イミキモド(ベセルナ®)についてまとめました
前半は重要事項をまとめ、後半は皮膚科専門医試験の過去問題(全12問)を紹介しています
イミキモド(ベセルナ®)クリーム まとめ
イミキモドの作用機序
自然免疫に関与するTLR*の一つ、TLR7と結合しそれを活性化する
これによってIFN-αやTNF-αなどの炎症サイトカインが惹起され、外用部位に炎症を引き起こす
*TLR = toll-like receptor
イミキモド 保険適用疾患・部位
日本での保険適用疾患は2023年現在下記2つのみ
保険適用疾患 | 承認年 | 部位 |
日光角化症 | 2007 | 顔面 or 禿頭部 |
尖圭コンジローマ | 2011 | 外性器 or 肛門周囲 (粘膜はNG) |
なお適用疾患以外では下記のような報告がある
- 低リスク表在型の基底細胞癌(BCC):1日1回週5~7日での外用が効果的とされている
- Bowen病:治療12週間後の病変消失率が73%, 重篤な副作用なし
- 乳房外Paget病:海外では70例に対してCR71%、PR16%という報告がある。国内では週3回外用でCRの7例がある
*CR = complete response(完全奏功), PR = partial response(部分奏功)
- 参考:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版 基底細胞癌診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(6), 1467-1496, 2021のp1481
- 参考:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 有極細胞癌診療ガイドライン 2020 日皮会誌:130(12), 2501-2533, 2020のp2519
- 参考:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 乳房外パジェット病診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(2), 225-244, 2021のp241
イミキモド 外用方法・期間
先述の通り、炎症を引き起こす作用が強いため外用方法が特殊
- 1日1回 週3回(月・水・金 or 火・木・土)
- 就寝前に塗布し、6~10時間後(起床後)に石鹸で洗い流す
また添付文書でも下記のような注意記載がある
塗布部位及びその周辺に重度の紅斑、びらん、潰瘍、表皮剥離等があらわれることがあるので、本剤を過量に塗布しないこと。また、塗布部位を絆創膏やテープ等で密封しないこと。
局所における重度の炎症反応に先行あるいは並行し、悪寒、発熱、筋肉痛等を呈するインフルエンザ様症状があらわれることがある。このようなインフルエンザ様症状があらわれた場合には使用の中止を考慮すること。
外用可能期間も定められている
疾患 | 外用期間 |
日光角化症 | 「4週間外用→4週間休薬」 を2回まで(合計16週間) |
尖圭コンジローマ | 16週間まで |
- 参考:ベセルナ 添付文書
- 参考:ベセルナ インタビューフォーム
皮膚科専門医試験 過去問 関連問題
問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会
2022年 選択問題76
2022年 選択問題76
次のうちBowen病について誤っているものを2つ選べ。
- 慢性鉛中毒で多発する。
- 凍結療法に保険適用がある。
- 外科的切除が第一選択である。
- イミキモド外用に保険適用がある。
- 手指のBowen病からHPV16/31/33などが検出される。
解答:1, 4
Bowen病でもイミキモド外用が有効という報告はあるが、保険適用はない
慢性ヒ素中毒での多発(井戸水汚染)が知られる
解説詳細はリンク先:2022 選択76
2021年 選択問題8
2021年 選択問題8
日光角化症に対するイミキモド(ベセルナ®クリーム)外用治療について保険適用上, 正しいのはどれか.
- 手背の病変にも外用できる.
- 禿頭部の病変にも外用できる.
- 4週間塗布後, 2週間休薬する.
- 一日一回, 治療部位(50cm2までを目安)に最大2包まで外用できる.
- 顕在化した病変および周囲の癌化準備領域を含めて治療する(field therapy).
解答:2
日光角化症に対しては顔面+禿頭部に対して利用可能
臨床治験では塗布領域での日光角化症再発抑制効果が確認されており、癌化準備領域にも一定の有効性はあるが保険適用はない
解説詳細はリンク先:2021 選択8
2018年 選択問題36
2018年 選択問題36
尖圭コンジローマについて正しいのはどれか.
- HPV-10によるものが多い.
- 潜伏期は1〜2週間である.
- 第5類感染症に指定されている.
- 液体窒素凍結療法は保険適用がない.
- イミキモドの使用期間は原則12週までである.
解答:3
尖圭コンジローマは5類感染症の一つ
イミキモド外用期間は16週まで
解説詳細はリンク先:2018 選択36
2018年 選択問題82
2018年 選択問題82
問題81で示した病変のうちイミキモド外用が保険適用となっているのはどれか. 2つ選べ.
