日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成28(2016)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
選択問題51〜75は下記
-
平成28(2016)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題51〜75
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見出し
- 1 平成28年度(2016年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 76〜89 記述
- 1.1 選択問題76:解答 1, 2, 4
- 1.2 選択問題77:解答 5
- 1.3 選択問題78:解答 4, 5
- 1.4 選択問題79:解答 2, 5
- 1.5 選択問題80:解答 1
- 1.6 選択問題81:解答 1
- 1.7 選択問題82:解答 5
- 1.8 選択問題83:解答 1
- 1.9 選択問題84:解答 2
- 1.10 選択問題85:解答 2
- 1.11 選択問題86:解答 4, 5
- 1.12 選択問題87:解答 1, 2, 4
- 1.13 選択問題88:解答 1, 3, 5
- 1.14 選択問題89:解答 3, 5
- 1.15 記述問題1:解答 黒化
- 1.16 記述問題2:解答 thymus
- 1.17 記述問題3:解答 psoriasis area and severity index
- 1.18 記述問題4:解答 プロアクティブ療法
- 1.19 記述問題5:解答 HPV-16
- 1.20 記述問題6:解答 ankle brachial pressure index 足関節上腕血圧比
- 1.21 記述問題7:解答 モザイク
- 1.22 記述問題8:解答 インスリンボール
- 1.23 記述問題9:解答 CTLA-4
- 1.24 記述問題10:解答 over the counter
- 1.25 記述問題11:解答 bilobed flap
平成28年度(2016年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 76〜89 記述
選択問題76:解答 1, 2, 4
クロタミトン含有外用薬の商品名を問う問題
クロタミトンはオイラックス®の主成分で、その他ボアラ®クリーム、マイザー®クリームにも添加物として含まれる→1, 2, 4
クロタミトンはステロイド外用薬の場合添加物(有効成分ではない)のため、ジェネリックではクロタミトンを含まないものも存在する
(ジェネリックは有効成分は先発品と同等だが、添加物に関しては同一でなくても可能なため)
なおオーソライズドジェネリックは添加物も同一となっている
- 参考:各種添付文書
- ジェネリックの参考:オーソライズド・ジェネリックの拡大-後発薬市場の活性化は進むか? |ニッセイ基礎研究所
選択問題77:解答 5
分子標的薬と皮膚科領域での保険適用疾患を問う問題
モガムリズマブ(ポテリジオ®)は成人T細胞白血病/リンパ腫に保険適用がある→5
- 1. イピリムマブ(ヤーボイ®):抗CTLA-4抗体, 悪性黒色腫等に保険適用。有棘細胞癌(squamous cell carcinoma)ではセツキシマブや抗PD-1抗体(セミプリマブ)の有効性が報告されているが、保険適用はない
- 2. セツキシマブ(アービタックス®):抗EGFR抗体, 結腸・直腸癌(RAS遺伝子野生型)や頭頸部癌に保険適用。ざ瘡様皮疹をきたしやすく、マダニ咬症によるα-Galアレルギーと関連する
- 3. ベムラフェニブ(ゼルボラフ®):BRAF阻害薬, BRAF変異を有する悪性黒色腫等に保険適用。QT延長や皮膚癌の副作用がある。隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans)はイマチニブの有効性が報告されているが、保険適用はない
- 4. ベバシズマブ(アバスチン®):抗VEGF抗体, 非小細胞肺癌等に保険適用。血管肉腫(angiosarcoma)に対してマルチキナーゼ阻害薬であるパゾパニブ(ヴォトリエント®)やエリブリン(ハラヴェン®)、トラベクテジン(ヨンデリス®)が保険適用
- 5. モガムリズマブ(ポテリジオ®):抗CCR4抗体, CCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫や再発難治性皮膚T細胞リンパ腫に対して保険適用
