皮膚科 皮膚科専門医試験対策

令和6(2024)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題91〜100 記述問題

2024-Specialist-4

日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和6(2024)年度解答解説を作成しました

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選択問題61〜90は下記

2024-Specialist-3
令和6(2024)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90

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見出し


令和6年度(2024年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 91〜100 記述問題

選択問題91:解答 4

高齢男性で明らかな免疫不全はないが、播種性非結核性抗酸菌症をきたしている

このような患者では抗IFN-γ中和自己抗体が検出されることがある→4

治療として抗IFN-γ中和自己抗体の産生抑制を目的として、抗CD20抗体製剤であるリツキシマブが用いられることがある

  • 1. IL-12:抗酸菌防御に重要なサイトカインの一つ。乾癬の生物学的製剤であるウステキヌマブのターゲットでもある(が近年の製剤ではターゲットとなっていない)
  • 2・3・5. IL-17・IL-23・TNF-α:いずれも乾癬の病態に関与するサイトカインで、生物学定性剤のターゲットとなっている。とくにTNF-α阻害薬は潜在性結核を再活性化させるリスクがあり注意が必要
  • 4. IFN-γ:抗酸菌防御に重要なサイトカインの一つ。結核感染スクリーニングに用いられるIGRA*でもIFN-γを測定している。抗IFN-γ中和抗体陽性患者では中和抗体が働くため、(本来必ず陽性となるはずの)クォンティフェロン検査の陽性コントロールでも検出不可となる

*IGRA = Interferon-Gamma release assay, インターフェロンγ遊離試験。クォンティフェロンやT-SPOTのこと

関連問題

選択問題92:解答 1, 2, 3

創傷被覆材を用いた保険診療において、報酬算定に関わる要素は創傷の深さ・創傷被覆材の使用期間・原因疾患の3つ→1, 2, 3

  • 1. 創傷の深さ:創傷被覆材は「真皮に至る創傷用」と「皮下組織に至る創傷用」に分けられており、該当する深さのものでないと保険適用にならない
  • 2. 創傷被覆材の使用期間:医療施設においては2週間を標準、特に必要と認められる場合についても3週間が限度とされている。在宅医療でも基本的に3週間が限度
  • 3. 創傷の原因となった疾患名:例えば手術縫合創に対して使用した場合や、「皮下組織に至る創傷用」を(より浅い)擦過傷に対して用いた場合は保険適用とならない
  • 4・5. 使用した創傷被覆材の価格/製品サイズ:創傷被覆材の保険算定では、使用する面積やg数に応じて6円/1cm^2などの償還価格が定められている

選択問題93:解答 3, 5

結核疹のうち、血管炎が認められやすいのはBazin硬結性紅斑と丘疹壊疽性結核疹→3, 5

皮膚結核の分類 真性皮膚結核と結核疹

  • 結核菌が直接病巣を作るもの(培養で結核菌+):真性皮膚結核
  • 結核菌に対するアレルギー反応で生じるもの:結核疹
真性皮膚結核結核疹
皮膚腺病Bazin硬結性紅斑
尋常性狼瘡丘疹壊疽性結核疹
皮膚疣状結核腺病性苔癬
陰茎結核疹
  • 1. 陰茎結核疹:陰茎部に見られる有痛性潰瘍で、丘疹壊疽性結核疹が陰茎に限局したもの。陰茎癌との鑑別が問題となる
  • 2. 腺病性苔癬:結核免疫個体で血行性に菌や菌体成分が散布されて生じる
  • 3. Bazin硬結性紅斑:下腿に好発する紅斑で結節性紅斑に類似するが、組織学的に小葉性脂肪織炎をきたすのが特徴で血管炎所見もみられる→◯
  • 4. BCGによる結核疹:病型は様々だが、腺病性苔癬ないし丘疹壊疽性結核疹あるいはその中間に相当する
  • 5. 丘疹壊疽性結核疹(壊疽性丘疹状結核疹):結核菌に対するアレルギーによって生じる血管炎→◯
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p550(1・2・4)/355(3)/549(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p867(2)/868(1・3・5)

