日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成25(2013)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
見出し
- 1 平成25年度(2013年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜25
- 1.1 選択問題1:解答 1, 5
- 1.2 選択問題2:解答 1
- 1.3 選択問題3:解答 2
- 1.4 選択問題4:解答 3
- 1.5 選択問題5:解答 1, 3
- 1.6 選択問題6:解答 1, 2
- 1.7 選択問題7:解答 1, 4
- 1.8 選択問題8:解答 4
- 1.9 選択問題9:解答 3
- 1.10 選択問題10:解答 1, 3, 5
- 1.11 選択問題11:解答 5
- 1.12 選択問題12:解答 5
- 1.13 選択問題13:解答 4
- 1.14 選択問題14:解答 2
- 1.15 選択問題15:解答 5
- 1.16 選択問題16:解答 5
- 1.17 選択問題17:解答 1
- 1.18 選択問題18:解答 1, 4
- 1.19 選択問題19:解答 1, 3, 4
- 1.20 選択問題20:解答 2, 4, 5
- 1.21 選択問題21:解答 3, 4
- 1.22 選択問題22:解答 2, 4, 5
- 1.23 選択問題23:解答 1, 2, 5
- 1.24 選択問題24:解答 1
- 1.25 選択問題25:解答 2
平成25年度(2013年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜25
選択問題1:解答 1, 5
巨舌をきたす疾患を問う問題
粘液水腫や全身性アミロイドーシスで見られる症状→1, 5
前者ではムチンが、後者ではアミロイドが沈着することにより巨舌となる
全身性アミロイドーシスには免疫グロブリン産生過剰(≒多発性骨髄腫)に伴うものや、血液透析に伴う透析アミロイドーシスが含まれる
- 1. 粘液水腫:甲状腺機能低下症に伴って症じ、全身の浮腫(non-pitting edema)や脱毛・巨舌などをきたす。なお甲状腺機能亢進症では脛骨前粘液水腫が特徴
- 2. ポルフィリン症:ヘム合成に必要な酵素の異常が原因で、骨髄性プロトポルフィリン症や晩発性皮膚ポルフィリン症(肝障害に伴い発症)が代表例。皮膚症状は光線過敏症の形をとる
- 3. 家族性高コレステロール血症:高LDL血症に伴い、結節性黄色腫・眼瞼黄色腫・腱黄色腫等がみられる
- 4. ヘモクロマトーシス:鉄過剰に伴い、褐青灰色の色素沈着・肝障害・糖尿病をきたす
- 5. 全身性アミロイドーシス:巨舌やpinch purpura(軽い刺激での紫斑)、強皮症様の手指硬化などがみられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p320(1)/328(2)/322(3)/324(4)/317(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p452(1)/473(2)/463(3)/469(4)/443(5)
関連問題
選択問題2:解答 1
局所性多汗症のうち、脳梗塞による多汗症は神経障害による無汗・乏汗症の代償反応として生じる→1
- 神経障害部位(片側):無汗・乏汗症
- その他部分:代償性の発汗亢進
という状態。Parkinson病の神経障害でも同様の機序で局所性多汗症をきたす
- 1. 脳梗塞:無汗/乏汗症および代償性の局所多汗症をきたす(→無汗も多汗もあり)
- 2・3. 甲状腺機能亢進症・褐色細胞腫:代謝亢進による全身性多汗症をきたす
- 4. エクリン母斑:エクリン汗腺由来の母斑で、局所性多汗症の原因となる
- 5. Frey症候群:耳下腺腫瘍切除等で耳介側頭神経を障害後、迷入再生することで耳前部に摂食時の発汗過多や皮膚発赤をきたす症候群
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p362(1・2・3)/387(4)/361(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p772(1・2・3・5)/551(4)
関連問題
- 2021 選択2 (続発性無汗症の原因)
- 2019 選択3 (全身または局所の多汗をきたすもの:妊娠, 糖尿病, 腋臭症)
- 2016 選択1 (Frey症候群の機序)
- 2014 選択29 (甲状腺機能亢進症の症状:多汗)
- 2011 選択2/ 2009 選択1 (エクリン母斑は局所性多汗症をきたす)
選択問題3:解答 2
仙骨部で感染を繰り返す腫瘤と瘻孔がみられ、毛巣洞の診断→2
臀裂部の瘻孔から開口部まで交通があると考えられる(ゾンデなどで証明可能)
毛巣洞 (毛巣嚢腫)
毛の先端が皮膚に刺さり、その部位で瘻孔や肉芽腫を形成することで生じる。瘻孔部では毛髪がみられる
瘻孔で感染を繰り返しながら増大し、稀に癌化することもある
