梅毒の血清学的検査法についてまとめました
梅毒 血清学的検査の比較
梅毒血清学的検査には大きく2つある
- STS法:梅毒感染に伴い組織が破壊され生じた脂質(自己組織)を認識する。治療によって変化するため、効果判定に有効
※非特異的なため、抗リン脂質抗体症候群等で生物学的偽陽性がある - TP抗体法:Treponema pallidum (TP 梅毒)特異的な抗体を認識する。
現在STS法はRPR法のみが用いられているが、TP抗体法に関しては複数検査法が存在する
STS法 | RPR法 | カルジオリピン(脂質抗原) |
TP抗体法 (総称がTPHA) |
TPHA | 動物赤血球 |
TPPA | ゼラチン粒子 | |
TPLA | ラテックス | |
FTA-ABS法 | 蛍光抗体法 |
- STS法ではRPR法が、TP抗体法ではTPLAが最も一般的
- 「TPHA」という表現は、TP抗体法の総称(広義)ないし動物赤血球を用いたTPHA(狭義)の2種類の意味がある
※STS:serological test for syphilis, TPHA:Treponema pallidum hemagglutination test, TPPA:Treponema pallidum particle agglutination test, TPLA:Treponema pallidum latex agglutination, FTA-ABS:fluorescent treponemal antibody absorption test
いずれも現在はメディエース®等による自動化法(自動測定機器を用いる方法で測定誤差が少ない)が主流となっている
検査法の変化により、現在は梅毒感染後陽性になる順番がTPHA(TPLA)→STS(RPR)となってきている
感染後陽性になるまでの間隔(window period)は4週間程度
以上をまとめるとSTS法陽性、TP抗原法陰性の場合は下記の2パターンが考えられる
- 生物学的偽陽性:SLEなどでみられる、非梅毒だが組織破壊により脂質が認識されSTS法が陽転化する病態
- 感染早期:とくに従前はSTS法の方がTP抗原法よりも先に陽転化することが多かった*
*TPLA法の普及にともないこのパターンは減少している
一方STS法陰性、TP抗原法陽性の場合は下記の3パターンがありえる
- 梅毒治癒後:治癒後もTP抗原法は陽性が持続するが、STS法は陰転化する
- 感染早期:近年はTP抗原法がSTS法より早く陽転化することが増えている。この場合時間をおいて検査すればSTS法も陽転化する
- プロゾーン現象:抗原または抗体過剰により反応が抑制され、偽陰性となる現象。希釈検体で再検することで、STS法も陽転化する
以前の検査方法
従前は用手法*が主流だった
*2倍系列希釈を作成し、検査技師等が目視で陽性を確認する手法
またTP抗体法でもTPLAは用いられておらず、TPHA法よりもSTS法の方が梅毒感染後早期に陽転化していた
皮膚科関連の教科書でも、この時代の検査方法に則って
「STS(RPR)法はTPHAよりも早く陽転化する」と記載してある場合が多いので注意が必要
(あたらしい皮膚科学 第3版, 皮膚科学 第10版など)