皮膚科 皮膚科専門医試験対策

平成26(2014)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題76~86 記述

2022年10月31日

2014-Specialist-4

日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成26(2014)年度解答解説を作成しました

見出しから各問題へ飛べます

誤字脱字ご意見などあればコメント・右のフォーム・Twitterなどでご連絡ください

  • 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
  • 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版、ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
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選択問題51~75は下記

2014-Specialist-3
平成26(2014)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題51〜75

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見出し


平成26年度(2014年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 76~86 記述

選択問題76:解答 2

IL-10は免疫応答を抑制するサイトカイン→2

TGF-βも抑制系サイトカインに分類される

サイトカインの分類

サイトカインは細胞から分泌され、細胞間相互作用に関与するタンパク質のこと

大きく下記のように分類される

含まれるサイトカイン 代表的疾患
Th1系 IFN-γ 接触皮膚炎
(Ⅳ型アレルギー)
TNF-α
IL-2
Th2系 IL-4 アトピー性皮膚炎
(Ⅰ型アレルギー)
IL-5
IL-13
IL-31
Th17系 IL-17 乾癬
IL-23
Treg系 IL-10
TGF-β
  • 1・3・5. IL-1・IL-6・TNF-α:炎症性サイトカインで、それぞれイラリス®・アクテムラ®・レミケード®の標的となっている
    (家族性地中海熱や関節リウマチで使用)
  • 2. IL-10:Treg細胞から分泌され、免疫反応を抑制する
  • 4. IFN-γ:Th1細胞から分泌され、マクロファージを活性化する
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p29/31(4)/32(1・3・5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p77/79(4)/80(1・5)

関連2018 選択13 (★同一問題★)

選択問題77:解答 1, 4

真皮の基質はコンドロイチン硫酸やヒアルロン酸から構成される→1, 4

真皮の構造

真皮は間質成分(膠原線維・弾性線維・基質)と細胞成分(線維芽細胞や組織球など)から構成される

基質は細胞外マトリックスとも呼ばれ、下記から構成される

  • 糖蛋白:フィブロネクチン(細胞接着因子)
  • グリコサミノグリカン:ヒアルロン酸コンドロイチン硫酸・デルタマン硫酸など
  • プロテオグリカン:グリコサミノグリカンが集合した巨大分子
  • 1・4. コンドロイチン硫酸・ヒアルロン酸:基質であるグリコサミノグリカンの構成成分
  • 2. アラキドン酸:不飽和脂肪酸で、アラキドン酸カスケード(COXやLOX)を経て、PGやLTとなる。NSAIDsはCOXを阻害し抗炎症作用を持つ
  • 3. ウロカニン酸:アミノ酸の一種で、フィラグリンの分解産物。角層のpHを弱酸性に保つ働きがある
  • 5. デルタアミノレブリン酸:ヘム合成系の初期産物であり、急性間欠性ポルフィリン症や鉛中毒で上昇する※

*COX = シクロオキシゲナーゼ, LOX = リポキシゲナーゼ, PG = プロスタグランジン, LT = ロイコトリエン

※デルタアミノレブリン酸は特殊健康診断の項目に含まれている

関連問題

  • 2009 選択6 (基質の構成成分:フィブロネクチン, ヒアルロン酸)
  • 2009 記述3 (NSAIDsが阻害する酵素)

選択問題78:解答 2

癌性疼痛に対する薬物療法の原則に「時刻を決めて」が含まれる→2

WHO がん疼痛治療ガイドライン

癌性疼痛の治療で最も一般的なのがWHOのガイドライン

とくに下記4原則は広く使われている

  • 経口的に (by mouth):可能な限り経口投与
  • 時間を決めて (by the clock):投与スケジュールを決めて行う
  • 患者毎に (for the individual):患者が納得するレベルまで痛みが取れる量
  • その上で細かい配慮を (with attention to detail):鎮痛薬のレジメンを書き出す, 副作用について指導するなど
  • 1. 原則は経口投与なので、塗布薬から開始することはない
  • 2. 時刻を決めて投与する→○ 決まった時間に投与し、痛みが取れるまで段階的に増量し、また薬の効果がなくなる前に次の投与を行う
  • 3. 痛みの程度に応じた適切な鎮痛薬を開始する。非オピオイド開始という縛りはない
  • 4. がん疼痛治療はがん治療の一部であり、終末期であるかどうかや原発巣同定に関わらず行われるべきである
  • 5. オピオイドと非オピオイドは作用機序が異なるため、併用可能

