日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成29(2017)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会 (問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
※本記事で参考にしたのは皮膚科学 第10版ですが、11版が出ているので上記リンクは新版です
見出し
- 1 平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜25
- 1.1 選択問題1:解答 3
- 1.2 選択問題2:解答 2, 5
- 1.3 選択問題3:解答 3, 5
- 1.4 選択問題4:解答 5
- 1.5 選択問題5:解答 3
- 1.6 選択問題6:解答 3, 4, 5
- 1.7 選択問題7:解答 2
- 1.8 選択問題8:解答 1, 3, 4
- 1.9 選択問題9:4
- 1.10 選択問題10:解答 3
- 1.11 選択問題11:解答 1
- 1.12 選択問題12:1
- 1.13 選択問題13:解答 1, 4
- 1.14 選択問題14:解答 2
- 1.15 選択問題15:3
- 1.16 選択問題16:解答 3, 5
- 1.17 選択問題17:解答 4
- 1.18 選択問題18:解答 3, 5
- 1.19 選択問題19:解答 4
- 1.20 選択問題20:解答 4
- 1.21 選択問題21:解答 1, 3, 5
- 1.22 選択問題22:解答 3
- 1.23 選択問題23:解答 4
- 1.24 選択問題24:解答 2, 3, 4
- 1.25 選択問題25:解答 4
平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜25
選択問題1:解答 3
局所多汗症の診断基準を問う問題
6ヶ月以上過剰発汗が持続することが診断上必要→3
局所多汗症の診断基準
局所的な過剰発汗が6ヶ月以上持続し、下記6症状のうち2項目以上あてはまる場合
(明らかな原因がないことも必要)
- 最初に症状がでるのが25歳以下であること
- 対称性に発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
- 家族歴がみられること
- それらによって日常生活に支障をきたすこと
関連問題
選択問題2:解答 2, 5
多汗症治療に用いられるボツリヌス菌毒素についての問題
多汗症とボツリヌス菌毒素
A型ボツリヌス毒素(ボトックス®:グラクソ・スミスクライン)が重症腋窩多汗症に対して保険適用となっている
その他部位に関しては自費診療のみ
- 1. 多汗症で用いられるのは持続期間の長い"A型"毒素。B型毒素(ナーブロック®)は痙性斜頸に用いられる
- 2. ボツリヌス毒素は神経筋接合部のアセチルコリン受容体に作用し、その放出を抑制する
- 3. 掌蹠多汗症には保険適用がない
- 4. “重度の”腋窩多汗症に保険適用がある
- 5. 眉間・目尻の表情ジワにもA型毒素が用いられる
ただし商品名は異なる(ボトックスビスタ®:アラガン・ジャパン)
なおボツリヌス毒素は近年、強皮症に伴うRaynaud現象・手指潰瘍に対しても有効という報告がある
- 選択肢2の参考:ボツリヌス治療の分子メカニズム 臨床神経 2012;52:1270-1271
- その他選択肢の参考:原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015 年改訂版 日皮会誌:125(7), 1379-1400, 2015のp1391-1393
関連問題:
選択問題3:解答 3, 5
円形脱毛症治療で推奨度Bの治療を問う問題
ステロイド局注および局所免疫療法→3, 5
- 1. 光線(紫外線)療法:C1*
- 2. ステロイド内服:C1*
- 3. ステロイド局注:B*
- 4. ステロイドパルス:C1*
- 5. 局所免疫療法(SADBE):B
*小児には原則行わない
円形脱毛症診療ガイドラインは2017年版に更新されているが、本問選択肢の推奨度はいずれも変更されていない(ステロイド外用とかつらはC1→B)
関連問題
選択問題4:解答 5
若年女性で頬部〜下顎部にかけて紅色丘疹と面皰がみられ、尋常性痤瘡の炎症性皮疹
