日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和4(2022)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
選択問題61〜90は下記
-
令和4(2022)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90
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見出し
- 1 令和4年度(2022年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 91〜100 記述
- 1.1 選択問題91:解答 3
- 1.2 選択問題92:解答 4
- 1.3 選択問題93:解答 3, 4, 5
- 1.4 選択問題94:解答 5
- 1.5 選択問題95:解答 1
- 1.6 選択問題96:解答 1
- 1.7 選択問題97:解答 2, 5
- 1.8 選択問題98:解答 3, 4
- 1.9 選択問題99:解答 3
- 1.10 選択問題100:解答 4
- 1.11 記述問題1:解答 asteroid body (星状体, 星芒体)
- 1.12 記述問題2:解答 10
- 1.13 記述問題3:解答 偽角質嚢腫 (pseudohorn cyst)
- 1.14 記述問題4:解答 マダニ
- 1.15 記述問題5:解答 カーリング(Curling)潰瘍
- 1.16 記述問題6:解答 rubrum
- 1.17 記述問題7:解答 ヘルトーゲ (hertoghe)
- 1.18 記述問題8:解答 色素失調
- 1.19 記述問題9:解答 wickham
- 1.20 記述問題10:解答 (多発性)脂腺嚢腫
- 1.21 記述問題11:解答 minimal erythema dose
- 1.22 記述問題12:解答 β-Dグルカン
- 1.23 記述問題13:解答 IL-1β
- 1.24 記述問題14:解答 verocay body
- 1.25 記述問題15:解答 informed consent
- 1.26 記述問題16:解答 HDSS4
- 1.27 記述問題17:解答 polymerase
- 1.28 記述問題18:解答 perfusion
- 1.29 記述問題19:解答 フォアダイス状態
- 1.30 記述問題20:解答 in situ
令和4年度(2022年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 91〜100 記述
選択問題91:解答 3
NF1患者の前胸部に好発するのは貧血母斑→3
入浴や摩擦などで周囲の皮膚が紅潮した際に境界鮮明な蒼白部位が出現するもので、毛細血管の機能的障害と考えられている。NF1や結節性硬化症に合併することがある
- 1・2. 白斑・低色素斑:NF1ではなく、結節性硬化症で出生時〜早期にみられ早期診断に重要な病変(葉状白斑)
- 3. 貧血母斑:小児で合併しやすく、50〜70%に合併する
- 4. カフェオレ斑*:出生早期から見られ、6個以上あればNF1の可能性が極めて高いとされる(six spots criterion)。95%に合併
- 5. 雀卵斑様色素斑*:カフェオレ斑よりやや遅れた幼児期から出現し、腋窩や鼠径に集簇する特徴をもつ(freckling)
*この2つは臨床的診断基準に含まれる。カフェオレ斑は1〜5cm程度のもの(小児では>0.5cm)で、雀卵斑様色素斑は直径1cm以下のもの。
貧血母斑は参考所見で診断基準には含まれない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p391/390(3)/394(1・2)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p570/566(3)/574(1・2)
- 参考:神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病) 診療ガイドライン2018 日皮会誌:128(1), 17-34, 2018
関連問題
- 2019 選択79 (NF1と貧血母斑)
選択問題92:解答 4
ファムシクロビル(ファムビル®)はPIT療法で内服する場合、1,000mg ×2回内服となる→4
ファムシクロビル PIT療法
ファムビル®を予め処方しておき、自覚症状が出た際6時間以内に1回目を内服し、その後12時間後に2回目を内服して治療終了とする方法(通常の内服方法のように5日間ではない)
