日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和2(2020)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
この記事は選択問題1〜30の解答解説です
選択問題31〜は下記
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令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題31〜60
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見出し
- 1 令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜30
- 1.1 選択問題1:解答 1, 2, 4
- 1.2 選択問題2:解答 2, 4, 5
- 1.3 選択問題3:解答 5
- 1.4 選択問題4:解答 2, 5
- 1.5 選択問題5:解答 3
- 1.6 選択問題6:解答 3
- 1.7 選択問題7:解答 3
- 1.8 選択問題8:解答3
- 1.9 選択問題9:解答 3
- 1.10 選択問題10:解答 4
- 1.11 選択問題11:解答 3, 4
- 1.12 選択問題12:解答 1
- 1.13 選択問題13:解答 1
- 1.14 選択問題14:解答 2, 4
- 1.15 選択問題15:解答 3
- 1.16 選択問題16:解答 2
- 1.17 選択問題17:解答 1
- 1.18 選択問題18:解答 1, 2
- 1.19 選択問題19:解答 2
- 1.20 選択問題20:解答 5
- 1.21 選択問題21:解答 1, 2, 5
- 1.22 選択問題22:解答 1, 2, 5
- 1.23 選択問題23:解答 1
- 1.24 選択問題24:解答 2, 4
- 1.25 選択問題25:解答 2
- 1.26 選択問題26:解答 3
- 1.27 選択問題27:解答 1, 2
- 1.28 選択問題28:3
- 1.29 選択問題29:1, 2, 4
- 1.30 選択問題30:解答 2
令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜30
選択問題1:解答 1, 2, 4
図1では広く突出した額、鼻の定位(鞍鼻)、耳介低位(内眼角と外眼角を結んだ線より低い)、下口唇肥厚を認める
うつ熱を繰り返していることから発汗障害があることが想定され、無汗(低汗)性外胚葉形成不全症の診断
無汗(低汗)性外胚葉形成不全症
外胚葉由来の組織である毛髪・歯・爪・汗腺に異常をきたし、発汗低下から熱中症をきたしやすい
・原因
- EDA1遺伝子変異(X連鎖劣性遺伝形式)
- EDAR遺伝子変異(常染色体劣性遺伝形式)
- 3. Goltz症候群では中胚葉および外胚葉の異常を生じるため、合指症をきたす
- 5. 有汗性の外胚葉形成不全症(Clouston症候群)はGJB6遺伝子の変異が原因となり、掌蹠角化症をきたす
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p342, 皮膚科学 第10版 p482〜483
関連:2021年 選択75(無汗性外胚葉形成不全症について)
選択問題2:解答 2, 4, 5
選択問題2
唾液腺について正しいのはどれか.3つ選べ.
- 耳下腺は唾液腺には属さない.
- 顔面神経は唾液腺の分泌に関わっている.
- Fordyce状態は唾液腺の過形成により生じる.
- 唾液腺生検はSjögren症候群の診断に有用である.
- 口唇の粘液嚢胞は唾液腺の導管の損傷や閉塞と関連がある.
唾液腺に関する一般問題
- 1. 唾液腺は耳下腺・顎下腺・舌下腺から構成される大唾液腺と、口腔粘膜や喉に存在する小唾液腺に分かれる
- 2. 唾液腺分泌に顔面神経 Ⅶ(顎下腺と舌下腺)および舌咽神経 Ⅸ(耳下腺)が関わる
※”みなとく”で副交感神経成分ありというゴロが有名 - 3. Fordyce"状態"は"脂腺"の過形成により口唇で生じる
- 4. Sjögren症候群では唾液腺におけるリンパ球浸潤が多数認められ、診断基準にも含まれる(必須ではない)
- 5. 唾液腺の障害による流出障害が口唇の粘液嚢胞の原因となる
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p362(3)/212(4), 皮膚科学 第10版 p586(3)/420(4)/634(5)
選択問題3:解答 5
選択問題3
特発性後天性全身性無汗症に最も合併しやすい疾患はどれか.
- 血管性浮腫
- 寒冷蕁麻疹
- 機械性蕁麻疹
- 特発性蕁麻疹
- コリン性蕁麻疹
特発性後天性全身性無汗症の合併症として、コリン性蕁麻疹が76%に見られたという報告があり、診断基準での参考所見にも含まれている
特発性後天性全身性無汗症の診断基準
- A:明らかな原因なく後天性に非髄節性の広範な無汗/減汗(発汗低下)を呈するが,発汗以外の自律神経症候及び神経学的症候を認めない.
- B:ヨードデンプン反応を用いたミノール法などによる温熱発汗試験で黒色に変色しない領域もしくは サーモグラフィーによる高体温領域が全身の 25% 以上の範囲に無汗/減汗(発汗低下)がみられる.
A+B をもって AIGA と診断する.
参考項目
- 発汗誘発時に皮膚のピリピリする痛み・発疹(コリン性蕁麻疹)がしばしばみられる.
- 発汗低下に左右差なく,腋窩の発汗ならびに手掌・足底の精神性発汗は保たれていることが多い.
- アトピー性皮膚炎は AIGA に合併することがあるので除外項目には含めない.
- 病理組織学的所見:汗腺周囲のリンパ球浸潤,汗腺の委縮,汗孔に角栓なども認めることもある.
- アセチルコリン皮内テスト又は QSART で反応低下を認める.
- 抗 SS-A 抗体陰性,抗 SS-B 抗体陰性,外分泌腺機能異常がないなどシェーグレン症候群は否定する.
引用:特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン 改訂版.自律神経 52 : 352―359, 2015.
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p363, 皮膚科学 第10版 p738
関連:2021年 選択4(AIGAの診断基準), 2019 選択1 (AIGAで見られる所見), 2016 選択2
選択問題4:解答 2, 5
選択問題4
円形脱毛症を合併しやすい疾患はどれか.2つ選べ.
