皮膚科 皮膚科専門医試験対策

平成28(2016)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜25

2022年7月31日

2016-specialist-1

日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成28(2016)年度解答解説を作成しました

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平成28年度(2016年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜25

選択問題1:解答 1

汗に関する一般問題

汗腺は"交感神経"支配→1

  • 1・3. エクリン汗腺は交感神経支配だが、神経伝達物質は(ノルアドレナリン*ではなく)アセチルコリン
  • 2. 視床下部は発汗/体温中枢があり、視床下部障害で続発性無汗症をきたしえる
  • 3. アセチルコリンが汗分泌に重要なため、抗コリン作用のある薬剤を治療に利用する
  • 4. 塩化アルミニウムは表皮内汗管を閉塞させることにより、発汗を低下させる。保険適用製剤はない
  • 5. Frey症候群は耳下腺手術などで損傷した神経が唾液腺内に迷入して生じ、味覚刺激による発汗や紅斑をきたす

*交感神経では通常ノルアドレナリンが神経伝達物質となる

多汗症 抗コリン薬治療(内服・外用)

原発性多汗症の治療で、抗コリン作用を持つ保険適用薬は下記

商品名 一般名 使用方法
プロ・バンサイン® プロパンテリン 内服
エクロック®ゲル※ ソフピロニウム臭化物 外用
ラピフォート®ワイプ※ グリコピロニウムトシル酸塩水和物 外用
アポハイド®ローション* オキシブチニン塩酸塩 外用

※エクロック®とラピフォート®は原発性腋窩多汗症かつ多汗症疾患重症度評価尺度(HDSS)3以上が必要

*アポハイド®は手掌のみ, HDSS基準はない

関連問題

選択問題2:解答 3, 4, 5

特発性後天性全身性無汗症(AIGA)に関する出題

診断基準については下記参照

220421-AIGA
特発性後天性全身性無汗症(AIGA) 診断基準・重症度分類

続きを見る

選択肢2は診断基準に含まれ、選択肢3/4は参考項目に含まれる

関連問題:AIGAに関する問題は頻出, 上記カード内の記事を参照

選択問題3:解答 2, 4, 5

瘢痕性脱毛症をきたす疾患を問う問題

扁平苔癬・限局性強皮症・エリテマトーデスで生じ得る→2, 4, 5

瘢痕性脱毛症

瘢痕形成の結果、毛包が破壊され不可逆的な脱毛をきたす疾患

外傷や熱傷などによる続発性と、原発性(原発性瘢痕性脱毛症)がある

などが原発性瘢痕性脱毛症の代表例

  • 1. 梅毒:2期梅毒で梅毒性脱毛をきたすが、瘢痕性脱毛症ではない
  • 2. 扁平苔癬:毛孔性扁平苔癬は瘢痕性脱毛症をきたす疾患の代表
  • 3. 皮膚筋炎:炎症の結果脱毛をきたすことがある(瘢痕性脱毛ではない)
  • 4. 限局性強皮症:内臓病変を伴わない強皮症で、前頭部に好発する剣創状強皮症は瘢痕性脱毛症をきたす。また四肢で生じると成長障害をきたす
  • 5. 慢性円板状エリテマトーデス:頭部に生じると不可逆性の瘢痕性脱毛をきたす
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p372/558(1)/293(2)/205(3)/204(4)/196(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p757/959(1)/367(2)/412(3)/408(4)/427(5)

関連問題

選択問題4:解答 5

小児の出生時からみられる不完全脱毛斑で、軟毛がみられ病変が固定されていることから先天性三角形脱毛症の診断→5

先天性三角形脱毛症

出生時〜生後数年で前頭部や側頭部(前頭骨と側頭骨の縫合線上)に類円形の不完全脱毛斑をきたす

ダーモスコピーで白色の軟毛が観察されるのが特徴

  • 1. 脂腺母斑:出生時より脱毛斑をきたすが、わずかに隆起した黄色調局面となる。思春期以降は乳頭状汗管嚢胞腺腫等の二次性腫瘍が生じる
  • 2. 円形脱毛症:出生時からは生じず、病変も固定されない。感嘆符毛や黒点が特徴
  • 3. 機械性脱毛症:手術時の圧迫など、外的刺激により生じる脱毛症。乳児の後頭部に生じるものに乳児仮性脱毛(occipital alopecia)があるが、自然軽快する
  • 4. 先天性皮膚欠損症:出生時から見られる表皮〜皮下組織(深いと骨まで)の欠損で、創部は萎縮瘢痕化する
  • 5. 先天性三角形脱毛症:出生時よりの脱毛斑で、軟毛が見られる点から診断できる

