皮膚科 皮膚科専門医試験対策

令和6(2024)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜30

2025年2月16日

2024-Specialist-1

日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和6(2024)年度解答解説を作成しました

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令和6年度(2024年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜30

選択問題1:解答 2

日本人アトピー性皮膚炎患者のうち、フィラグリン(FLG)遺伝子変異を有するのは約25%→2

人種差はあるが概ね20-30%程度(欧州では≧40%)とされる

FLG遺伝子変異が原因となる常染色体半優性遺伝疾患として尋常性魚鱗癬がある

フィラグリンと分解産物、アトピー性皮膚炎

表皮顆粒層に存在するケラトヒアリン顆粒の主成分がプロフィラグリン

これが分解されるとフィラグリン、さらに分解されると天然保湿因子(NMF Natural Moisturizing Factor)と呼ばれるアミノ酸になる。NMFは角層上層で皮膚の保水機能や紫外線吸収能・角層pHを弱酸性に保つ作用等を持ち、皮膚バリアに関わる

2024-ADcytokine

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024 図2に追記

上図の通り、アトピー性皮膚炎ではTh2系サイトカイン(IL-4やIL-13)が過剰となり、フィラグリン発現が低下していることが知られている

(→治療に抗IL-4/13抗体製剤であるデュピルマブ等が用いられる)

関連問題

選択問題2:解答 3

色素性乾皮症において、MED低下がみられないのはE型(+C型・V型)→3

色素性乾皮症

常染色体劣性遺伝疾患で、紫外線によるDNA損傷を修復する機構に異常があり若年から皮膚悪性腫瘍を合併しやすい

原因遺伝子によってA〜G群+V型に分けられ、A〜G群ではDNA除去修復酵素に異常が、V型は損傷乗り越え複製機構に異常がある

病型比率(日本人)MED低下神経症状癌初発平均年齢
A55%あり+9.7
B0%あり±-
C少ないなし-14.0
D少ないあり±38.0
E少ないなし-38.3
F少ないあり±43.7
Gあり±32.0
V25%なし-41.5

C/E/VはMED低下なし・神経症状なしと共通項が多い(色素異常型)。疫学的な問題からXP-AとXP-Vの鑑別が重要

  • 1. A型:日本人で最も多い病型で、若年(10代)から発癌をきたす重症型
  • 2. B型:日本では報告のない病型
  • 3. E型:MED低下をきたさず、神経症状も伴わない病型
  • 4・5. F型・G型:日本人では稀な病型
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p234
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p279

関連問題(色素性乾皮症)

選択問題3:解答 2

手術で用いられる器具の名称を写真から選択する問題

先端が極端に細くなる鑷子はアドソン鑷子→2

  • 1. ケリー:やや大型の剥離鉗子で産婦人科などで用いられる。皮膚外科でよく用いる鉗子はモスキート
  • 2. アドソン:先端が細く緻密な作業に向いた鑷子で、皮膚外科で用いられる
  • 3. マッカンドー:一般的な鑷子だが先端の細くなり方がアドソンほど急ではない
  • 4. メッツェンバウム:組織剥離に用いる剪刀(はさみ)
  • 5. ビショップ・ハーモン:3つ穴があいた鑷子のこと

それぞれの写真は以下

選択問題4:解答 5

組織像と関連するダーモスコピー所見を問う問題

境界明瞭な隆起性病変で、類円形細胞の増殖と管腔形成がみられることからエクリン汗孔腫の診断

2016-eccrineporoma-pathology

参考文献 Figure1より引用

ダーモスコピーではGlomerular vessels(糸球体状血管)が特徴→5

2018-eccrineporoma-dermoscopy

参考サイトより引用, 臨床的に足の境界明瞭な紅色結節でダーモスコピーでは血管構造

血管構造が多いため、ダーモスコピーではヘアピン状血管も見られる

  • 1. Pigment network(色素ネットワーク):メラニンの分布密度の差によって褐色の網目模様が形成されるもの。通常メラノサイト病変の所見だが、例外的に皮膚線維腫でも見られる
  • 2. Multiple milia-like cysts(多発性稗粒腫様嚢腫):褐色病変の中にみられる白色点で、脂漏性角化症※の偽角化嚢腫に対応する
  • 3. Arborizing vessels(樹枝状血管):分枝状で太さの不均一な腫瘍表面の毛細血管で、基底細胞癌に特徴的な所見
  • 4. Brown dots/globules(小点・小球):塊状のメラニン顆粒のこと
  • 5. Glomerular vessels:塊状に蛇行した毛細血管が腎糸球体のようにみえる所見で、エクリン汗孔腫の他Bowen病でもみられる

※脂漏性角化症のダーモスコピー所見では面皰様開大(comedo-like openings)も有名

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関連問題

「あたらしい皮膚科学」ではGlomerular vesselsをきたす疾患にBowen病しか記載がなくエクリン汗孔腫は難易度が高いのだが、試験では(なぜか)頻出事項となっている

選択問題5:解答 1, 3

メラノーマについての問題

  • 1. 抗PD-1抗体の奏効率は欧米と比して日本で低い。欧米と比較して末端黒子型や粘膜型が多いことが要因の一つと考えられている→✗
  • 2. Low-CSDメラノーマ(≒表在拡大型)ではBRAF V600E変異陽性率が高く、体幹四肢だと56〜72%。一方で手掌足底(末端黒子型)では9〜13%と低い
  • 3. 海外では進行期メラノーマに対するBRAF/MEK阻害剤+抗PD-1抗体の3剤併用療法が薬事承認されているが、日本では未承認→✗
  • 4. 臨床的に明らかな領域リンパ節転移例に対して、リンパ節郭清後に術後放射線療法を行うことで領域リンパ節再発が減少する
  • 5. メラノーマ診療ガイドライン2019ではセンチネルリンパ節転移陽性例にリンパ節郭清術を実施しないことが提案されている※