- 尋常性乾癬
- Down症候群
- 鉄欠乏性貧血
- Werner症候群
- アトピー性皮膚炎
円形脱毛症を合併しやすい疾患
- 自己免疫性疾患:甲状腺疾患(橋本病) 8%、尋常性白斑(4%)、SLE、関節リウマチなど
- アトピー性皮膚炎
- Down症候群
引用:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版 日皮会誌:127(13). 2741-2762. 2017 の6.AAの合併症
なおアトピー性皮膚炎に合併した円形脱毛症に対し、デュピルマブ(デュピクセント®)が奏功したという報告が複数ある
4. Werner症候群では早老化現象をきたし、白髪や脱毛を生じる
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p369, 皮膚科学 第10版 p720〜721
※あたらしい皮膚科学ではDown症候群の記載はない
選択問題5:解答 3
光線は波長に応じて下記のように分類される
光線の分類
- 紫外線:400nm以下
UVCが200〜290nm、UVBが290〜320nm、UVAが320〜400nm(ナローバンドUVBは308〜313nm) - 可視光線:400〜800nm
- 赤外線:800nm以上
よってnm=10-9である3が正解
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p107, 皮膚科学 第10版 p263〜264
関連:2019年度 選択問題11(紫外線の一般問題), 2017 選択7(エキシマランプの波長)
選択問題6:解答 3
選択問題6
色素性乾皮症について誤っているのはどれか.
- 常染色体劣性遺伝性疾患である.
- A 群では学童期から皮膚腫瘍を発症する.
- B 群が A 群,Variant 群に次いで頻度が高い.
- C 群は神経症状を呈さない.
- Variant 群の DNA 除去修復能は正常である.
色素性乾皮症に関する一般問題
色素性乾皮症
常染色体劣性遺伝疾患で、紫外線によるDNA損傷を修復する機構に異常があり若年から皮膚悪性腫瘍を合併しやすい
原因遺伝子によってA〜G群+V型に分けられ、A〜G群ではDNA除去修復酵素に異常が、V型は損傷乗り越え複製機構に異常がある
C群/E群/V型以外は神経症状を合併する
- 1. すべての群/型が常染色体劣性遺伝疾患
- 2. A群は学童期から皮膚腫瘍を発症する(平均基底細胞癌発症年齢9.7歳)
- 3. A群(55%)>V型(25%)>D群(8%)>F群(7%)の順番で、B群は日本では報告がない→✗
- 4. C群は神経症状を呈さない
- 5. Variant型はDNA除去修復能は正常だが、損傷乗り越え複製の異常がある
そのためDNA合成能を測定するUDS(不定期DNA合成値)は正常値となる
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p234〜236, 皮膚科学 第10版 p269〜273
関連問題
- 2019 選択12 (XP-Vの臨床問題)
- 2018 選択7(XP-V型について)
- 2015 選択6 (XPについて:頻度・検査結果・神経症状の有無など)
- 2013 選択5 (若年から発癌をきたしやすい病型)
- 2010 選択6 (XP-Vについて)
選択問題7:解答 3
選択問題7
タイトジャンクション(密着結合)が存在する部位で正しいのはどれか.
- 角層間
- 基底膜
- 顆粒細胞間
- 有棘細胞間
- 基底細胞間
タイトジャンクション(密着結合)
顆粒細胞間に存在し、クローディンやオクルディンなどの膜タンパクが細胞膜同士を接着することにより、外来物質の体内への侵入や細胞外液の漏出を防ぐ構造
- 1. 角層間:周辺帯が存在し、ロリクリンやインボルクリンから構成される。角層下層にはコルネオデスモソームも存在する
- 2. 基底膜:ヘミデスモソームが存在し、BP180等から構成される
- 4. 有棘細胞間:デスモソーム(デスモグレイン1/3やデスモコリンから構成)やギャップ結合(コネキシンから構成)が存在する
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p9〜10(1)/5〜6(2)/7(3・4), 皮膚科学 第10版 p11〜12(1)/7〜9(2・3・4)
選択問題8:解答3
選択問題8
フィラグリンの発現を低下させるサイトカインはどれか.
