皮膚科 皮膚科専門医試験対策

皮膚科専門医試験 受験のための単位や手術・症例レポートについて解説【新専門医制度】

2024年5月2日

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皮膚科専門医試験を受験するためには受験資格を満たす必要があります。

皮膚科専門医試験 受験資格

  • 研修期間:60ヶ月以上
  • 前実績必要単位:60単位以上 (学会聴講や発表・論文)
  • 症例レポート:入院/外来+手術

受験資格を満たすためには最低5年間が必要で、単位取得にも計画性が求められます。

そこで今回は皮膚科専門医試験の受験資格についてまとめました。

補足

専門医制度は旧制度(学会制度)と新制度(日本専門医機構 機構制度)が混在しています

新制度は2018年から開始されており、現在専門医試験受験を検討している方の多くは新制度のためこの記事では新制度に絞って記載しています

学会ホームページの書類でも学会制度と機構認定制度が両方あり、非常に紛らわしいので注意しましょう

SoS
こんにちは。皮膚科医のSoS(@sodermaos)です

新専門医制度下で2023年度の皮膚科専門医試験に合格しました

この記事では受験資格を満たすために必要な条件や、手術・症例レポートの具体的疾患などを解説していきます

無事に受験できるようになった後の勉強方法については下記も参照ください

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皮膚科専門医試験の対策! おすすめの勉強方法や参考書などをまとめて解説

続きを見る

専門医試験の受験資格について、詳しくは皮膚科学会ホームページ>専門医制度>機構認定専門医制度>専攻医の方に向けた情報に掲載されている、「受験申請についての手引き」に詳しく書かれています

2024年度日本専門医機構認定皮膚科専門医認定試験 受験申請についての手引き

2024年度の手引きが公開されたためURLを更新 2024/5/27

ただ非常に分かりづらいので、いくつかに分けて解説していきます

研修期間

研修期間に関する主な条件は下記のようになります

  • 常勤で60ヶ月以上の研修期間
  • 研修基幹施設で1年以上の研修+研修連携施設等で1年以上の研修
  • 最低2年間はフルタイム勤務による研修
  • 産休・育休は6ヶ月間まで研修期間として算定可能

研修期間で重要な点に、受験年の研修修了までの研修を修了見込みとして含むことができるという点があります

→つまり60ヶ月終了見込み(皮膚科医5年目途中)で受験可能です!!

SoS
旧制度(学会制度)では5年間の研修を修了している必要があった(つまり受験が6年目)だったので、混同されやすいです。要注意

研修基幹施設で1年以上の研修

研修基幹施設≒大学病院本院です。具体的には下記サイトに載っている施設ですが、県によっては1施設しかないこともあります

参考:日本皮膚科学会認定主研修施設

研修基幹施設以外の研修連携施設等で地域に密着した研修経験が原則として1年以上あること

つまり「大学病院で5年間」はNGということになります。まあ医局人事などで配慮してもらえるかと思いますが、念の為注意しておきましょう

2年間以上はフルタイム勤務による研修が必須

逆に言うと3年間は時短勤務でも可能ということです

具体的には育児短時間勤務制度を利用する場合、月120時間(1日6時間)の勤務時間を満たしていれば、研修期間として算定可能になっています

参考:日本皮膚科学会 よくあるお問い合わせ 時短勤務は専攻医の研修期間として認められますか。

産休および育休期間

現在は最大6ヶ月間まで研修期間として算定可能です

ただし2人・3と人出産しても、合計6ヶ月しか認められません…

以前は産休・育休中は完全に算定できないという(とても平成後期とは思えない)システムだったので改善されてはいます。少子化が問題となっている今の世の中ですから、今後制限が緩和されることを期待したいところです

前実績 必要単位

皮膚科専門医試験の受験資格を得るためには、講習会・学会発表・論文発表で前実績単位を取得する必要があります

どのように単位を取得するかはある程度自由度がありますが、最もコスパよく無難なパターンは下記です

前実績 必要単位

  • 講習会:共通講習6単位(e-learning)+必須講習12単位+選択講習14単位=32単位
  • 学会発表:16単位 (8回)
  • 論文発表:12単位 (3本)
  • 合計:60単位