好発:尾仙骨部(毛深い男性)・腋窩(剃毛する女性)・指間(美容師や搾乳者)
毛包閉塞性疾患の一つであり、慢性膿皮症に近似する
- 1. 表皮嚢腫(粉瘤):毛包漏斗部由来の直径1〜2cm大の皮下腫瘍。内部にケラチンから構成される粥状物質を含む
- 3. 外毛根鞘嚢腫:90%が頭部に発生する毛包峡部由来の腫瘍で、1と類似するが組織での顆粒層を欠く角化形式(外毛根鞘性角化)が特徴
- 4. 皮様嚢腫:頭部に好発する1〜4cmの皮下結節で、出生時から存在する
- 5. 脂腺嚢腫:上肢などに好発する3〜30mmの正常皮膚色〜淡黄色の硬い腫瘍。ケラチン17の遺伝子変異では多発性脂腺嚢腫と爪甲肥厚症をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p419(2)/417(1)/418(3・4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p767(2)/601(1)/611(3)/612(5)
選択問題4:解答 3
新生児ざ瘡に関する一般問題
生後3ヵ月以内のものは男児に好発する→3
- 1. 皮疹は面皰・膿疱・丘疹などで尋常性ざ瘡と同様
- 2. 顔面のみで背中や胸部には生じない
- 3. 生後3ヶ月以内はほとんどが男児で、その後も男児に多い
- 4. 母親由来の性ホルモンが原因。毛包虫は成人の難治性痤瘡や酒さと関連する
- 5. 生後3〜8ヵ月程度で自然軽快するため、基本は経過観察。ミノサイクリンは歯牙色素沈着の副作用があるため、小児(とくに歯牙形成期にある8歳未満)では用いない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p364
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p747
選択問題5:解答 1, 3
色素性乾皮症のうち、若年から発癌をきたしやすいのはA群およびC群→1, 3
C群は日本人で頻度が少なく、MED低下や神経症状を伴わない点がA群との鑑別点
色素性乾皮症 病型分類 発癌年齢
色素性乾皮症は原因遺伝子によってA〜G群およびV型に分けられる
病型 | 比率(日本人) | MED低下 | 神経症状 | 癌初発平均年齢 |
A | 55% | あり | + | 9.7 |
B | 0% | あり | ± | - |
C | 少ない | なし | - | 14.0 |
D | 少ない | あり | ± | 38.0 |
E | 少ない | なし | - | 38.3 |
F | 少ない | あり | ± | 43.7 |
G | 稀 | あり | ± | 32.0 |
V | 25% | なし | - | 41.5 |
C/E/VはMED低下なし・神経症状なしと共通項が多い
- 1・3. A群・C群:若年(10代)から発癌をきたす
- 2. B群:発癌との関連性が低いとされる
- 4・5. F群・V型:40代と色素性乾皮症としては発癌年齢が高い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p234
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p279
関連問題(色素性乾皮症)
選択問題6:解答 1, 2
紫外線であるUVAとUVBの対比を問う問題
UVBはエネルギー量が大きいが、深部へは達せず皮膚表層に影響する→1, 2
UVA・UVB・UVCの比較
紫外線の種類 | 波長(nm) | 影響部位 | 症状 |
UVA | 320〜400 | 真皮深層まで | サンタン(小麦色の日焼け)日光弾力線維症(solar elastosis) |
UVB | 290〜320 | 表皮〜真皮浅層 | サンバーン(赤くひりひりする日焼け)悪性黒子(Lentigo maligna) |
UVC | 100〜280 | オゾン層でブロックされ届かない |
- 1. エネルギーは波長が短いほど高くなる※ため、UVC>UVB>UVAの順
- 2. UVBは表皮〜真皮浅層でDNA損傷をきたし、発癌の原因となる。UVAは真皮深層まで達し、光老化やsolar elastosisの原因となる
- 3. “UVA”は照射直後の即時型黒化の原因で、サンスクリーン評価のPAはこの程度を評価している。UVBは照射後数日で生じるサンバーンの原因
- 4. 日焼けサロンで用いられるのはUVAが主体。黒く焼けることから想像する
- 5. 薬剤性(外因性)光線過敏症の主な作用波長はUVA。UVBは慢性光線性皮膚炎の作用波長となる
※V = f×λ でVは一定のため、波長λが短いほど振動数fが高くなりエネルギーが大きくなる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p107(1)/232・233(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p130(1)/273(2)/275(5)
- 選択肢4の参考:日本皮膚科学会 日焼けQ14 日焼けサロンは大丈夫?
