皮膚科 皮膚科専門医試験対策

平成26(2014)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題51〜75

2022年10月27日

2014-Specialist-3

日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成26(2014)年度解答解説を作成しました

見出しから各問題へ飛べます

誤字脱字ご意見などあればコメント・右のフォーム・Twitterなどでご連絡ください

  • 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
  • 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版、ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
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選択問題26〜50は下記

2014-Specialist-2
平成26(2014)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題26〜50

続きを見る


平成26年度(2014年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 51〜75

選択問題51:解答 2

女児で肛門部の12時方向に正常皮膚色の隆起性病変がみられる

Infantile perianal protrusionの診断で、自然消退することが多い→2

Infantile perianal protrusion

肛門部に生じる突起で、舌の先端やピラミッドに類似した形態を示す

  • 先天性・便秘に伴うもの・硬化性萎縮性苔癬に伴うものに分類される
  • 1ヵ月〜2歳6ヵ月までの女児で肛門部12時方向に多い
  • 成長に伴って自然消退・縮小する
2014-infantile-perianal-protrusion

参考サイトより引用, 肛門から突出する病変がみられる

下記のような様々な別名がある

  • 肛門皮垂
  • 尖兵ポリープ
  • Infantile perianal pyramidal protrusion
  • perineal pyramidal protrusion
  • 1. 外的刺激が原因と考えられている。HPV感染症である尖圭コンジローマは鑑別疾患となり得る
  • 2. 成長に伴って自然消退することが多い
  • 3. 女児が大多数を占める
  • 4. digital fibrokeratoma:表面に過角化を伴う正常皮膚色の弾性硬小結節で、指趾に好発する。結節性硬化症でみられるKoenen腫瘍も含まれる
  • 5. 遺伝性疾患ではない
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p434(4)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p664(4)
  • 参考:Infantile perianal protrusionの1例 臨床皮膚科58巻1号 p58-60, 2004
  • 参考:肛門垂の1例 臨床皮膚科55巻7号 p468-469, 2001
  • 参考・図引用:Infantile perianal protrusion Dermatol Online J. 2014 Dec 14;21(3)

選択問題52:解答 2, 4, 5

蛇行性穿孔性弾力線維症の原疾患を問う問題

弾性線維変性をきたす疾患でみられる→2, 4, 5

穿孔性皮膚症 / 蛇行性穿孔性弾力線維症

組織学的に変性した皮膚成分が経表皮的に排泄される疾患を穿孔性皮膚症と呼ぶ

代表例は下記2つ

  • 弾性線維:蛇行性穿孔性弾力線維症
  • 膠原線維:反応性穿孔性膠原線維症

蛇行性穿孔性弾力線維症は弾性線維変性をきたす基礎疾患を持つことが多い

  • Marfan症候群
  • Ehlers-Danlos症候群
  • 弾性線維性仮性黄色腫
  • Rothmund-Thomson症候群

反応性穿孔性膠原線維症では糖尿病や腎不全の合併例が多い

  • 1. POEMS症候群:多発性神経炎(P)・M蛋白血症(M)などの頭文字をとった症候群。皮膚では糸球体様血管腫や色素沈着をきたす
  • 2. Marfan症候群:フィブリン遺伝子変異が原因(AD)で、高身長や蜘蛛状指のほか解離性大動脈瘤・水晶体亜脱臼をきたす
  • 3. Melkersson-Rosenthal症候群:肉芽腫性口唇炎・顔面神経麻痺・雛壁舌を3徴とする肉芽腫性疾患
  • 4. Ehlers-Danlos症候群:Ⅰ・Ⅲ・Ⅴ型コラーゲン遺伝子変異が原因(多くはAD)で、皮膚の過伸展や脆弱性を生じる。関節の易脱臼性や、動脈破裂など血管症状も症状の一つ
  • 5. 弾性線維性仮性黄色腫:ABCC6遺伝子変異が原因(AR)で弾性線維の変性とカルシウム沈着をきたす。皮膚の他心血管病変や網膜色素線条、消化管病変を合併する

*AD = 常染色体優性遺伝疾患, AR = 常染色体劣性遺伝疾患

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p343/425(1)/352(2)/349(3)/351(4)/353(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p506/685(1)/490(2)/520(3)/494(4)/493(5)

