日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成30(2018)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版、ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
選択問題51〜75は下記参照
-
平成30年度(2018年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題51〜75
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見出し
- 1 平成30年度(2018年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 76〜92 記述
- 1.1 選択問題76:解答 1
- 1.2 選択問題77:解答 2, 3, 5
- 1.3 選択問題78:解答 2, 5
- 1.4 選択問題79:解答 2, 3
- 1.5 選択問題80:解答 1, 3, 4
- 1.6 選択問題81:解答 1
- 1.7 選択問題82:解答 1, 5
- 1.8 選択問題83:解答 5
- 1.9 選択問題84:解答 4, 5
- 1.10 選択問題85:解答 2, 3
- 1.11 選択問題86:解答 3
- 1.12 選択問題87:解答 1, 3, 4
- 1.13 選択問題88:解答 5
- 1.14 選択問題89:解答 3, 4, 5
- 1.15 選択問題90:解答 2
- 1.16 選択問題91:解答 1, 5
- 1.17 選択問題92:解答 1, 2, 3
- 1.18 記述問題1:解答 ATP2A2
- 1.19 記述問題2:解答 Hutchinson(ハッチンソン)徴候
- 1.20 記述問題3:解答 暖房器具の利用 / 流産歴
- 1.21 記述問題4:解答 atrophie blanche
- 1.22 記述問題5:解答 増殖性天疱瘡
- 1.23 記述問題6:解答 Bet v 1
- 1.24 記述問題7:解答 キニーネ
- 1.25 記述問題8:解答 メタアナリシス (メタ解析)
平成30年度(2018年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 76〜92 記述
選択問題76:解答 1
足趾の紅色局面で、ダーモスコピー(DS)上淡紅白色の規則的な構造と血管構造がみられる
エクリン汗孔腫の像→1
これらの血管構造はGlomerular vessels(糸球体状血管)やヘアピン状血管と呼ばれる
- 1. エクリン汗孔腫:規則的な淡紅色の網状構造および、その内部の血管構造が特徴
- 2. 尋常性乾癬:真皮乳頭部の拡張した毛細血管(DSでの小点状血管)がみられ、白色の鱗屑を伴うことが特徴※
- 3. 尋常性疣贅:毛細血管拡張の他、角層内で黒点状の点状出血がみられる
- 4. 無色素性基底細胞癌:DSでのarborizing vessels(樹枝状血管)が特徴で、顔面に好発する
- 5. 無色素性悪性黒色腫:血管拡張がみられるが、走行が不規則となる
※一方鱗屑が黄色の場合は貨幣状湿疹を示唆する(shiny yellow clods)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p63(3)
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p190(1)/112(2)/186(3)/158(4)/122(5)
- 参考・図引用:Clinical and dermoscopic features of eccrine poroma. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2015 May-Jun;81(3):308-9.
関連問題
選択問題77:解答 2, 3, 5
亜鉛欠乏症の3主徴は皮膚炎・下痢・脱毛→2, 3, 5
一方ペラグラ(ナイアシン欠乏)の症状は皮膚炎(dermatitis)・下痢(diarrhea)・精神障害(dementia)で(3つのD)2つは重複している
- 1. 舌炎:亜鉛欠乏症では味覚障害をきたす。舌炎は鉄欠乏症で見られることがある(Plummer-Vinson症候群)
- 2. 下痢:亜鉛欠乏症の他、ナイアシン欠乏(ペラグラ)の症状3つのDの1つ(diarrhea)
- 3. 脱毛:亜鉛欠乏症ではほとんどの症例にみられる
- 4. 精神症状:亜鉛欠乏症では一般的ではなく、上述のペラグラの1症状(dementia)
