皮膚科 皮膚科専門医試験対策

令和4(2022)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90

2023年4月2日

2022-Specialist-3

日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和4(2022)年度解答解説を作成しました

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選択問題31〜60は下記

2022-Specialist-2
令和4(2022)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題31〜60

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見出し

令和4年度(2022年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 61〜90

選択問題61:解答 1

各処置の診療報酬点数を問う問題

ダーモスコピー(72点)が最も低い→1

※308〜313nmのもの=ナローバンドUVB(311±2nm)とエキシマランプ(308nm)のこと

UVB全般は「長波紫外線又は中波紫外線療法(概ね290nm〜315nm)」で150点と点数が低く設定されている

選択問題62:解答 3

組織像を問う問題

境界明瞭な隆起性病変で、類円形細胞の増殖と管腔形成がみられることからエクリン汗孔腫の診断

2016-eccrineporoma-pathology

参考文献 Figure1より引用

ダーモスコピーではGlomerular vessels(糸球体状血管)が特徴→3

2018-eccrineporoma-dermoscopy

参考サイトより引用, 臨床的に足の境界明瞭な紅色結節でダーモスコピーでは血管構造

血管構造が多いため、ダーモスコピーではヘアピン状血管も見られる

  • 1. Pigment network(色素ネットワーク):メラニンの分布密度の差によって褐色の網目模様が形成されるもの。通常メラノサイト病変の所見だが、例外的に皮膚線維腫でも見られる
  • 2. Arborizing vessels(樹枝状血管):分枝状で太さの不均一な腫瘍表面の毛細血管で、基底細胞癌に特徴的な所見
  • 3. Glomerular vessels:塊状に蛇行した毛細血管が腎糸球体のようにみえる所見で、エクリン汗孔腫の他Bowen病でもみられる
  • 4. Brown dots/globules(小点・小球):塊状のメラニン顆粒のこと
  • 5. Multiple milia-like cysts(多発性稗粒腫様嚢腫):褐色病変の中にみられる白色点で、脂漏性角化症※の偽角化嚢腫に対応する

※脂漏性角化症のダーモスコピー所見では面皰様開大(comedo-like openings)も有名

関連問題

「あたらしい皮膚科学」ではGlomerular vesselsをきたす疾患にBowen病しか記載がなくエクリン汗孔腫は難易度が高いのだが、試験では(なぜか)頻出事項となっている

選択問題63:解答 2

色素異常症と特徴的な症状について問う問題

分節型尋常性白斑は神経支配領域に沿った病変をきたすが、単神経炎とは関連しない→2

病変部位に一致した発汗異常がみられることから、自律神経バランスの破綻が一因とされる

*OCA = 眼皮膚白皮症, AD = 常染色体優性(顕性)遺伝形式, AR = 常染色体劣性(潜性)遺伝形式

関連問題

選択問題64:解答 5

ヘミデスモソームの構造を問う問題

基底細胞と基底膜をつなぐ分子は17型コラーゲン(BP180)→5

BP180は透明帯を貫く大きな膜貫通蛋白

2022-Hemidesmosome

参考書籍p6 図1.12より引用

  • 1. ケラチン5:基底細胞に存在するケラチン(トノフィラメント)で、ケラチン14とペアになっている
  • 2. プレクチン:基底細胞に存在し、ケラチンと直接結合する
  • 3. 3型コラーゲン:1・5型コラーゲンとともに真皮に存在する
  • 4. 7型コラーゲン:係留線維に存在し、基底板と真皮コラーゲン(1型・3型など)を結合する
  • 5. 17型コラーゲン:ヘミデスモソームに存在し、基底細胞と基底板を結合する

なお本問の構造に先天的 or 後天的異常が生じると、(主に)水疱症の原因となる

*非遺伝性疾患

詳細は下記

Epidermolysis-Bullosa
先天性表皮水疱症の病型と原因蛋白・遺伝形式まとめ

続きを見る

  • 参考・図引用:あたらしい皮膚科学 第3版 p6/238
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p10/325

関連問題:ヘミデスモソームの各構造とその異常に起因する疾患については頻出。上記リンク先参照

選択問題65:解答 5

下顎部の濃淡差のある不規則な色素斑

ダーモスコピーでは本来白く抜けて見える毛包周囲で不規則な色素沈着、asymmetric pigmented follicular openings(非対称色素性毛包開孔)が見られる→5

