皮膚科 皮膚科専門医試験対策

平成30年度(2018年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題26〜50

2022年6月28日

2018-specialist-2v2

日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成30(2018)年度解答解説を作成しました

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選択問題1〜25は下記

2018-specialist-1v2
平成30年度(2018年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜25

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平成30年度(2018年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 26〜50

選択問題26:解答 1, 3, 4

イミダゾール系抗真菌薬の商品名を問う問題

ルリコン®・ニゾラール®・フロリードD®の3つ→1, 3, 4

皮膚真菌症の抗真菌薬については下記参照

220528-tinea-candida
皮膚真菌症 抗真菌薬のまとめ【白癬・カンジダ・爪白癬】

続きを見る

  • 1. ルリコン®(ルリコナゾール):イミダゾール系で、白癬および皮膚カンジダ症に使用される。爪白癬用がルコナック®
  • 2. ゼフナート®(リラナフタート):チオカルバミン酸系で、白癬のみで皮膚カンジダ症には使用されない
  • 3. ニゾラール®(ケトコナゾール):イミダゾール系で、白癬および皮膚カンジダ症に使用される。脂漏性皮膚炎にも使われる
  • 4. フロリードD®(ミコナゾール):イミダゾール系で、皮膚カンジダ症のみで白癬には使用されない
  • 5. クレナフィン®(エフィコナゾール):トリアゾール系で、爪白癬に使用される

イミダゾール系は白癬および皮膚カンジダ症の双方に使えるものが多いが、エンペシド®(クロトリマゾール)とフロリードD®(ミコナゾール)は皮膚カンジダ症のみ

関連2021 選択34  / 2020年 選択29 (カンジダ症に用いる外用抗真菌薬)

選択問題27:解答 4

免疫抑制薬内服中の高齢女性にみられた皮膚結節。ムチカルミン染色ではムコ多糖類が赤く染色される

ムコ多糖から構成される厚い莢膜を有する感染症はクリプトコッカス症→4

莢膜はアルシアンブルー/コロイド鉄染色で青色に、ムチカルミン染色で赤色に、墨汁染色で黒色に染色される

  • 1. ノカルジア症:足に皮下硬結を形成する病型やリンパ管に沿って病変が拡大する病型がある。組織では菌塊が特徴
  • 2. アスペルギルス症:肺病変からの播種ないし長期臥床・ギプス固定等の部位から侵入した膿皮症の病型をとる
  • 3. クロモミコーシス(黒色分芽菌症):黒色真菌のなかで、特徴的な隔壁を持つ褐色の大型胞子(sclerotic cell)がみられる
  • 4. クリプトコッカス症:吸入による肺病変からの播種 or 外傷による直接侵襲で発症し、莢膜を有する胞子がみられる
  • 5. スポロトリコーシス:典型例では上肢にリンパ行性の飛び石状病変がみられ、組織では星状体(asteroid body)が特徴
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p40・544(2・4)/531(1)/542(3)/541(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第10版 p881(4)/820(1)/883(2)/878(3)/875(5)

関連問題

選択問題28:解答 3

クロストリジウム性ガス壊疽に関する一般問題

原因は嫌気性グラム陽性桿菌→3

ガス壊疽

ガス産生菌による軟部組織感染症

クロストリジウム性と非クロストリジウム性に分類される

ガス壊疽 原因菌 外傷既往 好発者
クロストリジウム性 Clostridium perfringens
(ウェルシュ菌)
多い 外傷患者
非クロストリジウム性 嫌気性菌
(大腸菌, Klebsiellaなど)
通常なし 糖尿病
肝硬変
など
  • 1. 38℃以上の発熱や低体温、血圧低下(ショック)が重要。ショック時は代償性に頻脈となる
  • 2. クロストリジウム性では外傷が誘因となる。非クロストリジウム性は肝硬変などの基礎疾患を持つことが多い
    Vibrio vulnificusによる壊死性筋膜炎も肝硬変患者に好発する
  • 3. 原因菌のClostridium perfringensは嫌気性グラム陽性桿菌
  • 4. クロストリジウム性は外傷性が多く、非クロストリジウム性は非外傷性が多い
  • 5. C. difficileは偽膜性大腸炎(CD腸炎)の原因

