日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和3(2021)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会 (問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版、ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
※本記事で参考にしたのは皮膚科学 第10版ですが、11版が出ているので上記リンクは新版です
選択問題31〜60の解答・解説は下記
-
令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題31〜60
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見出し
- 1 令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90
- 1.1 選択問題61:解答 2
- 1.2 選択問題62:解答 3
- 1.3 選択問題63:解答 3
- 1.4 選択問題64:解答 2, 5
- 1.5 選択問題65:解答 1
- 1.6 選択問題66:解答 1
- 1.7 選択問題67:解答 3
- 1.8 選択問題68:解答 5
- 1.9 選択問題69:解答 1
- 1.10 選択問題70:解答 4
- 1.11 選択問題71:解答 2
- 1.12 選択問題72:解答 2, 4
- 1.13 選択問題73:解答 1
- 1.14 選択問題74:解答 4
- 1.15 選択問題75:3
- 1.16 選択問題76:解答 2
- 1.17 選択問題77:解答 1, 5
- 1.18 選択問題78:解答 3, 5
- 1.19 選択問題79:解答 2
- 1.20 選択問題80:解答 2
- 1.21 選択問題81:解答 5
- 1.22 選択問題82:解答 3
- 1.23 選択問題83:解答 1
- 1.24 選択問題84:解答 1
- 1.25 選択問題85:解答 4
- 1.26 選択問題86:解答 1
- 1.27 選択問題87:解答 5
- 1.28 選択問題88:解答 4
- 1.29 選択問題89:解答 1
- 1.30 選択問題90:解答 3
令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90
選択問題61:解答 2
Graft-Versus-Host Disease (GVHD)に関する一般問題
GVHDは急性と慢性に分けられ、急性は手掌や足底に好発する→2
- 1. HLA適合例でも発症リスクがあるため、GVHD予防(シクロスポリン+MTX)を行う
- 2. 急性GVHDは手掌足底や四肢、前胸部で浮腫性紅斑・紅色丘疹をきたす
- 3・4. 慢性GVHDでは多形皮膚萎縮や扁平苔癬様病変(口腔内病変を含む)、脱毛・爪甲変形、強皮症様皮膚硬化などをきたす
- 5. GVHDの重症度は皮膚(皮疹面積)・肝臓(総ビリルビン)・”消化管”(下痢)の三症状で決定する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p160-162(2・3・4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p294-297(2・3・4・5)
- 選択肢1の参考:造血細胞移植ガイドライン GVHD 第4版 のp19
関連問題
選択問題62:解答 3
アナフィラキシー治療で用いるアドレナリン自己注射薬(エピペン®)に関する問題
- 1. 15〜30℃で保存し冷所・高温下を避ける。また光により分解するので携帯用ケースに収めておく
- 2. 使用時に青色の安全キャップを外す
- 3. 注射筒の頭の部分や、オレンジ色のニードルカバー先端に指を押し当てることは危険なので避ける
(上下間違えると手が虚血に陥る) - 4・5. 大腿部の前外側にオレンジ色のニードルカバー先端を数秒間強く押し付けて注射する
- 参考:エピペン 添付文書
- 参考及び図引用:実践編|エピペンの使い方|アナフィラキシー補助治療剤 エピペン
選択問題63:解答 3
抜歯時の局所麻酔で気分不良と蕁麻疹の既往がある女性。
リドカインによる局所麻酔アレルギーないし、ラテックスアレルギー(ラテックス-フルーツ症候群)を疑う→3
ラテックスアレルギー
天然ゴム製品に含まれるHev b群蛋白に対するIgEが産生され、アレルギー性接触蕁麻疹を生じる
30〜50%の症例でバナナ・クリ・アボカドなどの食物と交叉反応を示す(ラテックス-フルーツ症候群)
・アレルゲンコンポーネント Hev b 6.02が保険適用で測定可能
- 1. 小麦は食物依存性運動誘発性アナフィラキシーの原因として重要(その他にエビなど甲殻類)だが、本問の病歴とは合致せず小麦除去食は不要
- 2. 抗生剤使用歴ははっきりしないので、使用を避ける必要はない
- 3. ラテックス-フルーツ症候群を疑う病歴があり、精査が必要
- 4. 全身麻酔歴がなく、筋弛緩薬に対するアレルギーは疑わない
- 5. 抜歯時に2回とも症状を呈しており、心因性は否定的と考えられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p132(3)/134(1)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p168(3)/165(1)
関連問題
選択問題64:解答 2, 5
遺伝性血管性浮腫で発作出現時の要時治療に用いる薬剤を問う問題
イカチバント(フィラジル®)とC1-インアクチベーター(INH)製剤が用いられる→2, 5
遺伝性血管性浮腫の治療
病態:C1-INH(エラスターゼインヒビター)の異常により、ブラジキニンが過剰産生される
治療は下記
作用機序 | 一般名 | 商品名 | 投与経路 |
ブラジキニン受容体拮抗薬 | イカチバント | フィラジル® | 皮下注 (自己注可) |
C1-INH欠損/機能不全を補う補充療法 | C1-INH製剤 | ベリナート® | 静注 |
カリクレイン*阻害 *ブラジキニン産生に関わる |
ラナデルマブ | タクザイロ® | 皮下注 |
ベロトラルスタット | オラデオ® | 内服 |
※抗ヒスタミン薬・ステロイド薬は無効で、エピネフリンも多くの場合無効