これは顔面悪性黒色腫(悪性黒子)で初期からみられる所見

  • 1. pigment network(色素ネットワーク):生毛部のメラノサイト系病変で見られる基本所見で、真皮乳頭突起部はメラノサイト密度が低くなることからこのように見える※
  • 2. parallel ridge pattern(皮丘並行パターン):掌蹠でみられ、(とくに不規則な場合)悪性黒色腫を示唆する所見
  • 3. rhomboidal structures(菱形構造):毛包間で色素沈着がつながって菱形状に見える所見で、こちらも悪性黒子で初期からみられる
  • 4. annular-granular structures(環状顆粒状構造):毛包を囲むような青灰色の色素小点でメラノファージに対応する。自然消退を意味する所見のため、進行した悪性黒色腫のほかLPLK*でも見られる
  • 5. asymmetric pigmented follicular openings:毛包上皮内で増殖するメラノーマ細胞に対応した所見

*LPLK = 扁平苔癬様角化症, 脂漏性角化症に苔癬型炎症反応が生じ自然消退するもの

※pigment networkは体幹などの所見。顔面では毛包・脂腺が発達しているため、毛孔部が色素沈着を逃れるpseudo networkが基本所見となる

→選択肢1は生毛部(体幹)、選択肢2は掌蹠の所見なので、顔面である本問ではそもそも該当しない

選択問題66:解答 1

プロブコール(シンレスタール®)は高脂血症に伴う黄色腫に保険適用となっている→1

他の薬剤も高脂血症(脂質異常症)に用いられるが、黄色腫に対しての保険適用はない

黄色腫は脂質異常症に伴うものが多い

関連2020 選択60 (TG上昇と関連する黄色腫)

選択問題67:解答 2

好中球性の瘢痕性脱毛症はfolliculitis decalvans(禿髪性毛包炎)→2

1つの毛包から複数の毛が束になって生えるtufted hairが特徴

瘢痕性脱毛症

瘢痕形成の結果、毛包が破壊され不可逆的な脱毛をきたす疾患↔円形脱毛症などは毛根部が保たれるので不可逆脱毛ではない

外傷や熱傷などによる続発性と、原発性(原発性瘢痕性脱毛症:PCA)がある

原発性のものは組織学的に炎症細胞浸潤が見られ、浸潤細胞によって分類される

原発性瘢痕性脱毛症の分類
リンパ球性 慢性皮膚エリテマトーデス
毛孔性扁平苔癬
(lichen planopilaris)
frontal fibrosing alopecia
Graham-Little syndrome
ムチン沈着性脱毛症
(alopecia mucinosa)
central centrifugal cicatricial alopecia
好中球性 禿髪性毛包炎
(folliculitis decalvans)
解離性蜂巣炎
(dissecting cellulitis)
※膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎とも
混合性 erosive pustular dermatosis
  • 1. 毛孔性扁平苔癬(LPP):リンパ球性PCAをきたす代表疾患で、亜型にfrontal fibrosing alopeciaやGraham-Little syndromeがある
  • 2. 禿髪性毛包炎:毛包一致性膿疱をきたし、瘢痕治癒を繰り返す好中球性PCA
  • 3. frontal fibrosing alopecia:LPPの亜型で、閉経後高齢女性の前頭部や側頭部に好発する
  • 4. Graham-Little syndrome:LPPの亜型で、頭部に加えて腋毛や陰毛の非瘢痕性脱毛を生じる
  • 5. central centrifugal cicatricial alopecia:リンパ球性PCAで、中年の黒人女性に好発する

関連問題

選択問題68:解答 2

HIV/AIDSに関する出題

カポジ肉腫はHHV-8の感染が原因→2

  • 1. 急性HIV感染症は感染2〜4週間後のため、スクリーニング検査陰性のwindow periodに該当する※
  • 2. カポジ肉腫はHIVではなく、HHV-8の血管内皮細胞への感染が原因
  • 3. HIVはまずランゲルハンス細胞に感染し、それを足がかりとして生体内へ侵入する
  • 4. 第4世代スクリーニング検査では抗体のみでなく、HIV-1 p24抗原も検出する。このため第3世代(抗体のみ検出)で約3週あったwindow periodが、最短17日まで短縮した※
  • 5. 確認検査ではイムノクロマト(IC)法と核酸増幅法(NAT)の組み合わせで判定する。以前はIC法の代わりにウエスタンブロット(WB)法が推奨されていたが、感度に劣るため2020年版では変更になっている