陰茎結核疹やBCGによる結核疹について。陰茎結核疹はあたらしい皮膚科学では「陰茎に限局した丘疹壊疽性結核疹である」と定義されており、BCGによる結核疹も丘疹壊疽性結核疹に近いとされる(=これだけを見ると正解選択肢としても良いかもしれない)が、一方で組織学的に血管炎が多いかどうかの記載はあまりない。一方Bazin硬結性紅斑についてはDermatologic addendum to the CHCC2012(D-CHCC)だと「皮膚の単一臓器に生じる血管炎」として記載されている。また過去問でも"バザン硬結性紅斑には血管炎所見が少ない"という選択肢が間違い選択肢として出題されている
→相対的に後者の方が正解と考えるのが妥当と思われる

関連問題

選択問題94:解答 1, 2, 5

単純ヘルペス(単純疱疹)に関する出題

  • 1. 初感染の90%は不顕性感染だが、乳幼児や免疫能低下状態では強い初感染症状を現すことがある
  • 2. 従来HSV-1は口唇ヘルペスの、HSV-2は性器ヘルペスの原因とされてきたが、近年HSV-1による性器ヘルペスが増加している("再発性"性器ヘルペスでは依然HSV-2が多い)
  • 3. ヘルペスウイルスはいずれもDNAウイルス
  • 4. 再発抑制療法の保険適用は"性器ヘルペスのみ"で、バラシクロビル500mg 1日1回経口投与を行う※
  • 5. 再発性単純ヘルペスに対して、ファムシクロビル1,000mgを2回投与する用法用量(PIT*)がある

*PIT = patient initiated therapy

※HIV感染症の患者では1回500mgを1日2回

ヘルペスの抗ウイルス薬治療については下記も参照

230123-HerpesSimplex-HerpesZoster
単純ヘルペス 帯状疱疹 抗ウイルス薬まとめ

続きを見る

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p487(1・2・3)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p787(2・3)
  • 参考:各種添付文書

関連問題

選択問題95:解答 1, 4

アレルギー検査に関する出題

I型アレルギー 検査法

I型アレルギーの検査法には大きく皮膚テストと血液検査(血中アレルゲン特異的IgE抗体検査)がある

そして皮膚テストは下記3つに分けられる

手技検査方法
プリックテストアレルゲンを皮膚に垂らし、その部分を針で刺す
スクラッチテスト皮膚を引っ掻いて(スクラッチ)、そこにアレルゲンを垂らす
皮内テストアレルゲンを皮内注射する

下に行くほど抗原量が多く侵襲性が高い(=アナフィラキシーショックなどの危険が高い)ため、まずは上の方法から試していき、結果が陰性だった場合に下の方法を考慮していくという流れになる

  • 1. 口腔アレルギー症候群の検査ではprick-to-prick testが有効。最初にみかんなど調べたいものに針を刺し、そのまま患者皮膚にその針を刺す検査
  • 2. プリックテストをまず試みて、陰性であった場合にスクラッチテストを行う。プリックテスト陽性であれば、あえて侵襲性の高いスクラッチテストを行う意義がない
  • 3. 皮内テストはプリックテスト・スクラッチテストよりさらに侵襲が高い。このため"まず行う"検査ではなく、プリック・スクラッチともに陰性の場合に行うのが基本
  • 4. 通常のパッチテストは密閉して行うが、染毛剤など刺激性が高い抗原の場合はオープンパッチテストを行うことがある
  • 5. I型アレルギーの原因を特定するための皮膚テストは上記3種類。パッチテストはⅣ型アレルギー症状(接触皮膚炎)の原因特定に用いられる※

※Ⅰ型アレルギー = 即時型、Ⅳ型アレルギー = 遅発性が基本。皮膚テストの効果判定は早いしアナフィラキシーは原因物質の摂取直後に生じる。一方で接触皮膚炎は感作が成立する必要があるし、パッチテストの効果判定も48時間以上経ってから行う

関連問題

選択問題96:解答 2, 3, 5

KID症候群に関する出題

  • 1. 角膜炎(keratitis)、魚鱗癬(ichthyosis)、難聴(deafness)が三主徴で頭文字をとってKID症候群となる。肝機能障害を伴う魚鱗癬症候群にDorfman-Chanarin症候群がある
  • 2. 皮膚の易感染性があり、幼少期から慢性皮膚粘膜カンジダ症を認めることがある
  • 3. コネキシン26をコードするGJB2遺伝子変異が原因の常染色体優性遺伝疾患。孤発例も多い
  • 4. 治療としては真菌感染に対する抗真菌薬内服や、エトレチナート(チガソン®)などの経口レチノイドが用いられる。ステロイド全身投与は一般的ではない
  • 5. 皮膚癌や舌癌の合併例が報告されており、予後と関連することがある
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(1・3)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p351(1・2・3)
  • 参考:日本小児科学会 その他の先天性魚鱗癬 p139-142
  • 参考:先天性魚鱗癬様紅皮症と症候性魚鱗癬 MB Derma, 312, 17-21, 2021

