の三叉神経領域に沿って単純性血管腫がみられる。てんかん発作のほか、眼での緑内障も特徴
- e. von Hippel-Lindau病:小脳や網膜の血管腫、腎細胞癌などが特徴。皮膚症状はあまりない
白斑の写真は113F52と同一
関連問題
119A24
119A24
20歳の女性。瘙痒を伴う体幹と四肢の皮疹を主訴に来院した。全身に皮疹が出現し、瘙痒で夜も眠れていない。既往歴にアレルギー性鼻炎がある。エビ、豚肉、卵および牛乳のアレルギーがある。乳児期から瘙痒を伴う皮疹が左右対称性に生じ、消長を繰り返している。小児期は頭部および顔面に紅斑、鱗屑および漿液性丘疹を生じていた。学童期は肘窩や膝窩などに掻破痕を伴う苔癬化局面を形成した。弟に同様の皮膚症状がある。掻破による痒疹と苔癬化局面が全身に多発している。背部の皮疹の写真 (別冊No. 8) を別に示す。血液所見:赤血球468万、Hb 13.9 g/dL、Ht42%、白血球11,300(桿状核好中球10%、分葉核好中球52%、好酸球17%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球14%)、血小板45万。血液生化学所見:LD276 U/L(基準124~222)。免疫血清学所見:CRP 0.3 mg/dL、IgE 13,384 IU/mL(基準170以下)。病変部の病理検査で表皮内に異型リンパ球の浸潤を認めない。
皮膚症状に対する適切な治療はどれか。
- 抗菌薬内服
- コルヒチン内服
- 活性型ビタミンD3外用
- 抗ロイコトリエン薬内服
- 副腎皮質ステロイド外用
解答:e
そう痒感のある湿疹がみられ、増悪と寛解を繰り返していることからアトピー性皮膚炎の診断。写真でもかなり苔癬化が強く痒疹結節が混在している。皮膚リンパ腫も鑑別に上がるが組織像から否定されている
治療としてはステロイド外用が第一選択
- a. 抗菌薬内服:とびひ(伝染性膿痂疹)等を合併した場合に行われることがある
- b. コルヒチン内服:Behçet病の治療として行われる
- c. 活性型ビタミンD3外用:尋常性乾癬の治療として行われる。幼少期から生じることは少なく、そう痒感も一般的にそこまで強くない、採血での好酸球やIgE上昇が見られないなどが相違点
- d. 抗ロイコトリエン薬内服:気管支拡張作用をもち気管支喘息の治療で用いられる。皮膚科では蕁麻疹治療で用いられることがある
- e. 副腎皮質ステロイド外用:アトピー性皮膚炎の治療として第一選択
皮膚症状が強く外用のみで治療していくのはかなり厳しそうで、シクロスポリン内服や生物学的製剤の投与が妥当と思われる。医師国家試験では未出題ながら、臨床現場ではだいぶ浸透しておりそろそろ出題されても良さそう
119A61
119A61
16歳の男子。発熱と皮疹を主訴に来院した。幼少期からアトピー性皮膚炎で治療を受けていたが、3か月前から治療を中断していた。2日前から39.9℃の発熱があり、顔面に皮疹が出現し体幹にも拡大したため受診した。疼痛はない。顔面と体幹に小水疱、びらん及び紅斑を両側性に認めた。顔面の写真 (別冊No. 26) を別に示す。
原因で最も考えられるのはどれか。
- サイトメガロウイルス
- 単純ヘルペスウイルス
- 水痘・帯状疱疹ウイルス
- ヒトヘルペスウイルス6
- Epstein-Barr(EB)ウイルス
解答:b
アトピー性皮膚炎で皮膚バリア機能が低下していることを背景に発症するのはカポジ水痘様発疹症
単純ヘルペスウイルス(HSV-1)が原因となり、紅斑上に水疱・びらんがみられる
- a. サイトメガロウイルス:免疫不全患者で生じる感染症。皮膚症状はあまり多くない
- b. 単純ヘルペスウイルス:カポジ水痘様発疹症や単純ヘルペスの原因となる
- c. 水痘・帯状疱疹ウイルス:水痘は小児に好発する。帯状疱疹は水疱やびらんをきたすが、原則として片側性に生じ(汎発性帯状疱疹では両側性)、また痛みを伴う。
- d. ヒトヘルペスウイルス6:突発性発疹の原因となる
- e. EBウイルス:伝染性単核球症の原因となる。発熱や咽頭痛、リンパ節腫脹、肝機能障害などが主な症状
関連問題
- 118A17, 108A2
