日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和6(2024)年度の解答解説を作成しました
見出しから各問題へ飛べます
誤字脱字ご意見などあればコメント・右のフォーム・Twitterなどでご連絡ください
- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
見出し
- 1 令和6年度(2024年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜30
- 1.1 選択問題1:解答 2
- 1.2 選択問題2:解答 3
- 1.3 選択問題3:解答 2
- 1.4 選択問題4:解答 5
- 1.5 選択問題5:解答 1, 3
- 1.6 選択問題6:解答 5
- 1.7 選択問題7:解答 4
- 1.8 選択問題8:解答 3
- 1.9 選択問題9:解答 2, 4
- 1.10 選択問題10:解答 5
- 1.11 選択問題11:解答 3
- 1.12 選択問題12:解答 5
- 1.13 選択問題13:解答 1, 2
- 1.14 選択問題14:解答 5
- 1.15 選択問題15:解答 1
- 1.16 選択問題16:解答 5
- 1.17 選択問題17:解答 3, 4, 5
- 1.18 選択問題18:解答 2
- 1.19 選択問題19:解答 1, 5
- 1.20 選択問題20:解答 2
- 1.21 選択問題21:解答 3
- 1.22 選択問題22:解答 5
- 1.23 選択問題23:解答 5
- 1.24 選択問題24:解答 2, 4
- 1.25 選択問題25:解答 1
- 1.26 選択問題26:解答 2, 3
- 1.27 選択問題27:解答 2
- 1.28 選択問題28:解答 2, 4
- 1.29 選択問題29:解答 3
- 1.30 選択問題30:解答 1, 2, 4
令和6年度(2024年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜30
選択問題1:解答 2
日本人アトピー性皮膚炎患者のうち、フィラグリン(FLG)遺伝子変異を有するのは約25%→2
人種差はあるが概ね20-30%程度(欧州では≧40%)とされる
FLG遺伝子変異が原因となる常染色体半優性遺伝疾患として尋常性魚鱗癬がある
フィラグリンと分解産物、アトピー性皮膚炎
表皮顆粒層に存在するケラトヒアリン顆粒の主成分がプロフィラグリン
これが分解されるとフィラグリン、さらに分解されると天然保湿因子(NMF Natural Moisturizing Factor)と呼ばれるアミノ酸になる。NMFは角層上層で皮膚の保水機能や紫外線吸収能・角層pHを弱酸性に保つ作用等を持ち、皮膚バリアに関わる

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024 図2に追記
上図の通り、アトピー性皮膚炎ではTh2系サイトカイン(IL-4やIL-13)が過剰となり、フィラグリン発現が低下していることが知られている
(→治療に抗IL-4/13抗体製剤であるデュピルマブ等が用いられる)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p122
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p153
- 参考:バリア機能と皮膚免疫 アレルギー 64(9), 1189-1195, 2015
- 参考・図引用:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024 日皮会誌:134(11), 2741-2843, 2024
関連問題
選択問題2:解答 3
色素性乾皮症において、MED低下がみられないのはE型(+C型・V型)→3
色素性乾皮症
常染色体劣性遺伝疾患で、紫外線によるDNA損傷を修復する機構に異常があり若年から皮膚悪性腫瘍を合併しやすい
原因遺伝子によってA〜G群+V型に分けられ、A〜G群ではDNA除去修復酵素に異常が、V型は損傷乗り越え複製機構に異常がある
病型 | 比率(日本人) | MED低下 | 神経症状 | 癌初発平均年齢 |
A | 55% | あり | + | 9.7 |
B | 0% | あり | ± | - |
C | 少ない | なし | - | 14.0 |
D | 少ない | あり | ± | 38.0 |
E | 少ない | なし | - | 38.3 |
F | 少ない | あり | ± | 43.7 |
G | 稀 | あり | ± | 32.0 |
V | 25% | なし | - | 41.5 |
C/E/VはMED低下なし・神経症状なしと共通項が多い(色素異常型)。疫学的な問題からXP-AとXP-Vの鑑別が重要
- 1. A型:日本人で最も多い病型で、若年(10代)から発癌をきたす重症型
- 2. B型:日本では報告のない病型
- 3. E型:MED低下をきたさず、神経症状も伴わない病型
- 4・5. F型・G型:日本人では稀な病型
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p234
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p279
関連問題(色素性乾皮症)
- 2023 選択57 / 2020 選択6 / 2015 選択6 (病型ごとの特徴など)
- 2019 選択12 / 2018 選択7 / 2010 選択6 (XP-Vについて)
- 2013 選択5 (若年から発癌をきたす病型)
選択問題3:解答 2
手術で用いられる器具の名称を写真から選択する問題
先端が極端に細くなる鑷子はアドソン鑷子→2
- 1. ケリー:やや大型の剥離鉗子で産婦人科などで用いられる。皮膚外科でよく用いる鉗子はモスキート
- 2. アドソン:先端が細く緻密な作業に向いた鑷子で、皮膚外科で用いられる
- 3. マッカンドー:一般的な鑷子だが先端の細くなり方がアドソンほど急ではない
- 4. メッツェンバウム:組織剥離に用いる剪刀(はさみ)
- 5. ビショップ・ハーモン:3つ穴があいた鑷子のこと
それぞれの写真は以下
- マッカンドー鑷子, アドソンと比較すると全体的に細い
- ビショップ・ハーモン
- メッツェンバウム
- ケリー
- 参考:研修医に絶対必要な器具・機械がわかる本。 p87(2)/93(1)/102(4)
- 参考・写真引用:京大式ケリー鉗子 | 大祐医科工業株式会社(ケリー), アドソン鑷子|鑷子(2) | 看護roo, マッカンドー鑷子|鑷子(4) | 看護roo![カンゴルー] (マッカンドー),製品詳細 | 村中医療器株式会社 | BONIMED メッツェンバウム剪刀(メッツェンバウム), ビショップ・ハーモン氏薄片組織鑷子 有鈎 | 直角型有鈎鑷子 | 鑷子 | 手術器具 | 株式会社イナミ (ビショップ・ハーモン)
選択問題4:解答 5
組織像と関連するダーモスコピー所見を問う問題
境界明瞭な隆起性病変で、類円形細胞の増殖と管腔形成がみられることからエクリン汗孔腫の診断

参考文献 Figure1より引用
ダーモスコピーではGlomerular vessels(糸球体状血管)が特徴→5

参考サイトより引用, 臨床的に足の境界明瞭な紅色結節でダーモスコピーでは血管構造
血管構造が多いため、ダーモスコピーではヘアピン状血管も見られる
- 1. Pigment network(色素ネットワーク):メラニンの分布密度の差によって褐色の網目模様が形成されるもの。通常メラノサイト病変の所見だが、例外的に皮膚線維腫でも見られる
- 2. Multiple milia-like cysts(多発性稗粒腫様嚢腫):褐色病変の中にみられる白色点で、脂漏性角化症※の偽角化嚢腫に対応する
- 3. Arborizing vessels(樹枝状血管):分枝状で太さの不均一な腫瘍表面の毛細血管で、基底細胞癌に特徴的な所見
- 4. Brown dots/globules(小点・小球):塊状のメラニン顆粒のこと
- 5. Glomerular vessels:塊状に蛇行した毛細血管が腎糸球体のようにみえる所見で、エクリン汗孔腫の他Bowen病でもみられる
※脂漏性角化症のダーモスコピー所見では面皰様開大(comedo-like openings)も有名
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p414(エクリン汗孔腫)/62(5)/54(1)/60(2)/58(3)/55(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p616(エクリン汗孔腫)/644(3)
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p190・114(5)/36(1)/168(2)/124(3)/50(4)
- 病理写真の参考・引用:Eccrine poroma: Insights of its occurrence and differentials in the maxillofacial region J Oral Maxillofac Pathol. 2018 Sep-Dec;22(3):415-417.
