日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和3(2021)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会 (問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
※本記事で参考にしたのは皮膚科学 第10版ですが、11版が出ているので上記リンクは新版です
2020年度の解答・解説は下記
-
令和2(2020)年度 皮膚科専門医認定試験 過去問 解答解説
続きを見る
見出し
- 1 令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜30
- 1.1 選択問題1:解答 3, 4
- 1.2 選択問題2:解答 2, 3
- 1.3 選択問題3:解答 4
- 1.4 選択問題4:解答 5
- 1.5 選択問題5:解答 1, 5
- 1.6 選択問題6:解答 2, 3, 4
- 1.7 選択問題7:解答 4
- 1.8 選択問題8:解答 2
- 1.9 選択問題9:解答 4
- 1.10 選択問題10:解答 4
- 1.11 選択問題11:解答 4
- 1.12 選択問題12:解答 3
- 1.13 選択問題13:解答 4
- 1.14 選択問題14:解答 1
- 1.15 選択問題15:解答 3
- 1.16 選択問題16:解答 1
- 1.17 選択問題17:解答 1, 3
- 1.18 選択問題18:解答 4
- 1.19 選択問題19:解答 3, 4, 5
- 1.20 選択問題20:解答 2
- 1.21 選択問題21:解答 2, 3, 4
- 1.22 選択問題22:2, 5
- 1.23 選択問題23:解答 3
- 1.24 選択問題24:解答 4
- 1.25 選択問題25:解答 2, 5
- 1.26 選択問題26:解答 5
- 1.27 選択問題27:解答 4
- 1.28 選択問題28:解答 3
- 1.29 選択問題29:解答 4
- 1.30 選択問題30:解答 4, 5
令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜30
選択問題1:解答 3, 4
汗腺のエクリン腺とアポクリン腺の違いについて問う問題
エクリン汗腺 アポクリン汗腺 比較
汗腺 | 部位 | 分泌形式 | 開口部位 | 関連疾患 |
エクリン腺 | 掌蹠・腋窩・前頭部 | 開口分泌 | 表皮に直接 | 原発性局所多汗症 |
エクリン汗孔腫 | ||||
アポクリン腺 | 外陰部・乳輪部・腋窩 | 断頭分泌 | 毛孔部 (脂腺よりやや上) |
腋臭症 |
乳房外Paget病 |
よって本問の解答は下記
- 1. エクリン腺は表皮に直接開口する。アポクリン腺は毛嚢に開口
- 2. アポクリン腺は外陰部や腋窩に多い。掌蹠に多いのはエクリン腺
- 3. アポクリン腺は細胞質の一部が細胞から切り離される断頭分泌をとる
- 4. エクリン発汗は通常はノルアドレナリンが神経伝達物質となる交感神経支配だが、コリン作動性。このため多汗症治療では抗コリン作用を持つ薬剤(エクロック®ゲルなど)が使われる
- 5. "アポクリン腺"は動物のフェロモンに相当し、性ホルモンにより調節される(∴腋臭症は思春期以降問題になる)
エクリン腺は温熱刺激や精神発汗が関連する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p25-26
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p22-27
関連問題
- 2023 選択13 / 2022 選択50 / 2016 選択1 / 2010 選択1 / 2009 記述1 (汗腺の神経伝達物質, 分布, 分泌形式など)
- 2013 選択75 (脂腺の分泌形式:全分泌)
- 2011 選択1(腋臭症の原因)
選択問題2:解答 2, 3
続発性無汗症の原因を問う問題
糖尿病(神経障害)や視床下部(発汗中枢)障害が原因となる→2, 3
- 1. 痛風:無汗にも多汗にもならない
- 2. 糖尿病:末梢神経障害によって無汗を引き起こすが、多汗症の原因ともなる
- 3. 視床下部障害:発汗中枢が存在し神経性無汗症の原因となるが、多汗症の原因となることもある
- 4. 甲状腺機能亢進症:代謝亢進により、多汗症の原因となる。甲状腺機能"低下"症は無汗症の原因となる
- 5. Frey症候群:耳下腺腫瘍切除等で耳介側頭神経を障害後、迷入再生することで、摂食時の発汗・皮膚紅潮をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p363 表19.1/361(Frey症候群)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p737-739
- 参考(Frey症候群, 視床下部障害による多汗):原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015年改訂版 日皮会誌:125(7), 1379-1400, 2015のp1379-81
糖尿病や視床下部障害は「多汗も無汗もどっちもある」(糖尿病は2019 選択3で多汗症をきたす疾患として正解肢になっている)が、4・5は明らかに多汗症で1はどちらでもないため、相対的に2・3が正解と考えられる
関連問題
- 2023 選択67 / 2016 選択1 (Frey症候群)
- 2019 選択3(多汗症をきたす疾患:妊娠/糖尿病/腋臭症)
- 2014 選択29 (甲状腺機能亢進症の症状:多汗症など)
- 2013 選択2 (局所多汗症のうち代償性反応として生じるもの:脳梗塞)
- 2012 選択1 (乏汗症をきたす疾患)
選択問題3:解答 4
特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の重症度分類では、75%以上の無汗で重症となる→4
スコア | 無汗・低汗部の面積 |
0 | 〜25% |
1 (軽度) | 25〜50% |
2 (中等度) | 50〜75% |
3 (重症) | 75%〜 |
- 1. 25%:診断基準では、25%以上の範囲で無汗/発汗低下が必要
- 2. 50%:中等度に該当