KID症候群の三主徴や原因遺伝子、魚鱗癬症候群に含まれる(=皮膚のみでなく臓器病変を有する)ことまではともかく、それ以上踏み込んだ内容についてはこれまで出題がなかったため難問と思われる

関連問題

選択問題97:解答 4

正常皮膚の構造に関する出題

これらの構造は先天性皮膚疾患との関連で整理しておくのがおすすめ

病変部位/遺伝子疾患
フィラグリン (FLG)尋常性魚鱗癬, アトピー性皮膚炎
トランスグルタミナーゼ1 (TGM1)葉状魚鱗癬
コルネオデスモシン(CDSN)炎症性ピーリングスキン症候群
ステロイドサルファターゼ(STS)X連鎖性魚鱗癬
ABCA12道化師様魚鱗癬
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8(1)/7・10(2)/4(3)/9 MEMO(4・5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p11(1)/6(3)/12(5)

関連問題

選択問題98:解答 2, 4

まだら症(限局性白皮症)に関する出題

前額部に好発し、KIT遺伝子変異が原因となる→2, 4

まだら症や尋常性白斑などの白斑に対して、メラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」が保険収載されている(2024/10)

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p306・441(肥満細胞症)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p542・698(肥満細胞症)

関連問題

選択問題99:解答 2

Brooke-Spiegler症候群患者の頭部にみられた皮膚腫瘍

腫瘍細胞の巣状増殖がみられ、間質には好酸性構造物を伴うことから円柱種(cylindroma)の診断→2

2014-Cylindroma

参考文献より引用, 真皮に腫瘍細胞が巣状増殖し好酸性細胞質部分が見られる

  • 1. 汗孔腫(Poroma), エクリン汗孔腫:足底に好発するエクリン汗腺の表皮内導管由来の腫瘍で、組織学的には腫瘍細胞(poroid cell)の増殖巣と小管腔(クチクラ細胞)が見られる。血管構造が多くダーモスコピーでは糸球体状血管腫ヘアピン状血管として観察される
  • 2. 円柱種(Cylindroma):日本人では稀、CYLD遺伝子変異によるBrooke-Spiegler症候群で多発することが知られる
  • 3. らせん腺腫(spiradenoma), エクリンらせん腺腫:組織では弱拡でリンパ節様の境界明瞭な腫瘤がみられ、強拡では。有痛性腫瘍として知られる
  • 4. 管状アポクリン腺腫(tubular aporcine adenoma):頭部に好発する結節で、組織学的には嚢腫構造や乳頭状増殖が見られ、アポクリン分泌(断頭分泌)像を伴う
  • 5. 乳頭状汗管嚢胞腺腫(syringocystadenoma papilliferum):頭部や顔面に好発する疣状結節で、組織では絨毛状/乳頭状の増殖が特徴。脂腺母斑に続発することが多い(1/3)

なおBrooke-Spiegler症候群では毛包上皮腫の多発も特徴の一つ

関連問題

選択問題100:解答 2

透析と関連する皮膚疾患について問う問題

ムチン沈着症は関連しない→2

※経表皮性排除 = transapidermal elimination

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p326(1)/319(2)/344(3)/331(4)/137(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p468(1)/452(2)/505(3)/476(4)/184(5)

関連問題

記述問題1:解答 セルメチニブ(selumetinib)

神経線維腫症1型患者の叢状神経線維腫に対して保険適用のあるMEK阻害薬はセルメチニブ(コセルゴ®)

投与対象は「"3〜18歳の"症候性で手術による切除が困難な叢状神経線維腫」→成人には適用がない点に留意

基本的な治療は外科的治療だが、血流豊富で出血リスクが高い。神経線維腫の発生はNF1遺伝子変異→遺伝子産物であるニューロフィブロミン欠損によるMAPKシグナル伝達経路の活性化が原因のため、同経路のシグナル伝達因子であるMEK阻害薬が効果を発揮する