- 5. 皮膚炎:とくに開口部や四肢末端に好発し、水疱や膿疱を伴うのが特徴
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p323(2・3・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p470(2・3・5)/780(1)/479(4)
関連問題
- 2023 選択50 (亜鉛欠乏症と粘膜症状)
- 2019 選択70 / 2011 選択60 (亜鉛欠乏症の症状)
- 2022 選択45 / 2021 選択72 / 2009 選択43 (ペラグラの原因, 症状など)
選択問題78:解答 2, 5
慢性活動性EBウイルス感染症に関する出題
血球貪食症候群を合併することがあり、伝染性単核球症様症状を反復する→2, 5
慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)
本来はB細胞に感染し、一過性の症状(伝染性単核症)を引き起こして治癒するEBウイルスがNK/T細胞に持続感染することで生じる
伝染性単核症様の症状を繰り返し、一部で蚊刺過敏症(NK細胞)や種痘様水疱症(T細胞)を合併する
経過中に血球貪食症候群や悪性リンパ腫を合併する予後不良の疾患
- 1. 好発年齢は小児〜若年成人で、東アジア人に多い
- 2. EBウイルス関連血球貪食症候群を合併する
- 3・4. CAEBVはしばしばNK/T細胞リンパ腫に進展する予後不良の疾患
- 5. 発熱・肝脾腫・リンパ節腫脹など、伝染性単核球症様症状を反復する
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p798(2・3・4・5)
- 選択肢1の参考:慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン 2016
関連問題(CAEBV)
選択問題79:解答 2, 3
壊死性遊走性紅斑についての出題
アミノ酸低下が原因で、皮疹は荷重部や間擦部に好発する→2, 3
壊死性遊走性紅斑
グルカゴノーマ*や低栄養状態で低アミノ酸血症をきたし、皮疹が生じる
皮疹は肛門周囲や陰部など間擦部・開口部に紅斑が出現し、膿疱・びらんをきたし環状に拡大する
*グルカゴン作用過剰のためアミノ酸が分解され糖となり、高血糖・低アミノ酸血症をきたす
- 1. 採血上高グルカゴン・高血糖、低アルブミンが見られるが、好酸球増多は一般的ではない
- 2. アミノ酸補充で皮疹の治癒が期待できる
- 3. 皮疹は、躯幹や四肢、とくに荷重部や間擦部に好発する
- 4. 低アミノ酸血症をきたせば(←低栄養など)、グルカゴノーマ以外でも発症することがある。よってグルカゴン濃度正常でも本症を否定できない
- 5. 組織学的には表皮"上層"に限局した細胞内浮腫や壊死、Langerhans細胞減少が特徴※。空胞変性(液状変性)は境界部皮膚炎に特徴的な所見で、扁平苔癬や薬疹でみられる
※組織像は亜鉛欠乏症に類似することがある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p146(3・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p194(2・3・4・5)
- 参考:膵グルカゴノーマに伴う壊死性遊走性紅斑:類縁疾患を 含めて“栄養障害性紅斑症 erythema dystrophica”と 包括することを再度強調した 日皮会誌:127(6), 1331-1337, 2017
選択肢3について。間擦部に好発との記載はあるが四肢の荷重部に皮疹が生じるかどうかについて、参考書籍での記載はない。ただ参考論文にて皮疹は躯幹,四肢,特に荷重部や摩擦部位に紅斑として始まり
と記載がある。この点から本選択肢は正解選択肢と考えた
関連問題(壊死性遊走性紅斑)
- 2020 記述3 / 2014 選択47 / 2010 選択41 (臨床問題, 基礎疾患)
- 2017 選択52 (亜鉛欠乏症と組織像が類似)
選択問題80:解答 1, 3, 4
太い膠原線維増加をきたす疾患を問う問題
- 1. 汗管腫:管腔の一端に尾のような上皮索が付着するオタマジャクシ様の構造と、間質の結合組織(膠原線維)増殖が特徴。管腔を構成する壁細胞の胞体が明るくみえるもの(澄明細胞汗管腫)は糖尿病合併が多い
- 2. 神経線維腫:紡錘形の腫瘍細胞増殖と間質に細い膠原線維増殖、肥満細胞浸潤がみられる。CD34やS-100陽性も特徴
- 3. 皮膚線維腫:真皮全層で膠原線維が増加し、線維芽細胞様の紡錘形細胞が密に増殖する。基底層のメラニン沈着もみられる