- 4. 75%:重症に該当
AIGAについては下記にもまとめた
-
特発性後天性全身性無汗症(AIGA) 診断基準・重症度分類
続きを見る
関連問題:上記まとめ記事を参照
選択問題4:解答 5
特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の診断基準では、25%以上の無汗/発汗低下領域が必要→5
AIGAの診断基準は下記参照
-
特発性後天性全身性無汗症(AIGA) 診断基準・重症度分類
続きを見る
- 1. シェーグレン症候群の除外が必要なため、抗SS-A抗体陰性が参考項目に含まれる
- 2. 他の神経疾患を除外するため、発汗以外の自律神経症候を認めてはならない
- 3. アセチルコリン皮内テスト:本来エクリン汗腺はコリン作動性なので発汗がある(選択1)が、AIGAでは"低下"する
- 4. ミノール法:ヨードデンプン反応を用いた検査で、無汗部は黒色変化がみられない。診断上25%以上の無変化領域が必要
- 5. サーモグラフィー:高体温領域が25%以上みられれば、診断基準に該当する
関連問題
- 2022 選択10 (無汗症診断に用いない検査)
- 2020 選択3 / 2019 選択1/ 2016 選択2 (AIGAの合併症・診断基準など)
- 2019 記述20(ミノール法に必要なもの)
選択問題5:解答 1, 5
毛包に関する一般問題
- 1. 休止期毛包は毛包が収縮し、内毛根鞘を有さない
- 2. 正常な頭髪は1日0.3〜0.5mm伸長する(1cm/1か月)。1mmは伸び過ぎ
- 3. 成長期が数年(85%)、退行期が2週間、休止期が数か月で1周期は数年単位となる。成長期が短くなり休止期にとどまる毛包が増えることが男性型脱毛症の原因
- 4. アポクリン汗腺の導管や脂腺は毛峡部より上方の毛孔部(漏斗部)に開口する
- 5. 頭髪は1日100本程度抜ける(約10万本あるので0.1%)。50本抜けるのは正常範囲内
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p23(1・2・3・5)/26(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p18(1・2・3・5)/14(4)
選択問題6:解答 2, 3, 4
中高年女性で半年前から生じた脱毛斑
図では毛孔が消失しており、瘢痕性脱毛症をきたす疾患を選択する→2, 3, 4
瘢痕性脱毛症
瘢痕形成の結果、毛包が破壊され不可逆的な脱毛をきたす疾患
外傷や熱傷などによる続発性と、原発性(原発性瘢痕性脱毛症:PCA)がある
- 毛孔性扁平苔癬(亜型に frontal fibrosing alopeciaやGraham-Little syndrome)
- 慢性皮膚エリテマトーデス
- 禿髪性毛包炎
などが原発性瘢痕性脱毛症の代表例
- 1. Alopecia areata(円形脱毛症):毛包のbulge領域が残存するため、永続的な脱毛とはならず毛孔は保たれる
- 2. Chronic cutaneous lupus erythematousus(慢性皮膚エリテマトーデス):頭部で生じると、PCAをきたす
- 3. Folliculitis decalvans(禿髪性毛包炎):瘢痕性脱毛をきたす疾患で、好中球浸潤やtufted hairが特徴
(LPPはリンパ球の浸潤) - 4. Lichen planopilaris(LPP:毛孔性扁平苔癬):PCAをきたす代表的疾患
- 5. Trichotillomania(抜毛症):円形脱毛症と鑑別に挙げられる疾患だが、毛孔は保たれる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p372/368(1)/196(2)/293(4)/371(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p725/720(1)/354(4)/723(5)
- 選択肢1・3の参考:新・皮膚科セミナリウム 原発性瘢痕性脱毛症の最新のマネジメント 日皮会誌:129(1), 7-16, 2019
関連問題
- 2022 選択67 / 2016 選択3 / 2009 選択27 (瘢痕性脱毛をきたす疾患)
- 2018 選択3 (毛孔性扁平苔癬の亜型)
- 2015 選択4 / 2012 選択3 (frontal fibrosing alopeciaの臨床問題)
選択問題7:解答 4
慢性光線性皮膚炎に関する問題
内因性光線過敏症に分類され、感作物質の接触を絶っても治るわけではない→4
慢性光線性皮膚炎
高齢男性に好発する、内因性光線過敏症
- 症状:露光部中心に難治性湿疹病変をきたし、慢性に経過する。光線暴露によって内因性抗原が生じるのが原因と考えられている
- 検査:UVBのMED低下が著明だが、UVAや可視光線にも過敏性を示すことがある
- 治療:遮光の他、タクロリムス外用が有効
- 1. 高齢男性に好発する
- 2. 組織学的に湿疹病変が主体だが、進行すると真皮のリンパ球浸潤・異型細胞出現・ポートリエ微小膿瘍などがみられることがある
- 3. 露光部が中心だが、非露光部に拡大することもある
- 4. 内因性光線過敏症であり、感作物質は関係しない。光パッチテストは光アレルギー性接触皮膚炎など、外因性光線過敏症の原因特定に用いる
- 5. 中波長紫外線(UVB)が主な原因となるが、長波長紫外線(UVA)や可視光線も原因となりえる
なお成人で内因性光線過敏症をきたす類似疾患に多形日光疹があるが、相違点も多い
好発年齢・性別 | 部位 | 皮疹 | MED/MRD | |
慢性光線性皮膚炎 | 中年以上の男性 | 頚部 | 苔癬化局面 | 著明に低下/低下することがある |
多形日光疹 | 10〜20歳代の女性 | 前腕 | 丘疹 | いずれも正常 |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p233
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p267
関連問題
- 2018 選択8 (慢性光線性皮膚炎の所見)
- 2017 選択9 (多形日光疹と慢性光線性皮膚炎の共通事項)
- 2009 選択16 (慢性光線性皮膚炎ではUVBのMEDが低下)