以前の原則は上記に「除痛ラダーに沿って効力の順に(非オピオイド→弱オピオイド→強オピオイド)」が含まれた5つだったが、2018年の改訂により除痛ラダーは本文から削除されている

なお本問出題時の2014年でも、「"軽度の痛みには"、第一段階の非オピオイド鎮痛薬を使用する。」であって、痛みが強い場合にはオピオイドから開始することが許容されていた→選択肢3はいずれにせよ誤り

※削除の背景として、中等度のがん疼痛に対しては初期から強オピオイド(モルヒネ)を低用量で用いるほうが、弱オピオイドから開始するよりも痛みの低下が見られやすいと報告されていることなどがある

選択問題79:解答 3

腋窩で黒褐色局面がみられ、組織では乳頭腫症を認めることから黒色表皮腫の診断→3

HbA1cの上昇とインスリン抵抗性が見られており、糖尿病に合併したものを考える(BMI17.7で肥満はない)

黒色表皮腫 (acanthosis nigricans)

頚部や鼡径部、腋窩でザラザラした表面黒褐色の局面をきたす

他疾患に合併することが多い

病型 合併症
悪性型 内臓悪性腫瘍(とくに胃癌)
症候型 糖尿病, SLE
仮性型(肥満関連型) 肥満

組織では乳頭腫・過角化・基底層の色素沈着がみられる

病名に反して表皮肥厚(acanthosis)は通常みられない

  • 1. 癜風:Malassezia globosaが原因となり、夏など高温・発汗をきたす条件で過剰増殖し生じる。黒色になるもの(くろなまず)や脱色素斑をきたすものがある
  • 2. 表皮母斑:表皮角化細胞由来の母斑で、Blaschko線に沿って疣贅状丘疹が生じる疣贅状表皮母斑などが含まれる
  • 3. 黒色表皮腫:本例はインスリン抵抗性があり、症候型に該当する。BMI17.7で肥満はない
  • 4. 融合性細網状乳頭腫症:乳房間部などの体幹で淡褐色斑が融合し、網状局面を形成する後天性角化症
  • 5. 疣贅状表皮発育異常症:HPV(とくにHPV-5)への免疫不全から、扁平疣贅が多発し露光部で発癌をきたす

*HPV = human papilloma virus

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p298(3)/540(1)/385(2)/299(4)/497(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p373(3)/910(1)/547(2)/371(4)/808(5)

関連問題(黒色表皮腫)

選択問題80:解答 5

銅はジャパニーズスタンダードアレルゲン(JSA)に含まれない→5

JSAは日本人がかぶれやすいアレルゲン26種類を選定したもので、最新版は2015

詳細は下記

220602-JSA2015
ジャパニーズスタンダードアレルゲン(JSA) 2015 パッチテスト

続きを見る

各アレルゲンに関する周辺知識は下記

  • 1. 金:パッチテストの陽性率が女性の方が高い(女性25.6%/男性15.7%)
  • 2・3. ニッケル・クロム・コバルト:食品であるナッツやチョコレート・ココアに含まれ、全身性接触皮膚炎の原因となりえるため除去療法が行われることがある
  • 4. 水銀:以前は水銀温度計破損による水銀皮膚炎が有名だったが、近年は激減している
  • 5. 銅:ジャパニーズスタンダードアレルゲンに含まれない

全身性接触皮膚炎:感作されたアレルゲンを"非経皮的に"取り込むことで全身にアレルギー反応が生じる

関連2019 選択94 (パッチテストパネル®(S)に含まれないもの:ウルシオール)

