日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和4(2022)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
選択問題1〜30は下記
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令和4(2022)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜30
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見出し
- 1 令和4年度(2022年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 31〜60
- 1.1 選択問題31:解答 3
- 1.2 選択問題32:解答 1
- 1.3 選択問題33:解答 1
- 1.4 選択問題34:解答 2
- 1.5 選択問題35:解答 3, 4
- 1.6 選択問題36:解答 4
- 1.7 選択問題37:解答 4
- 1.8 選択問題38:解答 3
- 1.9 選択問題39:解答 1
- 1.10 選択問題40:解答 1
- 1.11 選択問題41:解答 5
- 1.12 選択問題42:解答 4, 5
- 1.13 選択問題43:解答 3, 5
- 1.14 選択問題44:解答 5
- 1.15 選択問題45:解答 5
- 1.16 選択問題46:解答 4
- 1.17 選択問題47:解答 5
- 1.18 選択問題48:解答 4, 5
- 1.19 選択問題49:解答 1
- 1.20 選択問題50:解答 3
- 1.21 選択問題51:解答 1
- 1.22 選択問題52:解答 3
- 1.23 選択問題53:解答 2
- 1.24 選択問題54:解答 1, 4, 5
- 1.25 選択問題55:解答 2
- 1.26 選択問題56:解答 4
- 1.27 選択問題57:解答 1, 5
- 1.28 選択問題58:解答 3
- 1.29 選択問題59:解答 4
- 1.30 選択問題60:解答 4
令和4年度(2022年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 31〜60
選択問題31:解答 3
紫外線に関する問題
光老化への寄与度はUVB>UVA→3
ただし光老化に特徴的な所見であるsolar elastosisはUVAの影響も大きい
- 1. △ 日焼けには2種類あり、サンタンを起こす力はUVAが、サンバーンを起こす力はUVBが強い
- 2. 日本人に多いフォトスキンタイプはⅡ〜Ⅳ
- 3. 光老化(シミ・シワ・皮膚癌等を含む)への寄与度はUVBが高い
- 4. 地上に到達する紫外線はUVA(6.3%)>UVB(0.5%)。赤外線が54.3%、可視光線が38.9%と大半を占める
- 5. "UVB"によるDNA障害は主に核内のDNAへ直接吸収されることで生じる(C>T変異が特徴)。UVAは生体に吸収され活性酸素を介してDNAや膜脂質を障害する
UVA・UVB・UVCの比較
紫外線の種類 | 波長(nm) | 影響部位 | 症状 |
UVA | 320〜400 | 真皮深層まで | サンタン(小麦色の日焼け)
日光弾力線維症(solar elastosis) |
UVB | 290〜320 | 表皮〜真皮浅層 | サンバーン(赤くひりひりする日焼け)
悪性黒子(Lentigo maligna) |
UVC | 100〜280 | オゾン層でブロックされ届かない |
スキンタイプ
日光曝露による反応によって、ヒトの皮膚を分類する方法
Fitzpatrickによるものと日本人に限定したものがある
Fitzpatrick skin phototype (FSPT)
FSPT | サンバーンの傾向 | サンタンの傾向 |
Ⅰ | いつも赤くなる | 決して黒くならない |
Ⅱ | いつも赤くなる | 時々黒くなる |
Ⅲ | 時々赤くなる | いつも黒くなる |
Ⅳ | 決して赤くならない | いつも黒くなる |
Ⅴ | 皮膚色が中等度に濃い | |
Ⅵ | 皮膚色が濃い |
※スキンタイプⅠ〜Ⅱは皮膚色が薄く、日光角化症の発症リスクが高い
日本人はⅡ〜Ⅳに該当
日本人のスキンタイプ分類
スキンタイプ | 紫外線感受性 | サンバーンの反応 | サンタンの反応 |
J-Ⅰ | 高い | 赤くなりやすい | 少し黒くなる |
J-Ⅱ | 平均的 | 中等度に赤くなる | 中等度に黒くなる |
J-Ⅲ | 低い | わずかに赤くなる | かなり黒くなり持続する |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p107・228(1)/109(2)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p130・273(1・3・4・5)
- 選択肢1の参考:日本臨床皮膚科医会-ひふの病気
- 参考:日本皮膚科学会 Q&A>日焼け Q3 UVBとUVAはどう違いますか?
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 紫外線の功罪 -ビタミンD3合成と光老化- 日皮会誌:130(9), 2031-2034, 2020
- スキンタイプの参考:スキンタイプの判定の仕方とレーザー治療での留意点 Bella Pelle 5(1), p26-29, 2020
選択肢1について。「日焼け」という日本語は曖昧で、sunburnを指すのかsuntanを指すのかはっきりしない(suntanの即時型黒化ならUVAが主原因のため本文章は誤りとなる)。
選択肢3について。上記Q&Aでは下記の記載がある
シミ、しわ、皮膚癌などの慢性皮膚障害(光老化)についても圧倒的にUVBの影響が強いのですが、UVAも皮膚の深く、真皮にまで到達するという点でUVAの作用も無視できません。
つまり下記のようになる
- (光老化の代表的症状である)solar elastosisの原因:UVA
- 皮膚癌まで含めた広義の光老化の原因:UVBの寄与度が高い
関連問題
- 2021 選択9 (UVAが関与する疾患:solar elastosis)
- 2019 選択11 / 2014 選択3 / 2013 選択6 (紫外線の波長・作用部位など)
- 2009 選択15 (日本人のスキンタイプⅢの反応)
選択問題32:解答 1
シラカンバやハンノキに対する花粉症があり、モモを食べた後口腔〜上咽頭に限局した症状をきたしていることから花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)を考える
原因抗原であるPR-10は熱や胃酸に対して不安定→1
口腔アレルギー症候群 OAS (花粉-食物アレルギー症候群 PFAS)
特定の花粉に感作された後、交差反応を示す食物を摂取することでアレルギー症状をきたす
消化・加熱により分解されるとアレルギー反応が起こらなくなるため、一般に症状は口囲に限局し加熱などの加工処理で摂取可能となることが特徴
代表的な花粉-食物の組み合わせ | ||
花粉 | 果物・野菜など | |
カバノキ科(シラカンバ・ハンノキ) | バラ科(リンゴ・モモ・サクランボ) | マメ科(大豆・ピーナッツ) |
ヒノキ科・スギ | ナス科(トマト) | |
イネ科(カモガヤ)・ブタクサ | ウリ科(メロン・スイカ) | |
ヨモギ | セリ科(セロリ・ニンジン) |
とくに一番上のカバノキ科-バラ科・マメ科の組み合わせはPR-10と呼ばれる蛋白が原因で、PFASの代表例