選択問題8:解答 2
イミキモド(ベセルナ®)の保険適用について問う問題
日光角化症および尖圭コンジローマに対して保険適用があり、日光角化症は顔面以外に禿頭部の病変でも利用可能→2
イミキモド(ベセルナ®)クリーム 外用部位・期間
イミキモドクリームの利用方法 | 部位 | 外用期間 |
日光角化症 | 顔面 or 禿頭部 | 「4週間外用→4週間休薬」 を2回まで(合計16週間) |
尖圭コンジローマ | 外性器 or 肛門周囲 | 16週間まで |
- 外用方法はいずれも1日1回週3回就寝前→起床後洗い流す
※刺激性が強いため、連日の外用や洗い流さないのはNG
よって本問の解答は下記
- 1・2. 日光角化症で利用できるのは、顔面および禿頭部のみで手背は利用不可
- 3. 4週間塗布後、"4"週間休薬する。効果不十分な場合はもう4週間塗布可能
- 4. 1日1回、治療部位("25"cm2までを目安)に1包まで外用する
- 5. 保険適用上、field therapy(後述)は認められていない
イミキモドについては下記も参照
-
イミキモド(ベセルナ®)クリーム まとめ
続きを見る
関連問題
- 2023 選択23 (★ほぼ同一問題★)
日光角化症 field therapy
日光角化症の顕在化病変周囲には、慢性的な紫外線暴露による微小病変や潜在病変が存在していると考えられている(field cancerization)
※他部位で例えると多発しやすい尿路上皮癌や中下咽頭癌のようなもの
凍結療法や外科的切除では顕在化病変しか治療を行えないが、イミキモドクリームのような外用療法は癌化準備領域に対しても治療を行うことが可能となり、これをfield therapy(領域治療)と呼ぶ
臨床治験では塗布領域での日光角化症再発抑制効果が確認されている
保険適用上は認められていない
添付文書には、「塗布部位及びその周辺に重度の紅斑、びらん、潰瘍、表皮剥離等があらわれることがあるので、本剤を過量に塗布しないこと。」と記載されており、この"局所反応が起こる周辺部位"が、癌化準備領域であると考えられる
- 参考:ベセルナ 添付文書
- field therapyの参考:臨床皮膚科 66巻5号(2012 増刊号) 日光角化症のイミキモド療法 p119-122
関連問題:上記記事参照
選択問題9:解答 4
UVAが関与する皮膚疾患を問う問題
紫外線のうち、UVAは透過性が高く真皮の膠原線維や弾性線維に影響を及ぼす→4
UVA・UVB・UVCの比較
紫外線の種類 | 波長(nm) | 影響部位 | 症状 |
UVA | 320〜400 | 真皮深層まで | サンタン(小麦色の日焼け)
日光弾力線維症(solar elastosis) |
UVB | 290〜320 | 表皮〜真皮浅層 | サンバーン(赤くひりひりする日焼け)
悪性黒子(Lentigo maligna) |
UVC | 100〜280 | オゾン層でブロックされ届かない |
- 1. Asteatotic eczema(皮脂欠乏性湿疹):加齢に伴う皮脂減少が原因。下腿に好発することから、紫外線の影響は大きくない
- 2. Lentigo maligna(悪性黒子):顔面に好発する悪性黒子型黒色腫の先行病変で、UVBが原因とされる
- 3. Seborrheic keratosis(脂漏性角化症):日光黒子(選択肢5)から隆起して生じる良性腫瘍
- 4. Solar elastosis(日光性弾力線維症):慢性的な紫外線による弾性線維の断裂や膠原線維の減少で、UVAが原因となる
- 5. Solar lentigo(日光黒子):露光部の境界明瞭な褐色斑で、紫外線暴露が影響する。一部は隆起して脂漏性角化症へ移行する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p338(4)/128(1)/482(2)/406(3)/312(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p468(4)/159(1)/703(2)/567(3)/507(5)
関連問題
選択問題10:解答 4
フィラグリンやその分解産物について問う問題
プロフィラグリンはケラトヒアリン顆粒を形成し、フィラグリン→アミノ酸と分解され天然保湿因子となる
2型炎症優位となるアトピー性皮膚炎でフィラグリン発現は"低下"する→4
- 1・2. フィラグリンはアミノ酸に分解され、保水や紫外線吸収に関与する天然保湿因子(NMF)として作用する
- 3. フィラグリンの分解産物であるウロカニン酸は角層のpHを弱酸性に維持するのに重要
- 4. 2型サイトカイン*はケラチノサイトでのフィラグリン発現を低下させる。なお掻痒感を引き起こす作用もある(2019 選択17, 2015 選択18)
- 5. 顆粒層に存在するケラトヒアリン顆粒(←写真)はプロフィラグリンから構成される
*2型サイトカイン:Th2細胞や2型自然リンパ球から分泌されるサイトカインでIL-4やIL-13が含まれる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8-9(1・2・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p7・11(1・2・5)
- 選択肢3の参考:マルホ皮膚科セミナー 2010/8/5 皮膚バリア機能に影響を及ぼす因子
- 選択肢4の参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021の図2
関連問題
- 2020 選択8 (フィラグリンの発現を低下させるサイトカイン)
- 2019 選択4 (天然保湿因子の構成成分)
- 2013 選択11 (表皮の機能と構造)
選択問題11:解答 4
ケラチンの構造について問う問題
ケラチン細胞骨格と遺伝性皮膚疾患
ケラチンは角化細胞の細胞骨格で、酸性のタイプⅠケラチンと中性〜塩基性のタイプⅡケラチンが重合して2量体、さらに融合して4量体となる
最終的には4量体が8個集まって32量体を形成し、16個のケラチン1(K1)が含まれる
K1遺伝子のミスセンス変異をヘテロ接合性(1/2)で持つ場合、32量体のK1全てが正常である確率は1/2の16乗で1/65,536しかない
→ほとんどのケラチンは異常ケラチンとなるため、ヘテロ接合性であっても(ホモ接合体でなくても)疾患を発症する:dominant negative
