日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和6(2024)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
選択問題61〜90は下記
-
令和6(2024)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90
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見出し
- 1 令和6年度(2024年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 91〜100 記述問題
- 1.1 選択問題91:解答 4
- 1.2 選択問題92:解答 1, 2, 3
- 1.3 選択問題93:解答 3, 5
- 1.4 選択問題94:解答 1, 2, 5
- 1.5 選択問題95:解答 1, 4
- 1.6 選択問題96:解答 2, 3, 5
- 1.7 選択問題97:解答 4
- 1.8 選択問題98:解答 2, 4
- 1.9 選択問題99:解答 2
- 1.10 選択問題100:解答 2
- 1.11 記述問題1:解答 セルメチニブ(selumetinib)
- 1.12 記述問題2:解答 initiated
- 1.13 記述問題3:解答 gain
- 1.14 記述問題4:解答 過酸化ベンゾイル(benzoyl preoxide)
- 1.15 記述問題5:解答 Werner syndrome (ウェルナー症候群)
- 1.16 記述問題6:解答 Pautrier's
- 1.17 記述問題7:解答 neutrophil
- 1.18 記述問題8:解答 乾癬性関節炎(関節症性乾癬)
- 1.19 記述問題9:解答 sclerotic (muriform)
- 1.20 記述問題10:解答 trigeminal trophic syndrome
- 1.21 記述問題11:解答 Antoni(アントーニ), verocay(ヴェロケイ)
- 1.22 記述問題12:解答 多形皮膚萎縮(症)/ポイキロデルマ (poikiloderma)
- 1.23 記述問題13:解答 molluscum
- 1.24 記述問題14:解答 flame figure(s)
- 1.25 記述問題15:解答 コレステロール(結晶)塞栓症
- 1.26 記述問題16:解答 ランゲルハンス細胞組織球症 (Langerhans cell histiocytosis)
- 1.27 記述問題17:解答 周辺帯 (cornfield cell envelope)
- 1.28 記述問題18:解答 ニボルマブ
- 1.29 記述問題19:解答 ミルメシア
- 1.30 記述問題20:解答 PVL (Panton Valentine Leukocidin)
令和6年度(2024年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 91〜100 記述問題
選択問題91:解答 4
高齢男性で明らかな免疫不全はないが、播種性非結核性抗酸菌症をきたしている
このような患者では抗IFN-γ中和自己抗体が検出されることがある→4
治療として抗IFN-γ中和自己抗体の産生抑制を目的として、抗CD20抗体製剤であるリツキシマブが用いられることがある
- 1. IL-12:抗酸菌防御に重要なサイトカインの一つ。乾癬の生物学的製剤であるウステキヌマブのターゲットでもある(が近年の製剤ではターゲットとなっていない)
- 2・3・5. IL-17・IL-23・TNF-α:いずれも乾癬の病態に関与するサイトカインで、生物学定性剤のターゲットとなっている。とくにTNF-α阻害薬は潜在性結核を再活性化させるリスクがあり注意が必要
- 4. IFN-γ:抗酸菌防御に重要なサイトカインの一つ。結核感染スクリーニングに用いられるIGRA*でもIFN-γを測定している。抗IFN-γ中和抗体陽性患者では中和抗体が働くため、(本来必ず陽性となるはずの)クォンティフェロン検査の陽性コントロールでも検出不可となる
*IGRA = Interferon-Gamma release assay, インターフェロンγ遊離試験。クォンティフェロンやT-SPOTのこと
関連問題
- 2015 選択82 (IGRA検査の比較)
選択問題92:解答 1, 2, 3
創傷被覆材を用いた保険診療において、報酬算定に関わる要素は創傷の深さ・創傷被覆材の使用期間・原因疾患の3つ→1, 2, 3
- 1. 創傷の深さ:創傷被覆材は「真皮に至る創傷用」と「皮下組織に至る創傷用」に分けられており、該当する深さのものでないと保険適用にならない
- 2. 創傷被覆材の使用期間:医療施設においては2週間を標準、特に必要と認められる場合についても3週間が限度とされている。在宅医療でも基本的に3週間が限度
- 3. 創傷の原因となった疾患名:例えば手術縫合創に対して使用した場合や、「皮下組織に至る創傷用」を(より浅い)擦過傷に対して用いた場合は保険適用とならない
- 4・5. 使用した創傷被覆材の価格/製品サイズ:創傷被覆材の保険算定では、使用する面積やg数に応じて6円/1cm^2などの償還価格が定められている
- 参考:178 皮膚欠損用創傷被覆材(真皮に至る創傷用)の算定について 令和6年5月31日
- 参考:179 皮膚欠損用創傷被覆材(皮下組織に至る創傷用)の算定について 令和6年5月31日