- GM-CSF
- INF-γ
- IL-13
- IL-17
- TNF-α
Th2系サイトカインであるIL-4やIL-13はケラチノサイトに作用して保水に関わるフィラグリン発現の低下→保湿機能低下を生じさせる

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021 図2に追記
なお抗IL-4/13モノクローナル抗体であるデュピルマブ(デュピクセント®)がアトピー性皮膚炎の治療に用いられている
- 1. GM-CSFは骨髄前駆細胞を刺激し、顆粒球やマクロファージへの分化を促進する
- 2. INF-γは細胞性免疫に関わるTh1系サイトカイン
- 3. IL-13はフィラグリンの発現を低下させる
- 4. IL-17は炎症性サイトカインの一つで、乾癬の病態発生に関与している
また真菌(カンジダ)感染防御に関わるため、IL-17の働きを阻害する(ex. セクキヌマブ)ことでカンジダ症を発症することがある - 5. TNF-αは炎症性サイトカインの一つで、乾癬や関節リウマチを始めとした種々の自己免疫性疾患に関与している
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p35(1)/31(2)/283(4・5), 皮膚科学 第10版 p77(1)/74〜75(2)/79(4)
図引用および選択肢3:日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021
関連:2021 選択10(フィラグリンの作用), 2019年度 選択問題17 / 2015 選択18 (アトピー性皮膚炎のかゆみに関わるサイトカイン)
選択問題9:解答 3
選択問題9
図3では緑の蛍光を示すタンパク質が、ヒト大腿の表皮を中心に分布していることがわかる
選択肢の中では角化細胞間に分布するケラチン10が合致する
- 1. ケラチン5およびケラチン14は表皮基底細胞に存在する
- 2. ケラチン9は"掌蹠の"有棘層〜顆粒層に存在する
- 3. ケラチン1/10は有棘層に存在する
- 4. ロリクリンは角層の周辺帯に存在する
- 5. 17型コラーゲン(BP180)は基底膜部に存在する
ケラチン等の発現部位と関連する先天性疾患
発現部位 | 先天異常 | |
ケラチン5/14 | 基底細胞 | 単純型表皮水疱症 |
ケラチン1/10 | 有棘層 | 表皮融解性魚鱗癬 |
ケラチン9 | 掌蹠の有棘層〜顆粒層 | Vörner 型掌蹠角化症 |
ロリクリン | 角層の周辺帯 | ロリクリン角皮症 |
17型コラーゲン(BP180) | 基底膜部 | 接合部型表皮水疱症 ※自己抗体で水疱性類天疱瘡 |
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8〜9(1・2・3・4)/6(5), 皮膚科学 第10版 p9〜12
選択問題10:解答 4
選択問題10
生後まもなくから、全身皮膚で紅斑・水疱・びらんをともなっている。図4aでは魚鱗癬にしては角化が乏しく炎症所見が目立つことがわかり、図4bでは表皮上層での細胞乖離が見られる。
魚鱗癬症候群である炎症性ピーリングスキン症候群の診断。角層下層で細胞間接着に関わるコルネオデスモシンをコードする、CDSN遺伝子の変異で発症する
なお毛髪異常がない、という部分から類縁疾患であり結節性裂毛を伴うNetherton症候群は否定的
- 1&2. ケラチン1/10をコードするKRT1/10遺伝子の異常で表皮融解性魚鱗癬を発症する。厚い角化が見られる
- 3. フィラグリンをコードするFLG遺伝子の異常で尋常性魚鱗癬を発症する。皮膚の乾燥が主体
- 4. コルネオデスモシンをコードするCDSN遺伝子の異常で、炎症性ピーリングスキン症候群を発症する
- 5. トランスグルタミナーゼ1をコードするTGM1遺伝子の異常で、葉状魚鱗癬や先天性魚鱗癬様紅皮症を発症する
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p271〜273(1・2・5)/269(3), 皮膚科学 第10版 p332(1・2)/329(3)/339(4)/334(5)
選択肢4の参考:マルホ皮膚科セミナー Netherton症候群とその類症
なお本例の写真は下記論文と同一(筆者も上リンクと同じ)である
関連:2021 選択20(角化異常症と原因分子), 2017 選択16(角層peelingをきたす疾患の原因分子)
選択問題11:解答 3, 4
選択問題11
肥満細胞について正しいのはどれか. 2つ選べ.
- 寿命は約2週間である.
- 骨髄で成熟して末梢組織に入ってくる.
- Stem cell factorが増殖因子として働く.
- 顆粒内にトリプターゼが保持されている.
- トルイジンブルー染色で顆粒が青色に染色される.
- 1. 肥満細胞の寿命は数ヶ月
- 2. 骨髄に由来し末梢血中(前駆細胞)を経て、"末梢組織に浸潤した後で"分化する
- 3. 肥満細胞の分化・増殖にはStem cell factorが不可欠
- 4. 顆粒としてヒスタミン・トリプターゼ・キマーゼを有する
- 5. 顆粒はトルイジンブルー染色で赤紫色に染色(異染性)を示す
参考書籍:あたらしい皮膚科学第3版 p17(3・4・5), 皮膚科学 第10版 p36(3・4・5)
選択肢1・2の参考:皮膚科セミナリウム 第66回 皮膚と免疫(日本皮膚科学会雑誌 120巻11号 p2171-2174 2010)
選択問題12:解答 1
選択問題12
Th2細胞について正しいのはどれか.
- IL-13を産生する.
- IL-33受容体の発現はほとんどみられない.
- IFN-γを産生し, 抗ウイルス作用に関与する.
- IL-12の刺激によりナイーブT細胞より分化誘導される.
- 細胞障害性T細胞を活性化させることで抗腫瘍免疫に作用する.
Th2細胞は液性免疫に関わり、Th2>Th1の状態になることがアトピー性皮膚炎や喘息の発症に関与する
- 1. Th2細胞はIL-13やIL-4、IL-31を産生する:デュピルマブはIL-4/13の、ネモリズマブはIL-31に対するモノクローナル抗体
- 2. Th2細胞はIL-33からのシグナル伝達を受け、IL-5やIL-13を産生するようになる
- 3. Th1細胞はIFN-γを産生し、抗ウイルス作用に関与する
- 4. IL-12はナイーブT細胞からTh"1"細胞への分化を誘導する(Th2細胞への分化を誘導するのはIL-4)
- 5. Th1細胞は細胞障害性T細胞を活性化させることで、抗腫瘍免疫に作用する
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p31(3・5)/29(4), 皮膚科学 第10版 p146(1)/79(3・5)/74〜75(4)/
選択肢1・2の参考:日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021の2.2病態生理
選択問題13:解答 1
選択問題13
成人期発症で腰部に比較的大型の角化性局面があり、真菌陰性。ちりめん皺様の鱗屑というキーワードと合わせて、連圏状粃糠疹(遠山)の診断
連圏状粃糠疹(遠山)
後天性角化症の一つで、成人以降に発症し腹部・腰部・臀部に1〜数cmの境界明瞭な局面を生じちりめん皺様の落屑を伴う疾患。東洋人に多い
常染色体優性遺伝することもあるが、原因遺伝子は不明。悪性腫瘍や感染症、妊娠など消耗性疾患との関連が指摘されている。
- 1. 東洋人に多く、白人での発症は稀
- 2. 成人以降の発症が多い
- 3. 原因遺伝子は同定されていない。ロリクリン遺伝子変異が関与するのはロリクリン角皮症
- 4. 悪性腫瘍を伴うことがあるが、軟骨は正常
軟骨形成異常をきたす角化症に、Conradi-Hünermann-Happle 症候群がある - 5. ウッド灯では反応は見られない。癜風や紅色陰癬ではウッド灯にて反応が見られる
連圏状粃糠疹(遠山)と鱗状毛包性角化症(土肥)の比較
両疾患は後天性角化症で部位も類似するが、発症年齢や皮疹の大きさが異なる
後天性角化症 | 部位 | 好発年齢 | 大きさ |
連圏状粃糠疹 (遠山) |
腹部・臀部・腰部 | 成人以降 | 1〜数cm |
鱗状毛包性角化症 (土肥) |
腹部・臀部・腰部 | 思春期 | 3mm〜1cm大 |
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p299〜300, 皮膚科学 第10版 p353・357〜358
選択問題14:解答 2, 4
選択問題14
SERPINB7遺伝子変異の角化症で正しいのはどれか. 2つ選べ.