炎症性皮疹には、クリンダマイシン1%/過酸化ベンゾイル3%配合ゲル(デュアック®)が適当→5
尋常性痤瘡 急性炎症期の治療
尋常性痤瘡治療ガイドライン2017で、炎症性皮疹に対して強く推奨(推奨度A)されている治療は下記
尋常性痤瘡 推奨度A | 一般名 | 商品名 |
外用 | クリンダマイシン1%/過酸化ベンゾイル3%配合ゲル | デュアック® |
アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲル (+内服抗菌薬も可) |
エピデュオ® | |
アダパレン0.1%ゲル (+外用*/内服抗菌薬も可) |
ディフェリン® | |
過酸化ベンゾイル2.5%ゲル | ベピオ® | |
外用抗菌薬* | ||
内服 | ドキシサイクリン | ビブラマイシン® |
ミノサイクリン※ | ミノマイシン® |
※ミノサイクリンは推奨度Aではなく、A*(めまいやふらつきの副作用があるため)
*外用抗真菌薬は3種類ある
一般名 | 商品名 |
クリンダマイシン | ダラシン® |
ナジフロキサシン | アクアチム® |
オゼノキサシン | ゼビアックス® |
- 1. 低容量ピル内服:推奨度C2 他の治療で改善不十分な場合
- 2. 十味敗毒湯:推奨度C1 炎症性皮疹に対し、他の治療法が無効な場合
- 3. ファロペネム内服:推奨度B
- 4. ケトコナゾール外用:推奨なし(マラセチア毛包炎で使用される)
- 5. デュアック®は推奨度A
関連:2019 選択6(尋常性ざ瘡の内服抗菌薬で推奨度Aのもの), 2018 選択9(面皰に対して有効な治療)
選択問題5:解答 3
画像から毛髪異常を答える問題
膨大部と狭窄部が交互に生じており、連珠毛の所見→3
- 1. 縮毛:毛髪のちぢれた状態。毛髪症状のみを呈する非症候性(LIPHやLPAR6遺伝子変異によるAR)と、掌蹠角化症や拡張型心筋症を合併する症候性(JUP遺伝子-Naxos病・DSP遺伝子-Carvajal症候群)がある
- 2. 捻転毛:毛幹が捻転し、太細の状態が交互する。外胚葉形成不全症でみられ、口唇口蓋裂や感音性難聴を合併する
- 3. 連珠毛:紡錘状膨大部と狭窄部が交互に生じる。AD(KRT81/83/86遺伝子変異)とAR(DSG4遺伝子変異)がある
- 4. 結節性裂毛:毛髪のところどころに球状の灰白色小結節が生じる。Netherton症候群などでみられる非特異的な所見
- 5. 陥入性裂毛(bamboo hair):毛幹で竹の節様の結節を形成する。Netherton症候群でみられ、魚鱗癬を合併する
※AR:常染色体劣性遺伝, AD:常染色体優性
- 参考・図引用:皮膚科学 第10版 p728-730
- 参考(図4が本問と同一):新・皮膚科セミナリウム 毛髪角化異常症の病態と診断 日皮会誌:126(12), 2269-2274, 2016
関連問題
- 2010 選択55 (結節性裂毛の臨床像・電子顕微鏡写真)
選択問題6:解答 3, 4, 5
男性型脱毛症(AGA)の内服治療に関する問題
男性型脱毛症(AGA) 内服治療
男性ホルモン、とくにアンドロゲンが5-αリダクターゼによって代謝されて生じるDHT(ジヒドロテストステロン)がレセプターと結合することが原因
→治療として、5-αリダクターゼ阻害薬が用いられる
Ⅰ型とⅡ型の2つがあり、薬剤によって阻害部位が異なる
作用点 | 一般名 | 商品名 |
5-αリダクターゼⅡ型 | フィナステリド | プロペシア® |
5-αリダクターゼⅠ型+Ⅱ型 | デュタステリド | ザガーロ® |
共通点
- 後発品あり
- 男性ホルモン抑制により血清PSA値が低下(1/2)→前立腺癌スクリーニングで注意
- 女性型脱毛症には無効
- 1. フィナステリド・デュタステリドいずれも自費診療であり、薬価収載されていない
- 2. フィナステリド・デュタステリド内服により血清PSAが1/2程度となる(=スクリーニングで前立腺癌が見逃される恐れがある)
男性ホルモンを減少させるため、前立腺癌を減らす(ただしホルモン不応性の悪性度が高いものは増える)とされる - 3. デュタステリドはDHTの低下により男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼす恐れがあり、女性・小児で禁忌となっている
- 4. デュタステリドはⅠ型・Ⅱ型双方を阻害する