よって解答は4
この性質のため、ケラチン関連遺伝子変異によるケラチン症性魚鱗癬や掌蹠角化症は、原則として常染色体優性遺伝形式を取る
例:表皮融解性魚鱗癬(K1/K10), 表在性表皮融解性魚鱗癬(K2e), Vörner 型掌蹠角化症(K1/K9), 単純型表皮水疱症(K5/K14)
関連問題
- 2022 選択22 (7型コラーゲンの構造と機能異常)
- 2019 選択14(タイプⅠケラチン) / 選択16(ケラチン異常症で多い変異部位)
- 2015 選択12(常染色体劣性遺伝する角化異常症)
- 2013 選択8 (Dominant-negativeについて)
選択問題12:解答 3
ケラチンと発言部位について問う問題
ケラチン3/12は角膜上皮に発現し、同部位の異常でMeesmann角膜ジストロフィを発症する→3
ケラチンはタイプにより発現部位が異なる(下記参照)
-
ケラチン 発現部位と先天性皮膚疾患 まとめ
続きを見る
本問では下記の通り
- 1. ケラチン1/10:有棘層に発現
- 2. ケラチン2/10:顆粒層に発現
- 3. ケラチン3/12:角膜上皮に発現する
ケラチン"4"と13は粘膜上皮に発現する - 4. ケラチン5/14:基底細胞に発現
- 5. ケラチン6a/6b/16/17:爪に発現
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p11
関連:2020 選択9(角化細胞に分布するケラチン), 2017 選択10(ケラチンと発現部位)
選択問題13:解答 4
図では表皮の有棘層を中心として顆粒変性がみられる
顆粒変性を伴う魚鱗癬として、表皮融解性魚鱗癬がある→4
顆粒変性
表皮の顆粒層〜有棘層にかけて、大型のケラトヒアリン顆粒をもつ空胞化細胞が出現する状態
ケラチンの先天的異常をきたす疾患でみられ、魚鱗癬2つは診断基準でも参考症状に含まれている
原因遺伝子 | 疾患 |
ケラチン9 | Vörner型掌蹠角化症 |
ケラチン1/10 | 表皮融解性魚鱗癬 (水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症) |
ケラチン2e* | 表在性表皮融解性魚鱗癬 (Siemens型水疱性魚鱗癬) |
ケラチン1/10 ※体細胞モザイク |
疣贅状表皮母斑 |
*顆粒層で発現するため、顆粒変性も有棘層上層〜顆粒層に限局的
- 1. 葉状魚鱗癬:TGM1遺伝子変異で発症し、角層や顆粒層の肥厚が強い
- 2. 尋常性魚鱗癬:FLG遺伝子変異で発症し、HE染色での顆粒層消失・菲薄化が特徴
(ケラトヒアリン顆粒を構成するプロフィラグリンも異常) - 3. 道化師様魚鱗癬:ABCA12遺伝子変異で発症する
- 4. 表皮融解性魚鱗癬:ケラチン1/10遺伝子変異で発症し、顆粒変性と角層・有棘層肥厚がみられる
- 5. X連鎖性劣性魚鱗癬:STS遺伝子変異で発症し、過角化がみられるが顆粒層は正常
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p42・273(4)/271(1)/268(2)/271(3)/270(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p55・332(4)/334(1)/329(2)/335(3)/332(4)/331(5)
関連問題
- 2023 記述11 (顆粒変性の病理)
- 2021 選択21 / 2017 選択17 / 2014 選択9 / 2011 選択12 (顆粒変性をきたす疾患)
- 2018 選択16 / 2013 選択64 (顆粒変性を伴う掌蹠角化症)
- 2016 選択10 (尋常性魚鱗癬の病理)
- 2013 選択12 (KRT1/10遺伝子変異による疾患)
選択問題14:解答 1
接触皮膚炎の病態を問う問題
アレルギー性接触皮膚炎は初回接触では生じず、感作された後に暴露されることで症状が惹起される→1
- 1. 抗原がLangerhans細胞や樹状細胞に補足される感作相と、感作T細胞が活性化する惹起相に分けられる
- 2. ハプテンは分子量500〜1,000Da以下の化学物質が多い。分子量が大きいほど角層バリアを破っての侵入は難しくなる
- 3. CD"8"陽性の細胞傷害性T細胞が中心で、Ⅳ型アレルギー反応の代表例
- 4. 制御性T細胞は感作相の誘導制御や惹起相の炎症収束に重要と考えられている
- 5. 樹状細胞はハプテン刺激を受け、CD80/86/54分子やIL-8、IL-1βの発現を"増強"させる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p118(1)/37(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p133(1)/83(3)
- 選択肢2・4の参考:新・皮膚科セミナリウム 接触皮膚炎の発症メカニズム 日皮会誌:130(8), 1783-1790, 2020
- 選択肢5の参考:新・皮膚科セミナリウム 樹状細胞序論〜樹状細胞は免疫の司令塔 日皮会誌:128(12), 2625-2636, 2018 のp2632
選択問題15:解答 3
肥満細胞に関する一般問題
肥満細胞は結合組織型(皮膚に分布)と、粘膜型(粘膜に分布)に分類される
結合組織型の肥満細胞はキマーゼ陽性となる→3
肥満細胞
肥満細胞は下記2つに分類される
部位 | プロテアーゼ | |
結合組織型 | 皮膚や関節滑膜 | トリプターゼ
キマーゼ |
粘膜型 | 腸粘膜や肺胞 | トリプターゼ |
- 1. 肥満細胞は骨髄由来の前駆細胞が末梢血を経て、組織へ運ばれた後で分化する(Stem cell factorが増殖因子)ため血中に存在しない
- 2. 直径は10μmで、0.3〜0.5μmの顆粒を有する
- 3・4. 皮膚に存在する結合組織型肥満細胞はキマーゼ陽性となる
- 5. FcεRIはα・β・γ3鎖から構成される。慢性蕁麻疹等で用いられるオマリズマブ(ゾレア®)はFcεRIα鎖とIgE(Cε3部位)が結合することを阻害する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p17(2)/33(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p36(2・3)