関連問題

選択問題53:解答 5

早老症候群に含まれる疾患を問う問題

Maffucci症候群は早老症ではない→5

  • 1. Werner症候群:早老症の代表で日本人に多い(報告患者の8割は日本人)。鳥様顔貌や特徴的な嗄声(high pitched voice)をきたし、皮膚では足の難治性潰瘍・強皮症様皮膚が特徴
  • 2. Hutchinson-Gilford症候群(progeria):選択肢1よりも早期に発症し、予後不良な早老症
  • 3. Rothmund-Thomson症候群:早期から多型皮膚萎縮をきたし、1/3で光線過敏症を合併する
  • 4. Cockayne症候群:早老症+光線過敏症ををきたす。色素性乾皮症と合併することがあるが、本疾患自体は高発癌性ではない。
  • 5. Maffucci症候群:先天性の中胚葉形成不全から海綿状血管腫と軟骨形成不全/多発内軟骨腫をきたす

選択肢1〜4の早老症はいずれも常染色体劣性遺伝形式をとる。Maffucci症候群は非遺伝性

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p340(1・2・4)/341(3)/405(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p497(1)/498(2)/499(3)/284(4)/582(5)

関連問題

選択問題54:解答 1, 3

イミキモド(ベセルナ®)クリームの保険適用は尖圭コンジローマおよび日光角化症→1, 3

TLR7を介してIFN-αなど炎症性サイトカインを惹起し、免疫賦活化作用を持つ

イミキモド(ベセルナ®)クリーム 外用部位・期間

保険適用疾患 部位 外用期間
日光角化症 顔面 or 禿頭部 4週間外用→4週間休薬
を2回まで(合計16週間)
尖圭コンジローマ 外性器 or 肛門周囲 16週間まで

外用方法はいずれも1日1回週3回就寝前→起床後洗い流す

※刺激性が強いため、連日の外用や洗い流さないのはNG

230211-imiquimod-beselna
イミキモド(ベセルナ®)クリーム まとめ

続きを見る

関連:イミキモドは頻出, 関連問題は上記カード内の記事参照

選択問題55:解答 4

体幹や四肢に角化性紅斑が多発しており、組織学的に不全角化細胞が円柱状に配列するcornoid lamellaの像が見られる

上記より汗孔角化症(porokeratosis)の診断→4

ダーモスコピーではwhitish peripheral rimと呼ばれる辺縁部の過角化部位が見られる(cornoid lamellaに対応)。腫瘍中央部の紅色点状部分は拡張した血管に相当する(red dots, globueles)

汗孔角化症 (porokeratosis)

常染色体優性遺伝形式をとる角化症(孤発例も多い)

  • 特徴:前癌病変のため長期経過でBowen病や有棘細胞癌に移行
  • 組織:cornoid lamella(不全角化細胞が円柱状に配列する)が特徴

発症機序

メバロン酸代謝に関わるMVD遺伝子等の変異が原因で、セカンドヒットにより発症する

セカンドヒットが生じる時期(胎生期 or 紫外線暴露による成人期)で、病型分類できる

病型 皮疹分布 発症機序
播種状表在性光線性 成人の露光部(四肢) 受精卵で1ヒット紫外線等により全身の様々な部位でセカンドヒットが生じる
線状型 小児で線状 受精卵で1ヒット胎生期に1つの細胞でセカンドヒットが生じたものが、Blaschko線に沿って分布する

関連問題(汗孔角化症)

選択問題56:解答 4

未分化有棘細胞癌ではケラチンに代わってビメンチンの発現が増加する→4

未分化有棘細胞癌 (spindle cell scc)

通常の有棘細胞癌(SCC)は高分化型のため、癌真珠や異常角化細胞が見られる

未分化有棘細胞癌は分化度が低く、角化傾向が乏しい。spindleという名前の通り、紡錘形の(肉腫様)腫瘍細胞増生がみられる

免疫染色:サイトケラチン(-) ビメンチン(+)となる場合がある

サイトケラチンは上皮系の、ビメンチンは間葉細胞系のマーカーであり通常のSCCではサイトケラチン(+) ビメンチン(-)