- 5. デュタステリド・フィナステリドともにDHT産生を抑制する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p371(4・5)
- 参考:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版 日皮会誌:127(13), 2763-2777, 2017
選択肢3の補足:フィナステリドに関しては添付文書上、女性全般が「禁忌である」とは明言されていない。(妊婦および妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性が禁忌)。
しかしガイドラインで推奨D(行うべきではない)でありその他の選択肢が明確に間違いのため、相対的に正解選択肢(女性全般に禁忌)と考える
なおデュタステリドは添付文書上も女性全般が禁忌となっている
関連問題
- 2020 選択88 (5-α還元酵素阻害剤の作用機序)
- 2022 選択21 / 2018 選択4 / 2011 選択4 (男性型脱毛症の治療推奨度)
- 2019 選択5 / 2015 選択5 / 2010 選択3 (フィナステリドについて)
選択問題7:解答 2
エキシマランプの波長は308±2nm→2
UVBの波長は280〜315nmだが、その中でも有用性が高く副作用の少ない308〜313nmの波長が好んで用いられる
- 308±2nm:エキシマランプ
- 311±2nm:ナローバンドUVB
また保険点数でも別扱いとなる
- 長波紫外線又は中波紫外線療法(概ね290nm以上315nm以下のもの):150点
- 中波紫外線療法(308nm以上313nm以下に限定したもの):340点
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p108
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p127
- 診療報酬点数の参考:J054 皮膚科光線療法(1日につき) | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
関連問題
- 2023 選択69 (Wood灯の波長)
- 2020 選択5(紫外線波長の単位)
選択問題8:解答 1, 3, 4
光線過敏症をきたしやすい降圧薬を問う問題
ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系)が原因となりやすい
単体ではほぼ用いられなくなっていたが、ARBとの配合剤として利用頻度が増え光線過敏症の報告も再燃している
選択肢では1, 3, 4がヒドロクロロチアジドを含む
- 1. エカード®:ARB(カンデサルタン)+サイアザイド(ヒドロクロロチアジド)
- 2. ミカムロ®:ARB( テルミサルタン)+Caブロッカー(アムロジピン)
- 3. ミコンビ®:ARB(テルミサルタン)+サイアザイド(ヒドロクロロチアジド)
- 4. プレミネント®:ARB(ロサルタン)+サイアザイド(ヒドロクロロチアジド)
- 5. エックスフォージ®:ARB(バルサルタン)+Caブロッカー(アムロジピン)
なお選択肢以外にヒドロクロロチアジドとの配合剤はコディオ®(バルサルタン)がある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p230
- 参考:皮膚科セミナリウム 薬剤性光線過敏症 日皮会誌:120(6), 1165―1170, 2010
- 参考:配合降圧剤による光線過敏症 臨床皮膚科65(5 増), p15-19, 2011
あたらしい皮膚科学の参考文献は2003年であり、(配合錠がまだ発売されていない時期なので)ヒドロクロロチアジドが多くないことになっている。「3つ」という条件からも、ヒドロクロロチアジドが含有されるものを選択するのが本問では妥当と考える
選択問題9:4
多形日光疹と慢性光線性皮膚炎の違いを問う問題
双方とも内因性光線過敏症→4
相違点も多い
好発年齢・性別 | 部位 | 皮疹 | MED/MRD | |
慢性光線性皮膚炎 | 中年以上の男性 | 頚部 | 苔癬化局面 | 著明に低下/低下することがある |
多形日光疹 | 10〜20歳代の女性 | 前腕 | 丘疹 | いずれも正常 |
- 1・2. 慢性光線性皮膚炎は高齢男性に、多形日光疹は若年女性に好発する