119A63
119A63
40歳の男性。関節痛と皮疹を主訴に来院した。以前から皮疹を繰り返していたが、約3か月前から背部の皮疹が拡大してきた。同時期から手指の関節痛、腰痛および臀部痛を自覚するようになった。貼付剤で様子をみていたが、改善を認めないため受診した。意識は清明。体温36.5℃。上腕部と背部に皮疹を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。両手の爪に点状陥凹を認める。両手の示指、中指、環指の遠位指節間関節および近位指節間関節に腫脹と圧痛を認める。アキレス腱付着部に軽度の圧痛を認める。血液所見:赤血球452万、Hb 14.1 g/dL、Ht 45%、白血球5,600、血小板16万。免疫血清学所見:CRP 0.3 mg/dL、リウマトイド因子 (RF) <陰性>、抗核抗体<陰性>。背部の写真 (別冊No. 28) を別に示す。この患者でみられる可能性が高いのはどれか。
- 白内障
- 外陰部潰瘍
- 心嚢液貯留
- 仙腸関節炎
- 多発単神経炎
解答:d
鱗屑を伴う紅斑が先行し、DIP関節痛やアキレス腱付着部炎が見られることから乾癬性関節炎(関節症性乾癬)を考える
腰痛・殿部痛が見られており、仙腸関節炎の合併が想定される
- a. 白内障:アトピー性皮膚炎では白内障合併に注意が必要(116A59)。乾癬と比較するとそう痒感が強く経過も長いのが一般的
- b. 外陰部潰瘍:Behçet病の4症状の一つ
- c. 心嚢液貯留:SLEの合併症として漿膜炎をきたすと見られることがある
- d. 仙腸関節炎:乾癬性関節炎では皮疹が先行して関節痛が出てくることが一般的。爪病変は関節病変のリスク因子とされる。関節痛は末梢関節(DIP関節)が多いが、体軸関節である仙腸関節炎が見られることもある
- e. 多発単神経炎:血管炎(アレルギー性肉芽腫性血管炎 EGPA)などでみられるタイプのニューロパチー。EGPAでは下腿に好発する紫斑が特徴
119A71
119A71
54歳の女性。右前額部から鼻背にかけての疼痛を伴う皮疹を主訴に来院した。2日前から右前額部のピリピリする疼痛を自覚していた。昨夜から、前額部から右上眼瞼および鼻背に水疱を伴う集簇した皮疹が出現した。
患者への説明で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 「眼科の受診が必要です」
- 「水疱を破る必要があります」
- 「昔かかった麻疹によるものです」
- 「シャワーを浴びるのは控えましょう」
- 「皮疹から他人に感染する可能性があります」
解答:a, e
写真はないが、疼痛が先行しその後水疱を伴う皮疹が(おそらく神経走行にそって)集簇しているという経過から帯状疱疹を考える
鼻背部に皮疹が見られる場合は眼症状を伴いやすい(Huthinson徴候)
感染リスクは高くないが、水疱部には水痘・帯状疱疹ウイルスが存在するため乳幼児など水痘未罹患の場合は感染するリスクがある
- a. 鼻背部は三叉神経第1枝のみから支配を受けており、この部分に皮疹がみられる場合は眼症状を伴いやすいため眼科的評価が推奨される
- b. 帯状疱疹の水疱は自然に痂皮化していくため、積極的にやぶる必要はない。Ⅱ度熱傷の場合水疱の中身は出してもよいが、水疱蓋は除去しないほうが良いという意見が多い(p41)
- c. 一度"水痘"に罹患し、その後潜伏感染していたウイルスが再活性化することで生じる
- d. びらんや痂皮が残っていると二次的な細菌感染をきたすことがあるため、洗顔やシャワーなどで創部を清潔に保つことが望ましい
- e. 帯状疱疹が他の人で帯状疱疹としてうつることはない(潜伏再活性化が病態のため)が、一方で未感染の小児等に水痘としてうつることはある。神経支配領域以外に皮疹が出現する汎発性帯状疱疹では通常より感染性が高いとされる
- 選択肢eの参考:帯状疱疹のことを皮膚科医に聞く!|帯状疱疹予防.jp
119B1
119B1
疾患とその俗称の組合せで正しいのはどれか。
- 鶏眼 - うおのめ
- 色素性母斑 - とびひ
- 水痘 - みずいぼ
- 麦粒腫 - そばかす