関連問題

選択問題57:解答 2, 5

皮膚腫瘍に関する問題

  • 1. Bowen病は露光部にも生じることがある。一方日光角化症は露光部のみ
  • 2. 基底細胞癌はムチン沈着を伴うため、腫瘍胞巣周囲に裂隙を形成する。一方組織学的に類似する毛芽腫はムチンを産生せずfibroepithelial unit*が特徴
  • 3. 日光角化症の異型細胞や異常角化は付属器上皮(毛包や汗腺)を避けpink and blue signと呼ばれるが、完全に進展しないわけではない
  • 4. 脂腺癌は眼瞼発生が多いとされてきたが、国内では眼瞼外が多い(39/60例)という報告もある→△
  • 5. 乳房外Paget病は毛包や汗管などの付属器へ進展する

*fibroepithelial unit:腫瘍胞巣周囲に膠原線維が密着し、その外側に裂隙がみられる

本問は正答率が6.1%と極めて低かったことから採点除外となっている

選択肢4について。教科書的に、脂腺癌は眼瞼発生が多いという記載が一般的。上記論文では眼瞼外が多いと主張されているが、「札幌皮膚病理研究所」の報告であり、(眼科領域で扱われることも多い)脂腺癌についてこれが普遍的事実なのかどうかは不明

ただ2014年度の皮膚科専門医試験について述べられている「JDA Letter vol.21」では、脂腺癌の発生部位に関して受験者の知識にピットフォールがあったようです。教科書によっては誤解を招く記載があることを確認しました。少なくとも日皮会誌やJDの臨床研究的な論文、例えば脂腺癌(Sebaceous carcinoma)の臨床的観察などには注意を払う必要がありますと記載され、教科書記載より本論文の結果が妥当であると出題者は認識している様子が伺える。よってここでは間違い選択肢と考えた

なお2015年度 選択76でも脂腺癌について同内容が出題がされている(リンク先参照)

関連問題

選択問題58:解答 3, 4

出生時から存在する頭部の脱毛斑で、成長に伴い隆起してきたという病歴から脂腺母斑(類器官母斑)を考える→3, 4

組織では脂腺の増加がみられる

脂腺母斑

脂腺の増加を特徴とする母斑で、頭部・顔面に後発する

出生時は脱毛斑としてみられるが、思春期頃から疣状となりやがて腫瘍が続発する

以前は基底細胞癌の続発が多いとされていたが、現在は毛芽腫(良性腫瘍だが組織像が基底細胞癌に類似する)であったと考えられている

  • 1. 表皮母斑:角化細胞由来の母斑。代表例の列序性表皮母斑はBlaschko線に沿い、病変部分で顆粒変性KRT1/10遺伝子変異が見られる(表皮融解性魚鱗癬モザイク)
  • 2. 軟骨母斑:間葉系母斑で外耳孔部〜頬部〜頚部に発生し軟骨成分を伴う。耳周辺に発生したものは副耳と呼ばれる
  • 3・4. 脂腺母斑(類器官母斑):脂腺増殖をきたす母斑で、思春期以降に二次性腫瘍が発生する
  • 5. 黄色腫母斑:この様に呼ばれる母斑はない(医中誌等検索したが発見できず)
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p386(3・4)/385(1)/388(2)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p550(3・4)/547(1)/566(2)

関連問題

選択問題59:解答 3

高齢男性で色素斑と脱毛・爪甲変形をきたしており、消化管内視鏡ではポリポーシスを認める。下痢による体重減少・低タンパク血症があり病勢が強い

Cronkhite-Canada症候群の診断で、治療にはステロイド内服が行われる→3

色素斑をきたす母斑症

色素斑をきたす母斑症は消化管ポリポーシスの合併が多い

遺伝 消化管ポリポーシス 皮膚病変
Peutz-Jeghers症候群 常染色体優性遺伝
(半数は孤発例)
+ 出生時〜
Cronkhite-Canada症候群 - + 中年期以降脱毛や脱色素斑、爪甲異常を伴う
Laugier-Hunziker-Baran症候群 - - 20〜50代