※このため選択肢1については感染3〜4週後に急性HIV感染症を発症したケースなら"スクリーニング検査が陰性"とは言い切れないはずで、やや微妙な選択肢とも考えられる

「あたらしい皮膚科学 第3版」では発行年(2018)の都合上、確認検査をWB法で行うと記載されているので混合しないよう注意

関連問題

選択問題69:解答 5

コドン139多型がCys/Cysの場合、副作用が重篤化するため服用を回避する→5

アザチオプリン(イムラン®)の副作用、血球減少・脱毛の発症リスクはNUDT15遺伝子多型によって異なる

NUDT遺伝子検査とアザチオプリン(イムラン®)用量

NUDT15 コドン139
遺伝子検査結果
日本人での頻度 通常量で開始した場合の副作用頻度 チオプリン製剤の開始方法
急性高度白血球減少 全脱毛
Arg/Arg 81.1% 稀(<0.1%) 稀(<0.1%) 通常量で開始
Arg/His
Arg/Cys 17.8% 低(<5%) 低(<5%) 減量して開始
Cys/His <0.05% 高(>50%)
Cys/Cys 1.1% 必発 必発 服用を回避

保険適用のある疾患は下記の通り

  • 全身性血管炎:顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、結節性多発動脈炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、高安動脈炎
  • 膠原病:全身性エリテマトーデス(SLE)・多発性筋炎・皮膚筋炎・強皮症・混合性結合組織病
  • その他:炎症性腸疾患、急性リンパ性白血病、自己免疫性肝炎

※上記以外の疾患(天疱瘡等)に対して投与する場合、NUDT15遺伝子多型検査は保険適用外となる

関連問題

  • 2021 選択84 (NUDT15遺伝子多型に影響を受ける薬剤名)

選択問題70:解答 5

発症者の遺伝学的検査情報は個人情報のため、原則として本人の同意を得ずに第3者へ開示することは不適切

仮に血縁者の健康管理上必要としても血縁者"以外"に開示する必要はないし、医師"単独の判断によって"決定するのも不適切である

ガイドラインでは下記の記載がある

被検者の診断結果が血縁者の健康管理に役立ち, その情報なしには有効な予防や治療に結びつけることができないと考えられる場合には, 血縁者等に開示することも考慮される. その際, 被検者本人の同意を得たのちに血縁者等に開示することが原則である.

例外的に, 被検者の同意が得られ ない状況下であっても血縁者の不利益を防止する観点から血縁者等への結果開示を考慮する場合がありうる. この場合の血縁者等への開示については, 担当する医師の単独の判断ではなく,当該医療機関の倫理委員会に諮るなどの対応が必要である.

(下線は筆者強調)

  • 1. 「検査拒否・中断の申し出・結果の開示拒否を行っても以後の医療に不利益を受けないこと」は被験者の権利に含まれる
  • 2. 十分な説明と支援の後、書面による同意を得ることが推奨される
  • 3. 血縁者に影響を与える可能性(親族の遺伝型や表現型が予測できる, 非発症保因者の診断ができる場合があるなど)を説明する
  • 4. 非発症保因者遺伝学的検査や成年期以降に発症する疾患の発症前遺伝学的検査など、未成年のうちに遺伝学的検査を実施しないことの健康管理上のデメリットがない場合は(原則)、本人が成人し、自律的に判断できるようになるまで実施を延期すべき
  • 5. 発症者の遺伝学的検査情報が血縁者の健康管理に必要であった場合でも、担当医の独断で血縁者等へ開示を行うことは好ましくない

関連問題

  • 2013 選択67 (遺伝カウンセリングにおいて不適切な対応)

選択問題71:解答 2

日光曝露で増悪する疾患を問う問題

長島型掌蹠角化症は日光曝露で増悪しない→2

*AD:常染色体優性(顕性)遺伝, AR:常染色体劣性(潜性)遺伝

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p279(1)/277(2)/408(3)/331(4)/330(5)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p356(1)/354(2)/360(3)/476(4)/475(5)

関連問題

選択問題72:解答 3

尋常性乾癬治療で用いる生物学的製剤の投与量・頻度について問う問題

アダリムマブ(ヒュミラ®)は初回のみ80mg、以降2週間隔で40mg投与が標準で80mg/回まで増量可能

乾癬 生物学的製剤の投与スケジュール

乾癬に対しては現在11種類の生物学的製剤が発売されている(2023年時点)