※アレルゲンコンポーネント検査:本題から外れるので詳しくはリンク先参照
本問題文中で取り上げられているものは下記の通りだが、いずれも保険適用ではない
コンポーネント名 | 由来 |
Aln g 1 | ハンノキ |
Bet v 1 | シラカンバ |
Mal d 1 | リンゴ |
Pru p 1 | モモ |
大豆のコンポーネント、Gly m 4もPR-10と交差反応し保険適用で測定可能なためPFASを疑う際はこれを測定するとよい
- 1・2. PR-10は熱に不安定で、胃酸で消化されやすい→加熱すれば食べられる、症状は(胃酸消化前の)口腔〜上咽頭中心
- 3. リンゴもPR-10を含み、また本例はMal d 1陽性のことから症状出現の可能性が高い
- 4. IgE抗体が原因、アレルゲンコンポーネント検査でもIgE抗体を測定している
- 5. PR-10は病原体の攻撃や環境ストレスによって、花粉や種子・果実などで産生される蛋白質
- 参考:食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版 第14章 食物以外の抗原感作による食物アレルギー
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 最新の知見から学ぶ食物アレルギー診療の基本 日皮会誌:132(13), 2809-2816, 2022
- 選択肢4・5の参考:食物アレルゲンコンポーネント コンポーネントを知るとアレルギーが面白い アレルギー 67(8), 996-1002, 2018
関連問題(食物アレルギー, PFAS)
- 2021 選択67 (アレルゲンコンポーネントについて)
- 2020 選択52 / 2019 選択64 / 2018 記述6 (PR-10によるPFASと原因樹木・コンポーネント)
- 2019 選択19 / 2016 選択53 (食物と原因アレルゲン)
選択問題33:解答 1
後天性免疫不全症候群(AIDS)と関連して生じる皮膚・粘膜症状を問う問題
遊走性紅斑はAIDSと関連しない→1
- 1. 遊走性紅斑:壊死性遊走性紅斑はグルカゴノーマ等の低栄養状態で見られ、慢性遊走性紅斑はライム病の症状
- 2. カンジダ症:AIDS患者に好発する。なおAIDS指標疾患には口腔や膣を含まない(食道や気管は含む)ので注意
- 3. 潰瘍性単純ヘルペス:1ヶ月以上持続し潰瘍を呈する単純ヘルペスはAIDS指標疾患の一つ
- 4. 好酸球性膿疱性毛包炎:免疫抑制関連型と呼ばれるタイプはAIDSに合併する
- 5. pruritic papular eruption(掻痒性丘疹):掻痒感の強い慢性痒疹様皮疹で、HIV患者にみられやすい
選択肢以外にはHHV-8によるKaposi肉腫や毛孔性紅色粃糠疹(Ⅵ型)、脂漏性皮膚炎もHIV/AIDSと関連が深い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p509(2・3・4)/146・567(1)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p818(2・3・4・5)/194(1)
関連問題
選択問題34:解答 2
ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)では約半数にBRAF V600E変異がみられる→2
難治性のLCHには(悪性黒色腫で行われる)BRAF/MEK阻害薬治療も試みられている
- 2. BRAF V600E変異:LCHの約半数でみられ、悪性黒色腫のBRAF変異でも多数を占める変異
- 3. BRAF V600K変異:悪性黒色腫の10%程度、非小細胞肺癌の約半数で見られるタイプの変異
- 4. CDKN2A遺伝子変異:家族性メラノーマで見られることのある遺伝子変異
- 5. MAP2K1(別名MEK1)変異:LCHの約20%でみられる。なおRASopathiesの一種、Cardio-facio-cutaneous(CFC)症候群の原因遺伝子の一つでもある
- 参考:小児慢性特定疾病情報センター > ランゲルハンス細胞組織球症
- 選択肢2・3の参考:メラノーマにおけるBRAF V600変異の検出 モダンメディア 61巻8号 2015 p238-242
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p574-575(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p585(4)/367(5)
関連:2018 選択68 (悪性黒色腫のBRAF変異で多い部位)
選択問題35:解答 3, 4
Sweet症候群に関する一般問題
疼痛を伴う隆起性紅斑が特徴で、骨髄異形成症候群等に合併する→3, 4
- 1. 中年に好発し、やや女性に多い(男女比1:1.1)
- 2. 発熱(febrile)や関節痛、"好中球(neutrophil)"増多が特徴※。好酸球増多が特徴なのは色素失調症(の初期)
- 3. 皮膚症状では疼痛を伴う隆起性紅斑が特徴で、顔面や四肢に好発する
- 4. 骨髄異形成症候群や白血病などの造血器腫瘍に合併しやすい
- 5. 組織では真皮の密な好中球浸潤が特徴だが、血管炎はない
※Sweet症候群はacute febrile neutrophilic dermatosisとも呼ばれる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p143(ALL)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p201(1・2・3・4)
関連問題
- 2014 選択5 (血液悪性腫瘍のデルマドローム)
- 2012 選択83 (Sweet症候群の別名)
- 2010 記述6 (臨床問題)
選択問題36:解答 4
ケラチンの発現部位を問う問題
表皮基底層で発現するケラチンはケラチン5/14→4
同部位をコードする遺伝子変異によって、単純型表皮水疱症を発症する
ケラチンの発現部位と関連疾患については下記参照
-
-
ケラチン 発現部位と先天性皮膚疾患 まとめ
続きを見る
- 1. ケラチン1/10:有棘細胞に発現しており、表皮融解性魚鱗癬の原因となる
- 2. ケラチン2/9:ケラチン9は掌蹠の有棘細胞に、ケラチン2は有棘層〜顆粒層に発現する
- 3. ケラチン3/12:角膜に発現し、Meesmann角膜ジストロフィの原因となる
- 4. ケラチン5/14:表皮基底層に発現する
- 5. ケラチン16/17:爪に発現し先天性爪甲肥厚症の原因となる。ケラチン17遺伝子変異では多発性脂腺嚢腫を合併する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8/385
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p11/521
関連:ケラチン発現部位の問題は複数あり、上記リンク先参照。2009 選択4はほぼ同一
選択問題37:解答 4
虫とそれによって生じる皮膚炎の関連を問う問題
アオカミキリモドキは水疱性皮膚炎をきたす→4
- 1. イエダニはネズミに寄生し、"非露出部の"下腹部・大腿内側・上腕内側などに症状をきたす
- 2. トコジラミ(カメムシの一種)は普段畳やベッドの隙間に生息し、夜間"露出部に"丘疹・結節をきたす
- 3. フタトゲチマダニはSFTS*や日本紅斑熱を媒介するマダニの一種。黒色分芽菌症は疣状皮膚炎をきたすことがある
- 4. カミキリモドキは水疱性皮膚炎をきたす。毒液(カンタリジン)が原因