関連問題(紫外線)
- 2023 選択57 / 2021 選択9 (UVAが関与する:solar elastosis, 薬剤性光線過敏症)
- 2020 選択5 / 2017 選択7 /2011 選択7 (紫外線・エキシマランプ等の波長単位)
- 2022 選択31 / 2019 選択11 / 2014 選択3 (紫外線の波長・作用部位など)
- 2016 記述1 / 2019 選択10 / 2012 選択4 (即時型黒化)
選択問題7:解答 1, 4
小児の光線過敏症であり、血中プロトポルフィリン値高値から骨髄性(赤芽球性)プロトポルフィリン症の診断
FECH遺伝子異常が原因で、真皮血管周囲にPAS陽性物質の沈着(血管内皮細胞障害)がみられる→1, 4
EBウイルス関連の検査陰性から、同じく小児に好発する光線過敏症である種痘様水疱症は否定される
骨髄性プロトポルフィリン症
ヘム代謝障害をきたすポルフィリン症の一つ
プロトポルフィリンが代謝されず骨髄で蓄積する
→血中・糞便中のプロトポルフィリンが増加、肝にも蓄積して肝障害
臨床症状としては幼少期からの光線過敏症が特徴
- 原因:フェロケラターゼ(FECH)遺伝子変異による常染色体優性遺伝疾患
- 検査:赤血球が変性しており、蛍光顕微鏡で赤色蛍光を発する&日光曝露で溶血する
- 1. フェロケラターゼ(FECH)遺伝子変異が原因
- 2. 尿中ウロポルフィリンは正常値となる。生後まもなく発症する先天性骨髄性ポルフィリン症では(血中・糞便中に加えて)尿中ウロポルフィリンも高値となる
- 3. ポルフィリン体は400nm付近(UVA)で励起される
- 4. 真皮血管周囲にPAS陽性物質の沈着がみられ、血管内皮細胞変性をきたす
- 5. HCV感染症やアルコール長期摂取など、肝障害の合併が多いのは晩発性皮膚ポルフィリン症
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p330(1・2)/331(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p475(ALL)/473(2)/476(5)
関連問題(ポルフィリン症)
選択問題8:解答 4
変異遺伝子産物が正常遺伝子産物を阻害することで発症する形態をDominant-negative(優性阻害)と呼ぶ→4
この機序の場合、常染色体優性遺伝形式を取ることになる
常染色体遺伝 (優性/劣性) 病態機序
常染色体優性(顕性)遺伝 (AD)
2つの対立遺伝子のうち1つに異常があると症状をきたす
作用機序は大きく3パターンに分けられる
- Gain of function(機能獲得変異):変異遺伝子の生成産物が新たな機能を獲得
- Haploinsufficiency(ハプロ不全):1つの遺伝子変異により、十分な遺伝子産物が生成されなくなる
- Dominant-negative(優性阻害):変異遺伝子によって生成されば異常産物が正常産物の作用を阻害する
常染色体劣性(潜性)遺伝 (AR)
原則として2つの対立遺伝子の双方に異常があり症状をきたす
この場合の機序はloss of functionと呼ばれる
- loss of function (機能喪失変異):2つの遺伝子に異常があるため正常な遺伝子産物が生成されない
ARの場合最も多いのは両親が同一部位に遺伝子変異を持ち子供が発症するというパターン。これをホモ接合体と呼ぶ(ホモ=同一)

参考サイトより引用, ホモ接合体のため遺伝子変異の場所は同一
それ以外の例として、下記2つがある
- 複合ヘテロ(compound hetero)接合体:2つの対立遺伝子に変異があるが、変異場所が異なる
- ヘミ接合体:1つの対立遺伝子の欠損*により、1つの対立遺伝子変異だけで疾患を発症する

参考サイトより引用, 複合ヘテロ接合体(遺伝子変異の場所が異なる)およびヘミ接合体の例
*ヘテロ接合性(異質の対立遺伝子を持っている状態)で、一方の遺伝子/染色体変化でこれを喪失することをLoss of heterozygosity(LOH)と呼ぶ
- 1. gain of function:遺伝子変異により本来持っていなかった"機能を獲得"し発症する形式
- 2. loss of function:遺伝子変異により本来持っていた"機能が失われ"発症する形式
- 3. haploinsufficiency:生体の需要量が多いため("半分でも足りなくなり")発症する形式。カルシウムポンプ異常によるDarier病/Hailey-Hailey病など
- 4. dominant-negative:異常産物が正常産物の"働きを阻害"するため発症する形式。ケラチン異常による表皮融解性魚鱗癬が代表
- 5. loss of heterozygosity(LOH):ヘテロ接合性の喪失で、残りの正常アレルに変異が誘発されやすくなる。遺伝的モザイクの発現や発癌機序として重要
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p581(4)/246(3)
- 参考:遺伝カウンセリングの現状 -遺伝相談から遺伝カウンセリングへ- 日皮会誌:112(11), 1461-1466, 2002
- 参考・図引用:日本人類遺伝学会 HOME>WebCast>Educations>スライド集の常染色体優性遺伝(15), 常染色体劣性遺伝(17)
関連問題
- 2022 選択22 / 2021 選択11 (7型コラーゲンないしケラチンの異常:Dominant-negative)
- 2021 選択71 (Darier病とHailey-Hailey病はともに成人期発症:Haplo insufficiency)
選択問題9:解答 3
siRNAで変異mRNAに干渉しその転写を抑制することで、異常蛋白質の発現を抑制することができる→3
siRNA = small interfering RNA(核酸医薬低分子干渉RNA)
Pachyonychia congenita(先天性爪甲硬厚症)
掌蹠角化症の一病型で、名前の通り先天性爪甲肥厚症を伴う
原因遺伝子はKRT6A/6B/16/17で、KRT17遺伝子変異によるものは多発性脂腺嚢腫を合併することが知られる