1回あたり1,000mgを内服し、抗ウイルス薬の早期内服により単純ヘルペスウイルスの増殖抑制効果が期待できる
処方するにはいくつか条件がある
- 再発性単純ヘルペス(性器ないし口唇)
- 再発頻度が概ね年3回以上
- 再発の初期症状(患部の違和感・灼熱感・搔痒感など)を正確に判断可能
- 再発分の処方は1回のみ
なお2023年2月よりアメナメビル(アメナリーフ®)もPIT療法が可能となった。用法用量は1,200mg(6錠)x1回で帯状疱疹(400mg 1回 x 7日)とは異なる
両者の比較は下記
PIT療法比較 | 用法用量 | 内服タイミング | 再発回数 |
ファムビル® | 1,000mg 2回 | 初回:6時間以内 2回目:12時間後(6〜18時間後までは許容) |
年3回以上 |
アメナリーフ® | 1,200mg 1回 | 6時間以内かつ食後 | 規定なし |
「再発の初期症状を正確に判断可能」な患者であること、部位(口唇 or 性器)は両者で共通
関連問題
選択問題93:解答 3, 4, 5
基底細胞癌でagressive型に分類される組織型を問う問題
agressive型/非agressive型に分類される
agressive型 | 非agressive型 |
斑状強皮症型/硬化型 | 結節型 |
浸潤型 | 表在型 |
微小結節型 |
基底細胞癌の再発リスクを判定する際も、agressive型だと高リスクに分類される
基底細胞癌 再発の高リスク因子
下記の条件に1つでも該当すると、再発高リスクとして扱われる
部位/腫瘍径 | 高リスク部位(頬・前額以外の顔, 外陰, 手, 足) で6mm以上 |
中リスク部位(頬, 前額, 頭, 頚部, 前脛骨部) で10mm以上 |
|
低リスク部位(体幹, 四肢) で20mm以上 |
|
境界 | 不明瞭 |
再発歴 | あり |
免疫抑制状態 | あり |
局所放射線治療歴 | あり |
組織型 |
=agressive型 |
神経周囲浸潤 | あり |
- 1. 結節型:真皮内で境界明瞭な腫瘍胞巣を形成し、間質との間には腫瘍が産生するムチンによる裂隙がしばしば見られる
- 2. 表在型:表皮直下に腫瘍胞巣が連続性に並び、結節型と同様に裂隙もみられる
- 3. 浸潤型:腫瘍胞巣が真皮内膠原線維へ浸潤していくタイプで、神経浸潤を起こしやすい
- 4. 微小結節型:小さな腫瘍胞巣が真皮全層〜皮下組織へ散在性へ増殖する
- 5. 斑状強皮症型:細い索状の腫瘍胞巣で、間質での膠原線維増加が目立つ。
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p447
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p647(表24-7)
- 参考:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版 基底細胞癌診療ガイドライン2021 日皮会誌:131(6), 1467-1496, 2021 のp1474-1475(表2)
関連問題
- 2015 選択56 (高リスクのBCC)
選択問題94:解答 5
新型コロナウイルス感染症のオミクロン株ではスパイク蛋白の変異がある→5
このため潜伏期間の短縮や、従来用いられていたmRNAワクチンの有効性低下が生じた
対策としてオミクロン株のスパイク蛋白を含む「オミクロン株対応2価ワクチン」の接種が2022年秋から開始された
関連問題
- 2020 選択24 (RNAウイルスが原因の疾患:COVID-19, 手足口病)
選択問題95:解答 1
光アレルギー反応と光毒性の相違点を問う問題
光アレルギー反応は非曝露部へも進展することが特徴→1
光毒性 光アレルギー反応 比較
外因性光線過敏は光毒性と光アレルギー反応の2つに大きく分けられる
ポイントは光毒性が量依存で"初回から""誰でも"生じえるが、光アレルギー反応は感作が必要(=初回では生じない)で生じるかどうかは体質もあるという点
光毒性 | 光アレルギー性 | |
頻度 | すべての人に生じうる | 一部の人のみ |
初回曝露時の発症 | あり | なし(感作が必要) |
潜伏期 | 短い(数時間〜1日) | 長い(半日以上) |
非曝露部への進展 | なし | ありうる |
発症に必要な薬剤濃度 | 高い | 低い |
接触皮膚炎も「一次刺激性接触皮膚炎」と「アレルギー性接触皮膚炎」に分類されるが、それに近い
- 1. 非露光部に炎症が進展するのは光アレルギー性の特徴
- 2・4. 初回から・誰にでも生じ得るのは光毒性の特徴