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p101(1・5)/486(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p121(1・3・5)
- 選択肢1の参考:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 有棘細胞癌診療ガイドライン 2020 日皮会誌:130(12), 2501-2533, 2020
- 選択肢3の参考:薬物療法 | 希少がんセンター
- 選択肢4の参考:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版 皮膚血管肉腫診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(2), 245-277, 2021
関連問題
選択問題78:解答 4, 5
皮膚の構造や発生に関する問題
- 1. 透明層は掌蹠のみに見られ、角層直下(角層と顆粒層の間)に存在する
- 2. 皮膚の形成は胎生3〜8週から始まり、6ヶ月目にほぼ完成する
- 3. 表皮脂質(角質細胞間脂質)は50%がセラミド、30%がコレステロールから構成される。皮脂も皮膚保湿に重要
- 4. Birbeck顆粒はランゲルハンス細胞の細胞質に存在するラケット状構造物→○
- 5. マイスネル小体は無毛部の触圧覚をつかさどる機械受容体→○
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p5(1)/9(3)/34(4)/19(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p4(1・2)/13(3)/78(4)/
関連問題
- 2021 選択97 (神経終末器官と受容感覚)
- 2014 選択4 / 2011 選択9 (角層細胞間脂質の構成成分)
- 2012 選択71 (Langerhans細胞のマーカー)
選択問題79:解答 2, 5
T細胞活性化の抑制に関与するのはPD-1およびCTLA-4→2, 5
悪性腫瘍ではこれらの分子が活性化し腫瘍免疫から逃避するため、同分子の阻害薬(→腫瘍免疫を賦活化)が治療として用いられる
これが免疫チェックポイント阻害薬で、具体的には下記
- 抗PD-1抗体:ニボルマブ(オプジーボ®), ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)
- 抗CTLA-4抗体:イピリムマブ(ヤーボイ®)
- 1. ALK:受容体チロシンキナーゼの一つで、同部位のキメラタンパクが肺腺癌でみられる。ザーコリ®などのALK阻害薬が存在
- 2. PD-1:T細胞が反応する”効果相”で作用する
- 3. TLR4:グラム陰性菌の細菌表面に存在するリポ多糖(LPS)を認識し、自然免疫を活性化させる
- 4. CCR4:正常では制御性T細胞に発現しており、一部の血液腫瘍で高発現している。成人T細胞白血病/リンパ腫等で使われるモガムリズマブは同部位を阻害し、抗体依存性細胞障害(ADCC)により抗腫瘍効果を発揮する
- 5. CTLA-4:抗原提示細胞による”誘導相”で作用する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p103(2・5)/29(3)/101(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p121(2・4・5)/72(3)
- 選択肢5の参考:ポテリジオ インタビューフォーム
関連問題
- 2020 記述19 / 2016 記述9 (イピリムマブのターゲット分子)
- 2019 選択18 (T細胞の機能抑制/疲弊化に関与する分子)
選択問題80:解答 1
イミキモド(ベセルナ®)の作用機序を問う問題
自然免疫に関与するTLR(toll like receptor)7を活性化させ免疫を賦活化させる→1
-
イミキモド(ベセルナ®)クリーム まとめ
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- 1. TLR7:同部位の活性化から、IFN-αなどの炎症性サイトカインが惹起される
- 2. TNFα:炎症性サイトカインの一つで、乾癬や壊疽性膿皮症の治療ターゲット