脱毛斑をきたすのは共通だが、1は黄色調・2/3は健常皮膚と同様・4は瘢痕・5は軟毛となる

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p370(5)/386(1)/368(2)/342(4)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p757(5)/550(1)/752(2)/755(3)/502(4)

関連問題

選択問題5:解答 1

睫毛貧毛症に用いるビマトプロストに関する出題

外用回数は1日1回→1

ビマトプロスト

緑内障の点眼薬であるルミガン®の副作用に睫毛延長があり、これを効能効果として利用したのがグラッシュビスタ®

  • 機序:プロスタグランジン構造類似体であり、休止期→成長期への転化を促す
  • 副作用:眼瞼色素沈着, 結膜充血・眼脂等
  • 1. 1日1回就寝前に上眼瞼の睫毛基部へ塗布する
  • 2. プロスタグランジン構造類似体が主成分。房水流出促進作用があるため、緑内障治療薬として用いられる
  • 3. 上眼瞼のみで、下眼瞼は色素沈着が目立ちやすいので使用しない。他部位に付着しないよう、アプリケーターを用いて塗布する
  • 4. "緑内障"の点眼薬として使用されている。眼房水の排泄を促進し眼圧を低下させる
  • 5. 色素沈着(皮膚色素過剰)が3.4%に認められている

選択問題6:解答 2, 4, 5

Netherton症候群の症状を問う問題

3徴は先天性魚鱗癬・陥入性裂毛・アトピー性皮膚炎様症状→2, 4, 5

Netherton症候群

角層セリンプロテアーゼインヒビター(LEKTI)をコードする遺伝子、SPINK5の変異で発症する常染色体劣性遺伝疾患

  • 魚鱗癬症状(曲折線状魚鱗癬*など)
  • アトピー性皮膚炎様皮疹
  • 節を有し短く折れやすい結節性裂毛/陥入性裂毛

が3主徴で、その他成長障害や精神発達遅滞を生じる

*辺縁に二重鱗屑を付す特徴的な皮疹

  • 1. 色素性網膜炎:魚鱗癬症候群の一つ、Refsum症候群は色素性網膜炎や小脳性運動失調・多発性神経炎を特徴とする
  • 2・4・5. 先天性魚鱗癬・アトピー性皮膚炎様症状・陥入性裂毛はいずれもNetherton症候群の主症状
  • 3. 長管骨の形成異常:魚鱗癬症候群の一つ、CHILD症候群の症状。伴性優性遺伝疾患で、男児は致死的なため患者のほとんどは女性となる(色素失調症と同じ)
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(2・4・5)/276(1)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p349(2・4・5)/350(1)/351(3)

関連問題

※Netherton症候群の原因遺伝子=SPINK5という点は上記以外の問題でも度々出題

選択問題7:解答 5

紫外線遮断剤の作用機序を問う問題

紫外線吸収作用を持つのはパラアミノ安息香酸→5

サンスクリーン剤 (日焼け止め)

紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2つに大きく分類される

種類 紫外線吸収剤 紫外線散乱剤(ノンケミカル)
作用機序 紫外線を吸収し、熱エネルギーへ変換 紫外線を乱反射させ、肌への影響を防ぐ
特徴 遮光性が高いが、皮膚への刺激となる場合がある 低刺激
主な成分 パラアミノ安息香酸 (二)酸化チタン
オクトクリレン 酸化亜鉛

サンスクリーン剤を外用すると白くなるのは含有されている紫外線散乱剤の影響

紫外線吸収剤は皮膚への刺激となる場合があるため、配合可能成分が厚生労働省の化粧品基準表4(ポジティブリスト)に定められている

一方紫外線散乱剤はこうした指定はない

  • 1・2. タルク・カオリン:ケイ素を含有し、粉体*として日焼け止めやファンデーション等に使われる
  • 3. ベントナイト:いわゆる"粘土"で皮脂吸着作用があることからクレイパックや洗顔料に用いられる
  • 4. 二酸化チタン:紫外線散乱剤として用いられる
  • 5. パラアミノ安息香酸:紫外線吸収剤として用いられる