※JSA関連の問題は他にも複数あり、詳細は上記カード内の記事参照

選択問題81:解答 4, 5

未治療糖尿病患者。大腿部で疼痛を伴う紫斑・潰瘍局面がみられ発熱を伴い、壊死性筋膜炎(壊死性軟部組織感染症)を疑う

迅速診断・治療のためには試験切開と病変部Gram染色での菌同定が重要→4, 5

  • 1. 局所の細菌培養:有効だが、培養結果が出るまで時間がかかるため迅速ではない
  • 2. 病理組織検査:診断や治療に直結せず、また結果が出るまでに時間が必要
  • 3. LRINECスコアの評価:蜂窩織炎との鑑別に有効なスコアだが、鋭敏性では4に劣る
  • 4. 試験切開:切開を行い、滲出液や変性した筋膜を認めれば確定診断となる
  • 5. 病変組織塗抹のGram染色:迅速診断として行われ、原因菌の推定・抗菌薬選択が可能。壊死性軟部組織感染症では単一菌が原因の場合と複数菌が原因の場合で、病初期の経験的治療薬(empiric therapy)が異なる※

※壊死性軟部組織感染症の経験的治療薬は下記の通り(日本版 敗血症診療ガイドライン2020)

主に想定される原因菌 経験的治療薬
単一菌疑い

(グラム陽性球菌/グラム陽性桿菌)

β溶血性レンサ球菌, クロストリジウム, 稀に黄色ブドウ球菌

(市中型MRSAを含む)

「CTRX2g 24時間毎 or SBT/ABPC3g 6時間毎」

±VCM ± CLDM600mg 8時間毎

複数菌疑い

(糖尿病性, フルニエ壊疽)

黄色ブドウ球菌, 大腸菌, 嫌気性菌 TAZ/PIPIC 4.5g 8時間毎

± VCM

海水・淡水への曝露 エロモナス, ビブリオ CTRX2g 24時間毎 + MINO100mg 12時間毎

選択肢3について。LRINECスコアは壊死性筋膜炎と蜂窩織炎の鑑別に利用される。ただ発症早期では(検査値異常は臨床像より遅れるため)スコアが低値となることも多い(スコア0点で壊死性筋膜炎であった症例報告が知られる)。本問は病歴から壊死性軟部組織感染症が強く疑われ、仮にスコアが低値であっても壊死性軟部組織感染症を否定できないためスコア計算の重要性は下がる

また抗菌薬投与後に有用性が下がるGram染色と比較し、スコアリングは後からでも可能である

上記の理由から選択肢3は誤りと考え、4・5を解答とした

関連問題(壊死性筋膜炎)

壊死性軟部組織感染症は初期診断が難しく、試験切開の重要性がよく強調される

選択問題82:解答 2, 4

若年女性で、小児期より掌蹠の多汗があり生活に支障をきたしている。

原発性手掌多汗症の治療では塩化アルミニウム外用とイオントフォレーシスが第一選択で推奨されている→2, 4

原発性多汗症 部位ごと推奨治療

原発性多汗症の好発部位は腋窩・手掌・足底・頭部顔面

それぞれ推奨治療が異なる(カッコ内は推奨度)

第一選択 第二選択
腋窩 10-35%塩化アルミニウム(B) BT-A(B)
抗コリン外用薬(B)
手掌 20-50%塩化アルミニウム(B) BT-A(B)
イオントフォレーシス(B) 交感神経遮断術(B 条件付き)
※重症例
足底 20-50%塩化アルミニウム(C1) BT-A
イオントフォレーシス(B)
頭部顔面 10-20%塩化アルミニウム(B〜C1) BT-A(B〜C1)
内服療法(B〜C1)

*BT-A:ボツリヌス毒素A型

  • 1. グランダキシン内服療法:抗コリン薬のプロバンサイン®と同等(日本で保険適用があるのはこれのみ)。掌蹠は他の治療法があるため第1選択にはならない
  • 2. 塩化アルミニウム外用:部位を問わず、第1選択にすることが推奨されている。ただし保険適用はない(院内製剤として一般的に処方)
  • 3. 内視鏡的交感神経遮断術:重症例で保存的治療に抵抗性の場合に行われ、第1選択ではない
  • 4. 水道水イオントフォレーシス療法:掌蹠に対して塩化アルミニウムと並び第1選択
  • 5. A型ボツリヌス毒素注射療法:重度の腋窩多汗症に対してのみ保険適用。掌蹠にも有効だが保険適用がなく第1選択ではない

なお腋窩多汗症に対して近年新規の保険適用薬が2つ発売され、2023年刊行の新版ガイドラインにも掲載された(本問出題時は未発売)