- 参考・図引用:Clinical and dermoscopic features of eccrine poroma. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2015 May-Jun;81(3):308-9.
関連問題
- 2022 選択62 (★同一問題 写真も同じ★)
- 2019 選択80 / 2018 選択76 / 2016 選択72 (エクリン汗孔腫の病理とダーモスコピー所見)
- 2020 選択75 / 2019 選択81 / 2012 選択88 (基底細胞癌と樹枝状血管, 病理)
- 2022 記述3 / 2014 選択62 / 2013 選択61 / 2011 選択63 (脂漏性角化症とダーモスコピー)
「あたらしい皮膚科学」ではGlomerular vesselsをきたす疾患にBowen病しか記載がなくエクリン汗孔腫は難易度が高いのだが、試験では(なぜか)頻出事項となっている
選択問題5:解答 1, 3
メラノーマについての問題
- 1. 抗PD-1抗体の奏効率は欧米と比して日本で低い。欧米と比較して末端黒子型や粘膜型が多いことが要因の一つと考えられている→✗
- 2. Low-CSDメラノーマ(≒表在拡大型)ではBRAF V600E変異陽性率が高く、体幹四肢だと56〜72%。一方で手掌足底(末端黒子型)では9〜13%と低い
- 3. 海外では進行期メラノーマに対するBRAF/MEK阻害剤+抗PD-1抗体の3剤併用療法が薬事承認されているが、日本では未承認→✗
- 4. 臨床的に明らかな領域リンパ節転移例に対して、リンパ節郭清後に術後放射線療法を行うことで領域リンパ節再発が減少する
- 5. メラノーマ診療ガイドライン2019ではセンチネルリンパ節転移陽性例にリンパ節郭清術を実施しないことが提案されている※
※新版の2025では少し表現が変わり「センチネルリンパ節転移陽性例に対して早期リンパ節郭清を行うことは勧められるか?→実施しないことを提案」となっている(本問出題当時は2025ガイドラインが発行されておらず2019が最新だった)
センチネルリンパ節生検 メラノーマ
センチネルリンパ節生検(SLNB sentinel lymph node biopsy) = メラノーマが最初に転移するリンパ節を選択的に生検する手技
現在下記の疾患で保険適用となっている
- メラノーマ (悪性黒色腫)
- 乳房外Paget病
- 長径2cmを超える有棘細胞癌
- メルケル細胞癌
SLNBの意義について、考え方が変わってきている
- 従来の考え:SLNに転移していれば、他の所属リンパ節にも転移している可能性が高いのでリンパ節郭清、逆にSLNへ転移がなければ経過観察※
- 最近の研究ではSLNB陽性→すぐリンパ節郭清しても、全生存期間(OS)が延長しないという結果が出てきた。これは従来と比べて免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬を用いた術後補助化学療法など、手術以外の治療選択肢が増えてきたのが理由の一つ。一方郭清に伴う副作用があるのは先述の通り
- 最近(2025年):SLNB陽性でもすぐにリンパ節郭清をしない(経過観察して明らかなリンパ節転移が見つかってから対応)流れになっている
※リンパ節郭清をすることでリンパ浮腫等の副作用もあるため、不要な過剰侵襲を控える
FAQ
Q. 「陽性であってもリンパ節郭清しないのに、手間暇かけてSLNBを行う意義があるのか?」
A. SLNBは正確な病期診断やその後の治療選択決定(ステージによって可能な術後補助化学療法が異なる)、予後予測などに有用
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p724(2・4)
- 参考:皮膚がん診療ガイドライン第4版 メラノーマ診療ガイドライン 2025 日皮会誌:134(13), 3149-3265, 2024のp3200・3208(1)/3159(2)/3208・3213(3)/3183・3227(4)/3216(5)
- 参考:皮膚がん診療ガイドライン第3版 メラノーマ診療ガイドライン 2019 日皮会誌:129(9), 1759-1843, 2019のp1822(5)
関連問題
- 2023 選択15 (メラノーマについて)
- 2023 選択54 / 2022 選択2 / 2020 選択66 / 2020 選択97 (SLNBの適用疾患)
- 2011 選択43 / 2010 選択29 / 2009 選択36 (SLNBについて)
選択問題6:解答 5
壊疽性膿皮症に関する問題
基礎疾患としては潰瘍性大腸炎が最多→5
壊疽性膿皮症
主に下腿で生じ初期は痤瘡/膿疱様の皮疹だが、辺縁が堤防状に隆起した潰瘍となる。稀な病型としてストマ周囲に生じるものがある
潰瘍は無菌性で、組織学的に真皮で好中球浸潤がみられる
治療:ステロイドやシクロスポリンの他、TNF-α阻害薬が用いられる(現在保険適用はアダリムマブ:ヒュミラ®のみ)
基礎疾患
本症は半数程度で基礎疾患に伴って発症する
潰瘍性大腸炎(46.6%)>>>関節リウマチ(19.3%)>血液悪性腫瘍(17.2%)クローン病(14.3%)>大動脈炎症候群(2.5%)
※カッコ内は基礎疾患全体における比率
- 1. 臨床病型では潰瘍型が最多で8割以上(373/464)を占める。稀な病型としてストマ周囲型がある
- 2. 20〜60歳に好発し、小児の占める割合は4〜5%と少ない
- 3. 外的刺激や侵襲による症状増悪をPathergyと呼び、壊疽性膿皮症患者の20〜30%に見られる
- 4. 発生部位では下腿伸側に好発し6割以上(314/518)。その他体幹や殿部など
- 5. 合併症の中では潰瘍性大腸炎が最多で関節リウマチは2番目→✗
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p176(1・3・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p338(1・3・4)
- 参考:壊疽性膿皮症診療の手引き 2022 日皮会誌:132(6), 1415-1440, 2022 の表3p1426(1・4・5)/1421(2・3)
関連問題(壊疽性膿皮症)
選択問題7:解答 4
前立腺癌治療薬(アンドロゲン受容体拮抗薬)であるアパルタミド(アーリーダ®)による皮膚障害について
- 1・3. 日本人集団における皮疹の発現頻度は51.5%で、全体集団(25.1%)より高頻度であった
- 2. DLST*は陽性例も陰性例もあるが、TEN*においては陽性例が多かったと報告されている
- 4. 日本人投与患者のうち、15%程度でgrade3以上の重症皮膚障害がみられた→◯
- 5. 非アレルギー性の機序(≒DLST陰性)であれば減量投与で投与継続が可能となるが、アレルギー性機序の皮疹であれば致死的となる可能性がある
*DLST = drug-induced lymphocyte stimulation test(リンパ球刺激試験), TEN = 中毒性表皮壊死症
- 参考:抗アンドロゲン薬による薬疹 臨床皮膚科77(5増), p32-36, 2023
- 参考:新しい薬疹:分子標的薬, 抗アンドロゲン薬など 臨床皮膚科78(5増), p10-16, 2024
選択問題8:解答 3
栄養障害型表皮水疱症に関する出題
係留線維をコードする7型コラーゲン遺伝子の変異が原因となり、基底板より深層で解離が認められる→3