- 参考:創傷被覆材の保険算定ガイドブック
選択問題93:解答 3, 5
結核疹のうち、血管炎が認められやすいのはBazin硬結性紅斑と丘疹壊疽性結核疹→3, 5
皮膚結核の分類 真性皮膚結核と結核疹
- 結核菌が直接病巣を作るもの(培養で結核菌+):真性皮膚結核
- 結核菌に対するアレルギー反応で生じるもの:結核疹
真性皮膚結核 | 結核疹 |
皮膚腺病 | Bazin硬結性紅斑 |
尋常性狼瘡 | 丘疹壊疽性結核疹 |
皮膚疣状結核 | 腺病性苔癬 |
陰茎結核疹 |
- 1. 陰茎結核疹:陰茎部に見られる有痛性潰瘍で、丘疹壊疽性結核疹が陰茎に限局したもの。陰茎癌との鑑別が問題となる
- 2. 腺病性苔癬:結核免疫個体で血行性に菌や菌体成分が散布されて生じる
- 3. Bazin硬結性紅斑:下腿に好発する紅斑で結節性紅斑に類似するが、組織学的に小葉性脂肪織炎をきたすのが特徴で血管炎所見もみられる→◯
- 4. BCGによる結核疹:病型は様々だが、腺病性苔癬ないし丘疹壊疽性結核疹あるいはその中間に相当する
- 5. 丘疹壊疽性結核疹(壊疽性丘疹状結核疹):結核菌に対するアレルギーによって生じる血管炎→◯
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p550(1・2・4)/355(3)/549(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p867(2)/868(1・3・5)
陰茎結核疹やBCGによる結核疹について。陰茎結核疹はあたらしい皮膚科学では「陰茎に限局した丘疹壊疽性結核疹である」と定義されており、BCGによる結核疹も丘疹壊疽性結核疹に近いとされる(=これだけを見ると正解選択肢としても良いかもしれない)が、一方で組織学的に血管炎が多いかどうかの記載はあまりない。一方Bazin硬結性紅斑についてはDermatologic addendum to the CHCC2012(D-CHCC)だと「皮膚の単一臓器に生じる血管炎」として記載されている。また過去問でも"バザン硬結性紅斑には血管炎所見が少ない"という選択肢が間違い選択肢として出題されている
→相対的に後者の方が正解と考えるのが妥当と思われる
関連問題
- 2021 選択38 (Bazinでは血管炎所見あり)
選択問題94:解答 1, 2, 5
単純ヘルペス(単純疱疹)に関する出題
- 1. 初感染の90%は不顕性感染だが、乳幼児や免疫能低下状態では強い初感染症状を現すことがある
- 2. 従来HSV-1は口唇ヘルペスの、HSV-2は性器ヘルペスの原因とされてきたが、近年HSV-1による性器ヘルペスが増加している("再発性"性器ヘルペスでは依然HSV-2が多い)
- 3. ヘルペスウイルスはいずれもDNAウイルス
- 4. 再発抑制療法の保険適用は"性器ヘルペスのみ"で、バラシクロビル500mg 1日1回経口投与を行う※
- 5. 再発性単純ヘルペスに対して、ファムシクロビル1,000mgを2回投与する用法用量(PIT*)がある
*PIT = patient initiated therapy
※HIV感染症の患者では1回500mgを1日2回
ヘルペスの抗ウイルス薬治療については下記も参照
-
単純ヘルペス 帯状疱疹 抗ウイルス薬まとめ
続きを見る
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p487(1・2・3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p787(2・3)
- 参考:各種添付文書
関連問題
- 2024 記述2 / 2023 選択75 / 2022 選択92 / 2020 選択23 (PIT療法について)
- 2017 選択37 / 2010 選択64 (性器ヘルペスの再発抑制療法)
- 2011 選択21 / 2009 選択48 (HSV-1が原因の疾患)
選択問題95:解答 1, 4
アレルギー検査に関する出題
I型アレルギー 検査法
I型アレルギーの検査法には大きく皮膚テストと血液検査(血中アレルゲン特異的IgE抗体検査)がある
そして皮膚テストは下記3つに分けられる
手技 | 検査方法 |
プリックテスト | アレルゲンを皮膚に垂らし、その部分を針で刺す |
スクラッチテスト | 皮膚を引っ掻いて(スクラッチ)、そこにアレルゲンを垂らす |
皮内テスト | アレルゲンを皮内注射する |
下に行くほど抗原量が多く侵襲性が高い(=アナフィラキシーショックなどの危険が高い)ため、まずは上の方法から試していき、結果が陰性だった場合に下の方法を考慮していくという流れになる
- 1. 口腔アレルギー症候群の検査ではprick-to-prick testが有効。最初にみかんなど調べたいものに針を刺し、そのまま患者皮膚にその針を刺す検査
- 2. プリックテストをまず試みて、陰性であった場合にスクラッチテストを行う。プリックテスト陽性であれば、あえて侵襲性の高いスクラッチテストを行う意義がない
- 3. 皮内テストはプリックテスト・スクラッチテストよりさらに侵襲が高い。このため"まず行う"検査ではなく、プリック・スクラッチともに陰性の場合に行うのが基本
- 4. 通常のパッチテストは密閉して行うが、染毛剤など刺激性が高い抗原の場合はオープンパッチテストを行うことがある
- 5. I型アレルギーの原因を特定するための皮膚テストは上記3種類。パッチテストはⅣ型アレルギー症状(接触皮膚炎)の原因特定に用いられる※