- 1. ダナゾール:男性ホルモンで、遺伝性血管性浮腫の発作予防に用いられる(未承認)
- 2. イカチバント:発作出現時の治療として使われる。自己注射も可能
- 3. エピネフリン:遺伝性血管性浮腫では無効なことが多い
- 4. ステロイド薬:遺伝性血管性浮腫では無効
- 5. CI-INH製剤:発作時および侵襲を伴う処置時の急性発作抑制目的に使われる
(欧米では発作予防投与としても使われる※)
※2022年、日本でもC1-INH製剤であるベリナート® 皮下注用2000が保険適用となった。発作時治療と異なり、こちらは皮下注(自己注射も可)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p134(1・2・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p169(5)
- その他選択肢の参考:遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE) 診療ガイドライン 改訂2019年版
- 参考:マルホ皮膚科セミナー 2023/6/19 遺伝性血管性浮腫 Overview
関連問題
- 2023 選択32 / 2016 選択51 / 2013 選択49 / 2012 選択51 / 2009 選択61 (血管性浮腫の原因, 病態など)
- 2022 選択60 (イカチバントのターゲット)
- 2019 選択63 (急性発作時の治療)
- 2020 選択87 (ACE阻害薬の作用部位)
選択問題65:解答 1
舌腫脹やACE阻害薬内服開始5日後という病歴から、薬剤性血管性浮腫を疑う(薬剤性血管性浮腫はACE阻害薬内服開始1週間以内が多い)
呼吸数の増加が見られており、症状増悪に備えて気道確保の準備が必要→1
- 1. 経過の中で症状増悪がみられており、気道確保の準備が必要
- 2. 薬剤性血管性浮腫では抗ヒスタミン薬投与は無効
- 3. 薬剤性血管性浮腫ではアドレナリン筋注の効果は期待できない
- 4. 血圧高値ではあるが、可及的な降圧を必要とする状況ではない
- 5. C1-インアクチベーターは"遺伝性"血管性浮腫の急性発作のみ保険適用であり、また発作時使用の場合は"静注"製剤である※
(本問出題時の皮下注はイカチバント:選択64) 仮に静注としても、1より優先されることはない
※C1-INH製剤は発作"予防"で投与する場合、皮下注製剤が使われる(ベリナート® 皮下注用2000が2022年に保険適用となった)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p134
- 参考:蕁麻疹診療ガイドライン 2018 日皮会誌:128(12), 2503-2624, 2018のp2517
選択問題66:解答 1
成人新規発症の食物アレルギーで、原因として最も頻度が高いのは甲殻類→1
n=2764 | 0歳 (1356) |
1,2歳 (676) |
3-6歳 (369) |
7-17歳 (247) |
≧18歳 (117) |
1位 | 鶏卵 55.6% |
鶏卵 34.5% |
木の実類 32.5% |
果物類 21.5% |
甲殻類 17.1% |
2位 | 牛乳 27.3% |
魚卵類 14.5% |
魚卵類 14.9% |
甲殻類 15.9% |
小麦 16.2% |
3位 | 小麦 12.2% |
木の実類 13.8% |
落花生 12.7% |
木の実類 14.6% |
魚類 14.5% |
4位 | 牛乳 8.7% |
果物類 9.8% |
小麦 8.9% |
果物類 12.8% |
|
5位 | 果物類 6.7% |
鶏卵 6.0% |
鶏卵 5.3% |
大豆 9.4% |
参考サイトより引用
よって本問では下記の順位となる
- 1位 1.甲殻類:17.1%
- 2位 3.小麦:16.2%
- 3位 2.魚類:14.5%
4. 牛乳や鶏卵は乳児〜幼児早期の食物アレルギーの原因として多いが、加齢とともに多くは耐性を獲得する
- 参考・表引用:食物アレルギーの診療の手引き 2020 の表4(p8)
2017年度版の同手引きでは、新規発症の原因は小麦(38.0%)>魚類(13.0%)>甲殻類(10.0%)であった。本問がどちらをベースに作成されているかは不明だが、2021年の出題であり2020年手引きに従った
なお令和3年(2021年度)調査の結果は、小麦(19.7%)>甲殻類(15.8%)>魚類(9.8%)となり小麦が1位に戻っている。(2022年3月に報告)
選択問題67:解答 3
アレルゲンコンポーネントに関する一般問題
花粉-食物アレルギー症候群の原因コンポーネントの一つであるプロフィリン※は熱に弱いため、加熱すると感作されたヒトでも摂取可能となる→3
※花粉-食物アレルギー症候群の原因で最多なのがBet v 1(PR-10)で9割を占めるが、残りの1割はプロフィリンが原因とされる
- 1. アレルゲンが由来する植物または動物の学名に基づき、属名の頭文字3文字と種の1文字、同定した順の通し番号で命名される
- 2. 感作源のIgEエピトープと類似したアミノ酸配列を持っていると、交差抗原反応が生じる
- 3. プロフィリンは熱に弱いため、加熱によって症状が出なくなる。また消化で抗原性を失うと症状がでなくなるため、症状が口囲に限局する
- 4. トロポミオシンは加熱処理に安定な蛋白で甲殻類・軟体動物の主要なアレルゲンであり、節足動物(ダニ, ゴキブリ)の吸入アレルゲンやアニサキスのアレルゲンに含まれている
- 5. PR-10は花粉・種子および果実などの生殖組織に高濃度に存在し、口腔アレルギー症候群の原因となる
(シラカンバ/ハンノキ - リンゴ/モモ)
関連問題
- 2022 選択32 (PR-10について)
- 2020 選択52 / 2019 選択64 / 2018 記述6 (PR-10によるPFASと原因樹木・コンポーネント)
- 2019 選択19 / 2016 選択53 (食物と原因アレルゲン)
選択問題68:解答 5
LEOPARD症候群の症状を問う問題
毛細血管奇形は含まれない→5
LEOPARD症候群
RAS/MAPキナーゼ経路に関わる遺伝子変異が原因となるRASopathyの一つで、PTPN11遺伝子が原因
頭文字の各症状を呈する
- Lentigines:多発性黒子(出生時〜) ※カフェオレ斑もあり
- Electrocardiographic abnormalitie:心電図異常