- 1. 自家培養表皮移植(ジェイス®)は表皮水疱症にも保険適用となっている(2019/7)。もともとは重症熱傷が適用疾患だった
- 2. 常染色体優性遺伝形式ないし劣性遺伝形式をとり、劣性遺伝形式の方が重症
- 3. 係留線維は基底板と真皮膠原線維(1/3型コラーゲン)を結合しており、基底板より下層の表皮下水疱を生じる→✗
- 4. 係留線維をコードするⅦ型コラーゲン遺伝子変異が病因
- 5. 重症汎発型の栄養障害型表皮水疱症では水疱やびらんの治癒後、稗粒腫や瘢痕が残る※。稗粒腫に関しては水疱性類天疱瘡や後天性表皮水疱症で見られることもある
※一方表皮基底細胞に発現するケラチン5/14が病因となる単純型表皮水疱症は表皮内水疱をきたし、瘢痕を残さず治癒する(→浅いヤケドが瘢痕にならないのと同じ)
表皮水疱症と自家培養表皮移植
表皮水疱症に対して自家培養表皮移植を行っても、基本的には(遺伝子変異が治るわけではないので)移植した皮膚に再度水疱・びらんを形成してしまい根本的治療とはならない
しかし表皮水疱症では一部の体細胞で相同組換が生じ、その結果原因遺伝子が"正常に復帰"しその部分だけ疾患症状を呈さなくなる現象(復帰変異モザイク)が生じることがある。
この復帰変異モザイクが生じた部分は水疱・びらん形成をきたさない正常皮膚となるため、同部位を培養・移植することで表皮水疱症に対する根本的治療となることが期待されている
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p238・243(2・3・4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p327・330(2・3・4・5)
- 選択肢1の参考:J・TEC、「自家培養表皮ジェイス」が表皮水疱症を治療する再生医療等製品として保険適用 - 日本経済新聞
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 表皮水疱症でみられる復帰変異モザイク 日皮会誌:133(13), 3065-3073, 2023
関連問題
表皮水疱症の病型と原因遺伝子は頻出。詳細は下記にまとめた
-
先天性表皮水疱症の病型と原因蛋白・遺伝形式まとめ
続きを見る
選択問題9:解答 2, 4
化膿性汗腺炎に関する出題
殿部型が最も多く、喫煙は重症化因子となる→2, 4
- 1・2. 日本人では殿部型が多く(59%)、殿部型は慢性膿皮症と呼ばれることもある
- 3. 日本人では中年男性の殿部が好発部位。一方欧米では女性に多く、腋窩・乳房下に好発
- 4. 喫煙は重症化因子であり、化膿性汗腺炎患者では喫煙率が高い(29%)。肥満も悪化因子
- 5. 日本では家族歴のある患者は2〜3%で欧米(約1/3)より少ない。家族性ではγセクレターゼ遺伝子群の変異が指摘されている
※「化膿性汗腺炎」は下記二通りの使われ方がある
- 広義:臀部慢性膿皮症を含めた毛包の慢性炎症性疾患の総称
- 狭義:女性の腋窩に好発するもののみを呼び、臀部病変は含めない(臀部病変は慢性膿皮症と呼称)
現在は広義の意味で使われることが一般的(→「化膿性汗腺炎の好発部位は臀部である」は正しくなる)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p521※
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p759(1・4)
- 参考:化膿性汗腺炎診療の手引き2020 日皮会誌:131(1), 1-28, 2021のp3(1)/4・6(2・3・5)/7(4)
※「あたらしい皮膚科学」は化膿性汗腺炎が狭義の意味で記載されているので注意。「皮膚科学」も10版は狭義の意味だったが11版になって広義となった
関連問題
選択問題10:解答 5
往診と訪問診療との違いについて
診療計画を立てて行われるのが在宅医療(訪問診療)で、患者やその家族の求めに応じて行われるのが往診→5
- 1. 在宅診療を行うか否かにかかわらず、診療所は開設後10日以内に管轄の保健所へ開設届の提出が必要(医療法第8条)。なお"届出制"だが、実務上は着工前に保健所と相談することが普通
- 2. 訪問診療も往診も保険診療として行われる。往診は夜間含め突発的に発生するため医療者負担が大きく、診療報酬点数が高く設定されている
- 3. グループホームなど施設に訪問する場合と、個人住居に訪問する場合で診療報酬点数が異なる(前者の方が低い;一度に多くの患者を診察可能なため)
- 4. 訪問診療・往診ともに疾病/傷病のため通院が困難な患者が対象となり、年齢は問わない。ex. 小児悪性腫瘍の終末期でも対象となる
- 5. あらかじめ診療計画を立てておき(2週間に1回など)定期的に訪問するのが訪問診療で、急変時・看取り時など患者ないし患者家族の求めに応じて随時行われるのが往診
本問は"「在宅医療」と「往診」の違い"となっているが、一般的には在宅医療=訪問診療+往診を包括する単語として扱われている。つまり"「訪問診療」と「往診」の違い"としたほうが妥当なように筆者は感じた
- 選択肢1の参考:医療法 第8条|条文|法令リード
- 参考:第182回社会保障審議会介護給付費分科会資料(R2.8.19開催)>資料5 居宅療養管理指導
- 参考:訪問診療と往診の違いとは?診療報酬改定の動向も含めて医師向けに解説|医師向けお役立ち情報
↑一番下は自分が前に書いた記事です(隙あらば宣伝)
選択問題11:解答 3
円形脱毛症におけるSALTスコアを計算する問題
SALTスコアと円形脱毛症 JAK阻害薬
SALT = severity of alopecia tool, 脱毛の重症度評価ツールで、数値が大きいほど重症の脱毛となる
頭部被髪部を4箇所にわけ、それぞれの部位における脱毛割合から頭皮全体における脱毛面積を計算し、合計する
部位 | 割合(%) |
頭頂部 | 40 |
後頭部 | 24 |
右側頭部 | 18 |
左側頭部 | 18 |
合計 | 100 |

参考サイトより引用
Maxは全脱毛=SLATスコア100となる。眉毛や睫毛は評価項目に含まれないので注意
本問においては下記の通り
- 頭頂部:40 x 0.25 = 10
- 後頭部:24 x 0.25 = 6
- 右側頭部:18 x 0.5 = 9
- 左側頭部:18 x 0.5 =9
よって合計は10+6+6+9 = 34→3
円形脱毛症におけるJAK阻害薬
慢性期の重症円形脱毛症に対して、2025年現在2剤が保険適用となっている
一般名 | 商品名 | ターゲット | 年齢 |
バリシチニブ | オルミエント® | JAK1/JAK2 | 15歳〜(成人) |
リトレシチニブ | リットフーロ® | JAK3/TECファミリー | 12歳〜 |
いずれも下記の条件を満たすことが必要
- 頭部全体の概ね50%以上に脱毛が認められる(=SALTスコア≧50)
- 過去6ヶ月程度毛髪に自然再生が認められない
- 参考:円形脱毛症診療ガイドライン 2024 日皮会誌:134(10), 2491-2526, 2024のp2501/2511
- 参考・図引用:円形脱毛症の臨床医アウトカムと臨床試験の評価項目の例 | リットフーロ | LITFULO
SALTスコアはアトピー性皮膚炎のEASIスコアと並んで薬剤の保険適用決定に用いられる(一方乾癬のPASIスコアは保険適用と関係しない)。円形脱毛症におけるJAK阻害薬は2022年〜と比較的最近の発売なのでトピックとして重要
関連問題
- 2024 選択35 (保険適用のあるJAK阻害薬)
選択問題12:解答 5
経口ステロイドが有効な物理性じんま疹は遅延性圧じんま疹→5