※Ⅰ型アレルギー = 即時型、Ⅳ型アレルギー = 遅発性が基本。皮膚テストの効果判定は早いしアナフィラキシーは原因物質の摂取直後に生じる。一方で接触皮膚炎は感作が成立する必要があるし、パッチテストの効果判定も48時間以上経ってから行う
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p80-83(2・3・4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p108-109(2・3・4・5)/173(1)
- 参考:日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き
関連問題
選択問題96:解答 2, 3, 5
KID症候群に関する出題
- 1. 角膜炎(keratitis)、魚鱗癬(ichthyosis)、難聴(deafness)が三主徴で頭文字をとってKID症候群となる。肝機能障害を伴う魚鱗癬症候群にDorfman-Chanarin症候群がある
- 2. 皮膚の易感染性があり、幼少期から慢性皮膚粘膜カンジダ症を認めることがある
- 3. コネキシン26をコードするGJB2遺伝子変異が原因の常染色体優性遺伝疾患。孤発例も多い
- 4. 治療としては真菌感染に対する抗真菌薬内服や、エトレチナート(チガソン®)などの経口レチノイドが用いられる。ステロイド全身投与は一般的ではない
- 5. 皮膚癌や舌癌の合併例が報告されており、予後と関連することがある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(1・3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p351(1・2・3)
- 参考:日本小児科学会 その他の先天性魚鱗癬 p139-142
- 参考:先天性魚鱗癬様紅皮症と症候性魚鱗癬 MB Derma, 312, 17-21, 2021
KID症候群の三主徴や原因遺伝子、魚鱗癬症候群に含まれる(=皮膚のみでなく臓器病変を有する)ことまではともかく、それ以上踏み込んだ内容についてはこれまで出題がなかったため難問と思われる
関連問題
- 2018 選択15 (KID症候群の症状)
選択問題97:解答 4
正常皮膚の構造に関する出題
- 1. 天然保湿因子(NMF)はフィラグリンの分解産物であるアミノ酸が該当し、保水や紫外線吸収能を持つ。セラミドは角層細胞間脂質に分類され、こちらも保湿に重要
- 2. コルネオデスモソームは角質下層の細胞間を接着している。顆粒細胞間の接着を担うのは密着結合(tight junction)で、クローディンから構成される
- 3. 顆粒層に存在するケラトヒアリン顆粒の主成分はプロフィラグリン(フィラグリンの前駆物質)。ロリクリンは角層細胞を裏打ちする周辺帯(cornified envelope)の構成成分
- 4. 角層の剥離にはステロイドサルファターゼが関与する→◯
- 5. トランスグルタミナーゼは細胞膜に蛋白分子を結合させる酵素で周辺帯形成に関わる。層板顆粒の形成に関わる酵素はABCA12
これらの構造は先天性皮膚疾患との関連で整理しておくのがおすすめ
病変部位/遺伝子 | 疾患 |
フィラグリン (FLG) | 尋常性魚鱗癬, アトピー性皮膚炎 |
トランスグルタミナーゼ1 (TGM1) | 葉状魚鱗癬 |
コルネオデスモシン(CDSN) | 炎症性ピーリングスキン症候群 |
ステロイドサルファターゼ(STS) | X連鎖性魚鱗癬 |
ABCA12 | 道化師様魚鱗癬 |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8(1)/7・10(2)/4(3)/9 MEMO(4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p11(1)/6(3)/12(5)
関連問題
- 2021 選択10 / 2019 選択4 (天然保湿因子やフィラグリン)
- 2023 選択48 (コルネオデスモソームについて)
- 2020 選択85 / 2019 記述1 / 2005 問題6 (層板顆粒)
- 2013 選択11 (表皮の機能と構造)
選択問題98:解答 2, 4
まだら症(限局性白皮症)に関する出題
前額部に好発し、KIT遺伝子変異が原因となる→2, 4
- 1. 常染色体優性遺伝疾患であり、男女差はない
- 2. 90%の症例で前額部に白斑をみとめ、white forelockと呼ばれる
- 3. メラノサイトの遊走異常が病態のため、白斑部ではメラノサイトが欠如する。一方同じく先天性疾患である脱色素性母斑ではメラノサイトの機能低下が原因となる
- 4. KIT遺伝子変異はまだら症の原因であり、体細胞変異(somatic mutation)は肥満細胞症で高率に見られる
- 5. 白斑の部位は生下時から存在し、生涯固定される
まだら症や尋常性白斑などの白斑に対して、メラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」が保険収載されている(2024/10)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p306・441(肥満細胞症)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p542・698(肥満細胞症)
関連問題
- 2022 選択63 / 2020 記述10 (white forelock)