- 4. 青色母斑, 通常型:真皮中層〜深層のメラニン沈着がみられ、膠原線維の増加もみられる
- 5. 隆起性皮膚線維肉腫(DFSP):皮膚線維腫の悪性版だが、こちらは膠原線維が乏しくなる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p412(1)/420(2)/431(3)/382(4)/461(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p615(1)/736(2)/658(3)/560(4)/667(5)
- 選択肢4の参考:みき先生の皮膚病理診断ABC 3 メラノサイト系病変 p68
関連問題
選択問題81:解答 1
病理組織像と各疾患の特徴を問う問題
①は日光角化症であり、露光部以外には生じない→1
- ① 日光角化症:表皮基底層に限局した異型細胞や不全角化がみられる
- ② 基底細胞癌:腫瘍胞巣および周囲との裂隙形成がみられる
- ③ 脂漏性角化症:外方増殖性を示し、偽角化嚢腫がみられる(右下)
- ④ Bowen病:表皮全層に異型細胞がみられ、異常角化細胞が融合したClumping cellが特徴
- ⑤ 尖圭コンジローマ:乳頭状の表皮肥厚と空胞細胞(コイロサイトーシス)がみられる
- 1. 日光角化症は真皮にsolar elastosis(日光性弾力線維症)を伴い、露光部以外には生じない
- 2. 基底細胞癌は角化細胞由来でなく、表皮・毛嚢系幹細胞に由来し毛包や脂腺・汗腺などに分化する
- 3. 脂漏性角化症は掌蹠には生じない
- 4. Bowen病は付属器上皮内へも進展する。一方日光角化症の病変は汗管や毛包を避け、正常角化と交互性になる(pink and blue sign)
- 5. 尖圭コンジローマはウイルス性疾患。臨床像が類似するボーエン様丘疹症の組織像は上皮内癌であるボーエン病に似る
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p449(1)/444(2)/406(3)/451(4)/496(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p624(1)/641(2)/595(3)/629(4)/807(5)
- 日光角化症とBowen病の参考:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 有棘細胞癌診療ガイドライン2020 日皮会誌:130(12), 2501-2533, 2020のp2508-2509
関連問題
選択問題82:解答 1, 5
イミキモド(ベセルナ®)外用の保険適用は日光角化症および尖圭コンジローマ→1, 5
イミキモド (ベセルナ®)クリーム
TLR7を活性化することで免疫を賦活化する作用を持つ
イミキモドクリームの利用方法 | 部位 | 外用期間 |
日光角化症 | 顔面 or 禿頭部 | 「4週間外用→4週間休薬」 を2回まで(合計16週間) |
尖圭コンジローマ | 外性器 or 肛門周囲 | 16週間まで |
外用方法はいずれも1日1回週3回就寝前→起床後洗い流す
※刺激性が強いため、連日の外用や洗い流さないのはNG
- 参考:ベセルナ 添付文書
-
イミキモド(ベセルナ®)クリーム まとめ
続きを見る
関連:ベセルナは頻出, 上記カード内の記事参照
選択問題83:解答 5
リファンピシンはステロイドの効果を減弱させる→5
ステロイドと代謝
副腎皮質ステロイドは肝薬物代謝酵素であるCYP3A4で代謝される
同酵素を誘導する薬剤によって代謝され酵素が減弱する
具体例は下記
- リファンピシン
- フェノバルビタール
- フェニトイン
- 1. イトラコナゾール:CYP3A4阻害作用を持つ(併用注意ではない)
- 2. エリスロマイシン:CYP3A4阻害作用を持ち、ステロイド作用が増強するため併用注意
- 3. シクロスポリン:ステロイドはシクロスポリン代謝を抑制するため、ステロイド大量投与でシクロスポリン血中濃度が上昇する
- 4. バラシクロビル:プロドラッグであり投与後速やかにアシクロビルへ変換される。CYP3A4と関連しない
- 5. リファンピシン:CYP3A4誘導によりステロイド代謝が促進、効果は減弱する
- 参考:プレドニン 添付文書
関連:2021 選択27(ステロイドについて)
医師国家試験111E31でも類題が出題されている
選択問題84:解答 4, 5
幽門閉鎖合併の表皮水疱症の原因分子はα6β4インテグリンおよびプレクチン→4, 5
先天性表皮水疱症の原因分子については下記参照
-