※新版の2025では少し表現が変わり「センチネルリンパ節転移陽性例に対して早期リンパ節郭清を行うことは勧められるか?→実施しないことを提案」となっている(本問出題当時は2025ガイドラインが発行されておらず2019が最新だった)

センチネルリンパ節生検 メラノーマ

センチネルリンパ節生検(SLNB sentinel lymph node biopsy) = メラノーマが最初に転移するリンパ節を選択的に生検する手技

現在下記の疾患で保険適用となっている

SLNBの意義について、考え方が変わってきている

  1. 従来の考え:SLNに転移していれば、他の所属リンパ節にも転移している可能性が高いのでリンパ節郭清、逆にSLNへ転移がなければ経過観察※
  2. 最近の研究ではSLNB陽性→すぐリンパ節郭清しても、全生存期間(OS)が延長しないという結果が出てきた。これは従来と比べて免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬を用いた術後補助化学療法など、手術以外の治療選択肢が増えてきたのが理由の一つ。一方郭清に伴う副作用があるのは先述の通り
  3. 最近(2025年):SLNB陽性でもすぐにリンパ節郭清をしない(経過観察して明らかなリンパ節転移が見つかってから対応)流れになっている

※リンパ節郭清をすることでリンパ浮腫等の副作用もあるため、不要な過剰侵襲を控える

FAQ

Q. 「陽性であってもリンパ節郭清しないのに、手間暇かけてSLNBを行う意義があるのか?」

A. SLNBは正確な病期診断やその後の治療選択決定(ステージによって可能な術後補助化学療法が異なる)、予後予測などに有用

関連問題

選択問題6:解答 5

壊疽性膿皮症に関する問題

基礎疾患としては潰瘍性大腸炎が最多→5

壊疽性膿皮症

主に下腿で生じ初期は痤瘡/膿疱様の皮疹だが、辺縁が堤防状に隆起した潰瘍となる。稀な病型としてストマ周囲に生じるものがある

潰瘍は無菌性で、組織学的に真皮で好中球浸潤がみられる

治療:ステロイドやシクロスポリンの他、TNF-α阻害薬が用いられる(現在保険適用はアダリムマブ:ヒュミラ®のみ)

基礎疾患

本症は半数程度で基礎疾患に伴って発症する

潰瘍性大腸炎(46.6%)>>>関節リウマチ(19.3%)>血液悪性腫瘍(17.2%)クローン病(14.3%)>大動脈炎症候群(2.5%)
※カッコ内は基礎疾患全体における比率

  • 1. 臨床病型では潰瘍型が最多で8割以上(373/464)を占める。稀な病型としてストマ周囲型がある
  • 2. 20〜60歳に好発し、小児の占める割合は4〜5%と少ない
  • 3. 外的刺激や侵襲による症状増悪をPathergyと呼び、壊疽性膿皮症患者の20〜30%に見られる
  • 4. 発生部位では下腿伸側に好発し6割以上(314/518)。その他体幹や殿部など
  • 5. 合併症の中では潰瘍性大腸炎が最多で関節リウマチは2番目→✗

関連問題(壊疽性膿皮症)

選択問題7:解答 4

前立腺癌治療薬(アンドロゲン受容体拮抗薬)であるアパルタミド(アーリーダ®)による皮膚障害について

  • 1・3. 日本人集団における皮疹の発現頻度は51.5%で、全体集団(25.1%)より高頻度であった
  • 2. DLST*は陽性例も陰性例もあるが、TEN*においては陽性例が多かったと報告されている
  • 4. 日本人投与患者のうち、15%程度でgrade3以上の重症皮膚障害がみられた→◯
  • 5. 非アレルギー性の機序(≒DLST陰性)であれば減量投与で投与継続が可能となるが、アレルギー性機序の皮疹であれば致死的となる可能性がある

*DLST = drug-induced lymphocyte stimulation test(リンパ球刺激試験), TEN = 中毒性表皮壊死症

  • 参考:抗アンドロゲン薬による薬疹 臨床皮膚科77(5増), p32-36, 2023
  • 参考:新しい薬疹:分子標的薬, 抗アンドロゲン薬など 臨床皮膚科78(5増), p10-16, 2024

選択問題8:解答 3

栄養障害型表皮水疱症に関する出題

係留線維をコードする7型コラーゲン遺伝子の変異が原因となり、基底板より深層で解離が認められる→3

  • 1. 自家培養表皮移植(ジェイス®)は表皮水疱症にも保険適用となっている(2019/7)。もともとは重症熱傷が適用疾患だった
  • 2. 常染色体優性遺伝形式ないし劣性遺伝形式をとり、劣性遺伝形式の方が重症
  • 3. 係留線維は基底板と真皮膠原線維(1/3型コラーゲン)を結合しており、基底板より下層の表皮下水疱を生じる→✗
  • 4. 係留線維をコードするⅦ型コラーゲン遺伝子変異が病因
  • 5. 重症汎発型の栄養障害型表皮水疱症では水疱やびらんの治癒後、稗粒腫や瘢痕が残る※。稗粒腫に関しては水疱性類天疱瘡や後天性表皮水疱症で見られることもある

※一方表皮基底細胞に発現するケラチン5/14が病因となる単純型表皮水疱症は表皮内水疱をきたし、瘢痕を残さず治癒する(→浅いヤケドが瘢痕にならないのと同じ)

表皮水疱症と自家培養表皮移植

表皮水疱症に対して自家培養表皮移植を行っても、基本的には(遺伝子変異が治るわけではないので)移植した皮膚に再度水疱・びらんを形成してしまい根本的治療とはならない

しかし表皮水疱症では一部の体細胞で相同組換が生じ、その結果原因遺伝子が"正常に復帰"しその部分だけ疾患症状を呈さなくなる現象(復帰変異モザイク)が生じることがある。

この復帰変異モザイクが生じた部分は水疱・びらん形成をきたさない正常皮膚となるため、同部位を培養・移植することで表皮水疱症に対する根本的治療となることが期待されている