2014-PSO-Biologics

  • 1. グセルクマブ(トレムフィア®):1回100mgは正解だが、増量はできない
  • 2. リサンキズマブ(スキリージ®):標準投与量が150mg/回であり、状態に応じて75mg/回まで"減量"可能
  • 3. アダリムマブは初回のみ80mg、以降2週に1回40mgが標準で症状によって80mg/回まで増量可能
  • 4. セクキヌマブ(コセンティクス®):標準投与量が300mg/回であり、体重により150mg/回に"減量"可能
  • 5. イキセキズマブ(トルツ®):初回160mgで2週〜12週まで80mg/回 2週間隔、以降は80mg/回 4週間隔が標準。効果不十分な場合は2週間隔 80mg/回にできるが、増量は不可
  • 参考:各種添付文書

関連問題

選択問題73:解答 4

結節性硬化症患者で出生時〜見られる症状を問う問題

(葉状)白斑は結節性硬化症で最も早期から見られ、早期診断に重要→4

  • 1. 爪囲線維腫(Koenen腫瘍):被角線維腫の一つで思春期以降に見られることが多い(成人では90%)
  • 2. 口腔内線維腫:新生児期に認められることは稀
  • 3. 顔面血管線維腫:2〜5歳頃から出現し思春期に増大する。mTOR阻害薬シロリムスゲルが保険適用
  • 4. 低色素斑/白斑:出生時〜乳幼児期に出現し、約半数にみられる
  • 5. シャグリンパッチ(粒起革様皮膚):5歳以上で50%にみられる。結合織母斑(connective tissue nevus)の一つ

選択肢2以外の4つは診断基準の大基準に含まれる(口腔内線維腫は特異度が低いので小基準)

関連問題(結節性硬化症)

選択問題74:解答 2, 5

穿孔性皮膚症の診断にはアザンマロリー染色とエラスチカ・ワンギーソン染色が用いられる→2, 5

穿孔性皮膚症

組織学的に変性した皮膚成分が経表皮的に排泄される疾患を穿孔性皮膚症と呼ぶ

代表例は下記2つで、いずれも基礎疾患を伴うことが多い

排泄される組織 特殊染色 病名 基礎疾患
膠原線維 アザンマロリーエラスチカ・ワンギーソン 反応性穿孔性膠原線維症 糖尿病
腎不全 (特に透析患者)
弾性線維 エラスチカ・ワンギーソン 蛇行性穿孔性弾力線維症 Marfan症候群
Ehlers-Danlos症候群
弾性線維性仮性黄色腫

診断では特殊染色が用いられる

特殊染色 検出対象 染色結果
エラスチカ・ワンギーソン染色 膠原線維
弾性線維
アザン染色 膠原線維
  • 1. ズダンⅢ:脂肪を赤色に染色する
  • 2. アザンマロリー:膠原線維を青色に染色する
  • 3. トルイジンブルー:ムチン(ムコ多糖類)を青色に染色する。肥満細胞好塩基球は顆粒が赤紫色に染まり異染性と呼ばれる
  • 4. フォンタナマッソン染色:メラニンを黒色に染色する
  • 5. エラスチカ・ワンギーソン:膠原線維を赤色に、弾性繊維を黒色に染色する
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p40・343
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p47・504

関連問題

選択問題75:解答 1, 2, 5

ホスラブコナゾール(ネイリン®)の併用注意薬は下記

  • シンバスタチン (リポバス®)
  • ミダゾラム (ドルミカム®)
  • ワルファリン (ワーファリン®)

→1, 2, 5

ホスラブコナゾールは薬物代謝酵素のCYP3Aを中程度阻害するため、同酵素で代謝される薬剤が併用注意薬となっている

  • 2. ワルファリン:作用増強からPT-INR上昇をきたすことがある
  • 3. リファンピシン:CYP3A4を誘導し、ステロイドの効果が減弱することが知られる
  • 4. シクロスポリン:CYP3A4阻害作用を持ち、同酵素で代謝を受ける薬物の作用が増強する。ロスバスタチンなどが併用禁忌となっている
  • 5. シンバスタチン:血中濃度が上昇することがあり、横紋筋融解症の副作用に注意が必要

