母斑症の一つ、色素失調症について重要事項と過去問解答・解説をまとめました
皮膚科専門医試験では過去13年で11問、過去5年でも3問出題がある重要疾患です
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色素失調症 重要事項まとめ 皮膚科専門医試験 過去問
色素失調症 重要事項まとめ
色素失調症はNEMO/IKBKG遺伝子変異によるX染色体優性遺伝疾患
男児は胎生致死のため95%は女児となる(男児はモザイクやクラインフェルター症候群 XXYで出生)
Blaschko線に沿って、下記のような特徴的経過の皮疹が生じる
また皮膚症状以外に眼症状(30%, 網膜剥離など)や精神発達遅滞、歯牙異常も合併する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p398
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p588
皮膚科専門医認定試験 関連過去問 (2022〜2009年)
問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会
2022年 選択問題 42
2022年 選択問題42
色素失調症について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 肺病変が約30%に生じる。
- 患者の95%以上が男子である。
- 血液、組織の好中球増多を伴う。
- NEMO/IKBKG遺伝子の変異により発症する。
- 出生時あるいは出生後早期に紅斑を伴う小水疱が見られる。
解答:4, 5
- 1. "眼病変"が約30%に生じる
- 2. 患者の95%以上が"女子(女児)"
- 3. 血液・組織の"好酸球"増多を伴う
2020年 記述問題17
2020年 記述問題17
生後12日の女児. 図42のような臨床像と組織像を示している. 最も考えられる疾患を記せ.
解答:色素失調症
Blaschko線に沿った紅斑・水疱形成と、組織での好酸球浸潤がみられる
詳細はリンク先:2020年 記述問題17
2019年 記述問題12
2019年 記述問題12
表皮母斑や伊藤白斑, 色素失調症などの疾患は遺伝的モザイクの代表例である. これらの疾患における皮疹の分布を理解するために重要な, 発生の過程で胚細胞が体表を遊走した痕跡と考えられている線の名称を記せ.
解答:Blaschko(ブラシュコ線)
胎児期皮膚の成長線を示し、色素失調症の他伊藤白斑が同線に沿った分布を示す
詳細はリンク先:2019年 記述問題12
2017年 選択問題50
2017年 選択問題50
成人期に脱色素斑がみられる可能性が高い疾患はどれか.
- basal cell nevus syndrome
- dyskeratosis congenita
- incontinentia pigmenti
- Peutz-Jeghers syndrome
- von Hippel-Lindau syndrome
解答:3
色素失調症の色素消退期では脱色素斑が見られる
詳細はリンク先:2017年 選択問題50
2016年 選択問題45
2016年 選択問題45
Incontinentia pigmenti (色素失調症)について正しいのはどれか. 2つ選べ.
- 網膜剥離を起こしやすい.
- 男女ほぼ同数の比で生じる.
- デルマトームに沿って生じる.
- 発症初期には好酸球浸潤が強い.
- 出生時には渦巻状色素沈着が目立つ.
解答:1, 4
- 1. 眼病変の代表は網膜剥離
- 2. 患者の95%以上が女性
- 3. "Blaschko線"に沿った皮疹が生じる
- 5. 渦巻状色素沈着は第3期。出生時は水疱期
詳細はリンク先:2016年 選択45
2016年 記述問題7
2016年 記述問題7
表皮母斑や色素失調症では, 胎生期の皮膚発生途上での突然変異が起こり, ケラチノサイト遊走パターン(Blaschko線)に沿って発症することがある. このような病態を臨床遺伝学的に( )病変という.
解答:モザイク
発生過程で1つの細胞に変異が生じ、その細胞から作られた部分全体に変化が出る現象をモザイクと呼ぶ
詳細はリンク先:2016年 記述7
2015年 選択問題50
2015年 選択問題50
0歳の女児. 出生時より皮疹が出現し, 生後6日で図14aのような臨床像を示した. 病理組織HE染色像を図14bに示す. この疾患で変異のみられる遺伝子はどれか.
- KRT10
- PTEN
- NEMO
- ATP2A2
- PTCH1
解答は3
図14aではBlaschko線に沿った水疱形成が、図14bでは好酸球浸潤を伴う表皮内水疱がみられる
詳細はリンク先:2015年 選択50
2013年 選択問題59
2013年 選択問題59
Incontinentia pigmenti (色素失調症)で誤っているのはどれか。
- 男女ほぼ同数の比で生じる。
- NEMO (NF-kB essential modulator)遺伝子に変異を認める。
- 歯牙異常を伴う。
- 皮膚病変はBlaschko線に沿って出現する。
- 色素沈着は4〜5歳頃から退色する。
解答:1
- 1. 患者の95%以上が女性
- 3. 歯牙異常も合併症の一つ
- 5. 色素沈着が消退するのは4〜5歳ごろから
詳細はリンク先:2013年 選択59
2010年 選択問題69
2010年 選択問題69
Blaschko線に沿って生じる疾患はどれか。2つ選べ。
- 色素失調症
- Klippel-Trenaunay症候群
- 色素血管母斑症
- 無色素性色素失調症(伊藤)
- Becker母斑
解答:1, 4
色素失調症の他、無色素性色素失調症(伊藤)もBlaschko線に沿った皮疹が特徴
※別名:伊藤白斑(hypomelanosis of Ito)
伊藤白斑は経過中に水疱がみられず、白斑をきたす。精神発達遅滞の合併がみられる点は色素失調症と同様
(臨床問題は2020年 選択62)
2010年 選択問題85
2010年 選択問題85
出生時(図44)と4歳時の歯牙異常(図45)の所見から最も考えられる疾患はどれか。
- Bloch-Sulzberger症候群
- Lichen planus linearis
- Linear IgA bullous dermatosis
- Congenital herpes simplex
- Epidermolysis bullosa
解答:1
図44では線状の水疱形成が、図45では歯牙発育不全がみられる
色素失調症の別名としてBloch-Sulzberger症候群がある
2009年 選択問題66
2009年 選択問題66
新生児の多発性小膿疱・水疱に、多数の好酸球がみられた。最も考えられる疾患を2つ選べ。
a. 新生児中毒性紅斑
b. 一過性新生児膿疱黒皮症
c. 小児肢端膿疱症
d. 色素失調症
e. 先天性カンジダ症
解答:a, d
新生児期に見られ、組織学的に好酸球膿疱をきたすのは色素失調症と新生児中毒性紅斑
新生児中毒性紅斑は新生児の約半数で生後1〜3日に生じ、外界刺激に対する一過性の好酸球反応と考えられている(数日で自然軽快する)