- 1. 寒冷蕁麻疹:皮膚局所で冷却された部位に一致して生じる局所性と、全身性(家族性寒冷蕁麻疹:クリオピリン関連周期熱症候群の軽症型)がある
- 2. 水蕁麻疹:水に触れた範囲に毛孔一致性の紅斑と膨疹をきたす
- 3. 温熱蕁麻疹:温熱が加わった部位に症状が出現する
- 4. 日光蕁麻疹:日光とくに可視光線が原因となる物理性蕁麻疹で、少量の日光を反復照射することで症状が軽減する場合がある
- 5. 遅延性圧蕁麻疹:物理性蕁麻疹の中で唯一経口ステロイドの有効性が知られている。他の蕁麻疹と異なり個疹が数時間~2日ほど持続する(だから"遅延性")
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p132・217(1)/232(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p171-175/179(1)/279(4)
- 参考:蕁麻疹診療ガイドライン 2018 日皮会誌:128(12), 2503-2624, 2018のp2516(5)/2506(1)
関連問題(物理性蕁麻疹)
選択問題13:解答 1, 2
アトピー性皮膚炎の評価スコアに関する問題
アトピー性皮膚炎 評価スコア EASIスコアなど
EASI(eczema area and severity index)スコア
湿疹の面積と重症度を示すスコア
全身を頭部/頚・体幹・上肢・下肢の4箇所にわけ、皮膚所見(紅斑・浸潤/丘疹・掻破痕・苔癬化)の程度に応じて0〜3点でスコア化したものに病変面積に応じたスコアをかけて算出する

参考文献 表3(p2756)より引用
皮疹スコアは4項目x3点で12点がMaxで、面積スコアは90-100%の6点がMaxなので、両者をかけ合わせた72点が最高点となる
POEM(The Patient Oriented Eczema Measure):患者主導の湿疹評価
直近1週間での湿疹症状に関する患者ないし保護者への質問票で、7つの質問に対して症状がのいずれであったかを解答する

成人の場合, 参考文献 表6-1(p2758)より
症状頻度に応じて0〜4点でスコアが付けられ(→0〜28点)、総合点が高いほど重症度が上がる
スコア | 評価 |
0〜2点 | 消失またはほぼ消失 |
3〜7点 | 軽度の湿疹 |
8〜16点 | 中等度の湿疹 |
17〜24点 | 重度の湿疹 |
25〜28点 | 非常に重度の湿疹 |
ADCT(Atopic Dermatitis Control Tool):アトピー性皮膚炎のコントロール状態を評価する指標
直近1週間でのアトピー性皮膚炎の状態に関する質問票で0〜4点で6項目を解答(→点数は0〜24点)し、7点以上だとコントロール状態が悪いことを示す

参考サイトより引用
EASIは医療者の評価する客観的スコアで、POEMやADCTは患者自身が評価する主観的スコア
とくにEASIスコアはアトピー性皮膚炎の生物学的製剤や分子標的治療薬使用の目安として利用される
一般名 | 商品名 | ターゲット | EASIスコア |
デュピルマブ | デュピクセント® | IL-4/13 | 16以上※ |
トラロキヌマブ | アドトラーザ® | IL-13 | |
レブリキズマブ | イブグリース® | IL-13 | |
バリシチニブ | オルミエント® | JAK1/JAK2 | |
ウパダシチニブ | リンヴォック® | JAK1 | |
アブロシチニブ | サイバインコ® | JAK1 | |
ネモリズマブ | ミチーガ® | IL-31RA | 10以上 |
※顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する場合(目安として頭頚部のEASIスコア≧2.4)でも可
- 1. EASIスコアの満点は"72点"
- 2. EASIの評価項目は紅斑・"浸潤"/丘疹、掻爬痕、"苔癬化"の4項目。落屑は乾癬評価スコアのPASI(psoriasis area and severity index)に含まれる
- 3. POEMの合計スコア17点は重度の湿疹に分類される
- 4. ADCTの合計スコア7点はコントロール不良を示唆する
- 5. POEMでは7日中、0日/1〜2日/3〜4日/5〜6日/毎日のいずれかを選択する
- 参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024 日皮会誌:134(11), 2741-2843, 2024のp2756(表3)/2758(表6-1)
- 選択肢4の参考・図引用:ADCTスコア※(対象:12歳以上)アトピー性皮膚炎のコントロール状態を評価する指標|デュピクセントを使用される患者さんへ|サノフィ株式会社
- 選択肢3の参考:POEMスコア(対象:自己記入可能な患者)アトピー性皮膚炎の自覚症状の評価指標|デュピクセントを使用される患者さんへ|サノフィ株式会社
関連問題(EAISスコア)
選択問題14:解答 5
mRNAワクチンを作成する際、強すぎる免疫反応を抑えるために行われる修飾はシュードウリジン化→5
mRNAは通常4種類のコドン(アデニンA・ウラシルU・グアニンG・シトシンC)から構成されている。
人工的に合成したmRNAはそのまま体内に取り込まれると自然免疫が活性化してしまい、異物として除去されてしまうが、ここでウリジン※をシュードウリジンに置き換えることで自然免疫が抑制される
→mRNAが異物として排除されずらくなり、またウイルス除去に働く目的のタンパク質を効率的に産生することができる
※ウリジンはウラシルUとリボースが結合した物質
この技術を応用してCOVID-19ワクチンが作成され、カタリン・カリコ博士とドリュー・ワイスマン博士が2023年にノーベル医学・生理学賞を受賞した
関連問題
選択問題15:解答 1
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)に対してIVIg療法後、手掌に見られた小水疱
KOH-から汗疱が考えられ、組織学的には表皮内水疱が特徴→1
IVIg後の副作用として皮膚症状は0.1〜5%未満であり、汗疱ないし汗疱を伴った湿疹性病変が見られる
- 1. 表皮内水疱:表皮内で強い炎症をきたす疾患(ex. 急性湿疹)や自己免疫性水疱症(ex. 尋常性天疱瘡)で見られる所見。表皮内炎症の所見としては海綿状態も重要
- 2. 角層下膿疱:汗疱と鑑別が必要となる掌蹠膿疱症で見られる所見。その他尋常性乾癬で特徴的なマンロー微小膿瘍※が該当
- 3. 表皮稜(表皮突起)の延長:尋常性乾癬で特徴的な所見
- 4. 真皮浅層の好酸球浸潤:好酸球浸潤が特徴的な疾患として、類天疱瘡や好酸球性蜂窩織炎(Wells症候群)でみられるflame figuresがある
- 5. 表皮真皮境界部の空胞変性(境界部皮膚炎, 液状変性):扁平苔癬や多形紅斑、SLEなどでみられる所見
※マンロー微小膿瘍は角層下のものを指し、膿疱性乾癬でみられるKogoj海綿状膿疱は表皮有棘層上層の膿疱を指す。混同に注意
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p43(1)/44(2)/40(3)/46(4)/45(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p302/52(1)/56(2)/53(3)/62(4)/54(5)
- 参考:自己免疫性神経筋疾患での免疫グロブリン大量静注療法の副作用による汗疱の出現頻度 臨床神経学 62(4), 267-271, 2022