変異遺伝子によって異常な蛋白産物が生じることで、遺伝性疾患は引き起こされる。わかりやすい例としては1つ前の問題であったような正常な蛋白の働きを阻害する:Dominant-negativeなど。
このため変異遺伝子→蛋白への転写を抑制し、異常な蛋白が生成されないようにすることは治療に繋がると考えられている
- 3. 変異mRANを抑制(干渉する):siRNAはinterfering(干渉)の名前通りの作用を持つ
- 4. 変異のある部分を読み飛ばす(リードスルー):外用薬として用いられるゲンタマイシンはこの作用を持つ。長島型掌蹠角化症やHailey-Hailey病の治療に有効であったという報告がある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p581(3・4)
- 参考:掌蹠角化症診療の手引き 日皮会誌:130(9), 2017-2029, 2020のp2028(3・4)
選択問題10:解答 1, 3, 5
活性型ビタミンD3軟膏による副作用をきたしやすい条件を問う問題
ビタミンD3外用薬 高カルシウム血症
ビタミンD3外用薬の副作用に高カルシウム血症があり、とくに下記は危険因子
- 規定範囲を超える外用量
- 経皮吸収が亢進した皮膚状態:ステロイド外用による皮膚菲薄化, 状態悪化による皮膚バリア機能低下など
- 合併症(腎機能障害):シクロスポリンの併用にも注意
- 併用薬剤:活性型VitD3, Ca製剤の内服やサイアザイド系利尿薬など
- 1. 腎機能障害者:血清カルシウム値を上昇させる可能性があり、添付文書上も慎重投与となっている
- 2. ステロイド内服:サルコイドーシスに伴う高Ca血症治療に用いられることがある。なおステロイドは骨粗鬆症をきたすため、予防でCa製剤を内服することがある(アルファカルシドール)。
- 3. サイアザイド系利尿薬:副作用に高カルシウム血症/低カルシウム尿症がある(→尿路結石の予防にも使われる)
- 4. ビスホスホネート製剤:Caを低下させるため、骨転移による高Ca血症治療等で用いられる。骨吸収抑制作用のため、骨粗鬆症治療にも用いられる
- 5. 用量:大用量の使用で高Ca血症を生じやすいため、使用量制限がある※
※ビタミンD3外用薬の使用量制限について、詳細は下記
-
-
ビタミンD外用製剤と保険適用疾患 各種製剤の比較
続きを見る
なお腎機能障害患者では高Ca血症をきたしやすいが、むしろ血液透析患者では低Ca血症が一般的なため注意
(VitD活性化障害やリン排泄不全による低Ca/高P血症→二次性副甲状腺機能亢進症→腎性骨異栄養症やカルシフィラキシスを生ずる)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p95(5)
- 参考:マキサカルシトール軟膏外用療法中に著明な高カルシウム血症を来した尋常性乾癬の2例 -発症機序と危険因子について- 日皮会誌:113(3) , 271- 279, 2003
- 選択肢2の参考:ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年改訂版 / 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版
- 選択肢3の参考:尿路結石症診療ガイドライン 2013年版 CQ35 サイアザイドによる再発予防効果はあるか?
- 選択肢4の参考:日本内分泌学会 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症
関連問題
- 2011 選択13 (VitD3外用薬で高Ca血症を生じやすい:サイアザイド系利尿薬, シクロスポリン, 紅皮症)
- 2015 選択16 (ドボベット®の最大外用量:90g/週)
選択問題11:解答 5
表皮の機能や役割に関する問題
ヘミデスモゾームはBP180(17型コラーゲン)やBP230から構成され、7型コラーゲンとは関係しない→5
- 1. ケラトヒアリン顆粒:顆粒層に存在し、内部にプロフィラグリンを含む。分解されることでフィラグリン、やがて天然保湿因子(NMF)となり皮膚バリアの役割を果たす
- 2. 周辺帯:ロリクリンやインボルクリンから構成され、トランスグルタミナーゼ1は架橋の役割を担う。角層細胞の細胞膜を裏打ちする役割がある
- 3. アドへレンスジャンクション(接着接合):カドヘリンから構成され、角化細胞の接着に関与する
- 4. コルネオデスモソーム:角層細胞間を接着する構造で、有棘細胞間のデスモソームが変化したもの(DSG1/3 + コルネオデスモシン)。これがKLK5等の酵素で分解されると、角層が剥離する
- 5. ヘミデスモソーム:17型コラーゲン(BP180)やBP230から構成される。7型コラーゲンは係留線維に存在し、真皮膠原線維と表皮基底板を結合する
*DSG = デスモグレイン, KLK = カリクレイン関連ペプチダーゼ
なおこれらの部位は、とくに先天性皮膚疾患との関与が深い
病変部位/遺伝子 | 疾患 |
フィラグリン (FLG) | 尋常性魚鱗癬 |
トランスグルタミナーゼ1 (TGM1) | 葉状魚鱗癬 |
コルネオデスモシン(CDSN) | 炎症性ピーリングスキン症候群 |
LEKTI (SPINK5)※ | Netherton症候群 |
BP180(17型コラーゲン) | 接合部型先天性表皮水疱症 |
水疱性類天疱瘡 / 粘膜類天疱瘡 | |
係留線維 (7型コラーゲン) | 栄養障害型先天性表皮水疱症 |
後天性表皮水疱症 |
※LEKTIはセリンプロテアーゼインヒビターの一種で、KLKを阻害し過剰な剥離を抑制している。Netherton症候群ではKLK阻害に異常をきたし、角層脱落が亢進する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p4(1)/9(2)/10(4)/5(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p11(1)/12(2)/9-10(3・5)
関連問題
- 2021 選択10 / 2019 選択4 (フィラグリンとその分解産物、作用)
- 2019 選択15 / 2017 選択11 / 2011 選択8 (周辺帯の構成成分)
- 2014 選択71 / 2013 選択38 / 2011 選択46 / 2009 選択37 (ヘミデスモソーム/BP180について)