- 5. アオバアリガタハネカクシは線状皮膚炎をきたす。体液(ペデリン)が原因で、手で払いのけようとした際に線状となる。疱疹状皮膚炎は類天疱瘡群の一つ(Duhring疱疹状皮膚炎)
*SFTS:重症熱性血小板減少症候群
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p567(2)/569(3)/563(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p940(4・5)/929(1)/916・932(3)
関連問題
- 2023 選択37 (虫と皮膚炎)
- 2021 選択40 / 2011 記述5 / 2009 選択26 (線状皮膚炎の原因:アオバアリガタハネカクシ)
- 2010 選択22 / 2016 選択27 (トコジラミ症 治療など)
選択問題38:解答 3
COVID-19の後遺症(Long COVID)として休止期脱毛症がみられる→3
休止期脱毛は可逆的変化であり、数ヶ月〜1年の経過で回復する
- 1・2. 牽引性/圧迫性脱毛症:牽引(ex. ポニーテール)や圧迫(ex. ヘルメットや全身麻酔下)などの慢性的な機械刺激による脱毛
- 3. 休止期脱毛:通常毛髪の10%程度を占める休止期の毛が、妊娠・ストレス等により異常に増えることで脱毛が生じる。原因が加わった成長期毛が移行するまで2〜4ヶ月のラグがある
- 4. 男性型・女性型脱毛症(AGA/FAGA):遺伝や男性ホルモン等の原因により、加齢とともに生じる脱毛症
- 5. トリコチロマニア:自ら毛を抜くことによる脱毛症。精神的要素が背景にあることが多く、学童期に好発
- 参考:CareNet > COVID-19患者の脱毛症、特徴が明らかに
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p369(3)/370(4)/371(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p755(1・2・3・5)/754(4)
選択問題39:解答 1
色素性蕁麻疹(肥満細胞症)では病変部を強くこすると膨疹が生じるDarier徴候が特徴→1
病変部の肥満細胞から、ヒスタミンが放出されるのが原因
- 1. ダリエ徴候は色素性蕁麻疹の所見。Darier病(ATP2A2遺伝子変異による角化症)とは関係ないので注意
- 2. 日光蕁麻疹の作用波長は"可視光線"が最多。UVAが原因となるのは薬剤性光線過敏症など
- 3. 遺伝性血管性浮腫は外傷や精神的ストレスを契機に血管性浮腫を繰り返す
- 4. 接触蕁麻疹は通常、接触後10〜15分で膨疹をきたし2時間以内に消退する(ex. 加水分解コムギ石鹸使用初期に生じる)。通常のじんま疹は24時間以内に消退するとされるが、血管性浮腫は2〜3日持続する
- 5. "(遺伝性)血管性浮腫"はブラジキニンが病態に関与するため、ブラジキニンB2受容体拮抗薬のイカチバントが発作時治療に用いられる※
※一方ACE阻害薬はキニナーゼⅡを阻害することでブラジキニンを増加させ、薬剤性血管性浮腫の原因となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p77・441(1)/232(2)/133(3・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p104・698(1)/175(2・5)/176(4)/177(5)
関連問題
- 2015 選択35 / 2010 選択53 (肥満細胞症の臨床問題)
- 2011 選択5 / 2009 選択16 (日光蕁麻疹の原因波長)
- 2022 選択60 / 2021 選択64 / 2020 選択87 / 2016 選択51 (血管性浮腫 病態, 治療)
遺伝性血管性浮腫はブラジキニン受容体拮抗薬(2018)の他、カリクレイン阻害薬(2021)等新薬が多く近年頻出
選択問題40:解答 1
アトピー性皮膚炎の治療について問う問題
デルゴシチニブ(コレクチム®)の塗布量は1日2回、1回5g(=1日10g)まで→1
アトピー性皮膚炎 非ステロイド外用薬 使用上限
タクロリムスとデルゴシチニブには上限があり、ジファミラストは上限はないが使用量目安がある
商品名 | 一般名 | 用法用量 |
プロトピック® | タクロリムス | 5g/回まで, 1日1 or 2回 |
コレクチム® | デルゴシチニブ | 5g/回まで, 1日2回 |
モイゼルト® | ジファミラスト | なし※, 1日2回 |
※目安は皮疹0.1m2あたり1g→成人で全身として17g/回
- 1. デルゴシチニブはJAKファミリーのキナーゼすべてを阻害する外用薬で、使用量は1回あたり5gまで
- 2. デュピルマブ(デュピクセント®)導入後6ヵ月を目安として寛解が維持されていれば、投与の一時中止を検討する(寛解維持に投与継続が必要であれば、継続投与も可能)
- 3. 難治例では元々の光線療法とシクロスポリン内服に加えて、2021年度版でデュピルマブとバリシチニブ(オルミエント®)が追記された※
- 4. シクロスポリンの連続投与は12週間以内で、再投与が必要な場合は2週間以上休薬する。8週間投与で改善が得られない場合は中止
- 5. 診断・重症度評価→寛解導入となるが、上手くいかなかった場合は外用療法の適正化・診断と重症度の再確認が必要
※デュピルマブ注射・バリシチニブ内服・デルゴシチニブ外用の3つは、推奨度1, エビデンスレベルAの(最も高い)治療として2021年度版から追加になっている
- 参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021のp2722(1)/2730(2)/2724(4)/2749(図31)
関連問題
- 2021 選択25 (デルゴシチニブ軟膏 外用部位や量, 機序)
- 2018 選択21 / 2017 選択23 / 2013 選択22 (ガイドラインで推奨度の高い治療/除外すべき疾患/診断基準)
- 2014 選択43 / 2012 選択16 (シクロスポリン内服期間など)
選択問題41:解答 5
乳児で眼に近く、視野障害をきたし得る苺状血管腫

参考文献より引用, 血管腫が大きく眼部を覆っている
機能障害の危険性や整容面で問題となる場合はプロプラノロール内服が第一選択→5
- 1. 経過観察:機能異常や整容面で問題のない病変は自然消退を待つ方針(wait and see policy)が取られる
- 2. 切除手術:治療選択肢の一つだが、初期治療として他選択肢より優先されることはない
- 3. レーザー照射:Hbに吸収される色素(Dye)レーザーが用いられる場合があるが、本例では増殖速度が非常に早く適応とはならない
- 4. ステロイド内服:プロプラノロールと同等の効果を有するとされるが、副作用の面で劣るため推奨度2, エビデンスBとなっている
- 5. プロプラノロール(ヘマンジオル®シロップ)内服:積極的治療の場合第一選択(推奨度1, エビデンスA)だが、副作用に注意が必要※
※プロプラノロールはβブロッカーのため、低血糖や低血圧が生じる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p421
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p679
- 参考:血管腫・血管奇形・リンパ管奇形 診療ガイドライン 2017のp127-, 224
- 参考・図引用:Propranolol for Severe Hemangiomas of Infancy. N Engl J Med. 2008 Jun 12;358(24):2649-51.