- 2021 選択57 / 2019 選択59 / 2018 選択50 / 2017 選択51 / 2013 選択43 / 2012 選択46 / 2010 選択39 (原因遺伝子やメラノサイト数など)
- 2016 選択65 (肥満細胞症)
選択問題99:解答 2
Brooke-Spiegler症候群患者の頭部にみられた皮膚腫瘍
腫瘍細胞の巣状増殖がみられ、間質には好酸性構造物を伴うことから円柱種(cylindroma)の診断→2

参考文献より引用, 真皮に腫瘍細胞が巣状増殖し好酸性細胞質部分が見られる
- 1. 汗孔腫(Poroma), エクリン汗孔腫:足底に好発するエクリン汗腺の表皮内導管由来の腫瘍で、組織学的には腫瘍細胞(poroid cell)の増殖巣と小管腔(クチクラ細胞)が見られる。血管構造が多くダーモスコピーでは糸球体状血管腫やヘアピン状血管として観察される
- 2. 円柱種(Cylindroma):日本人では稀、CYLD遺伝子変異によるBrooke-Spiegler症候群で多発することが知られる
- 3. らせん腺腫(spiradenoma), エクリンらせん腺腫:組織では弱拡でリンパ節様の境界明瞭な腫瘤がみられ、強拡では。有痛性腫瘍として知られる
- 4. 管状アポクリン腺腫(tubular aporcine adenoma):頭部に好発する結節で、組織学的には嚢腫構造や乳頭状増殖が見られ、アポクリン分泌(断頭分泌)像を伴う
- 5. 乳頭状汗管嚢胞腺腫(syringocystadenoma papilliferum):頭部や顔面に好発する疣状結節で、組織では絨毛状/乳頭状の増殖が特徴。脂腺母斑に続発することが多い(1/3)
なおBrooke-Spiegler症候群では毛包上皮腫の多発も特徴の一つ
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p415(2)/414(1・3)/416(4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p623(2・4)/616(1)/618(3)/622(5)
- 参考:皮膚科セミナリウム 第32回 汗腺腫瘍 日皮会誌:117(14), 2453―2459, 2007のp2456
- 参考・図引用:Giant Mushroom-Like Cutaneous Cylindroma of the Head. Open Access Maced J Med Sci. 2018 Sep 25;6(10):1868-1870.
関連問題
- 2015 選択73 / 2014 選択67 / 2014 記述11 (Brooke-Spiegler症候群と円柱種)
- 2022 選択62 / 2016 選択72 (エクリン汗孔腫の病理)
- 2019 選択84 (エクリンらせん腺腫の病理)
- 2023 選択44 / 2012 記述5 (乳頭状汗管嚢胞腺腫の病理)
選択問題100:解答 2
透析と関連する皮膚疾患について問う問題
ムチン沈着症は関連しない→2
- 1. 皮膚石灰沈着症:透析患者では続発性副甲状腺機能亢進症から石灰沈着をきたしやすい。血管石灰化に伴うカルシフィラキシスも透析患者で好発
- 2. ムチン沈着症:バセドウ病に伴う脛骨前粘液水腫、甲状腺機能低下症に伴う汎発性粘液水腫、糖尿病に伴う浮腫性硬化症などがあるが透析とは関連しない
- 3. 後天性穿孔性皮膚症:変性した皮膚成分の経表皮性排除※がみられる疾患の総称。とくに反応性穿孔性膠原線維症は透析患者や糖尿病患者に好発する
- 4. 晩発性皮膚ポルフィリン症:C型肝炎やアルコール長期摂取のほか、血液透析に伴う場合もある
- 5. 乾皮症:透析患者では乾皮症や皮膚そう痒症を合併しやすい。オピオイドκ受容体作動薬であるナルフラフィン(レミッチ®)は、透析患者や慢性肝疾患患者のそう痒症に対し保険適用
※経表皮性排除 = transapidermal elimination
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p326(1)/319(2)/344(3)/331(4)/137(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p468(1)/452(2)/505(3)/476(4)/184(5)
関連問題
- 2023 選択99 / 2023 記述17 / 2014 記述6 / 2011 選択26 / 記述1 (反応性穿孔性膠原線維症)
- 2022 選択19 / 2015 選択53 / 2011 選択59 / 2009 選択44 (カルシフィラキシー)
- 2014 選択83 (透析患者とびまん性脱毛)
記述問題1:解答 セルメチニブ(selumetinib)
神経線維腫症1型患者の叢状神経線維腫に対して保険適用のあるMEK阻害薬はセルメチニブ(コセルゴ®)
投与対象は「"3〜18歳の"症候性で手術による切除が困難な叢状神経線維腫」→成人には適用がない点に留意
基本的な治療は外科的治療だが、血流豊富で出血リスクが高い。神経線維腫の発生はNF1遺伝子変異→遺伝子産物であるニューロフィブロミン欠損によるMAPKシグナル伝達経路の活性化が原因のため、同経路のシグナル伝達因子であるMEK阻害薬が効果を発揮する

参考サイトより引用
副作用:心機能障害, 眼障害, 肝機能障害, 消化器症状など
- 参考:コセルゴ 添付文書
- 参考:神経線維腫症1型小児に生じる叢状神経線維腫に対するセルメチニブによる治療 臨皮78(5増), 117-122, 2024