関連2019 選択40(壊死性筋膜炎の原因菌)

選択問題29:解答 3

皮膚結核の分類について問う問題

真性皮膚結核は皮膚疣状結核→3

皮膚結核の分類 真性皮膚結核と結核疹

  • 結核菌が直接病巣を作るもの(培養で結核菌+):真性皮膚結核
  • 結核菌に対するアレルギー反応で生じるもの:結核疹

真性皮膚結核は現在15%と少ない

真性皮膚結核 結核疹
皮膚腺病 (2017 選択32) Bazin硬結性紅斑
尋常性狼瘡 丘疹壊疽性結核疹
(壊疽性丘疹状結核)
皮膚疣状結核 腺病性苔癬
陰茎結核疹 (2020 記述5)
  • 1. 陰茎結核疹:亀頭や包皮に有痛性潰瘍を生じる、丘疹壊疽性結核疹(4.)の一種。泌尿器結核を合併する
  • 2. 腺病性苔癬:結核免疫を持つヒトで血行性に菌が散布されて生じる結核疹で、自覚症状のない丘疹が多発する
  • 3. 皮膚疣状結核:結核による皮膚感染で、すでに免疫があるヒトの皮膚に再度結核菌が外傷性侵入することで生じる
  • 4. 壊疽性丘疹状結核疹:結核菌に対するアレルギーで生じる血管炎で、四肢伸側に暗紅色丘疹が多発し潰瘍化する
  • 5. 結節性結核性静脈炎:下腿や足で静脈に沿った皮下硬結をきたす。潰瘍化しない点がBazin硬結性紅斑との違い
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p546/550(1・2)/549(3・4)
  • 参考書籍:皮膚科学 第10版 p826/829(1・2・4)/828(3)/830(5)

関連問題

選択問題30:解答 1, 4

壊死性筋膜炎診断に用いるLRINEC(Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis)スコアに含まれる項目を問う問題

血糖値とHb値が含まれる→1, 4

壊死性筋膜炎 LRINEC score

壊死性筋膜炎の早期診断目的に使われ、採血項目のみ(Lはlaboratory)で評価可能

6点以上で壊死性筋膜炎の可能性が高くなる

項目 検査値 点数
CRP <15mg/dL 0
≧15mg/dL 4
白血球 <15,000/mm3 0
15,000〜25,000/mm3 1
>25,000/mm3 2
ヘモグロビン >13.5g/dL 0
11〜13.5g/dL 1
<11g/dL 2
血清ナトリウム ≧135mEq/L 0
<135mEq/L 2
血清クレアチニン ≦1.6mg/dL 0
>1.6mg/dL 2
血糖値 ≦180mg/dL 0
>180mg/dL 1
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p527

関連2021 選択36(LRINECスコアに含まれないもの)

選択問題31:解答 3

若年女性が渓流沿いで虫刺症後に結節性痒疹を下腿にきたしている

原因の虫として、渓流沿いで多いのはブユ(ブヨ)→3

  • 1. 蚊:ヒトスジシマカやアカイエカは都市部に存在する
  • 2. ノミ:日本で多いネコノミは公園や住宅地周辺など、野良猫が多い場所に存在する。ネコノミが飛び上がれる高さの下腿に好発
  • 3. ブユ:春から秋にかけて朝夕渓流沿いで刺されることが多い。露出部の下肢に好発
  • 4. マダニ:山間部の草木に存在するが、痒疹の原因として一般的ではない。日本紅斑熱重症熱性血小板減少症候群を媒介する
  • 5. トコジラミ(南京虫):カメムシの一種(シラミではない)。畳やベッドの隙間に存在し、夜間吸血を行う。露出部の皮疹が特徴

慢性痒疹診療ガイドライン(2012年版)(本問出題時最新)では結節性痒疹はブヨ,蚊,ナンキンムシなどの虫刺傷後に発生することが多いため,虫刺症が原因の一つとされると記載されていた。2020年版では虫刺が原因という記載はあるが具体的な虫名は削除されている

選択問題32:解答 4

疥癬患者におけるイベルメクチンの内服量を問う問題

約200μg/kgのため、60kgでの内服量は12mg:3mg x 4錠→4

疥癬 イベルメクチン(ストロメクトール®)