関連問題

表皮水疱症の病型と原因遺伝子は頻出。詳細は下記にまとめた

Epidermolysis-Bullosa
先天性表皮水疱症の病型と原因蛋白・遺伝形式まとめ

続きを見る

選択問題9:解答 2, 4

化膿性汗腺炎に関する出題

殿部型が最も多く、喫煙は重症化因子となる→2, 4

※「化膿性汗腺炎」は下記二通りの使われ方がある

  • 広義:臀部慢性膿皮症を含めた毛包の慢性炎症性疾患の総称
  • 狭義:女性の腋窩に好発するもののみを呼び、臀部病変は含めない(臀部病変は慢性膿皮症と呼称)

現在は広義の意味で使われることが一般的(→「化膿性汗腺炎の好発部位は臀部である」は正しくなる)

※「あたらしい皮膚科学」は化膿性汗腺炎が狭義の意味で記載されているので注意。「皮膚科学」も10版は狭義の意味だったが11版になって広義となった

関連問題

選択問題10:解答 5

往診と訪問診療との違いについて

診療計画を立てて行われるのが在宅医療(訪問診療)で、患者やその家族の求めに応じて行われるのが往診→5

  • 1. 在宅診療を行うか否かにかかわらず、診療所は開設後10日以内に管轄の保健所へ開設届の提出が必要(医療法第8条)。なお"届出制"だが、実務上は着工前に保健所と相談することが普通
  • 2. 訪問診療も往診も保険診療として行われる。往診は夜間含め突発的に発生するため医療者負担が大きく、診療報酬点数が高く設定されている
  • 3. グループホームなど施設に訪問する場合と、個人住居に訪問する場合で診療報酬点数が異なる(前者の方が低い;一度に多くの患者を診察可能なため)
  • 4. 訪問診療・往診ともに疾病/傷病のため通院が困難な患者が対象となり、年齢は問わない。ex. 小児悪性腫瘍の終末期でも対象となる
  • 5. あらかじめ診療計画を立てておき(2週間に1回など)定期的に訪問するのが訪問診療で、急変時・看取り時など患者ないし患者家族の求めに応じて随時行われるのが往診

本問は"「在宅医療」と「往診」の違い"となっているが、一般的には在宅医療=訪問診療+往診を包括する単語として扱われている。つまり"「訪問診療」と「往診」の違い"としたほうが妥当なように筆者は感じた

↑一番下は自分が前に書いた記事です(隙あらば宣伝)

選択問題11:解答 3

円形脱毛症におけるSALTスコアを計算する問題

SALTスコアと円形脱毛症 JAK阻害薬

SALT = severity of alopecia tool, 脱毛の重症度評価ツールで、数値が大きいほど重症の脱毛となる

頭部被髪部を4箇所にわけ、それぞれの部位における脱毛割合から頭皮全体における脱毛面積を計算し、合計する

部位割合(%)
頭頂部40
後頭部24
右側頭部18
左側頭部18
合計100
2024-SALTscore

参考サイトより引用

Maxは全脱毛=SLATスコア100となる。眉毛や睫毛は評価項目に含まれないので注意

本問においては下記の通り

  • 頭頂部:40 x 0.25 = 10
  • 後頭部:24 x 0.25 = 6
  • 右側頭部:18 x 0.5 = 9
  • 左側頭部:18 x 0.5 =9

よって合計は10+6+6+9 = 34→3

円形脱毛症におけるJAK阻害薬

慢性期の重症円形脱毛症に対して、2025年現在2剤が保険適用となっている

一般名商品名ターゲット年齢
バリシチニブオルミエント®JAK1/JAK215歳〜(成人)
リトレシチニブリットフーロ®JAK3/TECファミリー12歳〜

いずれも下記の条件を満たすことが必要

  • 頭部全体の概ね50%以上に脱毛が認められる(=SALTスコア≧50)
  • 過去6ヶ月程度毛髪に自然再生が認められない

SALTスコアはアトピー性皮膚炎のEASIスコアと並んで薬剤の保険適用決定に用いられる(一方乾癬のPASIスコアは保険適用と関係しない)。円形脱毛症におけるJAK阻害薬は2022年〜と比較的最近の発売なのでトピックとして重要

関連問題

選択問題12:解答 5

経口ステロイドが有効な物理性じんま疹は遅延性圧じんま疹→5

関連問題(物理性蕁麻疹)

選択問題13:解答 1, 2

アトピー性皮膚炎の評価スコアに関する問題

アトピー性皮膚炎 評価スコア EASIスコアなど

EASI(eczema area and severity index)スコア

湿疹の面積と重症度を示すスコア

全身を頭部/頚・体幹・上肢・下肢の4箇所にわけ、皮膚所見(紅斑・浸潤/丘疹・掻破痕・苔癬化)の程度に応じて0〜3点でスコア化したものに病変面積に応じたスコアをかけて算出する

2024-EASI

参考文献 表3(p2756)より引用

皮疹スコアは4項目x3点で12点がMaxで、面積スコアは90-100%の6点がMaxなので、両者をかけ合わせた72点が最高点となる

POEM(The Patient Oriented Eczema Measure):患者主導の湿疹評価

直近1週間での湿疹症状に関する患者ないし保護者への質問票で、7つの質問に対して症状がのいずれであったかを解答する

2024-POEM

成人の場合, 参考文献 表6-1(p2758)より

症状頻度に応じて0〜4点でスコアが付けられ(→0〜28点)、総合点が高いほど重症度が上がる

スコア評価
0〜2点消失またはほぼ消失
3〜7点軽度の湿疹
8〜16点中等度の湿疹
17〜24点重度の湿疹
25〜28点非常に重度の湿疹

ADCT(Atopic Dermatitis Control Tool):アトピー性皮膚炎のコントロール状態を評価する指標

直近1週間でのアトピー性皮膚炎の状態に関する質問票で0〜4点で6項目を解答(→点数は0〜24点)し、7点以上だとコントロール状態が悪いことを示す

2024-ADCT

参考サイトより引用

EASIは医療者の評価する客観的スコアで、POEMやADCTは患者自身が評価する主観的スコア

とくにEASIスコアはアトピー性皮膚炎の生物学的製剤や分子標的治療薬使用の目安として利用される

一般名商品名ターゲットEASIスコア
デュピルマブデュピクセント®IL-4/1316以上※
トラロキヌマブアドトラーザ®IL-13
レブリキズマブイブグリース®IL-13
バリシチニブオルミエント®JAK1/JAK2
ウパダシチニブリンヴォック®JAK1
アブロシチニブサイバインコ®JAK1
ネモリズマブミチーガ®IL-31RA10以上

※顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する場合(目安として頭頚部のEASIスコア≧2.4)でも可

  • 1. EASIスコアの満点は"72点"
  • 2. EASIの評価項目は紅斑・"浸潤"/丘疹、掻爬痕、"苔癬化"の4項目。落屑は乾癬評価スコアのPASI(psoriasis area and severity index)に含まれる
  • 3. POEMの合計スコア17点は重度の湿疹に分類される
  • 4. ADCTの合計スコア7点はコントロール不良を示唆する
  • 5. POEMでは7日中、0日/1〜2日/3〜4日/5〜6日/毎日のいずれかを選択する

関連問題(EAISスコア)

選択問題14:解答 5

mRNAワクチンを作成する際、強すぎる免疫反応を抑えるために行われる修飾はシュードウリジン化→5

mRNAは通常4種類のコドン(アデニンA・ウラシルU・グアニンG・シトシンC)から構成されている。

人工的に合成したmRNAはそのまま体内に取り込まれると自然免疫が活性化してしまい、異物として除去されてしまうが、ここでウリジン※をシュードウリジンに置き換えることで自然免疫が抑制される

→mRNAが異物として排除されずらくなり、またウイルス除去に働く目的のタンパク質を効率的に産生することができる

※ウリジンはウラシルUとリボースが結合した物質

この技術を応用してCOVID-19ワクチンが作成され、カタリン・カリコ博士とドリュー・ワイスマン博士が2023年にノーベル医学・生理学賞を受賞した

関連問題

  • 2022 選択94 (コロナウイルスオミクロン株における変異点)
  • 2022 選択43 (2021年ノーベル医学生理学賞受賞者)

選択問題15:解答 1

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)に対してIVIg療法後、手掌に見られた小水疱

KOH-から汗疱が考えられ、組織学的には表皮内水疱が特徴→1

IVIg後の副作用として皮膚症状は0.1〜5%未満であり、汗疱ないし汗疱を伴った湿疹性病変が見られる

  • 1. 表皮内水疱:表皮内で強い炎症をきたす疾患(ex. 急性湿疹)や自己免疫性水疱症(ex. 尋常性天疱瘡)で見られる所見。表皮内炎症の所見としては海綿状態も重要
  • 2. 角層下膿疱:汗疱と鑑別が必要となる掌蹠膿疱症で見られる所見。その他尋常性乾癬で特徴的なマンロー微小膿瘍※が該当
  • 3. 表皮稜(表皮突起)の延長:尋常性乾癬で特徴的な所見
  • 4. 真皮浅層の好酸球浸潤:好酸球浸潤が特徴的な疾患として、類天疱瘡や好酸球性蜂窩織炎(Wells症候群)でみられるflame figuresがある
  • 5. 表皮真皮境界部の空胞変性(境界部皮膚炎, 液状変性):扁平苔癬や多形紅斑、SLEなどでみられる所見

※マンロー微小膿瘍は角層下のものを指し、膿疱性乾癬でみられるKogoj海綿状膿疱は表皮有棘層上層の膿疱を指す。混同に注意

関連問題

選択問題16:解答 5

2020/2021年に行われた個人情報保護法の改正に伴う生命・医学系指針(人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針)の改正に関する問題

  • 1. 「匿名化」や「対応表」など改正個人情報保護法で使用されていない用語は使わないことになった。匿名化=個人を特定できる情報を取り除く処理
  • 2. 大学病院などの学術研究機関における医学研究の多くは「学術例外」に該当する。学術例外に該当すると、利用目的による制限・要配慮個人情報の取得制限・第三者提供の制限など一般の個人情報取扱事業者に課せられる規制が緩くなる
  • 3. 研究対象者から新たに要配慮個人情報を取得して研究する場合、原則IC*手続きが必要。ただし研究の実施等について研究対象者等が拒否する機会を保障するなどの条件を満たせば簡略化できる
  • 4. 自機関で保有する既存試料/情報で特定の個人を識別できない状態に管理されているものであれば、IC手続きを行わず使用可能(そもそも特定の個人が識別できなくなっていれば誰にIC手続きを取ればよいのかという問題がある)
  • 5. 死者に係る情報を用いる研究については、生存する個人の情報と同様に取り扱う旨が規定されている

*IC = informed consent

※個人情報保護法では営利企業が個人情報を収集して宣伝/販売活動に利用するような状況が想定されており、個人のプライバシーを保護する観点から厳しい規制となっている。一方研究分野においては厳しい規制を課して学術研究が阻害される→研究が進まなくなり診断や治療の進歩がなくなる方が、個人情報保護よりも利益が高いと考えられるためこのような運用となっている

関連問題

選択問題17:解答 3, 4, 5

掌蹠膿疱症に対して保険適用の薬剤は下記3つ→3, 4, 5

一般名商品名ターゲット
グセルクマブトレムフィア®IL-23p19
リサンキズマブスキリージ®
ブロダルマブルミセフ®IL-17RA
  • 1. スペソリマブ(スペビゴ®):抗IL-36R抗体製剤で、膿疱性乾癬の急性症状に対して使われる。近年の他Bio製剤と異なり点滴製剤
  • 2. セクキヌマブ(コセンティクス®):抗IL-17A抗体製剤で、尋常性乾癬や乾癬性関節炎に対して使われる。投与4週まで毎週連続投与する
  • 3. ブロダルマブ:IL-17阻害剤としては掌蹠膿疱症で初めて承認された。病巣感染の顕在化および壊疽性膿皮症の発現に留意が必要
  • 4. グセルクマブ:掌蹠膿疱症で初めて承認された生物学的製剤
  • 5. リサンキズマブ:グセルクマブとターゲットは同じだが、最終的な投与間隔が12週と長い(グセルクマブは8週)