- Ocular hypertelorism:眼間隔開離
- Pulmonary stenosis:肺動脈狭窄
- Abnormalities of the genitalia:性器異常
- Retardation of growth:発育障害
- Deafness:感音声難聴
- 1・2・3・4. 難聴・眼間開離・心電図異常・多発性黒子:それぞれD/O/E/Lの症状
- 5. 毛細血管奇形(単純性血管腫):Sturge-Weber症候群、Klippel-Trenaunay-Weber症候群などでみられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p403/400・401(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p563/552(5)
関連問題
- 2023 選択74 / 2019 選択65 (RASopathyに含まれる疾患)
- 2018 選択72 (出生時から皮膚病変がみられる母斑症)
- 2017 選択49 (カフェオレ斑がみられる疾患)
選択問題69:解答 1
PTEN遺伝子変異が原因となる疾患はCowden症候群→1
- 1. Cowden症候群:PTEN遺伝子が原因の常染色体優性遺伝疾患で、顔面の外毛根鞘腫や乳腺・甲状腺などの悪性腫瘍をきたす。
皮膚症状として歯肉や口唇での乳頭腫状丘疹もある - 2. Gorlin症候群(基底細胞母斑症候群):癌抑制遺伝子であるPTCH1遺伝子が原因の常染色体優性遺伝疾患で、若年からの基底細胞癌や掌蹠小陥凹、顎骨嚢胞が特徴
- 3. Netherton症候群:セリンプロテアーゼインヒビター(LEKTI)をコードするSPINK5遺伝子が原因の常染色体劣性遺伝疾患で、曲折線状魚鱗癬やアトピー性皮膚炎様皮疹、結節性裂毛が特徴
- 4. Peutz-Jeghers症候群:LKB1(STK11)遺伝子が原因の常染色体優性遺伝疾患(孤発例が半数)で、出生時〜口唇や掌蹠の色素斑、消化管ポリポーシスをきたす
- 5. Vörner型掌蹠角化症:KRT9(ないしKRT1)遺伝子が原因の常染色体優性遺伝で、組織学的に顆粒偏性をともなう掌蹠角化症をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p411(1)/403(2)/275(3)/396(4)/277(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p560(1)/559(2)/337(3)/557(4)/341(5)
関連問題
選択問題70:解答 4
ABCC6遺伝子変異により発症する常染色体劣性遺伝疾患、弾性線維性仮性黄色腫(PXE)は弾性線維の変性とカルシウム沈着を特徴とする→4
- 1. 結節性裂毛と曲折線状魚鱗癬:SPINK5遺伝子変異で発症するAR、Netherton症候群の特徴
- 2. 四肢末端の褐色斑と色素脱失:ADAR1遺伝子変異で発症するAD、遺伝性対側性色素異常症(遠山)の特徴
- 3. 眼瞼外反と口唇突出, 板状の鱗屑, 深い亀裂:層板顆粒の脂質輸送蛋白をコードするABCA12遺伝子変異で発症するAR、道化師様魚鱗癬の特徴
- 4. 弾性線維変性とカルシウム沈着:PXEの特徴で、弾性線維はエラスチカ-ワンギンソン染色、カルシウムはコッサ染色にて確認できる
- 5. 腋窩・鼠径部のびらん・小水疱と棘融解:カルシウムポンプをコードするATP2C1遺伝子変異で発症するAD、Hailey-Hailey病(家族性良性慢性天疱瘡)の特徴
※AD:常染色体優性遺伝疾患、AR:常染色体劣性遺伝疾患
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p353(4)/275(1)/311(2)/271(3)/246(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p475(4)/337(1)/510(2)/335(3)/346(5)
関連問題
PXEは関連問題が多いので下記にまとめた
-
弾性線維性仮性黄色腫 まとめ
続きを見る
選択問題71:解答 2
Darier病とHailey-Hailey病の違いを問う問題
ともにカルシウムポンプをコードする遺伝子の異常により発症し、共通項が多い
指定難病となっているのはHailey-Hailey病のみ→2
Darier病とHailey-Hailey病(家族性良性慢性天疱瘡) 共通点と相違点
病因が類似しており、臨床的にも共通項が多い
共通点
- 病因:カルシウムポンプをコードする遺伝子の変異
- 遺伝形式・発症時期:常染色体優性遺伝疾患だが、発症は思春期以降が多い(先天性でない)
- 好発部位/時期:鼠径部や腋窩などの間擦部で、夏季に増悪
- 組織学的所見:表皮の棘融解による裂隙や絨毛の形成
Darier病 | Hailey-Hailey病 (家族性慢性良性天疱瘡) |
|
原因遺伝子 | ATP2A2 | ATP2C1 |
症状 | 角化が強い | 水疱・びらんが主体 |
組織学 | 異常角化細胞が多く見られる | 異常角化細胞が見られることはあるが、著明ではない |
指定難病 | × | ○ |
よって本問の解答は下記となる
- 1. 夏季の悪化:両疾患とも夏季に悪化し、浸潤や二次感染による悪臭を伴うことがある
- 2. 指定難病:Hailey-Hailey病のみが指定難病のため、Darier病も難病指定すべきという意見がある
- 3. 棘融解細胞:両疾患でみられる。異常角化細胞も両疾患でみられるが、Darier病のほうが顕著
- 4. 遺伝形式はともに常染色体優性遺伝
- 5. 両疾患ともhaploinsufficiency*をきたすため、通常幼児期には症状がみられない
*遺伝子変異をヘテロ接合体で保有する場合蛋白の産生量が低下する。幼少期には低下した産生量でも生体の需要を満たすため発症しないが、加齢とともに蛋白量が不足するため疾患を発症する
(haplo:半分, insufficiency:不十分)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p246(Hailey-Hailey)/279(Darier)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p346(Hailey-Hailey)/343(Darier)