- 3. アレルギー性では感作が成立していれば、ごく少量の物質でも光曝露によって症状をきたす
- 5. ソラレンは光毒性物質。PUVA療法で用いられるものであり、"誰にでも""初回から""量依存で"症状を起こす性質が無ければ使い勝手が悪い
※光アレルギー性のような感作が必要(初回から実行できない)で、感作成立後は少量でも光線過敏を発症する(治療と無関係に光線過敏をきたしてしまう恐れのある)薬剤は使えない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p229(ALL)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p275(2・3・4・5)
関連問題
選択問題96:解答 1
20代男性で口唇の腫脹・皺襞舌・顔面神経麻痺からメルカーソン・ローゼンタール症候群を疑う
病理組織では肉芽腫形成が特徴→1
肉芽腫性口唇炎 (Melkersson-Rosenthal症候群)
肉芽腫性口唇炎は口唇が突然腫脹をきたし、組織学的に肉芽腫がみられる疾患
- 肉芽腫性口唇炎
- 皺壁舌 (舌が腫脹し表面の皺壁が著明となる)
- 顔面神経麻痺
の3主徴がみられる場合、Melkersson-Rosenthal症候群と称される(すべて揃うのは10%)
原因不明だが、病巣感染(扁桃炎・う歯)や金属アレルギーの関与、サルコイド反応などが考えられている
- 1. 大小の肉芽腫形成:急性期はリンパ球や組織球浸潤がみられ、慢性期には肉芽腫形成をきたす
- 2. 表皮内のspongiosis(海綿状態):表皮角化細胞同士の細胞間隙が明瞭になった状態で、接触皮膚炎などの急性湿疹でみられる所見
- 3. 血管壁破壊:血管炎でみられる所見
- 4. 真皮内の浮腫性硬化:全身性強皮症でみられる所見
- 5. 表皮基底層の液状変性:境界部皮膚炎(interface dermatitis)とも呼ばれ、扁平苔癬や皮膚筋炎・多形紅斑などでみられる所見
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p349(1)/43(2)/200(4)/45(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p519(1)/52(2)/401(4)/54(5)
関連問題
- 2023 選択63 / 2019 記述9 / 2016 選択42 / 2012 選択44 / 2011 選択48 (メルカーソン・ローゼンタール症候群の症状など)
- 2020 選択82 (境界部皮膚炎をきたす疾患)
選択問題97:解答 2, 5
西日本でタカサゴキララマダニ刺症を受けた血液型B型患者が罹患しやすい疾患を問う問題
日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群がある→2, 5
- 1. ライム病:日本ではボレリアを保有するシェルツェマダニが媒介し、同ダニは北海道に生息するため西日本で罹患する可能性は高くない
- 2. 日本紅斑熱※:マダニが媒介し、西日本〜関東の温暖な地方を中心にみられる
- 3. つつが虫病※:ツツガムシ(ダニの一種だがマダニではない)が媒介し、全国に広く分布する
- 4. 牛肉アレルギー:マダニ刺症で感作されるα-Galアレルギーは牛肉(獣肉)やセツキシマブ(抗がん剤)のアレルギーをきたすが、血液型B型・AB型ではもともとα-Galを持っているため感作されづらい
- 5. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS):マダニが媒介するSFTSウイルスによる感染症で、国内では西日本での報告例が多い
※日本紅斑熱とつつが虫病はいずれもリケッチア(偏性細胞内寄生菌)感染症で、それぞれRickettia japonicaとOrientia tsutsugamushiが起因菌
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p567(1)/570(2)/569(3・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p933(1)/932(2)/930(3・5)
- 参考:新・皮膚科セミナリウム ダニ媒介性感染症 日皮会誌:129(12), 2493-2501, 2019
- 選択肢4の参考:新・皮膚科セミナリウム マダニ咬傷による糖鎖抗原感作から生じる食物アレルギー 日皮会誌:131(3), 505-509, 2021
関連問題
- 2023 選択6 / 2017 選択34 (ライム病の臨床問題)