*粉体(顔料):化粧品の使用性を高めるために配合され、ベースとなる成分

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p96(4・5)
  • 参考:サンスクリーン剤の基礎知識 -市販製品の内容物を読み解く力を身につける- 薬局 71巻8号 p2811-2817

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選択問題8:解答 1, 5

長期間の日光曝露が原因となる疾患を問う問題

項部菱形皮膚やFavre-Racouchot症候群がある→1, 5

  • 1. 項部菱形皮膚:長期の日光暴露により、項部に菱形の深い皺が形成された状態で高齢の戸外労働者などでみられる
  • 2. Cockayne症候群:光線過敏症を示す早老症で、これ自体は高発癌性でないが色素性乾皮症と合併することがある
  • 3. 光線性花弁状色素斑:肩〜上背にかけ強い日焼け(海水浴など)の数カ月後多発性に生じる、褐色色素斑。慢性の紫外線暴露よりは単発的な強い紫外線照射が原因となる
  • 4. 晩発性皮膚ポルフィリン症:後天性の光線過敏症をきたす。肝機能障害(とくにC型肝炎)を背景とした、ポルフィリン代謝障害が原因
  • 5. Favre-Racouchot症候群:光線性弾性線維症(solar elastosis)の顕著な一型で、高齢者の顔面で面皰や黄白色丘疹が集簇・多発したもの
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p229/338(1)/340(2)/312(3)/331(4)/73(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p486(1)/284(2)/532(3)/476(4)/487・748(5)

関連2021 選択9(UVAが関連する皮膚老化)

選択問題9:解答 1

cornified cell envelopeはロリクリン・インボルクリンから構成され、内部にはケラチンやフィラグリンが存在する→1

角層の構造・バリア機能

角層は皮膚再外層に位置し、皮膚バリア機能を担う

バリア機能の構造物として、下記3つが重要

  • 周辺帯 (cornified cell envelope)
  • ケラチン&フィラグリン
  • 角質細胞間脂質

これらの構造を担う分子に異常があると、種々の角化異常症を発症する

cornified cell envelope(周辺帯)

周辺帯は角層細胞の細胞膜を裏打ちする

ロリクリン(顆粒層で発現)やインボルクリン(有棘層で発現)などの蛋白で構成され、トランスグルタミナーゼ1が蛋白間の架橋を行う

トランスグルタミナーゼ1の変異は葉状魚鱗癬の原因

ケラチン&フィラグリンと分解産物

細胞骨格であるケラチンとフィラグリンは凝集し、ケラチン・パターンを形成する
(2015 選択77)

フィラグリンは分解され、アミノ酸になると天然保湿因子(NMF)として保湿や紫外線吸収作用・角層のpH保持(弱酸性)に働く。なおフィラグリンの前駆物質であるプロフィラグリンは顆粒細胞内に存在するケラトヒアリン顆粒である

→ケラチンの変異はケラチン症性魚鱗癬(表皮融解性魚鱗癬etc)の、フィラグリンの変異は尋常性魚鱗癬の原因

角質細胞間脂質

  • セラミド(約50%)
  • コレステロール(約30%)
  • 遊離脂肪酸

などから構成され、角層細胞の構造を安定化させる
(2011 選択9)

層板顆粒からのセラミド分泌に関わるABCA12の変異は道化師様魚鱗癬の原因

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p8
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p10

関連問題

選択問題10:3

前腕部の皮膚生検像

図2のHE染色像では角質肥厚と顆粒層の消失がみられ、尋常性魚鱗癬の像。フィラグリン(FLG)遺伝子変異が原因となる→3

2016-ichthyosis-vulgaris

参考サイトより引用, granular layer(顆粒層)が消失して見える

フィラグリンの前駆物質であるプロフィラグリンは表皮顆粒層のケラトヒアリン顆粒を構成する

FLG遺伝子変異があるとこのプロフィラグリンの発現が低下し、ケラトヒアリン顆粒が低形成となる

→この結果、HE染色で菲薄化して見える

*表皮融解性魚鱗癬の原因はケラチン1/10だが、K1変異は掌蹠角化が強く出やすい

関連(魚鱗癬の病理)