関連問題

選択問題18:解答 2

クリオグロブリン血症に関する問題

クリオグロブリン血症

4℃で沈殿・37℃で溶解する性質を持った異常免疫グロブリンが生じる疾患

免疫グロブリン(Ig)のクローナリティで分類され、背景にIg増殖をきたす原疾患が存在する場合が多い

免疫グロブリン原疾患病態
Ⅰ型単クローン性IgM/IgG多発性骨髄腫微小血栓
Waldenstromマクログロブリン血症
Ⅱ型単クローン性IgM
+ 多クローン性IgG
C型肝炎免疫複合体性血管炎
関節リウマチ
Ⅲ型多クローン性Ig
(IgM or IgG)
膠原病
(SLE・Sjögren症候群等)
免疫複合体性血管炎
感染症
(ウイルス性肝炎・伝染性単核球症)
  • 単クローン型=腫瘍性増殖 (ex. 多発性骨髄腫)
  • 多クローン型=反応性増殖 (ex. 炎症性疾患)

Ⅰ型とⅡ・Ⅲ型は原疾患が大きく異なるが、II型とIII型間の違いは小さい(臨床症状も原疾患も重複する)。II型・III型はあわせて混合型とも呼ばれる

  • 1. クリオグロブリン血症性血管炎はChapel Hill分類において、小血管炎>免疫複合体性小型血管炎に分類されている。その他ANCA関連血管炎も小血管炎に分類されている
  • 2. 混合性クリオグロブリン血症(Ⅱ・Ⅲ型)では血管炎の症状が主体で、I型では血栓症が主体。過粘稠度症候群はⅠ型の基礎疾患であるマクログロブリン血症や多発性骨髄腫で見られる
  • 3. シェーグレン症候群はクリオグロブリン血症Ⅱ・Ⅲ型の基礎疾患の一つ
  • 4. リベドやレイノー現象は皮膚症状の一つ
  • 5. 低温(4℃)で沈殿・37℃で溶解する性質を持つ異常免疫グロブリンのことをクリオグロブリンと呼ぶ

関連問題

選択問題19:解答 1, 5

カンジダ症に保険適用のない抗真菌薬はリラナフタートとエフィナコナゾール→1, 5

皮膚カンジダ症に対して使用される抗真菌外用薬

系統一般名商品名
イミダゾールケトコナゾールニゾラール®
ネチコナゾールアトラント®
ルリコナゾールルリコン®
ラノコナゾールアスタット®
ビホナゾールマイコスポール®
クロトリマゾールエンペシド®
ミコナゾールフロリードD®
モルホリンアモロルフィンペキロン®
アリルアミンテルビナフィンラミシール®

青文字は白癬と共通

白癬に対して使用される抗真菌外用薬

ここでの白癬は足白癬や股部白癬など(爪白癬ではない)

系統一般名商品名
イミダゾールケトコナゾールニゾラール®
ネチコナゾールアトラント®
ルリコナゾールルリコン®
ラノコナゾールアスタット®
ビホナゾールマイコスポール®
モルホリンアモロルフィンペキロン®
アリルアミンテルビナフィンラミシール®
ベンジルアミンブテナフィンメンタックス®, ボレー®
チオカルバミン酸リラナフタートゼフナート®

青文字は皮膚カンジダ症と共通

双方とも使える外用薬が多いので、使えないものを把握しておく

  • リラナフタート(ゼフナート®):白癬にのみ保険適用
  • アロモルフィン(ペキロン®):カンジダ・白癬ともに保険適用。非イミダゾール系のためイミダゾール系で接触皮膚炎を来した際も使用可能
  • テルビナフィン(ラミシール®):外用薬はカンジダ・白癬ともに用いられる。内服薬がありこちらは爪白癬にも使用される(一方外用薬は爪白癬に保険適用がない)
  • ラノコナゾール(アスタット®):イミダゾール系抗真菌薬でカンジダ・白癬ともに用いられる
  • エフィナコナゾール(クレナフィン®):爪白癬専用の外用薬。使用前に直接鏡検または培養等による診断が求められている

関連問題

白癬/カンジダ症に用いられる抗真菌薬は頻出。詳細は下記にまとめた

220528-tinea-candida
皮膚真菌症 抗真菌薬のまとめ【白癬・カンジダ・爪白癬】

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選択問題20:解答 2

若年女性の下腿に見られた網状皮斑(リベド)

組織では真皮深層で血管周囲の炎症細胞浸潤が見られる。血管が静脈か動脈かが難しいところだが、EVG染色からは静脈と考えられるので、血栓性静脈炎に該当→2

下腿の動静脈 EVG染色

下腿は立位による血液重力負担がかかるため、静脈でも通常の部分と比較して血管壁が厚くなりやすい。また静脈も弾性線維に富む血管壁を持つので、とくにHE染色では動脈と区別が難しい

下記のような点で鑑別するのが良いとされる

動脈静脈
内弾性板均一で一層内膜側に弾性線維の形成像がみられ、内弾性板に類似
血管壁の弾性線維乏しい豊富
血管壁の平滑筋層隙間の少ない緊密な平滑筋層隙間の多い不規則な束状の平滑筋層

本例ではEVG染色で黒く染まる弾性線維が内膜側に見られるが形がややいびつな点、(内腔周囲に存在する)血管壁でも弾性線維がみられる点から静脈>動脈と考えた

2024-EVGstain

参考文献 Figure4G/Hより EVG染色
左が血栓性静脈炎(=静脈)、右が皮膚型結節性多発動脈炎(=動脈)