関連問題
- 2020 選択67 (乳児血管腫の治療)
- 2019 記述14 (プロプラノロールの重大な副作用:低血糖・低血圧・徐脈)
- 2010 選択38 (レーザーの種類と対象疾患:苺状血管腫はQスイッチではない)
選択問題42:解答 4, 5
色素失調症に関する一般問題
NEMO遺伝子変異が原因で、出生早期の小水疱が特徴→4, 5
色素失調症 (Bloch-Sulzberger症候群)
NEMO/IKBKG遺伝子変異によるX染色体優性遺伝疾患(→男児は胎生致死のため95%は女児)
Blaschko線に沿い、下記の特徴的経過をとる皮疹がみられる
- 1. 合併症として"眼病変"'(網膜剥離など)が30%に生じる。肺病変は一般的でない
- 2. 患者の95%以上は"女子(女児)"。男子は胎生致死のため、出生例はモザイクやクラインフェルター症候群(XXY)など
- 3. 血液および組織での"好酸球"増多が特徴。Sweet症候群では血液/組織での好中球増多が特徴
- 4. NEMO/IKBKG遺伝子変異が原因の、X染色体優性(顕性)遺伝疾患
- 5. 出生早期の水疱期では紅斑を伴う小水疱が特徴
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p398
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p588
関連問題:下記参照
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色素失調症 (Bloch-Sulzberger症候群) まとめ
続きを見る
選択問題43:解答 3, 5
「温感と触覚の受容体の発見」で2021年にノーベル生理学医学賞を受賞したのはDavid Jay JuliusとArdem Patapoutian→3, 5
- 1. 眞鍋淑郎:「複雑系である地球気候システムのモデル化による地球温暖化予測」で2021年ノーベル物理学賞を受賞
- 2. Benjamin List:「不斉有機触媒の開発」で2021年ノーベル化学賞を受賞
- 3・5. David Jay Julius/Ardem Patapoutian:Julius氏はカプサイシン受容体TRPV1の、Patapoutian氏は機械的刺激に反応するPiezoチャネルの研究が主業績
- 4. David Edward Card:労働者の最低賃金と雇用の関係に関する研究等で2021年ノーベル経済学賞を受賞
- 選択肢3・5の参考:2021年ノーベル生理学・医学賞:温度受容体と触覚受容体の発見で米の2氏に - 日経サイエンス
- 選択肢1の参考:特集記事 ノーベル物理学賞2021受賞決定 真鍋淑郎 博士 - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部
- 選択肢2の参考:ベンジャミン・リスト特任教授 ノーベル化学賞受賞! ー報道関係者向け説明会と、祝う会を開催 | ノーベル賞 | リサーチタイムズ
- 選択肢4の参考:2021年ノーベル経済学賞 社会の変化と雇用の関係など調べた3人
関連問題(ノーベル賞)
- 2023 選択30 / 2022 選択58 / 2021 選択92 / 2017 選択93 (日本人ノーベル医学生理学賞受賞者と業績内容)
- 2012 記述9 (2011年ノーベル賞 自然免疫活性化と獲得免疫における樹状細胞の役割)
選択問題44:解答 5
爪白癬治療の薬価を問う問題
エフィナコナゾール(クレナフィン®)は月2本の場合13.0万円で最も高額→5
2022年版 爪白癬治療 薬価比較
外用薬は月2本x1年の場合で記載した。表内では先発品の価格で比較
爪白癬治療薬 | 2022年度 | 必要量 | 合計薬剤費(円) |
テルビナフィン
(ラミシール®) |
100.9円/1錠 | 168錠 | 16,951.2※ |
イトラコナゾール
(イトリゾール®) |
189.2円/1CP | 168CP | 31,785.6※ |
ホスラブコナゾール
(ネイリン®) |
814.9円/1CP | 84CP | 68,451.6 |
ルリコナゾール 3.5g
(ルコナック®) |
816.1円/g (2,856.35円/本) |
24本 | 68,552.4 |
エフィナコナゾール 3.56g
(クレナフィン®) |
1,523.3円/g (5,422.9円/本) |
24本 | 130,150.8 |
※これらは後発品が存在し、この場合下記のようになる
- テルビナフィン錠(67.7円/1錠)→11,373.6円
- イトラコナゾール50mg(90.1円/1CP)→15,136.8円
なお外用薬は月1本1年(12本)計算の場合、ネイリン®>クレナフィン®>ルコナック®となる
- 参考:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和4年4月20日適用)|厚生労働省 ※2022年版 本問出題時
関連問題
- 2021 選択32 (最も安価なのはテルビナフィン)
2021年の問題と同様の月1本計算で「最も高価なもの」を問うとネイリン®となってしまう。ただ爪白癬治療の原則は内服薬というガイドラインの姿勢から、ネガティブな印象を与えないように本年度の問題では月2本計算としたのではないかな?と感じました
選択問題45:解答 5
慢性アルコール中毒による低栄養状態で、皮膚炎・下痢・認知機能障害の3つのDが見られることからペラグラを考える
ナイアシン欠乏が原因のため補充が必要→5
ペラグラ
ナイアシン(ニコチン酸)欠乏が原因
主要症状は"3つのD"と呼ばれる
- 皮膚炎 (dermatitis)
- 下痢 (diarrhea)
- 認知症, 精神神経症状 (dementia)
皮膚炎は光線過敏症の形をとり、前頚部に見られる皮疹は「カザールの首飾り」と称される
- 1. 亜鉛:欠乏症は下痢・皮膚炎・脱毛が3主徴。光線過敏症ではなく四肢末端・開口部の皮膚炎が特徴のため合致しない
- 2. 葉酸:欠乏で巨赤芽球性貧血をきたす
- 3. ビオチン:欠乏で亜鉛欠乏症に類似した顔面間擦部の湿疹病変をきたす
- 4. ビタミンC:膠原線維合成に重要で、欠乏症(壊血病)は紫斑・出血傾向・毛孔性角化をきたす