選択問題11:解答 1

前胸部皮膚生検の組織像

絨毛形成や異常角化細胞がみられ、Darier病の像→1

Darier病

カルシウムポンプをコードするATP2A2遺伝子変異により発症

間擦部の角化性丘疹をきたし、組織学的には棘融解や異常角化細胞が特徴

異常角化細胞は具体的には下記

  • 円形体:好塩基性の濃縮核と明るい細胞質を有する大型の細胞
  • 顆粒:卵円形の穀物の顆粒のような形の核で、濃染する
  • 1. Darier病:絨毛形成や円形体がみられ、角質増殖・不全角化を伴う
  • 2. ミルメシア:HPV-1感染が原因となり、組織ではコイロサイトーシスの他顆粒状封入体が出現する
  • 3. 日光角化症:基底層直上に限局した異型細胞や、付属器・毛包を避ける不全角化が特徴(pink&blue sign)solar elastosisも伴う
  • 4. 有棘細胞癌:下床へ浸潤する腫瘍細胞がみられ、癌真珠などの異常角化を伴う
  • 5. 尋常性天疱瘡:表皮内、とくに基底膜直上での水疱形成や棘融解がみられ、好酸球浸潤を伴う
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p280(1)/495(2)/449(3)/447(4)/251(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p356(1)/806(2)/631(3)/309(5)

関連問題

病理像を直接問う出題は少ないが、原因遺伝子(ATP2A2)や角化が強い点は頻出

選択問題12:解答 2

出生時からの過角化と眼瞼外反、口唇の突出開口から道化師様魚鱗癬の診断

ABCA12遺伝子変異が病因となる→2

*AD:常染色体優性遺伝疾患, AR:常染色体劣性遺伝疾患

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p271(2)/278(1)/275(3)/312(4)/279(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p347(2)/353(1)/351(3)/535(4)/356(5)

関連問題

選択問題13:解答 5

免疫担当細胞とそれぞれのマーカーを問う問題

Langerhans細胞はCD1a, CD207(ランゲリン), S-100で染色される→5

とくにCD207は特異性が高く、Langerhans細胞組織球症の診断に使われる

  • 1. 組織球:CD68陽性となる(多中心性細網組織球症など)。CD1aはLangerhans細胞で陽性
  • 2. B細胞:CD20陽性となる。CD3はT細胞全般で陽性となる
  • 3. 形質細胞:CD79a陽性となる(CD20は陰性)
  • 4. T細胞:CD3/4/8などが陽性となる。CD79aは形質細胞やB細胞で陽性
  • 5. Langerhans細胞:CD1a, CD207(ランゲリン), S-100の3つが代表的マーカー
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p50(1・2・3・4)/34(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p48(1・3・4)/78(5)

関連問題

選択問題14:解答 1, 2, 4

自然免疫に関する出題

  • 1. 創傷治癒過程の初期にあたる炎症期では、自然免疫による好中球やマクロファージが病原体の侵入を防ぎ、異物の除去にあたる
  • 2. 自然免疫では細菌やウイルスの成分をTLR(toll like receptor)を介して認識する。一方液性免疫では抗体や補体を介して認識、反応が起こる
  • 3. イミキモドはTLR7に作用して炎症性サイトカインを惹起し、免疫反応を増強させることで抗ウイルス・抗腫瘍効果を発揮する
  • 4. 表皮ケラチノサイト(角化細胞)はTLRを発現して病原体を認識し、また抗菌ペプチドを産生する役割がある
  • 5. 尋常性乾癬では増殖した角化細胞から放出される抗菌ペプチド*で、真皮樹状細胞が活性化する。この後IL-17やIL-23を介して、再度角化細胞の増殖が起こり悪循環になる(ただし感染症にはなりづらい)。一方アトピー性皮膚炎では発現が低下し、感染症をきたしやすい