2024-Selumetinib

参考サイトより引用

副作用:心機能障害, 眼障害, 肝機能障害, 消化器症状など

関連問題

記述問題2:解答 initiated

薬剤をあらかじめ処方しておき、初期症状に基づき患者判断で服用開始する治療法はPIT(patient initiated therapy)

単純ヘルペスでは発症早期に抗ウイルス薬を内服するほうが効果が高い。通常の疾患で行われる症状が出てから受診→診察・処方流れだと内服までが遅くなってしまうため、この治療法が行われることがある

具体的には下記2種類

商品名一般名用法用量(PIT)
ファムビル®ファムシクロビル1,000mg x 2回
アメナリーフ®アメナメビル1,200mg x 1回

詳細は下記参照

230123-HerpesSimplex-HerpesZoster
単純ヘルペス 帯状疱疹 抗ウイルス薬まとめ

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関連問題

記述問題3:解答 gain

BRAF遺伝子におけるp.V600E変異はgain of function variantであり、BRAFを解するシグナル伝達経路が過剰活性化する

これを抑制するため、BRAFおよびその下流に存在するMEK阻害薬を併用で用いる治療が保険適用となっている

BRAF-MEK-inhibitor
BRAF阻害薬とMEK阻害薬 【悪性黒色腫】

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gain of function mutation/variant(機能獲得変異):変異遺伝子の生成産物が新たな(通常有害な)機能を獲得するタイプの変異のこと。がん原遺伝子(proto-oncogene)にこの変異が生じることで、がん遺伝子として機能するようになる

対義語はloss of function mutation(機能喪失変異)で、変異によって生理活性のないタンパク質が作られるような変異のこと。がん抑制遺伝子であるRb1やTP53などにこちらの変異が生じることも発がんの原因となる

発がんメカニズムについてはあまり書いてある記事が発見できず。教科書的なものですが下記など

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関連問題

BRAF遺伝子に関しては複数出題あり、詳細は上記カード内の記事参照

記述問題4:解答 過酸化ベンゾイル(benzoyl preoxide)

尋常性ざ瘡治療に用いられる外用薬で、角質剥離作用や強い酸化作用を持つのは過酸化ベンゾイル(benzoyl preoxide:BPO, ベピオ®)

尋常性ざ瘡 外用薬

尋常性ざ瘡(ニキビ)の外用薬は大きく面疱(コメド)治療薬と抗生物質外用に分類される

いわゆる白ニキビ・黒ニキビといった早期の段階は面疱治療薬を含まないと効果が乏しい。外用抗菌薬単剤はいずれも推奨度C2(推奨しない)となっている

一般名製品名面疱に対する推奨度
過酸化ベンゾイルベピオ®A
アダパレンディフェリン®A
アダパレン+過酸化ベンゾイルエピデュオ®A
クリンダマイシン+過酸化ベンゾイルデュアック®A*

*炎症性皮疹と混合でみられる場合

一方で炎症性皮疹、いわゆる赤ニキビ・黄ニキビについては抗生物質外用も有効で推奨度が高くなっている

一般名製品名炎症性皮疹に対する推奨度
クリンダマイシンダラシンT®A
ナジフロキサシンアクアチム®A
オゼノキサシンゼビアックス®A

面疱で用いられる過酸化ベンゾイルやアダパレンもそれぞれ下記のような機序で炎症性皮疹に有効なため、炎症性皮疹に対する推奨度はいずれもA

  • 過酸化ベンゾイル:角質剥離作用+フリーラジカル産生に伴うアクネ菌に対する抗菌作用
  • アダパレン:抗炎症作用+毛包上皮の角化正常化による面疱形成抑制(レチノイドの一種)

実際アダパレンによって炎症性皮疹や非炎症性皮疹が減少している

推奨度から簡単にまとめると、「炎症性皮疹に対してはだいたいOK」「面疱に対しては過酸化ベンゾイルかアダパレンを含む必要がある」といえる。ただし耐性菌の問題もあるので抗生剤含有外用薬の長期使用は推奨されていない

関連問題

記述問題5:解答 Werner syndrome (ウェルナー症候群)