- 風疹 - はしか
解答:a
- a. 鶏眼はうおのめ→◯ ちなみに胼胝はタコが俗称
- b. 色素性母斑(母斑細胞母斑)はいわゆるほくろ。とびひの医学的名称は伝染性膿痂疹
- c. 水痘はいわゆるみずぼうそう。みずいぼの医学的名称は伝染性軟属腫
- d. 麦粒腫はいわゆるものもらい。そばかすの医学的名称は雀卵斑
- e. 風疹はいわゆる三日はしか。はしかの医学的名称は麻疹
119C26
119C26
自己抗体と臓器障害の組合せで正しいのはどれか。
- 抗MDA5抗体 - 間質性腎炎
- 抗Mi-2抗体 - 蝶形紅斑
- 抗SS-A抗体 - 皮膚硬化
- 抗TIF1-γ抗体 - 硬化性胆管炎
- 抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体<抗ARS抗体> - 間質性肺炎
解答:e
抗ARS抗体は間質性肺炎と関係する
ちなみに抗ARS抗体は総称であり8種類存在し、そのうち一つが抗Jo-1抗体。以前はこちらしか測定できなかったため古い過去問だとこちらの名称で載っていることが多い
- a. 抗MDA5抗体は急速進行性間質性"肺炎"と関連する。皮疹では手背側にみられる逆ゴットロン徴候が特徴的とされる(116D44)
- b. 抗Mi-2抗体は古典的皮膚筋炎と関連し、筋炎症状が強い。蝶形紅斑はSLEで見られる皮膚症状で、自己抗体としては抗Sm抗体や抗ds-DNA抗体など
- c. 抗SS-A抗体はSjögren症候群と関連し、皮膚症状では環状紅斑や下腿紫斑をきたす。皮膚硬化は全身性強皮症に特徴的で、抗セントロメア抗体(限局皮膚硬化型)や抗トポイソメラーゼⅠ抗体(びまん皮膚硬化型)など
- d. 抗TIF1-γ抗体は皮膚筋炎の中で悪性腫瘍の合併が多い(118D19)。硬化性胆管炎はIgG4関連疾患として見られることがあり、自己免疫性膵炎を合併しやすい
- e. 抗ARS抗体は慢性進行性の間質性肺炎と関連する。皮膚症状では機械工の手と呼ばれる示指橈側の角化性病変が特徴(下記)

参考サイトより引用
119C34
119C34
抗リン脂質抗体症候群の徴候はどれか。2つ選べ。
- 脳梗塞
- 不育症
- 早発閉経
- 指尖部陥凹性瘢痕
- 口腔粘膜再発性潰瘍
解答:a, b
抗リン脂質抗体症候群では血栓傾向となりやすく、血栓症としての脳梗塞や胎盤血管がつまることによる習慣性流産(→不育症)をきたす
- a. 脳梗塞:血栓症の一つとして脳梗塞や心筋梗塞が見られる場合がある
- b. 不育症:妊娠したものの生育できないのが不育症(そもそも妊娠しないのが不妊症)。不育症の代表的原因の一つが抗リン脂質抗体症候群
- c. 早発閉経:自己免疫疾患は早発閉経の原因となるとされる
- d. 指尖部陥凹性瘢痕:強皮症の皮膚症状の一つ(119A22の図B)
- e. 口腔粘膜再発性潰瘍:Behçet病の4大症状の一つ
119D18
119D18
83歳の男性。陰嚢の皮疹を主訴に来院した。9か月前から左陰嚢に痛みや痒みを伴わない皮疹が出現し、自宅近くの医療機関で外用薬による治療をしていたが、次第に拡大してきたため紹介受診した。陰部の写真(別冊No. 6A)と生検組織のH-E染色標本(別冊No. 6B)とを別に示す。
診断はどれか。
- Bowen病
- 悪性黒色腫
- 基底細胞癌
- 脂漏性角化症
- 乳房外Paget病
解答:e
高齢男性で自覚症状を伴わず、外用治療に反応が乏しい外陰部紅斑。組織学的に明るい胞体を持つPaget細胞がみられ、乳房外Paget病の診断
- a. Bowen病:境界不明瞭な紅斑を生じるため臨床像からは鑑別が必要。組織学的には表皮全層の異型細胞が見られることが特徴(107D23)だが、Paget細胞は見られない
- b. 悪性黒色腫:一般的には黒色病変をきたし、組織学的にもメラニン沈着がみられる
- c. 基底細胞癌:高齢者の顔面に好発し、日本人では黒色病変となることが多く潰瘍を伴いやすい。組織では核の柵状配列が特徴(117A37)
- d. 脂漏性角化症:いわゆるイボの一種であり、隆起した病変となる。組織では偽角質嚢腫が特徴(98D6)