先天性表皮水疱症の病型と原因蛋白・遺伝形式まとめ
続きを見る
- 1. 4型コラーゲン:基底板を構成するコラーゲンだが、表皮水疱症の原因ではない
- 2. 7型コラーゲン:栄養障害型表皮水疱症および後天性表皮水疱症に共通する原因分子で、1型コラーゲンと結合する
- 3. 17型コラーゲン(BP180):接合部型表皮水疱症(幽門閉鎖"非"合併)および水疱性類天疱瘡に共通する原因分子
- 4. インテグリンα6/β4:接合部型表皮水疱症(幽門閉鎖合併)および粘膜類天疱瘡に共通する原因分子
- 5. プレクチン:単純型表皮水疱症(幽門閉鎖や筋ジストロフィー合併)の原因分子で、ケラチン5/14と直接結合する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p6(1)/238(2・3・4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p10(1)/326(2・3・4・5)
関連:2019 選択56(幽門閉鎖合併接合部型表皮水疱症の原因分子)
※表皮水疱症と原因分子については繰り返し出題あり、詳しくは上記記事参照
選択問題85:解答 2, 3
ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックはDNAが2重鎖であることを発見した→2, 3
同業績で1962年にノーベル医学・生理学賞を受賞している
- 1. ロベルト・コッホ:感染症証明の指針「コッホの原則」の提唱および、結核菌・コレラ菌・炭疽菌の発見者で、1905年ノーベル賞受賞
- 2・3. ジェームズ・ワトソン, フランシス・クリック:DNAが2重鎖であることを発見した
- 4. チャールズ・ダーウィン:進化論を提唱し「種の起源」の執筆を行った
- 5. ヨハン・メンデル:遺伝に関する「メンデルの法則」を発見した
- 参考:Wikipedia等
選択問題86:解答 3
抗ヒスタミン薬のうち、腎機能障害患者で投与可能なものを問う問題
エピナスチン(アレジオン®)は腎機能障害患者でも投与可能→3
腎機能障害患者での抗ヒスタミン薬
腎機能低下/透析患者での抗ヒスタミン薬について、添付文書を元に作成
添付文書記載 | 商品名 | 一般名 | 対象 |
減量不要 | エバステル® | エバスチン | |
ザジテン® | ケトチフェンフマル | ||
アゼプチン® | アゼラスチン | ||
アレジオン® | エピナスチン | ||
アレグラ® | フェキソフェナジン | ||
慎重投与 | ニポラジン® | メキタジン | |
ビラノア® | ビラスチン | 中等度以上 (GFR < 50mL/min/1.73m2) |
|
クラリチン® | ロラタジン | ||
ルパフィン® | ルパタジン | ||
デザレックス® | デスロラタジン | ||
タリオン® | ベポタスチンベシル | ||
減量が必要 | ザイザル® | レボセチリジン | CCr<80mL/min |
ジルテック® | セチリジン | CCr<80mL/min | |
注意 | アレロック® | オロパタジン | CCr<30mL/min |
なお添付文書上記載がなくても、「腎機能低下時の主な薬剤投与量一覧」ではCCrに応じた減量を勧められている薬剤もある。例えばフェキソフェナジンは通常120mg分2だがCCr<15mL/minでは60mg分2となっている
- 参考:各種添付文書
- 参考:薬剤性腎障害診療ガイドライン2016 付表 2 腎機能低下時の主な薬剤投与量一覧
関連問題
- 2011 選択82 (腎障害でOKな抗ヒスタミン薬, ここではフェキソフェナジンが間違い選択肢に)
- 2023 選択79 (抗ヒスタミン薬の構造式)
- 2019 選択30 (6ヶ月〜投与可能な抗ヒスタミン薬)
選択問題87:解答 1, 3, 4
感染症法上の届出義務を問う問題
4類以上の感染症(結核・ライム病・つつが虫病)は診断後直ちに届出が必要→1, 3, 4
5類感染症では侵襲性髄膜炎菌感染症・麻しん・風疹のみ直ちに届出、その他は7日以内に届出
- 1. 結核:2類感染症
- 2. 梅毒:5類感染症で、7日以内に届出が必要
- 3. ライム病:4類感染症。スピロヘータの一種であるボレリアによる感染症で、マダニが媒介し慢性遊走性紅斑をきたす
- 4. つつが虫病:4類感染症 リケッチアによる感染症で、マダニが媒介する
- 5. 劇症型溶血性レンサ球菌感染症:5類感染症で7日以内に届出が必要
大まかに言えば他者への感染が起こりやすい疾患は直ちに、発生や流行のサーベイランスをしたい疾患は7日以内に届出
-
感染症法に基づく医師の届出 まとめ