なおGardner症候群は大腸ポリポーシスを生じるが、皮膚では色素斑ではなく表皮嚢腫や骨腫をきたす疾患

  • 1. Cronkhite-Canada症候群は遺伝性疾患ではない。Peutz-Jeghers症候群(LKB1=STK11遺伝子変異が原因)は常染色体優性遺伝疾患
  • 2. APC遺伝子異常がみられるのはGardner症候群で、家族性大腸腺腫症と同一
  • 3. 消化管ポリープの治療にステロイド内服や抗TNFα抗体製剤が行われる
  • 4. 頭蓋骨の骨腫を伴うのはGardner症候群
  • 5. Cronkhite-Canada症候群やPeutz-Jeghers症候群の消化管病変は非腫瘍性ポリープで癌化傾向は強くない。一方Gardner症候群の大腸ポリポーシスは癌化傾向が強い(家族性大腸腺腫症と同一疾患のため)

関連問題

選択問題60:解答 4

足底の色素斑で、□で囲われた皮丘部(左上の写真で突起部であることがわかる)の色素沈着がみられる

ダーモスコピーではparallel ridge pattern(皮丘並行パターン)→4

悪性黒色腫を示唆するダーモスコピー所見とされる

  • 1. Fibrillar pattern:擦ったような色素パターンで、足底の擦れやすいところでみられるparallel furrow patternの亜型(母斑細胞母斑)
  • 2. Blue-white veil(青灰色ベール):青灰色〜青白色の領域で真皮でのメラノサイト増殖を示し、境界型母斑や真皮浸潤したメラノーマでみられる所見
  • 3. Brown dots:色素の小点を示し、メラノサイト系病変にて見られる塊状のメラニン顆粒
  • 4. Parallel ridge pattern:皮丘部に一致したメラノサイト沈着で、悪性黒色腫に特徴的な所見。HEでみて膨らんでいる部位が皮丘、凹んでいる部位が皮溝に該当する
  • 5. irregular pigment network(非定型ネットワーク):不規則な色素ネットワークで、悪性黒色腫を示唆する所見。足底は非有毛部のため、色素ネットワークはない
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p57(1・4)/55(3)/56(5)
  • 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p88(4)/84(1)/58(2)/50(3)/68(5)

関連問題

選択問題61:解答 4

上肢で赤色丘疹があり、ダーモスコピーでは放射状に配列する血管(linear vessels)がみられる

クモ状血管腫の診断で、肝機能障害に合併することがある→4

エストロゲン上昇が原因となり(肝障害では分解できなくなる)、妊娠やピル内服でも生じる場合がある

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p62・429(4)/332(2)/326・344(3)/373(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p684(4)/460(2)/505(3)/780(5)

選択問題62:解答 4

黒褐色で境界明瞭な貯留物質がみられ、面皰様開大(comedo-like opening)に該当する→4

多発性稗粒腫様嚢腫(multiple milia-like cysts)と並ぶ脂漏性角化症に特徴的なダーモスコピー所見

2014-comedo-like-openings

参考サイトより引用, 矢印先に黒褐色部位がみられる

  • 1. 糸球体様血管(glomerular vessels):塊状に蛇行した毛細血管が、腎糸球体の様にみえる所見。Bowen病やエクリン汗孔腫でみられる
  • 2. 多発性青灰色小球(multiple blue-gray globules):青灰色の色素小球で、基底細胞癌の腫瘍胞巣に対応した所見。大型のものはlarge blue-gray ovoid nests(大型青灰色類円形胞巣)と呼ばれる
  • 3. 集簇性色素小球(globules):メラノサイト系病変でメラニン塊を反映した所見。規則的であれば良性病変を、不規則であれば悪性病変を示唆する
  • 4. 面皰様開大:黒褐色で境界明瞭な貯留物質で、脂漏性角化症でみられる角栓に対応する所見
  • 5. 青灰色ベール(Blue-white veil):青灰色〜青白色の領域で真皮でのメラノサイト増殖を示し、境界型母斑や真皮浸潤した悪性黒色腫でみられる所見
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p59(2・4)/62(1)/55(3)
  • 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p168(4)/114(1)/162(2)/50・52(3)/58(5)
  • 参考・図引用:Comedo like openings - dermoscopedia