関連問題
- 2023 選択59 / 2016 選択75 (疾患と病理像)
- 2023 選択72 / 2020 選択17 / 2020 選択82 / 2012 選択79 (苔癬型組織反応をきたす疾患)
- 2016 選択19 (汗疱の病理)
選択問題16:解答 5
2020/2021年に行われた個人情報保護法の改正に伴う生命・医学系指針(人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針)の改正に関する問題
- 1. 「匿名化」や「対応表」など改正個人情報保護法で使用されていない用語は使わないことになった。匿名化=個人を特定できる情報を取り除く処理
- 2. 大学病院などの学術研究機関における医学研究の多くは「学術例外」に該当する。学術例外に該当すると、利用目的による制限・要配慮個人情報の取得制限・第三者提供の制限など一般の個人情報取扱事業者に課せられる規制が緩くなる※
- 3. 研究対象者から新たに要配慮個人情報を取得して研究する場合、原則IC*手続きが必要。ただし研究の実施等について研究対象者等が拒否する機会を保障するなどの条件を満たせば簡略化できる
- 4. 自機関で保有する既存試料/情報で特定の個人を識別できない状態に管理されているものであれば、IC手続きを行わず使用可能(そもそも特定の個人が識別できなくなっていれば誰にIC手続きを取ればよいのかという問題がある)
- 5. 死者に係る情報を用いる研究については、生存する個人の情報と同様に取り扱う旨が規定されている
*IC = informed consent
※個人情報保護法では営利企業が個人情報を収集して宣伝/販売活動に利用するような状況が想定されており、個人のプライバシーを保護する観点から厳しい規制となっている。一方研究分野においては厳しい規制を課して学術研究が阻害される→研究が進まなくなり診断や治療の進歩がなくなる方が、個人情報保護よりも利益が高いと考えられるためこのような運用となっている
- 参考:令和2・3年個人情報保護法の改正に伴う生命・医学系指針の改正についてのp3(1・5)/28(2)/4(3)/6(4)
- 参考:学術研究分野における個人情報保護の規律の考え方 令和3年6月23日 個人情報保護委員会資料
関連問題
- 2015 選択88 (個人情報保護が不要な場合)
選択問題17:解答 3, 4, 5
掌蹠膿疱症に対して保険適用の薬剤は下記3つ→3, 4, 5
一般名 | 商品名 | ターゲット |
グセルクマブ | トレムフィア® | IL-23p19 |
リサンキズマブ | スキリージ® | |
ブロダルマブ | ルミセフ® | IL-17RA |
- 1. スペソリマブ(スペビゴ®):抗IL-36R抗体製剤で、膿疱性乾癬の急性症状に対して使われる。近年の他Bio製剤と異なり点滴製剤
- 2. セクキヌマブ(コセンティクス®):抗IL-17A抗体製剤で、尋常性乾癬や乾癬性関節炎に対して使われる。投与4週まで毎週連続投与する
- 3. ブロダルマブ:IL-17阻害剤としては掌蹠膿疱症で初めて承認された。病巣感染の顕在化および壊疽性膿皮症の発現に留意が必要
- 4. グセルクマブ:掌蹠膿疱症で初めて承認された生物学的製剤
- 5. リサンキズマブ:グセルクマブとターゲットは同じだが、最終的な投与間隔が12週と長い(グセルクマブは8週)
- 参考:掌蹠膿疱症におけるグセルクマブ使用上の注意 2019/5/17
- 参考:掌蹠膿疱症におけるリサンキズマブ使用上の注意
- 参考:掌蹠膿疱症におけるブロダルマブ使用上の注意 2023/8/31
- その他各種添付文書
関連問題
選択問題18:解答 2
クリオグロブリン血症に関する問題
クリオグロブリン血症
4℃で沈殿・37℃で溶解する性質を持った異常免疫グロブリンが生じる疾患
免疫グロブリン(Ig)のクローナリティで分類され、背景にIg増殖をきたす原疾患が存在する場合が多い
免疫グロブリン | 原疾患 | 病態 | |
Ⅰ型 | 単クローン性IgM/IgG | 多発性骨髄腫 | 微小血栓 |
Waldenstromマクログロブリン血症 | |||
Ⅱ型 | 単クローン性IgM + 多クローン性IgG | C型肝炎 | 免疫複合体性血管炎 |
関節リウマチ | |||
Ⅲ型 | 多クローン性Ig (IgM or IgG) | 膠原病 (SLE・Sjögren症候群等) | 免疫複合体性血管炎 |
感染症 (ウイルス性肝炎・伝染性単核球症) |
- 単クローン型=腫瘍性増殖 (ex. 多発性骨髄腫)
- 多クローン型=反応性増殖 (ex. 炎症性疾患)
→Ⅰ型とⅡ・Ⅲ型は原疾患が大きく異なるが、II型とIII型間の違いは小さい(臨床症状も原疾患も重複する)。II型・III型はあわせて混合型とも呼ばれる
- 1. クリオグロブリン血症性血管炎はChapel Hill分類において、小血管炎>免疫複合体性小型血管炎に分類されている。その他ANCA関連血管炎も小血管炎に分類されている
- 2. 混合性クリオグロブリン血症(Ⅱ・Ⅲ型)では血管炎の症状が主体で、I型では血栓症が主体。過粘稠度症候群はⅠ型の基礎疾患であるマクログロブリン血症や多発性骨髄腫で見られる
- 3. シェーグレン症候群はクリオグロブリン血症Ⅱ・Ⅲ型の基礎疾患の一つ
- 4. リベドやレイノー現象は皮膚症状の一つ
- 5. 低温(4℃)で沈殿・37℃で溶解する性質を持つ異常免疫グロブリンのことをクリオグロブリンと呼ぶ
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p182(2・3・4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p212(1)/448(2・3・4・5)
- 参考:血管炎・血管障害診療ガイドライン 2016年改訂版 日皮会誌:127(3), 299-415, 2017のp301・302(1)/331
関連問題
選択問題19:解答 1, 5
カンジダ症に保険適用のない抗真菌薬はリラナフタートとエフィナコナゾール→1, 5
皮膚カンジダ症に対して使用される抗真菌外用薬
系統 | 一般名 | 商品名 |
イミダゾール | ケトコナゾール | ニゾラール® |
ネチコナゾール | アトラント® | |
ルリコナゾール | ルリコン® | |
ラノコナゾール | アスタット® | |
ビホナゾール | マイコスポール® | |
クロトリマゾール | エンペシド® | |
ミコナゾール | フロリードD® | |
モルホリン | アモロルフィン | ペキロン® |
アリルアミン | テルビナフィン | ラミシール® |
青文字は白癬と共通
白癬に対して使用される抗真菌外用薬
ここでの白癬は足白癬や股部白癬など(爪白癬ではない)
系統 | 一般名 | 商品名 |
イミダゾール | ケトコナゾール | ニゾラール® |
ネチコナゾール | アトラント® | |
ルリコナゾール | ルリコン® | |
ラノコナゾール | アスタット® | |
ビホナゾール | マイコスポール® | |
モルホリン | アモロルフィン | ペキロン® |
アリルアミン | テルビナフィン | ラミシール® |
ベンジルアミン | ブテナフィン | メンタックス®, ボレー® |
チオカルバミン酸 | リラナフタート | ゼフナート® |
青文字は皮膚カンジダ症と共通
双方とも使える外用薬が多いので、使えないものを把握しておく
- リラナフタート(ゼフナート®):白癬にのみ保険適用