関連問題(Darier病)
- 2021 選択19 / 2020 選択55 (臨床症状など)
- 2018 記述1 / 2016 選択11 / 2014 選択7 / 2010 選択51 (病理・原因遺伝子など)
- 2016 選択88(Hailey-Hailey病は指定難病)
選択問題72:解答 2, 4
ペラグラに関する一般問題
皮膚症状は光線過敏症であり、遮光が有効→4
- 1. ペラグラは遺伝性疾患ではない。アミノ酸輸送蛋白の異常でナイアシン欠乏をきたす常染色体劣性遺伝疾患にHartnup病がある
- 2. ナイアシン(ニコチン酸)欠乏が原因で、栄養不良の他イソニアジド内服に伴い発症することがある
(ニコチン酸類似構造のため内因性産生が抑制される) - 3. 症状は皮膚炎・"下痢"・認知症で、3つのD(皮膚炎 dermatitis、下痢 diarrhea、認知症 dementia)と呼ばれる
- 4. 光線過敏症のため、頚部や顔面で皮疹が生じる。治療はナイアシン補充の他遮光も有効
なお頚部前面の病変はカザールの首飾りと称される - 5. 皮膚筋炎や強皮症、カルシフィラキシーでは石灰沈着を伴うことがある。皮膚筋炎ではとくに小児皮膚筋炎で多い抗NXP2抗体陽性例に特徴的とされる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p327/208(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p463/400(5)
関連問題
選択問題73:解答 1
臀部で被角血管腫が多発しており、尿検査では特徴的なマルベリー小体*を認めることからFabry病の診断
骨炎は代表的な合併症ではない→1
*渦巻状の脂肪成分でFabry病の早期診断に有用な所見
Fabry病
α-ガラクトシダーゼA(α-gal A)遺伝子変異による先天性代謝異常症で、代謝されないトリヘキソシルセラミドが沈着し様々な症状をきたす
X染色体連鎖遺伝で、女性も発症するが一般に男性より軽症
代表的な症状は下記
- 皮膚関連症状:無汗症、発作性の四肢末端疼痛、被角血管腫
- 腎障害
- 角膜混濁(未発症の女性保因者でもみられる所見)
- 心不全、脳血管障害
- 1. 骨炎:一般的な合併症ではない
- 2. 乏汗症:無汗症・乏汗症をきたす
- 3. 腎障害:内科的合併症の代表例
- 4. 四肢の疼痛:発作性の疼痛をきたす
- 5. 角膜の渦巻状混濁:眼科領域での代表的合併症
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p334
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p450
- マルベリー小体の参考・画像引用:ファブリー(Fabry)病|KOMPAS
- 被角血管腫の画像引用:MSDマニュアル家庭版 ファブリー病
関連問題
- 2018 選択56 (疫学, 原因遺伝子など)
- 2023 記述1 / 2013 選択52 (原因酵素)
- 2022 選択13 / 2012 選択1 / 2011 選択2 / 2009 選択1 (Fabry病は無汗症)
選択問題74:解答 4
ステロイド骨粗鬆症のガイドラインについて問う問題
経口ステロイドを3ヶ月以上使用予定の場合、骨折リスクを評価する→4
ステロイド骨粗鬆症予防
経口ステロイドを3ヶ月以上使用中 or 使用予定の場合、リスク評価を行う
危険因子 | スコア | |
既存骨折 | なし | 0 |
あり | 7 | |
年齢(歳) | <50 | 0 |
50〜65 | 2 | |
≧65 | 4 | |
ステロイド投与量 (PSL換算mg/日) |
<5 | 0 |
5〜7.5 | 1 | |
≧7.5 | 4 | |
腰椎骨密度 (%YAM) |
≧80 | 0 |
70〜80 | 2 | |
<70 | 4 |
- スコアが3点以上:薬物療法を開始。第一選択薬はアレンドロネート(フォサマック®・ボナロン®)かリセドロネート(アクトネル®・ベネット®)
- スコアが3点未満:6ヶ月〜1年ごとの骨密度測定を含め、定期的に骨折リスクの評価を行う
- 1. 腰椎骨密度(%YAM)80%以上はスコア0だが、その他項目に該当すれば薬物治療が必要
- 2. BP製剤ではミノドロン酸(ボノテオ®)やイバドロン酸(ボンビバ®)は第一選択薬ではない
またゾレドロン酸(リクラスト®)はガイドライン策定後の発売のため掲載されていない - 3. PSL5mg/日はスコア1のため即座に治療対象とならない※。7.5mg/日以上は薬物治療の対象
- 4. 経口ステロイドを3ヶ月以上内服 or 内服予定の患者が対象→○
- 5. スコアリングで薬物治療の対象外であれば、6ヶ月〜1年ごとの骨密度測定が推奨されている
※2014年版の前の2004年版では、PSL5mg以上内服する患者が治療対象となっていた
関連問題
- 2019 選択68(ステロイド骨粗鬆症予防で週1回内服のもの)
- 2009 選択57 (ステロイド骨粗鬆症の治療開始基準)
選択問題75:3
無・低汗性外胚葉形成不全症に関する問題
- 1. 発汗低下から熱中症を生じるリスクが高い
- 2. 疎毛・無汗症・歯牙形成異常が3主徴
- 3. 発汗に加え、流涙や唾液の減少もみられる(シェーグレン症候群様)
- 4. X連鎖劣性遺伝形式をとるものが多く、原因遺伝子はEDA1
- 5. 常染色体優性・劣性遺伝形式の場合はEDARが主要な原因遺伝子
(他にEDARADD)
AR(常染色体劣性)/AD(常染色体優性)遺伝形式をとるのが、ED"AR"とED"AR""AD"Dと覚えると間違えづらいと思います
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p342
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p482
関連問題
選択問題76:解答 2
先天性皮膚欠損症に関する問題
欠損が深いと、骨まで達することもある→2
- 1. 頭部に好発する
- 2. 表皮〜真皮ともに欠損することが多く、皮下組織から骨にまで達することもある
- 3. 組織学的に毛包や汗腺を含む付属器(これらは真皮深層〜皮下組織に存在)が消失する
- 4. 水疱様外観を呈し、表皮水疱症と鑑別が必要となることがある