関連問題

  • 2022 記述3 (multiple milia-like cystの組織像)
  • 2013 選択61 / 2011 選択63 (脂漏性角化症のダーモスコピー所見)

選択問題63:解答 3

ダーモスコピー問題

皮溝に平行な色素沈着に加え、直交する色素沈着がみられ格子状パターンに合致する→3

皮溝並行パターン(良性)の亜型で、足底土踏まず部の色素性母斑で見られる

2014-lattice-like pattern

参考サイトより引用, 横の皮溝一致した色素沈着と、直行する線条が見られる

手掌足底のメラノサイト病変 ダーモスコピー所見

手掌足底は皮丘・皮溝に分けられる

原則は皮丘部に一致した色素沈着=悪性黒色腫を示唆する所見

色素性母斑
(母斑細胞母斑)
悪性黒色腫
(メラノーマ)
色素沈着部位 皮溝 皮丘
ダーモスコピー所見 parallel furrow pattern parallel ridge pattern
皮溝並行パターン 皮丘並行パターン

ただし皮溝一致パターンのうち、一部の亜型では皮丘部にも色素沈着を伴う場合がある

この場合、色ムラや全体構築から良悪性を判断する必要がある

  • 1. 線維状パターン(fibrillar pattern):擦ったような色素パターンで、足底の荷重部にみられる
  • 2. 皮丘平行パターン(parallel ridge pattern):皮丘部優位の色素沈着で、悪性黒色腫を示唆する所見
  • 3. 格子状パターン(lattice-like pattern):皮溝部の色素沈着と、直行する線条が特徴
  • 4. 網状パターン(reticular pattern):色素斑全体が色素ネットワークで構成されるときの全体構築の名称
  • 5. 多構築パターン(multicomponent pattern):色素斑全体が3つ以上のパターンで不規則に構成される状態を意味し、悪性黒色腫を示唆する所見

関連問題(掌蹠のダーモスコピー)

選択問題64:解答 2

足底の色素斑で、皮丘部(皮溝部より太い)に一致した色素沈着がみられ、皮丘並行パターンの像→2

とくに不規則な色素沈着の場合、悪性黒色腫を示唆する

2018-Parallel-ridge-pattern

参考サイトより引用, 左が皮溝並行・右が皮丘並行

なおこれを組織学的に観察すると選択問題60のような像となる

  • 1. 皮溝並行パターン(parallel furrow pattern):皮溝部優位の色素沈着で、色素性母斑を示唆する所見
  • 2. 皮丘平行パターン(parallel ridge pattern):皮丘部優位の色素沈着で、不規則な場合は悪性黒色腫を示唆する所見
  • 3. 線維状パターン(fibrillar pattern):擦ったような色素パターンで、足底の荷重部にみられ良性の色素性母斑を示唆する所見
  • 4. 網状パターン(reticular pattern):色素斑全体が色素ネットワークで構成されるときの全体構築の名称
  • 5. 多構築パターン(multicomponent pattern):色素斑全体が3つ以上のパターンで不規則に構成される状態を意味し、悪性黒色腫を示唆する所見

関連問題

選択問題65:解答 5

手指爪甲色素斑のダーモスコピー

均一な黒色領域であり、爪下血腫を最も考える像→5

  • 1. 爪部悪性黒色腫:不規則な色素線条がみられ、進行したものではHutchinson徴候(爪周囲への色素のシミだし)を伴う
  • 2. 爪部色素細胞母斑:爪の近位〜遠位にかけての規則的な色素線条がみられる
  • 3. 爪部色素性Bowen病:色素線条をきたし、早期から部分欠損・縦溝・隆起などの形態異常を生じやすい
  • 4. Glomus腫瘍:爪下に好発し、白色からピンク色の小円形の斑がみられる有痛性腫瘍。血管平滑筋由来のためα-SMA陽性となる
  • 5. 爪下血腫:紅色〜黒色(病変の深さによって異なる)の均一構造がみられる