無脊椎動物の神経細胞にあるClチャネルに働き、寄生虫を麻痺させる内服薬

用法・用量

約200μg/kg空腹時に投与する
(高脂肪食で血中濃度が上昇する恐れがあるため)

体重(kg) 3mg錠数
<15 NG
15-24 1錠
25-35 2錠
36-50 3錠
51-65 4錠
66-79 5錠
≧80 約200μg/kg
  • 虫卵には無効のため、2回投与を行う場合は1週間空けて内服する
  • 妊婦・授乳婦・体重15kg未満の場合は安全性から他剤利用が推奨

なお大村智氏は同薬剤の研究業績で2015年度ノーベル医学・生理学賞を受賞している

15kg未満の小児は投与できない→1錠3mg(3,000μg)なので3,000μg/15kg↔200μg/kgと考えるとわかりやすい

関連問題(イベルメクチン)

選択問題33:解答 2, 4

マダニ刺咬症により感作されると、牛肉およびセツキシマブに対するアレルギーをきたす→2, 4

マダニとα-Galアレルギー (獣肉・セツキシマブ)

マダニ唾液腺中には糖鎖α-Galが含まれ、咬傷で感作される

感作成立後に下記のα-Galないしそれと交差するものに曝露されると、アレルギー反応をきたす

  • 獣肉(四本脚の哺乳類*):・豚・ヒツジなど
  • 抗EGFR抗体:セツキシマブ
  • カレイ魚卵

*鶏は含まれない

獣肉の場合、摂取直後ではなく3時間以上経過してからと遅発型アナフィラキシーの形を取る

血液型がAB型/B型だとα-Galをもともと持っており、感作が成立しづらい

  • 1. 鶏肉:鶏肉はα-Galアレルギーはきたさない。鶏の羽毛や糞によってGal d 5に感作されると、鶏肉や卵黄(卵白ではない)に対するアレルギーが生じる(bird-egg症候群)
  • 2・4. 牛肉・セツキシマブ:α-Galアレルギーをきたす代表例

関連問題

選択問題34:解答 3

HIV/AIDSに関する一般問題

無症候期は5〜10年→3

  • 1. AIDSの各種症状はCD4陽性細胞数減少と相関し、とくに200/mm3未満ではAIDS指標疾患の発症が増加する。なお梅毒の罹患頻度はCD4数と相関しないため混同しないよう注意
  • 2. 感染後抗体産生までは6〜8週間あり、この間抗体検査は陰性となる(window period)*
  • 3. 急性感染後の無症候期は平均5〜10年あり、この間にCD4陽性細胞数が減少しAIDS期へ到る
  • 4. プロテアーゼ阻害薬投与後3〜6か月で見られるの副作用にリポジストロフィーがある。顔面・四肢・体幹で皮下脂肪組織が異常に減少し、内臓や背部皮下で増える状態
  • 5. ニューモシスチス肺炎に対するST合剤など、薬疹はHIV患者で高頻度に見られる

*現在用いられている第4世代スクリーニングは抗体のみでなく抗原も測定するため、罹患後3W程度で陽転化する。よって罹患後6〜8週間経たないと全く検査に引っかからないというわけではない

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p509(ALL)/359(4)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p818(1・3・5)/508(4)

関連問題

選択問題35:解答 5

抗HIV抗体陽性患者の足底で暗赤色斑が多発しており、カポジ肉腫を考える

HHV-8感染による悪性腫瘍→5

Kaposi肉腫

血管内皮細胞由来の悪性腫瘍で、HHV-8が原因となる

  • AIDS指標疾患のひとつで、AIDS患者の約5%に発症
  • 紫褐色の斑からはじまり、進行すると隆起→結節となる
  • 組織:血管増生がみられ、HHV-8 LNA1陽性が診断に有用
    CD31/CD34/D2-40も陽性