  • 1. IgA血管炎:皮膚所見では浸潤を触れる紫斑(palpable purpura)が特徴、組織では真皮浅層の血管炎(白血球破砕性血管炎:LCV)がみられる。蛍光抗体直接法において血管壁にIgAの沈着が見られる
  • 2. 血栓性静脈炎:静脈に血栓が形成され、炎症をきたすもの。ベーチェット病の皮膚病変としても知られる
  • 3. 蕁麻疹様血管炎:臨床像としては蕁麻疹様皮疹だが24時間以上持続することが特徴で、低補体血症を伴うことが多い。組織では真皮上層のLCVが見られる
  • 4. 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎):側頭動脈に好発し失明をきたすことがある。リウマチ性多発筋痛症を30〜40%に合併する
  • 5. 皮膚動脈炎(皮膚型結節性多発動脈炎):結節性多発動脈炎(PN)のうち、皮膚症状のみのものを呼ぶ。皮膚所見としてはリベドをきたし、組織では真皮深層〜皮下組織での血管炎所見が特徴

臨床症状的にIgA血管炎(紫斑)・蕁麻疹様血管炎(蕁麻疹様皮疹)・巨細胞性動脈炎(側頭動脈)を除外して2択まで絞ることは可能だが、そこから先の鑑別はかなり難しい

選択問題21:解答 3

白癬菌抗原キット(デルマクイック® 爪白癬)に関する出題

糸状菌直接鏡検検査(KOH)と同時に保険算定可能→3

  • 1. Aspergillus属と交差反応を示し、偽陽性となることがある。一方Candida属とは交差反応を示さない
  • 2. 白癬菌抗原キット使用時、検体は"1mg"以上採取する
  • 3・5. 基本的にKOH直接鏡検検査が陰性であったものの、臨床所見から爪白癬が疑われる場合が検査対象となる。併用での算定も可能
  • 4. KOH直接鏡検が実施できない場合(皮膚科医がいない・在宅診療など)、いきなりデルマクイック®爪白癬を用いても問題ない。ただし診療報酬明細書の摘要欄へは記載が必要

選択問題22:解答 5

落葉状天疱瘡の組織像を問う出題

同疾患では表皮浅層に分布するデスモグレイン1が病因のため、水疱形成も表皮の浅い部分でみられる→5

天疱瘡 原因分子と病変部位

天疱瘡では膜貫通蛋白であるデスモグレイン(Dsg)1/3に対する自己抗体が生じることが原因となる

それぞれ皮膚や粘膜で分布する部位が異なるので、臨床像や病理像も異なってくる

2024-Dsg13

あたらしい皮膚科学 p249 図14.20より

Dsg1Dsg3
尋常性天疱瘡(粘膜優位型)-+
尋常性天疱瘡(粘膜皮膚型)++
落葉状天疱瘡+-

落葉状天疱瘡では粘膜に分布するDsg3に対する自己抗体が生じない→粘膜病変も生じづらい

黄色ブドウ球菌の産生する表皮剥離毒素(ET)がDsg1を切断することで、伝染性膿痂疹やぶどう球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)が生じる。病理像は落葉状天疱瘡に類似する

  • 1. 表皮内に大型の水疱が見られるが、表皮海綿状態も伴うことから急性湿疹の像と考えられる
  • 2. 表皮基底層直上での水疱形成がみられ、尋常性天疱瘡の像
  • 3. 表皮真皮境界部での液状変性がみられるが、表皮は保たれている。扁平苔癬等の像と考えられる
  • 4. 真皮乳頭部周囲での棘融解と表皮内裂隙がみられる。Hailey-Hailey病等の像と考えられる
  • 5. 表皮上層に限局した水疱形成がみられ、落葉状天疱瘡の像
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p253(5)/43(1)/249(2・図)/45(3)/246(4)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p314(5)/52(1)/309(2)/54(3)/359(4)

関連問題

選択問題23:解答 5

女児の足趾爪周囲に見られるドーム状の紅色結節

組織学的に好酸性の封入体がみられ、乳児指趾線維腫症を考える。自然消退傾向が強いので経過観察→5

乳児指趾線維腫症 (infantile digital fibromatosis)

乳幼児の指趾に出現する線維性腫瘍で、正常皮膚色〜紅色の結節をきたす

組織学的に好酸性封入体を伴う筋線維芽細胞の増殖が特徴

切除するとしばしば再発し、自然消退傾向があるため歩行に障害がなければ経過観察

  • 1. 部分生検で確定診断できているので、完全切除までは不要
  • 2・3・4. 悪性腫瘍ではないので、化学療法や拡大切除、放射線治療の適応はない
  • 5. 自然消退傾向があるので、基本は経過観察
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p436
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p663

選択問題24:解答 2, 4

外用薬の基剤を問う出題

浸出液の多い創面には水溶性基剤のアクトシン®やユーパスタ®が適する→2, 4

創傷と外用薬

創傷の状態に応じて、適した外用薬が異なる

皮膚創傷の状態外用薬の製品名一般名
浅い慢性皮膚創傷プロペト白色ワセリン
亜鉛華軟膏, 亜鉛華単軟膏酸化亜鉛軟膏
アズノール®軟膏イソプロピルアズレン軟膏
ゲンタシン®軟膏, バラマイシン®軟膏, フシジンレオ®軟膏抗生物質含有軟膏
深い慢性皮膚潰瘍感染/壊死組織を伴う場合カデックス®カデキソマー・ヨウ素軟膏
ユーパスタコーワポビドンヨードシュガー
ゲーベン®クリームスルファジアジン銀含有クリーム
ブロメライン軟膏ブロメライン含有軟膏
肉芽/上皮形成期の場合プロスタンディン®軟膏アルプロスタジルアルファデクス軟膏
フィブラスト®スプレートラフェルミン製剤
オルセノン®軟膏トレチノイントコフェリル軟膏
アクトシン®軟膏ブクラデシンナトリウム軟膏