*β-デフェンシンやLL37

関連問題

選択問題15:解答 3, 4, 5

Sjögren-Larsson症候群の症状を問う問題

四肢痙性麻痺・先天性魚鱗癬・精神発達遅滞が3徴→3, 4, 5

Sjögren-Larsson症候群

FALDH(ALDH3A2)遺伝子変異が原因の常染色体劣性遺伝疾患

脂肪酸代謝に関わる酵素であり、遺伝子変異によって脂肪アルコールや脂肪アルデヒドなどが組織へ沈着する

→多臓器で症状をきたす

代表的な症状は

  • 四肢痙性麻痺
  • 先天性魚鱗癬
  • 精神発達遅滞 (IQ<50)

魚鱗癬の皮疹は頸部や下腹部、四肢で強いという特徴がある

  • 1. 掌蹠角化症:魚鱗癬症候群の中ではKID症候群(GJB2遺伝子変異)でみられる症状
  • 2. 骨端石灰化:魚鱗癬症候群の一つ、Conradi症候群で見られる症状。コレステロール合成過程の酵素障害が原因
  • 3・4・5. 四肢痙性麻痺・先天性魚鱗癬・精神発達遅滞:Sjögren-Larsson症候群の3徴
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(1・3・4・5)/276(2)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p349(3・4・5)/351(1)/350(2)

関連2012 選択11 (Sjögren-Larsson症候群の臨床問題)

選択問題16:解答 5

妊婦でも可能な膿疱性乾癬治療を問う問題

顆粒球吸着療法はOK→5

膿疱性乾癬治療 妊婦

妊婦例で推奨されている治療は下記(膿疱性乾癬 診療ガイドライン2014年版)

治療法 推奨度
シクロスポリン* C1@
副腎皮質ステロイド C1@
TNFα阻害薬 C1
顆粒球単球吸着除去療法 C1

*妊婦/授乳婦投与禁忌であったが、見直しに伴い禁忌が外された(2018年8月)

@:総合的判断に基づく委員会見解

  • 1. コルヒチン:家族性地中海熱(FMF)以外、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に投与禁忌(FMFでは発作予防が優先)。膿疱性乾癬には保険適用なく、推奨度C2
  • 2. 内服PUVA:妊娠中あるいは妊娠中の女性は絶対禁忌(推奨度D)。光線療法ではUVBが推奨度C1(第一選択薬が使用できないか抵抗性のとき)
  • 3. エトレチナート:投与中および投与中止後少なくとも2年間は避妊が必要
  • 4. メトトレキサート:妊婦又は妊娠している可能性のある女性は投与禁忌
  • 5. 顆粒球吸着療法:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合は使用可能(推奨度C1)

ガイドライン出版時(2014年)はシクロスポリンが妊婦禁忌のため推奨度C1@だが、現在は禁忌が外れているのでC1相当と思われる

関連問題

選択問題17:解答 1, 5

パッチテストのジャパニーズスタンダードアレルゲンの項目が、どのような製品と関連するか問う問題

カインミックス(麻酔薬)とイソチアゾリノンミックス(防腐剤)はゴム製品と関係しない→1, 5

ジャパニーズスタンダードアレルゲン(JSA) 2015 ゴム関連

物質 種類
15 カルバミックス ゴム硬化剤
16 黒色ゴムミックス ゴム老化防止剤
19 メルカプトベンゾチアゾール ゴム硬化剤
22 メルカプトミックス ゴム硬化剤
24 チウラムミックス ゴム硬化剤

その他JSA 2015に含まれる物質と含有製品は以下参照

220602-JSA2015
ジャパニーズスタンダードアレルゲン(JSA) 2015 パッチテスト

続きを見る

〜ミックスはゴム関連が多いので例外(カインミックス, イソチアゾリノンミックス, パラベンミックス)を抑える。カインはキシロカイン、パラベンはブチルパラベン(←化粧品でよくパラベンフリーと書いてあるもの)

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p81

関連2017 選択55 (防腐剤関連アレルゲン)

選択問題18:解答 4

金属パッチテストの陽性率が最も高いのはニッケル→4

パッチテスト陽性率は下記の順番

  • 4. 硫酸ニッケル(24.8%)
  • 1. 金チオ硫酸ナトリウム(23.2%)
  • 5. 塩化コバルト(7.9%)
  • 2. 塩化第二水銀(5.3%)
  • 3. 重クロム酸カリウム(2.3%)