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関連:感染症法に基づく届出は頻出, 関連問題は上記カード内の記事参照
選択問題88:解答 5
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症に関する出題
5類感染症のため届出が必要→5
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症
広域抗菌薬であるカルバペネム系(メロペネムなど)や広域β-ラクタム剤に対し薬剤耐性を示すEscherichia coli、Klebsiella pneumoniaeなどによる感染症の総称
免疫能低下患者で肺炎や尿路感染、カテーテル感染などを引き起こす
- 1. 免疫能低下患者の多い、院内感染の起因菌として重要
- 2. 肺炎や尿路感染を起こせば、喀痰/尿から検出される
- 3. "接触感染予防"が重要。空気感染する感染症の代表は麻疹・水痘・結核
- 4. CREはセフェム系(βラクタム系)に対する獲得を耐性した腸内細菌を示す
- 5. 2014年9月より5類全数把握疾患となっており、感染症法に基づき7日以内に届出が必要
選択問題89:解答 3, 4, 5
皮膚科新専門医制度(日本専門医機構)について問う問題
- 1. 研修基幹施設での1年間以上の研修および、連携施設での1年(または3ヶ月*)以上の研修が必要(旧制度は基幹施設のみでも可だった)
- 2. 研修開始は専攻医プログラムの開始以降。初期臨床研修期間、他科での研修は、研修期間として認められない
- 3. 産休・育休は最長6ヶ月まで研修期間として認められる(2019/4〜)
- 4. 大学院期間も研修期間として認められる(基礎系講座や研究所では2年間が上限)
- 5. 一人医長(指導医なし)であっても、2年間までは研修期間に含められる
*基幹施設が大学病院以外の場合
- 選択肢1〜3の参考:日本皮膚科学会 よくあるお問い合わせ - 「研修基幹施設」と認定基準
- 選択肢4・5の参考:皮膚科専門研修プログラム整備基準(PDF)
学会制度=旧専門医制度, 機構制度=新専門医制度なので混同に注意
選択問題90:解答 2
顆粒球吸着療法の保険適用を問う問題
膿疱性乾癬は保険適用→2
顆粒球単球吸着除去療法 (GMA)
炎症組織に集積し病変形成に関与する好中球・マクロファージ・単球を除去する体外循環療法
- 保険適用(皮膚科領域):膿疱性乾癬(2012)・関節症性乾癬(2019)
カッコ内は保険適用承認年 - その他:潰瘍性大腸炎・クローン病・関節リウマチ
週1回の施行で、膿疱性乾癬は5回/関節症性乾癬は10回までが保険適用内
膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドラインでは推奨度C1。比較的安全性が高く、妊婦・授乳中の治療選択肢として挙げられている
- 参考:膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン 2014年度版 日皮会誌:125(12), 2211-2257, 2015
- 保険適用の参考:J041-2 血球成分除去療法(1日につき) | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
関連問題
- 2023 選択24 / 2021 選択24 / 2016 選択16 / 2010 選択13 (妊婦乾癬の治療)
- 2015 選択17 (施行回数)
選択問題91:解答 1, 5
指定難病の対象疾患を問う問題
結節性硬化症と家族性良性慢性天疱瘡が該当する→1, 5
- 1. 結節性硬化症:指定難病
- 2. 乾癬性関節炎:乾癬のなかでは膿疱性乾癬(汎発型)のみが該当
- 3. 好酸球性筋膜炎:非該当。全身性強皮症は指定難病に該当する
- 4. 硬化性萎縮性苔癬:非該当。有棘細胞癌の前がん病変として重要
- 5. 家族性良性慢性天疱瘡(Hailey-Hailey病):指定難病。なお類似疾患のDarier病は指定難病ではない
関連問題(指定難病)
- 2022 選択78 (IgA腎症, ポルフィリン症, 中條・西村症候群, サルコイドーシス)
- 2021 選択71 (家族性良性慢性天疱瘡)
- 2016 選択56 (弾性線維性仮性黄色腫)
- 2016 選択88 (類天疱瘡・先天性魚鱗癬・家族性良性慢性天疱瘡)
選択問題92:解答 1, 2, 3
皮膚科特定疾患指導管理料(Ⅰ)を算定可能な疾患を問う問題
紅皮症・扁平苔癬・結節性痒疹がある→1, 2, 3
皮膚科特定疾患指導管理料の対象疾患