関連問題

選択問題76:解答 1, 4

Bowen病に関する一般問題

※イミキモド外用は治療12週間後の病変消失率が73%とも報告されている

凍結療法は保険適用かな?と思いますが、はっきりとしたソースは見つからず(J056いぼ等冷凍凝固法には対象疾患が書かれていない)。
ただガイドラインでは保険適用外治療(イミキモド等)について「〜は保険適用を有していないことに注意が必要である。」というような記載がしてある一方、凍結療法の項にはその記載がないことから保険適用と解釈した。

関連問題

選択問題77:解答 2

掌蹠角化症に関する一般問題

長島型掌蹠角化症では掌蹠を越える過角化(transgrediens)がみられる→2

短時間の浸水で皮膚が白く浸軟するのも特徴

  • 1. Cole病は点状掌蹠角化症に"四肢の脱色素斑を伴う"のが特徴。指趾断裂はきたさない
  • 2. 長島型は掌蹠を越える過角化や紅斑がみられ、日本で最も多い掌蹠角化症
  • 3. Meleda病の原因遺伝子はSLURP1SERPINB7は長島型の原因遺伝子で2013年に同定された
  • 4. Vohwinkel症候群は絞扼輪を形成し"指趾の断裂"が特徴。GJB2やロリクリン遺伝子変異が原因。四肢の脱色素斑を伴うのはCole病
  • 5. 組織学的に顆粒変性を伴うものがVörner型、"伴わない"ものがUnna-Thost型となる

Meleda病と長島形掌蹠角化症はともにtransgrediensが特徴で、以前は長島型=Meleda病の軽症型と臨床的に誤診されていた例もあったと推測されている

関連問題

選択問題78:解答 2

指定難病を問う問題

掌蹠角化症は含まれない→2

その他、弾性線維性仮性黄色腫後天性特発性全身性無汗症結節性硬化症肥厚性皮膚骨膜症・サルコイドーシス・SLE・全身性強皮症・Marfan症候群などが含まれる

関連問題(指定難病)

選択問題79:解答 1

皮下結節で弾性線維(エラスチカ・ワンギーソン染色で黒く、HE染色でエオジン好性に染色)が増殖していることから弾性線維腫(Elastofibroma)の診断→1

2022-Elastofibroma

参考文献より引用, HE染色ではエオジン好性の弾性繊維がみられ、Elastica van Gieson染色では黒く染まる

国内報告例の70%が沖縄県で発生(家族内発生が30%)しているとされる

  • 1. 弾性線維腫:95%が肩甲骨部に好発する(→ので遺伝だけでなく機械的刺激も関連すると考えられている)
  • 2. Spindle cell lipoma:脂肪腫の亜型で、組織での紡錘形細胞が特徴。項部や上背部・肩に好発する
  • 3. 弾性線維性仮性黄色腫(PXE):ABCC6遺伝子変異が原因で弾性線維変性をきたす疾患で、コッサ染色で黒く染まるカルシウム沈着が特徴
  • 4. 蛇行性穿孔性弾力線維症:穿孔性皮膚症の一つで、PXE・Marfan症候群・Ehlers-Danlos症候群など弾性線維が変性する疾患に合併する
  • 5. 環状弾性線維融解性巨細胞肉芽腫:日光性弾力線維症(solar elastosis)を貪食する肉芽腫性病変(→顔面に好発)で、環状肉芽腫に類似した柵状肉芽腫の組織像が特徴

選択肢3〜5はそもそも皮下結節(腫瘤)を形成する疾患ではない

関連問題

選択問題80:解答 1, 2 (現在は1のみ)

アトピー性皮膚炎の各種薬剤における対象年齢を問う問題

15歳以上でしか使用できないのはバリシチニブ(オルミエント®)とデュピルマブ(デュピクセント®)→1, 2

JAK阻害薬ではバリシチニブのみ15歳以上、ウパダシチニブとアブロシチニブ(サイバインコ®)は12歳以上となっている

生物学的製剤・JAK阻害薬等の比較は下記参照

230109-atopicdermatitis-biologics-jakinhibitor
アトピー性皮膚炎 サイトカインと生物学的製剤、JAK阻害薬について

続きを見る

  • 1. バリシチニブ(オルミエント®):15歳以上。JAK1/JAK2を阻害し、円形脱毛症にも保険適用がある
  • 2. デュピルマブ(デュピクセント®):出題当時は15歳以上※。IL-4/13の抗体製剤
  • 3. シクロスポリン(ネオーラル®):16歳以上。カルシニューリンを阻害し乾癬にも用いられる(妊婦でも投与可能)
  • 4. ウパダシチニブ(リンヴォック®):12歳以上かつ体重30kg以上が条件
  • 5. 0.5%デルゴシチニブ(コレクチム®):現在は6ヶ月〜使用可能(発売当時は16歳以上)。JAK1〜3およびTYK2全てを阻害する。なお小児で0.5%を使用した場合、症状改善時0.25%製剤への変更を検討する必要がある