選択問題66:解答 2, 3, 5

形質細胞浸潤を伴う疾患は梅毒・日光口唇炎・乳頭状汗管嚢胞腺腫→2, 3, 5

  • 1. 伝染性膿痂疹:黄色ブドウ球菌の産生する表皮剥離毒素によりデスモグレイン1が切断され、表皮内水疱が生じる。好中球浸潤や膿疱をきたす
  • 2. 梅毒:組織学的には形質細胞・リンパ球の浸潤と血管内皮細胞の増殖が特徴
  • 3. 日光口唇炎(光線口唇炎):口唇(主に下口唇)で発生する日光角化症ので有棘細胞癌の前駆病変。基底層を中心とする細胞異型に加え、真皮のリンパ球・形質細胞浸潤がみられる
  • 4. 尋常性天疱瘡:基底膜直上の表皮内水疱に加え、好酸球浸潤が特徴
  • 5. 乳頭状汗管嚢胞腺腫:内腔側に高円柱状細胞、外側に立方体状細胞の2層構造で、間質には形質細胞浸潤がみられる。脂腺母斑に続発することが多い腫瘍

関連2019 選択48 (梅毒組織で特徴的な浸潤細胞:形質細胞)

選択問題67:解答 2, 4, 5

Brooke-Spiegler症候群でみられる腫瘍の組織像を問う問題

円柱種や毛包上皮腫、エクリンらせん腺腫が多発する→2, 4, 5

Brooke-Spiegler症候群

CYLD遺伝子変異による常染色体優性遺伝疾患

円柱種と毛包上皮腫が多発し、らせん腺腫や付属器腫瘍が混在することもある

  • A. 乳頭状汗管嚢胞腺腫:弱拡では外側へ突出する疣状構造。強拡では壁が2層の細胞から構成され、管腔側が断頭分泌を示す高円柱細胞、外側は立方体状細胞となる
  • B. 円柱腫:頭部で半球状の正常皮膚色〜褐色の腫瘤をきたす。大小の腫瘍細胞塊が巣状に増殖し、間質に好酸性構造物がみられる
  • C. 石灰化上皮腫(毛母腫):石灰化を伴い、腫瘍細胞は好塩基性細胞および陰影細胞(shadow cell:核が消失し好酸性に染色される)から構成される。筋緊張性ジストロフィーで多発することがある
  • D. エクリンらせん腺腫:境界明瞭で索条塊状に増殖し、弱拡大ではリンパ節様にみえる皮下腫瘍。腫瘍胞巣は大型の明調細胞と小型の暗調細胞から構成され、管腔を形成する。有痛性腫瘍の一つ
  • E. 毛包上皮腫:基底細胞癌様の細胞から構成される腫瘍塊が真皮浅層で増殖し、毛芽腫に類似する。角質嚢腫*を伴う

*角質嚢腫:脂漏性角化症でみられる偽角化嚢腫に類似

病理については下記書籍も参考になる(上記2つめのセミナリウムの著者)

みき先生の皮膚病理診断ABC (2) 付属器系病変

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関連問題

※なお本年度の記述問題11/12で選択肢2/5の診断名が問われている

選択問題68:解答 1, 2

腫瘍組織像を問う問題

CD34陽性なのは血管肉腫および神経線維腫→1, 2

  • A. 血管肉腫:表皮の変化はなく腫瘍細胞が真皮で管腔構造を形成しつつ増殖し、多数の出血を伴う。CD34やCD31が陽性となる
  • B. 神経線維腫:境界明瞭で被膜をもたない紡錘形細胞が増殖し、間質で肥満細胞浸潤がみられる。S-100やCD34EMA陽性となる
  • C. 神経鞘腫:核がみつに並ぶ部位と核に乏しい好酸性の部位が交互に配列するVerocay bodyがみられるAntoni A領域と、細胞成分の疎なAntoni B領域で構成される。CD34は陰性
  • D. 平滑筋腫:筋細胞由来の良性腫瘍で、アクチンやデスミンが陽性となる
  • E. グロムス腫瘍(?):α-SMA陽性で、CD34の陽性率は中程度(5/13例=38.5%)
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p462(1)/420(2・3)/439(4)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p689(1)/736(2・3)/673(4)