ヒトヘルペスウイルス(HHV)と皮膚疾患

公式名称 略称 皮膚疾患
HHV1 HSV-1 単純膨疹(とくに口唇)
カポジ水痘様発疹症
HHV2 HSV-2 単純膨疹(とくに性器)
HHV3 VZV 水痘
帯状疱疹
HHV4 EBV 伝染性単核球症
慢性活動性EBウイルス感染症
(蚊刺過敏症, 種痘様水疱症)
Gianotti-Crosti症候群
節外性NK/T細胞リンパ腫
口腔毛状白板症
HHV5 CMV 伝染性単核球症
Gianotti-Crosti症候群
薬剤性過敏症症候群(DIHS)
※HHV-6より遅れて再活性化
HHV6 HHV-6 突発性発疹
DIHS
HHV7 HHV-7 突発性発疹
Gibertばら色粃糠疹
HHV8 HHV-8 カポジ肉腫
  • 1. HHV-1:単純ヘルペス(とくに口唇)や”Kaposi水痘様発疹症”の原因ウイルス
  • 2. HHV-2:単純ヘルペス(とくに性器)の原因
  • 3. HHV-4(EBV):伝染性単核球症や蚊刺過敏症、種痘様水疱症と関連する
  • 4. HHV-6:突発性発疹の原因で、DIHS(薬剤性過敏症症候群)で再活性化がみられる
  • 5. HHV-8:カポジ肉腫の原因ウイルス
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p464
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p690

関連問題

選択問題36:解答 3

尖圭コンジローマに関する一般問題

感染症法における第5類感染症→3

  • 1. 原因となるウイルスはHPV-6/11、ときにHPV-2。HPV-10は扁平疣贅の原因となる
  • 2. 潜伏期間は2〜3か月
  • 3. 第5類感染症であり、性感染症定点医療機関は届出義務がある(月単位)
  • 4. 治療として液体窒素凍結療法やイミキモド外用、切除が行われる
  • 5. イミキモド(ベセルナ®)の使用は”16週間”まで
    日光角化症でも、4週外用→4週休薬を2回までで16週となる

イミキモドについては下記も参照

230211-imiquimod-beselna
イミキモド(ベセルナ®)クリーム まとめ

続きを見る

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p496(1・2)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p807(1・3・4)
  • 選択肢5の参考:ベセルナ 添付文書

関連:イミキモドについては上記カード内の記事参照

選択問題37:解答 1, 3

梅毒検査の解釈に関する問題

STS(+) TP(-)の場合、生物学的偽陽性ないし感染早期を考える→1, 3

梅毒の検査について詳しくは下記参照

220502-STS-TPHA
梅毒 血清学的検査法の比較 STS法 TPHA法(TPLA法)

続きを見る

原則はSTS法(RPR法)→TP抗原法の順番で陽性となるが、近年用いられるTPLA(TP抗原法の一種)はSTS法より早期に陽転化することがある

STS法陽性、TP抗原法陰性の場合は下記の2パターンが考えられる

  • 生物学的偽陽性:SLEなどでみられる、非梅毒だが組織破壊により脂質が認識されSTS法が陽転化する病態
  • 感染早期:とくに従前はSTS法の方がTP抗原法よりも先に陽転化することが多かった*

*上述通り、近年はTPLA法が普及しこのパターンは減少

よって本問の解答は下記

  • 1. 生物学的偽陽性:SLE等基礎疾患の検索について検討する
  • 2. 梅毒既感染:TP抗体法は生涯陽性となるため、陰転化しない
  • 3. 梅毒初期:感染早期でTP抗体法が陰性の場合、数週間後に再検査することで陽転化する
  • 4. 早期梅毒:病変部からの鏡検やPCR法等を施行しないと、確定診断できない※
  • 5. 本患者は感染早期の可能性がある

※梅毒の確定には染色法 or PCR法による検出ないし、STS法"および"TP抗原法が陽性である必要がある

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p561
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p962
  • 選択肢4の参考:梅毒|厚生労働省
    ※書籍はいずれもTPLA法について言及されていないので注意

選択問題38:解答 4

groove signが特徴となる疾患を問う問題

好酸球性筋膜炎でみられる所見→4

好酸球性筋膜炎

壮年男性に後発し、過度の運動などを契機として四肢遠位で対称性の皮膚硬化を生じる

傷害された筋膜に対する自己免疫反応と考えられている

  • 末梢血および皮膚組織で好酸球増多
  • 表在静脈に一致した線状の陥凹(groove sign)が特徴
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p204(1・2・4)/200(3)/339(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p411(4)/408(1・2)/401(3)/488(5)