- 5. ナイアシン:欠乏でペラグラをきたし、低栄養状態に合併する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p327(3・5)/323(1)/328(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p479(2・3・5)/470(1)/243・478(4)
関連問題
- 2023 選択57 / 2021 選択72 / 2009 選択43 (ペラグラの原因, 症状など)
- 2019 選択70 / 2018 選択77 / 2011 選択60 (亜鉛欠乏症の症状)
- 2014 選択50 (壊血病の症状)
選択問題46:解答 4
tuberous sclerosis complex(結節性硬化症)の皮膚病変を問う問題
下記4つ→4
- angiofibroma (血管線維腫):思春期に増加する鼻部周囲の腫瘍で、mTOR阻害薬シロリムスゲルが保険適用
- hypomelanotic macule (葉状白斑):乳幼児期から見られ、早期診断に重要
- shagreen patch (粒起革様皮膚):腰部や殿部で扁平隆起性病変が生じて融合する。結合織母斑の一つ
- ungual fibroma (爪囲線維腫, Koenen腫瘍):足趾爪周囲に好発する被角線維腫
glomeruloid hemangioma (糸球体様血管腫):POEMS症候群で多発する1cm以下の血管腫
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p394/425(POEMS)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p574/685(POEMS)
関連問題(結節性硬化症)
- 2023 選択8 (50歳以上での死因)
- 2022 選択73 / 2018 選択73 / 2015 選択49 / 2010 選択43 (症状や出現順, 原因蛋白など)
- 2021 記述9 (シロリムスゲル)
- 2011 記述10 (ケーネン腫瘍)
選択問題47:解答 5
表皮基底膜部の電子顕微鏡像を問う問題
写真では基底膜と基底板の間に矢印があり、透明帯(lamina lucida)およびそこに存在するanchoring filaments(係留細線維)を指している→5
名前が似ているanchoring fibril(係留線維)は基底板と真皮に存在する膠原線維を繋ぐ構造なので勘違いしないよう注意

参考文献より引用, HD=ヘミデスモソーム。collagenは真皮コラーゲンに該当
- 1. デスモソーム:膜貫通蛋白デスモグレイン1/3や細胞膜内のデスモプラキン等から構成される有棘細胞間の構造。基底膜部には存在しない
- 2. 係留線維(anchoring fibrils):矢印だいぶ下のループ構造。7型コラーゲンから構成され、基底板と真皮膠原線維(1/3型コラーゲン)を結合する
- 3. ヘミデスモソーム:矢印直上。17型コラーゲン(BP180)やBP230から構成される
- 4. 基底膜(plasma membrane):光学顕微鏡における表皮と真皮の境界部を指す名称。これを電子顕微鏡で観察すると、ヘミデスモソーム・透明帯・基底板などに分けられる
- 5. 係留細線維(anchoring filaments):透明体に存在する構造物で、ヘミデスモソームと基底板を結合する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p5-7
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p7-10
- 参考・図引用:Transmission electron microscopy for the diagnosis of epidermolysis bullosa. のFigure2
- 参考:YouTube ishida-yamamoto akemiチャンネル>Tips for electron microscopy of dermo-epidermal junctions
動画では電顕写真で一つ一つの構造が解説されているので、要参照
関連問題
選択問題48:解答 4, 5
アトピー性皮膚炎の病態と関連するサイトカインを問う問題
病変部表皮細胞(ケラチノサイト)から分泌されるのはIL-33とTSLP→4, 5

参考文献より引用, 青色で囲った部分がケラチノサイトより分泌されるサイトカイン(筆者強調)
その他のIL-4/13/31は2型サイトカインであり、こちらもアトピー性皮膚炎と関連するがTh2細胞等から分泌される。こちらはそれぞれに対する生物学的製剤も使われる
詳細は下記まとめを参照
-
-
アトピー性皮膚炎 サイトカインと生物学的製剤、JAK阻害薬について
続きを見る
- 1・2. IL-4・IL-13:Th2細胞から分泌され、搔痒感や角層におけるフィラグリン発現低下に関与する
- 3. IL-31:Th2細胞から分泌され、とくに搔痒感に強く関与する
- 4・5. IL-33・TSLP:ケラチノサイトから分泌され、Th2細胞を活性化させる作用を持つ
簡略化すると下記のような流れ
ケラチノサイトからIL-33が分泌→Th2細胞(IL-33受容体を持つ)から2型サイトカインが分泌→掻痒感が引き起こされる
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p151
- 参考・図引用:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021のp2693-2695
関連問題
※Th2細胞が分泌するサイトカインについても出題あり、そちらはまとめ記事を参照
選択問題49:解答 1
成人T細胞白血病治療中患者にみられた顔面の褐色斑。
組織では空胞細胞(コイロサイトーシス)が見られる
HPV-3が検出されており、扁平疣贅の診断→1

参考サイトより引用
HPVの型と関連疾患については下記参照
-
-
HPV(ヒトパピローマウイルス) 型と関連疾患 まとめ
続きを見る
扁平疣贅
ウイルス性疣贅の一種で、ヒトパピローマウイルス(HPV)-3や10が原因となる
青年期女子の腕や顔面に好発し、扁平〜やや隆起した褐色丘疹をきたす
- 組織:表皮肥厚や角質増生のほか、有棘層上層〜顆粒層の空胞細胞がみられる
- 治療:液体窒素による凍結療法(顔面は行わない)やヨクイニン内服。自然消退もあり
- 1. 扁平疣贅:HPV-3が検出されていることがポイント