カデックス®やユーパスタ、アクトシン®は吸水性を有するため浸出液の多い局面に向く。一方ゲーベン®やオルセノン®、プロスタンディン®は水分含有量が多く浸軟させるため乾燥した局面に向く

  • 1. 親水クリーム:O/W軟膏に該当し、乾燥した局面に向く。以前は親水軟膏という名称だった
  • 2. アクトシン®軟膏:水溶性軟膏であるマクロゴール基剤であるため、吸水性を有する。肉芽形成や上皮化を促進する
  • 3. ゲーベン®クリーム:銀による抗菌効果があり、また壊死組織を軟化・融解させるため乾燥傾向の創部に向く
  • 4. ユーパスタ®コーワ:ヨウ素による抗菌力と白糖による浸出液吸収作用を持つ。こちらもマクロゴール基剤
  • 5. プロスタンディン®軟膏:油脂性のプラスチベースが基剤のため、乾燥した創面に適する。血流増加・血管新生を介して肉芽形成を促進する

関連問題

選択問題25:解答 1

掌蹠に存在するタイプ2ケラチンはケラチン1→1

ケラチンと先天性皮膚疾患

ケラチンは角化細胞の細胞骨格を担い、酸性のタイプⅠケラチンと中性〜塩基性のタイプⅡケラチンが重合して中間経線維を形成する

  • タイプⅠケラチン:ケラチン9〜40
  • タイプⅡケラチン:ケラチン1〜8

組織によって発現するケラチンが異なり、またケラチン関連の遺伝子変異により先天性皮膚疾患を合併する

ケラチン発現組織疾患
1/10有棘細胞表皮融解性魚鱗癬
(水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症)
1/9有棘細胞(掌蹠)Vörner 型掌蹠角化症
2/10有棘層上層〜顆粒層表在性表皮融解性魚鱗癬
(Siemens型水疱性魚鱗癬)
3/12角膜上皮細胞Meesmann角膜ジストロフィ
4/13粘膜上皮白色海綿状母斑
5/14基底細胞単純型表皮水疱症
6a・6b/16・17先天性爪甲肥厚症

掌蹠に発現するケラチンはケラチン1/9であり、タイプ2ケラチンはケラチン1となる

  • 1. ケラチン1:掌蹠に発現するタイプⅡケラチンで、表皮融解性魚鱗癬やVörner 型掌蹠角化症の原因遺伝子
  • 2. ケラチン4:粘膜上皮に発現するタイプⅡケラチン
  • 3. ケラチン9:こちらも掌蹠に発現するが、タイプⅠケラチン
  • 4. ケラチン10:有棘細胞に発現するタイプⅠケラチンで、表皮融解性魚鱗癬の原因遺伝子
  • 5. ケラチン13:粘膜上皮に発現するタイプⅠケラチン
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p11

関連問題

ケラチンの発現部位に関する問題は頻出。詳細は下記にまとめた

とくに2019 選択14(掌蹠に発現するタイプⅠケラチン)はかなり類似している

ケラチン 発現部位と先天性皮膚疾患 まとめ

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選択問題26:解答 2, 3

円形脱毛症におけるトリコスコピー所見を問う問題

黒点や感嘆符毛が見られるものが該当→2, 3

円形脱毛症 ダーモスコピー (トリコスコピー)

活動期の所見:感嘆符毛(漸減毛)・黒点・断裂毛

  • 黒点(black dot):短く毛が切れることで毛包内に観察される所見。円形脱毛症のほか、トリコチロマニアでも生じうる
  • 断裂毛(broken hairs):不規則に断裂した短い毛。円形脱毛症やトリコチロマニアで見られる
  • 感嘆符毛(exclamation mark hair):Tapering hairs(漸減毛)とも。円形脱毛症に特異的な、近位側にむかって毛根径が細くなる短く切れた毛

下記は慢性期の所見

黄色点(yellow dots):皮脂や角化物が貯留し黄色く見える毛孔のこと。円形脱毛症のほか、男性型・女性型脱毛症でも生じうる

2024-AA-trichoscopy

参考サイトより引用

なお令和4(2022)年度の診療報酬改定で、円形脱毛症に対するダーモスコピーが算定可能となった(72点で4ヶ月に1回算定可, 日光角化症も同時に追加)

  • 1. 矢印部分で鱗屑が見られ、perifollicular scalesに該当すると思われる。瘢痕性脱毛症で見られる所見
  • 2. 矢印部分で感嘆符毛が見られる
  • 3. 矢印部分で黒色点が、矢頭部分で断裂毛が見られる
  • 4・5. 一見黒点様だが、1本1本がながくまたそれ以外の所見が乏しいので円形脱毛症としては否定的

正解選択肢は問題ないと思いますが、その他選択肢はあまり自身がないのでトリコスコピーに詳しい方がいたらコメントください

関連問題

過去問では単語を問うのみであったが、本問は実際に画像所見を知らないと解けないという点で新しい。ガイドラインでも2024年版からトリコスコピー写真が追加されている

選択問題27:解答 2

皮膚エコーに関する出題

粉瘤では後方エコー"増強"が特徴→2

  • 1. 石灰化した病変(ex. 石灰化上皮腫 毛母腫)では内部が高エコーとなり、後方エコーが減弱する(acoustic shadow)。皮膚科ではないが胆石と同じ
  • 2. 粉瘤(表皮嚢腫)では後方エコー"増強"が特徴的な所見
  • 3. 皮膚の浅層から高輝度の角質→低エコーの有棘層および基底層→高エコーな真皮→低エコーな脂肪織となる
  • 4. 表在性の皮膚では10MHz以上の高周波を用いる。到達深度は浅いが解像度が高くなる
  • 5. カラードプラー法よりパワードプラー法の方が低流速の感度に優れる

