ヒトパピローマウイルス(HPV)は複数の型があり、それぞれ起こす疾患が異なるためまとめました
皮膚科専門医試験の過去問(10問)も後半で紹介します
見出し
HPV 型と関連疾患 皮膚科専門医試験 過去問
ヒトパピローマウイルス(HPV)と皮膚疾患
複数あるが、基本的には一番左側のものの重要度が高い
HPVの型 | 臨床症状 |
1 | ミルメシア |
2, 4, 7, 27, 57 | 尋常性疣贅 |
3, 10, 28, 29, 94 | 扁平疣贅 |
16 | Bowen様丘疹症, 爪Bowen病 |
5, 8 | 疣贅状表皮発育異常症 |
57, 60 | 足底類表皮嚢腫 |
63 | 点状疣贅 |
6, 11 | 尖圭コンジローマ |
なお皮膚科疾患ではないが、HPV-16/18は子宮頚癌と関連することも重要(2価・4価・9価とあるHPVワクチンはいずれもこの型を含む)
HPVワクチンの種類 | 名称 | 標的とするHPV型 |
2価 | サーバリックス | 16, 18 |
4価 | ガーダシル | 6, 11, 16, 18 |
9価 | シルガード9 | 6, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58 |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p494
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p804
- 参考(HPVワクチン):(5)HPV ワクチン – 日本産婦人科医会
皮膚科専門医認定試験 関連過去問 (2022〜2009年度)
問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会
2022年 選択問題49
2022年 選択問題49
55歳、男性。成人T細胞白血病で血液内科に通院中。2年前より、前額部に図22に示す色の皮疹が出現し、徐々に増数したことを主訴に来院した。皮疹部からの皮膚生検組織のH&E染色像を図23、図24に示す。なお、生検組織から抽出したDNAを用いたPCR法でHPV-3が検出された。診断は何か。
- 扁平疣贅
- 尋常性疣贅
- 脂漏性角化症
- ボーエン様丘疹症
- 疣贅状表皮発育異常症
解答:1
組織での空胞細胞(コイロサイトーシス)およびHPV-3が検出されていることから、扁平疣贅と診断する
- 尋常性疣贅:HPV-2
- ボーエン様丘疹症:HPV-16、組織学的にBowen病に類似するためこのような名称
- 疣贅状表皮発育異常症:HPV-5、先天的なHPVに対する免疫不全が原因
2020年 選択問題28
2020年 選択問題28
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)と関連する疾患で, 正しい組み合わせはどれか.
- HPV1-扁平疣贅
- HPV3-ミルメシア
- HPV5-疣贅状表皮発育異常症
- HPV16-足底類表皮嚢腫
- HPV60-爪Bowen病
解答:3
HPV5は疣贅状表皮発育異常症と関連する
解説詳細はリンク先:2020 選択28
2019年 選択問題20
2019年 選択問題20
60歳の男性. 両親はいとこ婚. 幼少期から図4aに示す皮疹を露光部を中心に認める. 病理検査では図4bに示す所見が得られた. この疾患は, ある病原体に対する先天性免疫不全により発症する. その病原体はどれか.
- Beta human papillomavirus
- Candida albicans
- Cytomegalovirus
- Epstein-Barr virus
- Malassezia globosa
解答:1
露光部の紅斑〜褐色斑と、組織での空胞細胞(コイロサイトーシス)から の診断
HPVに対する先天的な免疫不全が原因(常染色体劣性遺伝疾患)
解説詳細はリンク先:2019 選択20
2016年 記述問題5
2016年 記述問題5
30歳の男性. 陰茎に2か月前から自覚症状のない黒色の丘疹が多発. 図27aに皮膚所見, 図27bに生検病理所見を示す. 原因として最も頻度の高いHPVの型を記せ.
解答:HPV-16
陰茎部で尖圭コンジローマ類似の褐色丘疹が、組織学的にBowen病類似の異常角化細胞や核分裂像がみられることからBowen様丘疹症の診断
HPV-16が原因となる
解説詳細はリンク先:2016年 記述5
2015年 選択問題20
2015年 選択問題20
23歳の女性. 約2年前に左こめかみに自覚症状のない淡褐色扁平丘疹が出現した. 徐々に増加し, 顔全体に広がってきたため来院した(図3). この疾患について誤っているのはどれか. 2つ選べ.
- HPV2の感染によって生じる.
- 組織学的に空胞細胞がみられる.
- イミキモドの保険適用はない.
- 液体窒素療法が第一選択である.
- しばしば自然消退する.
解答:1, 4
扁平疣贅は顔面や腕に好発し、HPV3が原因。顔面は色素沈着を残しやすいため液体窒素は通常行わない
解説詳細はリンク先:2015年 選択20
2013年 選択問題24
2013年 選択問題24
ヒトパピローマウイルス(HPV)の型と臨床病型の関係で誤っている組み合わせはどれか。
- HPV3 - 疣贅状表皮発育異常症の癜風様皮疹
- HPV6 - 尖圭コンジローマ
- HPV16 - Bowen様丘疹症
- HPV18 - 子宮頚がん
- HPV57/60 - 足底類表皮嚢腫
解答:3
HPV5が疣贅状表皮発育異常症の原因、HPV3は扁平疣贅の原因
解説詳細はリンク先:2013 選択24
2012年 選択問題18
2012年 選択問題18
疾患と関連ウイルスで正しい組み合わせはどれか。3つ選べ。
- 薬剤性過敏症症候群 - HHV6 (ヒトヘルペスウイルス6型)
- 蚊刺過敏症 - サイトメガロウイルス
- メルケル細胞癌 - ポリオーマウイルス
- ボーエン様丘疹症 - HPV5 (ヒトパピローマウイルス5型)
- 脊髄症 - HTLV-1 (ヒトT細胞白血病ウイルス1型)
解答:1, 3, 5
ボーエン様丘疹症はHPV-16、HPV-5は疣贅状表皮発育異常
蚊刺過敏症はEBウイルスの慢性感染(CAEBV)と関連する
2010年 選択問題66
2010年 選択問題66
27歳、女。臨床所見(図35)と病理所見(図36)から、最も考えられる原因は何か。
- HPV1
- HPV3
- HPV5
- HPV6
- HPV11
解答:2
顔面褐色斑と組織でのコイロサイトーシスから、扁平疣贅と診断する。関連するのはHPV-3
2009年 選択問題20
2009年 選択問題20
ヒトパピローマウイルス(HPV)16型が検出される可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
a. 顔面のkeratoacanthoma
b. 爪甲下のBowen病
c. 外陰部のverrucous carcinoma
d. 外陰部のbowenoid papulosis
e. 足底のepithelioma cuniculatum
解答:b, d
HPV-16と関連するのは爪部Bowen病およびボーエン様丘疹症(bowenoid papulosis)
2009年 選択問題21
2009年 選択問題21
疣贅状表皮発育異常症について正しいものはどれか2つ選べ。
a. HPV16型が高頻度に検出される。
b. 多くは常染色体優性遺伝である。
c. カポジ水痘様発疹症をしばしば併発する。
d. 癜風様の白斑や紅斑を生じる。
e. 露光部位において皮膚悪性腫瘍が生じる。
解答:d, e
皮膚症状は癜風様の白斑や紅斑であり、露光部位に悪性腫瘍が好発する
HPV5型が原因で、遺伝形式は常染色体劣性(潜性)