皮膚科特定疾患指導管理料(Ⅰ):250点
- 天疱瘡
- 類天疱瘡
- エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)
- 紅皮症
- 尋常性乾癬
- 掌蹠膿疱症
- 先天性魚鱗癬
- 類乾癬
- 扁平苔癬
- 結節性痒疹及びその他の痒疹(慢性型で経過が1年以上のもの)
皮膚科特定疾患指導管理料(Ⅱ):100点
- 帯状疱疹
- じんま疹
- アトピー性皮膚炎(16歳以上で外用療法を必要とする場合)
- 尋常性白斑
- 円形脱毛症
- 脂漏性皮膚炎
関連問題
記述問題1:解答 ATP2A2
高齢男性で腋窩や鼠径部など間擦部に角化性丘疹をきたし、組織では異常角化細胞がみられる
Darier病の診断で、原因遺伝子はATP2A2
Darier病
カルシウムポンプをコードするATP2A2遺伝子変異により発症
間擦部の角化性丘疹をきたし、組織学的には棘融解や異常角化細胞が特徴
類縁疾患にHailey-Hailey病がある
共通点
- 病因:カルシウムポンプをコードする遺伝子の変異
- 遺伝形式・発症時期:常染色体優性遺伝疾患だが、発症は思春期以降が多い(先天性でない)
※Haploinsufficiencyの機序:成人して蛋白が足りなくなると発症 - 好発部位/時期:鼠径部や腋窩などの間擦部で、夏季に増悪
- 組織学的所見:表皮の棘融解による裂隙や絨毛の形成
相違点 | Darier病 | Hailey-Hailey病 (家族性慢性良性天疱瘡) |
原因遺伝子 | ATP2A2 | ATP2C1 |
症状 | 角化が強い | 水疱・びらんが主体 |
組織学 | 異常角化細胞が多く見られる | 異常角化細胞が見られることはあるが、著明ではない |
指定難病 | × | ○ |
本問ではDarier病とHailey-Hailey病を厳密に鑑別することは困難だが、問題文中で角化性病変と記載があることからDarier病を想定正答と考えた
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p279/246(Hailey-Hailey)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p356/359(Hailey-Hailey)
関連問題(Darier病)
- 2021 選択71 (両疾患の比較)
- 2021 選択19 / 2020 選択55 / 2016 選択11 / 2014 選択7 / 2010 選択51 (病理や原因遺伝子)
- 2018 選択91 / 2016 選択88 (指定難病)
記述問題2:解答 Hutchinson(ハッチンソン)徴候
帯状疱疹で眼合併症を伴う徴候を問う問題
Hutchinson徴候
鼻背部は三叉神経第1枝(Ⅴ1)が単独支配しており、同部位に病変がある場合はⅤ1領域の角結膜炎に注意が必要
一方鼻の先端(鼻尖部)はⅤ1およびⅤ2の双方から支配されており、この部位の皮疹ではⅤ1領域病変かどうか判断できない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p492
関連問題
記述問題3:解答 暖房器具の利用 / 流産歴
中高年女性の下腿内側で網状の紅斑(リベド)がみられ、一部血痂が付着した潰瘍を認める
温熱性紅斑や抗リン脂質抗体症候群(APS)を疑い、暖房器具の利用歴や流産歴を聴取する。写真と臨床像からどちらかを判断するのは難しい
本問と同一の写真がVisual dermatology 2010 Vol.9 359ページで温熱性紅斑の症例写真として使われているとコメントを頂きました
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p188/210(APS)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p247/440(APS)
関連問題
- 2010 選択36 / 2009 選択77 (抗リン脂質抗体症候群について)
- 2010 選択88 (温熱性紅斑)
記述問題4:解答 atrophie blanche
リベド血管症や静脈瘤症候群でみられる白色萎縮をatrophie blancheと称する
atrophie blanche
潰瘍の治癒後にみられる白色の萎縮性瘢痕
毛細血管の塞栓性炎症があり、小潰瘍を反復しやすい
見られる疾患:リベド血管症・うっ滞性皮膚炎・静脈瘤など
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p188・127