- 3. 抗核抗体はいずれも陽性とならない。SLEでは抗核抗体陽性であり、光線過敏がみられる
- 4. いずれも内因性光線過敏症↔外因性光線過敏症:薬剤によるもの、光パッチテストで診断する
- 5. 慢性光線性皮膚炎ではUVBのMED低下がみられ可視光線過敏を示す例もあるが、多形日光疹ではUVA/UVBのMED/MRDはいずれも正常。日光蕁麻疹では可視光線が原因波長となることが多い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p233(1・2・5)/230(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p267(1・2・4・5)
関連問題
選択問題10:解答 3
ケラチンの種類と発現部位を問う問題
K3/K12は角膜上皮細胞に発現する→3
ケラチンの発現部位と関連する先天性皮膚疾患については下記
-
ケラチン 発現部位と先天性皮膚疾患 まとめ
続きを見る
- 1. K1/K9:掌蹠の有棘細胞(変異でVorner掌蹠角化症)
- 2. K1/K10:有棘細胞(変異で表皮融解性魚鱗癬)
- 3. K3/12:角膜上皮細胞(変異でMeesmann角膜ジストロフィ)
- 4. K4/13:粘膜(変異で白色海綿状母斑)
- 5. K5/14:基底細胞(変異で単純型表皮水疱症)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p11
関連:ケラチン発現部位は頻出, 上記カード内の記事参照
選択問題11:解答 1
角層細胞から細胞間脂質への順番は
フィラグリン→ロリクリン→インボルクリン→セラミド:1
- フィラグリン:顆粒細胞内のケラトヒアリン顆粒にあるプロフィラグリンが分解されてフィラグリンとなり、角質細胞ではケラチンと結合する(ケラチンパターン)
皮膚の保湿・紫外線吸収に関与する - 周辺帯:ロリクリン・インボルクリンから構成され、トランスグルタミナーゼにより架橋される物理的・化学的に強靭な皮膚バリア
ロリクリンは顆粒細胞で、インボルクリンは有棘細胞で作られる(が存在するのはインボルクリンが最外層) - セラミド:層板顆粒から分泌される細胞間脂質で角層細胞の間に存在し、水分の漏出・蒸散を防ぐ
分泌にはABCA12という酵素が関わり、同部位の変異で道化師様魚鱗癬を発症する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8-10
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p11-13
関連問題
- 2021 選択10(フィラグリンの働き)
- 2019 選択15 / 2016 選択9 / 2013 選択11 / 2011 選択8 (周辺帯の構成成分)
- 2015 選択77 (ケラチンパターンに関与する分子)
選択問題12:1
健常成人血中で濃度が高いIgGを問う問題
ヒトのIgGにはIgG1〜4があり、健常成人ではIgG1が最も多くIgG4へ向かって少なくなっていく→4
- 1. IgG1:65%
- 2. IgG2:23%
- 3. IgG3:8%
- 4. IgG4:4%
IgG4関連疾患では高IgG4血症(135mg/dL以上)や組織でのIgG4/IgG陽性細胞比が40%以上が診断に重要
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 日皮会誌:126(8), 1445-1451, 2016の表4(p1450)
関連問題
選択問題13:解答 1, 4
HIV-1の受容体を問う問題
コレセプターとして働くのはCCR5およびCXCR4→1, 4
HIV-1 感染メカニズム
HIVウイルスが発現しているgp120と、CD4陽性細胞とが結合することでウイルスの侵入が生じる
この際にCCR5やCXCR4といったコレセプターが必要になり、CCR5はマクロファージ/CXCR4はT細胞に発現→これらの細胞に感染
- 1. CCR5:マクロファージで発現する。CCR5陽性率が高い場合に利用可能なHIV治療薬に、CCR5阻害薬 マラビロク(シーエルセントリ®)がある
- 2. CD8:細胞傷害性T細胞で発現する
- 3. CD25:免疫反応抑制に関わる制御性T細胞で発現する。抗体製剤であるバシリキシマブ(シムレクト®)は、腎移植後の急性拒絶反応の抑制に用いられる