商品名 一般名
エクロック®ゲル ソフピロニウム臭化物
ラピフォート®ワイプ グリコピロニウムトシル酸塩水和物

2023年5月には"手掌"多汗症に対する初の保険適用薬、アポハイド®ローション(オキシブチニン)も発売となった。ただし足蹠多汗症への保険適用はない

本問出題時のガイドラインは2010年版であったが、原発性手掌多汗症の推奨治療は最新の2023年版と変化していない

関連問題(原発性局所性多汗症)

選択問題83:解答 3, 4, 5

各種疾患と特徴的皮疹について問う問題

  • 1. Osler病は鼻出血や毛細血管拡張症(舌や口唇)を生じる。色素沈着をきたす疾患にPeutz-Jeghers症候群などがある
  • 2. 全身性アミロイドーシス:免疫グロブリン増加(≒多発性骨髄腫)や透析に伴うアミロイドーシスで、皮膚では巨舌やpinch purpura(軽い刺激での紫斑)をきたす。地図状舌は膿疱性乾癬等で見られる所見
  • 3. 菌状息肉症:初期の紅斑期は乾癬や湿疹、魚鱗癬に類似した皮疹を示し、多形皮膚萎縮が見られる場合もある
  • 4. 透析患者:びまん性脱毛の原因となる(維持透析患者の60%で生じる)。肝硬変でもみられる
  • 5. 慢性腎不全:half and half nailは爪甲近位部1/2が白く濁った状態で、腎不全や肝硬変でみられる(低栄養や高齢者でも生じる)

選択問題84:解答 1

旧特定疾患に含まれないのは色素性乾皮症→1

特定疾患と指定難病

特定疾患は従来56疾患で、審査をパスすれば医療費が公費負担(都道府県および市町村)となっていた

しかし患者数の増加による予算増加や、指定外疾患患者での不公平感が問題となっていた

そのためH27(2015)年1月から難病法が施行された

  • 指定疾患数:56→300疾患以上と大幅に増加
    (施行後にも適宜追加されている)
  • 医療費:一定以上の重症度であれば助成を受けられるが、原則自己負担が必要
    所得に応じて自己負担上限額は変わる
  • 公費負担者:都道府県および市町村と国が折半

要約すれば、「疾患数を絞り限られた患者に手厚い支援を行う(自己負担ゼロ)より、対象疾患を広げ多くの患者に浅く支援を行う(自己負担アリ)方が公益性が高いのでそのような方向へ変わってきた」といえる

なお旧特定疾患の多くは指定難病へ移行したが、現在でもスモンとヒト由来乾燥硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病は特定疾患として残っている。これは医原性疾患で患者に自己負担を求めるのは酷なので、全額公費負担の特定疾患扱いを継続しましょう、という発想と思われる(筆者の推測)

下記では各選択肢について、56特定疾患(現在残っているものとの区別のため旧特定疾患と表記)に含まれるかと難病指定の有無を記載する

  • 1. A群色素性乾皮症:旧特定疾患ではなかったが、指定難病159になっている
  • 2. 急性期重症多形滲出性紅斑:旧特定疾患であったが、この名称では指定難病になっていない(スティーヴンス・ジョンソン症候群は指定難病38)
  • 3. 接合部型表皮水疱症:旧特定疾患であり、指定難病36になっている。旧特定疾患では接合部型/栄養障害型のみだったが、指定難病には全病型が含まれる
  • 4. 疱疹状膿痂疹*:膿疱性乾癬として、旧特定疾患および指定難病37に含まれる
  • 5. 落葉状天疱瘡:天疱瘡は旧特定疾患であり、指定難病35になっている

*疱疹状膿痂疹:妊娠を契機に発症し、分娩で軽快する汎発性膿疱性乾癬の病型

「指定難病」で追加された皮膚科疾患は選択肢1の色素性乾皮症の他、先天性魚鱗癬・AIGA(特発性後天性全身性無汗症)・弾性線維性仮性黄色腫・眼皮膚白皮症などがある

関連2017 選択92 (指定難病の医療費助成条件)

上記のような経緯から、今後の出題で本問のように「特定疾患」について問われることは基本的にないだろう(問われるなら指定難病)