常染色体劣性(潜性)遺伝で、特徴的な嗄声をきたす早老症はWerner症候群

Werner症候群

WRN遺伝子変異が原因の常染色体劣性遺伝疾患で、日本人に多く報告患者の8割を占める

早老症の代表で、20歳前後から皮膚萎縮や強皮症様の変化をきたす。下記のような症状が特徴

  • 早老性毛髪変化 (白髪・禿頭)
  • 白内障 (両側)
  • 足底の過角化(鶏眼/胼胝)・難治性潰瘍
  • 鳥様顔貌
  • 嗄声, 高声 (high pitched voice)

動脈硬化や悪性腫瘍も合併しやすく短命となるが、他の早老症と異なり光線過敏症は合併しない点に注意

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p340
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p497

関連問題

記述問題6:解答 Pautrier's

痒みのない大型の褐色斑

真皮で高度のリンパ球浸潤がみられ、表皮内でも集簇している。ポートリエ微小膿瘍(Pautrie's microabscess)と呼ばれる組織像で、菌状息肉症などで見られる

悪性腫瘍は基本的には真皮側へ浸潤し、結果として血管やリンパ管を通じて転移していく(だからこそ悪性)。一方ポートリエ微小膿瘍では表皮向性の浸潤で、通常とは異なるためわざわざ名前が付けられているものと考えることができる

類似病変がいくつかあるので整理しておく

2015-Kogoj's-spongiform-pustule

参考サイトより引用

所見代表疾患
Kogoj海綿状膿疱有棘層上層の多房性膿疱膿疱性乾癬
Munro微小膿瘍角層中〜直下の好中球集合尋常性乾癬
Pautrier微小膿瘍角層中〜直下の異型リンパ球集合菌状息肉症
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p44/468
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p56/705
  • 参考・図引用:Twitter @byo_mie 2022/10/18

関連問題

記述問題7:解答 neutrophil

血管炎検査で用いられるANCA = anti-neutrophil cytoplasmic antibldy (抗好中球細胞質抗体)

ANCA関連血管炎

ANCAが検出される血管炎のことで、傷害血管の太さで分類するChapel Hill分類では小型血管炎の中に分類される

ANCA関連血管炎では免疫グロブリン沈着はみられない(pauci-immune型)

2種類あり、疾患ごとにどちらが陽性になりやすいかが異なる。ただし陰性の場合もあるので注意

ANCA関連血管炎疾患
MPO-ANCA
(P-ANCA)
顕微鏡的多発血管炎(MPA)
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
薬剤関連ANCA血管炎
(プロピオチルウラシル, ヒドララジン等)
PR3-ANCA
(C-ANCA)
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)*

*日本では欧米(>90%)と比較して陽性率が低く60%

関連問題

  • 2016 選択31 / 2012 選択73 / 2011 選択37 / 2010 選択27 (MPO-ANCA陽性疾患)
  • 2011 選択38 (免疫グロブリン沈着がみられない血管炎)

記述問題8:解答 乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

中高年男性において手指のMCP関節周囲で、伸筋腱周囲の血流増加(炎症)や滑膜炎の所見がみられ乾癬性関節炎(関節症性乾癬)を考える。

中手骨頭やや近位側で腱周囲にみられる炎症はperitenon extensor tendon inflammation(PTI)パターンと呼ばれる

乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)

PsAは皮疹が先行することが80%程度で(この時点の診断名は"尋常性乾癬")、年単位の経過で関節炎を発症する

とくに下記のようなリスク因子があると移行する例が多いとされる

  • 皮疹面積が広い
  • 高BMI
  • 爪病変
  • その他特定の部位(頭皮・殿部・inverse psoriasis)
2024-PSOtoPsA

参考文献より引用, sub-clinicalは関節痛やエコー変化はあるが明らかな滑膜炎がない状態, clinicalは明らかに滑膜炎がある状態

早期からの全身治療でこの移行を予防できるとも考えられており、後ろ向き研究ではあるが生物学的製剤とくにIL-23阻害薬で移行率が低かったとする報告がある(Lancet Rheumatol. 2023 Apr;5(4):e200-e207.)