- 4. CXCR4:T細胞で発現する
- 5. CXCR7:CXCL11やCXCL12の受容体で、心臓や血管の発達、乳癌・腎細胞癌の転移などに関わる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p511(1・4)/31(2・3)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p79(2・3)
- コレセプター・治療薬の参考:抗HIV治療薬 ウイルス 第63巻 第2号, p199-208, 2013
- 選択肢5の参考:CXCR7 - an overview | ScienceDirect Topics
選択問題14:解答 2
リンパ球(Th2細胞)の遊走に関わるケモカイン受容体はCCR4で、皮膚T細胞性リンパ腫で高率に発現している
皮膚T細胞リンパ腫の治療に、CCR4阻害薬であるモガムリズマブ(ポテリジオ®)が利用される→2
なおこの受容体のリガンドはTARC(CCL17)で、アトピー性皮膚炎のほかT細胞リンパ腫や丘疹紅皮症(太藤)で高値となる
- 1. CCR2:未熟樹状細胞や好塩基球で発現し、単球/マクロファージの遊走に関わる
- 2. CCR4:リンパ球(Th2細胞)で発現し、TARCの刺激を受けて皮膚へ遊走する
- 3. CCR5:CD4と共にマクロファージなどの抗原提示細胞で発現しており、HIV-1の細胞侵入に関わる(問題13参照)
- 4. CCR7:成熟樹状細胞やT細胞で発現しており、腫瘍細胞のリンパ節転移や浸潤に関わる
- 5. CCR9:胸腺細胞やT細胞で発現しており、腸管免疫に関わる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p101(2)
- 参考:ケモカイン受容体とリンパ球サブセットの遊走 血栓止血誌 2019; 30(4):610-618
関連問題
- 2023 選択4 / 2016 選択77 / 2015 選択63 / 2011 選択87 (モガムリズマブの適応など)
- 2020 選択21 (TARC高値となる疾患)
選択問題15:3
Netherton症候群の皮膚症状を問う問題
渦巻状色素沈着は色素失調症の所見→3
Netherton症候群
セリンプロテアーゼインヒビター(LEKTI)をコードするSPINK5遺伝子変異により発症する魚鱗癬症候群(常染色体劣性遺伝)
症状としては下記が3徴
- アトピー性皮膚炎様皮疹
- 曲折線状魚鱗癬(紅斑の辺縁に二重の鱗屑が付着)や先天性魚鱗癬様紅皮症様皮疹
- 陥入性裂毛/結節性裂毛
その他精神発達遅滞やてんかんをきたすこともある
- 1. 陥入性裂毛:毛幹で竹の節様の結節を形成する所見で、Netherton症候群に特徴的
- 2. 紅斑の辺縁に二重の鱗屑をつける特徴的な所見
- 3. 渦巻き状色素沈着:色素失調症の第3期(疣贅期の後)でみられる所見。この後色素消退期となる
- 4・5:鱗屑に加えて紅斑・炎症が強くみられる所見
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(1・2・4・5)/398(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p337(1・2・4・5)/561(3)
関連問題(Netherton症候群)
- 2021 選択91 (セリンプロテアーゼインヒビターの異常による疾患)
- 2020 選択15 / 2010 選択55 (曲折線状魚鱗癬・結節性裂毛の写真)
- 2019 記述2 / 2016 選択6 / 2010 選択4 (症状)
選択問題16:解答 3, 5
角質層の剥離をきたす魚鱗癬症候群の原因分子はコルネオデスモシンおよびセリンプロテアーゼインヒビター(LEKTI)→3, 5
- 1. ロリクリン:インボルクリンと共に周辺帯を形成する蛋白で、異常でロリクリン角皮症を発症する
- 2. フィラグリン:顆粒層のケラトヒアリン顆粒に含まれるプロフィラグリンが分解されて生じ、さらに分解されてアミノ酸として保湿・紫外線吸収などの働きを持つ。異常で尋常性魚鱗癬を発症する
- 3. コルネオデスモシン:角層細胞同士を結合する分子であり、デスモグレイン1/3とともにコルネオデスモソーム*を形成する。これをコードするCDSN遺伝子の異常で炎症性Peeling skin病を発症する