- 2021 選択30 / 2020 選択35 / 2016 選択26 / 2015 選択26 (マダニ媒介感染症)
- 2021 選択42 (つつが虫病と日本紅斑熱の発症地域など)
- 2019 選択45 / 2018 選択33 / 2015 選択38 (α-Galアレルギー)
選択問題98:解答 3, 4
皮膚筋炎に特異度が高い皮疹を問う問題
ヘリオトロープ疹やGottron丘疹がある→3, 4
- 1. Vネック徴候:頚部〜上胸部・上背部にかけてみられるそう痒の強い浮腫性紅斑で、ショールサインとも呼ばれ皮膚筋炎の皮膚症状の一つ
- 2. 多形皮膚萎縮(ポイキロデルマ):皮膚萎縮・色素異常や毛細血管拡張症の混在する状態で、皮膚筋炎以外に色素性乾皮症・菌状息肉症等でも見られ特異度が低い
- 3. ヘリオトロープ疹*:両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑で、約30%にみられる
- 4. ゴットロン丘疹*:手指関節背面の丘疹
- 5. 爪郭部毛細血管拡張:全身性強皮症でみられる所見。nail fold bleeding(爪上皮出血点)は皮膚筋炎でもみられる
*皮膚筋炎診断基準の皮膚症状には、上記2つ+ゴットロン徴候が含まれる
ゴットロン徴候:肘頭や膝蓋部、手指関節背面にみられる角化性紅斑
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p205(1・3・4)/75(2)/201(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p490(2)/404(5)
選択肢1について。Vネック徴候も皮膚筋炎で見られる症状だが、診断基準に含まれないため特異度が低いものと考え間違い選択肢とした(各皮疹の具体的な出現率等は調べた限りで見つからず)
関連問題
- 2015 選択58 / 2011 選択62 (ポイキロデルマのみられる疾患)
- 2011 選択40 (皮膚筋炎診断基準に含まれる皮疹 ※旧基準なので表現が一部異なる)
選択問題99:解答 3
境界明瞭な大腿部の結節病変で、ダーモスコピーでは辺縁部での色素沈着がみられることから皮膚線維腫(DF)の診断
矢印部では真皮浅層で紡錘形細胞が多数みられ、一見基底細胞癌に類似してみえる。これは毛包誘導(follicular induction)と呼ばれる→3
DFでは脂腺や毛包など、付属器への分化がみられることがある
- 2. storiform pattern(花むしろ様配列):隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)でみられ、腫瘍細胞や線維が渦を巻くように配列する所見
- 3. follicular induction:DFの11〜19%で観察されると報告されるが、DFSPでは見られない所見
- 4. herringbone pattern(ニシンの骨様配列):線維肉腫でみられる束状増殖のパターン。DFSPでこのパターンを伴うものは遠隔転移をきたしやすい
- 5. tissue-culture appearance:結節性筋膜炎でみられる、線維芽細胞類似の紡錘形細胞が増生し間質にムチン沈着を伴う所見
→つまり選択肢3はDFの、選択肢2・4はDFSPの所見
免疫染色ではDFでCD34(-)、DFSPではCD34(+)となるのが典型例
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p461(2・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p667(2)/527(5)
- 選択肢3の参考:表皮の付属器分化を伴った皮膚線維腫の検討 皮膚科の臨床 64(3), 395-399, 2022
- 選択肢3の参考:YouTube ishida-yamamoto akemiチャンネル>毛包の誘導を伴う皮膚線維腫の病理組織像の解説
- 選択肢5の参考:結節性筋膜炎71例の病理組織学的検討 臨床皮膚科 59巻7号 p589-595
関連問題
- 2023 選択91 / 2020 選択84 / 2018 選択80 / 2011 選択66 (DFとDFSPの鑑別点)
- 2019 選択85 / 2018 選択74 / 2016 選択70 (DFのダーモスコピー所見)
選択問題100:解答 4
中高年男性の鼻部に生じ、中央部に小陥凹を伴う(組織で解りやすい)腫瘍であり毛包腫(trichofolliculoma)の診断→4
毛包腫 (trichofolliculoma)