なお関節炎は関節リウマチや変形性関節症でも生じるため鑑別が必要だが、好発部位や病態に違いがあるとされる

病態好発部位特徴
関節リウマチ滑膜炎PIP関節自己抗体陽性例が多い(抗CCP抗体等)
乾癬性関節炎(PsA)付着部炎DIP関節, 手指伸筋/屈筋腱付着部, アキレス腱付着部骨新生像
変形性関節症使いすぎなどが原因とされるDIP, PIP関節骨硬化像

両者の鑑別やPsA早期診断のためにエコーが有用という報告が多い。PsAにおけるレントゲンでの変化(pencil in cup)も有名だが、変形が高度に進まないと変化が捉えられないので早期診断には不向き

関連問題

記述問題9:解答 sclerotic (muriform)

肉芽病変の組織で見られる黒色調の隔壁を有する細胞はsclerotic cell (muriform cell)と呼ばれる

黒色真菌症

メラニン色素の産生によりコロニーや組織内菌要素が黒色〜褐色をきたす真菌症は、黒色真菌症と総称される

大きくはmuriform cell(sclerotic cell)と呼ばれる、褐色で隔壁を持つ大型細胞の有無で分類される

2012-Scleroticcell

参考サイトより引用, sclerotic cell(muriform cell)

黒色真菌症sclerotic cell原因真菌
黒色分芽菌症
(クロモミコーシス※)
+Fonsecaea monophora*
黒色菌糸症
(フェオヒフォミコーシス)
-Exophilala属菌

※黒色分芽菌症は”クロモブラストミコーシス”と呼ばれることもある

*Fonsecaea monophoraはかつてF. pedrosoiと呼ばれていたが、分類見直しで名称が変更となった

*Exophiala属菌にはE. jeanselmei, E. xenobiotica, E. dermatitidisなどがある

関連問題(黒色真菌症)

記述問題10:解答 trigeminal trophic syndrome

脳腫瘍術後に三叉神経領域の感覚異常から掻爬を繰り返し、潰瘍をきたす現象をtrigeminal trophic syndomeと呼ぶ

鼻翼付近に好発するため基底細胞癌との鑑別が問題となるが、本例では組織学的に異型性が見られない点から否定される

掻爬による悪化が原因のため、患者教育や被覆材で覆うことが有効

関連問題

記述問題11:解答 Antoni(アントーニ), verocay(ヴェロケイ)

神経鞘腫はAntoni A領域/B領域に分けられる

A領域で見られる病理組織所見はVerocay bodyと称され、同部位は良性腫瘍だが血流も豊富

Antoni組織
A領域細長い核が柵状に並ぶ帯と、核に乏しい好酸性の部位からなる構造(Verocay body)
B領域方向性がなく細胞成分が疎

神経線維腫症2型(NF2)では神経鞘腫とくに両側聴神経鞘腫が特徴で、予後はNF1より悪い

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p420・394
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p736・573

関連問題

記述問題12:解答 多形皮膚萎縮(症)/ポイキロデルマ (poikiloderma)

皮膚萎縮・色素沈着・色素脱失・毛細血管拡張が混在する状態を多形皮膚萎縮症(ポイキロデルマ)と呼ぶ

様々な疾患の終末像とされ、とくに下記のような疾患が代表

分類疾患
膠原病皮膚筋炎, SLE, 強皮症
リンパ腫菌状息肉症
炎症性皮膚疾患湿疹続発性紅皮症, 扁平苔癬
皮膚障害慢性放射線皮膚炎, 慢性日光皮膚炎, 外傷性瘢痕
遺伝性疾患色素性乾皮症, 先天性表皮水疱症, Rothmund-Thomson症候群
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p75
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p490

関連問題

  • 2015 選択58 / 2011 選択62 (多形皮膚萎縮がみられる疾患)
  • 2010 選択61 (多形皮膚萎縮の症状)

記述問題13:解答 molluscum

腋窩に散在する中心臍窩を伴う小丘疹から伝染性軟属腫(水いぼ)を考える

組織学的に好酸性封入体がみられ、molluscum body (Henderson-Patterson bodiesとも)と呼ばれる

ちなみに伝染性軟属腫の英名はmolluscum contagiosum

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p498
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p61・802

記述問題14:解答 flame figure(s)

Wells症候群(好酸球性蜂窩織炎)で見られる、膠原線維が変性し好酸球顆粒が付着して炎のように見える所見はflame figureと呼ばれる

Wells症候群以外に虫刺症・水疱性類天疱瘡等の好酸球が増加する疾患でも出現することがある

関連問題

記述問題15:解答 コレステロール(結晶)塞栓症

経皮的冠動脈形成術(PCI)実施2週間後から足趾にチアノーゼをきたし、疼痛を伴っている

組織ではコレステロール結晶がみられ、コレステロール(結晶)塞栓症の診断。別名blue-toe症候群とも呼ばれる

検査結果では腎障害(血清クレアチニン上昇)や好酸球増加、補体低下が特徴

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p47・180
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p251