選択問題85:解答 4

学校感染症の出席停止期間について問う問題

風疹は発疹が消失するまでの出席停止が定められている→4

一部の感染症は学校での流行を防ぐため、学校保健安全法で出席停止期間が定められている

一方法律に規定がなかったが、現場で混乱を招きやすいため日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会等の統一見解が出されている疾患もあり、風疹以外の選択肢の疾患はこちらに該当する

詳細は下記

感染症の出席停止期間 学校保健安全法 【プールの可否】

続きを見る

  • 1. 手足口病:摂食不良や発熱・下痢がなく、全身状態良好なら出席可能
  • 2. 伝染性紅斑:発熱・関節痛等がなく、全身状態良好なら出席可能
  • 3. アタマジラミ:出席可。タオルやヘアブラシの共用は避ける
  • 4. 風疹:第二種感染症に該当。発疹が消失するまで出席停止
  • 5. 伝染性膿痂疹:病変が広範囲 or 全身症状があるなどでなければ、出席可能。プールは治るまで禁止

関連問題:学校感染症は頻出, 詳細は上記カード内の記事参照

選択問題86:解答 2

ベムラフェニブ(ゼルボラフ®)のターゲットはBRAF→2

BRAF→MEK→ERKというMAPキナーゼ経路があり、悪性黒色腫では同部位のシグナル伝達が異常活性化することで腫瘍性増殖をきたす

BRAF/MEK阻害薬やシグナル伝達経路については下記参照

BRAF-MEK-inhibitor
BRAF阻害薬とMEK阻害薬 【悪性黒色腫】

続きを見る

  • 1. HRAS:BRAFの上流に存在し、Spitz母斑の20%で異常が見られる
  • 2. BRAF:ベムラフェニブのターゲット。悪性黒色腫のうち、とくにlow-CSDメラノーマ(表在拡大型)で変異が多い
  • 3. MEK:BRAFの下流に存在し、BRAF阻害薬と併用でMEK阻害薬が用いられる
  • 4・5. Akt→mTOR:MAPキナーゼ経路とは別のPI3K経路に関与する細胞内分子で、mTORは結節性硬化症治療のターゲット(ラパリムス®ゲル)

関連問題

ベムラフェニブは対になるMEK阻害薬が国内未承認のため、効果・副作用に優れるBRAF/MEK阻害薬併用療法が保険適用となった現在はほぼ使われない

記述問題1:解答 toll-like receptor (トール様受容体)

リポ多糖(LPS)やCpGDNAなどの微生物構成成分を感知する受容体はトール様受容体(toll-like receptor:TLR)と呼ばれる

TLRによって微生物成分を認識することで、下流の病原体排除機構が活性化される(自然免疫系)

様々なサブタイプがあり、それぞれ認識可能な構成成分(リガンド)が異なる

  • TLR4:LPS
  • TLR7/TLR8:ssRNA (ウイルス)
  • TLR9:CpG DNA (細菌, ウイルス)

なおイミキモド(ベセルナ®)クリームはTLR7を活性化することで免疫賦活化作用を持ち、日光角化症や尖圭コンジローマの治療に使われる

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p29
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p71

関連問題

記述問題2:解答 a 丘疹, b 苔癬化

湿疹三角について問う問題

急性湿疹が生じてから治るまでの過程が三角形で描かれている

2014-EczemaTriangle

参考サイトより引用

  • 急性期:紅斑→丘疹・小水疱
  • 移行期:びらん・痂皮→落屑
  • 慢性期(苔癬化・色素沈着)への移行ないし治癒

文献によって微妙に記載ブレがあり、bは色素沈着でも可と思われる(「あたらしい皮膚科学」にしか記載はないが否定もできないだろう)

記述問題3:解答 モンドール(Mondor)病

中高年男性の側腹部にある有痛性の索状のしこりで、組織では血管内血栓を認めモンドール病の診断

モンドール病

30〜60歳代女性の胸部や上腹部で索状の皮下硬結をきたす疾患

男性の陰茎背や冠状溝に生じるとnonvenereal sclerosing lymphangitis of the penisと呼ばれる

病態はリンパ管や静脈の増殖・血栓性閉塞で、胸部手術や圧迫が誘因となる

組織学的に脈管の肥厚と内腔狭窄がみられるが、炎症細胞浸潤はみられない

数週間〜数ヶ月で自然消退するため経過観察が基本

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p179
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p233