デュピルマブは2023/9/25に生後6ヶ月以上の小児に追加承認されたため、現在は正解とならない

  • 参考:各種添付文書

関連問題:アトピー性皮膚炎の生物学的製剤・JAK阻害薬に関する問題は上記リンク先記事参照

選択問題81:解答 1, 2, 3

学校感染症についての問題

水痘・麻疹・風疹は出席停止期間が定められている→1, 2, 3

学校感染症の出席停止期間については下記参照

感染症の出席停止期間 学校保健安全法 【プールの可否】

続きを見る

  • 1. 風疹(rubella):全ての発疹が消失するまで出席停止
  • 2. 麻疹(measles):解熱後3日間出席停止
  • 3. 水痘(varicella):全ての発疹が痂皮化するまで出席停止
  • 4. 突発性発疹(exanthem subitum):出席停止期間の定めはない
  • 5. 伝染性紅斑(erythema infectiosum):発熱・関節痛等がなく、全身状態良好なら出席可能。皮疹出現時には感染力がないため

関連問題:年1題は出題されている。上記リンク先記事参照

選択問題82:解答 2, 3, 5

掌蹠膿疱症に関する一般問題

※2023/5に同じくIL-23p19抗体製剤のリサンキズマブ(スキリージ®)も掌蹠膿疱症に対して保険適用となった

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p264/287(4)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p332/384(4)

関連問題

選択問題83:解答 4

局所多汗症の診断基準を問う問題

原発性局所多汗症では"25歳以下"で症状が出現するのが典型的→4

局所多汗症の診断基準

局所的な過剰発汗が6ヶ月以上持続し、下記6症状のうち2項目以上あてはまる場合

(明らかな原因がないことも必要)

  1. 最初に症状がでるのが25歳以下であること
  2. 対称性に発汗がみられること
  3. 睡眠中は発汗が止まっていること
  4. 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
  5. 家族歴がみられること
  6. それらによって日常生活に支障をきたすこと
  • 1・2・3・5. 家族歴・対称性の発汗・睡眠中は発汗が止まっている・1週間に1回以上の多汗エピソード:いずれも診断基準に含まれる
  • 4. 最初に症状がでる年齢:25歳以下が診断基準に含まれる。18歳以下ではない

関連問題(原発性局所多汗症)

選択問題84:解答 2, 3

BCG接種部位で発赤・痂皮が、体幹では丘疹が多発していることから、BCG接種に伴う副反応である丘疹状結核疹の診断

結核菌に対するアレルギーから血管炎をきたす、結核疹の一つ

  • 1. 結核疹に分類される。真性皮膚結核は皮膚腺病や皮膚疣状結核など
  • 2. 予後良好で通常自然軽快(2ヶ月後に74%で消退)する
  • 3. 腋窩リンパ節腫大はBCG接種後の副反応で最も多く、接種者の0.7%にみられる症状
  • 4. BCG接種後1週間〜10日以内に生じるのはコッホ現象*。丘疹状結核疹は接種後1〜3ヶ月程度で生じる
  • 5. 全身性皮疹は上述の通り自然軽快傾向があり、通常イソニアジドは用いない。一方局所病変(尋常性狼瘡など)では抗結核治療を行う場合がある

*Koch現象:通常4週程度で明瞭になるBCG針痕が接種後7〜10日以内の早期に目立つようになる現象で、結核既感染を示唆する所見

関連問題

選択問題85:解答 1, 5

全層植皮術と分層植皮術の相違点を問う問題

分層植皮術は薄いため生着しやすく、広範囲の病変に向く→1, 5

全層植皮 分層植皮 比較

全層植皮 分層植皮
部位 表皮〜真皮全層
(厚い)
表皮〜真皮中層
(薄い)
生着率 低い 高い
整容面*・機能面 優れる 劣る
採皮部 縫縮する
(→あまり取れない)
そのまま上皮化させる
(→広範囲に採皮可能)
保険点数 高い 低い

