病院で実習しているとカンファレンスや教授回診の際、担当している患者さんについて3分程度で口頭発表する機会はよくあります。自分が今週回っていた老年内科でもそのような機会があり、またプレゼンテーションの仕方に関する講義もあったので少し書いてみようと思います。
なおプレゼンの仕方が書いてある本として、自分が読んで役立ったと思うのは下の本です。
研修医になったら必ず読んでください。〜診療の基本と必須手技、臨床的思考法からプレゼン術まで
羊土社
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タイトル通り研修医の先生向けの本ですが、プレゼン術や問診など医学生が読んでもそこそこ役立てられそうなことが書かれています。
基本形
SOAP形式での発表が基本、とされています。つまり以下のようにS:Subject→O:Object→A:Assessment→P:Planの順番で喋ります。
S:Subject(病歴)
- 年齢・性別
- 主訴(入院理由)
- 現病歴
- 既往歴・生活歴(アルコール・喫煙等)・家族歴
O:Objective(身体診察・検査)
まずは身体診察から始めて、次に検査。血液検査・尿検査→CT→生検など侵襲性の低い検査から述べる
SとOの陰性所見に関して。今回の記事では3分間くらいと比較的短めのプレゼンを想定して書いているため、基本的に陰性所見は触れなくて良いと思います。
※逆に言うと、述べないデータでもいつでも参照出来るように手元に置いておくべき
A:Assessment(評価)
S・Oから考えられる疾患を挙げ、プロブレム#1 糖尿病・#2 胆石・#3 認知症といった形でまとめます。
発表する順番としては3番目ですが、実際には疾患から逆算してどの所見・結果を述べるかを決めることになります。
P:Plan(治療計画)
プロブレムごとに今後の方針を述べます。
このようなSOAP形式は、患者さんの情報→考えられる診断→それに対する治療と進むため、非常に論理的です。
ただ実際にこの形式で原稿を作ってみると、疾患を複数持っている患者さんの場合は困ったことが起こります。それは診察所見や検査値がたくさんあると、それらについて喋っているうちに最初の方に喋った検査値を(聴いている側が)忘れてしまうという点です。
つまり、S→O(HbA1c 6.9%・T.Bill 4.8mg/dl・MMSE20/30点)→A(糖尿病・胆石・認知症)→P(合併症精査・胆摘・介護保険申請)と喋った場合、糖尿病のAを喋っている頃にはMMSEの値の方が印象に残っており、HbA1cなんて忘れてしまっているという問題が出てきます。
改良型(口頭発表向き)
そんなわけで改良してみたのが以下の順番です。
S→プロブレムを列挙→#1のO・A・P→#2のO・A・P→…
要するにSは共通ですが、その後プロブレムを列挙(#1 糖尿病・#2 胆石 #3 認知症)して全体の見通しを立てます。そしてその後プロブレム1つずつについてO→A→Pと喋ることで、データ→診断→方針という流れがより明快になります。
前を振り返ることが容易なカルテやレポートではSOAP形式を守るべきだと思いますが、口頭発表ならこの形式の方が聴いていて解りやすいかなと思いました。
パワーポイントを使った発表ならともかく、こうした簡易的な口頭発表はなかなか指導してもらえる機会がないので、自分なりに考えて改善していくしかないですね。大きな声で・ゆっくり喋るなどは、基本ながら大事だと思います。