- 2. 尋常性疣贅:HPV2/27/57などが検出される。組織では乳頭腫症(papillomatosis)が特徴
- 3. 脂漏性角化症:顔面に好発し視診状は類似するがHPVとは関連しない。組織では偽角化嚢腫※が特徴
- 4. ボーエン様丘疹症:HPV16が検出される。外陰部に好発し、視診上は尖圭コンジローマに、組織はBowen病に類似する
- 5. 疣贅状表皮発育異常症:HPV-5が検出される。HPVに対する先天的な免疫異常(常染色体劣性)から、露光部で扁平疣贅状病変が多発しやがて発癌をきたす疾患
※偽角化嚢腫はダーモスコピーでのmultiple milia-like cystsに対応する所見
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p494/496(1)/492(2)/406(3)/497(4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p804/807(1)/804(2)/595(3)/808(4・5)
- 図引用:Verruca Plana Picture Image on MedicineNet.com
関連問題
選択問題50:解答 3
アポクリン発汗に関わるのはアドレナリン→3
(→多汗症治療も抗コリン薬を用いる)
エクリン汗腺 アポクリン汗腺 比較
汗腺 | エクリン腺 | アポクリン腺 |
分布 | 掌蹠・腋窩・前額部 | 外陰部・乳輪部・腋窩 |
神経伝達物質 | アセチルコリン | アドレナリン ※性ホルモンにより調節 |
開口部位 | 表皮に直接 | 毛孔部 (脂腺よりやや上) |
関連疾患 | 原発性局所多汗症 エクリン汗孔腫 |
腋臭症(ワキガ) 乳房外Paget病 |
分泌形式 | 開口分泌 | 断頭分泌(アポクリン分泌) |
- 1. オキシトシン:下垂体後葉から分泌され、産後の射乳や子宮平滑筋収縮に関与する
- 2. ドパミン:カテコラミンの一種(ノルアドレナリンの前駆物質)で、血管収縮作用等を持つ
- 3. アドレナリン:カテコラミンの一種で、アポクリン腺の神経伝達物質
- 4. エンケファリン:内因性オピオイドの一種で、鎮痛作用と関連する
- 5. アセチルコリン:エクリン腺の神経伝達物質。通常は副交感神経の神経伝達物質として作用する※
※汗腺は交感神経支配だが(→緊張して交感神経優位になると発汗)、神経伝達物質は例外的にアセチルコリン
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p26(3)/25(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p22(5)
関連問題
選択問題51:解答 1
中高年男性の頭部腫瘍の病理組織
境界明瞭な皮内腫瘍で、脂腺への分化が見られることから脂腺腫(sebaceoma)の診断→1
脂腺腫(sebaceoma)
顔面・頭部に単発し、黄色調の結節としてみられる
組織では腫瘍細胞が基底細胞癌(BCC)類似の胞巣状増殖をきたすが、一部で明るい胞体を持つ脂腺細胞への分化が見られる
一方本疾患と名前が類似しているsebaceous adenoma(脂腺腺腫)は成熟した脂腺細胞から構成され、全体構築が正常の脂腺小葉に類似することが特徴
- 参考文献より引用, 脂腺腫
- 参考文献より引用, 脂腺腺腫
(やや乱暴ではあるが)パッとみて脂肪成分が圧倒的多数を占めるのが脂腺腺腫、強拡大で脂腺分化が見られる程度であれば脂腺腫と言える
DNAミスマッチ修復遺伝子MSH-1/2遺伝子変異が原因のMuir-Torre症候群では、皮膚にこれらの脂腺系腫瘍が多発することが知られる
- 1. Sebaceoma(脂腺腫):一部で脂腺分化が見られる
- 2. Trichoblastoma(毛芽腫):fibroepithelial unit*がBCCとの鑑別点
- 3. BCC(基底細胞癌):ムチン産生による周囲との裂隙形成が特徴
- 4. Sebaceous adenoma(脂腺腺腫):主に成熟した脂腺から構成され、中高年の顔面や頭皮に好発する
- 5. Sebaceous carcinoma(脂腺癌):脂腺分化を示す悪性腫瘍で、境界不明瞭な腫瘤や核分裂像が特徴。従前は眼瞼発生例がほとんどとされてきたが、国内では眼瞼外が多いという報告もある
選択肢1〜3はいずれも腫瘍細胞が胞巣状に増殖する
*fibroepithelial unit:腫瘍胞巣周囲に膠原線維が密着し、その外側に裂隙がみられる現象(BCCでは膠原線維がなく腫瘍細胞と裂隙が直接接する)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p412(1・4)/410(2)/444(3)/455(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p614(1・4)/607(2)/641(3)/653(5)
- 参考(BCCと毛芽腫):新・皮膚科セミナリウム 毛包系腫瘍の病理 -最近の話題 日皮会誌:128(13), 2815-2822, 2018
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 毛包脂腺系腫瘍 日皮会誌:130(1), 29-38, 2020
- 参考・画像引用:皮膚科セミナリウム 第32回 表皮・毛嚢・脂腺系 日皮会誌:117(14), 2445-2451, 2007
下記書籍も参考(上記セミナリウムの著者)
関連問題
選択問題52:解答 3
マムシ咬症に関する一般問題
肘関節または肘関節までの腫脹はGradeⅢに分類される→3
マムシ咬傷 Grade分類
Grade | 発赤・腫脹部位 |
Ⅰ | 咬まれた局所のみ |
Ⅱ | 手関節または足関節まで |
Ⅲ | 肘関節または膝関節まで |
Ⅳ | 1肢全体 |
Ⅴ | それ以上 |
- 1. 南西諸島・沖縄に生息するのはハブ。マムシは農村地域を中心に幅広く分布する
- 2. 抗毒素血清は"咬傷局所を避けた"皮下・静脈内への注射や点滴静注を行う
- 3. 肘・膝関節までの腫脹はGradeⅢ
- 4. 重症例では急性腎不全やDIC・心筋変性のため死亡する(マムシ毒による横紋筋融解)
- 5. 全身症状として複視(眼筋麻痺)や呼吸困難、検査所見としては肝腎機能障害やCK高値が重要。内耳症状は特徴的ではない
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p951-952(1・4・5)