- e. 乳房外Paget病:外陰部に好発し、一見湿疹様の紅斑だがそう痒感を伴わない・外用治療に抵抗性の場合に鑑別が必要な腫瘍性疾患
関連問題
119D22
119D22
28歳の女性。妊娠に関する相談のため来院した。3年前から全身性エリテマトー デス(SLE)で自宅近くの医療機関に通院しており、グルココルチコイドの内服で、 病状は1年以上前から安定している。近い将来、挙児を希望しており相談のため紹介受診した。体温36.5℃。脈拍68/分、整。血圧108/62 mmHg。顔面、体幹および四肢に皮疹を認めない。心音と呼吸音に異常を認めない。下腿に浮腫を認めない。(持参した前医の検査データ)尿所見:蛋白(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 439万、Hb 12.0g/dL、白血球4,200、血小板15万。血液生化学所見:尿素窒素 10 mg/dL、クレアチニン0.6 mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.1 mg/dL、リウマ トイド因子(RF)80 IU/mL (基準20未満)、抗核抗体1,280倍(基準20以下)、抗 dsDNA抗体23 IU/mL (基準12以下)、抗Sm抗体陽性、抗RNP抗体陽性、抗 SS-A抗体陽性、抗リン脂質抗体陰性、血清補体価(CH50) 35 U/mL (基準 30~40)、C3 84 mg/dL (基準52~112)、C4 29 mg/dL (基準16~51)。診察の結果、 妊娠は可能と判断された。
この患者でみられる自己抗体で妊娠の際に胎児に影響を与える可能性があるのはどれか。
- 抗Sm抗体
- 抗RNP抗体
- 抗SS-A抗体
- 抗dsDNA抗体
- リウマトイド因子(RF)
解答:c
SLEで複数の自己抗体が陽性。抗SS-A抗体はIgGのため胎盤移行性があり、新生児ループスの原因となることがある→c
- a・d. 抗Sm抗体・抗dsDNA抗体:SLEに特異性が高い自己抗体
- b. 抗RNP抗体:混合性結合組織病(MCTD)に特異性の高い自己抗体
- c. 抗SS-A抗体:新生児ループスでは先天性心ブロックをきたすことがあり問題となる。皮疹(環状紅斑)も生じるがこちらは自然経過で消退する
- e. リウマトイド因子は多くがIgGのFc領域に対するIgM抗体のため、胎盤移行性はない
関連問題
- 111D51 (★同一問題★)
119D24
119D24
68歳の女性。右上肢の腫れと強い痛みを主訴に来院した。昨夜から右中指の腫れと痛みを自覚していたが、今朝には腫脹と強い痛みが上腕まで拡大し、我慢する ことが出来なくなったため受診した。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。体温37.9℃。脈拍112/分、整。血圧82/60 mmHg。呼吸数24/分。SpO2 99%(room air)。右手中から上腕部の腫脹と圧痛を認める。右中指から手首にかけての皮膚所見(別冊No. 9A)を別に示す。血液所見:Hb 12.3 g/dL、白血球16,300、血小板20万。血液生化学所見:アルブミン3.0 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 88 U/L、ALT 20 U/L、LD 310 U/L (基準 124~222)、CK 720 U/L (基準 41~153)、尿素窒素22 mg/dL、クレアチニン1.2 mg/dL。CRP 30 mg/dL。右上腕造影CTでは筋間組織に液体貯留と筋肉内の造影不良域を認めるが、ガス像は認めない。来院翌日に陽性となった血液培養のボトル内容のGram染色標本(別冊No. 9B)を別に示す。
原因微生物はどれか。
- Clostridium pefringens
- Pseudomonas aeruginosa
- Staphylococcus aureus
- Streptococcus pyogenes
- Vibrio vulnificus
解答:d