関連2017 記述3 (ほぼ同一問題)

記述問題4:解答 tRNA

抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗ARS抗体)は抗Jo-1抗体や抗PL-7抗体など8種類の自己抗体の総称。細胞成分に対する自己抗体のため、抗核抗体は陰性となる

抗ARS抗体皮膚筋炎には皮膚症状として「機械工の手(mechanics' hand)」を伴い、慢性進行性間質肺炎の合併が多いという特徴がある

皮膚筋炎の自己抗体と臨床症状については下記参照

Dermatomyositis-antibody
皮膚筋炎 自己抗体と臨床症状 まとめ

続きを見る

2014年1月より抗ARS抗体測定が保険収載された(それ以前は抗Jo-1抗体のみ)ため、出題されたものと思われる

抗ARS抗体と抗Jo-1抗体を同時に測定しても、保険診療上は片方しか算定できない。また通常使われる「MESACUP™ anti-ARSテスト」では、8種類のうち3種類(抗OJ/抗Ha/抗Zo抗体)は測定できない点にも注意

なお上記3種類も含めた8種類すべてを測定可能な方法にA-Cube®がある(2021年〜, 保険適用外)

関連問題(抗ARS抗体)

記述問題5:解答 疣状黄色腫 (verruciform xanthoma)

高齢男性で自覚症状のない疣状紅色腫瘤がみられ、組織では淡明な細胞質を持つ泡沫細胞(脂質を貪食した組織球)が増殖している

疣状黄色腫の診断

口腔内や口唇、外陰部に好発する黄色〜赤色調の有茎性結節をきたす疾患で、血中脂質は正常値

発疹性黄色腫は高TG血症と、その他(眼瞼・腱・結節性など)は高LDL血症と関連する

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p323
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p466

関連問題

記述問題6:解答 反応性穿孔性膠原線維症 (reactive perforating collagenosis)

瘙痒感を伴い中央陥凹を有する茶褐色の角化性丘疹/結節が多発している。

組織学的には膠原線維(エラスティカファンギーソン染色で赤く染まる)の経表皮性排除がみられ穿孔性皮膚症の一つ、反応性穿孔性膠原線維症の診断

糖尿病や腎不全に合併することが多い

穿孔性皮膚症

組織学的に変性した皮膚成分が経表皮的に排泄される疾患を穿孔性皮膚症と呼ぶ

代表例は下記2つで、いずれも基礎疾患を伴うことが多い

排泄される組織 病名 基礎疾患
膠原線維 反応性穿孔性膠原線維症 糖尿病
腎不全 (特に透析患者)
弾性線維 蛇行性穿孔性弾力線維症 Marfan症候群
Ehlers-Danlos症候群
弾性線維性仮性黄色腫
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p343-344
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p505

関連問題

記述問題7:解答 外毛根鞘嚢腫 (trichilemmal cyst)

後頭部の皮下腫瘤で、顆粒層を伴わない角化形式(外毛根鞘性角化)がみられることから外毛根鞘嚢腫の診断

外毛根鞘は頭部の毛包の大部分で最外層に位置し、このような組織像となる

一方粉瘤(表皮嚢腫)は(外毛根鞘が消失する)毛包漏斗部に由来し、顆粒層を伴う通常の角化形式をとる

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p418
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p611

関連2019 記述17 (外毛根鞘性角化)

記述問題8:解答 エクリンらせん腺腫, 血管脂肪腫, グロムス腫瘍など

有痛性皮下腫瘍を2つ問う問題

有痛性皮下腫瘍 LEND AN EGG (ANGEL)

英語名 日本語名
L:Leiomyoma 平滑筋腫
E:Eccrine spiradenoma エクリンらせん腺腫
N:Neuroma 神経腫
D:Dermatofibroma 皮膚線維腫
A:Angiolipoma 血管脂肪腫
N:Neurilemoma (Schwannoma) 神経鞘腫
E:Endometriosis (Endometrioma) 子宮内膜症
G:Glomus tumor グロムス腫瘍
G:Granular cell tumor 顆粒細胞腫