顔面(鼻や頬)に単発する半球状・正常皮膚色の小結節で、大きさは5〜10mmほど
中央が陥凹して未熟な白い毛が生えていることがある
組織では未熟な毛包構造が集塊を形成する像がみられる
- 1. 毛包腺腫:顔面や臀部に単発する腫瘤。角質嚢腫※や間質の増殖がみられる
- 2. 毛芽腫:顔面や頭部で半球状に隆起した結節としてみられる。毛球への分化がみられBCC類似の胞巣状増殖をきたすが、fibroepithelial unit*が鑑別点
- 3. 外毛根鞘腫:顔面に好発し、3〜8mmくらいの疣贅状丘疹となる。組織では円柱状細胞の柵状配列がみられる
- 4. 毛包腫:中央が陥凹してみられるのが特徴
- 5. 毛包上皮腫:毛球への分化(≒毛芽腫に類似)に加えて、毛包漏斗部への分化を伴うため角質嚢腫※が見られるのが特徴
*fibroepithelial unit:腫瘍胞巣周囲に膠原線維が密着し、その外側に裂隙がみられる(一方BCCでは膠原線維がなく、腫瘍細胞と裂隙が直接接する)
※角質嚢腫:脂漏性角化症でみられる偽角化嚢腫に類似
毛包系腫瘍は一部の疾患で多発することが知られる
- 毛包上皮腫・円柱腫:Brooke-Spiegler症候群
- 外毛根鞘腫:Cowden症候群
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p409(1・4・5)/410(2)/411(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p604(4)/607(1・2・5)/609(3)
- 選択肢2の参考:新・皮膚科セミナリウム 毛包系腫瘍の病理 -最近の話題 日皮会誌:128(13), 2815-2822, 2018
- 選択肢2・5の参考:皮膚科セミナリウム 第32回 表皮・毛嚢・脂腺系 日皮会誌:117(14), 2445―2451, 2007
関連問題
記述問題1:解答 asteroid body (星状体, 星芒体)
サルコイドーシスにおいて巨細胞の中にみられる、放射状の針状構造を問う問題
サルコイドーシス 病理
乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫(Langhans型巨細胞)が特徴で、診断基準上も重要
下記2つの所見もみられる(星状体の方が高頻度)
- 星状体:中心に核を有する放射状の針状構造
- シャウマン小体:好塩基性で円形の層状構造。カルシウム沈着を伴う
なおスポロトリコーシスでみられる真菌胞子から好酸性構造が伸びる像も星芒体と呼ばれる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p346
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p513
関連問題
記述問題2:解答 10
Stavens-Johnson症候群(SJS)と中毒性表皮壊死症の分類を問う問題
表皮剥離面積によって、下記のように分類される
表皮剥離面積 | 疾患名 | 略称 |
<10% | Stevens-Johnson症候群 | SJS |
>30% | 中毒性表皮壊死症 | TEN |
※10〜30%の間はオーバーラップとして扱われる(日本の診断基準上は>10%あればTENと診断できる)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p156
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p196
- 参考:難病情報センター 中毒性表皮壊死症
上で書いた通り「TENと診断するのに必要な表皮剥離面積」は議論があるため、基本的にSJSの診断上必要な面積しか問われないだろう
記述問題3:解答 偽角質嚢腫 (pseudohorn cyst)
高齢女性の前額部皮疹でダーモスコピー上multiple milia-like cystが見られ、脂漏性角化症の像
病理組織では偽角化嚢腫(pseudohorn cyst)に対応する
脂漏性角化症 ダーモスコピー所見
下記2つが代表
和名 | 面皰様開大 | 多発性稗粒腫様嚢腫 |
英名 | comedo-like openings | multiple milia-like cyst |
ダーモスコピー所見 | 黒褐色で境界明瞭な貯留物質 | 褐色病変の中の若干境界不明瞭な白色点 |
対応する組織所見 | 角栓 | 偽角化嚢腫 |
その他乳頭腫に対応したbrain-like appearance(脳回転様外観)などがある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p59