急速に進行する右上腕の腫脹と疼痛で、造影CTでは筋肉部の炎症所見が見られるがガス像が見られない。血液培養ではグラム陽性球菌が見られ、A群β溶連菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の診断→d
2023年後半〜2024年に発症数が増加したことが話題となった:国立感染症研究所:国内における劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加について (2024年6月時点)
- a. Clostridium pefringens(ウェルシュ菌):ガス壊疽の原因菌として知られるが、本例ではガス産生がない。またグラム陽性"桿菌"に分類される
- b. Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌):院内肺炎など免疫力が低下している場合に問題となる起因菌。グラム陰性桿菌
- c. Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌):皮膚軟部組織感染の原因となり、またグラム陽性球菌ではあるが、双球菌なのでレンサ状にはならない(参考:115C62)
- d. Streptococcus pyogenes(A群β溶連菌):蜂窩織炎など皮膚感染症の原因菌となるが、本例のように急速な経過を取る劇症型が存在する。ちなみに劇症型は感染症法での届出対象(5類感染症)
- e. Vibrio vulnificus:"人食いバクテリア"とも呼ばれ壊死性筋膜炎の起因菌として知られるグラム陰性桿菌。Vibrio属菌なので海水に存在する
119D26
119D26
66歳の女性。微熱および持続する咳嗽を主訴に来院した。1年前から間質性肺炎を伴う関節リウマチに対して抗TNF-α抗体製剤とNSAIDで治療されている。他に骨粗鬆症と逆流性食道炎でカルシウム製剤、活性型ビタミンD製剤およびプロトンポンプ阻害薬を内服している。精査の結果、間質性肺炎の増悪はなく、肺結核と診断された。
中止すべき薬剤はどれか。
- NSAID
- カルシウム製剤
- 抗TNF-α抗体製剤
- プロトンポンプ阻害薬
- 活性型ビタミンD製剤
解答:c
抗TNF-α抗体製剤はリウマチ治療に有効だが易感染性となるため活動性結核がある場合は投与を中止する
生物学的製剤の投与前には結核のほか、HBs抗原(B型肝炎)、HCV抗体(C型肝炎)、β-Dグルカン(ニューモシスチス肺炎含む真菌症)を検査する:116C36
- a. NSAID:腎障害や消化管潰瘍では投与中止を検討する
- b・e. カルシウム製剤・活性型ビタミンD製剤:高Ca血症では投与中止を検討する
- c. 抗TNF-α抗体製剤:活動性結核では投与中止する。原疾患の病勢が強い場合は悩ましいが、幸い本例では間質性肺炎は悪化していない
関連問題
119D31
119D31
8歳の女児。膝が痛くて歩けないことを主訴に両親に連れられて来院した。3日前から左膝の痛みが生じ、2日前に発熱を認めた。昨日から左膝が痛くて歩けなく なった。薬剤に対するアレルギーはない。意識は清明。身長125cm、体重27kg。 体温37.3℃。脈拍100/分、整。血圧110/60 mmHg。呼吸数24/分。咽頭に発赤 は認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。左膝の写真(別冊No. 11)を別に示す。左膝の関節可動域に制限を認めない。血液所見:赤血球403万、Hb 11.3 g/dL、Ht 35%、白血球14,000(桿状核好 中球6%、分葉核好中球67%、好酸球1%、単球12%、リンパ球14%)、血小板 34万。血液生化学所見:総蛋白6.7 g/dL、AST 35 U/L、ALT 23 U/L、 LD 358 U/L (基準 145~320)。CRP 18 mg/dL。膝関節 MRIで関節腔や骨髄に異常を認めない。
初期治療で投与すべきなのはどれか。
- クラリスロマイシン
- クリンダマイシン
- セファゾリン
- メロペネム
- レボフロキサシン
解答:c