関連問題

選択問題28:解答 2, 4

中高年女性で、四肢の紫斑としびれをきたしており、一部水疱形成を生じている。組織学的に著明な好酸球浸潤がみられ、EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)の診断

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA)

ANCA関連血管炎の一つ

気管支喘息やアレルギー性鼻炎が発症の数年前から先行

→その後末梢神経障害や下腿潰瘍などの血管炎症状をきたす

治療はステロイドやIVIgの他、IL-5(好酸球遊走に関与)のモノクローナル抗体製剤メポリズマブ(ヌーカラ®)が保険適用

2024/12、同じターゲットであるベンラリズマブ(ファセンラ®)もEGPAに対して追加承認された

  • 1. 末梢血好酸球は"著増"する
  • 2. EGPAによる皮膚症状は紫斑や水疱/血疱が基本だが、重症化すると潰瘍・壊疽をきたす
  • 3. メポリズマブが保険適用であり、IL-5が病態に関与する。IL-1βは家族性地中海熱やクリオピリン関連周期熱症候群の病態に関与し、抗体製剤であるカナキヌマブ(イラリス®)が用いられる
  • 4. 組織では好酸球浸潤・壊死性血管炎と肉芽腫反応が3徴
  • 5. MPO-ANCAの陽性率は"約50%"で(=陰性でもEGPAを否定できない)、陽性例は内臓病変をきたしやすい。活動期のGPA*におけるPR3-ANCAの陽性率は90%

*GPA = 多発血管炎性肉芽腫症(Wegener症候群)

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p170(1・4・5)/217(3)/171(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p222/204(3)/219(5)

関連問題(EGPA)

  • 2022 選択29 (メポリズマブが保険適用)
  • 2016 選択31 / 2010 選択27 (EGPAはMPO-ANCA陽性)
  • 2013 記述7 / 2011 選択37 (臨床問題・症状)
  • 2010 選択62 (EGPAの末梢神経障害はIVIgが保険適用)

選択問題29:解答 3

中波紫外線(UVB)療法が保険適用外なのは結節性痒疹→3

皮膚科光線療法 保険適用疾患

  • 乾癬
  • 類乾癬
  • 掌蹠膿疱症
  • 菌状息肉症
  • 悪性リンパ腫
  • 慢性苔癬状粃糠疹
  • 尋常性白斑
  • アトピー性皮膚炎
  • 円形脱毛症 (2020年より追加)

保険点数は下記

  • 通常のUVAやUVB:150点
  • ナローバンドUVB(311±2nm)やエキシマライト(308±2nm):340点
  • 1・2・4・5. 掌蹠膿疱症・円形脱毛症・アトピー性皮膚炎・慢性苔癬状粃糠疹:これらはいずれも保険適用
  • 3. 結節性痒疹:ガイドラインでは推奨度C1(施行して良い方法と思われる)だが、保険適用ではない。アトピー性皮膚炎に合併した場合は保険適用で実施可能

関連問題(光線療法 保険適用)

選択問題30:解答 1, 2, 4

遺伝性血管性浮腫に関する出題

遺伝性血管性浮腫(HAE) 病型分類と治療

病型分類

HAEは3型に分類され、C1インヒビター(C1-INH)の活性/蛋白量や補体C4濃度によって分類される。いずれもブラジキニン過剰産生が病態となる

1型2型3型
補体C4低下低下正常
C1-INH活性低下低下正常
C1-INH蛋白量低下正常〜上昇正常

疫学的には1型が85〜90%、2型が15%程度で3型は稀

C4は3型以外で(発作時も非発作時も)低下し、保険適用で測定可能なためスクリーニングで測定される

治療

HAEは外傷や抜歯術などの侵襲、精神的ストレスを契機に急性発作をきたす

治療は発作時治療と長期予防に分けて考える

発作時治療

急性発作時の治療薬は下記がある

作用機序一般名商品名投与経路発売年
ブラジキニンB2受容体拮抗薬イカチバントフィラジル®皮下注
(自己注可)
2018
C1-INH欠損/機能不全を補う補充療法C1-INH製剤ベリナート®静注1990(侵襲を伴う処置前の発症抑制は2017)

抗ヒスタミン薬・ステロイド薬は無効で、エピネフリンも多くの場合無効

長期予防

長期予防薬は近年複数の新薬が発売されている

作用機序一般名商品名投与経路発売年
C1-INH欠損/機能不全を補う補充療法C1-INH製剤ベリナート®※皮下注(自己注可)2022
カリクレイン*阻害
*ブラジキニン産生に関わる
ラナデルマブタクザイロ®皮下注(病院で投与)2022
ベロトラルスタットオラデオ®内服2021

※長期予防の場合はベリナート®皮下注2000であり、急性発作時/短期予防の治療とは製剤が異なる

その他トラネキサム酸やダナゾール(アンドロゲン製剤)も用いられる

  • 1. 急性発作時には喉頭浮腫により窒息死をきたすことがある→気道確保が最重要
  • 2. C1-INH活性はHAEⅠ/Ⅱ型のいずれも低下しているためスクリーニングに有効
  • 3. HAEの病態には"ブラジキニン"が大きく関わり、(特発性血管性浮腫や蕁麻疹と異なり)ヒスタミンの関与は薄い※。抗ヒスタミン薬も無効
  • 4. 経口血漿カリクレイン阻害薬ベロトラルスタット(オラデオ®)はHAEの長期予防薬として保険適用となっている
  • 5. アドレナリン(エピペン®)はアナフィラキシーショック既往等で自己注射(筋注)されるが、HAEでは無効。HAE急性発作治療薬のフィラジル®は皮下注製剤で自己注射も可能

※ヒスタミンが関与するものでは皮膚症状:蕁麻疹の合併が見られるが、ブラジキニン起因性のものでは原則蕁麻疹を合併せず粘膜症状のみ

関連問題(血管性浮腫)

選択問題31〜60は下記

2024-Specialist-2
令和6(2024)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題31〜60

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-皮膚科, 皮膚科専門医試験対策