- アロモルフィン(ペキロン®):カンジダ・白癬ともに保険適用。非イミダゾール系のためイミダゾール系で接触皮膚炎を来した際も使用可能
- テルビナフィン(ラミシール®):外用薬はカンジダ・白癬ともに用いられる。内服薬がありこちらは爪白癬にも使用される(一方外用薬は爪白癬に保険適用がない)
- ラノコナゾール(アスタット®):イミダゾール系抗真菌薬でカンジダ・白癬ともに用いられる
- エフィナコナゾール(クレナフィン®):爪白癬専用の外用薬。使用前に直接鏡検または培養等による診断が求められている
関連問題
白癬/カンジダ症に用いられる抗真菌薬は頻出。詳細は下記にまとめた
-
皮膚真菌症 抗真菌薬のまとめ【白癬・カンジダ・爪白癬】
続きを見る
選択問題20:解答 2
若年女性の下腿に見られた網状皮斑(リベド)
組織では真皮深層で血管周囲の炎症細胞浸潤が見られる。血管が静脈か動脈かが難しいところだが、EVG染色からは静脈と考えられるので、血栓性静脈炎に該当→2
下腿の動静脈 EVG染色
下腿は立位による血液重力負担がかかるため、静脈でも通常の部分と比較して血管壁が厚くなりやすい。また静脈も弾性線維に富む血管壁を持つので、とくにHE染色では動脈と区別が難しい
下記のような点で鑑別するのが良いとされる
動脈 | 静脈 | |
内弾性板 | 均一で一層 | 内膜側に弾性線維の形成像がみられ、内弾性板に類似 |
血管壁の弾性線維 | 乏しい | 豊富 |
血管壁の平滑筋層 | 隙間の少ない緊密な平滑筋層 | 隙間の多い不規則な束状の平滑筋層 |
本例ではEVG染色で黒く染まる弾性線維が内膜側に見られるが形がややいびつな点、(内腔周囲に存在する)血管壁でも弾性線維がみられる点から静脈>動脈と考えた

参考文献 Figure4G/Hより EVG染色
左が血栓性静脈炎(=静脈)、右が皮膚型結節性多発動脈炎(=動脈)
- 1. IgA血管炎:皮膚所見では浸潤を触れる紫斑(palpable purpura)が特徴、組織では真皮浅層の血管炎(白血球破砕性血管炎:LCV)がみられる。蛍光抗体直接法において血管壁にIgAの沈着が見られる
- 2. 血栓性静脈炎:静脈に血栓が形成され、炎症をきたすもの。ベーチェット病の皮膚病変としても知られる
- 3. 蕁麻疹様血管炎:臨床像としては蕁麻疹様皮疹だが24時間以上持続することが特徴で、低補体血症を伴うことが多い。組織では真皮上層のLCVが見られる
- 4. 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎):側頭動脈に好発し失明をきたすことがある。リウマチ性多発筋痛症を30〜40%に合併する
- 5. 皮膚動脈炎(皮膚型結節性多発動脈炎):結節性多発動脈炎(PN)のうち、皮膚症状のみのものを呼ぶ。皮膚所見としてはリベドをきたし、組織では真皮深層〜皮下組織での血管炎所見が特徴
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p165(1)/179(2)/167(3)/172(4)/169(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p212(1)/218(3)/229(4)/226(5)
- 参考:皮膚科セミナリウム 血管炎の病態と病理組織診断 日皮会誌:120(12), 2379-2391, 2010
- 参考・図引用:The Misdiagnosis of Superficial Thrombophlebitis as Cutaneous Polyarteritis Nodosa: Features of the Internal Elastic Lamina and the Compact Concentric MuscularLayer as Diagnostic Pitfalls Am J Dermatopathol . 2010 Oct;32(7):688-93.
臨床症状的にIgA血管炎(紫斑)・蕁麻疹様血管炎(蕁麻疹様皮疹)・巨細胞性動脈炎(側頭動脈)を除外して2択まで絞ることは可能だが、そこから先の鑑別はかなり難しい
選択問題21:解答 3
白癬菌抗原キット(デルマクイック® 爪白癬)に関する出題
糸状菌直接鏡検検査(KOH)と同時に保険算定可能→3
- 1. Aspergillus属と交差反応を示し、偽陽性となることがある。一方Candida属とは交差反応を示さない
- 2. 白癬菌抗原キット使用時、検体は"1mg"以上採取する
- 3・5. 基本的にKOH直接鏡検検査が陰性であったものの、臨床所見から爪白癬が疑われる場合が検査対象となる。併用での算定も可能
- 4. KOH直接鏡検が実施できない場合(皮膚科医がいない・在宅診療など)、いきなりデルマクイック®爪白癬を用いても問題ない。ただし診療報酬明細書の摘要欄へは記載が必要
- 参考:デルマクイック爪白癬 添付文書
- 参考:日本皮膚科学会>検査料の点数の取扱いについて(白癬菌抗原定性)
- 参考:白癬菌抗原キット 臨床皮膚科77(5増), 70-75, 2023
選択問題22:解答 5
落葉状天疱瘡の組織像を問う出題
同疾患では表皮浅層に分布するデスモグレイン1が病因のため、水疱形成も表皮の浅い部分でみられる→5
天疱瘡 原因分子と病変部位
天疱瘡では膜貫通蛋白であるデスモグレイン(Dsg)1/3に対する自己抗体が生じることが原因となる
それぞれ皮膚や粘膜で分布する部位が異なるので、臨床像や病理像も異なってくる

あたらしい皮膚科学 p249 図14.20より
Dsg1 | Dsg3 | |
尋常性天疱瘡(粘膜優位型) | - | + |
尋常性天疱瘡(粘膜皮膚型) | + | + |
落葉状天疱瘡 | + | - |
落葉状天疱瘡では粘膜に分布するDsg3に対する自己抗体が生じない→粘膜病変も生じづらい
黄色ブドウ球菌の産生する表皮剥離毒素(ET)がDsg1を切断することで、伝染性膿痂疹やぶどう球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)が生じる。病理像は落葉状天疱瘡に類似する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p253(5)/43(1)/249(2・図)/45(3)/246(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p314(5)/52(1)/309(2)/54(3)/359(4)
関連問題
- 2023 選択50 / 2015 選択1 / 2013 選択40 / 2009 選択40 (天疱瘡の症状と自己抗体)
- 2024 選択46 / 2014 選択22 / 2013 選択18 (水疱性膿痂疹について)
選択問題23:解答 5
女児の足趾爪周囲に見られるドーム状の紅色結節
組織学的に好酸性の封入体がみられ、乳児指趾線維腫症を考える。自然消退傾向が強いので経過観察→5
乳児指趾線維腫症 (infantile digital fibromatosis)
乳幼児の指趾に出現する線維性腫瘍で、正常皮膚色〜紅色の結節をきたす
組織学的に好酸性封入体を伴う筋線維芽細胞の増殖が特徴
切除するとしばしば再発し、自然消退傾向があるため歩行に障害がなければ経過観察
- 1. 部分生検で確定診断できているので、完全切除までは不要
- 2・3・4. 悪性腫瘍ではないので、化学療法や拡大切除、放射線治療の適応はない
- 5. 自然消退傾向があるので、基本は経過観察
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p436