- 顆粒変性を伴う.
- 通常, 多汗を伴う.
- 多くは魚鱗癬を伴う.
- 病変は手背や足背にも及ぶ.
- 罹患者が非罹患者と結婚すれば, 生まれる子供は発症しない.
SERPINB7遺伝子の変異によって、長島型掌蹠角化症を発症する
長島型掌蹠角化症
アジア人に多く、日本人で最も高頻度に見られる掌蹠角化症(PPK)
SERPINB7遺伝子変異により発症する常染色体劣性遺伝疾患
皮疹が掌蹠のみでなく、肘やアキレス腱にも至るtransgrediensをきたす
- 1. 病理学的にはUnna-Thost型PPKと共に顆粒変性を伴わない。顆粒変性を伴うPPKはKRT1/9遺伝子変異により生じるVörner型
- 2. 掌蹠多汗を伴い、入浴など短時間の浸水で角層が白く浸軟する所見が特徴。白癬の合併も多い
- 3. 長島型PPKは掌蹠中心の病変であり、魚鱗癬を伴わない。掌蹠角化症を伴う魚鱗癬にロリクリン角皮症がある
- 4. 潮紅や過角化が手指背側や足趾背側に及ぶtransgrediensを示す
- 5. 常染色体劣性遺伝疾患であるが、保有率が高い(2%)ため保因者と結婚すると1/2の確率で罹患者が生まれ、優性遺伝形式に見えることがある(偽優性遺伝形式)
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p277(2・4), 皮膚科学 第10版 p342(4)
その他選択肢の参考:掌蹠角化症診療の手引 日皮会誌:130(9), 2017-2029, 2020
関連問題
選択問題15:解答 3
選択問題15
辺縁に二重鱗屑を付す特徴的な紅斑(図6a)や結節状の毛髪(図6b)から、Netherton症候群を考える
Netherton症候群
角層セリンプロテアーゼインヒビター(LEKTI)をコードする遺伝子、SPKNK5の変異により発症する常染色体劣性遺伝疾患
重症アトピー性皮膚炎様の皮疹、節を有し短く折れやすい結節性裂毛、成長障害・精神遅滞などを特徴とする魚鱗癬症候群
- 1. アトピー性皮膚炎に類似した皮疹を示し、血中IgEは上昇する
- 2. 毛髪異常として、陥入性裂毛・捻転毛・結節性裂毛などがみられる
- 3. 爪甲の異常は伴わない。爪甲異常を伴う掌蹠角化症にKRT6A/6B/16/17変異による先天性爪甲肥厚症がある
- 4. 上述の特徴的な皮疹を曲折線状魚鱗癬と称する
- 5. LEKTIの機能低下に伴い、角層セリンプロテアーゼ活性は異常亢進する
参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(4), 皮膚科学 第10版 p337(2・4)
その他選択肢の参考:ネザートン(Netherton)症候群 概要 - 小児慢性特定疾病情報センター
関連問題
- 2021 選択91(セリンプロテアーゼインヒビターの異常による疾患)
- 2019年 記述2(ネザートン症候群)
- 2017 選択15 / 2016 選択6(3主徴)
選択問題16:解答 2
選択問題16
次のうち, 乾癬の関節症状との関係が最も深いのはどれか.
- 瘙痒
- 爪病変
- 紅皮症
- 顔面病変
- 膿疱性乾癬
乾癬性関節炎では頭部・臀裂部・爪などの皮疹と関連が深いとされ、とくに爪病変は最大で9割の患者で認められたという報告がある
参考:乾癬性関節炎診療ガイドライン 2019 日皮会誌:129(13). 2675-2733. 2019
選択問題17:解答 1
選択問題17
以下の病名と対応する組織所見について誤っているのはどれか.