*拘縮や色素沈着

分層植皮では採皮した皮膚をメッシュ状にする(網状植皮術)ことで、より広範囲へ植皮することも可能

  • 1. 生着しやすいのは分層
  • 2. 整容面で優れるのは全層
  • 3・4. 術後の触覚や発汗機能回復が早いのは全層(汗腺や神経小体の数が多いため)。例えばパチニ小体は真皮深層から皮下組織にかけて存在し、汗腺分泌部も真皮深層から皮下組織にかけて存在する
  • 5. 広範囲の皮膚欠損を被覆できるのは分層

関連問題

選択問題86:解答 3

腎性全身性線維症はMRI造影剤のガドリニウム(Gd)と関係する→3

腎不全(特に腹膜透析中)がリスクとなり、皮膚症状は全身性強皮症に類似することがある

  • 1. Ba(バリウム):消化管造影検査で用いられる
  • 2. Cd(カドミウム):腎障害の原因となり、公害であるイタイイタイ病の原因として知られる
  • 3. Gd(ガドリニウム):MRI造影剤として用いられる
  • 4. Hg(水銀):接触皮膚炎(水銀皮膚炎)の原因となるが近年は減少
  • 5. I(ヨウ素):甲状腺ホルモンの材料で、CTや血管造影の造影剤に用いられる
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p202(3)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p411(3)

関連問題

選択問題87:解答 3

IL-17やTNF, IL-1はJAK-STAT経路による直接の制御を受けない→3

JAK阻害薬と皮膚科疾患 (アトピー性皮膚炎・関節症性乾癬)

JAK(janus kinase)は細胞内シグナル伝達を担うJAK-STAT経路を構成し、JAK1/2/3とTYK2の4つがある

JAK阻害薬は自己免疫性疾患等で過剰活性化された同経路を抑制し、抗炎症作用や免疫抑制を発揮する

皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎・関節症性乾癬・円形脱毛症で保険適用となっており、阻害部位が異なる複数の薬剤がある

アトピー性皮膚炎のJAK阻害薬 一般名 商品名
JAK1 アブロシチニブ サイバインコ®
ウパダシチニブ リンヴォック®
JAK1/JAK2 バリシチニブ オルミエント®※
JAK1/JAK2/JAK3/TYK2 デルゴシチニブ* コレクチム®*

*外用薬

※バリシチニブのみ円形脱毛症にも保険適用がある

乾癬のJAK阻害薬 一般名 商品名
JAK1 ウパダシチニブ リンヴォック®
TYK2 デュークラバシチニブ ソーティクツ®

ウパダシチニブは関節症性乾癬のみが、デュークラバシチニブは尋常性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症が保険適用疾患

  • 1. IL-4:JAK1/JAK3と関連する
  • 2. IL-13:JAK1/JAK2/TYK2と関連する
  • 3. IL-17:乾癬の生物学的製剤でターゲットとなるが、JAK-STAT経路による直接の制御を受けない
  • 4. IL-23:JAK2/TYK2と関連し、乾癬生物学的製剤のターゲット。掌蹠膿疱症とも関連する
  • 5. IL-31:JAK1/JAK2と関連。アトピー性皮膚炎の痒みと関連が強く、ネモリズマブ(ミチーガ®)のターゲット

サイトカインとJAKの関係は文献によって微妙に記載が異なる(たとえばIL-13もJAK1/JAK3が関係すると日本内科学会雑誌では記載されている)。上記は下記を総合的に踏まえて記載した

関連問題

アトピー性皮膚炎のサイトカインと生物学的製剤・JAK阻害薬については下記参照

230109-atopicdermatitis-biologics-jakinhibitor
アトピー性皮膚炎 サイトカインと生物学的製剤、JAK阻害薬について

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選択問題88:解答 2, 4

梅毒に関する一般問題

梅毒検査において、陽性化する順番はRPR法(STS法)→TP法(TPLA法)が"原則"

しかし近年普及しているTPLA法は陽転化の時期が早く、TPLA法→RPR法となる"場合もある"ため注意が必要。下記も参照

220502-STS-TPHA
梅毒 血清学的検査法の比較 STS法 TPHA法(TPLA法)

