それでも生きていかざるをえない

それいきノート:皮膚科編

レポート

初期研修医レポート 糖尿病

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研修医レポートがそろそろ全部終わりそうなので、過去のものを記録に残してみようと思い引っ張り出してきた企画第4弾。今回は症例レポートなので、分量制限はA4用紙2枚
※個人情報配慮のため一部事実と異なる記載があります

171212-Report

患者背景

主訴

体重減少・口渇

現病歴

61歳の男性。
9ヶ月前の会社健診ではHbA1c 6.6%であった。2ヶ月前に会社を退職後食事量が増え、ソフトドリンクを多飲するようになった。その後1ヶ月半で10kg体重が減少(98kg→88kg)し、口渇・多飲多尿・倦怠感も出現したため、近医を2週間前に受診した。その際血糖値 435mg/dl、HbA1c(NGSP) 11.7%と高値であったため、血糖コントロール目的で当院紹介となった。

既往歴

自然気胸(21年前)・鼠径ヘルニア(4年前)・脂質異常症 ※高血圧なし

治療歴
  • 内服薬:シダグリプチン 50mg 1錠 ※近医受診時より開始
  • 手術歴:自然気胸(21年前)・鼠径ヘルニア(4年前)
生活歴
  • 家族歴:糖尿病家族歴なし
  • 喫煙:10本/day x 37年(禁煙中)・飲酒:ビール1本/day・アレルギー:なし
  • 日常生活:食事は脂っぽいものが多く、量も多め。定期的な運動はしていない。妻・母親と娘2人の5人暮らしで、ADLは自立。

入院時現症

身長177.0cm・体重88.0kg・BMI 28.1kg/m2
JCS 0・血圧 118/78mmHg・心拍数 88回/min(整)・体温 35.8℃

診察:四肢末梢のしびれや疼痛など、明らかな末梢神経障害なし

検査結果
  • ABI(足関節上腕血圧比):右1.30/左1.15
  • 心電図:洞調律、心拍数 88回/min、ST変化なし、異常Q波なし、CVRR 2.83%
  • 血液検査
血糖値 429mg/dl・HbA1c(NGSP) 12.2%、TG 535mg/dl、HDL 35mg/dl、Cペプチド 3.19ng/ml、eGFR 79.4ml/min、抗GAD抗体<5.0U/ml
  • 尿検査
尿糖>1000mg/dl、尿中ケトン体定性(1+)、尿中微量アルブミン(Cre補正値) 253.6mg/g・Cre、尿中Cペプチド 105.2μg/day
  • 胸部X線:両側肋骨横隔膜角 鋭、心胸郭比 38%、肺野に異常陰影無し
  • 胸部〜骨盤部CT:体重減少の起因となりえる腫瘍性病変なし

入院後経過

#1 2型糖尿病

眼科にコンサルトし糖尿病網膜症がないことを確認後、インスリン治療を開始した。インスリン投与量は超速効型インスリン朝食前12単位-昼食前10単位-夕食前10単位および睡眠前持効型インスリン12単位であった。なお入院中の食事は糖尿病食23単位(1840kcal)であり、糖尿病の患者教育・栄養指導・運動療法も併行して行った。

インスリン加療により空腹時血糖値が130md/dl台と低下し、尿中Cペプチド 105.2μg/dayとインスリン分泌も保たれていたため第10病日より経口血糖降下薬(OHA)であるシタグリプチン 50mg 1錠・グリメピリド錠1mg・メトホルミン750mgへの切り替えが行われた。その後も血糖コントロール良好で、低血糖症状もなかったことから第12病日に退院となった。

退院時処方

グリメピリド1mg 1錠・メトホルミン250mg 3錠・シタグリプチン 50mg 1錠

考察

ソフトドリンク多飲がきっかけと思われる、比較的急性に発症した生活習慣不良な61歳男性の2型糖尿病である。

糖尿病患者においては食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせ、血糖値を適切な値(HbA1c <7.0%)にコントロールすることで、糖尿病合併症の発症予防・進行抑制を目指す必要がある。具体的な加療方針を考える際には、糖尿病が1型か2型か、そしてインスリン分泌能が保たれているかが重要となる。1型・2型は病歴及び自己抗体(抗GAD抗体・抗ICA抗体など)、インスリン分泌能は血中/尿中のCペプチドによって診断できる。内因性インスリン分泌が保たれている場合はOHAが、保たれていない場合は不足しているインスリンを注射で補うことが治療の基本となる。OHAはその作用機序により大きく、インスリン分泌促進薬(SU剤/グリニド薬/DPP-4阻害薬)・インスリン抵抗性改善薬(ビグアナイド薬/チアゾリジン薬)・糖吸収/排泄調整薬(α-グルコシダーゼ阻害薬/SGLT2阻害薬)に分けられる。
ただし高血糖の場合、本来インスリン分泌が保たれている人であっても糖毒性によって膵β細胞からのインスリン分泌が低下している場合がある。この際はインスリン療法を行い、糖毒性を解除してからOHAへ切り替える必要がある。

本症例でもCペプチドが保たれておりインスリンが生存に必須とはいえないが、入院時血糖値が高く尿中ケトン体も陽性であったため、初期治療では糖毒性解除を目的としたインスリン強化療法を行った。その後血糖値が十分に下がってから、OHAへの切り替えを行った。OHAとしてはSU剤・ビグアナイド・DPP-4阻害薬が用いられたが、これは本症例がインスリン抵抗性主体の2型糖尿病と考えられたためである。なおこのような患者では薬物治療はもちろんだが、“生活習慣病”という名の通り食事・運動などの生活習慣を改善することも重要である。

参考文献

糖尿病治療ガイド 2016-2017(文光堂)・糖尿病専門医研修ガイドブック(診断と治療社)


症例レポート第1弾の糖尿病です。研修医1年時の7月頃に作成したもの…なので突っ込みどころはそこそこあります:悪性腫瘍の検索をしているのに考察で触れられていない点(急に発症したので膵癌も検索しておいたというアピールがあると良い)とか、糖尿病の臓器障害に対してほぼ考察されていない点とか。

あと上の記載だと入院後の薬剤推移が良くわかりませんが、正確に書くと前医処方のDPP-4→入院後はインスリン+DPP-4→糖毒性が解除されたころにSU+BG+DPP-4という推移です
ちなみに退院後は順調に内服薬が減り、翌月SU中止→翌々月にBG中止でDPP-4のみで前医に送り返して終診となりました。ちゃんと運動してくれる人で良かった

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