- 扁平苔癬-顆粒層消失
- 光沢苔癬-Langhans型巨細胞
- 尋常性乾癬-不全角化
- 慢性苔癬状粃糠疹-液状変性
- 毛孔性紅色粃糠疹-正角化と不全角化の交互配列
- 扁平苔癬:顆粒層の肥厚や液状変性、真皮乳頭部でのリンパ球浸潤がみられる
- 光沢苔癬:表皮突起の延長と類上皮細胞やリンパ球、Langhans型巨細胞からなる細胞浸潤や液状変性がみられる
- 尋常性乾癬:不全角化や表皮突起の棍棒状延長、角層下の無菌性膿瘍(マンロー微小膿瘍)がみられる
- 慢性苔癬状粃糠疹:液状変性がみられる(表皮の海綿状態は目立たない)
- 毛孔性紅色粃糠疹:正角化と不全角化の交互配列がみられ、毛孔の拡大と内部の角質充満がみられる。表皮内の好中球浸潤を認めない点が乾癬とは異なる。
苔癬様変化
表皮基底層〜真皮にかけての病変で、基底層の液状変性や真皮のリンパ球浸潤、シバット小体(真皮浅層での変性した角化細胞)の出現などを特徴とする
扁平苔癬やエリテマトーデス、苔癬状粃糠疹などでみられる
対義語は乾癬様変化:表皮の変化
参考書籍:あたらしい皮膚科学第3版 p292(1)/295(2)/283(3)/289(5), 皮膚科学 第10版 p377(1)/378(2)/367(3)/373(4)/381(5)
選択問題18:解答 1, 2
選択問題18
6歳の男児. 全身に図7a, 図7bの皮疹を呈し, 発熱を伴っていた. 病理組織を図7cに示す. この疾患の原因遺伝子として可能性のあるのはどれか.2つ選べ.
- CARD14
- IL36RN
- PTCH1
- NLRP1
- NLRP3
図7aでは躯幹の広い部位に紅斑を認め、図7bでは膿疱が混在していることがわかる。炎症所見が強く、発熱も認める。
図7cでは有棘層上層で好中球が大量に浸潤し、表皮細胞が破壊されることでコゴイ海綿状膿疱がみられる。
上記所見より膿疱性乾癬の診断
尋常性乾癬が先行する場合と先行しない場合があり、前者ではCARD14遺伝子の変異が、後者ではIL36RN遺伝子の変異が指摘されている
- 1. IL36RN:尋常性乾癬が先行しない膿疱性乾癬の原因遺伝子。DITRA(Deficiency of Interleukin 36 Receptor Antagonist)と呼ばれる
- 2. CARD14:尋常性乾癬が先行する膿疱性乾癬や、毛孔性紅色粃糠疹Ⅴ型の原因遺伝子
- 3. PTCH1:常染色体優性遺伝疾患であるGorlin症候群(基底細胞母斑症候群)の原因遺伝子
- 4. NLRP1:自己炎症性角化症である家族性keratosis lichenoides chronicaの原因遺伝子
- 5. NLRP3:自己炎症性疾患であるクリオピリン関連周期熱症候群の原因遺伝子
参考書籍:あたらしい皮膚科学第3版 p287(2)/403(3)/217(5), 皮膚科学 第10版 p370(2)/559(3)/170(5)
選択肢1・2の参考 マルホ皮膚科セミナー 膿疱性乾癬の病因と臨床
選択肢4の参考 マルホ皮膚科セミナー Autoinflammatory keratinization diseaseとしての膿疱性乾癬
関連問題
- 2021 選択23(毛孔性紅色粃糠疹の臨床問題)
- 2019年 記述3 (DITRAに含まれる疾患)
- 2014 選択10 (汎発性膿疱性乾癬で変異のみられる遺伝子)
選択問題19:解答 2
選択問題19
38歳の男性. 図8の皮膚所見で受診した. この患者で発症に気をつけるべき疾患はどれか.
- 膵炎
- 心筋梗塞
- 副鼻腔炎
- 間質性肺炎
- 関節リウマチ
図8では体幹部や四肢で落屑を付す大型の紅斑が多発しており乾癬を疑う。胸腹部からは肥満体型であることが推察される
乾癬は慢性の全身性炎症性疾患でメタボリックシンドロームとの関連が報告されており、動脈硬化性疾患である心筋梗塞の発症に注意が必要
本邦関節症性乾癬患者463名における併存症は高血圧21.2%、高脂血症16.0%、肥満11.2%、糖尿病11.2%、(中略)動脈硬化症・心筋梗塞1.5%で、メタボリック症候群の併存が多く認められた
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019 日皮会誌:129(13), 2675-2733, 2019のⅡ-10 併存症より引用
選択問題20:解答 5
選択問題20
生体内微量元素であり, かつスタンダードパッチテストシリーズ(JSA 2015)で陽性率が最も高い金属アレルゲンはどれか.
- 亜鉛
- スズ
- マンガン
- コバルト
- ニッケル
パッチテストでの陽性率
硫酸ニッケル(24.8%)>金チオ硫酸ナトリウム(23.2%)>ウルシオール(10.0%)>パラフェニレンジアミン(8.8%)>塩化コバルト(7.9%)…
なおニッケルと金は、女性での陽性率が男性より10%程度高い
よって選択肢ではニッケル>コバルト
亜鉛・スズ・マンガンはJSA 2015に含まれていない
参考:接触皮膚炎診療ガイドライン2020 日皮会誌:130(4), 523-567, 2020の表1より
選択問題21:解答 1, 2, 5
選択問題21
TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)が高値となる疾患はどれか. 3つ選べ.
- 菌状息肉症
- 丘疹紅皮症(太藤)
- 毛孔性紅色粃糠疹
- 中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis)
- 薬剤性過敏症症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome)
TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)
Th2細胞特異的に発現しているケモカイン受容体CCR4のリガンドであり、Th2細胞遊走に関わる
アレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎(病勢マーカーとして利用される)や気管支喘息の他、T細胞が活性化する腫瘍性病変やDIHSでも高値となる
健常成人での基準値は450pg/mL以下
- 1. 菌状息肉症:皮膚T細胞リンパ腫であり、とくに進行した腫瘤期ではTARC高値となる
- 2. 丘疹紅皮症(太藤):10症例の報告でTARCが高値を示す(7,526pg/mL以上)ことが報告されており、デュピルマブ(デュピクセント®)が有効という症例報告もある
- 3. 毛孔性紅色粃糠疹:TARC値が病勢を反映するという報告もあるが、893pg/mLと中程度の上昇
- 4・5. 中毒性表皮壊死症(TEN)・薬剤性過敏症症候群(DIHS):TARCはTENやStevens-Johnson症候群では中等度の上昇(2,000pg/mL)を示す
一方臨床像が似ることのあるDIHSでは著増(20,000pg/mL以上)するため、鑑別に用いられる
菌状息肉症では再発/難治例の治療として、TARCの受容体CCR4に対する抗体製剤であるモガムリズマブ(ポテリジオ®)が用いられる
TARCについて:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021 の2.10 診断や重症度の参考になるバイオマーカーより
選択肢1の参考:皮膚のリンパ腫とケモカイン 日本臨床免疫学会会誌 34巻2号 p91-98
- 選択肢2の参考:High serum thymus and activation regulated chemokine levels in papuloerythroderma of Ofuji. J Dermatol. 2017 Feb;44(2):214-215.