- 2014 選択72 / 2010 選択32 (係留線維/7型コラーゲンについて)
選択問題12:解答 5
KRT1/KRT10遺伝子変異による疾患は表皮融解性魚鱗癬(水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症)→5
同疾患では組織学的に顆粒変性が見られるのが特徴
- 1. Weber-Cockayne型表皮水疱症(限局型EBS):KRT5/14遺伝子変異が原因で、手足のみに水疱形成をきたす軽症型
- 2. Dowling-Meara型表皮水疱症(重症汎発型EBS):原因遺伝子は1と同じKRT5/14だが、全身皮膚や粘膜でびらんをきたす重症型。電子顕微鏡でトノフィラメントの異常凝集が見られるのが特徴
- 3. 尋常性魚鱗癬:FLG遺伝子変異が原因で、両アレルの変異で症状が増強する。組織学的にはHE染色での顆粒層の菲薄化/消失が特徴
- 4. 葉状魚鱗癬:周辺帯形成に関与するトランスグルタミナーゼ1(TGM1)遺伝子変異が原因となる
- 5. 表皮融解性魚鱗癬:ケラチン症性魚鱗癬の一つで、KRT1遺伝子変異では掌蹠角化が強いのが特徴(KRT10では正常なことが多い)
*EBS = 単純型表皮水疱症
選択肢3は常染色体半優性遺伝形式、選択肢4は常染色体劣性遺伝形式、その他は常染色体優性遺伝形式をとる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p273(5)/239(1・2)/268(3)/271(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p345(5)/327(1)/328(2)/341(3)/347(4)
関連問題
- 2021 選択21 / 2011 選択12 (顆粒変性をきたす疾患)
- 2021 選択13 / 2017 選択17 (顆粒変性を伴う魚鱗癬)
- 2021 選択18 (葉状魚鱗癬の原因:TGM1)
選択問題13:解答 4
インターフェロンγはTh1リンパ球から分泌される→4
炎症性サイトカインであり、細胞性免疫を誘導する役割を持つ
- 1・2. 表皮角化細胞・血管内皮細胞:IFN-γ刺激下でICAM-1を発現し、リンパ球遊走を引き起こす。角化細胞はIL-1aなどのサイトカインを分泌し免疫細胞を活性化する役割も持つ
- 3. 好中球:マクロファージと同様貪食能を持つが、サイトカイン分泌には関与しない
- 4. Th1リンパ球:IL-2やIFN-γを分泌し、細胞性免疫を誘導する
- 5. Th2リンパ球:IL-4やIL-13、IL-31を分泌し掻痒感やフィラグリン発現低下からアトピー性皮膚炎の病態に関与する
Th1とTh2は対になるものと考えると理解しやすい
Th1 | Th2 | |
サイトカイン | IL-2, IFN-γ | IL-4, IL-5, IL-13, IL-31 |
免疫 | 細胞性免疫 | 抗体産生, 液性免疫 |
疾患/病態 | Ⅳ型アレルギー | アトピー性皮膚炎 |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p31(4・5)/35(1・2)/34(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p79(4・5)/76(1)/81(3)
関連問題(Th1サイトカイン)
- 2012 選択9 (Th1サイトカイン:IFNγ, IL-2)
- 2010 選択9 (Tリンパ球と産生サイトカイン)
選択問題14:解答 2
黒色表皮腫でみられる組織像を問う問題
名前に反して、表皮肥厚(acanthosis)は通常見られない→2
胃癌などの内臓悪性腫瘍や糖尿病に合併する後天性角化症
組織では下記3つが主要症状
- 乳頭腫症 (papillomatosis):真皮乳頭が上方に延長する状態
- 角質増殖 (hyperketatosis):角質層の肥厚で、不全角化を伴わないものをorthokeratotic hyperketatosisと称する※
- 色素沈着 (hyperpigmentation):とくに基底層でみられる
※対義語は乾癬などの不全角化(錯角化)を伴う角質増殖(parakeratotic hyperkeratosis)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p299
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p373
関連問題(黒色表皮腫)
- 2015 選択13 (好発部位:項頸・腋窩・鼠径・外陰)
- 2014 選択79 (臨床問題・病理写真)
- 2012 選択10 (合併疾患:胃癌が多い)
選択問題15:解答 5
尋常性乾癬のPASIスコアを計算する問題
PASIスコア
乾癬の重症度を判定するスコア
全身を頭部・体幹・上肢・下肢の4箇所にわけ、皮膚所見(紅斑・浸潤・落屑)の程度に応じて0〜4点でスコア化したものに病変面積をかけて算出する

- スコア:0点(皮疹なし)〜72点満点まで
- PASI >10であれば重症例で全身療法の導入を検討すべきとされる(the rule of 10s)
- PASIスコアが75%/90%改善をPASI75/90とそれぞれ表現し、生物学的製剤の効果判定等に用いられる
アトピー性皮膚炎の病勢スコアとして用いられるEASI(eczema area and severity index)スコアは皮膚所見が紅斑・浮腫/丘疹・掻爬痕・苔癬化の4項目となっている。0〜3点までなので、合計点としてはPASIと同様72点満点となる
本問では皮膚所見が4+4+3で11点で、皮疹面積は頭皮・体幹が4点(50〜70%)、上肢が2点(10〜30%)、下肢が3点(30〜50%)程度と考えると
11 × (4× 0.1 + 4 × 0.3 + 2 × 0.2 + 3 × 0.4) = 35.2点 > 26点→解答は5
簡易的に計算するなら皮膚全体に占める病巣面積が3点(30〜50%)→11 × 3 = 33点(これでも26点以上)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p285
関連問題