- 参考・図引用:Koselugo® (selumetinib) | Study Design & MOA
関連問題
- 2023 選択42 (叢状神経線維腫について)
記述問題2:解答 initiated
薬剤をあらかじめ処方しておき、初期症状に基づき患者判断で服用開始する治療法はPIT(patient initiated therapy)
単純ヘルペスでは発症早期に抗ウイルス薬を内服するほうが効果が高い。通常の疾患で行われる症状が出てから受診→診察・処方流れだと内服までが遅くなってしまうため、この治療法が行われることがある
具体的には下記2種類
商品名 | 一般名 | 用法用量(PIT) |
ファムビル® | ファムシクロビル | 1,000mg x 2回 |
アメナリーフ® | アメナメビル | 1,200mg x 1回 |
詳細は下記参照
-
単純ヘルペス 帯状疱疹 抗ウイルス薬まとめ
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関連問題
記述問題3:解答 gain
BRAF遺伝子におけるp.V600E変異はgain of function variantであり、BRAFを解するシグナル伝達経路が過剰活性化する
これを抑制するため、BRAFおよびその下流に存在するMEK阻害薬を併用で用いる治療が保険適用となっている
-
BRAF阻害薬とMEK阻害薬 【悪性黒色腫】
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gain of function mutation/variant(機能獲得変異):変異遺伝子の生成産物が新たな(通常有害な)機能を獲得するタイプの変異のこと。がん原遺伝子(proto-oncogene)にこの変異が生じることで、がん遺伝子として機能するようになる
対義語はloss of function mutation(機能喪失変異)で、変異によって生理活性のないタンパク質が作られるような変異のこと。がん抑制遺伝子であるRb1やTP53などにこちらの変異が生じることも発がんの原因となる
発がんメカニズムについてはあまり書いてある記事が発見できず。教科書的なものですが下記など
関連問題
BRAF遺伝子に関しては複数出題あり、詳細は上記カード内の記事参照
記述問題4:解答 過酸化ベンゾイル(benzoyl preoxide)
尋常性ざ瘡治療に用いられる外用薬で、角質剥離作用や強い酸化作用を持つのは過酸化ベンゾイル(benzoyl preoxide:BPO, ベピオ®)
尋常性ざ瘡 外用薬
尋常性ざ瘡(ニキビ)の外用薬は大きく面疱(コメド)治療薬と抗生物質外用に分類される
いわゆる白ニキビ・黒ニキビといった早期の段階は面疱治療薬を含まないと効果が乏しい。外用抗菌薬単剤はいずれも推奨度C2(推奨しない)となっている
一般名 | 製品名 | 面疱に対する推奨度 |
過酸化ベンゾイル | ベピオ® | A |
アダパレン | ディフェリン® | A |
アダパレン+過酸化ベンゾイル | エピデュオ® | A |
クリンダマイシン+過酸化ベンゾイル | デュアック® | A* |
*炎症性皮疹と混合でみられる場合
一方で炎症性皮疹、いわゆる赤ニキビ・黄ニキビについては抗生物質外用も有効で推奨度が高くなっている
一般名 | 製品名 | 炎症性皮疹に対する推奨度 |
クリンダマイシン | ダラシンT® | A |
ナジフロキサシン | アクアチム® | A |
オゼノキサシン | ゼビアックス® | A |
面疱で用いられる過酸化ベンゾイルやアダパレンもそれぞれ下記のような機序で炎症性皮疹に有効なため、炎症性皮疹に対する推奨度はいずれもA
- 過酸化ベンゾイル:角質剥離作用+フリーラジカル産生に伴うアクネ菌に対する抗菌作用
- アダパレン:抗炎症作用+毛包上皮の角化正常化による面疱形成抑制(レチノイドの一種)
実際アダパレンによって炎症性皮疹や非炎症性皮疹が減少している
推奨度から簡単にまとめると、「炎症性皮疹に対してはだいたいOK」「面疱に対しては過酸化ベンゾイルかアダパレンを含む必要がある」といえる。ただし耐性菌の問題もあるので抗生剤含有外用薬の長期使用は推奨されていない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p95・365
- 参考:尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023 日皮会誌:133(3), 407-450, 2023
関連問題
記述問題5:解答 Werner syndrome (ウェルナー症候群)
常染色体劣性(潜性)遺伝で、特徴的な嗄声をきたす早老症はWerner症候群
Werner症候群
WRN遺伝子変異が原因の常染色体劣性遺伝疾患で、日本人に多く報告患者の8割を占める
早老症の代表で、20歳前後から皮膚萎縮や強皮症様の変化をきたす。下記のような症状が特徴
- 早老性毛髪変化 (白髪・禿頭)
- 白内障 (両側)
- 足底の過角化(鶏眼/胼胝)・難治性潰瘍
- 鳥様顔貌
- 嗄声, 高声 (high pitched voice)
動脈硬化や悪性腫瘍も合併しやすく短命となるが、他の早老症と異なり光線過敏症は合併しない点に注意
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p340
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p497