- 選択肢3の参考:血清TARC値を経時的に測定した毛孔性紅色粃糠疹の1例 皮膚科の臨床 56(8) 1131〜1134, 2014
選択肢4/5の参考:新・皮膚科セミナリウム ウイルス感染と薬疹 日皮会誌:125(8), 1581-1586, 2015
毛孔性紅色粃糠疹は論文内で「TARC値が治療とともに改善したため病勢の指標となる」と主張されているが、その他疾患と比べて相対的に低いため間違い選択肢と考えられる
選択問題22:解答 1, 2, 5
選択問題22
硬化性萎縮性苔癬について正しいのはどれか. 3つ選べ.
- 男児では包茎を呈することが多い.
- 女児では出血が目立つことが多い.
- 成人男性の好発部位は陰嚢である.
- 成人女性では肛門周囲の病変はまれである.
- 女性の外陰部では発症時期に, 初経前と閉経後の2つのピークがある.
硬化性萎縮性苔癬
主に外陰部で白色丘疹→局面をきたし、その後萎縮・皮膚硬化をきたす疾患
女性に圧倒的に多く、10歳以下と中年以降の二峰性に発症がみられる
外陰部に発生するものは有棘細胞癌をきたすことがある
- 1. 男児では包皮に発症し、包茎を呈することが多い
- 2. 女児の外陰部では出血が目立ち、性的虐待と間違われることがある
- 3. 成人男性では"陰茎(包皮・亀頭部)"に生じやすく、尿道口狭窄をきたしえる
- 4. 女性では大陰唇や陰核・肛門部にも後発し、数字の8型の分布がみられる
(男性では小児・成人とも肛囲の病変は稀) - 5. 女性外陰部の発症時期には初経前と閉経後の2つのピークがある
参考書籍:あたらしい皮膚科学第3版 p339(3・4・5), 皮膚科学 第10版 p471〜472(3・4・5)
参考:硬化性萎縮性苔癬 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン 日皮会誌:126(12), 2251-2257, 2016
選択問題23:解答 1
選択問題23
再発性単純疱疹に対するファムビル®のone-day treatmentについて誤っているのはどれか.
- 性器ヘルペスは適応外である.
- 1回1,000mgを2回内服する.
- 再発の初期症状を正確に判断可能な患者が適応となる.
- 同じ病型の再発頻度が年間3回以上の患者が適応となる.
- 初期症状発現から6時間以内に服用可能な場合のみ治療を開始できる.
one-day treatment (PIT:Patient Initiated Therapyとも)
ファムビル®を予め処方しておき、自覚症状が出た際6時間以内に1回目を内服し、その後12時間後に2回目を内服して治療終了とする方法。1回あたり1,000mgを内服する
抗ウイルス薬の早期内服により、単純ヘルペスウイルスの増殖抑制効果が期待できる
単純疱疹の同じ病型で再発を年3回以上繰り返す患者で適応がある
- 1. 性器ヘルペス・口唇ヘルペスが適応
- 2. 1回1,000mgを2回内服する
- 3. 再発の初期症状(患部の違和感、灼熱感、そう痒等)を正確に判断可能な患者が対象となる
- 4. 同じ病型の再発頻度が年3回以上ある患者が適応
- 5. 初期症状発現から6時間以上経過した場合、有効性を裏付けるデータがない。2回目は12時間後が原則だが、許容範囲として6〜18時間後
選択問題24:解答 2, 4
選択問題24
次の中で, RNAウイルスによって生じる疾患はどれか. 2つ選べ.
- 水痘
- 手足口病
- 尋常性疣贅
- COVID-19
- 伝染性軟属腫
RNAウイルス
DNAウイルスと比べて不安定でかつ複製時のエラー修復機構が乏しいため、変異をきたしやすい
→一度罹ってもまた感染する(≒毎年流行する)&薬剤耐性化が生じやすい
例:インフルエンザウイルス、かぜ症候群の原因ウイルス(ライノウイルス・コロナウイルス)、HIV
なおDNAウイルスの代表例として、ヒトヘルペスウイルスやヒトパピローマウイルス(HPV)がある
- 1. 水痘:ヘルペスウイルス(DNAウイルス)の一つであるHHV-3(VZV)が原因
- 2. 手足口病:RNAウイルスであるエンテロウイルス(71)やコクサッキーウイルス(A16)が原因
- 3. 尋常性疣贅:DNAウイルスであるHPV(2・27・57)が原因
- 4. COVID-19:RNAウイルスであるSARS-CoV-2が原因、流行から数年で多数の変異株が生じている
- 5. 伝染性軟属腫(みずいぼ):DNAウイルスである伝染性軟属腫ウイルスが原因
参考書籍:あたらしい皮膚科学第3版 490(1)/506(2)/494(3)/499(5), 皮膚科学 第10版 p758(1)/782(2)/770(3)/767(5)
選択問題25:解答 2
選択問題25
32歳の女性. 10年以上前から, 年に3〜5回, 左膝蓋に軽度の痛みとかゆみを伴う水疱, 丘疹の集簇病変が出現するのに気づき, 症状が出現した時に撮った写真(図9)を持参して受診した. 受診時には皮疹はなかった. 以下は指導医と研修医の会話である.