- 参考:マムシ咬傷67例の検討 日農医誌 68(4), p468-474, 2019
- 選択肢2の参考:乾燥まむしウマ抗毒素 添付文書
選択問題53:解答 2
ヒドロキシクロロキン(プラケニル®)投与量は身長で決定される→2
身長から理想体重を算定し、それによって内服量が異なる
※脂肪組織に貯まりづらく、実体重計算は肥満患者で過量投与となる(網膜障害等の副作用リスクが上がる)ため
ヒドロキシクロロキン(プラケニル®) 投与量
女性の理想体重(kg)= (身長* −100) × 0.85
男性患者の理想体重(kg)= (身長*−100) × 0.9
*cm
- 理想体重 31〜46kg:1日1回1錠(200mg)
- 理想体重 46〜62kg:1日1回1錠(200mg)と1日1回2錠(400mg)を1日おき
- 理想体重 62kg〜:1日1回2錠(400mg)
- 1. 体重:イベルメクチン(ストロメクトール®)は体重で内服量を決定し、15kg未満では投与禁
- 2. 身長:ヒドロキシクロロキンは身長に基づく理想体重で内服量を決定する
- 3・4. 視力・BMI:薬剤投与量の目安とはならない
- 5. クレアチニンクリアランス(CCr):ヘルペス治療に用いる抗ウイルス薬(アメナメビル以外)はCCrで投与量を決定する
- 参考:プラケニル 添付文書
関連問題
選択問題54:解答 1, 4, 5
第4〜5趾にかけて黒色壊死を伴う潰瘍がみられ、既往歴から糖尿病性足潰瘍と診断できる
2週間と亜急性の経過で左足の発赤・腫脹がみられ、全身状態良好なことから現時点では重症感染症を示唆する所見は乏しい
この症例で早期に行うべき対応を問う問題
- 1. 血流評価:末梢動脈の血流不全があるとデブリードマンにより壊死や壊疽が拡大する可能性があるため、血流評価を先行することが望ましい
- 2. LRINEC score:壊死性筋膜炎の早期診断に有用なスコアだが、本症例は亜急性の経過であり積極的に疑わない
- 3. デブリードマン:壊死組織の除去は必須だが、上述の理由から1の後で行う
- 4. 細菌培養:細菌感染の有無を診断するため、血液検査や画像所見と併せて必要
- 5. 高血糖状態は局所の創傷治癒阻害につながるため、血糖コントロールが必要
糖尿病性足潰瘍では血流評価→デブリとなる一方、急性感染症である壊死性筋膜炎では早期のデブリードマン/試験切開が重要となる
本例は経過が比較的長いことから、可及的なデブリードマンよりはまず血流評価を優先することが妥当と考えられ、選択肢3より1を優先とした
- 参考:糖尿病性潰瘍・壊疽ガイドライン 日皮会誌:122(2), 281-319, 2012のCQ10(1・3)/CQ4(4)/CQ18(5)
関連問題
- 2011 選択44 (血流障害+の糖尿病性足潰瘍では早期のデブリを避ける)
- 2020 選択32 / 2014 選択81 / 2011 選択30 / 2009 選択65 (壊死性筋膜炎で必要な検査処置)
選択問題55:解答 2
サビーン®の適応はアントラサイクリン系抗がん剤で、ドキソルビシンが該当→2
トポイソメラーゼⅡを阻害する作用を持ち、血管外漏出後6時間以内に可能な限り速やかに投与を開始する
アントラサイクリン系抗がん剤
- ダウノルビシン(ダウノマイシン®)
- ドキソルビシン(アドリアシン®)/リポソーマルドキソルビシン(ドキシル®)
- エピルビシン(ファルモルビシン®)
- イダルビシン(イダマイシン®)
- アムルビシン(カルセド®)
などが代表
- 1. シスプラチン:プラチナ系
- 2. ドキソルビシン:アントラサイクリン系
- 3. ビンクリスチン:ビンカアルカロイド系
- 4. パクリタキセル:タキサン系
- 5. ブレオマイシン:抗がん抗生物質
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p224
- 参考:サビーン 添付文書
- 参考:日経メディカル 抗癌剤の薬理作用
関連問題
選択問題56:解答 4
若年男性で、皮膚の過伸展性や易出血性をきたしておりEhlers-Danlos症候群の診断→4
身長は成人男性の平均程度で四肢骨延長、毛髪異常がないことから他の遺伝性結合組織疾患は否定的
Ehlers-Danlos症候群
真皮コラーゲン(Ⅰ・Ⅲ・Ⅴ型)をコードする遺伝子変異により発症し、多くは常染色体優性遺伝形式をとる
代表的な症状は下記3つ
- 皮膚の過伸展性
- 易出血性 (心血管異常)
- 靱帯や関節の可動性亢進 (易脱臼)

参考文献より引用, 皮膚の過伸展性がみられる
臨床症状により血管型・古典型などに分類される。Ⅲ型コラーゲンの異常による血管型は重症例が多い
穿孔性皮膚症の一つ蛇行性穿孔性弾力線維症を合併することがある
- 1. Cutis laxa:先天性/後天性に弾力線維に異常をきたして皮膚が弛む症候群(血管病変はない)。XRのものは銅輸送関連蛋白の異常が報告されている
- 2. Menkes病:銅吸収の先天異常疾患(XR)で、出生時からの色素減少(メラニンの合成に銅が必要)やkinky hairと呼ばれる節状の毛髪を生じる
- 3. Marfan症候群:フィブリン異常による遺伝性疾患(AD)で、高身長や四肢骨長(両手を横に広げた長さarm spanが身長より長い)がみられる
- 4. Ehlers-Danlos症候群:皮膚弛緩と易出血性の2つが見られることから最も疑う
- 5. 弾性線維性仮性黄色腫:ABCC6遺伝子変異による疾患(AR)で弾性線維の変性と石灰沈着をきたす。皮膚以外に眼・心血管病変が特徴。また皮膚症状は通常幼児期には見られない
*AD:常染色体優性(顕性)遺伝形式, AR:常染色体劣性(潜性)遺伝形式, XR:X連鎖劣性遺伝形式
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p351(4)/325(2)/352(3)/353(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p494(4)/492(1)/764(2)/490(3)/493(5)
- 参考・画像引用:Ehlers-Danlos syndrome: how to diagnose and when to perform genetic tests Arch Dis Child. 2015 Jan;100(1):57-61.