関連問題
記述問題6:解答 Pautrier's
痒みのない大型の褐色斑
真皮で高度のリンパ球浸潤がみられ、表皮内でも集簇している。ポートリエ微小膿瘍(Pautrie's microabscess)と呼ばれる組織像で、菌状息肉症などで見られる
悪性腫瘍は基本的には真皮側へ浸潤し、結果として血管やリンパ管を通じて転移していく(だからこそ悪性)。一方ポートリエ微小膿瘍では表皮向性の浸潤で、通常とは異なるためわざわざ名前が付けられているものと考えることができる
類似病変がいくつかあるので整理しておく

参考サイトより引用
所見 | 代表疾患 | |
Kogoj海綿状膿疱 | 有棘層上層の多房性膿疱 | 膿疱性乾癬 |
Munro微小膿瘍 | 角層中〜直下の好中球集合 | 尋常性乾癬 |
Pautrier微小膿瘍 | 角層中〜直下の異型リンパ球集合 | 菌状息肉症 |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p44/468
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p56/705
- 参考・図引用:Twitter @byo_mie 2022/10/18
関連問題
記述問題7:解答 neutrophil
血管炎検査で用いられるANCA = anti-neutrophil cytoplasmic antibldy (抗好中球細胞質抗体)
ANCA関連血管炎
ANCAが検出される血管炎のことで、傷害血管の太さで分類するChapel Hill分類では小型血管炎の中に分類される
ANCA関連血管炎では免疫グロブリン沈着はみられない(pauci-immune型)
2種類あり、疾患ごとにどちらが陽性になりやすいかが異なる。ただし陰性の場合もあるので注意
ANCA関連血管炎 | 疾患 |
MPO-ANCA (P-ANCA) | 顕微鏡的多発血管炎(MPA) |
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) | |
薬剤関連ANCA血管炎 (プロピオチルウラシル, ヒドララジン等) | |
PR3-ANCA (C-ANCA) | 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)* |
*日本では欧米(>90%)と比較して陽性率が低く60%
- 参考:血管炎・血管障害診療ガイドライン 2016年改訂版 日皮会誌:127(3), 299-415, 2017のp302, 305
関連問題
記述問題8:解答 乾癬性関節炎(関節症性乾癬)
中高年男性において手指のMCP関節周囲で、伸筋腱周囲の血流増加(炎症)や滑膜炎の所見がみられ乾癬性関節炎(関節症性乾癬)を考える。
中手骨頭やや近位側で腱周囲にみられる炎症はperitenon extensor tendon inflammation(PTI)パターンと呼ばれる
乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)
PsAは皮疹が先行することが80%程度で(この時点の診断名は"尋常性乾癬")、年単位の経過で関節炎を発症する
とくに下記のようなリスク因子があると移行する例が多いとされる
- 皮疹面積が広い
- 高BMI
- 爪病変
- その他特定の部位(頭皮・殿部・inverse psoriasis)

参考文献より引用, sub-clinicalは関節痛やエコー変化はあるが明らかな滑膜炎がない状態, clinicalは明らかに滑膜炎がある状態
早期からの全身治療でこの移行を予防できるとも考えられており、後ろ向き研究ではあるが生物学的製剤とくにIL-23阻害薬で移行率が低かったとする報告がある(Lancet Rheumatol. 2023 Apr;5(4):e200-e207.)
なお関節炎は関節リウマチや変形性関節症でも生じるため鑑別が必要だが、好発部位や病態に違いがあるとされる
病態 | 好発部位 | 特徴 | |
関節リウマチ | 滑膜炎 | PIP関節 | 自己抗体陽性例が多い(抗CCP抗体等) |
乾癬性関節炎(PsA) | 付着部炎 | DIP関節, 手指伸筋/屈筋腱付着部, アキレス腱付着部 | 骨新生像 |
変形性関節症 | 使いすぎなどが原因とされる | DIP, PIP関節 | 骨硬化像 |
両者の鑑別やPsA早期診断のためにエコーが有用という報告が多い。PsAにおけるレントゲンでの変化(pencil in cup)も有名だが、変形が高度に進まないと変化が捉えられないので早期診断には不向き
- 参考:乾癬性関節炎診療ガイドライン2019 日皮会誌:129(13), 2675-2733, 2019のp2691-2692, 2708-2709
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 乾癬性関節炎の理学的所見の取り方, 検査法(関節エコー), 画像所見 日皮会誌:132(1), 27-34, 2022
- 参考・図引用:EULAR points to consider for the definition of clinical and imaging features suspicious for progression from psoriasis to psoriatic arthritis Ann Rheum Dis . 2023 Sep;82(9):1162-1170.