- 選択肢1・4の参考:ヒトマスト細胞の多様性 アレルギー 61(6), 792-797, 2012
- 選択肢5の参考:IgE受容体 アレルギー 67(9), 1279-1280, 2018
関連問題
選択問題16:解答 1
Langerhans細胞の表面カーカーを問う問題。CD1a, S-100, CD207(Langerin)を発現する→1
Lanerhans細胞組織球症(LCH)の診断上も重要
- 1. CD1a:Langerhans細胞および胸腺の未熟T細胞で陽性となる
- 2. CD3:T細胞で広く陽性となる
- 3. CD68:組織球(マクロファージ)で陽性となるが、Langerhans細胞では陰性
- 4. CD117(c-kit):肥満細胞で陽性となる
- 5. CD203c:好塩基球に存在し、抗原刺激で発現量が増加する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p50(1・2・3)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p48(1・3)
- 選択肢4の参考:c-kit (CD117) - 免疫組織データベース~いむーの Antibody Database – Immuuno
- 選択肢5の参考:MBL Immunnology News No.2 | MBLライフサイエンス
関連問題
選択問題17:解答 1, 3
デュピルマブ(デュピクセント®)の作用部位を問う問題。IL-4/13のモノクローナル抗体→1, 3
IL-4/13はTh2細胞から分泌され(2型サイトカイン)アトピー性皮膚炎を増悪させる方向に働く
同部位の阻害が治療ターゲットとなっている
- 1. IL-4:Th2細胞から分泌され、好酸球の遊走・瘙痒感・フィラグリン発現低下に関与する
- 2. IL-5:Th2細胞から分泌され、好酸球の遊走に関与する。生物学的製剤としてメポリズマブ(ヌーカラ®)があり、喘息や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症で使われる
- 3. IL-13:Th2細胞から分泌され、瘙痒感やフィラグリン発現低下に関与する
- 4. IL-17:Th17細胞から産生され、表皮肥厚や好中球遊走を引き起こして乾癬の病態に関与する。生物学的製剤にセクキヌマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブがある
- 5. IL-22:Th2細胞から分泌され、表皮肥厚を誘導する
アトピー性皮膚炎 生物学的製剤
アトピー性皮膚炎では、上述したサイトカインがターゲットの生物学的製剤が発売/開発中
ターゲット | 一般名 | 商品名 |
IL-4, IL-13 | デュピルマブ | デュピクセント® |
IL-13 | トラロキヌマブ | アドトラーザ® |
レブリキズマブ | ||
IL-31 | ネモリズマブ | ミチーガ® |
IL-22 | フェザキヌマブ |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p282(4)
- その他選択肢の参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021のp2693-2695
- 生物学的製剤の参考:アトピーと乾癬における免疫療法 日本内科学会雑誌108巻3号
関連問題
- 2021 選択10 (2型サイトカインの作用)
- 2020 選択8 (フィラグリン発現を低下させるサイトカイン)
- 2019 選択17 / 2015 選択18 (アトピー性皮膚炎の痒みに関連するサイトカイン)
- 2018 選択11(IL-5が作用する細胞)
選択問題18:解答 4
葉状魚鱗癬の原因を問う問題。最多なのはTGM1遺伝子→4
その他ABCA12等の遺伝子変異で発症することもある(その場合はmissense変異↔道化師様魚鱗癬ではnonsense変異)
- missense変異:1塩基置換により蛋白質のアミノ酸が変化するが、全長は変化しない
- nonsense変異:1塩基置換によりSTOPコドンを生じ、全長が短い蛋白が合成される
- 1. フィラグリン発現低下:FLG遺伝子変異により生じ、尋常性魚鱗癬の原因
- 2. ABCA12欠損による脂質輸送の低下:道化師様魚鱗癬の原因
- 3. ケラチン異常:表皮融解性魚鱗癬の原因で、顆粒変性を認める
- 4. トランスグルタミナーゼ1欠損:葉状魚鱗癬の原因の大部分を占める
- 5. ステロイドサルファターゼ欠損:STS遺伝子変異により生じ、X連鎖性劣性魚鱗癬の原因
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p271(2・4)/268(1)/273(3)/270(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p334(4)/329(1)/335(2)/332(3)/331(5)
選択問題19:解答 3, 4, 5
Darier病に関する一般問題
Darier病
遺伝性角化症の一つで、遺伝性だが思春期以降に発症する
- 原因:カルシウムポンプをコードするATP2A2遺伝子変異により発症
※同じくカルシウムポンプをコードするATP2C1遺伝子変異はHailey-Hailey病を発症する - 症状:間擦部を中心に角化性丘疹をきたし、融合して局面を形成する
- 組織:異常角化や棘融解、絨毛形成がみられる
- 1. "夏季"に増悪し、しばしば浸潤して悪臭を伴う
- 2. 掌蹠の角化性丘疹や点状陥凹が特徴
- 3. 口腔/眼粘膜の丘疹、神経症状(10% 精神発達遅滞やてんかん)を伴うことがある
- 4. カルシウムポンプをコードするATP2A2遺伝子変異が病因
- 5. 脂漏部や間擦部の角化性丘疹が融合して局面を形成する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p279
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p343
関連問題
- 2021 選択71 (Darier病とHailey-Hailey病の比較)