- 5. 胎生期の部分的な形成不全や圧迫壊死が原因として考えられている。出生時では潰瘍化していることが多く、その後瘢痕治癒する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p342(1・2)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p484(1・2・4)
- その他選択肢の参考:新・皮膚科セミナリウム 脱毛症の系統的皮膚生検と病理診断 日皮会誌:131(4), 679-693, 2021 のp692
選択肢5について。上記セミナリウムによると「出生時は潰瘍化しておりその後瘢痕治癒(≒上皮化)する」らしく、「欠損部が胎内で上皮化している」の文章は×のようにも思える。ただここでは選択肢3が明らかに誤りのため、相対的に間違い選択肢と考えた。
選択問題77:解答 1, 5
神経線維腫症(NF)に関する問題
皮膚レーザー照射療法の保険適用
- 色素レーザー照射療法:単純性血管腫、苺状血管腫、毛細血管拡張症
- Qスイッチ付ルビーレーザー照射療法及びルビーレーザー照射療法:太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症、扁平母斑等
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p391-393(1・2)/394(3・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p544-547(1・2・3・4)
- 選択肢5の参考:J054-2 皮膚レーザー照射療法(一連につき) | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
選択問題78:解答 3, 5
メラノサイトが増えない疾患を問う問題
選択肢ではSutton母斑と脱色素性母斑→3, 5
- 1. Clark母斑:思春期前後から症じ、不整形・境界不明瞭・濃淡差の特徴から悪性黒色腫との鑑別が問題となる母斑
組織学的にはメラノサイトが表皮真皮境界部〜真皮部にかけて存在する - 2. 蒙古斑:青色斑が仙骨部や尾骨部などに発生し、自然消退する疾患で、組織学的に真皮でメラノサイトの増加がみられる
- 3. Sutton母斑(白斑):色素性母斑のメラノサイトに対して自己免疫が生じ、周辺に白斑をきたす疾患
組織学的にメラノサイトやメラニンの減少・消失を認める - 4. カフェオレ斑(扁平母斑):円形の淡褐色色素斑で、基底層におけるメラニン顆粒の増強が主体
- 5. 脱色素性母斑:出生時から存在する不完全脱色素斑で、メラノサイトの数は不変だが機能低下が生じる。大きさや分布は生涯固定される
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p381(1)/384(2)/307(3)/389(4)/308(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p531・534(1)/539(2・5)/513(3)/527(4)
選択肢4について、あたらしい皮膚科学 第3版では「メラノサイト系母斑細胞の増加はない」と書かれている(=本問の正解となりえる)が、皮膚科学 第10版では「メラノサイトも増加する」と記載されている。他の選択肢と合わせて、本問ではこれが間違い選択肢である(メラノサイトが増える疾患である)と判断した
関連問題
- 2020 選択72 (脱色素性母斑について)
- 2023 選択87 / 2019 選択59 (白斑とメラノサイト数)
- 2018 選択48 (不完全脱色素斑をきたす疾患)
選択問題79:解答 2
図は疥癬虫(ヒゼンダニ)を示しており、治療薬はフェノトリン(スミスリン®)→2
- 1. イミキモド(ベセルナ®):TLR7を賦活化し免疫反応を増強させる薬剤で、尖圭コンジローマおよび日光角化症に用いられる
- 2. フェノトリン(スミスリン®):神経細胞のNa+チャネルに作用する薬剤で、疥癬に用いられる。体重15kg未満の小児や妊婦など幅広く利用可能
- 3. デュピルマブ(デュピクセント®):掻痒感やフィラグリン発現低下に関与するIL-4/13のモノクローナル抗体製剤で、アトピー性皮膚炎治療に用いられる
- 4. ドキシサイクリン(ビブラマイシン®):テトラサイクリン系抗菌薬で、尋常性痤瘡に対して推奨度が最も高い内服抗菌薬
- 5. メトロニダゾール(ロゼックス®):外用薬でがん性皮膚潰瘍の殺菌・臭気軽減作用がある。近年酒さに対する効能が追加された
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p564(2)/95(1・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p887(2)/121(1)
- 画像引用:医師国家試験 117A67
関連問題
- 2020 選択34 (フェノトリンの作用機序)
- 2017 選択36 / 2016 選択25 (フェノトリンの適応患者)
選択問題80:解答 2
ダーモスコピーでは擦ったような色素斑がみられ、Fibrillar pattern→2
手掌足底のメラノサイト病変 ダーモスコピー所見
手掌足底は皮丘・皮溝に分けられる
原則は皮丘部に一致した色素沈着=悪性黒色腫を示唆する所見
色素性母斑 (母斑細胞母斑) |
悪性黒色腫 (メラノーマ) |
|
色素沈着部位 | 皮溝 | 皮丘 |
ダーモスコピー所見 | parallel furrow pattern | parallel ridge pattern |
皮溝並行パターン | 皮丘並行パターン |
ただし良性の皮溝並行パターンのうち、一部の亜型では皮丘部にも色素沈着を伴う場合がある
- lattice-like pattern (格子状パターン):皮溝部と直交する色素沈着
- fibrillar pattern (線維状パターン★本例★):皮溝を横切る細線維状の色素沈着
- crista reticulated variant (皮丘網状亜型):皮丘部で網状の色素沈着
- crista dotted variant (皮丘点状亜型):皮丘部で点状の色素沈着
この場合、色ムラや全体構築から良悪性を判断する必要がある
- 1. Multi component pattern(多構築パターン):色素斑全体が3つ以上のパターンから構成される所見で、悪性黒色腫を疑う所見