関連問題(Ehlers-Danlos症候群)
選択問題57:解答 1, 5
好塩基球に関する一般問題
末梢血中に存在し、トルイジンブルー染色で赤紫色に染まる顆粒を持つ→1, 5
好塩基球と肥満細胞
好塩基球と肥満細胞はともに細胞内にヒスタミンなどの顆粒を持ち、細胞表面にIgE受容体を発現するという共通項がある
一方で違いもある
好塩基球 | 肥満細胞 | |
末梢血中 | 存在する | 存在しない(組織で分化する) |
c-kit受容体 | 発現していない | 強く発現 |
分裂・増殖 | - | + |
寿命 | 数日 | 数ヶ月 |
- 1. 末梢血中に存在し血算でも測定できる(BASO)。通常末梢血白血球の1%程度
- 2. c-kit受容体が陽性なのは肥満細胞※
- 3. 好塩基球の寿命は数日、肥満細胞は数ヶ月(≒60日)
- 4. 好塩基球・肥満細胞ともに5-10μm程度
- 5. 細胞内の顆粒はトルイジンブルー染色で赤紫色に染まる(異染性)を示す。肥満細胞も好塩基球も顆粒を持つので、染まり方も同じ
※肥満細胞増殖にはc-kitのリガンドであるStem cell factorが不可欠。また肥満細胞症ではc-Kit遺伝子の体細胞変異が見られる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p17/33-34
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p36
- 参考:皮膚科セミナリウム 第66回 皮膚の免疫学 -肥満細胞と好塩基球 日皮会誌:120(11), 2171-2174, 2010
関連問題
選択問題58:解答 3
大村智氏が関わった薬剤はイベルメクチン(ストロメクトール®)
皮膚科領域では疥癬に保険適用→3
COVID-19に有効という考えから、適応外使用される例が2021年問題となった。
医師主導治験等も行われていたが、プラセボ投与群との統計学的有意差は認められなかったと結論されている
日本人ノーベル賞受賞者 業績(医学・生理学賞)
2023年現在、日本人のノーベル医学・生理学賞受賞者は5名
氏名 | 業績 | 受賞年 |
本庶 佑 | ニボルマブ(オプジーボ®) 免疫チェックポイント阻害薬 |
2018 |
大隅 良典 | オートファジー機構の解明 | 2016 |
大村 智 | イベルメクチン(ストロメクトール®) 線虫(寄生虫)治療薬 |
2015 |
山中 伸弥 | iPS細胞 | 2012 |
利根川 進 | 抗体多様性の原理 | 1987 |
関連問題
- 2022 選択43 (2021年ノーベル医学生理学賞受賞者)
- 2023 選択30 / 2021 選択92 / 2017 選択93 (日本人ノーベル賞受賞者の業績)
- 2020 選択34 / 2019 選択47 / 2018 選択32 / 2017 選択36 / 2016 選択25 / 2013 選択31 (イベルメクチンの対象患者, 投与量等)
選択問題59:解答 4
背部に生じた色素沈着を伴う潰瘍であり、慢性放射線皮膚炎を考えた問診が必要→4
IVR後の慢性放射線皮膚炎
医原性疾患の一つで、治療に伴う放射線曝露が原因となる
循環器領域での冠動脈造影(CAG)や経皮的冠動脈形成術(PTCA)は治療に長時間を有することから報告が多い
- 放射線治療〜皮膚障害までの期間は2〜10年とされる
- 部位は25/27例が背部※
- 鑑別疾患に固定薬疹や限局性強皮症がある
- 治療:潰瘍化した場合保存的治療での治癒は困難で、切除・植皮術が行われることが多い

参考文献より引用, 背部の四角い潰瘍
※IVRで放射線を当てる際の体位はRAO30°(LCX治療時)やLAO60°(RCA治療時)が多く、いずれも背部から照射を受ける
- 1. 薬剤:固定薬疹では水疱や色素沈着をきたすが、好発部位は四肢や粘膜移行部
- 2. 外傷・熱傷の既往歴:有棘細胞癌の母地として重要だが、一般に背部に好発することはない
- 4. カテーテル検査:背部の難治性皮膚潰瘍では鑑別に上げる必要がある
- 5. 湿布:ケトプロフェンやピロキシカムが代表例で、光接触皮膚炎の形をとることが多い(背部は非露光部)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p225(4)/154(1)/230(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p284(4)/292(1)/276(5)
- 参考:IVR(Interventional Radiology)後に生じた慢性放射線皮膚炎の2例 日皮会誌:115(9), 1321-1325, 2005
- 参考:心臓カテーテル治療施行後に生じた放射線皮膚炎の1例 臨床皮膚科73(6), 391-395, 2019
- 参考・図引用:STROBE--Radiation Ulcer: An Overlooked Complication of Fluoroscopic Intervention: A Cross-Sectional Study. Medicine (Baltimore). 2015 Dec;94(48):e2178.
関連問題
- 2012 選択17 (★ほぼ同一問題★)
選択問題60:解答 4
イカチバント(フィラジル®)のターゲットはブラジキニンB2受容体→4
遺伝性血管性浮腫の治療薬として用いられる
血管性浮腫 病態と治療薬
血管性浮腫は遺伝性のものと、非遺伝性(薬剤性)のものに大きく分けられる
いずれもブラジキニン過剰産生が病態
- 遺伝性:C1-INH(インヒビター)の異常*
- 薬剤性:ACE阻害薬により代謝酵素キニナーゼⅡが阻害され、ブラジキニンが代謝されない
*低下しない型(Ⅲ型)も存在する
発作時治療
急性発作時の治療薬は下記がある
作用機序 | 一般名 | 商品名 | 投与経路 | 発売年 |
ブラジキニンB2受容体拮抗薬 | イカチバント | フィラジル® | 皮下注 (自己注可) |
2018 |
C1-INH欠損/機能不全を補う補充療法 | C1-INH製剤 | ベリナート® | 静注 | 1990
(侵襲を伴う処置前の発症抑制は2017) |
抗ヒスタミン薬・ステロイド薬は無効で、エピネフリンも多くの場合無効
長期予防
長期予防薬は近年複数の新薬が発売されている
作用機序 | 一般名 | 商品名 | 投与経路 | 発売年 |
C1-INH欠損/機能不全を補う補充療法 | C1-INH製剤 | ベリナート®※ | 皮下注(自己注可) | 2022 |
カリクレイン*阻害 *ブラジキニン産生に関わる |
ラナデルマブ | タクザイロ® | 皮下注(病院で投与) | 2022 |
ベロトラルスタット | オラデオ® | 内服 | 2021 |
※長期予防の場合はベリナート®皮下注2000であり、急性発作時/短期予防の治療とは製剤が異なる
その他トラネキサム酸やダナゾール(アンドロゲン製剤)も用いられる
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p177
- 参考:遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE) 診療ガイドライン 改訂2019年版
- 参考:マルホ皮膚科セミナー 2023/6/19 遺伝性血管性浮腫 Overview
関連問題
- 2024 選択30 / 2023 選択32 / 2022 選択39 / 2016 選択51 / 2012 選択51 / 2009 選択61 (血管性浮腫の原因, 病態など)
- 2021 選択64 / 2019 選択63 (急性発作時の治療)
- 2020 選択87 (ACE阻害薬の作用部位)
選択問題61〜90は下記
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令和4(2022)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90
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