- 4. トランスグルタミナーゼ1:周辺帯形成に関わる酵素で、異常により葉状魚鱗癬を発症する
- 5. LEKTI:角層細胞の剥離に関わる酵素カリクレイン(KLK)のインヒビターで、Netherton症候群ではLETKIが機能せずKLK作用が増強する→角層が剥離する
*コルネオデスモソーム:有棘細胞間を結合するデスモソームが変化したもので、角層下層での細胞間接着を担う
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p10(3・5)/8・274(1)/269(2)/271(4)/275(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p11・342(1)/11・329(2)/339(3)/334(4)/337(5)
- 選択肢3・5の参考:新・皮膚科セミナリウム デスモソーム・コルネオデスモソームと遺伝性角化異常症 日皮会誌:126(12), 2259-2267, 2016
関連問題
- 2023 選択48 (コルネオデスモソームの発現部位)
- 2021 選択20 (角化異常症と原因分子)
- 2021 選択91 (セリンプロテアーゼインヒビターの先天異常による疾患)
- 2020 選択10 (炎症性ピーリングスキン病の臨床問題)
選択問題17:解答 4
出生時より掌蹠を含む全身で過角化・びらん・紅斑がみられ、組織学的に顆粒変性がみられる
顆粒変性をきたすのは水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症→4
顆粒変性
表皮の顆粒層〜有棘層にかけて、大型のケラトヒアリン顆粒をもつ空胞化細胞が出現する状態
ケラチンの先天的異常をきたす疾患でみられ、魚鱗癬2つは診断基準でも参考症状に含まれている
原因遺伝子 | 疾患 |
ケラチン9 | Vörner型掌蹠角化症 |
ケラチン1/10 | 表皮融解性魚鱗癬 (水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症) |
ケラチン2e* | 表在性表皮融解性魚鱗癬 (Siemens型水疱性魚鱗癬) |
ケラチン1/10 ※体細胞モザイク |
疣贅状表皮母斑 |
*顆粒層で発現するため、顆粒変性も有棘層上層〜顆粒層に限局的
- 1. 尋常性魚鱗癬:皮膚の角化と落屑のみで紅斑を伴わない。組織学的には顆粒層の菲薄化がみられる
- 2. 表在性表皮融解性魚鱗癬(Simens型):臨床症状は4に類似するが軽症で、組織学的に有棘層上層と顆粒層に限局した顆粒変性がみられる
- 3. Papillon-Lefèvre症候群:掌蹠角化症の一つで、手掌足蹠のびまん性角化と歯牙異常がみられる。カテプシンC遺伝子変異が原因
- 4. 表皮融解性魚鱗癬(水疱型先天性魚鱗癬紅皮症):びまん性の潮紅や刺激部の水疱形成をきたし、組織学的に顆粒層~有棘層で顆粒変性がみられる
- 5. 先天性魚鱗癬様紅皮症(非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症):組織学的に角質肥厚がみられるが顆粒変性は伴わない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p273(2・4)/269(1)/279(3)/271(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p332(4)/329(1)/333(2)/343(3)/334(5)
関連問題
- 2023 記述11 (顆粒変性の病理)
- 2021 選択13 / 2021 選択21 / 2014 選択9 / 2011 選択12 (顆粒変性をきたす疾患)
- 2022 選択77 / 2018 選択16 / 2013 選択64 (顆粒変性を伴う掌蹠角化症)
- 2016 選択10(尋常性魚鱗癬の病理)
選択問題18:解答 3, 5
光沢苔癬に関する問題
光沢苔癬
小児〜若年男性に多く生じ、掻痒感を伴わない光沢を伴う小丘疹がみられる
- 特徴:ケブネル現象を伴うことが多い
- 組織像:Langhans型巨細胞がみられる
- 経過・治療:自然治癒傾向あり。掻痒感があればステロイド外用薬
- 1. 掻痒感などの自覚症状は通常伴わない