- 2. Fibrillar pattern(線維状パターン):外部からの荷重で色素が擦れ、皮溝を横切るように平行な色素沈着がみられる
皮溝並行パターンのひとつで土踏まず部に好発する - 3. Globular pattern(小球状パターン):色素斑全体が黒や茶色・青色の色素小球で構成されるパターンで、母斑細胞の胞巣を表し境界母斑等でみられる所見
- 4. parallel furrow pattern(皮溝平行パターン):皮溝部に一致した色素沈着で、母斑細胞母斑の最も一般的なパターン
- 5. parallel ridge pattern(皮丘平行パターン):皮丘部に一致した色素沈着で、悪性黒色腫を示唆するパターン
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p57(2・5)/58(1)/56(4)
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p84(2)/28(1)/18(3)/80(4)/88(5)
- 参考・画像引用:dermoscopy: Fibrillar pattern
関連問題(掌蹠のダーモスコピー)
- 2022 選択8 / 2015 選択69 / 2014 選択63 (parallel furrow patternの亜型たち)
- 2013 選択63 / 記述6 (母斑細胞母斑のダーモスコピーと所見名)
- 2019 選択74 / 2018 選択75 / 2014 選択64 (掌蹠悪性黒色腫のダーモスコピー)
選択問題81:解答 5
真皮でのメラノサイト増生を示す青灰色部(blue-whitish veil)が見られる
形が整であり(悪性黒色腫の真皮内浸潤より)境界型母斑を疑う→5
- 1. Acral lentiginous melanoma(末端黒子型悪性黒色腫):blue-whitish veilに加え、皮丘平行パターンや境界不明瞭、非対称性などの特徴がみられるため本問では否定的
- 2. Basal cell carcinoma(基底細胞癌):樹枝状血管やleaf like area、blue-gray globulesなどが特徴
- 3. Black heel:均一構造をとり、皮丘に一致して赤黒色の沈着物がみられる
- 4. Hemangioma(血管腫):紅色の均一構造がみられる
- 5. Melanocytes nevus(色素性母斑):規則的なメラニン沈着がみられる。複合母斑では真皮のメラノサイト増殖を反映した青灰色を呈する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p58(2)/61(3・4)
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p86(5)/154(1)/158-167(2)/172(4)
※p86の写真は本問と同一 - 参考(悪性黒色腫と複合型母斑の鑑別点):足底に発生した複合型母斑の悪性黒色腫との鑑別点 日皮会誌:128(2), 197-203, 2018
関連:2017 選択79(複合母斑のダーモスコピー像 写真は本問と同一)
選択問題82:解答 3
頚部で隆起した紅色局面がみられ、ダーモスコピーでは白色部位(Wickham線条)がみられ扁平苔癬の診断
Wickham線状が対応する組織を尋ねる問題で、顆粒層肥厚や角層増生に一致する→3
- 1・2・4・5. 表皮突起の鋸歯状延長・組織学的色素失調・錯角化を伴わない過角化・真皮浅層の帯状リンパ球浸潤はいずれも扁平苔癬の組織学的特徴
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p292(扁平苔癬の病理)
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p189(3)
- 参考:ダーモスコピーの新たな対象疾患 臨床皮膚科71巻5号(2017増刊号) p75-80
関連問題
選択問題83:解答 1
後天性血友病Aでは、APTTの延長がみられる→1
後天性血友病
血液凝固因子に対する自己抗体(インヒビター)が出現するため、後天的に出血傾向をきたす疾患
第Ⅷ因子に対する自己抗体が生じると後天性血友病Aとなり*、検査値では(先天性)血友病と同様のAPTT延長やクロスミキシング試験でのインヒビターパターンが特徴
クロスミキシング試験:患者血漿に正常血漿の添加を行いAPTTの変化を確かめる試験。先天性凝固因子欠乏症は(凝固因子が不足しているだけなので)APTTが補正されるが、後天性血友病ではインヒビターが存在するためAPTTが十分補正されない
後天性血友病は背景に基礎疾患があることが多い
- 自己免疫疾患:SLE、関節リウマチ、シェーグレン症候群
- 腫瘍性疾患:胃癌、大腸癌
- 皮膚疾患:天疱瘡、乾癬
*第Ⅸ因子に対する自己抗体では後天性血友病Bとなるが、日本での報告はない
- 1. APTT延長:後天性血友病でみられる所見
- 2. 出血時間延長:血小板機能異常症を意味し、Hermansky-Pudlak症候群やvon Willebrand病などでみられる
- 3. 血小板数減少:免疫性血小板減少性紫斑病などでみられる
- 4. PT延長:ワーファリン内服患者でみられる
- 5. ループスアンチコラグラント陽性:抗リン脂質抗体症候群で見られる
血栓傾向をきたすが、検査上APTTが延長しクロスミキシング試験の結果も類似するため後天性血友病Aとの鑑別が必要となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p181(3)/210(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p231(1・2)/227(3)/423(5)
- 参考:後天性血友病の診断と治療 日本内科学会雑誌 106 巻 9 号 p2010-2017
選択問題84:解答 1
NUDT15(Nudix Hydrolase 15)遺伝子多型で副作用発症リスクが変化する薬剤を問う問題
アザチオプリン(イムラン®)の副作用である血球減少・脱毛の発症リスクがNUDT15遺伝子多型で異なることが知られている→1
NUDT遺伝子検査とアザチオプリン(イムラン®)用量
NUDT15 コドン139 遺伝子検査結果 |
日本人での頻度 | 通常量で開始した場合の副作用頻度 | チオプリン製剤の開始方法 | |
急性高度白血球減少 | 全脱毛 | |||