- 3. NF-κB:TLRの刺激やIL-1によって活性化される転写因子。ステロイドはNF-κBを阻害し抗炎症作用を発揮する
- 4. MyD88:リガンドを認識したTLRが結合する分子であり、NF-κBを介した炎症性サイトカイン産生に重要
- 5. IL-12/23p40:乾癬およびクローン病に関与し、ウステキヌマブ(ステラーラ®)のターゲット部位
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p95(1)/101(2・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p627(1)/122(2・5)
- 選択肢4の参考:Toll-like receptorによる生体防御機構 日本内科学会雑誌 94巻 2号 p355-361
関連:イミキモドは頻出, 関連問題は上記カード内の記事参照
選択問題81:解答 1
若年女性で四肢で白色斑が多発している
静脈圧の上昇に対する皮膚毛細血管の反応の違いが原因となるのはBier斑→1
Bier斑 (Bier's spot)
後天性で成人の四肢に好発する、自覚症状を伴わない不整形の白色斑
静脈圧上昇に対する、局所皮膚での毛細血管緊張度の差が原因とされる
→患肢挙上で消失、駆血帯によるうっ血で増悪する
- 冬季に増悪
- 手掌多汗を認める
- 妊娠など静脈圧の異常を伴う
などの特徴も報告されている
※神経線維腫症1型でみられる貧血母斑の亜型という考えもあるが、貧血母斑は生後まもなく現れ生涯持続する点が異なる
- 1. Bier:Bier斑は白色斑をきたし、機序から体位で変化するのが特徴
- 2. Vogt:Vogt-小柳-原田病では髄膜炎・ぶどう膜炎後の回復期に白斑(完全脱色素斑)をきたす
- 3. Sutton母斑:メラノサイトへの自己免疫反応から、色素性母斑の周囲に生じる脱色素斑
- 5. Albright:McCune-Albright症候群はGNAS1遺伝子変異による母斑症で、カフェオレ斑や思春期早発症をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p307(2・3)/389(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p538(2)/537(3)/574(5)
- 参考:Bier's spotの2例 臨床皮膚科 62巻1号 p42-44
- 写真引用:Bier spots CMAJ. 2013 Apr 16;185(7):E304.
関連問題
選択問題82:解答 5
梅毒検査に関する問題
梅毒治療後もSTS抗体陽性が持続することがある(serofast reaction)→5
梅毒検査に関して、詳しくは下記参照
-
梅毒 血清学的検査法の比較 STS法 TPHA法(TPLA法)
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- 1. 感染後STSが陽性となるまでの期間(window period)はおおむね4〜6週間程度。2週間は短すぎる
- 2. 従前のTp抗原法は陽性化するのが遅かったが、ラテックス凝集反応を利用したTPLAはSTSより早く陽性化する例が報告されている※
- 3. Tp抗体価はSTS抗体価と比較して、治療効果を反映しないので治癒判定には用いない
- 4. STS抗体価が自動化法では1/2、2倍系列希釈法*では1/4に低減していれば治癒と判定する。検出感度以下を目指す必要はない
- 5. とくに梅毒に繰り返し罹患している場合や罹患期間が長期の場合、HIV感染併発の場合などはSTS抗体陽性期間が持続しやすい(serofast reaction)
*2の倍数(64倍、128倍、256倍…)で結果が示される
※教科書ではTPLA法の記載がなく、従前のTp抗原法を指して「TPHA法はSTSより陽転化が遅い」と記載されているので注意
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p559(1)/560(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p962(1・4)
- 選択肢2・3の参考:性感染症 診断・治療 ガイドライン2016 日本性感染症学会のp47(2)/49(3)
- 選択肢4の参考:梅毒診療ガイド 日本性感染症学会のp10
- 選択肢5の参考:国立感染症研究所 梅毒検査法と解釈の注意点