選択問題39:解答 3

手術時の切開線について問う問題

術後瘢痕を抑えるために、真皮縫合が終了した時点で縫合部がやや盛り上がるのが理想

そのため切開時は、皮膚の深部にかけてやや外側に切開する→3

2018-Skinincision

選択問題40:解答 1

褥瘡治療におけるTIMEコンセプトについて問う問題

TIMEコンセプトは黒色期および黄色期に適用される→1

褥瘡 治療コンセプト

深い褥瘡は黒色期→黄色期→赤色期→白色期→治癒という経過を取る

  • 前半の黒色期・黄色期:TIMEコンセプト
  • 後半の赤色期・白色期:moist wound healing(湿潤環境下療法)

TIMEコンセプトは以下の改善・管理をさす

  • T (tissue non viable or deficient):壊死・不活性組織
  • I (infection or inflammation):感染・炎症
  • M (moisture imbalance):滲出液
  • E (edge of wound:nonadvancing or undermined):創辺縁

関連2016 選択36(褥瘡の経過順)

選択問題41:解答 4

化学熱傷の初期対応について問う問題

フェノールによる化学熱傷はポリエチレングリコールを用いる→4

化学熱傷 初期対応

原則は十分量の水洗浄だが、一部特殊対応が必要

  • フェノール:水に溶けないためポリエチレングリコールを使用
  • フッ化水素:グルコン酸カルシウムの外用/動注
  • セメント・生石灰:水と反応するため十分除去してから洗浄
  • クロム酸:血液透析(経皮吸収されやすい)

関連問題

選択問題42:解答 1, 3

高齢女性で口腔粘膜・眼粘膜にびらんがみられ、粘膜類天疱瘡を考える

とくに口腔病変が強いことから原因分子はBP180およびラミニン332→1, 3

  • 1. ラミニン332(ラミニン5):粘膜類天疱瘡の原因分子の一つ(25%)で、とくに悪性腫瘍の合併が多い
  • 2. 7型コラーゲン:後天性表皮水疱症の原因分子。皮膚症状が主体で水疱性類天疱瘡に類似し、治癒後稗粒腫をきたす
  • 3. BP180:粘膜類天疱瘡の原因分子の一つで、とくにC末端側に反応する自己抗体を持つことが多い
  • 4. デスモグレイン3:尋常性/増殖性天疱瘡の原因分子で、通常皮膚症状を伴う
  • 5. インテグリンα6/β4:粘膜類天疱瘡の原因分子だが、眼症状が主体となるため本例では否定的

BP180(17型コラーゲン)と類天疱瘡

BP180は表皮基底細胞〜基底膜へ到る膜貫通タンパク質であり、疾患によって自己抗体が認識する部分が異なる

自己抗体の認識部位 疾患
NC16a領域
(N末端側 基底膜に近い領域)
水疱性類天疱瘡(典型例)
BP180全長 水疱性類天疱瘡
(DPP-4阻害薬関連)
C末端領域 粘膜類天疱瘡
2018-BP180

参考文献 p256図14.31より

通常測定可能なのは一番上の"NC16a領域に反応する自己抗体"のみのため(選択問題43参考)、DPP-4関連や粘膜類天疱瘡では抗体価が低値となる

※図1が本問と同一

上記ガイドラインには粘膜類天疱瘡は標的抗原によって大きく二つのタイプ, 抗BP180型粘膜類天疱瘡と抗ラミニン332型粘膜類天疱瘡に分けられる. ただし, Ⅶ型コラーゲンやα6β4インテグリン, BP230を標的抗原とする症例もあると記載されている。
つまり本問では選択肢2・5も否定しきれないが、最も頻度が高いBP180とラミニン332を選ぶのが妥当と思われる

なお本問と同じ図が用いられている論文(臨床皮膚科62(2) p129-132)は論文タイトル通りラミニン5(ラミニン332)が検出され、BP180はNC16a領域もC末端領域も陰性であったと記載されている