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p168
関連問題
記述問題4:解答 マダニ
山に行った後の自覚症状を伴わない腹部の虫刺症であり、マダニを考える
マダニは口器が残ると異物肉芽腫となるため、周囲の正常皮膚ごと虫体を切除する。本検体はおそらくこの際の検体を皮膚ごと検査に提出したものと思われる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p566
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p928
記述問題5:解答 カーリング(Curling)潰瘍
広範囲熱傷によるストレス性の胃潰瘍はカーリング潰瘍と呼ばれ、受傷1週間以内に生じやすい
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p222
記述問題6:解答 rubrum
足白癬起炎菌は最多のTrichophyton rubrumと、T. mentagrophytesの2つで95%以上を占める
とくにT. rubrumは角質肥厚を起こしやすいとされる
なお近年は分子生物学の進歩により、従来T. mentagrophytesと呼ばれてきたものの大部分はT. interdigitaleであったことがわかっている
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p533
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p892
(2022年刊行のためT. interdigitale記載) - 参考:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019 日皮会誌:129(13), 2639-2673, 2019のp2650
関連問題
記述問題7:解答 ヘルトーゲ (hertoghe)
アトピー性皮膚炎で見られる、眉毛外側1/3が疎毛となる現象はヘルトーゲ徴候と呼ばれる
その他特徴的所見として、下眼瞼に見られるシワ(Dennie-Morgan fold)も有名
こちらは金属アレルギーの関与する内因性アトピー性皮膚炎で見られやすいとされる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p121
- 参考・画像参照:病気がみえる 皮膚科p82
記述問題8:解答 色素失調
表皮基底層のメラニン顆粒が真皮に滴落する現象は組織学的色素失調と、またこれを貪食したマクロファージはメラノファージと呼ばれる
表皮基底膜部の炎症(液状変性)があると見られる所見で、具体的には下記のような疾患で見られる
- 扁平苔癬
- エリテマトーデス
- 摩擦黒皮症 (タオルメラノーシス)
- 色素異常性固定紅斑 (ashy dermatosis)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p45・310
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p65・533
関連問題
記述問題9:解答 wickham
Wickham線条
扁平苔癬でみられる皮疹表面の細い灰白色線条で、ダーモスコピーでは「whitish striae」と呼ばれる
組織学的に顆粒層の楔状肥厚と対応する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p292
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p390
関連問題
- 2017 記述1 (★同一問題★)
- 2021 選択82 (Wickham線条に対応する組織所見)
記述問題10:解答 (多発性)脂腺嚢腫
若年男性で胸部・上肢にやや黄色の小結節が多発している。組織では嚢腫壁に脂腺が開口する像がみられ、多発性脂腺嚢腫の診断
ケラチン17遺伝子変異例では多発し、先天性爪甲肥厚症を伴うことが知られる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p418
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p585
- 参考・図引用:Steatocystoma multiplex BMJ Case Rep. 2011 Sep 26;2011:bcr0420114165.