またニッケルと金は女性での陽性率が男性より10%程度高い

関連2020 選択20(ほぼ同一問題)

選択問題19:解答 3

角層下水疱や表皮の海綿状態がみられ(微小膿瘍はみられない)、異汗性湿疹の像→3

異汗性湿疹(汗疱) 掌蹠膿疱症 病理

異汗性湿疹では角層下水疱をきたす

湿疹なので表皮の海綿状態を伴う一方、膿疱性疾患ではないため微小膿瘍形成はみられない

臨床所見が類似する掌蹠膿疱症とは下記の差がある

異汗性湿疹(汗疱) 掌蹠膿疱症
表皮海綿状態 + -
水疱/膿疱周囲の微小膿瘍 - +
  • 1. 帯状疱疹:表皮内水疱や封入体を有する巨細胞(balloon cell)が特徴
  • 2. 掌蹠膿疱症:表皮内(角層下)膿疱で、内部に好中球や変性表皮細胞がみられ辺縁にも微小膿瘍を伴う
  • 3. 異汗性湿疹:水疱周囲にも海綿状態を伴う一方で、辺縁の微小膿瘍は見られない
  • 4. 尋常性天疱瘡:(Dsg3が存在する)基底層直上の表皮内水疱で、好酸球浸潤がみられる
  • 5. 角層下膿疱症:角層直下に好中球による膿疱がみられる
    コゴイ海綿状膿瘍はみられない(=表皮内への浸潤はない)
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p492(1)/265(2)/250(4)/266(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p795(1)/332(2)/309(4)/336(5)
  • 選択肢3の参考:掌蹠膿疱症と異汗性湿疹(汗疱)との病理組織額的な相違 臨床皮膚科 75巻5号 2021年増刊号:70-74, 2021
  • 参考:掌蹠膿疱症診療の手引き2022 日皮会誌:132(9), 2055-2113, 2022のp2060

選択問題20:解答 2

伝染性単核球症ではペニシリン系抗菌薬投与により皮疹が増悪する→2

このため、同じく咽頭痛をきたす溶連菌感染症との鑑別が必要(こちらはペニシリンが治療薬)

  • 2. ペニシリン:伝染性単核球症では使用を控える
  • 3. インスリン:インスリン皮下注射を繰り返すとアミロイドが沈着し、インスリンボールと呼ばれる皮下硬結が形成される
  • 4. ACE阻害薬:ブラジキニン阻害作用を有し、薬剤性血管性浮腫の原因となる
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p507(2)/318(3)/133(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p797(2)/177(5)

関連:2011 選択22(伝染性単核球症について)

選択問題21:解答 5

右下腿で数ヶ月前から見られた毛包炎様皮疹

組織では巨細胞と隔壁を有する大型胞子(sclerotic cell)がみられ、クロモミコーシス(黒色分芽菌症)の診断→5

培養すると黒色コロニーを形成する黒色真菌の中で、sclerotic cellを有するものを指す
(sclerotic cellがみられないものはフェオヒフォミコーシス:黒色菌糸症)

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p542(5)/531(1)/544(2・4)/541(3)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p916(5)/856(1)/920(2)/912(3)/918(4)
  • 選択肢2の参考:深在性真菌症の病理

関連問題

  • 2012 選択23 / 2011 選択57 (黒色分芽菌症の臨床問題/原因)

選択問題22:解答 2, 4

マラセチア属真菌のうち、アトピー性皮膚炎で多いのはM. globosaM. restricta→2, 4

  • 1. M. furfur:かつて脂漏性皮膚炎や癜風でみられる真菌はこう呼ばれていたが、分類見直しにより現在はアトピー性皮膚炎患者の一部で検出されるのみ
  • 2. M. globosa癜風やアトピー性皮膚炎で検出される
  • 3. M. slooffiae:比較的稀なマラセチア。あかつき病で検出されたという報告がある
  • 4. M. restricta脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎で検出される
  • 5. M. pachydermatis:ヒト常在のマラセチア属真菌ではなく、イヌなど動物の皮膚に常在する

関連2014 選択18(癜風の原因となる真菌)