関連問題

※なお本年度の記述問題13/14で選択肢2/3について問う問題が出題されている。問題文中にヒントがあるため、こちらを先に解くのが試験的には無難

選択肢5ははっきりしないので、何か解る方がいらっしゃったらコメント下さい

選択問題69:解答 1, 3

組織像を問う問題

中央の膠原線維・ムチンを組織球が取り囲む柵状肉芽腫の像が見られる(ムチンはアルシアンブルーで青く染色される)

環状肉芽腫の診断で、汎発型は糖尿病の合併が多いことが知られる。

環状肉芽腫 (granuloma annulare)

辺縁が隆起し、中央が陥凹した環状の皮疹をきたす

柵状肉芽腫(palisading granuloma)と呼ばれる組織像が特徴的

組織:中心に変性した膠原線維やムチン沈着があり、周囲を巨細胞や組織球が取り囲む

本症は様々な病型がある

  • 限局性:手指背や関節など一定部位のみで、自然治癒することが多い
  • 汎発型:全身に生じ、糖尿病の合併が多い
  • 皮下型:小児に好発する

なおリポイド類壊死症やリウマトイド結節でも類似した組織像が認められる

  • 1. 柵状肉芽腫の組織像が特徴
  • 2. 巨細胞(組織球)であり、CD68陽性となる。CD20陽性細胞はB細胞リンパ腫(例:血管内大細胞型B細胞リンパ腫)で浸潤する
  • 3・4. 病変が多発する汎発型がある。糖尿病合併例が多いため、検索が必要
  • 5. ムチンが青く染まっているが、周囲は紫色に染まっておりアルシアンブルー染色に該当(PAS染色との二重染色)。トルイジンブルー染色は表皮を含めて全体的に青く染色され、また肥満細胞が異染性(赤紫色)を示すことが特徴

関連問題

選択問題70:解答 4

電子顕微鏡写真の問題

図32では角化細胞が引き伸ばされている像が見られ、海綿状態に相当する→4

  • 1. 不全角化:角層(×表皮)でみられる所見で、濃縮・扁平化した核を張原線維が取り囲む像となる
  • 2. 異常角化:核を張原線維が取り巻く像となる
  • 3. 顆粒変性:ケラトヒアリンと張原線維との異常凝集から構成される
  • 4. 海綿状態:デスモソーム接合は無傷だが、角化細胞の胞体が引き伸ばされ棘状となる。対照的に、デスモソームが障害されるのが棘融解(尋常性天疱瘡など)
  • 5. 液状変性:表皮真皮境界部(×表皮)でみられる所見で、基底細胞レベルで細胞間浮腫をきたす

関連問題

選択問題71:解答 2

表皮基底膜部の電子顕微鏡構造を問う問題

  • 1. トノフィラメント:基底細胞のケラチン線維のことで、ケラチン5/14から構成される
  • 2. ヘミデスモソーム:BP180(17型コラーゲン)やBP230などから構成される
  • 3. 基底板:4型コラーゲンやラミニン332から構成される
  • 4. 係留線維:7型コラーゲンから構成され、基底板と真皮の1/3型コラーゲンを結合している
  • 5. 1/3型コラーゲン:真皮を構成するコラーゲン

なおこれらの部位が障害されることで先天性表皮水疱症を引き起こすが、障害部位に応じて疾患名が異なる

  • トノフィラメント:単純型
  • ヘミデスモソーム:接合部型
  • 係留線維:栄養障害型

詳細については下記参照

Epidermolysis-Bullosa
先天性表皮水疱症の病型と原因蛋白・遺伝形式まとめ

続きを見る

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p5-7/238
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p9-10/327

関連問題

  • 2022 選択47 (ヘミデスモソーム電顕写真と構成蛋白)

選択問題72:解答 2

表皮基底膜部の構造を問う問題

Ⅰ型コラーゲンと結合するのはⅦ型コラーゲン→2

Ⅰ/Ⅲ型コラーゲンは真皮の膠原線維で、Ⅶ型コラーゲンによってⅣ型コラーゲン(基底板)と強固に結合される

(この部分は1つ前の選択問題71で選択肢3〜5の部分に該当する)