関連問題
記述問題9:解答 sclerotic (muriform)
肉芽病変の組織で見られる黒色調の隔壁を有する細胞はsclerotic cell (muriform cell)と呼ばれる
黒色真菌症
メラニン色素の産生によりコロニーや組織内菌要素が黒色〜褐色をきたす真菌症は、黒色真菌症と総称される
大きくはmuriform cell(sclerotic cell)と呼ばれる、褐色で隔壁を持つ大型細胞の有無で分類される

参考サイトより引用, sclerotic cell(muriform cell)
黒色真菌症 | sclerotic cell | 原因真菌 |
黒色分芽菌症 (クロモミコーシス※) | + | Fonsecaea monophora* |
黒色菌糸症 (フェオヒフォミコーシス) | - | Exophilala属菌* |
※黒色分芽菌症は”クロモブラストミコーシス”と呼ばれることもある
*Fonsecaea monophoraはかつてF. pedrosoiと呼ばれていたが、分類見直しで名称が変更となった
*Exophiala属菌にはE. jeanselmei, E. xenobiotica, E. dermatitidisなどがある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p543
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p915
- 参考:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019 日皮会誌:129(13), 2639-2673, 2019のp2646
- 参考・図引用:Pathology of Infectioud Diseases Case 170
関連問題(黒色真菌症)
記述問題10:解答 trigeminal trophic syndrome
脳腫瘍術後に三叉神経領域の感覚異常から掻爬を繰り返し、潰瘍をきたす現象をtrigeminal trophic syndomeと呼ぶ
鼻翼付近に好発するため基底細胞癌との鑑別が問題となるが、本例では組織学的に異型性が見られない点から否定される
掻爬による悪化が原因のため、患者教育や被覆材で覆うことが有効
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p228
- 参考:マルホ皮膚科セミナー 吾診から学ぶ
関連問題
- 2020 記述8 (★ほぼ同一問題★)
記述問題11:解答 Antoni(アントーニ), verocay(ヴェロケイ)
神経鞘腫はAntoni A領域/B領域に分けられる
A領域で見られる病理組織所見はVerocay bodyと称され、同部位は良性腫瘍だが血流も豊富
Antoni | 組織 |
A領域 | 細長い核が柵状に並ぶ帯と、核に乏しい好酸性の部位からなる構造(Verocay body) |
B領域 | 方向性がなく細胞成分が疎 |
神経線維腫症2型(NF2)では神経鞘腫とくに両側聴神経鞘腫が特徴で、予後はNF1より悪い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p420・394
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p736・573
関連問題
- 2022 記述14 / 2014 記述14 (★ほぼ同一問題★)
- 2019 選択76 (神経鞘腫のエコー:Antoni A領域は血流豊富)
記述問題12:解答 多形皮膚萎縮(症)/ポイキロデルマ (poikiloderma)
皮膚萎縮・色素沈着・色素脱失・毛細血管拡張が混在する状態を多形皮膚萎縮症(ポイキロデルマ)と呼ぶ
様々な疾患の終末像とされ、とくに下記のような疾患が代表
分類 | 疾患 |
膠原病 | 皮膚筋炎, SLE, 強皮症 |
リンパ腫 | 菌状息肉症 |
炎症性皮膚疾患 | 湿疹続発性紅皮症, 扁平苔癬 |
皮膚障害 | 慢性放射線皮膚炎, 慢性日光皮膚炎, 外傷性瘢痕 |
遺伝性疾患 | 色素性乾皮症, 先天性表皮水疱症, Rothmund-Thomson症候群 |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p75
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p490
関連問題
- 2015 選択58 / 2011 選択62 (多形皮膚萎縮がみられる疾患)
- 2010 選択61 (多形皮膚萎縮の症状)
記述問題13:解答 molluscum
腋窩に散在する中心臍窩を伴う小丘疹から伝染性軟属腫(水いぼ)を考える
組織学的に好酸性封入体がみられ、molluscum body (Henderson-Patterson bodiesとも)と呼ばれる
ちなみに伝染性軟属腫の英名はmolluscum contagiosum
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p498
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p61・802
記述問題14:解答 flame figure(s)
Wells症候群(好酸球性蜂窩織炎)で見られる、膠原線維が変性し好酸球顆粒が付着して炎のように見える所見はflame figureと呼ばれる
Wells症候群以外に虫刺症・水疱性類天疱瘡等の好酸球が増加する疾患でも出現することがある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p357
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p62・439
- 参考:Eosinophilic Cellulitisの1例 アレルギー 53(10), 1079-1083, 2004
関連問題
記述問題15:解答 コレステロール(結晶)塞栓症
経皮的冠動脈形成術(PCI)実施2週間後から足趾にチアノーゼをきたし、疼痛を伴っている
組織ではコレステロール結晶がみられ、コレステロール(結晶)塞栓症の診断。別名blue-toe症候群とも呼ばれる
検査結果では腎障害(血清クレアチニン上昇)や好酸球増加、補体低下が特徴
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p47・180