- 2. 若年者に好発するため、高齢者には多くない
- 3. 50%でケブネル現象を伴う
- 4. 数ヶ月〜数年で自然治癒する
- 5. 組織像は扁平苔癬に類似した表皮基底膜部の液状変性に加えて、Langhans型巨細胞が特徴
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p294
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p378
関連問題
選択問題19:解答 4
汎発性膿疱性乾癬の症状を問う問題
低カルシウム血症がみられる→4
汎発性膿疱性乾癬 診断基準
汎発性膿疱性乾癬の主要項目
- 発熱あるいは全身倦怠感等の全身症状を伴う
- 全身または広範囲の潮紅皮膚面に無菌性膿疱が多発し、ときに融合し膿海を形成する
- 病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明する
- 以上の臨床的、組織学的所見を繰り返し生じること。ただし、初発の場合には臨床経過から下記の疾患*を除外できること。
*尋常性乾癬が明らかに先行し、副腎皮質ホルモン剤等の治療で一過性に膿疱化した症例、circinate annular form、角層下膿疱症・膿疱型薬疹
上記4項目を満たせば確定診断、2と3を満たせば疑い例
汎発性膿疱性乾癬診断の参考項目(重症度評価/合併症検索)
- 白血球増多、核左方移動
- 赤沈亢進、CRP陽性
- IgG又はIgA上昇
- 低蛋白血症、低カルシウム血症
- 扁桃炎、ASLO高値、その他の感染病巣の検査
- 強直性脊椎炎を含むリウマトイド因子陰性関節炎
- 眼病変(角結膜炎、ぶどう膜炎、虹彩炎など)
- 肝・腎・尿所見:治療選択と二次性アミロイドーシス変化
よって本問の解答は下記
- 1. IgG:上昇する
- 2. 蛋白:消耗性に低下する
- 3. 白血球:高炎症状態に伴い、増加する
- 4. カルシウム:低下する
- 5. リウマトイド因子:合併症にリウマトイド因子陰性関節炎がある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p287(2)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p371(2・3・4)
- 診断基準の参考:膿疱性乾癬(汎発型) 診療ガイドライン 2014年度版 日皮会誌:125(12), 2211-2257, 2015
関連問題
選択問題20:解答 4
乾癬の生物学的製剤投与スケジュールを問う問題
乾癬 生物学的製剤の投与スケジュール
よって本問では
- ①:ウステキヌマブ(ステラーラ®)→IL-12/23p40
※現在はスキリージ®およびイルミア®も - ②:インフリキシマブ(レミケード®)→TNFα
- ③:アダリムマブ(ヒュミラ®)→TNFα
- ④:ブロダルマブ(ルミセフ®)→IL-17RA
- ⑤:セクキヌマブ(コセンティクス®)→IL-17A
- ⑥:イキセキズマブ(トルツ®)→IL-17A
IL-17A関連のものは④, ⑤, ⑥のため、選択肢4が正解となる
一般論として、IL-17関連製剤はローディングのため初期投与頻度が多い(IL-23関連と比べて)
- 参考:各種添付文書
関連問題
選択問題21:解答 1, 3, 5
関節症性乾癬へ移行しやすいとされるのは、爪・頭部・臀部→1, 3, 5
とくに爪乾癬はDIP関節部の付着部炎が波及した結果として生じる爪母病変で、関連性が強い
頭部・臀部について。「頭部, 臀部, 爪乾癬がPsA(乾癬性関節炎)と関連するとしたWilsonらの報告は統一した見解となっていないが, 爪乾癬でPsA合併リスクが上昇するという報告は多く(後略)」と下記ガイドラインに記載されており、1つだけ選ぶなら爪が妥当と考えられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p287(1・5)
- 参考:乾癬性関節炎診療ガイドライン2019 日皮会誌:129(13), 2675-2733, 2019のp2680/2678
関連問題
選択問題22:解答 3
シクロスポリン(ネオーラル®)の併用禁忌薬を問う問題
シクロスポリンはCYP3A4阻害作用を有し、同酵素で代謝を受ける薬物の血中濃度が上昇する
選択肢の中ではロスバスタチンが併用禁忌→3