- 2023 選択11 (EASIスコアの満点)
- 2016 記述3 (PASIのフルスペル:psoriasis area and severity index)
- 2014 選択12 (the rule of 10sの指標)
選択問題16:解答 5
植物皮膚炎の原因と病態に関する問題
しそは接触皮膚炎を起こすが、毒液はない→5
接触皮膚炎は一次刺激性とアレルギー性に大別され、後者は感作が必要なため初回曝露では発生しない
- 1. パパイヤ・パイナップル等:一次刺激性接触皮膚炎の原因となる
- 2. マンゴー:マンゴールが原因となり、アレルギー性接触皮膚炎とくに口周囲皮膚炎を生じる
- 3. 山芋:イモ類に含有されるシュウ酸カルシウムは一次刺激性接触皮膚炎の原因となる
- 4. パセリ:セリ科植物(セロリやパセリ)に含有されるフロクマリンはソラレン類似物質で、光接触皮膚炎の原因となる
- 5. しそ:シソの精油成分に含まれるペリルアルデヒド等がアレルギー性接触皮膚炎の原因となるが、毒液はない。毒液刺毛を持つ代表はチャドクガ
上記以外ではサクラソウの絨毛に含まれるプリミンも植物皮膚炎の原因として重要
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p149(ALL)/941(5)
- 参考:接触皮膚炎ガイドライン 2020 日皮会誌:130(4), 523-567, 2020のp545(表11), 548(表13)
関連問題
- 2022 選択25 (ヤマイモの原因アレルゲン)
- 2019 記述11 (トキワザクラの含有するアレルゲン:プリミン)
選択問題17:解答 1
ドップラーエコーでは下腿を用手圧迫(ミルキング)して逆流を検査することがある→1
うっ滞性皮膚炎や下肢静脈瘤の検査で用いる手法
- 1. ドップラーエコー:下肢静脈の検査では立位で行い、逆流の有無を評価する。Valsalva法や下腿ミルキング法で逆行性血流を生じさせ、逆流音を聴けば異常となる
- 2. CTアンギオ:造影CTを撮影して血管評価を行う検査法。3より精度は劣るが低侵襲
- 3. 動脈造影:経カテーテル的に造影剤を使用し、動脈の形態評価および治療が可能。閉塞性動脈硬化の精査で行う(初手では行わない)
- 4. 皮膚灌流圧測定(SPP = skin perfusion pressure):目的部位の灌流圧を測定する検査で、<30mmHgで重症虚血を示唆する
- 5. ABI(ankle brachial systolic pressure index):上下肢の血圧を比較する検査で、狭窄があると低値を示す。0.9以下で主幹動脈狭窄/閉塞を示唆する
選択肢2〜5は主に動脈性疾患(閉塞性動脈硬化)の検査として行われる。うっ滞性皮膚炎は静脈疾患のため不適
- 選択肢1の参考:下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン 日皮会誌:127(10), 2239-2259, 2017のp2245
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p185(4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p250(5)
- その他選択肢の参考:末梢動脈疾患ガイドライン 2022年改訂版(日本循環器学会)
選択問題18:解答 1, 4
水疱性膿痂疹に関する問題
黄色ブドウ球菌の持つ表皮剥離毒素が原因となり、小児に好発する→1, 4
伝染性膿痂疹 水疱性 痂皮性
伝染性膿痂疹(とびひ)は大きく水疱性と痂皮性に分かれる(水疱性が多い)
水疱性 | 痂皮性 | |
原因菌(毒素) | 黄色ブドウ球菌*(Staphylococcus aureus) | A群β溶連菌(Streptococcus pyogenes)
※黄色ブドウ球菌との混合感染もあり |
好発 | 乳幼児, アトピー性皮膚炎夏季に多い | 年齢や季節を問わない |
*S. aureusの分泌する外毒素、表皮剥離毒素(ET)が原因
なおETが原因となる皮膚疾患として、より重篤で全身症状を伴うSSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)がある
- 1. 水疱性は小児、とくに乳幼児に多い
- 2. 水疱性は黄色ブドウ球菌が原因となる。A群β溶連菌が原因となるのは痂皮性膿痂疹
- 3. 水疱・びらん形成がみられる。厚い痂皮が付着するのは痂皮性膿痂疹
- 4. ETはデスモソームのデスモグレイン1を切断し、落葉状天疱瘡※に類似した角層下〜表皮上層での水疱をきたす
- 5. 血清ASK/ASO上昇は溶連菌感染(痂皮性膿痂疹)で見られる検査所見
※落葉状天疱瘡ではデスモグレイン1に対する自己抗体が産生される
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p514-515
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p833-835
関連問題
- 2014 選択22 (水疱性膿痂疹の臨床問題)
- 2011 選択29 / 2010 選択78 (レンサ球菌性膿痂疹について)
- 2016 選択23 (S. pyogenesが原因の感染症:痂皮性膿痂疹, 丹毒)
選択問題19:解答 1, 3, 4
toxic shock syndromeに関する一般問題
トキシックショック症候群 (toxic shock syndrome)
黄色ブドウ球菌(主にMRSA)の産生する外毒素、TSST-1が原因
これらはスーパー抗原と呼ばれ抗原を介することなくT細胞の異常活性化を引き起こし、強い炎症反応(サイトカインストーム)をきたす
一方A群β溶連菌の産生する外毒素、SPE-AやSPE-Cが原因となるのはトキシックショック様症候群でこちらのほうが予後不良
- 1. 外毒素TSST-1(toxic shock syndrome toxinというそのままの名前)が原因となる
- 2. 原因は外毒素であり菌そのものではないため、血液培養は通常陰性となる(黄ブ菌が検出されてもよい)
- 3. TSST-1はスーパー抗原として働き、全身の強い炎症反応をきたす