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p663
選択問題24:解答 2, 4
外用薬の基剤を問う出題
浸出液の多い創面には水溶性基剤のアクトシン®やユーパスタ®が適する→2, 4
創傷と外用薬
創傷の状態に応じて、適した外用薬が異なる
皮膚創傷の状態 | 外用薬の製品名 | 一般名 | |
浅い慢性皮膚創傷 | プロペト | 白色ワセリン | |
亜鉛華軟膏, 亜鉛華単軟膏 | 酸化亜鉛軟膏 | ||
アズノール®軟膏 | イソプロピルアズレン軟膏 | ||
ゲンタシン®軟膏, バラマイシン®軟膏, フシジンレオ®軟膏 | 抗生物質含有軟膏 | ||
深い慢性皮膚潰瘍 | 感染/壊死組織を伴う場合 | カデックス® | カデキソマー・ヨウ素軟膏 |
ユーパスタコーワ | ポビドンヨードシュガー | ||
ゲーベン®クリーム | スルファジアジン銀含有クリーム | ||
ブロメライン軟膏 | ブロメライン含有軟膏 | ||
肉芽/上皮形成期の場合 | プロスタンディン®軟膏 | アルプロスタジルアルファデクス軟膏 | |
フィブラスト®スプレー | トラフェルミン製剤 | ||
オルセノン®軟膏 | トレチノイントコフェリル軟膏 | ||
アクトシン®軟膏 | ブクラデシンナトリウム軟膏 |
カデックス®やユーパスタ、アクトシン®は吸水性を有するため浸出液の多い局面に向く。一方ゲーベン®やオルセノン®、プロスタンディン®は水分含有量が多く浸軟させるため乾燥した局面に向く
- 1. 親水クリーム:O/W軟膏に該当し、乾燥した局面に向く。以前は親水軟膏という名称だった
- 2. アクトシン®軟膏:水溶性軟膏であるマクロゴール基剤であるため、吸水性を有する。肉芽形成や上皮化を促進する
- 3. ゲーベン®クリーム:銀による抗菌効果があり、また壊死組織を軟化・融解させるため乾燥傾向の創部に向く
- 4. ユーパスタ®コーワ:ヨウ素による抗菌力と白糖による浸出液吸収作用を持つ。こちらもマクロゴール基剤
- 5. プロスタンディン®軟膏:油脂性のプラスチベースが基剤のため、乾燥した創面に適する。血流増加・血管新生を介して肉芽形成を促進する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p90-93
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p125
- 参考:創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023) -1 創傷一般(第3版) 日皮会誌:133(11), 2519-2564, 2023のp2532-2534
関連問題
選択問題25:解答 1
掌蹠に存在するタイプ2ケラチンはケラチン1→1
ケラチンと先天性皮膚疾患
ケラチンは角化細胞の細胞骨格を担い、酸性のタイプⅠケラチンと中性〜塩基性のタイプⅡケラチンが重合して中間経線維を形成する
- タイプⅠケラチン:ケラチン9〜40
- タイプⅡケラチン:ケラチン1〜8
組織によって発現するケラチンが異なり、またケラチン関連の遺伝子変異により先天性皮膚疾患を合併する
ケラチン | 発現組織 | 疾患 |
1/10 | 有棘細胞 | 表皮融解性魚鱗癬 (水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症) |
1/9 | 有棘細胞(掌蹠) | Vörner 型掌蹠角化症 |
2/10 | 有棘層上層〜顆粒層 | 表在性表皮融解性魚鱗癬 (Siemens型水疱性魚鱗癬) |
3/12 | 角膜上皮細胞 | Meesmann角膜ジストロフィ |
4/13 | 粘膜上皮 | 白色海綿状母斑 |
5/14 | 基底細胞 | 単純型表皮水疱症 |
6a・6b/16・17 | 爪 | 先天性爪甲肥厚症 |
掌蹠に発現するケラチンはケラチン1/9であり、タイプ2ケラチンはケラチン1となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p11
関連問題
ケラチンの発現部位に関する問題は頻出。詳細は下記にまとめた
とくに2019 選択14(掌蹠に発現するタイプⅠケラチン)はかなり類似している
-
ケラチン 発現部位と先天性皮膚疾患 まとめ
続きを見る
選択問題26:解答 2, 3
円形脱毛症におけるトリコスコピー所見を問う問題
黒点や感嘆符毛が見られるものが該当→2, 3
円形脱毛症 ダーモスコピー (トリコスコピー)
活動期の所見:感嘆符毛(漸減毛)・黒点・断裂毛
- 黒点(black dot):短く毛が切れることで毛包内に観察される所見。円形脱毛症のほか、トリコチロマニアでも生じうる
- 断裂毛(broken hairs):不規則に断裂した短い毛。円形脱毛症やトリコチロマニアで見られる
- 感嘆符毛(exclamation mark hair):Tapering hairs(漸減毛)とも。円形脱毛症に特異的な、近位側にむかって毛根径が細くなる短く切れた毛
下記は慢性期の所見
黄色点(yellow dots):皮脂や角化物が貯留し黄色く見える毛孔のこと。円形脱毛症のほか、男性型・女性型脱毛症でも生じうる

参考サイトより引用
なお令和4(2022)年度の診療報酬改定で、円形脱毛症に対するダーモスコピーが算定可能となった(72点で4ヶ月に1回算定可, 日光角化症も同時に追加)
- 1. 矢印部分で鱗屑が見られ、perifollicular scalesに該当すると思われる。瘢痕性脱毛症で見られる所見
- 2. 矢印部分で感嘆符毛が見られる
- 3. 矢印部分で黒色点が、矢頭部分で断裂毛が見られる
- 4・5. 一見黒点様だが、1本1本がながくまたそれ以外の所見が乏しいので円形脱毛症としては否定的
正解選択肢は問題ないと思いますが、その他選択肢はあまり自身がないのでトリコスコピーに詳しい方がいたらコメントください
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p368
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p752
- 参考・図引用:円形脱毛症診療ガイドライン 2024 日皮会誌:134(10), 2491-2526, 2024のp2502
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 毛髪疾患診療のためのトリコスコピーの活用法:病態に基づいたフローチャート法と診断の実際 日皮会誌:131(4), 671-678, 2021
関連問題
過去問では単語を問うのみであったが、本問は実際に画像所見を知らないと解けないという点で新しい。ガイドラインでも2024年版からトリコスコピー写真が追加されている
選択問題27:解答 2
皮膚エコーに関する出題
粉瘤では後方エコー"増強"が特徴→2
- 1. 石灰化した病変(ex. 石灰化上皮腫 毛母腫)では内部が高エコーとなり、後方エコーが減弱する(acoustic shadow)。皮膚科ではないが胆石と同じ
- 2. 粉瘤(表皮嚢腫)では後方エコー"増強"が特徴的な所見
- 3. 皮膚の浅層から高輝度の角質→低エコーの有棘層および基底層→高エコーな真皮→低エコーな脂肪織となる
- 4. 表在性の皮膚では10MHz以上の高周波を用いる。到達深度は浅いが解像度が高くなる