以下解説していきます

講習会

講習会は共通・必須・選択の3つに分けられ、いずれも1時間=1単位です

共通講習会

共通は「医療安全」「感染対策」「医療倫理」の3つで、診療科を問わず共通です

各1単位(合計3単位)は必須で、2単位(合計6単位)まで取得可能です

共通講習会は年に1回開催される皮膚科学会総会で3つとも開催されますが、その他の支部大会(東部/東京/中部/西部)では1つくらいしか開催されません

プログラムを見てみると、紫色の枠で囲われ下段に「共通講習:◯◯(医療倫理など)」と書かれているものが該当します

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第122回日本皮膚科学会総会プログラムのPDFより

また大きな病院に勤務している場合、これらの講習会が開かれることがあります(内科など他の診療科専攻医もこの講習会単位が必要なため)。このような現地講習会の参加だと参加用紙がもらえるため、これを取っておくと単位申請で利用可能なようです

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筆者が現地参加した講習会の受講証明書

SoS
幸い現在は皮膚科総会のe-ラーニング(受講後に簡単なテスト問題へ解答)でも単位取得が可能なため、この方法で取得を目指すのがおすすめ

日本専門医機構のHPに共通講習e-ラーニングがあり、こちらを利用することも選択肢ですが…1講座3,300円必要なので、最終手段という感じがします

補足

共通講習会は従来3つだけ(医療倫理・感染対策・医療安全)でした

しかし日本専門医機構の方針で「2021年度以降に認定された機構専門医は更新時に必修講習B(5項目:医療制度と法律・地域医療・医療福祉制度・医療経済・両立支援)の受講が必須」となっています

参考:整備指針(第三版2020年2月版)における「専門医の認定・更新」に関する補足説明

ただしこれはあくまでも"専門医資格の更新時"に必要な単位なので、専門医試験を受験する時点では必修講習Bに該当する単位は不要です(2024年受験時点では)

皮膚科学会の会員ページから閲覧できる「専門医 前実績」の講習会参加単位ページに表示されて紛らわしいので注意

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必須・選択講習会

必須・選択講習会は共通と異なり、いずれも皮膚科分野の講習会です。

必須に分類されるものは下記です

必須講習会 時期 コマ数(1コマ1時間)
1月上旬 4コマ
総会 6月 4コマ
8月 4コマ
合計 12コマ

一方選択に分類されるのが下記です

選択講習会 時期 コマ数(1コマ1時間)
1月上旬 4コマ
8月 4コマ
支部大会(東部・東京・中部・西部) 10〜11月 各2コマ
合計 16コマ

これら講習会は約2か月前までに事前申込が必要で、オンラインで申し込み可能です。(日本皮膚科学会雑誌に掲載されている申込用紙で申し込む方法も)

開催予定講習会については内容や具体的な日時が学会HPに記載されています

日本皮膚科学>開催予定講習会 (要会員登録)

必須講習会は1年度に4単位までしか認められず、それ以上受講すると選択講習の単位となるので注意

例:2023年の6月に必須(総会) 4単位を受講し、2024年1月の必須(冬) 4単位を受講した場合は必須8単位ではなく必須4単位/選択4単位となる

→必須講習会は受験資格を満たす12単位のために3年間が必要

SoS
講習会は以前現地開催のみでしたが、コロナ禍以降WEB開催が主体で参加がラクになりました。このままWEB開催が継続することを祈りたいところです

なお講習会は単位取得のみでなく、過去問で出題がないが講習会で触れられていた内容が専門医試験に出題されることがあります。受験前1年間は積極的に講習会を受けておくことがおすすめです

学会発表

学会発表は1回につき2単位です。多くの方は8回16単位を目指すことになるでしょう

基本は口頭発表で、ポスター発表の場合は口頭で発表する機会(ポスターディスカッションやポスターセッション)があることが条件になります

※日本皮膚科学会総会と国際学会のポスター発表では口頭で発表する機会がなくても可能

具体的な学会リストは学術集会一覧として、PDFが公開されています

別表 学術集会一覧

多くの方は下記のような学会で発表することになるはずです

皮膚科専門医試験 学会発表単位の該当学会

  • 日本皮膚科学会総会
  • 日本皮膚科学会地方会(東北〜や大阪〜など)
  • 日本皮膚科学会支部学術大会(東部・東京・中部・西部)