指導医:単純ヘルペス感染症が疑われるが,典型的でないのは何かな.
研修医 1:ひざは好発部位ではないので,出現部位は非典型的です.
指導医:発疹がないけれども,診断はどうすればよいかな.
研修医 2:血清中和抗体価を測定して診断します.
研修医 3:中和抗体の測定ではなく,発症時と治癒してから2回IgGとIgMを測定して診断します.
指導医:今度,症状が出現したらどうすればよいかな.
研修医 4:症状が現れたらすぐに受診していただいて,プライムチェック HSV が保険収載されているので,発疹部から抗原を検出します.
指導医:単純ヘルペス感染症だと,この患者さんの治療はどうすればいいかな.
研修医 5:たびたび膝に再発し患者さんの QOL が低下しているので,保険適用になっているバルトレックス 500 mg/日の連日経口投与を行います.
正しい発言をした研修医の数は何人か.
- 0人
- 1人
- 2人
- 3人
- 4人
年3〜5回同一部位で紅暈を伴う小水疱がみられ、再発を繰り返す単純ヘルペスを考える
単純ヘルペスの血清抗体検査
- 中和抗体法(NT):血清と感染ウイルスを反応させ、中和抗体によって感染力がどの程度低下するかをみる。感染後長期間検出可能で、感度特異度が高い
- ELISA(酵素免疫測定法):プレートに抗原を固定させ、抗原に対する抗体(酵素で標識する)を加えて反応をみる。感度が高く、IgM/IgGなどクラス別の測定が可能
- 研修医1:○ 単純疱疹の好発部位は口唇や陰部、手指のため好発部位ではない
- 研修医2:✗ 中和抗体は感染後長期間検出されるため、既感染の証明になるが根拠としてはやや弱い。初感染であれば、罹患時と治癒後で抗体価を比較することで診断補助になる
- 研修医3:✗ 既感染ではIgG高値となるが、再燃時にペア血清を測定しても診断には結びつかない。初感染であれば、発症時はIgM抗体上昇/IgG抗体なし→治癒後はIgG抗体上昇となる
- 研修医4:✗ プライムチェックHSVは性器ヘルペスのみに保険収載されている
- 研修医5:✗ バルトレックスの連日内服は年6回以上再発を繰り返す"性器ヘルペス"に保険適用がある
※研修医3については微妙で、IgMは再発でも上昇すると記載されていることもある。ただ日本皮膚科学会の公式HPで下記の記載があるので、間違い選択肢と判断した
ヘルペスと帯状疱疹 Q8 血清学的診断は役に立ちますか?
初感染の場合にのみ有用で、ペア血清で抗体価の上昇がみられます。しかし、再発の場合、抗体価の変動は必ずしもみられるわけではありません。
(強調部は筆者)
追記:2022年度東京支部講習会(2022/11/20開催)において本問の類似問題解説で、「再発時には抗体検査は基本的に役に立たない」とコメントあり。やはり上記解釈で良いものと思われる
本症例の場合確定診断したければ、症状出現時に病変部からウイルスを検出する(Tzanck試験)が妥当だろう
単純ヘルペスの検査について:3.単純疱疹の検査・診断法 | マルホ 医療関係者向けサイト (会員登録不要)
選択肢4の参考:プライムチェックHSV(単純ヘルペス) 添付文書
選択肢5の参考:バルトレックス 添付文書
選択問題26:解答 3
選択問題26
ステロイド内服前のB 型肝炎のスクリーニングでHBs抗原陰性・HBs抗体陽性・HBc抗体陽性であった. de novo B 型肝炎の発症予防のためにまず行うべき検査はどれか.
- HBe抗原
- HBe抗体
- HBV DNA定量
- 腹部エコー
- 腹部CT
HBs抗原陰性であることから現在活動性のB型肝炎はないが、HBs抗体およびHBc抗体が陽性なことからB型肝炎既感染者であることがわかる*
ステロイド内服等の免疫抑制療法に伴い、再活性化によるde novo B型肝炎をきたすことがあるため、HBV-DNAを測定してフォローする
下図では赤で囲った部分に該当
*ワクチン接種はHBs抗体のみ陽性となるため除外される

免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン
図引用:B型肝炎治療ガイドライン|日本肝臓学会ガイドライン|ガイドライン・診療情報|医療関係のみなさま|一般社団法人 日本肝臓学会 資料3
B型肝炎と各種抗原・抗体
B型肝炎とHBs抗原・抗体 | HBs抗体 | |
HBs抗原 | 陰性:現在B型肝炎ではない | 陰性:未感染 and 未ワクチン接種 |
陽性:既感染 or ワクチン接種済 | ||
陽性:現在B型肝炎あり | 陰性のみ |
- HBe抗原/HBe抗体:抗原陽性(抗体陰性)であれば活動性が高いことを示唆する
- HBc抗体:陽性は既感染を意味する(ワクチンではつかないため)。なおHBc抗原は内部(core)に存在するため一般には測定できない
選択問題27:解答 1, 2
選択問題27
アトピー性皮膚炎に対しデュピルマブ投与中の患者がワクチン接種を希望した. デュピルマブの休薬が必要なワクチンはどれか. 2 つ選べ.