- 2020 選択55 (Darier病の症状)
- 2018 記述1 / 2014 選択7 (原因遺伝子)
選択問題20:解答 2
角化異常症とその原因分子を問う問題
デスモソームを構成する蛋白質(デスもグレイン・プラコフィリン・プラコグロビン・デスモコリン等)やコルネオデスモソームで変異が生じることで、特徴的な臨床像を呈する
棘融解性外胚葉形成不全症はプラコグロビンの変異が原因となる→2
- 1. Carvajal症候群:デスモプラキン変異により発症し、線状 or 限局性の掌蹠角化症・毛髪異常・左心室心筋症をきたす
- 2. 棘融解性外胚葉形成不全症:プラコグロビン変異により発症し、びまん性の掌蹠角化症・羊毛状頭髪・表皮の棘融解がみられる
プラコフィリン1の異常は外胚葉形成不全症-皮膚脆弱症候群の原因となる(表皮の脆弱性・手掌足底の有痛性過角化病変・疎毛・発汗異常など) - 3. ピーリングスキン病:コルネオデスモシンの変異が原因で、容易に角層が剥離し全身にびらんをきたす
- 4. ネザートン症候群:セリンプロテアーゼインヒビター(LEKTI)をコードするSPINK5遺伝子変異により発症。LEKTIは角層剥離に働くKLK(カリクレイン関連ペプチダーゼ)5を阻害するため、LEKTIが異常を来すとKLK5が過剰に働き角層剥離をきたす
- 5. SAM症候群:デスモグレイン1の変異が原因で発症し、紅皮症や皮膚びらん(S)・高IgE血症(A)・発育不全(M)をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p339(3)/337(4)
- その他選択肢の参考:新・皮膚科セミナリウム デスモソーム・コルネオデスモソームと遺伝性角化異常症 日皮会誌:126(12), 2259-2267, 2016
関連問題
- 2020 選択10 (ピーリングスキン病の原因分子)
- 2017 選択16 (欠損により角質剥離を生じる分子:コルネオデスモシン, LEKTI)
選択問題21:解答 2, 3, 4
顆粒変性をきたす疾患を問う問題
顆粒変性をきたすのはケラチン関連遺伝子変異による角化異常症→2, 3, 4
- 1. Darier病:ATP2A2遺伝子変異が原因で、組織学的には異常角化や棘融解、絨毛形成が特徴
- 2. Vörner型掌蹠角化症:KRT9遺伝子変異が原因で、顆粒変性を伴うのが特徴
(伴わないものはUnna-Thost型掌蹠角化症) - 3. 疣贅状表皮母斑:KRT1/10遺伝子の体細胞モザイクが原因となり、Blaschko線に沿った皮疹分布がみられる
- 4. 表皮融解性魚鱗癬:KRT1/10遺伝子変異が原因となり、顆粒変性を伴う
- 5. 先天性魚鱗癬様紅皮症:常染色体劣性遺伝形式をとる魚鱗癬の中で、道化師様〜・葉状〜以外のもの(ゴミ箱的診断)。原因遺伝子はABCA12やTGM1など
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p42/280(1)/277(2)/385(3)/273(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p55/344(1)/341(2)/521(3)/332(4)/
関連問題
- 2023 記述11 (顆粒変性の病理)
- 2021 選択13 / 2017 選択17 / 2014 選択9 / 2011 選択12 (顆粒変性をきたす疾患)
- 2018 選択16 / 2013 選択64 (顆粒変性をきたす掌蹠角化症)
- 2016 選択10(尋常性魚鱗癬の病理)
選択問題22:2, 5
ジベルばら色粃糠疹に関する一般問題
春と秋に多く発生し、ヘラルドパッチと呼ばれる初発疹が特徴→2, 5
ジベルばら色粃糠疹
青年期に発症する角化症
直径1〜3cmの比較的大きな落屑性紅斑が生じ(ヘラルドパッチ)、その後より小さな紅斑が体幹に出現する
皮疹は皮膚割線に一致したクリスマスツリー様の分布を示す
数か月程度の経過で消退し、再発はない
- 1. 年齢は10〜30歳代が多い
- 2. 春と秋に多く、HHV-7(ヘルペスウイルス)感染との関連が考えられている
- 3. 体幹中心で、掌蹠や頭部には皮疹を生じない。関節症性乾癬では爪甲粗造や点状陥凹がみられる
- 4. 通常1〜3ヶ月で自然治癒し、再発しない
- 5. 初発疹は50〜90%でみられ、その後生じる皮疹より大型
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p295
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p383
選択問題23:解答 3
幼少期からの毛孔一致性の紅斑(一部融合)と掌蹠の過角化、CARD14遺伝子の多型から、毛孔性紅色粃糠疹の診断→3
なおCARD14遺伝子は尋常性乾癬を伴わない膿疱性乾癬の原因ともなる
- 1. 類乾癬:局面状類乾癬(菌状息肉症へ移行)と苔癬状粃糠疹に分類され、いずれも1cm程度までの小型の紅斑が主体で掌蹠病変はない
- 2. 尋常性乾癬:落屑性紅斑をきたし一部でCARD14遺伝子の多型と関連するが、掌蹠の過角化は伴わない
- 3. 毛孔性紅色粃糠疹:毛孔一致性丘疹〜融合した紅斑、掌蹠角化をきたす。発症時期(成人/小児)やHIV感染で分類され、Ⅴ型(小児非典型型)はCARD14遺伝子変異/多型が原因となる
- 4. 長島型掌蹠角化症:掌蹠過角化および手背・足背や肘に及ぶ潮紅が特徴で、SERPINB7遺伝子変異が原因
- 5. ジベルばら色粃糠疹:体幹部を中心に落屑を伴う紅斑が多発するが、掌蹠には病変を認めない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p288(3)/290(1)/286(2)/277(4)/295(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p380(3)/372(1)/365(2)/342(4)/383(5)
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 自己炎症性角化症としての膿疱性乾癬(汎発型):膿疱形成のメカニズム 日皮会誌:129(6), 1311-1315, 2019