関連問題

選択問題43:解答 1, 3, 5

水疱性類天疱瘡診断に用いられる検査のうち、保険適用のものを問う問題

BP180のELISA/CLEIAや蛍光抗体直接法が保険適用→1, 3, 5

  • 1・3. BP180 NC16a領域のELISA/CLEIA:D014 自己抗体検査-33(270点)
  • 2. BP230に対する自己抗体は水疱性類天疱瘡の原因となるが、ELISA法は保険未収載
  • 4. BP180免疫ブロット法:天疱瘡や類天疱瘡の標的抗原同定に有用だが、実施できる施設は限られている。保険適用もない
  • 5. 4種類以上の蛍光抗体直接法:N002免疫染色(免疫抗体法) 病理組織標本作製-8(400点)。4種類は通常、IgG, IgA, IgM, C3で行う

関連問題

選択問題44:解答 3, 4

結節性筋膜炎に関する問題

圧痛を伴い、自然治癒傾向がある→3, 4

結節性筋膜炎

1〜2週間で急速に増大する2cm程度の皮下結節をきたし、圧痛を伴う

  • 30代に好発
  • 部位は前腕が多い(外傷などが誘因となる)
  • 組織:線維芽細胞様の紡錘形細胞が増生し、間質のムチン沈着を伴う(tissue-culture appearance)
  • 経過:自然治癒傾向あり

外傷などが誘因となることから従来は反応性増殖性病変と考えられていたが、USP6-MYH9融合遺伝子が検出されることから近年は自然消退傾向を示す間葉系腫瘍と考えられている

  • 1. 好発年齢は30代のため、高齢者に多いことはない
  • 2. 上肢とくに前腕が好発部位
  • 3. 自然治癒傾向がある
  • 4. 通常圧痛を伴う
  • 5. 組織学的には紡錘形細胞の増殖が見られる
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p435
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p527

関連問題

選択問題45:解答 2

サルコイドーシスの特徴を問う問題

  • 1. 性別:女性の方が男性よりやや多い
  • 2. 年齢層:従来20代と50代の二峰性ピークがあるとされてきたが、近年は高齢者に増加し1峰性に変化してきている
  • 3. 初発自覚症状:視力障害が最多(28.8%)で、呼吸器症状(咳嗽・息切れ)>皮膚症状と続く
  • 4. 病型:結節型が最も頻度が高く、結節型>局面型>皮下型・びまん浸潤型
  • 5. 病理所見:サルコイドーシス患者96名のうち、asteroid bodyは約45%にみられたがSchauman小体はみられなかったという報告がある

選択肢3 初発自覚症状は疫学調査(2004年が最新)では呼吸器症状>皮膚症状となっているが、日本皮膚科学会雑誌では皮膚症状が多いと記載されているので作問者の想定解答は2と思われる

関連問題

選択問題46:解答 2

辺縁隆起した紅斑で、組織学的に柵状肉芽腫がみられコロイド鉄染色で染まるムチン沈着を認める

肉芽腫性病変をきたし得るサルコイドーシスは血清ACE値正常や胸部X線所見を認めないことから否定的

よって環状肉芽腫の診断で、汎発例では糖尿病が合併する→2

ムチン(ムコ多糖)の特殊染色

  • 青色:トルイジンブルー染色, アルシアンブルー染色, コロイド鉄染色
  • 赤色:ムチカルミン染色
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p348(2)/397(1)/344(3)/331(4)/320(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p515(2)/585(1)/509(3)/476(4)/452(5)

関連問題

選択問題47:解答 1

乳児の躯幹に小丘疹が多発しており、組織学的に真皮上層でのランゲルハンス細胞の増殖を認める

ランゲルハンス細胞組織球症の像で、免疫染色ではCD1a陽性となる→1

Langerhans細胞組織球症

Langerhans細胞が皮膚や骨など全身臓器で腫瘍性増殖をきたす疾患

湿疹に類似した紅色局面や丘疹・痂皮を生じる

Langerhans細胞は下記免疫染色で陽性となる

とくにCD207はLangerhans細胞特異性が高い

治療:皮膚単発の場合はまずステロイド外用や切除を行うが、多臓器に病変がある場合は化学療法

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p50・480(1)/478(3)/475(4)/476(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p48・696(1)/721(3)/711(4)/718(5)