- 黄熱ワクチン
- 風疹ワクチン
- A型肝炎ワクチン
- B型肝炎ワクチン
- インフルエンザワクチン
デュピルマブ投与中、生ワクチンの接種は避けることが望ましいとされている
選択肢の中では1. 黄熱ワクチンと2. 風疹ワクチンが生ワクチン
- 3. A型肝炎ワクチン:不活化ワクチン
- 4. B型肝炎ワクチン:不活化ワクチン
- 5. インフルエンザワクチン:不活化ワクチン
ワクチン(予防接種)の種類と分類
主なワクチン | 定期接種 | 任意接種 |
生ワクチン |
|
|
不活化ワクチン |
|
|
関連問題
- 2015 選択24 (ワクチン株ウイルスによる発疹をきたすワクチン)
- 2014 選択13 / 2011 選択14 (生物学的製剤投与とワクチン)
選択問題28:3
選択問題28
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)と関連する疾患で, 正しい組み合わせはどれか.
- HPV1-扁平疣贅
- HPV3-ミルメシア
- HPV5-疣贅状表皮発育異常症
- HPV16-足底類表皮嚢腫
- HPV60-爪Bowen病
- 1. HPV1はミルメシアの原因となる
- 2. HPV3は扁平疣贅の原因となる
- 3. HPV5は疣贅状表皮発育異常症の原因となる
- 4. HPV16は爪Bowen病やBowen様丘疹症の原因となる
- 5. HPV60は足底類表皮嚢腫の原因となる
ヒトパピローマウイルス(HPV)と皮膚疾患
HPVの型 | 臨床症状 |
1 | ミルメシア |
2, 4, 7, 27, 57 | 尋常性疣贅 |
3, 10, 28, 29, 94 | 扁平疣贅 |
16 | Bowen様丘疹症, 爪Bowen病 |
5, 8 | 疣贅状表皮発育異常症 |
57, 60 | 足底類表皮嚢腫 |
63 | 点状疣贅 |
6, 11 | 尖圭コンジローマ |
参考書籍:あたらしい皮膚科学第3版 494, 皮膚科学 第10版 p770
関連問題(HPVと関連疾患)
- 2013 選択24 (HPVの型と関連疾患)
- 2015 選択20 / 2010 選択66 (扁平疣贅:HPV-3)
- 2016 記述5 / 2012 選択18 / 2009 選択20 (Bowen様丘疹症:HPV-16)
- 2009 選択20 (爪部Bowen病:HPV-16)
- 2009 選択21 (疣贅状表皮発育異常症:HPV-5)
選択問題29:1, 2, 4
選択問題29
45歳, 主婦の女性. 数週前から左第3指間に皮疹が出現, 白色に浸軟し, 一部に膜様鱗屑を付着している. 検鏡で真菌陽性. 有効と考えられる外用剤はどれか. 3つ選べ.
- ルリコン®クリーム
- アトラント®クリーム
- ゼフナート®クリーム
- ニゾラール®クリーム
- メンタックス®クリーム
第3指間(最も狭い)で浸軟・鱗屑を伴い、鏡検陽性からカンジダ性指間びらんを考える
皮膚カンジダ症に対して有効な抗真菌薬を選択する:1.ルリコン®・2.アトラント®・4.ニゾラール®
5.メンタックス®と3.ゼフナート®は白癬には有効だが、皮膚カンジダ症に対しては用いない
皮膚カンジダ症に対して使用される抗真菌外用薬
系統 | 一般名 | 商品名 |
イミダゾール | ケトコナゾール | ニゾラール® |
ネチコナゾール | アトラント® | |
ルリコナゾール | ルリコン® | |
ラノコナゾール | アスタット® | |
ビホナゾール | マイコスポール® | |
クロトリマゾール | エンペシド® | |
ミコナゾール | フロリードD® | |
モルホリン | アモロルフィン | ペキロン® |
アリルアミン | テルビナフィン | ラミシール® |
※よく採用されているもののみ抜粋、青文字は白癬と共通
白癬に対して使用される抗真菌外用薬
系統 | 一般名 | 商品名 |
イミダゾール | ケトコナゾール | ニゾラール® |
ネチコナゾール | アトラント® | |
ルリコナゾール | ルリコン® | |
ラノコナゾール | アスタット® | |
ビホナゾール | マイコスポール® | |
モルホリン | アモロルフィン | ペキロン® |
アリルアミン | テルビナフィン | ラミシール® |
ベンジルアミン | ブテナフィン | メンタックス®, ボレー® |
チオカルバミン酸 | リラナフタート | ゼフナート® |
※よく採用されているもののみ抜粋、青文字は皮膚カンジダ症と共通
現実的には採用枠が限られている以上両者に有効なものの採用率が高いわけで、そこから類推するのが良いだろう
参考:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019 日皮会誌:129(13), 2639-2673, 2019 表3・表4より
関連:2021 選択34(カンジダ症に保険適用のある外用薬:一般名), 2018 選択26(イミダゾール系抗真菌薬)
選択問題30:解答 2
選択問題30
爪白癬治療薬のうちアリルアミン系抗真菌薬はどれか.
- ネイリン®
- ラミシール®
- イトリゾール®
- ルコナック®爪外用液
- クレナフィン®爪外用液
アリルアミン系抗真菌薬に該当するのはラミシール®(テルビナフィン)のみ
- 1. ネイリン®はトリアゾール系
- 3. イトリゾール®はトリアゾール系
- 4. ルコナック®はイミダゾール系
- 5. クレナフィン®はトリアゾール系
爪白癬治療薬の分類
系統 | 一般名 | 商品名 |
トリアゾール | ホスラブコナゾール | ネイリン® |
イトラコナゾール | イトリゾール® | |
エフィコナゾール | クレナフィン®爪外用液 | |
アリルアミン | テルビナフィン | ラミシール® |
イミダゾール | ルリコナゾール | ルコナック®爪外用液 |
関連問題