選択肢2について。出題された2016年当時、TPLAがどこまで普及していたのかはっきりしない(従前のTp抗原法についての記載ならこれは正解選択肢となる)。ただ2016年策定の上記ガイドラインで、TPLAは(中略)時にRPRよりも早く陽性になることがある
という一文が2011年ガイドラインから追記されていること、また選択肢5が明らかに正しいことから相対的に誤り選択肢であると考えた
関連問題
- 2022 選択88 / 2021 選択43 / 2020 選択95 (STS法とTP法の陽転順)
- 2018 選択37(STS法陽性、TP抗原法陰性梅毒の解釈)
- 2017 記述2(TPLA法)
- 2015 選択28(梅毒治療効果判定に用いる検査:RPR法)
選択問題83:解答 1
若年女性の下腿で浸潤を触れる紅斑が多発している
図26では脂肪織の小葉間隔壁に炎症細胞浸潤がみられ、結節性紅斑の診断→1
脂肪織炎は大きく2種類に分けられる
脂肪織炎 | 組織 | 疾患 |
隔壁性脂肪織炎 | 脂肪組織の隔壁を中心に炎症 | 結節性紅斑 |
小葉性脂肪織炎 | 脂肪細胞を中心に炎症 | (Bazin)硬結性紅斑 |
Weber-Christian病 |
- 1. 結節性紅斑:脂肪織炎、とくに脂肪小葉間での炎症所見が強くみられる
- 2. 硬結性紅斑:脂肪小葉を中心とする炎症がみられ、結核による場合は結核性肉芽腫を伴う。血管炎所見も伴う
- 3. 皮下型環状肉芽腫:環状肉芽腫では中央に変性した膠原線維が存在し、周囲をリンパ球や組織球が取り囲む柵状肉芽種の形態をとる。皮下型は真皮中心の病変で、小児に多い
- 4. 皮下型サルコイドーシス:非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が特徴。asteroid bodyやシャウマン小体も見られることがある
- 5. 皮膚型結節性多発動脈炎:臓器病変を認めない、皮膚限局の結節性多発動脈炎。フィブリノイド壊死を伴う小動脈炎がみられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p48/354(1)/355(2)/348(3)/346(4)/169(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p69/190(1)/868(2)/515(3)/
選択問題84:解答 2
Tzanckテストに必要な染色を問う問題
ギムザ染色が行われる→2
- 1. グラム染色:細菌の形態判断に利用される
- 2. ギムザ染色:Tzanckテストはヘルペスウイルス感染による巨細胞を観察する
- 3・4. ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色:組織診断で用いられヘマトキシリンは核を青色に、エオジンは細胞質を赤色に染色する
- 5. トルイジンブルー:ムコ多糖を青色に染め、肥満細胞は赤紫色に染色される(異染性)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p40/87(2)/39(3・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p47/111(1・2)
選択問題85:解答 2
疫学研究の手法を問う問題
集団を要因の有無で2群に分け、追跡し要因と疾病発生の関連を調べるのがコホート研究→2
- 1. 横断研究:ある集団で疾病の有無と要因の有無を調査し、関連を調べる手法。1ポイントだけの検討である点がコホート研究と異なる
- 2. コホート研究:曝露群と非曝露群に分け、前向きに疾病発症を比較する手法(ex. 喫煙者/非喫煙者に分けて肺がん発症率を調べる)。前向き研究のためバイアスが入りづらいが、一定以上の有病率を有する疾病である必要がある
- 3. 症例対照研究:症例と対照(コントロール)を設定し、それぞれについて後ろ向きに要因の有無を検討する手法。バイアスが入りやすいためコホート研究よりもエビデンスレベルは下がるが、稀な疾患などコホート研究では十分な患者数を拾い上げられない場合に向く
- 4. メタアナリシス:複数の研究結果を系統的に集め統合解析する手法で、エビデンスレベルが最も高いとされる※
- 5. ランダム化比較試験:どの患者にどの治療を行うか、ランダムに振り分ける介入研究の一つ (ex. 新薬の治療効果を既存薬と比較する)。単一の試験では最もエビデンスレベルが高い