なおシクロスポリンはスタチンを肝臓へ取り込むトランスポーターOATP1B1阻害作用もあるため、スタチン使用時は特に注意が必要
シクロスポリン 併用禁忌
- 生ワクチン
- タクロリムス(プログラフ®) ※外用以外
- ピタバスタチン(リバロ®), ロスバスタチン(クレストール®):スタチン
- ペマフィブラート(パルモディア®)
- ボセンタン(トラクリア®):肺動脈性肺高血圧症, 強皮症手指潰瘍抑制
- アリスキレン(ラジレス®):直接レニン阻害薬
- アスナプレビル(スンベプラ®), バニプレビル(バニヘップ®), グラゾプレビル(グラジナ®):C型肝炎治療薬
PUVA療法を含む紫外線療法も併用注意となっている
- 参考:ネオーラル 添付文書
- スタチン系の参考(要会員登録):ネオーラルと併用できるスタチンはどれ?:DI Online
選択問題23:解答 4
アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで"除外すべき疾患"を問う問題
シェーグレン症候群のみ、除外すべき疾患に含まれていない→4
アトピー性皮膚炎 除外すべき疾患
- 接触皮膚炎・手湿疹(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため)
- 脂漏性皮膚炎・皮膚リンパ腫
- 単純性痒疹・乾癬
- 疥癬・免疫不全による疾患
- 汗疹・膠原病(SLE, 皮膚筋炎)
- 魚鱗癬・ネザートン症候群
- 皮脂欠乏性湿疹
- 1・2・3・5. 乾癬・皮膚リンパ腫・Netherton症候群・免疫不全による疾患:いずれも除外すべき疾患
- 参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13),2691-2777,2021の表1(p2699)
※2016/18年版も記載は同様
関連問題
選択問題24:解答 2, 3, 4
デング熱に関する一般問題
デング熱
フラビウイルス科のデングウイルスが、ネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介される
1週間程度の潜伏期間を経て高熱・関節痛・筋肉痛などで発症し、約半数の症例で解熱後毛孔一致性の紅斑や紫斑が出現する。
当初は中毒疹様だが徐々に一部白く抜ける部位が目立つようになり、"white island in a sea of red"と称される
- 1. デングウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属。トガウイルス科ウイルスにはウマ脳炎ウイルスやチクングニアウイルスが含まれる
- 2. 不顕性感染が70〜80%を占める
- 3. 肝機能障害が重症化サインとなることがある
- 4. 毎年約4億人が罹患し、約1億人(25%)が発症するとされる
- 5. 典型的発疹は解熱時期およびその前後のwhite island in a sea of red。発熱期より遅れることに注意
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p508(ALL)
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 蚊媒介感染症 日皮会誌:129(12), 2503-2511, 2019のp2504
関連問題
選択問題25:解答 4
尖圭コンジローマでのイミキモド(ベセルナ®)使用期限は16週間→4
※日光角化症でも4週間外用→4週間休薬を2回までなので、こちらも16週間となる
また刺激性が高いため、16週間といっても1日1回隔日(週3回)でかつ塗布後6〜10時間で洗い流す必要がある
-
イミキモド(ベセルナ®)クリーム まとめ
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- 参考:ベセルナ 添付文書
関連:ベセルナは頻出, 関連問題は上記カード内の記事参照
選択問題26〜は下記
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平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題26〜50
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