ケラチンの働きや構造、発現部位とケラチン異常により発症する疾患をまとめました
ケラチン 発現部位と先天性皮膚疾患
ケラチンは角化細胞の細胞骨格を構成し、酸性のタイプⅠケラチンと中性〜塩基性のタイプⅡケラチンが重合して中間経線維を形成する
- タイプⅠケラチン:ケラチン9〜40
- タイプⅡケラチン:ケラチン1〜8
組織によって発現するケラチンが異なり、コードする遺伝子の変異で先天性皮膚疾患を合併する
ケラチン | 発現組織 | 疾患 |
1/10 | 有棘細胞 | 表皮融解性魚鱗癬 (水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症) |
Unna-Thost型掌蹠角化症 (ケラチン1) |
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疣贅状表皮母斑 ※体細胞モザイク |
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1/9 | 有棘細胞(掌蹠) | Vörner 型掌蹠角化症 |
2/10 | 有棘層上層〜顆粒層 | 表在性表皮融解性魚鱗癬 (Siemens型水疱性魚鱗癬) |
3/12 | 角膜上皮細胞 | Meesmann角膜ジストロフィ |
4/13 | 粘膜上皮 | 白色海綿状母斑 |
5/14 | 基底細胞 | 単純型表皮水疱症 |
6a・6b/16・17 | 爪 | 先天性爪甲肥厚症 |
多発性脂腺嚢腫症 (ケラチン17) |
ケラチン 変異部位と優性遺伝
例えばケラチン1はケラチン10とペアを組み重合して2量体、さらに融合して4量体となる
この重合に関わる部分が中心部にあるロッドドメイン両端の1A/2B領域であり、病原性変異はこの部位に多い
(下図ピンクの両端、矢印は遺伝子変異として報告のある部位)
最終的には4量体が8個集まって32量体を形成するため、1つの細胞骨格に16個のケラチン1(K1)が含まれる
K1遺伝子のミスセンス変異をヘテロ接合性(1/2)で持つ場合、32量体のK1全てが正常である確率は1/2の16乗で1/65,536しかない
よってほとんどのケラチンは異常ケラチンとなり、ヘテロ接合性であっても(ホモ接合体でなくても)疾患を発症する:dominant negative
この性質のため、ケラチン関連遺伝子変異によるケラチン症性魚鱗癬や掌蹠角化症は、原則として常染色体優性遺伝形式を取る(上述の表内の疾患)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8/385
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p11/521
- 参考:皮膚科セミナリウム ケラチン 日皮会誌:117(2), 129―135, 2007の図3
- 参考・図引用:マルホ皮膚科セミナー 2012 角化症を理解するための基礎皮膚科学
ケラチンと関連する皮膚科専門医試験の問題は下記
皮膚科専門医認定試験 関連問題
- 2022:選択36 (表皮基底層で発現するケラチン)
- 2021:選択11 (ケラチンの構成), 選択12 (発現部位)
- 2020:選択9(表皮に発現するケラチン)
- 2019:選択14(タイプⅠケラチン) , 選択16 (ケラチン症で多い変異部位)
- 2018:選択10(多発性脂腺嚢腫の病原遺伝子)
- 2017:選択10 (ケラチンと発現部位)
- 2015:選択12(魚鱗癬の遺伝形式)
- 2012:選択6(ケラチン関連疾患), 選択7 (粘膜に発現するケラチン)
- 2009:選択4 (基底細胞に発現するケラチン)