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解答:1, 5
※参考 2018年 選択問題81
図22①〜⑤に示す病変とその説明の組み合わせで正しいのはどれか.
- ①は露光部以外には生じない.
- ②の腫瘍細胞は表皮角化細胞に分化している.
- ③は掌蹠にも生じる.
- ④の腫瘍細胞は付属器上皮内に進展しない.
- ⑤は上皮内癌である.
①は日光角化症(露光部にのみ生じる), ⑤は尖圭コンジローマ(非上皮内癌)
解説詳細はリンク先:2018年 選択82
2017年 選択問題25
2017年 選択問題25
保険適用上, 尖圭コンジローマに対して5%イミキモドクリームの週3回塗布を行ってよい使用期限はどれか.
- 4週間
- 8週間
- 12週間
- 16週間
- 20週間
解答:4
尖圭コンジローマのイミキモド使用は16週間まで
解説詳細はリンク先:2017 選択25
2016年 選択問題14
2016年 選択問題14
皮膚における自然免疫について正しいのはどれか. 3つ選べ.
- 創傷治癒に関わっている.
- 細菌やウイルスをパターンとして認識する.
- イミキモドは自然免疫を抑制する作用がある.
- 表皮ケラチノサイトが重要な役割を担っている.
- 尋常性乾癬では抗菌ペプチドの発現が低下している.
解答:1, 2, 4
細菌やウイルスをパターンとして認識するのがTLR。イミキモドはとくにTLR7を活性化し自然免疫を賦活化する
尋常性乾癬では抗菌ペプチドの発現が亢進しており皮膚感染症が少ないとされる。アトピー性皮膚炎では対照的に抗菌ペプチドの発現が低下し皮膚感染症が多い
解説詳細はリンク先:2016 選択14
2016年 選択問題80
2016年 選択問題80
イミキモドが結合する分子はどれか.
- TLR7
- TNFα
- NF-κB
- MyD 88
- IL-12/23 p40
解答:1
イミキモドが結合するのはTLR7
解説詳細はリンク先:2016 選択80
2014年 選択問題54
2014年 選択問題54
5%イミキモドクリームが本邦で保険適用になっているのはどれか。2つ選べ。
- 尖圭コンジローマ
- 表在型基底細胞癌
- 日光角化症
- ボーエン病
- 悪性黒子
解答:1, 3
表在型基底細胞癌やボーエン病は有効性の報告はあるが、保険適用なし
解説詳細はリンク先:2014 選択54
2014年 記述問題1
2014年 記述問題1
自然免疫においてLipopolysaccharideやCpG DNAなどの微生物の構成成分を感知する受容体の名前を記せ。
解答:toll-like receptor (トール様受容体)
リポ多糖(LPS)を認識するのはTLR4、などTLRの種類によってターゲットが異なる
解説詳細はリンク先:2014 記述1
2013年 選択問題25
2013年 選択問題25
尖圭コンジローマに対するイミキモドクリーム5%の使用法で正しいのはどれか。
- 1日1回週5日間患部に塗布する。
- 6〜10時間後、石けんで洗い流す。
- 小児への使用は禁忌である。
- 粘膜部の病変には慎重に使用する。
- 紅斑や発赤が出現した場合、治療を中止する。
解答:2
塗りっぱなしではなく、就寝前塗布→起床後洗い流す
紅斑・発赤が多少出ることは許容範囲内。インフルエンザ様症状まで至っても"使用中止を考慮する"程度(何が何でも中止、という強い表現ではない)
解説詳細はリンク先:2013 選択25
2012年の問題(下記)と非常に類似している
2012年 選択問題20
2012年 選択問題20
5%イミキモドクリームを使用する場合に正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1日1回週5日間患部に塗布する。
- 6〜10時間後、石けんで洗い流す。
- 日光角化症が新たに保険適用になった。
- 尿道, 膣内病変への塗布は1日1回、週3回である。
- 紅斑や発赤が出現した場合、治療を中止する。
解答:2, 3
2007年に尖圭コンジローマに対して保険適用となった後、2011年日光角化症の適用が追加されている
解説詳細はリンク先:2012 選択20
2011年 選択問題81
2011年 選択問題81
イミキモド(ベセルナクリーム)外用により抗ウイルス作用を発揮するサイトカインはどれか. 1つ選べ.
- IL-1
- TGFβ
- GM-CSF
- Interferon-α
- Interferon-γ
解答:4
イミキモドで誘導されるサイトカインはIFN-αが代表。TNF-α産生も促進される