研究会については、「角化症研究会」「皮膚かたち研究学会」のように単位として認められる研究会と、認められない研究会があるので注意

論文発表

論文発表は1本につき4単位で、最低12単位が必須なので最低3本必須となります

皮膚科専門医試験受験に際して最もハードルが高いとされるのがこの論文3本という点です。

論文については実際に掲載されていなくても、掲載が決定した状態(acceptされた状態, in press)であればOKとなっています。

論文発表として認められる雑誌の条件は下記となっています

  • 年2回以上発行されていること
  • 1回に付き600部以上発行されていること(オンラインジャーナルはPubMed検索可能なこと)
  • 査読があること

具体的な雑誌リストもPDFで公開されています

巻末02 代表的な雑誌のリスト

日本語雑誌だと、目標とするのは下記のような雑誌が多いのではないでしょうか

皮膚科専門医試験 論文発表単位の該当雑誌

  • 皮膚科の臨床
  • 臨床皮膚科
  • 西日本皮膚科
  • 皮膚病診療
SoS
当然雑誌により採用基準が異なり、採用されやすさも異なるので投稿先については上司ともよく相談しましょう

たとえばSkin Surgery(臨床皮膚外科学会会誌)は学術集会で発表された報告のプロシーディングを掲載するとされているので、学会発表を行っていれば受諾されやすいはずです

リストにない中だと、加齢皮膚医学セミナー(加齢皮膚医学研究会)なども「年2回以上, 1回600部以上, 査読あり」の条件をピッタリ満たしていたりします

補足

受験資格単位数をよく読んでみると論文発表は”最低”12単位なので、もっと多くても良いことがわかります。

学会発表+論文発表で28単位以上が受験条件ですから、例えば発表6回(12単位)+論文4本(16単位)とか論文7本(28単位)みたいな方法も不可能ではありません。学会発表と論文発表の手間を考えれば後者の方が上回るので、あえてこの条件で提出する人は少ないと思いますが…

経験症例レポート

症例レポートは入院/外来と手術に分けられます

経験症例 入院・外来レポート

研修期間中に経験した入院および外来の症例を15症例以上記入する必要があります

この中で「必須症例」として12項目が指定されておりこれらを含める必要があります

  1. アトピー性皮膚炎
  2. 薬疹
  3. 接触皮膚炎
  4. 膠原病・自己免疫性水疱症
  5. 乾癬
  6. 色素異常症
  7. 慢性皮膚潰瘍
  8. 皮膚悪性腫瘍
  9. 皮膚ウイルス感染症
  10. 皮膚細菌感染症
  11. 皮膚真菌症
  12. 蕁麻疹

15例のうち7症例以上は入院が必須で、最大30症例(入院15例/外来15例)まで記入することができます

→最少で終わらせる場合は入院7例/外来8例になります

SoS
皮膚科専門医試験の事前提出書類は書類審査で1〜5までの点数が付けられます。評価5は加点/評価1は減点されますが、90%以上の人は2〜4点で加点も減点もされず本番の試験点数がそのまま結果に反映されます。

書類審査の点数UPを目指すために症例レポートをたくさん記載するという方法がありますが…

30例書いても評価3だったり、15例で評価4だったりと努力量と評価が必ずしも比例しないので、書類作成に時間を使うより試験対策に時間を使うほうが有意義だと思います

症例レポートの具体的な疾患

症例レポートでは考察が必要となります。

このため上記の条件を満たしつつ、考察を書きやすそうな症例を考えてみました。カッコ内の数字は必須症例の番号に該当します

入院症例 具体的な症例 考察内容
薬疹 (2) Stevens-Johnson症候群など 原因薬剤や治療方針について
膠原病・自己免疫性水疱症 (4) 水疱性類天疱瘡 / 尋常性天疱瘡 重症度に応じた治療方針
皮膚悪性腫瘍 (8) メラノーマや入院手術症例 免疫チェックポイント阻害薬やBRAF/MEK阻害薬について
皮膚ウイルス感染症 (9) 汎発性帯状疱疹 感染予防策について
皮膚細菌感染症 (10) 蜂窩織炎 原因細菌(血液培養結果等)について
アナフィラキシーショック
他科入院中の皮膚カンジダ症・褥瘡・足白癬など
外来症例 具体的な症例
アトピー性皮膚炎 (1) 生物学的製剤/JAK阻害薬導入例
接触皮膚炎 (3) 金属アレルギー, 湿布薬など
乾癬 (5) 生物学的製剤導入例
色素異常症 (6) 尋常性白斑
慢性皮膚潰瘍 (7) うっ滞性皮膚潰瘍, 血管炎など
皮膚真菌症 (11) 爪白癬 内服治療例
蕁麻疹 (12) ゾレア®, デュピクセント®導入例
円形脱毛症
尋常性ざ瘡