表記については"結晶"なしのコレステロール塞栓症(国立循環器病研究センター)やコレステリン塞栓症(日経メディカル)と記載されることもあり、採点上どこまで許容されているのかは謎

関連問題

記述問題16:解答 ランゲルハンス細胞組織球症 (Langerhans cell histiocytosis)

女児で湿疹様の皮疹が見られ、発熱や脾腫を伴っている

皮膚生検ではCD1a陽性のLangerhans細胞の増殖がみられ、ランゲルハンス細胞組織球症の診断

ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)

皮膚に存在する抗原提示細胞であるLangerhans細胞が腫瘍性増殖をきたす疾患で、小児に好発する

皮膚では湿疹類似の病変をきたし、骨病変(頭蓋骨融解)や肝脾腫など内臓病変を伴うことがある。

Langerhans細胞は免疫染色でS-100+, CD1a+ , CD207(ランゲリン)+となるのが特徴

治療:皮膚病変のみならまずステロイド外用や切除だが、内臓病変を伴う場合は化学療法や造血幹細胞移植

LCHでは約半数にBRAF V600E変異(表在拡大型メラノーマでも見られる変異)がみられ、BRAF/MEK阻害薬治療が行われることもある

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p480・34・49・50
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p696・48

関連問題

記述問題17:解答 周辺帯 (cornfield cell envelope)

表皮細胞が角化する最終過程で、角質細胞(ケラチノサイト)に周辺帯(cornified cell envelope)と呼ばれる構造が出現し、細胞膜を裏打ちする

ロリクリンやインボルクリンが構成成分であり、トランスグルタミナーゼなどの酵素で架橋されることにより作られる

トランスグルタミナーゼをコードするTGM1遺伝子の変異は葉状魚鱗癬(や先天性魚鱗癬様紅皮症)の病因となる

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p5・9/271
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p7・12/347

関連問題

記述問題18:解答 ニボルマブ

2024年2月、「根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍」に対して追加承認された薬剤はニボルマブ(オプジーボ®)

腫瘍の具体例としては下記のようなものがある

  • 有棘細胞癌
  • 基底細胞癌
  • 乳房外Paget病
  • 皮膚付属器がん(汗腺癌, 脂腺癌, 毛包癌)

なおニボルマブは抗PD-1抗体製剤で、もともと皮膚科領域だとメラノーマ(悪性黒色腫)に対して保険適用がある薬剤でもある

※メラノーマの術後補助化学療法として、同じくPD-1をターゲットとするペムブロリズマブ(キイトルーダ®)だとステージⅡB・ⅡCも対象となっている。ニボルマブはもともと術後補助化学療法としてはⅢB・ⅢCのみが対象だった(ガイドライン発行時)が、2025/2にステージⅡB・ⅡCも追加されて両者の差がなくなった。

関連問題

記述問題19:解答 ミルメシア

男児の踵に見られる結節病変で、疼痛を伴っている

HPV-1が検出されていることからミルメシアの診断となる。尋常性疣贅の亜型で手掌足底に生じ発赤や圧痛を伴う点が違いとされる。

HPVは型により臨床症状が異なる

HPVの型臨床症状
1ミルメシア
2, 4, 7, 27, 57尋常性疣贅
3, 10, 28, 29, 94扁平疣贅
16Bowen様丘疹症, 爪Bowen病
5, 8疣贅状表皮発育異常症
57, 60足底類表皮嚢腫
63点状疣贅
6, 11尖圭コンジローマ
HPV(ヒトパピローマウイルス) 型と関連疾患 まとめ

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  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p494
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p804・806

関連問題

HPVの型と関連疾患については頻出, 詳細は上記カード内の記事参照

記述問題20:解答 PVL (Panton Valentine Leukocidin)

市中感染型MRSAの一部でPVL産生株がみられ、感染すると白血球に対して壊死性変化を起こし、組織壊死を伴って重症化するリスクが高い

再発性のせつ・せつ腫症との関連が指摘されている

MRSAは通常院内感染の形態をとるが、入院歴のない健常人に感染したMRSAを市中感染型MRSA(CA-MRSA)と呼ぶ

関連問題

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