続きを見る

※教科書ではTPLA法の記載がなく、従前のTp抗原法を指して「TPHA法はSTSより陽転化が遅い」と記載されているので注意

関連問題

選択問題89:解答 4

線状IgA水疱性皮膚症で、split skin法にて真皮側に陽性となる抗原は7型コラーゲン→4

一方表皮側で陽性となる場合は17型コラーゲン(BP180)が原因となる

split skin 間接蛍光抗体法による水疱症の鑑別 (1M食塩水剥離皮膚)

1M食塩水で正常皮膚を処理すると、透明帯の部分で表皮と真皮に分かれる

この皮膚と患者血清を反応させ、抗体が表皮 or 真皮のどちらに沈着するかで病変部位が推定できる

沈着部位 代表的疾患 対応抗原
表皮側に沈着 水疱性類天疱瘡 BP180(NC16a領域)
粘膜類天疱瘡 BP180(C末端)
妊娠性類天疱瘡 BP180
線状IgA水疱性皮膚症
真皮側に沈着 後天性表皮水疱症 7型コラーゲン
線状IgA水疱性皮膚症
粘膜類天疱瘡 ラミニン332
(ラミニン5)
抗ラミニンγ1類天疱瘡 ラミニンγ1

*BP180 = 17型コラーゲン

  • 1. BP230:水疱性類天疱瘡の原因の一つで、表皮側に沈着。ケラチンと直接結合する分子でもある
  • 2. ラミニンγ1(p200):抗ラミニンγ1類天疱瘡の原因で真皮側に沈着。同疾患は尋常性乾癬を半数に合併する
  • 3. ラミニン332(ラミニン5):粘膜類天疱瘡の原因の一つで、真皮側に沈着。BP180が原因の類天疱瘡と比較して悪性腫瘍合併や喉頭病変をきたしやすい
  • 4. 7型コラーゲン:線状IgA水疱性皮膚症(真皮側)および後天性表皮水疱症の原因で真皮側に沈着
  • 5. 17型コラーゲン:線状IgA水疱性皮膚症(表皮側)や水疱性類天疱瘡・粘膜類天疱瘡・妊娠性類天疱瘡などの原因
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p261・263
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p323

関連問題(split skin法)

選択問題90:解答 3

円形脱毛症治療でC2(行わないほうがよい)に分類されているのはシクロスポリンA内服療法→3

円形脱毛症 ガイドラインでの推奨治療

治療 推奨度
局所免疫療法(SADBE) B
ステロイド外用
かつらの使用
ステロイド局所注射 B*
抗ヒスタミン薬 C1
セファランチン内服
グリチルリチン, グリシン, メチオニン配合錠内服
カルプロニウム塩化物外用
ミノキシジル外用
冷却療法(液体窒素, 凍結)
直線偏光赤外線照射療法
経過観察のみ
ステロイド内服 C1*
静脈注射によるステロイドパルス
紫外線療法
レーザー治療, PDT C2
シクロスポリンA内服
分子標的薬の全身投与
漢方薬
抗うつ薬, 抗不安薬
タクロリムス外用
プロスタグランジン製剤外用
ビタミンD外用
レチノイド外用
催眠療法
心理療法
星状神経節ブロック療法
Platelet rich plasma(PRP)療法
アロマテラピー
鍼灸治療

B:行うよう勧める, C1:行ってもよい, C2:行わないほうがよい

*:小児には原則行わない

なお円形脱毛症に対してJAK阻害薬バリシチニブ(オルミエント®)が2022年に保険適用となっており、分子標的薬は現在C2だが今後の改訂で変更されるものと思われる

  • 1. ステロイド内服療法:推奨度C1*、発症後早期(6ヶ月以内)で進行している場合に用いられる
  • 2・4. セファランチン内服・グリチルリチン、グリシン、メチオニン配合錠の内服:推奨度C1、併用療法の一つとして行われる
  • 3. シクロスポリンA内服:推奨度C2、評価が一定せず副作用もあることから推奨されていない
  • 5. 無治療経過観察:推奨度C1、心理的配慮をしつつ積極的な治療介入をしないことも選択肢の一つ

関連問題

  • 2023 選択5 (円形脱毛症の病態)
  • 2017 選択3 (円形脱毛症で推奨度Bの治療:ステロイド局注と局所免疫療法)

選択問題91〜は下記

2022-specialist-4v2
令和4(2022)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題91〜100 記述問題

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