関連問題
- 2013 記述5 (★同一問題★)
- 2018 選択10 (原因遺伝子:KRT17)
- 2011 選択27 (家族例の臨床問題)
記述問題11:解答 minimal erythema dose
UVBを照射して紅斑を生じる最小量を問う問題
紫外線照射での反応は波長によって異なる
UVA/UVBの比較と光線過敏症の検査
紫外線の種類 | 波長(nm) | 検査 | 健常日本人 |
UVA | 320〜400 | MRD(最小反応量) | 10〜15J/cm2 |
UVB | 290〜320 | MED(最小紅斑量) | 50〜100mJ/cm2 |
*MRD = minimal response dose, MED = minimal erythema dose
サンスクリーン(日焼け止め)でUVBの防御能を示すSPFはMEDの変化で、UVAの防御能を示すPAは即時型黒化の変化で評価される
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p84・230
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p111
関連問題
記述問題12:解答 β-Dグルカン
β-Dグルカンは真菌の細胞壁を構成する成分
深在性真菌症の多くで陽性となるが、一部偽陰性/偽陽性となる場合がある
偽陰性となる真菌症※ | ムコール |
クリプトコッカス | |
偽陽性 | 血液透析(セルロース膜使用) |
血液製剤(アルブミン/グロブリン製剤等) | |
環境汚染(術中のガーゼ使用等) | |
キノコ類(アガリクス)の大量摂取 |
※ムコールは細胞壁にβ-Dグルカンが含まれないため、クリプトコッカスは分厚い莢膜を持つためそれぞれ検出できない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p537
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p886
- 参考:イヤーノート2022 感染症(H) p83
関連問題
- 2011 選択85 (β-Dグルカンが上昇する疾患)
記述問題13:解答 IL-1β
自己炎症症候群に対して用いられるカナキヌマブ(イラリス®)はIL-1βのモノクローナル抗体製剤
下記の疾患が保険適用となっている
- クリオピリン関連周期熱症候群(家族性寒冷自己炎症症候群, マックル・ウェルズ症候群, 新生児期発症多臓器系炎症性疾患)
- 高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
- TNF受容体関連周期性症候群
- 家族性地中海熱*
- 全身型若年性特発性関節炎*
*既存治療で効果不十分な場合
クリオピリン関連周期熱症候群 (CAPS)
クリオピリンの機能異常により、炎症性サイトカインIL-1βの過剰産生をきたす疾患
常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、IL-1βの活性化を制御するNLRP3遺伝子変異が原因
重症度に幅があり、下記のように分類される(明確に区別できないこともある)
軽症型 | 家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS) ※家族性寒冷じんま疹とも |
中等症 | Muckle-Wells症候群(MWS) |
重症型 | 慢性乳児神経皮膚関節症候群(CINCA症候群) 新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID) |
症状として、軽症型では(名前通り)寒冷刺激にともなう膨疹が主体
重症度が上がると周期性の関節炎・発熱や中枢神経症状(感音性難聴) などをきたすようになる
カナキヌマブ以外のIL-1をターゲットにした薬剤にアナキンラがあるが、日本では未承認
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p217
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p167・179
- 参考:難病情報センター クリオピリン関連周期熱症候群
- 参考:イラリス 添付文書
関連問題
- 2019 選択22 (CAPSの原因遺伝子)
記述問題14:解答 verocay body
神経鞘腫はAntoni A領域/B領域に分けられる
A領域で見られる病理組織所見はVerocay bodyと称され、同部位は良性腫瘍だが血流も豊富
Antoni | 組織 |
A領域 | 細長い核が柵状に並ぶ帯と、核に乏しい好酸性の部位からなる構造
(Verocay body) |
B領域 | 方向性がなく細胞成分が疎 |
神経線維腫症2型(NF2)では神経鞘腫とくに両側聴神経鞘腫が特徴で、予後はNF1より悪い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p420・394
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p736・573
関連問題
記述問題15:解答 informed consent
英語フルスペルを問う問題
IC = informed consent