Arg/Arg | 81.1% | 稀(<0.1%) | 稀(<0.1%) | 通常量で開始 |
Arg/His | ||||
Arg/Cys | 17.8% | 低(<5%) | 低(<5%) | 減量して開始 |
Cys/His | <0.05% | 高(>50%) | ||
Cys/Cys | 1.1% | 必発 | 必発 | 服用を回避 |
保険適用のある疾患は下記の通り
- 全身性血管炎:顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、結節性多発動脈炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、高安動脈炎
- 膠原病:全身性エリテマトーデス(SLE)・多発性筋炎・皮膚筋炎・強皮症・混合性結合組織病
- その他:炎症性腸疾患、急性リンパ性白血病、自己免疫性肝炎
※上記以外の疾患(天疱瘡等)に対して投与する場合、NUDT15遺伝子多型検査は保険適用外となる
- 2・3・4・5. シクロスポリン・シクロホスファミド・メトトレキサート・ミコフェノール酸モフェチル:これらの薬剤の副作用はNUDT15遺伝子多型と関連しない
関連問題
- 2022 選択69 (NUDT15遺伝子で服用を回避する多型)
選択問題85:解答 4
メラノサイト系病変とドライバー遺伝子変異を問う問題
悪性黒色腫の病型分類
従来は表在拡大型・結節型・悪性黒子型・末端黒子型に分けられていた
近年では紫外線曝露量に合わせて、下記のように分類されることが多い
- Low-CSD melanoma:光線曝露が少ない部位で、表在拡大型や結節型の一部
- High-CSD melanoma:悪性黒子型と結節型の一部
- Low to no-CSD:末端黒子型・粘膜・眼球内等
*CSD = cumulative sun damaged
- 1. Low-CSD melanoma:BRAF(p.V600E)が約60%を占める
- 2. High-CSD melanoma:NF1やCDKN2A、TP53などの変異がある
- 3. Acral melanoma:KIT変異等がある。PRKAR1Aはlow-CSDメラノーマでみられる変異の一つ
- 4. Blue nevus(青色母斑)やぶどう膜メラノーマ:GNAQ/GNA11の異常が多い
- 5. Spitz nevus(Spitz母斑):20%にHRASの異常がある。KIT遺伝子変異はacral, mucosal, high-CSDで多く10〜20%前後で認められる
BRAF/MEK阻害薬については下記も参照
-
BRAF阻害薬とMEK阻害薬 【悪性黒色腫】
続きを見る
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 分子レベルで考えるメラノーマの発症メカニズム 日皮会誌:131(9), 2009-2016, 2021
- 参考(悪性黒色腫の分類等):皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 メラノーマ診療ガイドライン2019 日皮会誌:129(9), 1759-1843, 2019のp1767-1768
関連問題
選択問題86:解答 1
爪甲下の有痛性腫瘍であり、毛細血管周囲に好酸性の細胞質をもつ腫瘍細胞が増生することからグロムス腫瘍の診断
血管平滑筋細胞由来の腫瘍であり、α-smooth muscle actin(α-SMA)が陽性となる→1
- 1. α-SMA:平滑筋細胞で陽性となり、グロムス腫瘍でも陽性(26/26例=100%)
- 2. desmin:平滑筋細胞のマーカーだが、グロムス腫瘍では陰性であることが多い(17/62例=27.4%)
- 3. S-100:神経系マーカーで、シュワン細胞やメラノサイト、ランゲルハンス細胞で陽性となる。グロムス腫瘍での陽性率は比較的高いが(38/83例=45.8%)、腫瘍細胞ではなく神経線維が染色される
- 4. CD31:血管内皮細胞のマーカーであり、血管肉腫で陽性となる。グロムス腫瘍では陰性
- 5. CD34:血管内皮細胞のマーカーであり、血管肉腫や隆起性皮膚線維肉腫で陽性となる。グロムス腫瘍での陽性率は中程度(5/13例=38.5%)で、粘液沈着が強い場合に陽性となりやすい
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p426/49-50
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p652/48
- 参考:グロムス腫瘍の臨床および病理組織学的検討 -粘液沈着と CD34 発現の関連について- 日皮会誌:115(7), 1001―1010, 2005
- 参考(陽性率):グロムス腫瘍の病理組織診断に有用な免疫組織化学的検索法について 特に汗腺腫とらせん腺腫との鑑別について 臨床皮膚科 57巻4号:p337-342, 2003
- 画像引用:Painful subungual glomus tumour of the left thumb BMJ Case Rep. 2013 Dec 11
選択肢2のデスミンはあたらしい皮膚科学では陽性と記載されているが、上記論文での陽性率からα-SMAと比較して相対的に間違い選択肢であると判断した
関連:2015 選択75 (グロムス腫瘍とdesmin染色)
選択問題87:解答 5
頭部に単発の疣状結節がみられ、組織学的には中央部が陥凹し、高倍率で異常角化細胞(好酸性の細胞質と濃染する核を持つ円形体)がみられる
上記より、疣贅状異常角化症(腫)(Warty dyskeratoma)の診断→5
疣贅状異常角化症(腫) (Warty dyskeratoma)
顔面や頭部に単発で生じる直径1〜2cmの小結節で、中央は角栓を伴い陥凹する
組織学的には裂隙形成や異常角化細胞(円形体・顆粒)などDarier病に類似した像がみられ、中央部はカップ状に陥凹する
- 1. Darier病:ATP2A2遺伝子変異が原因で頚部や腋窩などの間擦部に角化性丘疹をきたす。組織学的には裂隙形成や異常角化細胞がみられる
組織学的には本問と類似するが、部位や単発結節の臨床像から否定的 - 2. Hailey-Hailey:ATP2C1遺伝子変異が原因で、間擦部に水疱集簇やびらんをきたす。組織学的にもDarier病と類似するが、異常角化は少ない