- 4. かつてタンポン(の長時間)利用がリスク因子として知られたが、近年は減少し外傷や熱傷後の発症が多い
- 5. 新生児に発症するNTEDは通常数日で軽快し予後良好。新生児早期に発症し発熱・発疹・血小板減少をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p524(1・3・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p842(1・2・3・4)/845(5)
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 毒素関連皮膚細菌感染症 日皮会誌:130(11), 2367-2372, 2020
関連問題
選択問題20:解答 2, 4, 5
乾癬治療のターゲットはTNF-α, IL-12/IL-23p40, IL-17→2, 4, 5
乾癬 生物学的製剤
2022年時点で発売されている生物学的製剤は下記。ターゲットとしては当時からあまり変わっていない
ターゲット | 一般名 | 製品名 |
TNF-α | インフリキシマブ | レミケード® |
アダリムマブ | ヒュミラ® | |
セルトリズマブ ペゴル | シムジア® | |
IL-12/23p40 | ウステキヌマブ | ステラーラ® |
IL-17A | セクキヌマブ | コセンティクス® |
イキセキズマブ | トルツ® | |
IL-17RA | ブロダルマブ | ルミセフ® |
IL-17A/F | ビメキズマブ | ビンゼレックス® |
IL-23p19 | グセルクマブ | トレムフィア® |
リサンキズマブ | スキリージ® | |
チルドラキズマブ | イルミア® |
- 1. TGF-β:IL-10と並び免疫抑制に働くサイトカインで、強皮症における線維化にも関与する。生物学的製剤はない
- 2. TNF-α:乾癬で高発現となる樹状細胞、TIP-DCが産生する炎症性サイトカイン。アダリムマブは乾癬以外に壊疽性膿皮症や化膿性汗腺炎にも用いられる
- 3. CCR4:リンパ球の皮膚への遊走に関与する。成人T細胞白血病/リンパ腫等で使われるモガムリズマブ(ポテリジオ®)のターゲット
- 4. IL-12/IL-23p40:Th1細胞やTh17細胞の増殖維持に関わるサイトカイン。ウステキヌマブのターゲット
- 5. IL-17:Th17細胞から産生され、角化細胞の増殖・表皮肥厚に関わるサイトカイン。生物学的製剤としては初期に高頻度の投与が必要という特徴を持つ
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p101/282(2・4・5)/35(1)/473(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p122/379(2・4・5)/121(3)
関連問題(乾癬の生物学的製剤)
- 2023 選択43 / 2019 選択29 (多発性硬化症とTNF-α阻害薬)
- 2022 選択72 / 2017 選択20 / 2014 選択15 / 2012 選択8 / 2010 選択45 (乾癬生物学的製剤の投与スケジュール, ターゲット)
選択問題21:解答 3, 4
加水分解コムギを使用した石鹸はグルパール®19Sを含み、経皮吸収から感作をきたすことがある
初期には接触じんま疹を生じ、感作後は小麦摂取によるFDEIA(食物依存性運動誘発性アナフィラキシー)の形態をとる→3, 4
- 1. systemic contact dermatitis(全身性接触皮膚炎):感作アレルゲンが"非経皮的に"侵入し、全身に汎発疹をきたす。水銀皮膚炎やシイタケ皮膚炎など
- 2. Contact dermatitis syndrome(接触皮膚炎症候群):アレルゲンへ"経皮的に"繰り返し暴露されることで、自家感作性に全身の皮膚病変が生じる
- 3. contact urticaria(接触蕁麻疹):加水分解コムギ使用開始後早期に、顔面の膨疹・鼻汁・くしゃみなどの局所即時型アレルギー症状を発症する
- 4. 食物アレルギー/アナフィラキシー:使用開始後数ヶ月〜数年で発症し、通常の小麦アレルギーで陽性となるω-5グリアジンが陰性/眼瞼浮腫が多いなどの特徴がある
- 5. SIRS(全身性炎症反応症候群):細菌感染などに伴う全身性炎症反応で、発熱・心拍数増加などの症状をきたすこと
選択肢1について。加水分解コムギによるアレルギーでも、「経口摂取で(非経皮的に)感作アレルゲンを摂取して全身に皮疹をきたしているのでは?」という気もする。ただ全身性接触皮膚炎の皮疹は紅斑・丘疹・漿液性丘疹などの症状を指すのが一般的(眼瞼浮腫や蕁麻疹は含まない)なため、ここでは間違い選択肢と考えた
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p134(4)/117(1・2)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p149(1)/146(2)
- 参考:マルホ皮膚科セミナー 2011/12/15 加水分解コムギによるFDEIA
関連問題
選択問題22:解答 2, 4, 5
アトピー性皮膚炎の診断基準を問う問題
アトピー性皮膚炎 定義・診断基準
アトピー性皮膚炎の定義(概念)
アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。
アトピー素因
- 家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)
- IgE抗体を産生し易い素因
アトピー性皮膚炎の診断基準
- 掻痒
- 特徴的皮疹と分布(皮疹は湿疹病変、分布は左右対称性など)
- 慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する):乳児では2ヵ月以上、その他では6ヵ月以上
上記1〜3の項目を満たすものは症状の軽重を問わず、アトピー性皮膚炎と診断する
- 1. 血清IgE高値:診断の参考項目。「IgE抗体を産生し易い素因」はアトピー素因に含まれる
- 2・4・5. そう痒・特徴的皮疹と分布・慢性/反復性の経過:いずれも診断基準に含まれる
- 3. アレルギー性疾患の合併と家族歴:アトピー素因に含まれるが診断基準ではない