関連問題

選択問題48:解答 2, 4

不完全脱色素斑をきたす疾患を問う問題

老人性白斑および脱色素性母斑がある→2, 4

完全脱色素斑/不完全脱色素斑

白斑は不完全か完全かで分類される。まだらに薄くなるものが不完全、全体に白くなるものが完全

不完全脱色素斑
  • 老人性白斑
  • 脱色素性母斑*
  • 梅毒性白斑
  • 癜風
  • 炎症後の脱色素斑
完全脱色素斑
  • 尋常性白斑
  • Vogt-小柳-原田病
  • Sutton母斑
  • 化学物質による脱色素斑(ex. ロドデノール)

*これのみ先天性白斑

病態的にメラノサイトやメラニンに対する自己免疫が生じるものは完全脱色素斑をきたしやすい

関連問題

選択問題49:解答 1, 3

肝斑に関する問題

両側性で、基底層のメラニン増加がみられる→1, 3

肝斑(しみ)

30歳以降の女性で、頬部を中心に対称性に生じる境界明瞭な色素斑

紫外線や外的刺激による炎症、ホルモンが関与し、妊娠を契機に発症することもある

組織:基底層でのメラニン顆粒増加

主な治療法は下記

  • 外的刺激(こすりすぎ)を避け、遮光
  • 内服:ビタミンC、トラネキサム酸
  • 外用:ハイドロキノン、トレチノイン軟膏
肝斑 レーザー治療

肝斑に対し、高フルエンスのQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーは強い炎症を引き起こし肝斑が悪化するため施行しない

低フルエンスのQスイッチNd:YAGレーザーや光治療(IPL:intense pulsed light)は施行されることがある
(推奨度2:条件によっては、行うことを弱く提案する)

  • 1. 分布:通常両側性。片側性の場合は太田母斑を考える
  • 2. 好発:30歳以降の女性に好発する(妊娠との関連が考えられている)。閉経期になると改善することが一般的
  • 3. 組織:基底層でのメラニン増加がみられる↔太田母斑は真皮上層〜中層のメラニン増加で青く見える
  • 4. Qスイッチルビーレーザーは肝斑を悪化させるため施行しない
  • 5. 肝斑は通常境界明瞭↔太田母斑は境界不明瞭(両者の鑑別がよく問題となる)
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p309
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p531
  • レーザー治療の参考:美容医療診療指針(日本皮膚科学会も共同編集) CQ1-1-2

関連問題

あたらしい皮膚科学 3版ではレーザー療法は色素の増強を生じるため禁忌と記載されているが、上述の通り種類によってはレーザー療法も行われるため禁忌は言い過ぎと思われる(皮膚科学 11版ではレーザー照射も治療欄に記載されている)

選択問題50:解答 4, 5

色素異常症の原因遺伝子を問う問題

  • 1. まだら症KIT遺伝子変異により、メラノサイトの遊走障害が生じる(常染色体優性遺伝)。white forelockと呼ばれる前額部の脱毛〜白毛が特徴。MITF遺伝子はWaardenburg-Klein症候群*の原因
  • 2. 眼皮膚白皮症(OCA)3型:メラニン産生の最終段階に関わるTYRP-1遺伝子変異が原因で、日本人の報告はほとんどないOCA
  • 3. 眼皮膚白皮症(OCA)4型:メラノソーム膜表面の輸送蛋白をコードするMATP遺伝子変異が原因となり、現在日本人最多のOCA
  • 4. Chédiak-Higashi 症候群LYST遺伝子変異が原因で、OCAに好中球機能低下や神経症状を伴う
  • 5. 遺伝性対側性色素異常症(遠山):ADAR1遺伝子変異が原因(常染色体優性遺伝)で、四肢末端に色素沈着と色素脱失が混在する

*Waardenburg-Klein症候群:white forelockを呈するが、虹彩異色症や先天性難聴を伴う

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p306(1)/304(2・3・4)/311(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p542(1)/541(2・3・4)/534(5)

関連問題

選択問題51〜75は下記

平成30年度(2018年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題51〜75

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