- 3. Herpes simplex:口唇や陰部、手指が好発部位。びらんや水疱をきたすが、自然軽快する。組織学的には水疱形成と封入体をもつ巨細胞が特徴
- 4. Pemphigus vulgaris(尋常性天疱瘡):口腔粘膜や全身に水疱・びらんをきたす。組織学的には基底層直上での棘融解や好酸球浸潤が特徴
- 5. Warty dyskeratoma:単発の小結節であり、組織学的にも異常角化細胞がみられ本問の所見に合致する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p407(5)/279(1)/246(2)/487(3)/249(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p573(5)/343(1)/346(2)/753(3)/299(4)
- 参考:頭部に生じたWarty Dyskeratomaの1例 皮膚科の臨床 59巻10号 p1567-1570 ※本問と写真が同一
- 参考・画像引用:Warty Dyskeratoma | Basicmedical Key
選択問題88:解答 4
高齢前腕の角化性丘疹で、組織学的に表皮真皮境界部の液状変性・リンパ球浸潤と角層での不全角化を伴う過角化がみられる
扁平苔癬様角化症(LPLK)の診断→4
扁平苔癬様角化症(LPLK)
脂漏性角化症に苔癬型炎症反応が生じたもので、顔面・前腕など日光露光部に好発する
扁平苔癬と異なり、口腔粘膜や爪の病変はきたさない
- 1. 光線角化症(日光角化症):露光部で鱗屑を伴う淡紅斑局面をきたす。組織学的に基底層中心の異型細胞や角層の錯角化がみられるが、汗管や毛包を避けるため正常角化と交互性になる(pink and blue sign)。またsolar elastosis(日光性弾力線維症)を伴う
- 2. Bowen病:鱗屑を伴う紅色局面で、組織学的に真皮全層での異型細胞がみられ、異常角化細胞やClumping cellと呼ばれる多核巨細胞が特徴的
- 3. 乳房外Paget病:大部分は外陰部で湿疹類似の紅斑がみられ、組織学的に明るい胞体を持つPaget細胞が増生する
- 4. 扁平苔癬様角化症(LPLK):組織学的に扁平苔癬類似の表皮真皮境界部の炎症細胞浸潤がみられ、表皮で軽度の異形成を伴うことがある
- 5. 悪性黒色腫:体幹や四肢で黒色斑としてみられ、組織学的に異型メラノサイトが増生する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p407(4)/449(1)/451(2)/456(3)/481(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p508(4)/597(1)/601(2)/619(3)/693(5)
- 参考・画像引用:Lichen Planus-like Keratosis: Another Differential Diagnosis for Kaposi Sarcoma Indian J Dermatol. 2015 Sep-Oct;60(5):523.
選択問題89:解答 1
顔面の皮下結節で、管腔構造と粘液や軟骨様の組織が混在していることから混合腫瘍の診断→1
- 1. Mixed tumor of the skin(皮膚混合腫瘍):青年期の顔面(上口唇・鼻・頭部)に好発する皮下結節で、組織学的に管状構造をとる上皮組織と粘液様および軟骨様の間葉系組織が混在してみられる。エクリン腺とアポクリン腺の混合腫瘍と考えられている
- 2. Poroma(汗孔腫):足底に好発する暗赤色の結節で、組織学的に小円形のporoid cellが巣状に増殖し好酸性のクチクラ細胞が管腔を形成する
- 3. Spiradenoma(らせん腺腫):顔面や頚部に単発する皮下結節で、圧痛を伴う。組織学的に低倍ではリンパ節様の小型暗調細胞の増殖がみられる
- 4. Syringocystadenoma papilliferum(乳頭状汗管嚢胞腺腫):頭皮で1/3は脂腺母斑に続発する単発疣贅状結節。組織学的に円柱状細胞と立方体状細胞の2層から構成される管状構造がみられ、形質細胞浸潤を伴う
- 5. Syringoma(汗管腫):女性の眼瞼部に好発する小丘疹で、組織学的に管腔構造にオタマジャクシ様の構造がみられる。壁細胞の胞体が明るいclear cell syringomaは糖尿病に合併することがある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p415(1)/414(2・3)/416(4)/412(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p592(1)/588(2・5)/591(3)/595(4)
関連問題(汗腺系腫瘍)
- 2018 選択62 / 2017 選択66 / 2015 選択55 (汗腺系腫瘍の比較)
- 2019 選択84 / 2016 選択74 (エクリンらせん腺腫は有痛性, 病理)
- 2016 選択73 / 2012 記述5 / 2010 選択48 (脂腺母斑に続発することが多い腫瘍:乳頭状汗管嚢胞腺腫)
- 2016 選択72 (エクリン汗孔腫について, 病理)
選択問題90:解答 3
皮膚は外胚葉由来であり、図ではもっとも外側の③が該当する→3
図はカエルの原腸胚を示している
- ①中胚葉:胚の内側に存在し、間葉系細胞(真皮・骨・軟骨)や血管へ分化する
- ②原腸:最終的に内胚葉と同様に消化管へ分化する
- ③外胚葉:胚の外側に存在し、表皮(汗腺・付属器)や神経系に分化する
- ④卵黄栓(原口):精子侵入部の対側であり、原口陥入を起こした後の部位。最終的に肛門となる
- ⑤内胚葉:消化管や気管・肺へ分化する
- 参考・画像引用:高等学校生物/生物I/生殖と発生 - Wikibooks
関連問題
- 2023 記述2 / 2021 選択75 / 2020 選択1 / 2012 選択1 (無汗性外胚葉形成不全症の症状, 原因遺伝子など)
- 2017 選択65(外胚葉に由来する細胞:表皮角化細胞, 汗腺上皮細胞, 色素細胞)
選択問題91〜100および記述問題の解答は下記
-
令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題91〜100 記述問題
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