左膝周囲の発赤・腫脹・疼痛が見られるが、関節可動域制限はなくMRIでも関節や骨に異常がないことから蜂窩織炎が主体と考えられる
黄色ブドウ球菌やA群β溶連菌等が原因として多いため、初期治療ではセファゾリンの投与が無難→c
- a. クラリスロマイシン:マイコプラズマ肺炎の治療で用いられる
- b. クリンダマイシン:壊死性筋膜炎(NSTI)などより重篤な感染症では併用投与されることがある。本例は進行が極端に早いわけでなく、バイタルも安定しており初期からの投与は不要と考えられる
- c. セファゾリン:蜂窩織炎治療薬としてもっとも一般的。ただしMRSAだと無効なので注意
- d. メロペネム:広域抗菌薬のため、全身状態が保たれている例では初期から投与しない
- e. レボフロキサシン:尿路感染症でよく用いられる
皮膚科領域ではクラリスロマイシンやレボフロキサシンはざ瘡治療に使われる場合がある
関連問題
119D33
119D33
10か月の男児。発熱を主訴に両親に連れられて来院した。3日前から38℃台の発熱が持続し、本日解熱した直後に全身の発疹が出現したため受診した。発熱時には機嫌は良く、軽度の軟便があった。解熱後は不機嫌であった。身長68cm、体重 9 kg。体温36.5℃。脈拍112/分、整。血圧98/52 mmHg。呼吸数30/分。SpO2 98%(room air)。体幹部を中心に斑状の紅色丘疹を認める。全身状態は良好であり、眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭に軽度の発赤を認める。口腔の紅潮は認めない。頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。 腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
考えられる原因ウイルスはどれか。
- 風疹ウイルス
- 麻疹ウイルス
- パルボウイルスB19
- ヒトヘルペスウイルス6
- Epstein-Bar(EB)ウイルス
解答:d
発熱時の全身状態は良好であり、解熱後の皮疹が出ていることから突発性発疹を考える。原因ウイルスはHHV-6→d
- a. 風疹:発熱と同時に発疹が生じるのが特徴
- b. 麻疹:二峰性の発熱であり、二度目の発熱時に発疹が生じるのが特徴。初回発熱時は口腔内のコプリック斑が見られる
- c. パルボウイルスB19:伝染性紅斑(リンゴ病)の原因。皮疹は顔面の紅斑が特徴なので性状が異なる
- d. ヒトヘルペスウイルス6:突発性発疹では解熱後の皮疹が特徴
- e. EBウイルス:伝染性単核球症の原因。皮疹の他に咽頭痛や肝機能障害が見られる。好発年齢は思春期頃
119D63
119D63
80歳の男性。皮疹を主訴に来院した。3週間前から、体幹および四肢に水疱やびらんが出現し、徐々に増数、拡大してきたため受診した。皮膚生検組織のH-E 染色標本(別冊No. 24)を別に示す。蛍光抗体直接法で表皮基底膜部にIgGとC3との線状沈着を認める。食塩水処理皮膚を用いた蛍光抗体間接法で表皮側にIgGの 陽性反応を認める。
診断はどれか。
- 尋常性天疱瘡
- 水疱性類天疱瘡
- Hailey-Hailey病
- 後天性表皮水疱症
- 先天性表皮水疱症
解答:b
高齢男性で表皮下水疱が見られ、蛍光抗体直接法で沈着が見られることから自己抗体が関連する自己免疫性水疱症を考える。
食塩水処理皮膚を使った蛍光抗体間接法では表皮側に沈着がみられ、水疱性類天疱瘡の診断→b

参考サイトより引用
- a. 尋常性天疱瘡:表皮下ではなく、表皮内水疱が見られるのが特徴(参考:115D60)
- b. 水疱性類天疱瘡:高齢者に多い自己免疫性水疱症。最近では糖尿病治療薬であるDPP4阻害薬との関連が知られる
- c. Hailey-Hailey病:水疱をきたすが、遺伝性疾患であり蛍光抗体直接法は陰性になる
- d. 後天性表皮水疱症:水疱性類天疱瘡に類似するが、蛍光抗体間接法で真皮側に沈着が見られるのが鑑別点(上の画像参照)
- e. 先天性表皮水疱症:出生時から水疱をきたすので病歴が異なる。自己抗体が生じないので蛍光抗体も陰性