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p232・253・164
関連問題
記述問題5:解答 増殖性天疱瘡
皮膚粘膜移行部で増殖隆起したびらんがみられ、組織学的には表皮内の好酸球性膿疱がみられ、IgGが表皮細胞間に沈着している
→増殖性天疱瘡の診断
増殖性天疱瘡
尋常性天疱瘡の亜型で、小水疱から始まるがびらん面が上皮化せずに増殖隆起することが特徴
皮疹は腋窩や臍窩・外陰部に好発
- 検査:抗デスモグレイン(Dsg)3抗体が陽性 (Dsg1抗体が陽性のこともある)
- 組織:棘融解や表皮肥厚のほか、表皮内の好酸球性膿疱が特徴
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p252
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p313
記述問題6:解答 Bet v 1
大豆抗原であるGly m 4と高い相同性を有し、PR-10に属するシラカンバ花粉のアレルゲンコンポーネントはBet v 1
口腔アレルギー症候群の原因として重要
Bet v 1自体の測定は保険適用外だが、大豆のコンポーネントGly m 4は類似性があり陽性となることが多い(こちらは保険適用)
口腔アレルギー症候群(花粉-食物アレルギー症候群) OAS
特定の花粉に感作された後、交差反応を示す食物を摂取することでアレルギー症状をきたす
消化・加熱により分解されるとアレルギー反応が起こらなくなるため、一般に症状は口囲に限局し加熱などの加工処理で摂取可能となることが多い
代表的な花粉-食物の組み合わせ | ||
花粉 | 果物・野菜など | |
カバノキ科(シラカンバ・ハンノキ) | バラ科(リンゴ・モモ・サクランボ) | マメ科(大豆・ピーナッツ) |
ヒノキ科・スギ | ナス科(トマト) | |
イネ科(カモガヤ)・ブタクサ | ウリ科(メロン・スイカ) | |
ヨモギ | セリ科(セロリ・ニンジン) |
関連問題
- 2022 選択32 / 2021 選択67 (アレルゲンコンポーネントについて)
- 2020 選択52 / 2019 選択64 (PR-10によるPFASと原因樹木・コンポーネント)
- 2019 選択19 / 2016 選択53 (食物と原因アレルゲン)
記述問題7:解答 キニーネ
ジントニック(トニックウォーター+ジン)に含まれるキニーネは固定疹をきたすことがある
症状としては摂取後に四肢末梢や口唇の浮腫性紅斑・水疱をきたす
トニックウォーターによる固定疹
原因物質を摂取後同一部位に繰り返し生じる皮疹を固定疹と呼び、代表例に固定薬疹がある
食物など薬剤以外のものでも生じ、この場合トニックウォーター*に含まれるキニーネが原因として知られる
- キニーネ:以前抗マラリア薬として利用されていたが、現在はカクテルの材料に利用されている
紫外線照射で青く光るという特徴がある - 診断:パッチテストや負荷試験が有効だが、皮疹消退から2週間程度は不応期で陽性となりづらい点・陽性率が低い点に注意が必要
*カナダドライ®、シュウェップス®、カナダドライ®など
- 参考文献:トニックウォーターによる固定疹 臨床皮膚科73巻5号(2019増刊号) p27-31
記述問題8:解答 メタアナリシス (メタ解析)
過去に行われた複数の臨床試験結果をまとめて解析する手法はメタアナリシスと呼ばれる
ランダム化比較試験のメタアナリシスは最もエビデンスレベルが高い
研究デザインとエビデンスレベル(質の高いもの順)
Ⅰ | システマティック・レビュー/メタアナリシス |
Ⅱ | 1つ以上のランダム化比較試験 |
Ⅲ | 非ランダム化比較試験 |
Ⅳ | 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究) |
Ⅴ | 記述研究(症例報告やケース・シリーズ) |
Ⅵ | 専門委員会や専門家個人の意見 |
- メタアナリシス(メタ解析):複数の研究結果について統計的方法を用いて、効果と信頼性を算出する方法で研究結果を定量的に評価できる
- システマティック・レビュー(系統的レビュー):学術文献を系統的に検索・収集し類似した研究を選択・評価した上で、明確で科学的な手法を用いてまとめる。統計学的手法は必須ではない
- ランダム化比較試験(RCT:randomized controlled trial):介入群と対照群にランダム割り付けを行い、介入の実施後にアウトカムを観察することで介入群と対照群を比較する。
介入の効果を明らかにする上では最も優れた研究方法で、一次研究(患者・健康者を対象とした研究)においてエビデンスレベルが最も高いとされる
関連問題