- 5. カラードプラー法よりパワードプラー法の方が低流速の感度に優れる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p85(1)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p107(3)
- 参考書籍:こんなに役立つ皮膚エコー p46(1)/105(2)/3(3)/15(4)/22(5)
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 皮膚超音波学入門 日皮会誌:123(14), 3067-3076, 2013
関連問題
- 2019 選択76 (神経鞘腫のエコー)
選択問題28:解答 2, 4
中高年女性で、四肢の紫斑としびれをきたしており、一部水疱形成を生じている。組織学的に著明な好酸球浸潤がみられ、EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)の診断
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA)
ANCA関連血管炎の一つ
気管支喘息やアレルギー性鼻炎が発症の数年前から先行
→その後末梢神経障害や下腿潰瘍などの血管炎症状をきたす
- 組織:白血球破砕性血管炎(leukocytoclastic vasculitis)がみられ、好酸球浸潤や肉芽形成を伴う
- 検査:好酸球著増やMPO-ANCA(P-ANCA)陽性が特徴
※MPO-ANCA陽性例は臓器病変(腎炎・肺胞出血)が強い
治療はステロイドやIVIgの他、IL-5(好酸球遊走に関与)のモノクローナル抗体製剤メポリズマブ(ヌーカラ®)が保険適用
2024/12、同じターゲットであるベンラリズマブ(ファセンラ®)もEGPAに対して追加承認された
- 1. 末梢血好酸球は"著増"する
- 2. EGPAによる皮膚症状は紫斑や水疱/血疱が基本だが、重症化すると潰瘍・壊疽をきたす
- 3. メポリズマブが保険適用であり、IL-5が病態に関与する。IL-1βは家族性地中海熱やクリオピリン関連周期熱症候群の病態に関与し、抗体製剤であるカナキヌマブ(イラリス®)が用いられる
- 4. 組織では好酸球浸潤・壊死性血管炎と肉芽腫反応が3徴
- 5. MPO-ANCAの陽性率は"約50%"で(=陰性でもEGPAを否定できない)、陽性例は内臓病変をきたしやすい。活動期のGPA*におけるPR3-ANCAの陽性率は90%
*GPA = 多発血管炎性肉芽腫症(Wegener症候群)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p170(1・4・5)/217(3)/171(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p222/204(3)/219(5)
関連問題(EGPA)
- 2022 選択29 (メポリズマブが保険適用)
- 2016 選択31 / 2010 選択27 (EGPAはMPO-ANCA陽性)
- 2013 記述7 / 2011 選択37 (臨床問題・症状)
- 2010 選択62 (EGPAの末梢神経障害はIVIgが保険適用)
選択問題29:解答 3
中波紫外線(UVB)療法が保険適用外なのは結節性痒疹→3
皮膚科光線療法 保険適用疾患
保険点数は下記
- 通常のUVAやUVB:150点
- ナローバンドUVB(311±2nm)やエキシマライト(308±2nm):340点
- 1・2・4・5. 掌蹠膿疱症・円形脱毛症・アトピー性皮膚炎・慢性苔癬状粃糠疹:これらはいずれも保険適用
- 3. 結節性痒疹:ガイドラインでは推奨度C1(施行して良い方法と思われる)だが、保険適用ではない。アトピー性皮膚炎に合併した場合は保険適用で実施可能
- 参考:J054 皮膚科光線療法(1日につき)
- 選択肢3の参考:痒疹診療ガイドライン2020 日皮会誌:130(7), 1607-1626, 2020のp1616
関連問題(光線療法 保険適用)
- 2023 選択83 / 2022 選択27 / 2020 選択98 (円形脱毛症)
- 2020 選択47 / 2019 選択100 (掌蹠膿疱症, 痒疹)
選択問題30:解答 1, 2, 4
遺伝性血管性浮腫に関する出題
遺伝性血管性浮腫(HAE) 病型分類と治療
病型分類
HAEは3型に分類され、C1インヒビター(C1-INH)の活性/蛋白量や補体C4濃度によって分類される。いずれもブラジキニン過剰産生が病態となる
1型 | 2型 | 3型 | |
補体C4 | 低下 | 低下 | 正常 |
C1-INH活性 | 低下 | 低下 | 正常 |
C1-INH蛋白量 | 低下 | 正常〜上昇 | 正常 |
疫学的には1型が85〜90%、2型が15%程度で3型は稀
C4は3型以外で(発作時も非発作時も)低下し、保険適用で測定可能なためスクリーニングで測定される
治療
HAEは外傷や抜歯術などの侵襲、精神的ストレスを契機に急性発作をきたす
治療は発作時治療と長期予防に分けて考える
発作時治療
急性発作時の治療薬は下記がある
作用機序 | 一般名 | 商品名 | 投与経路 | 発売年 |
ブラジキニンB2受容体拮抗薬 | イカチバント | フィラジル® | 皮下注 (自己注可) | 2018 |
C1-INH欠損/機能不全を補う補充療法 | C1-INH製剤 | ベリナート® | 静注 | 1990(侵襲を伴う処置前の発症抑制は2017) |
抗ヒスタミン薬・ステロイド薬は無効で、エピネフリンも多くの場合無効
長期予防
長期予防薬は近年複数の新薬が発売されている
作用機序 | 一般名 | 商品名 | 投与経路 | 発売年 |
C1-INH欠損/機能不全を補う補充療法 | C1-INH製剤 | ベリナート®※ | 皮下注(自己注可) | 2022 |
カリクレイン*阻害 *ブラジキニン産生に関わる | ラナデルマブ | タクザイロ® | 皮下注(病院で投与) | 2022 |
ベロトラルスタット | オラデオ® | 内服 | 2021 |
※長期予防の場合はベリナート®皮下注2000であり、急性発作時/短期予防の治療とは製剤が異なる
その他トラネキサム酸やダナゾール(アンドロゲン製剤)も用いられる
※ヒスタミンが関与するものでは皮膚症状:蕁麻疹の合併が見られるが、ブラジキニン起因性のものでは原則蕁麻疹を合併せず粘膜症状のみ
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p133(1・2・3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p177(1・2・3)
- 参考:遺伝性血管性浮腫 診療ガイドライン 改訂2019年版 補体57(1), 2020
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 血管性浮腫の診断と治療 日皮会誌:133(11), 2581-2587, 2023
関連問題(血管性浮腫)
- 2023 選択32 / 2016 選択51 / 2013 選択49 / 2012 選択51 / 2009 選択61 (血管性浮腫の原因, 病態など)
- 2022 選択60 (イカチバントのターゲット)
- 2021 選択64 / 2019 選択63 (急性発作時の治療)
- 2020 選択87 (ACE阻害薬の作用部位)
選択問題31〜60は下記
-
令和6(2024)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題31〜60
続きを見る