それでも生きていかざるをえない

それいきノート:皮膚科編

レポート

初期研修医レポート 皮疹(アナフィラキシー)

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研修医レポートがそろそろ全部終わりそうなので、過去のものを記録に残してみようと思い引っ張り出してきた企画第5弾。提出時にA4 1枚という制限があるので短めです。
※個人情報配慮のため一部事実と異なる記載があります

171212-Report

症候学レポート 皮疹

病歴

現病歴

以前に蕁麻疹の既往がある59歳女性。来院前日の21時半頃にしめ鯖を食べた。10分ほどして嘔吐が、30分ほどして掻痒感を伴う発疹が出現した。皮疹は当初前胸部のみだったが次第に拡大し、四肢を含む全身に出現したため朝6時に救急外来を受診した。来院時は喉頭の違和感および軽度の息苦しさを伴っている。腹痛を伴っており、嘔吐や下痢もある。

なお最近の感冒や上気道感染はなく、食事の内容もいつもと変わらない(サバは以前から食べていたが蕁麻疹が出たことはなかった)。

既往歴

子宮頸癌(15年前手術)

内服薬

サプリメント/漢方薬など含めてなし

生活歴

ADL:full, 飲酒:週2〜3回少量, 喫煙:10本/日, アレルギー:蕁麻疹2回(原因不明), 家族歴 特記事項なし

身体所見・検査

身体所見

JCS 0, E4V5M6, 血圧 96/63mmHg, 心拍数 115回/分, SpO2 95%(room air), 呼吸数 16回/分, 体温 37.0℃

四肢および顔・体幹に紅色の膨疹があり、眼瞼部・口唇部や口腔内粘膜には浮腫を認めない。膨疹は癒合傾向を認める。一部掻爬痕を伴う。

呼吸音:Stridorなし、肺ラ音なし、喘鳴なし

経過

来院時既にショックバイタルであり、病歴と症状からアナフィラキシーショックが疑われた。

来院後さらに収縮期血圧80mmHgまで低下し、酸素投与・細胞外液輸液・アドレナリン0.3mg筋注・Ⓡネオレスタール10mg/ファモチジン20mg/ヒドロコルチゾン200mg点滴を行った。治療後血圧上昇/脈拍低下し、呼吸困難感の改善と膨疹の軽快が得られたため、抗アレルギー薬としてフェキソフェナジンを処方し帰宅とした。

後日外来で行った採血検査の結果、サバ特異的IgE抗体は<0.10UA/mlと陰性であった。

考察

急性発症の膨疹をきたし、ショックバイタルで受診した女性である。

発疹は大きく原発疹と続発疹に分けられる。分類は主として視診によって行われ、その性状から原発疹(紅斑・紫斑・丘疹・結節/腫瘤・水疱・膨疹など)と続発疹(苔癬化・鱗屑・痂皮・びらん/潰瘍・瘢痕など)に分類される。また発疹の経過および分布、自覚症状として痛みや掻痒感を伴うかも重要である。病歴聴取と視診を中心に、必要に応じて真菌検査やダーモスコピー、生検といった検査を行うことで診断を下す。

発疹単体で緊急性の高いものは少ないが、局所の発赤・熱感・腫脹・疼痛を伴い発熱がある場合(軟部組織感染症)、外傷や水疱性疾患により表皮が破壊されている場合(熱傷/重症薬疹/天疱瘡)、急性蕁麻疹に血圧低下を伴う場合(アナフィラキシーショック)などは注意を要する。

本症例は全身に多発した急性発症の膨疹であり、臓器症状を伴いアナフィラキシーに至った蕁麻疹と考えた。ただ外来で施行した抗体検査では明らかな原因を認めず、以前はサバを食べても症状がなかったことからヒスタミン中毒とも考えられる。後者の場合は魚を冷蔵保管しまた購入後早期に食べるようにすることでヒスタミンの増殖を抑え、今後の再発を減らすことが可能である。

参考文献

あたらしい皮膚科学 第2版(中山書店)・ハリソン内科学 第4版(MEDSi)・アナフィラキシーガイドライン 2014


症候学レポート第4弾、皮疹です。皮疹の中ではやはり蕁麻疹がERでほぼ完結するので書きやすいと思います。あとこの人はヒスタミン中毒>鯖アレルギーだと思いますが、ERでの対応としてはとくに変わらず。

当院事情として、皮疹なのに添削するのは小児科医という謎があります(水痘や麻疹が想定されているためと思われる)。残念ながら当院ERはほとんど小児が来ないので…皮膚科(皮疹)でERに来るのは蕁麻疹・熱傷・虫刺症・糖尿病性足壊疽が大半で、レアケースに薬疹・類天疱瘡・凍傷があるくらいですね。

蕁麻疹やアナフィラキシーの治療について。H1ブロッカーは施行するとして、H2ブロッカー(ファモチジン)に関してアナフィラキシーガイドライン2014では記載なし。蕁麻疹診療ガイドライン2011でも「抗ヒスタミン薬のみでは効果不十分な慢性蕁麻疹に対し,抗ヒスタミン薬と H2 拮抗薬の併用は試みても良い(Grade C1)」と記載されている程度で強い推奨ではありません。

ただ当直中によく参照される研修医当直御法度(いわゆる赤本)や当直医マニュアルには「H1ブロッカーだけではなくH2ブロッカーも投与」という記載があります。このせいもあるのか、H2ブロッカーも投与されている例は当院でも散見します。まあH2ブロッカーを入れて大きく害を及ぼすこともないと思うので、そんなに大きな問題でもないのでしょうが…

以下参考リンク(こちらは"慢性"蕁麻疹の症例であることに注意)

H2ブロッカーの追加が有効、安易なステロイド投与は禁物:日経メディカル

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