※ANGELという暗記方法もあるようです

子宮内膜症は「皮膚腫瘍か?」という点から避けたほうが無難そうですが、他は大体何を書いても正解と思われます

  • 参考:みき先生の皮膚病理診断ABC ②付属器系病変 p216
みき先生の皮膚病理診断ABC (2) 付属器系病変

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関連問題(有痛性腫瘍)

(なぜか)特にエクリンらせん腺腫が有痛性という話が超頻出

記述問題9:解答 菌様モザイク

矢印は菌様モザイクを示している

菌様モザイク

サンプルに混入した真皮の膠原線維や細胞膜脂質で、浸軟した鱗屑や乾いた踵の角質で生じやすい

真菌と混同しないように注意が必要

対策:数分時間を置き、検体をよく溶かすこと

2014-mosaic-fungus

参考文献より引用, 右が菌様モザイク。菌糸(左)と比較して太さが不均一

記述問題10:解答 黄色爪症候群 (yellow nail syndrome)

全指趾の爪が黄色に変化しており、胸部X線/CTでは胸水貯留を認める→黄色爪症候群の診断

黄色爪症候群

リンパ循環障害による後天性の症候群

  • ほぼ全爪の黄色化
  • 呼吸器疾患(慢性気管支炎・気管支拡張症・胸水貯留)
  • リンパ浮腫 (四肢や顔面)

が3徴

30%は自然軽快する

なお黄色爪自体は薬剤副作用(ブシラミンやd-ペニシラミン)でもみられる

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p372
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p776

関連問題

記述問題11:解答 円柱腫

組織像を問う問題。

腫瘍塊の巣状増殖と間質の好酸性構造物から、円柱腫の診断

頭部に後発し、Brooke-Spiegler症候群では多発する

2014-Cylindroma

参考文献より引用, 真皮に腫瘍細胞が巣状増殖し好酸性細胞質部分が見られる

関連問題

記述問題12:解答 毛包上皮腫

組織像を問う問題

基底細胞癌類似の細胞から構成される腫瘍胞巣が増殖し、毛芽腫とも類似するが分化先が異なる

  • 毛芽腫:毛球への分化
  • 毛包上皮腫:毛球への分化 + 毛包漏斗部への分化(角質嚢胞*)

*角質嚢胞:脂漏性角化症でみられる偽角化嚢腫に類似した病変

毛包上皮腫は1つ前の円柱腫と同様、Brooke-Spiegler症候群で多発する腫瘍の一つ

下記書籍も参考になる(上記セミナリウムの筆者)

みき先生の皮膚病理診断ABC (2) 付属器系病変

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泉 美貴
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関連問題

本例では角質嚢腫がはっきりとせず病理だけで毛包上皮腫と言えるかというと謎だが、Brooke-Spiegler症候群との関連を考えれば毛包上皮腫という解答が妥当だろう

記述問題13:解答 神経線維腫症1型

組織を問う問題

神経線維腫では境界明瞭な皮下結節で、紡錘形の核を持つ細胞が増生し間質に膠原線維が錯綜する

その他神経線維腫の病理について、重要な知識は下記

神経線維腫症1型

癌抑制遺伝子であるニューロフィブロミンの遺伝子変異で発症し、RAS/MAPシグナル伝達経路に関する遺伝子異常で生じるRASopathyの一つ

神経線維腫症が多発し、一部で悪性化(→悪性末梢神経鞘腫)する

その他にも特徴的な皮膚症状がみられる

関連問題 (神経線維腫の病理)

記述問題14:解答 Verocay body

神経鞘腫はAntoni A領域/B領域に分けられる

A領域で見られる無核の領域を紡錘形細胞が柵状に囲む病理組織所見はVerocay bodyと称され、同部位は良性腫瘍だが血流も豊富

Antoni 組織
A領域 細長い核が柵状に並ぶ帯と、核に乏しい好酸性の部位からなる構造

(Verocay body)

B領域 方向性がなく細胞成分が疎

1問前の問題で問われているように神経線維腫症1型(NF1)では神経線維腫が多発するが、NF2では神経鞘腫とくに両側聴神経鞘腫が特徴で予後はNF1より悪い

関連問題(神経鞘腫, NF2)

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