※よく並列で記載されるシステマティック・レビューは網羅的に情報解析を行う手法であり、必ずしもメタアナリシスとイコールではない
研究デザインとエビデンスレベル(質の高いもの順)
Ⅰ | システマティック・レビュー/メタアナリシス |
Ⅱ | 1つ以上のランダム化比較試験 |
Ⅲ | 非ランダム化比較試験 |
Ⅳ | 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究) |
Ⅴ | 記述研究(症例報告やケース・シリーズ) |
Ⅵ | 専門委員会や専門家個人の意見 |
- 研究手法の参考:分析疫学 | 疫学用語の基礎知識
- エビデンスレベルの参考:がん診療ガイドライン│皮膚悪性腫│診療ガイドライン(第2 版)作成にあたって
関連:2020 記述20 / 2018 記述8 (メタアナリシスについて)
選択問題86:解答 4, 5
医療事故調査制度に関する出題
医療に起因する死亡/死産を調査し、再発を防止する目的で制定された
- 1. 施行はH27(2015)/10/1、なお成立はH26/6/18(医療法改正)
- 2. 病院・診療所・助産所が対象で、特定の大病院というわけではない
- 3. 医療事故は”医療従事者が提供した医療に起因しまたは起因すると疑われる死亡又は死産”であり、火災や自殺は含まれない
- 4. 本制度の対象は上記3のうち、"管理者が死亡又は死産を予期しなかったもの"に限られる→○
- 5. 医療機関の管理者が判断し、報告義務がある。遺族の同意は不要→◯
制度主旨は再発防止・医療安全向上にあり、仮に遺族から反対されても管理者には報告が義務付けられている
(遺族が同意しなかったことにより医療事故が検証されず、同様の事例が起きることは制度趣旨に反する)
選択問題87:解答 1, 2, 4
学校感染症とプール利用の可否について問う問題
プール使用禁止なのは角化型疥癬・伝染性膿痂疹・流行性角結膜炎→1, 2, 4
学校感染症の出席停止期間・プール可否については下記参照
-
感染症の出席停止期間 学校保健安全法 【プールの可否】
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なお出席は学校保健安全法の規定だが、プールは学会見解であり法的規制はない
- 1. 角化型疥癬:プールはおろか、外出そのものを控える必要がある。通常型疥癬なら治療開始後はプール利用可能
- 2. 伝染性膿痂疹:タオル・ビート板の共有を含めプール使用は禁止
- 3. 伝染性軟属腫:プールはOKだが、ビート板などを介した感染があるため共有禁止
- 4. 流行性角結膜炎:第3種学校感染症のため、感染の恐れがある間は(プールはもちろん)出席停止
- 5. アタマジラミ:治療開始後であればプール利用は問題ないが、タオルやヘアブラシの共有することは控える
選択問題88:解答 1, 3, 5
医療費助成対象の指定難病を問う問題
- 1. 類天疱瘡:後天性表皮水疱症を含めて指定難病
- 2. 掌蹠膿疱症:対象外
- 3. 先天性魚鱗癬:ケラチン症性魚鱗癬(表皮融解性/表在性表皮融解性), 道化師様, 魚鱗癬症候群(ex. Netherton症候群)など
- 4. 乾癬:乾癬では膿疱性乾癬(汎発型)のみが指定難病
- 5. 家族性良性慢性天疱瘡(Hailey-Hailey病):指定難病, なお類縁疾患のDarier病は指定難病ではない
その他、弾性線維性仮性黄色腫・後天性特発性全身性無汗症・結節性硬化症・肥厚性皮膚骨膜症・サルコイドーシス・SLE・全身性強皮症・Marfan症候群などが含まれる
関連問題(指定難病)
- 2022 選択78 (IgA腎症, ポルフィリン症, サルコイドーシス, 中條・西村症候群)
- 2022 選択5 (道化師様魚鱗癬と指定難病)
- 2021 選択71 (Darier病/Hailey-Hailey病と指定難病)
- 2018 選択91 (指定難病:Hailey-Hailey病, 結節性硬化症)
- 2016 選択56 (弾性線維性仮性黄色腫)
選択問題89:解答 3, 5
BRAF阻害薬ベムラフェニブ(ゼルボラフ®)の重大な副作用に皮膚癌がある
具体的には有棘細胞癌やケラトアカントーマ→3, 5
その他、QT延長の副作用(2.0%)もある
- 1. Bowen病:重大な副作用の一つだが、0.6%と相対的に頻度は低い
- 2・4. 尋常性疣贅・脂漏性角化症:いずれも重大な副作用ではない
- 3. 有棘細胞癌:18.7%
- 5. ケラトアカントーマ:10.6%