選択問題23:解答 2, 4

Streptococcus pyogenes(A群β溶連菌)が原因となるのは丹毒・痂皮性膿痂疹→2, 4

  • 1. 癤(せつ):毛包炎が進展したもので、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)や表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)が原因。PVL毒素を産生するMRSAの場合は難治例となる
  • 2. 丹毒:真皮主体の細菌感染で、A群β溶連菌が主な原因(その他黄ブ菌や肺炎球菌)
  • 3. 水疱性膿痂疹:黄ブ菌の産生する表皮剥離毒素(ET)によって、有棘細胞間のデスモグレイン1*が切断され水疱・びらんをきたす。夏の小児に好発
  • 4. 痂皮性膿痂疹:A群β溶連菌が主な原因(黄ブ菌との混合感染もあり)で、厚い痂皮形成をきたし成人にも多いのが特徴
  • 5. 化膿性汗腺炎(慢性膿皮症):毛包閉塞を基盤とする慢性炎症性疾患。二次的に皮膚感染症をきたすことがあるが本態ではない

*落葉状天疱瘡のターゲットでもあり、両者の皮疹は類似する

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p519(1)/516(2)/514(3)/515(4)/521(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p826/829(1)/837(2)/833(3・4)/759(5)

関連問題

選択問題24:解答 2, 4

ハンセン病多菌型の特徴を問う問題

皮疹の数が多く、また左右対称性に分布することが特徴→2, 4

ハンセン病

抗酸菌Mycobacterium lepraeによる慢性感染症で、皮膚と末梢神経に症状をきたす

M.lepraeは培養できないため、スメア法で抗酸菌を確認し診断する

菌数によって少菌型(PB)・多菌型(MB)に分けられる

ハンセン病 病型分類 少菌型 多菌型
らい菌 少数/発見しがたい 多数
皮疹の数・性状 少数・大型 多数・小型
皮疹の分布 左右非対称 左右対称
知覚異常 高度 軽度/正常
病理所見 類上皮細胞性肉芽腫
(変性した組織球)
周囲に多数のリンパ球浸潤
組織球性肉芽腫
リンパ球浸潤は少ない

生体の免疫反応が残っており炎症反応が強いのが少菌型(→菌は除去される)、免疫反応が弱く炎症に乏しいのが多菌型

  • 1・2・4. 皮疹の大きさ・数・分布:少菌型は大型の紅斑が少数非対称性に生じ、多菌型は小型の紅斑が多数対称性に生じる
  • 3. 知覚低下:少菌型は高度で、多菌型は軽度〜正常
  • 5. リンパ球浸潤:少菌型は多数みられるが、多菌型ではわずか
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p553
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p873

関連問題

選択問題25:解答 3, 4

疥癬の第一選択薬はフェノトリン(スミスリン®)外用とイベルメクチン(ストロメクトール®)内服→3, 4

疥癬 患者ごとの推奨治療薬

患者分類 推奨薬剤 推奨度
体重15kg以上 フェノトリン外用 A
イベルメクチン内服
イオウ剤外用 C1
クロタミトン外用
安息香酸ベンジル外用
生後2カ月以上
体重15kg未満の小児
フェノトリン外用 C1
イオウ剤外用
クロタミトン外用
生後2カ月未満の乳児 フェノトリン外用 C1
妊婦 フェノトリン外用 C1
イオウ剤外用
クロタミトン外用
授乳婦 フェノトリン外用 C1
  • 1. イオウ剤外用:推奨度C1だが、小児や妊婦でも利用可能
  • 2. クロタミトン外用:推奨度C1だが、小児や妊婦でも利用可能
  • 3. フェノトリン(スミスリン®)外用:神経細胞のNa+チャネルに作用し、推奨度A。小児・妊婦・授乳婦など幅広く利用可能
  • 4. イベルメクチン(ストロメクトール®)内服:神経細胞のCl-チャネルに作用し、推奨度A。体重15kg未満や妊婦/授乳婦では利用不可
  • 5. 安息香酸ベンジル:推奨度C1で、小児・妊婦・授乳婦いずれも利用不可

関連問題

選択問題26〜50は下記

2016-specialist-2
平成28(2016)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題26〜50

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