- 参考:毛孔性紅色粃糠疹の遺伝学的背景 臨床皮膚科 72巻5号(2018増刊号) p55-59
※本問図3・図5と同一写真
選択問題24:解答 4
落屑を伴う紅斑が広範囲にあり、組織学的に表皮突起の棍棒状延長や不全角化がみられ、尋常性乾癬の診断
妊娠を希望しているため、妊婦でも投与可能なシクロスポリンを選択する→4
- 1. アザチオプリン(イムラン®):可能な限り投与期間中の妊娠を避けることが望ましく、また乾癬への保険適用はない
- 2. アプレミラスト(オテズラ®):妊婦又は妊娠している可能性のある女性は投与禁忌
- 3. エトレチナート(チガソン®):妊婦禁忌で、催奇形性が強いため投与中止後も2年間は避妊が必要
- 4. シクロスポリン(ネオーラル®):治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合は妊婦にも投与可能で、尋常性乾癬に対して保険適用がある
- 5. メトトレキサート(リウマトレックス®):妊娠又は妊娠している可能性のある女性に対して禁忌
なおタクロリムス・シクロスポリン・アザチオプリンはもともと妊婦等に投与禁忌だったが、見直しに伴い禁忌が外された(2018年8月)
しかしアザチオプリンだけは「可能な限り投与期間中の妊娠を避けることが望ましい」という但し書きが残っている
- 参考:各種添付文書
関連問題
- 2019 選択28(アプレミラストの妊婦禁忌)
- 2023 選択24 / 2016 選択16 (妊婦膿疱性乾癬の治療)
選択問題25:解答 2, 5
デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®軟膏 0.5%)について問う問題
- 1. びらん/粘膜への塗布や密封療法は経皮吸収が増加するため行わない
- 2. 免疫抑制作用があるため、皮膚感染症部位には塗布しない
- 3. 分子量が小さいため経皮的に吸収される
(そもそも吸収されないと外用薬の意味がない) - 4. 1日2回(12時間程度あけることが望ましい)で、1回あたりの塗布量は”5g”まで
- 5. JAKファミリーのキナーゼ全てを阻害するPAN-JAK阻害薬(外用薬としては初)
※内服薬では関節リウマチで使われるペフィシチニブ:スマイラフ®がPAN-JAK
関連問題
- 2022 選択40 (デルゴシチニブの外用量)
選択問題26:解答 5
接触皮膚炎に関する問題
接触皮膚炎症候群は原因物質への持続的曝露(経皮的)から、原因物質が血行性に散布され全身で皮膚病変をきたす→5 (ex. 自家感作性皮膚炎)
一方全身性接触皮膚炎は、感作されたアレルゲンを"非経皮的に"(経口投与や吸入)取り込むことで、全身でアレルギー反応をきたす(ex. シイタケ皮膚炎)
双方とも全身に症状を来すが、曝露形式によって分類される
- 1. 金は金属パッチテストでの陽性率がニッケルについで2番目に高く、ピアスやネックレスで皮膚炎を引き起こす
- 2. コバルトは金属(メッキ)に含まれる他、チョコレートやココアなど食品にも含有される。皮革製品にはクロムが多く含まれる
- 3. 刺激性接触皮膚炎は接触源そのものの毒性が原因で、感作がなくても(初回から)発症する
- 4. Diaper dermatitisはおむつ皮膚炎のこと。唾液や食物による口囲皮膚炎はlip lickers' dermatitisと呼ばれる
- 5. 接触皮膚炎症候群は原因物質への経皮的な持続曝露が原因
「金はイオン化傾向が低い(安定している)ため汗や水に溶けにくく接触皮膚炎を起こしにくい」という記載も見かけるが、実際の陽性率が高いことから相対的に間違い選択肢と考える
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p118(3)/119 MEMO(4)/117(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p144(1)/140(3)/142(4)/141(5)
- 選択肢1・2の参考:接触皮膚炎診療ガイドライン 2020 日皮会誌:130(4), 523-567, 2020
選択問題27:解答 4
副腎皮質ステロイドに関する問題
メチルプレドニゾロン4mgはプレドニン5mgと同等の力価となる→4
- 1. アナフィラキシー治療の第一選択はアドレナリン筋注。ステロイド点滴投与は二相性反応の抑制に有効とされ、第二選択薬
- 2. リファンピシンはステロイド代謝酵素のCYP3A4を誘導し、ステロイド作用が"減弱"する(併用注意)
- 3. ステロイド外用薬を特に眼周囲に使用した場合、眼圧上昇や緑内障のリスクを高める
- 4. ヒドロコルチゾンを1とすると、メチルプレドニゾロンの力価が5、プレドニンの力価が4
→メチルプレドニゾロン4mg = プレドニン5mg = 20となる - 5. ベタメタゾン(リンデロン®)はリン酸エステル製剤のため、コハク酸エステル製剤のアレルギーがある場合でも投与可能
ステロイドホルモンの力価
一般名 | 商品名 | 力価(グルココルチコイド作用) |
ヒドロコルチゾン | コートリル® | 1 |
プレドニゾロン | プレドニン® | 4 |
メチルプレドニゾロン | メドロール® | 5 |
デキサメタゾン | デカドロン® | 25 |
ベタメタゾン | リンデロン® | 25 |
NSAIDs不耐症・過敏症でのステロイド製剤
NSAIDs不耐症では、点滴ステロイドに含まれるコハク酸エステルに対して過敏症を示し喘息発作が生じる
リン酸エステルステロイドでは比較的安全とされるため、こちらを選択する(ただしこちらも急速静注では危険があるため1-2時間かけて点滴)
NSAIDs不耐症 | コハク酸エステル (投与禁忌) |
リン酸エステル (ゆっくり点滴) |
ヒドロコルチゾン | サクシゾン® | 水溶性ハイドロコートン® |
ソル・コーテフ® | ||
プレドニゾロン | 水溶性プレドニン® | コーデルゾール® |
メチルプレドニゾロン | ソル・メドロール® | - |
デキサメタゾン | - | デカドロン® |
ベタメタゾン | - | リンデロン® |
なおリン酸エステルやコハク酸エステルは点滴製剤のみに含まれるため、ステロイド内服は問題ない
※サ行("サ"クシゾン, "水"溶性プレドニン, "ソ"ル・メドロール, "ソ"ル・コーテフ)がNG、と考えるとわかりやすいかも(?)