なおBRAF阻害薬はMEK阻害薬との併用で奏効率が向上する一方、皮膚癌の発症率は低下する
ベムラフェニブは国内で初めて承認されたBRAF阻害薬であったが、併用療法が行えない(ベムラフェニブと対になるMEK阻害薬cobimetinibが国内で保険承認されていない)ため現在ほぼ使用されていない
以前は,BRAF阻害薬であるベムラフェニブ(vemurafenib)が単剤で使用された時代もあったが,BRAF 阻害薬単剤療法と比較してBRAF阻害薬+MEK阻害薬併用療法の優越性が証明されているため,単剤での使用は特殊な事情がない限り推奨されない
BRAF/MEK阻害薬については下記も参照
-
BRAF阻害薬とMEK阻害薬 【悪性黒色腫】
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- 参考:ゼルボラフ 添付文書
記述問題1:解答 黒化
サンスクリーンに関する出題
PAは即時型黒化の程度を判定する
サンスクリーン SPF PA
紫外線は波長の長い方からUVA・UVB・UVCだが、地上に届くUVAとUVBを防御するのがサンスクリーンの役割
防御能の高さはそれぞれ、PAとSPFで示される
紫外線 | UVA | UVB |
防御指数 | PA | SPF |
段階 | +〜++++ | 1〜50+ |
評価方法 | 即時型黒化の程度(MPPD) | MEDの変化 |
※PA:protection grade of UVA, SPF:sun protection factor
即時型黒化:UVAの影響でもともと持っているメラニンが黒くなる反応で、照射直後に生じる
関連問題
- 2019 選択10 (光線テストで健常者にみられる反応)
- 2013 選択6 (即時型黒化をもたらす紫外線波長)
- 2012 選択4 (即時黒化の臨床問題)
- 2011 選択72 (SPF/PAの定義)
記述問題2:解答 thymus
Th2ケモカインであるTARCのフルスペル(の一部)を問う問題
TARC (Thymus and activation-regulated chemokine)
TARCはTh2細胞特異的に発現しているケモカイン受容体CCR4のリガンドで、Th2細胞遊走に関わる
アレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎や気管支喘息で高値となり、アトピー性皮膚炎では短期の病勢を反映するマーカーとして使われる(好酸球やLDHより鋭敏)
※T細胞が活性化するリンパ腫やDIHS(薬剤性過敏症症候群)でも高値となる
基準値
成人と小児で基準値が異なり、小児は高値のため注意が必要
年齢 | 基準値 (pg/mL) |
成人 | <450 |
2〜15歳 | <743 |
1歳〜2歳未満 | <998 |
6〜12ヶ月未満 | <1,367 |
なお小児も含めて基準値が単一でアトピー性皮膚炎の病勢を反映するマーカーにSCCA2がある(2021/2〜15才以下で保険適用)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p122
- 参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021のp2711
関連問題
記述問題3:解答 psoriasis area and severity index
乾癬の重症度スコアであるPASIのフルスペルを問う問題
PASI (psoriasis area and severity index)
乾癬の重症度を判定するスコア
全身を頭部・体幹・上肢・下肢の4箇所にわけ、皮膚所見(紅斑・浸潤・落屑)の程度に応じて0〜4点でスコア化したものに病変面積をかけて算出する
- スコア:0点(皮疹なし)〜72点満点まで
- PASI >10であれば重症例で全身療法の導入を検討すべきとされる(the rule of 10s)
- PASIスコアが75%/90%改善をPASI75/90とそれぞれ表現し、生物学的製剤の効果判定等に用いられる
※アトピー性皮膚炎の病勢スコアとして用いられるEASI(eczema area and severity index)スコアは皮膚所見が紅斑・浮腫/丘疹・掻爬痕・苔癬化の4項目となっている。0〜3点までなので、合計点としてはPASIと同様72点満点となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p284-285
関連問題
- 2023 選択11 (EASIスコアの満点)