入院症例については主科入院だけだと条件を満たすのが難しい場合もあるかと思いますので、他科コンサルト症例などを適宜使っていくとよいでしょう(主科入院必須ではないため)

例:SLEに伴う肺高血圧症で循環器内科入院中の症例など

SoS
考察について、日本皮膚科学会ガイドラインがある疾患についてはそれに従って考察を記載するのが無難でしょう。

学会発表や論文発表をしている場合は、詳しく調べているので考察が書きやすくなるのでそうした症例を選択するのも手です

経験症例 手術レポート

こちらは10例必須となっており、下記の必須症例があります

  1. 悪性黒色腫 or 有棘細胞癌 or 乳房外Paget病
  2. 基底細胞癌
  3. 粉瘤
  4. 粉瘤以外の皮下腫瘍(脂肪腫など)
  5. 顔面の腫瘍
  6. 分層または全層植皮術

このうち3〜5は術者として経験した症例である必要があります(逆に言えば、手術難易度が高い1や6は第一助手でも問題なし)

入院・外来レポートと異なり10例ピッタリ記載する必要があり、10例未満でも11例以上でもNGです

SoS
自分はほとんど単純切除・縫縮のみでした。レポートに写真ないし図が必要なので、術前後の写真を撮影しておくと手間が減ります

症例レポートの期間は分散させるべきか?

症例レポート記載の注意事項では「研修期間全般にわたる症例を可能な限り記入すること」と記載されています

皮膚科専攻医の研修期間は5年間なので、たとえば入院・外来であれば3例/年(30例埋める場合は6例/年)、手術であれば2例/年ずつ記載することになります。

ただ研修期間の途中で産休・育休に入る、大学院へ進学して臨床業務が減るなど各自事情はあるかと思います。(自分は大学院へ進んでおり、その期間は手術がほとんどありませんでした)

疑問に思う方が多いのか、よくあるお問い合わせでも下記のように記載があります

研修期間中にまんべんなく経験をすることをお薦めしておりますが、症例内容を優先いたしますので、1年度につき3症例を記載することは努力目標であり、必須ではございません
産休・育休で提出できない期間がある場合や、大学院での研修期間など、1年度に3症例を提出することが困難な場合、ご自身の研修実態に合わせて提出してください。

ただし、あまりにも偏りがみられる場合(提出症例が2年次の研修期間に集中している、など)は委員会審議となる可能性がございます。

from:日本皮膚科学会 よくあるお問い合わせ 「1年度につき3症例を記載すること」とありますが、これは全ての研修期間が対象ですか?(下線は筆者強調)

この文章から考えると、3例/年は努力目標であって義務ではないと解釈できそうです

補足

旧制度では「入院・外来症例レポートの注釈に入院・外来症例併せて1年度につき最低3例(5年度分以上)の症例を記載する」という注釈があったのですが、新制度(機構制度)ではこの注釈が削除されています。

新制度だと5年目途中で受験可能で、書類を提出する期間を考えると5年目が4〜7月の3ヶ月程度しかないので、この縛りが無くなったものと推察されます

SoS
先述した通り「書類審査は合否にほとんど関係しない」ので、レポートが少ない年度があったとしても気にしすぎる必要はないだろうというのが個人的見解です

まとめ

今回は皮膚科専門医試験受験にあたって必要な単位や書類についてまとめました。

最低限の受験条件について、改めて書き出すと下記のようになります

皮膚科専門医試験 受験条件

  • 5年間以上の研修(修了見込みで受験可)
  • 講習会参加(必須講習会は3年以上かかる)
  • 論文3本
  • 学会発表8回
  • 症例レポート:入院7, 外来8, 手術10
SoS
5年間の間には病院の異動や妊娠・出産・子育て、大学院進学など色々なイベントを経験する方が多いかと思います

症例レポートに使えそうなものをメモしておく、参加しやすいタイミングで講習会に申し込んでおくなど早め早めの対策を行って、受験に備えていきましょう!!

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