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p251
表記については"結晶"なしのコレステロール塞栓症(国立循環器病研究センター)やコレステリン塞栓症(日経メディカル)と記載されることもあり、採点上どこまで許容されているのかは謎
関連問題
- 2013 選択33 / 2010 選択74 (臨床問題)
記述問題16:解答 ランゲルハンス細胞組織球症 (Langerhans cell histiocytosis)
女児で湿疹様の皮疹が見られ、発熱や脾腫を伴っている
皮膚生検ではCD1a陽性のLangerhans細胞の増殖がみられ、ランゲルハンス細胞組織球症の診断
ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)
皮膚に存在する抗原提示細胞であるLangerhans細胞が腫瘍性増殖をきたす疾患で、小児に好発する
皮膚では湿疹類似の病変をきたし、骨病変(頭蓋骨融解)や肝脾腫など内臓病変を伴うことがある。
Langerhans細胞は免疫染色でS-100+, CD1a+ , CD207(ランゲリン)+となるのが特徴
治療:皮膚病変のみならまずステロイド外用や切除だが、内臓病変を伴う場合は化学療法や造血幹細胞移植
LCHでは約半数にBRAF V600E変異(表在拡大型メラノーマでも見られる変異)がみられ、BRAF/MEK阻害薬治療が行われることもある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p480・34・49・50
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p696・48
関連問題
- 2021 選択16 / 2021 選択53 / 2019 記述15 / 2018 選択47 / 2016 選択13 / 2013 選択41 / 2012 選択71 / 2010 選択35 / 2009 選択12(Langerhans細胞と免疫染色)
- 2022 選択34 (遺伝子変異)
- 2020 選択44 (治療)
記述問題17:解答 周辺帯 (cornfield cell envelope)
表皮細胞が角化する最終過程で、角質細胞(ケラチノサイト)に周辺帯(cornified cell envelope)と呼ばれる構造が出現し、細胞膜を裏打ちする
ロリクリンやインボルクリンが構成成分であり、トランスグルタミナーゼなどの酵素で架橋されることにより作られる
トランスグルタミナーゼをコードするTGM1遺伝子の変異は葉状魚鱗癬(や先天性魚鱗癬様紅皮症)の病因となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p5・9/271
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p7・12/347
関連問題
- 2021 選択18 / 2018 選択15 / 2010 選択7 (葉状魚鱗癬の原因)
- 2019 選択15 / 2017 選択11 / 2016 選択9 / 2013 選択11 / 2011 選択8 (周辺帯の構成成分)
記述問題18:解答 ニボルマブ
2024年2月、「根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍」に対して追加承認された薬剤はニボルマブ(オプジーボ®)
腫瘍の具体例としては下記のようなものがある
- 有棘細胞癌
- 基底細胞癌
- 乳房外Paget病
- 皮膚付属器がん(汗腺癌, 脂腺癌, 毛包癌)
なおニボルマブは抗PD-1抗体製剤で、もともと皮膚科領域だとメラノーマ(悪性黒色腫)に対して保険適用がある薬剤でもある
- 根治切除不能例(ニボルマブ単剤 or 抗CTLA-4抗体製剤イピリムマブとの併用)
- 完全切除後の術後補助化学療法(ニボルマブ単剤, ステージⅡB〜)※
※メラノーマの術後補助化学療法として、同じくPD-1をターゲットとするペムブロリズマブ(キイトルーダ®)だとステージⅡB・ⅡCも対象となっている。ニボルマブはもともと術後補助化学療法としてはⅢB・ⅢCのみが対象だった(ガイドライン発行時)が、2025/2にステージⅡB・ⅡCも追加されて両者の差がなくなった。
- 参考:オプジーボ®点滴静注、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対する効能または効果の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得
- メラノーマの参考:皮膚がん診療ガイドライン第4版 メラノーマ診療ガイドライン 2025 日皮会誌:134(13), 3149-3265, 2024のp3191-3192, 3200
関連問題
記述問題19:解答 ミルメシア
男児の踵に見られる結節病変で、疼痛を伴っている
HPV-1が検出されていることからミルメシアの診断となる。尋常性疣贅の亜型で手掌足底に生じ発赤や圧痛を伴う点が違いとされる。
HPVは型により臨床症状が異なる
HPVの型 | 臨床症状 |
1 | ミルメシア |
2, 4, 7, 27, 57 | 尋常性疣贅 |
3, 10, 28, 29, 94 | 扁平疣贅 |
16 | Bowen様丘疹症, 爪Bowen病 |
5, 8 | 疣贅状表皮発育異常症 |
57, 60 | 足底類表皮嚢腫 |
63 | 点状疣贅 |
6, 11 | 尖圭コンジローマ |
-
HPV(ヒトパピローマウイルス) 型と関連疾患 まとめ
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- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p494
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p804・806
関連問題
HPVの型と関連疾患については頻出, 詳細は上記カード内の記事参照
記述問題20:解答 PVL (Panton Valentine Leukocidin)
市中感染型MRSAの一部でPVL産生株がみられ、感染すると白血球に対して壊死性変化を起こし、組織壊死を伴って重症化するリスクが高い
再発性のせつ・せつ腫症との関連が指摘されている
MRSAは通常院内感染の形態をとるが、入院歴のない健常人に感染したMRSAを市中感染型MRSA(CA-MRSA)と呼ぶ
関連問題