特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の診断基準と重症度分類について、まとめました
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特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の診断基準・重症度分類・過去問
AIGA 診断基準
- A:明らかな原因なく後天性に非髄節性の広範な無汗/減汗(発汗低下)を呈するが,発汗以外の自律神経症候及び神経学的症候を認めない.
- B:ヨードデンプン反応を用いたミノール法などによる温熱発汗試験で黒色に変色しない領域もしくは サーモグラフィーによる高体温領域が全身の 25% 以上の範囲に無汗/減汗(発汗低下)がみられる.
A+B をもって AIGA と診断する.
参考項目
- 発汗誘発時に皮膚のピリピリする痛み・発疹(コリン性蕁麻疹)がしばしばみられる.
- 発汗低下に左右差なく,腋窩の発汗ならびに手掌・足底の精神性発汗は保たれていることが多い.
- アトピー性皮膚炎は AIGA に合併することがあるので除外項目には含めない.
- 病理組織学的所見:汗腺周囲のリンパ球浸潤,汗腺の委縮,汗孔に角栓なども認めることもある.
- アセチルコリン皮内テスト又は QSART で反応低下を認める.
- 抗 SS-A 抗体陰性,抗 SS-B 抗体陰性,外分泌腺機能異常がないなどシェーグレン症候群は否定する.
無汗症自体は神経障害の結果でも生じ得る(例:糖尿病やパーキンソン病に伴う神経障害)ため、AIGA診断のためにはこれらを除外することが重要
とくに左右差や上下差がある場合は、椎間板ヘルニアや頚椎症に伴う神経根症も考え、CT/MRIなどの画像診断を実施すべきとされる
AIGA 重症度分類
スコア | 無汗・低汗部の面積 |
0 | 〜25% |
1 (軽度) | 25〜50% |
2 (中等度) | 50〜75% |
3 (重症) | 75%〜 |
- 診断基準引用:特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン 改訂版.自律神経 52 : 352―359, 2015.
- 重症度分類参考:特発性後天性全身性無汗症(指定難病163) – 難病情報センター
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 特発性後天性全身性無汗症 日皮会誌:131(1), 35-41, 2021
皮膚科専門医認定試験 関連問題
2023 選択90
若年男性でコリン性じんま疹と熱中症をきたしているAIGAの症例
アセチルコリン皮内テストでの発汗低下は診断基準で参考項目に含まれる→解答は3
発汗低下に左右差はなく、組織での汗腺変性も目立たない。治療ではステロイドパルスが行われるが難治例も多い
解説詳細はリンク先:2023 選択90
2022 選択10
無汗症評価に用いる検査を問う問題
AIGA診断基準ではミノール法やサーモグラフィー、定量的軸索反射性発汗試験(QSART)が含まれる
ヨード紙法も手掌や足底では用いられることがあるが、重量計測法は用いない→解答は3
解説詳細はリンク先:2022 選択10
2021 選択3
AIGAの重症度分類では、全身の75%以上で無汗または低汗をきたすと重症と判定される→解答は4
解説詳細はリンク先:2021 選択3
2021 選択4
AIGA診断基準に関する問題
ミノール法で黒色に変化しない無汗/低汗領域ないしサーモグラフィーによる高体温領域が25%以上あることが診断に必要→解答は4
他疾患除外のため、抗SS-A抗体陰性(シェーグレン症候群)や自律神経症候がないことが必要
解説詳細はリンク先:2021 選択4
2020 選択3
AIGAではコリン性蕁麻疹の合併が多くみられ、診断基準でも参考所見に含まれる→解答は5
解説詳細はリンク先:2020 選択3
2019 選択1
AIGAの組織では汗腺周囲でリンパ球浸潤が見られる場合があるが、好酸球は典型的ではない→解答は5
腋窩や掌蹠の発汗は保たれることが多く、血清IgEの上昇を認めることがある
解説詳細はリンク先:2019 選択1
2019 選択3
多汗症を伴う疾患を問う問題
妊娠や糖尿病・腋臭症がある→1, 2, 3
直接は関係しないが、AIGAにコリン性蕁麻疹やアトピー性皮膚炎が合併することを知っておくと選択肢を減らすことが可能
解説詳細はリンク先:2019 選択3
2019 記述20
ミノール法に必要な物品を問う出題
ヨードでんぷん反応を利用したものなので、ヨードが必要
解説詳細はリンク先: 2019 記述20
2016 選択2
AIGAの治療ではステロイドパルス療法が有効(だが再投与が必要な場合も多い)→解答は3, 4, 5
若年者に多く、発汗以外の神経学的症候は認めない
解説詳細はリンク先:2016 選択2
2012 選択1
乏汗症(無汗症)をきたす疾患を問う問題
AIGAに合併するコリン性蕁麻疹や、Fabry病、先天性外胚葉形成不全症がある→解答は3, 4, 5
解説詳細はリンク先:2012 選択1
2010 選択2
多汗症をきたす疾患を問う問題
間違い選択肢としてコリン性蕁麻疹(AIGA)がここでも登場している
など近年も類問出題歴がある