- 2014 選択12 (the rule of 10sの指標)
- 2013 選択15 (PASI計算問題)
記述問題4:解答 プロアクティブ療法
アトピー性皮膚炎で行われる、炎症軽快後も間歇的塗布を続ける治療法の名称を問う問題
急性期の炎症軽快後も間歇的な塗布を行う(プロアクティブ療法)ことで、再燃を抑制可能とされる
プロアクティブ療法
再燃を繰り返す皮疹に対して、急性期治療で寛解導入後、保湿剤によるスキンケアに加えてステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を間欠的(週2回など)塗布する
→寛解維持・再燃回数を減らす方法として有効(推奨度1, エビデンスレベルA)
対義語はリアクティブ療法:炎症再燃時に抗炎症外用薬を使って炎症をコントロールする方法
急性期炎症が軽快して一見正常に見える皮膚でも炎症細胞が残存している
すぐに外用をやめるリアクティブ療法ではこれらの細胞が原因となって再燃を起こしやすいが、この期間も外用を行うプロアクティブ療法ではこの再燃を予防できることが多い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p123
- 参考・図引用:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021のp2722/図29
関連:2018 選択21 (アトピー性皮膚炎ガイドラインで推奨度の高い治療)
記述問題5:解答 HPV-16
陰茎部で尖圭コンジローマ類似の褐色丘疹がみられ、組織学的にBowen病類似の異常角化細胞や核分裂像がみられる
Bowen様丘疹症の診断。HPV-16が原因となる
HPV-16は爪部Bowen病や子宮頚癌の原因としても重要
Bowen様丘疹症
若年者の外陰部に好発し臨床像は尖圭コンジローマ、組織学的にはBowen病の形態(表皮肥厚や異型細胞)をとる
HPV-16が原因となり、尖圭コンジローマの亜型と考えられている
悪性化は稀で自然消退する場合もあり、予後良好
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p497
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p808
- 臨床写真引用:Dermatology Atlas papulose bowenoide - Pictures
- 病理写真引用:Dermoscopic findings in bowenoid papulosis: report of two cases Dermatol Pract Concept. 2014 Oct 31;4(4):61-3.
関連問題
記述問題6:解答 ankle brachial pressure index 足関節上腕血圧比
血流評価に用いられるABIのフルスペルを問う問題
ABI(ankle brachial pressure index)
ankle(足首)とbrachial(上腕)の血圧を測定し、足首血圧/上腕血圧で評価する
ABI < 0.9では閉塞性動脈硬化症など動脈狭窄(下肢虚血)を疑う
※健常人は下肢のほうが血圧が高いため0.9〜1.3となる
類似検査にSPP(skin perfusion pressure)がある
SPP
目的部位にレーザードプラーセンサーとカフを装着し、皮膚表面から約1mmの深さの灌流圧(perfision pressure)を測定する。
下肢虚血の診断だけでなく虚血性潰瘍の治癒予測にも有用で、SPP<30~40mmHgでは創傷治癒の可能性は低いとされる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p185
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p250
関連問題
記述問題7:解答 モザイク
色素失調症を代表とする、Blaschko線に沿った発祥形式をきたす病態の名称を問う問題
体細胞モザイク 復帰変異モザイク
発生過程で1つの細胞に変異が生じ、その細胞から作られた部分全体に変化が出る現象を遺伝的モザイクと呼ぶ
表皮細胞ではこの変異細胞がBlaschko線に沿って成育していくため、Blaschko線に沿って皮疹が見られる
(メラノサイトであればチェッカーボードパターンに分布する)
代表的な疾患・原因遺伝子は下記
疾患 | 原因遺伝子 |
色素失調症 | NEMO |