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p158
- 参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021の表1(p2699)
関連問題
選択問題23:解答 1, 2, 5
パルボウイルスB19感染症、つまり伝染性紅斑に関する問題
- 1. slapped cheek disease(平手打ち様紅斑):2週間ほどの潜伏期間を経て発生する、頬を打たれた様な紅斑。同症状が見られる時期にはすでに感染性はなく、登校制限は不要とされる
- 2. Gloves and socks syndrome:四肢末端(手袋靴下)に一致して浮腫性紅斑や紫斑が生じる。しばしば粘膜疹を伴い、瘙痒がある
- 3. Kissing disease:口腔内の唾液による感染経路で、EBウイルスによる伝染性単核球症が代表
- 4. Forchheimer spot*(フォルシュハイマー斑):風疹患者の約半数でみられる口蓋部の点状出血・毛細血管拡張のこと
- 5. fifth disease(第5病):伝染性紅斑の別名
*For"s"chheimer斑という記載もあるようだが(教科書はいずれもこちら)、Pubmed等ではsがない記載の方が多数ヒットする
第5病
発疹+発熱をきたす小児疾患の呼び方として、下記のものがある
- 第1病:麻疹
- 第2病:猩紅熱
- 第3病:風疹
- 第4病:特定の疾患を指さないが類似した発疹が現れる疾患
- 第5病:伝染性紅斑
- 第6病:突発性発疹
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p504(1・2・5)/507(3)/501(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p799(1・2)/797(3)/814(4)
- 第5病の参考:伝染性紅斑について 横浜市
関連問題
選択問題24:解答 1
ヒトパピローマウイルス(HPV)の型と関連疾患について問う問題
HPV3は扁平疣贅の原因となる→1
ヒトパピローマウイルス(HPV)と皮膚疾患
HPVの型 | 臨床症状 |
1 | ミルメシア |
2, 4, 7, 27, 57 | 尋常性疣贅 |
3, 10, 28, 29, 94 | 扁平疣贅 |
16 | Bowen様丘疹症, 爪Bowen病 |
5, 8 | 疣贅状表皮発育異常症 |
57, 60 | 足底類表皮嚢腫 |
63 | 点状疣贅 |
6, 11 | 尖圭コンジローマ |
なおHPV-16/18は子宮頚癌と関連する高リスクHPVで、HPVワクチン(2価・4価・9価がある)はいずれもこの型を対象としている
HPVワクチンの種類 | 名称 | 標的とするHPV型 |
2価 | サーバリックス | 16, 18 |
4価 | ガーダシル | 6, 11, 16, 18 |
9価 | シルガード9 | 6, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58 |
- 1. HPV3:扁平疣贅と関連する。疣贅状表皮発育異常症はHPV-5/8と関連する。先天的なHPVに対する免疫異常から全身に疣贅病変が多発し、青年期以降に発癌をきたす疾患
- 2. HPV6/11:尖圭コンジローマと関連する
- 3. HPV16:Bowen様丘疹症の他、子宮頸癌や爪部Bowen病と関連する
- 4. HPV18:子宮頸癌と関連する
- 5. HPV57/60:類表皮嚢腫(粉瘤)のうち、足底にできるものは外傷やウイルスと関連する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p494/496(1・2)/497(3)/417(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p804/807(1・2)/808(3)/806(5)
- 参考(HPVワクチン):(5)HPV ワクチン – 日本産婦人科医会
関連問題(HPVと関連疾患)
その他多数あるので下記も参照
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HPV(ヒトパピローマウイルス) 型と関連疾患 まとめ
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選択問題25:解答 2
尖圭コンジローマに対するイミキモド(ベセルナ®)クリームの使用法について問う問題
外用後に洗い流す必要がある→2
刺激が強いため、隔日での外用・洗い流す・外用期間の制限(16週)など特徴が多い薬剤
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イミキモド(ベセルナ®)クリーム まとめ
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- 1. 1日1回だが、連日ではなく週3回(隔日)で使用する
- 2. 就寝前に塗布し、起床後石鹸で洗い流す。時間の目安は6〜10時間後
- 3. 小児等への使用は安全性が確立していない(使用経験がない)が、禁忌ではない
- 4. 外性器および肛門”周囲”の尖圭コンジローマに対して保険適用。尿道、腟内、子宮頸部、直腸及び肛門内(→粘膜)に対しては禁忌
- 5. 塗布部位およびその周辺に局所反応(紅斑・びらん・潰瘍等)があらわれることがある。さらに強いと悪寒・発熱・筋肉痛等のインフルエンザ様症状が現れることがあり、この場合は使用の中止を考慮する
イミキモドはTLR7を介してIFN-αなどのサイトカインを活性化し、5に記載のような炎症反応が生じる
関連:イミキモドは頻出, 詳細は上記カード内の記事参照
選択問題26〜50は下記
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平成25(2013)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題26〜50
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