なおⅠ/Ⅲ型コラーゲンの先天的異常は、Ehlers-Danlos症候群の原因となる

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p5-7
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p9-10

選択問題73:解答 1

デスモグレインやデスモコリンは同一分子がペアを構成し、接着する際にカルシウムイオンが重要→1

有棘細胞間の接着構造であるデスモソームはこれら膜貫通蛋白の他、デスモプラキンやプラコフィリン(ともに細胞内に存在)から構成される

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p7

関連問題

選択問題74:解答 3

乾癬の病態に関与する樹状細胞、TIP-DCはTNF-α and iNOS producing DCの略→3

つまり「TNF-αと誘導性一酸化窒素合成酵素を産生する樹状細胞」ということになる

乾癬とTIP-DC

乾癬部病変では正常皮膚の約30倍のTIP-DCが存在し、乾癬の病態形成に関与する

  1. TIP-DCがIL-12やIL-23を産生
  2. IL-23はTh17細胞を活性化する。IL-12はTh1細胞への分化に関与
  3. 活性化されたTh17細胞からIL-17やIL-22が産生
  4. IL-17やIL-22によって、角化細胞の増殖や好中球遊走が誘導される

TIP-DCはまた、TNF-αを産生して自己活性化することでこの流れを維持・活性化させる

2014-TIP-DC

参考文献 図4より引用, 赤は筆者が追記

上記の病態から、各分子(上記赤色)をターゲットにした生物学的製剤が乾癬に用いられている

ターゲット 一般名 製品名
TNF-α インフリキシマブ レミケード®
アダリムマブ ヒュミラ®
セルトリズマブ ペゴル シムジア®
IL-12/23p40 ウステキヌマブ ステラーラ®
IL-17A セクキヌマブ コセンティクス®
イキセキズマブ トルツ®
IL-17RA ブロダルマブ ルミセフ®
IL-17A/F ビメキズマブ ビンゼレックス®
IL-23p19 グセルクマブ トレムフィア®
リサンキズマブ スキリージ®
チルドラキズマブ イルミア®

本問の解答は下記

  • 1. IFN-α:マクロファージによって産生される炎症性サイトカイン。イミキモド(ベセルナ®)によっても活性化される
  • 2. IFN-γ:Th1細胞から産生され、細胞性免疫に関与するサイトカイン。菌状息肉症やセザリー症候群治療に使われる
  • 3. iNOS:TIP-DCはTNF-αとiNOSを産生する樹状細胞を指す
  • 4. IL-17*:Th17細胞から産生されるサイトカインで、ケラチノサイトの活性化や表皮肥厚に関与する
  • 5. IL-8*:IL-17によって産生促進され、好中球遊走に関与するサイトカイン

*IL-8およびIL-17は掌蹠膿疱症の病態にも関与する

選択問題75:解答 3

蛍光抗体では表皮および真皮の血管内皮が陽性となっており、リンパ球遊走・接着に関与するICAM1の蛍光抗体と考えられる→3

白血球が炎症部位へ遊走する際は血管内皮への接着が行われ、この際の接着分子の代表がICAM1

ICAM1は白血球内に存在するLFA1と結合して作用を発揮する

  • 1. Pカドヘリン:細胞間接着を担い、接着結合(アドヘレンスジャンクション)を構成する分子。発現部位は表皮のみ
  • 2. LFA 1:ICAM-1とペアを組むが、こちらは白血球内に限局して存在する
  • 3. ICAM-1(CD54):IFN-γ存在下で発現される分子で、リンパ球遊走(免疫応答)に関与する。血管内皮細胞やケラチノサイトで発現する
  • 4. 7型コラーゲン:真皮の係留線維に存在し、基底板と真皮コラーゲンを結合する役割を担う
  • 5. デスモグレイン1:有棘細胞間に存在し、デスモソームを構成する膜貫通蛋白

なおLFA1がターゲットの抗体製剤エファリズマブが乾癬に対し以前使われていた(日本では未承認)が、長期使用でJCウイルスによる進行性多巣性白質脳症の副作用が報告されたことから現在は使われていない

選択問題76〜は下記

2014-Specialist-4
平成26(2014)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題76~86 記述

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