疣贅状表皮母斑 | KRT1/KRT10 ※病変部は顆粒変性が見られる |
伊藤白斑 | - |
上記と逆のパターンで、すべての体細胞に先天的な異常があるのに出生後の遺伝子変異によって正常に"復帰"する現象が起こる場合がある
これを復帰変異モザイクと呼び、先天性表皮水疱症やichthyosis with confettiで見られる。
表皮水疱症でこの現象が起こった部位は水疱形成をきたさない正常皮膚となるため、同部位を培養・移植する治療(自家培養表皮ジェイス®)が試みられている
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p3/580
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p2
- 参考・図引用:マルホ皮膚科セミナー 片側性やブラシュコ線に沿った分布を示す小児皮膚疾患 〜診断と遺伝子検査のポイント〜
関連:2020 記述13 (復帰変異モザイク), 2019 記述12 (Blaschko線)
記述問題8:解答 インスリンボール
30年来の糖尿病でインスリン注射中
注射部位である臍周囲の両側に皮下硬結がみられ、抗インスリン抗体やDFS染色にて陽性となっている
インスリン反復注射によるアミロイドーシスの一種、インスリンボールの診断
インスリンボール
インスリン注射を同一部位に繰り返すとアミロイドが沈着し、皮下結節を生じる
疼痛が少ないため注射部位として好まれるが、インスリン効果は減弱する(→血糖コントロールが悪化)
- 検査:DFS(Direct fast scarlet)染色*陽性, 抗インスリン抗体陽性
*アミロイドを染色し、皮膚限局性アミロイドーシスではCongo-red染色より染まりやすい
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p318
- 参考:インスリンボール 臨床皮膚科 67巻5号 (2013増刊号) p18-22
記述問題9:解答 CTLA-4
悪性黒色腫に対する分子標的治療薬、イピリムマブ(ヤーボイ®)は抗CTLA-4モノクローナル抗体として抗腫瘍効果を発揮する
CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte associated antigen-4)
T細胞表面で発現し、CD28(免疫活性化)と競合して抗原提示細胞のもつB7(CD80/CD86)と結合する
この結合によって、リンパ節にて抗原提示を受ける"誘導相"の反応を抑制する
正常のヒトでもTregでこの機構が利用されているが、とくに悪性腫瘍ではこの経路により腫瘍免疫抑制が行われている
→イピリムマブはこの結合を解除し、免疫応答を活性化させる
なお同じく免疫チェックポイント阻害薬のターゲットであるPD-1はT細胞反応の最終段階である"効果相"に関与する。腫瘍細胞はPD-L1を発現することで腫瘍特異的T細胞のPD-1と結合し、免疫反応を抑制させる
→抗PD-1抗体であるニボルマブ(オプジーボ®)やペムブロリズマブ(キイトルーダ®)はこの結合を阻害しT細胞を活性化させる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p103
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p703
- 参考・図引用:新・皮膚科セミナリウム 免疫チェックポイント阻害剤の効果と副作用 日皮会誌:128(6), 1291-1299, 2018
関連問題
- 2020 記述19 (★同一問題)
- 2019 選択18 / 2016 選択79 (T細胞の機能抑制に関与する分子)
記述問題10:解答 over the counter
薬局で購入可能な一般医薬品、OTCのフルスペルを問う問題
OTC医薬品
OTC医薬品は、薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方箋なしに購入できるものを指す
↔医療用医薬品は処方箋が必要
OTCはover the counterの略で、カウンター越しに薬を販売することに由来する
記述問題11:解答 bilobed flap
皮弁の名称を問う問題
bilobed flap
欠損部に隣接して二葉の皮弁をデザインし、第一皮弁で欠損部を、第二皮弁で第一皮弁の採取部を再建する方法。第二皮弁の採取部は縫縮する
- 第一皮弁:欠損部とほぼ同じ大きさ
- 第二非弁:第一皮弁よりやや小さめ