informed(十分な情報を伝えられた上での) consent (同意)で、つまり患者側にも説明内容を伝え・理解してもらうという意味が込められている
以前同義として利用されていた「ムンテラ(ドイツ語のmund:口 + therapie:治療)」は直訳すると口での治療で「私の治療法に従いなさい」というニュアンスが含まれるので、最近は使われる頻度が減っている
記述問題16:解答 HDSS4
原発性多汗症の重症度判定にはHDSS(多汗症重症度評価尺度)が用いられる
HDSS (hyperhidrosis disease severity scale)
HDSS1 | 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない |
HDSS2 | 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある |
HDSS3 | 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある |
HDSS4 | 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある |
→「発汗は我慢できず日常生活に常に支障がある」場合はHDSS4に該当
原発性"腋窩"多汗症の治療薬として、近年発売された下記2剤はいずれもHDSS>3の重症度が必要で、症状詳記に記載する必要がある
商品名 | 一般名 | 発売年 |
エクロック®ゲル | ソフピロニウム臭化物 | 2020 |
ラピフォート®ワイプ | グリコピロニウムトシル酸塩水和物 | 2022 |
両方とも抗コリン薬であり、エクリン腺による発汗(アセチルコリン作動性)を抑制する作用がある
関連問題
過去には乾癬重症度を示すPASIのフルスペルを問う問題もあったことから、来年度以降の試験対策としてHDSSもフルスペルを抑えておくことが望ましいと考えられる
記述問題17:解答 polymerase
フルスペルを問う問題
PCR = polymerase chain reaction
PCR法は特定の塩基配列の両端を囲むプライマーを設計し、DNAポリメラーゼを加えて反応を繰り返すことでターゲット領域を増幅する手法。新型コロナウイルス感染症の診断で広く用いられている
なお開発者のキャリー・マリス氏は1993年にノーベル化学賞を受賞している
- 参考:ロシェ>PCRとは
記述問題18:解答 perfusion
下肢虚血性疾患においてよく用いられる検査はABIとSPP(skin perfusion pressure)の2つ
SPP (skin perfusion pressure)
目的部位にレーザードプラーセンサーとカフを装着し、皮膚表面から約1mmの深さの灌流圧(perfision pressure)を測定する。
下肢虚血の診断だけでなく虚血性潰瘍の治癒予測にも有用で、SPP<30~40mmHgでは創傷治癒の可能性は低いとされる
ABI(ankle brachial systolic pressure index):上下肢の血圧を比較する検査で、狭窄があると低値を示し<0.9で主幹動脈狭窄/閉塞を示唆する。下肢虚血のスクリーニングに用いられるが、マンシェットを巻く部位に高度石灰化があると血圧測定が行えない/数値が不正確となるという問題がある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p185
- 参考:末梢動脈疾患ガイドライン 2022年改訂版のp15・53
関連問題
記述問題19:解答 フォアダイス状態
上口唇では黄白色の丘疹がみられ、フォアダイス(Fordyce)状態の診断
独立脂腺の増殖により口唇や口腔粘膜、包皮で1〜2mm大までの黄色小丘疹が多発集簇する状態を指し、特に口唇では中年以降の約80%にみられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p362
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p613
関連問題
記述問題20:解答 in situ
腫瘍細胞が表皮内にとどまっている場合、in situ病変と呼ばれる
Bowen病や日光角化症は共に上皮内癌であり、有棘細胞癌の前癌病変だが下記の違いがある
日光角化症 | Bowen病 | |
好発部位 | 顔面(露光部以外は生じない) | 体幹・四肢(全身に生じえる) |
リスク因子 | 紫外線 | HPVウイルス(HPV-16), ヒ素 |
異型細胞 | 基底層中心 | 表皮全層性 |
pink and blue sign* | + | - |
日光性弾力線維症(solar elastosis) | + | - |
*pink and blue sign:異型細胞や異常角化が付属器上皮(毛包や汗腺)を避ける像で、日光角化症の特徴
なおメラノーマ(悪性黒色腫)は表皮内病変の場合、TNM分類のTがTisとなる(センチネルリンパ節生検非推奨)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p449・451
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p624・629