- 選択肢1の参考:アナフィラキシーガイドライン (日本アレルギー学会)
- 選択肢2の参考:リファンピシン 添付文書
- 選択肢3の参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021のp2721
- 選択肢4の参考:ステロイド内服薬の選び方・使い方 アレルギー 58(1), 7-12, 2009の表1
- 選択肢5の参考:NSAIDs解熱鎮痛薬不耐症・過敏症/禁忌と回避(医療関係者の皆様へ):静注用ステロイドの用い方(医療関係者向け)
関連:2018 選択54(アスピリン不耐症で利用するステロイド製剤) / 選択83(ステロイドの効果を減弱させる薬剤)
選択問題28:解答 3
バリシチニブ(オルミエント®)のターゲットを問う問題
JAK1/2を阻害し、アトピー性皮膚炎や円形脱毛症に対して用いられる→3
発売時期もあり、アトピー性皮膚炎ガイドライン2021で掲載されている唯一の内服JAK阻害薬
JAK阻害薬と皮膚科疾患 (アトピー性皮膚炎・関節症性乾癬)
JAK(janus kinase)は細胞内シグナル伝達を担うJAK-STAT経路を構成し、JAK1/2/3とTYK2の4つがある
JAK阻害薬自己免疫性疾患等で過剰活性化された同経路を抑制し、抗炎症作用や免疫抑制を発揮する
皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎および関節症性乾癬で利用され、阻害部位が異なる複数の薬剤がある
アトピー性皮膚炎のJAK阻害薬 | 一般名 | 商品名 |
JAK1 | アブロシチニブ | サイバインコ® |
ウパダシチニブ | リンヴォック® | |
JAK1/JAK2 | バリシチニブ | オルミエント® |
JAK1/JAK2/JAK3/TYK2 | デルゴシチニブ* | コレクチム®* |
*外用薬
関節症性乾癬のJAK阻害薬 | 一般名 | 商品名 |
JAK1 | ウパダシチニブ | リンヴォック® |
よって本問の解答は下記となる
- 1. JAK1:アブロシチニブおよびウパダシチニブのターゲット
- 2. JAK2:単独阻害する内服薬はない
- 3. JAK1, JAK2:バリシチニブのターゲット
- 4. JAK1, JAK2, JAK3:関節リウマチで用いられるトファシチニブのターゲット(後述)
- 5. JAK1, JAK2, JAK3, TYK2:外用薬であるデルゴシチニブ(コレクチム®)のターゲット
なお関節リウマチでは以下の薬剤も利用される(オルミエント®・リンヴォック®も使用可能)
関節リウマチ | 一般名 | 商品名 |
JAK1 | フィルゴチニブ | ジセレカ® |
JAK1/JAK2/JAK3 | トファシチニブ | ゼルヤンツ® |
JAK1/JAK2/JAK3/TYK2 | ペフィシチニブ | スマイラフ® |
その他:ルキソリチニブ(ジャカビ®)はJAK1/JAK2阻害薬で、真性多血症および骨髄線維症※で用いられる
※いずれもJAK2遺伝子変異を高率に有する
- 参考:商品一覧 : JAK阻害薬 および各種添付文書
選択問題29:解答 4
一次刺激性接触皮膚炎は接触源そのものの毒性が原因のため、初回曝露でも(感作がなくても)発生しえる
抗原特異的T細胞は感作が関与するアレルギー性接触皮膚炎で重要→4
接触皮膚炎(一次刺激性・アレルギー性)の比較
接触皮膚炎の比較 | 病態 | 感作 |
一次刺激性 | 接触源による炎症性サイトカイン放出 | 不要
→初回曝露でも閾値を超えれば発生 |
アレルギー性 |
|
必須
→初回曝露では発生しない |
原因のわからない、いわゆる"湿疹"は一次刺激性接触皮膚炎によるものと考えられている
- 1. フィラグリン遺伝子変異(アトピー性皮膚炎含む)による皮膚バリア障害はリスク因子
(抗原が侵入しやすい) - 2. 刺激されたケラチノサイトからATPや活性酸素種、サイトカインが放出される
- 3. オープンテストは通常のパッチテストより刺激が弱く偽陰性となりやすいが、染毛剤など刺激性が強い抗原は陽性となる
- 4. "アレルギー性"接触皮膚炎の惹起相は抗原特異的T細胞(CD8陽性細胞)が主体。一次刺激性への関与は弱い
- 5. TNFαやIL-1αなどの炎症性サイトカインの遺伝子多型(polymorphisms)は発症リスクと相関する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p82(3)/117-118(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p109(3)/133(4)
- 選択肢1・2・5の参考:マルホ皮膚科セミナー 2015/04/09 接触皮膚炎のトピックス
選択肢3について「刺激反応が見られる」かどうかは場合によるように思われる(断言できるかどうか?)が、急性刺激性接触皮膚炎の原因物質なら刺激性が高いと想定される。本問では選択肢4が明らかに誤りなので、選択肢3の文章は正しいものと考える
選択問題30:解答 4, 5
マダニ媒介疾患の病原体を問う問題
ダニ媒介性脳炎および重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はウイルスが原因→4, 5
- 1. ライム病:スピロヘータ(らせん菌)の一種であるBorrelia burgdorferiやB. gariniiが原因で、慢性遊走性紅斑をきたす
- 2. 日本紅斑熱:リケッチア(偏性細胞内寄生菌)であるRickettsia japonicaが原因で、感冒症状+四肢優位の紅斑をきたす※
- 3. 野兎病:細菌であるFrancisella tularensis(野兎病菌)が原因
- 4. ダニ媒介性脳炎:フラビウイルスが原因で、脳炎症状をきたす
- 5. 重症熱性血小板減少症候群:SFTSウイルス(RNAウイルス)が原因で、消化器症状や血小板減少をきたす
※類似疾患のつつが虫病もリケッチア、Orientia tsutsugamushiが原因。ただし媒介動物はマダニではなくツツガムシ(ダニの一種)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p567(1)/570(2)/569(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p894-895(1・2)/823(3)
- 選択肢4の参考:新・皮膚科セミナリウム ダニ媒介性感染症 日皮会誌:129(12), 2493-2501, 2019のp2498
関連問題
選択問題31〜60は下記
-
令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題31〜60
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