1M食塩水処理皮膚試験(split skin test)が問題文中に出てきたのはかなり久しぶり(おそらく106D51以来)。しかしほとんどの人は無難な水疱性類天疱瘡を選ぶ気はする…
- 参考・図引用:あたらしい皮膚科学 第3版 p261
関連問題
119E38
119E38
1歳の男児。全身の皮疹を主訴に母親に連れられて来院した。2週間前に感冒様症状があり、その後、感冒様症状は改善したが、1週間前から下肢の皮疹が出現した。2日前から全身に皮疹を認めるようになったため受診した。腹痛および関節痛は認めない。関節内出血や筋肉内出血の既往はない。家族歴に特記すべきことはない。身長80cm、体重10kg。体温36.5℃。脈拍120/分、整。呼吸数32/分。顔色 良好、眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭に発赤を認めない。頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾 を触知しない。皮疹は上からガラス板で圧迫しても退色しない。頰部、腹部および左下腿の皮疹の写真(別冊No. 5A~C)を別に示す。
予想される血液検査値はどれか。
- PT延長
- APTT延長
- 血小板数低値
- Dダイマー高値
- フィブリノゲン低値
解答:c
感冒症状後の下腿から始まる紫斑(ガラス板で圧迫しても消退しない)。関節内出血や筋肉内出血がない→血友病は否定的、腹痛や関節痛がない→IgA血管炎は否定的
で消去法的に特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を考える
初出時IgA血管炎かと考えていましたが、ITPの方が妥当な気がするので解答を修正しました
119F14
119F14
皮膚の構造や機能で正しいのはどれか。
- Merkel細胞は免疫担当細胞である。
- 皮脂の主成分はコレステロールである。
- チロシナーゼはメラニン生成に必須である。
- アポクリン汗腺の導管は表皮に直接開口する。
- ヘミデスモソームは表皮細胞間の接着に関わる。
解答:c
- a. Merkel細胞は触圧覚受容細胞。皮膚の免疫担当細胞はLangerhans細胞
- b. 皮脂の主成分はトリグリセリドや脂肪酸など
- c. チロシナーゼはメラニン生成の律速段階を担う酵素→◯ 同酵素が欠損すると眼皮膚白皮症を生じる(肌が白く目も碧色になる)
- d. アポクリン汗腺の導管は毛包に開口する。一方でエクリン汗腺の導管は表皮に直接開口する
- e. ヘミデスモソームは表皮と真皮の結合部を担う→同分子に対する自己抗体が生じると水疱性類天疱瘡をきたし表皮下水疱となる。一方でデスモソームは表皮細胞間接着に関わる→同分子に対する自己抗体が生じると天疱瘡をきたし表皮内水疱となる
過去問で出題がないので難しめな印象。いちおう眼皮膚白皮症は117A31の選択肢に出題していたが…
119F50
119F50
45歳の男性。2か月前から生じた右腋窩の皮疹を主訴に来院した。被覆皮膚と癒着し波動を触れる径20mmの皮疹を認める。腋窩の写真(別冊No. 4A)と皮疹部 の超音波像(別冊No. 4B)とを別に示す。
この皮疹の種類はどれか。
- 丘疹
- 苔癬
- 嚢腫
- 膿疱
- 膨疹
解答:c
皮膚表面では変化の乏しい腫瘤で、エコーでは境界明瞭な病変が描写されていることから嚢腫に該当する
119F59
119F59
56歳の男性。左下腿の挫創を主訴に来院した。5日前に発生した地震で、倒れ た家具が接触して受傷したが治療できずそのままにしていた。2日前から創部の痛みが悪化し膿性浸出液を認めるようになった。来院時の創部の写真(別冊No. 6)を別に示す。
創部を消毒する前に行うのはどれか。2つ選べ。
- 抗菌薬外用
- 洗浄
- 創部培養
- ドレーン留置
- 縫合
解答:b, c
左下腿で潰瘍が見られ、周囲に発赤を伴っている。疼痛や悪臭が見られることから外傷性潰瘍が二次感染をきたした状態が考えられる
原因菌評価のための創部培養と、局所感染コントロールのための洗浄が必要
- a. 抗菌薬外用:洗浄等の"後で"軟膏外用処置を行う場合はあるが先に行う処置ではない
- b. 洗浄:物理的に細菌を減らすための手段として重要
- c. 創部培養:細菌感染の原因菌検索のため行われる。消毒すると菌が死滅するので消毒前に行う
- d. ドレーン留置:深い創部であれば排膿を促すためドレーン留置する場合はあるが、視診上はそこまで深くない
- e. 縫合:感染をきたしている以上縫合は菌を閉じ込めるだけなので行わない
119F68
119F68
73歳の女性。記銘力低下を主訴に長女に連れられて来院した。
現病歴: 2か月前から急に物忘れがひどくなり、家族に心配され来院した。バスに乗って買い物に行っても、レジでの支払いができなくなり、生活用品は長女が買って届けている。食事は宅配のお弁当を利用しており、ひとりで食べられ る。しかし偏食のため食べ残しが多い。着替えは自分でできる。最近は家で過ごす時間が長くなり、友人から誘われても趣味のゲートボールに行かなくなった。
既往歴: 18歳時に虫垂炎で手術歴あり。
生活歴: 喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。車で30分の距離に長女夫婦が住んでいる。アレルギー歴はない。
家族歴: 父は心筋梗塞で死亡。母は肺炎で死亡。夫は梅毒罹患歴があり、3年前、75歳時に膵癌で死亡。
現症: 意識は清明。意思疎通は可能で、礼節は保たれている。身長157cm、 体重52kg。体温36.2℃。脈拍84/分、整。血圧128/76 mmHg。呼吸数12/分。 皮膚と粘膜に異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は右下腹部 に手術痕を認める。歩行はゆっくりだが、前傾姿勢は認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(一)、糖(一)。血液所見:赤血球438万、 Hb 13.2 g/dL、Ht40%、白血球6,800、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン3.5g/dL、AST 26 U/L、ALT 18 U/L、LD 162 U/L(基準 124~222)、γ-GT 16 U/L (基準9~32)、アンモニア 22 µg/dL (基準18~48)、尿素 窒素 16 mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、血糖96mg/dL、Na 142 mEq/L、 K 4.2 mEq/L、C198 mEq/L、Ca 8.6mg/dL. CRP 0.1 mg/dL。血中梅毒トレポネーマ抗体<TPHA>と非トレポネーマ脂質抗体<RPR>はいずれも陽性、ヒト免疫不全ウイルス<HIV>抗原抗体は陰性であった。頭部単純CTで明らかな異常を認めない。
治療が必要な梅毒と判断し、患者本人と長女に説明することになった。
説明の内容で誤っているのはどれか。
- 「脳脊髄液検査を行います」
- 「ペニシリン系抗菌薬で治療します」
- 「家族の方は抗菌薬の予防内服が必要です」
- 「治療終了後も定期的に血液検査を行います」
- 「トイレの共用で家族に感染することはありません」
※3連問のため問題文を一部改変した
解答:c
おそらく夫から感染したと思われる梅毒で、神経梅毒による認知症症状をきたしている(いわゆるtreatable dementia)
梅毒自体は空気感染や飛沫感染ではなく感染性が高くないので、家族の予防内服は不要
- a. 脳脊髄液検査は神経梅毒評価のために必要。頭部CTで明らかな異常はないため、脳圧亢進状態でもない
- b. 梅毒治療の第一選択はペニシリン系抗菌薬。もともと内服のみでそれなりの長期間内服が必要だったが、最近筋注製剤(ベンジルペニシリン)が発売になり少ない回数で治療可能となった
- c. 結核やインフルエンザでは予防内服が行われる場合がある
- d. 治療終了後、効果判定のためRPR値の推移をチェックする必要がある
- e. 梅毒は粘膜や皮膚が直接接触することで感染するので、トイレ共用で感染することはない。ノロウイルスなどはトイレでの感染に注意が必要