日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和2(2020)年度の解答解説を作成しました
見出しから各問題へ飛べます
誤字脱字ご意見などあればコメント・右のフォーム・Twitterなどでご連絡ください
- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会 (問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
※本記事で参考にしたのは皮膚科学 第10版ですが、11版が出ているので上記リンクは新版です
2020年度の選択問題61〜90は下記
-
令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90
続きを見る
見出し
- 1 令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題90〜100 記述問題
- 1.1 選択問題91:解答 1, 4, 5
- 1.2 選択問題92:解答 2
- 1.3 選択問題93:解答 2
- 1.4 選択問題94:解答 4
- 1.5 選択問題95:解答 3
- 1.6 選択問題96:解答 2
- 1.7 選択問題97:解答 3
- 1.8 選択問題98:解答 3
- 1.9 選択問題99:解答 4
- 1.10 選択問題100:解答 4
- 1.11 記述問題1:解答 フェオメラニン
- 1.12 記述問題2:解答 pityriasis lichenoides et varioliformis acuta
- 1.13 記述問題3:解答 壊死性遊走性紅斑
- 1.14 記述問題4:解答 アメナメビル
- 1.15 記述問題5:解答 陰茎結核疹
- 1.16 記述問題6:解答 ニキビダニ(毛包虫)
- 1.17 記述問題7:解答 再発性多発軟骨炎
- 1.18 記述問題8:解答 trigeminal trophic syndrome
- 1.19 記述問題9:解答 環状肉芽腫
- 1.20 記述問題10:解答 white forelock
- 1.21 記述問題11:解答 deck-chair sign
- 1.22 記述問題12:解答 紅色皮膚描記症
- 1.23 記述問題13:解答 復帰変異モザイク
- 1.24 記述問題14:解答 疣状黄色腫
- 1.25 記述問題15:解答 ステージⅢ
- 1.26 記述問題16:解答 青色母斑
- 1.27 記述問題17:解答 色素失調症
- 1.28 記述問題18:解答 尋常性疣贅
- 1.29 記述問題19:解答 CTLA-4
- 1.30 記述問題20:解答 メタアナリシス(メタ解析)
令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題90〜100 記述問題
選択問題91:解答 1, 4, 5
一部感染症は学校での流行を防ぐため、出席停止期間が法律で定められている
詳しくは下記にまとめた
-
感染症の出席停止期間 学校保健安全法 【プールの可否】
続きを見る
よって本問の解答は下記となる
- 1. 風疹:発疹が消失するまで→○
- 2. 伝染性紅斑:出席停止は不要(感染力なし)→✗
- 3. 麻疹:解熱後3日間は出席停止→✗
- 4. 結核:医師が感染の恐れがないと認めるまで→○
- 5. 水痘:すべての発疹が痂皮化するまで→○
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 保健所・学校における感染症対策:学校感染症および関連疾患について 日皮会誌:129(7), 1477-1494, 2019
関連問題
- 2021 選択93 (麻疹・水痘・風疹・咽頭結膜熱・インフルエンザ)
- 2019 選択33 (麻疹)
- 2017 選択26 (手足口病)
- 2015 選択89 (麻疹・風疹・水痘・手足口病)
- 2013 選択84 (学校感染症の対象疾患:風疹)
選択問題92:解答 2
蛍光抗体直接法と通常のHE染色では用いる切片が異なり、検体採取時に注意が必要
蛍光抗体法では新鮮凍結切片で5〜10μmの厚さのものを用いる→2
手順 | 特徴 | 主な用途 | 切片の厚み | |
凍結切片 | 液体窒素等で凍結 | 作成が早く、蛋白の抗原性が保持される | 蛍光抗体染色
術中迅速 |
5〜10μm |
パラフィン切片 | ホルマリン固定後、パラフィン包埋 | ホルマリン固定のため時間がかかるが、長期保存に向く | HE染色
免疫染色 |
3〜5μm |
- 2. 凍結切片 5〜10μm:蛍光抗体法では蛋白の抗原性を保つ必要があるため、凍結切片を用いる
- 5. パラフィン切片 5〜10μm:HE染色では長期間保存のためパラフィン切片を用い、厚みは蛍光抗体法よりやや薄めに作成されることが多い(3〜5μm)
※分厚すぎると細胞同士が重なってしまいフォーカスが合わなくなるため
関連問題
選択問題93:解答 2
黒色斑が見られ、ダーモスコピーでは均一構造なことから内出血を考える
胼胝+内出血であり、鶏眼・胼胝処置(J057-3)で算定する→2
選択問題94:解答 4
ジャパニーズスタンダードのパッチテストは一般的に貼付後48時間/72時間で判定を行うが、遅発性(4日目以降)に反応が生じやすいアレルゲンとして下記のものがある
パッチテストで1週間後の判定が望ましいアレルゲン
- 硫酸フラジオマイシン (ex. ネオメドロール®EEやソフラチュール®)
- ステロイド含有外用薬
- 金
- 参考:接触皮膚炎診療ガイドライン 2020 日皮会誌:130(4), 523-567, 2020 のp535 4)判定期間より
関連問題
- 2023 選択7 (パッチテストパネル®について)
選択問題95:解答 3
梅毒血清学的検査の違いを問う問題
旧来は用手法(検査技師が目視で判定)による測定を行っていたが、近年はメディエース®等による自動化法が主流となっている
梅毒 血清学的検査の比較
梅毒血清学的検査には大きく2つある
- STS法:梅毒感染に伴い組織が破壊され生じた脂質(自己組織)を認識する
※非特異的なため、抗リン脂質抗体症候群等で生物学的偽陽性がある - TP抗体法:Treponema pallidum (TP 梅毒)特異的な抗体を認識する
現在STS法はRPR法のみが用いられているが、TP抗体法に関しては複数検査法が存在する
STS法 | RPR法 | カルジオリピン(脂質抗原) |
TP抗体法 (総称がTPHA) |
TPHA | 動物赤血球 |
TPPA | ゼラチン粒子 | |
TPLA | ラテックス | |
FTA-ABS法 | 蛍光抗体法 |
※STS:serological test for syphilis, TPHA:Treponema pallidum hemagglutination test, TPPA:Treponema pallidum particle agglutination test, TPLA:Treponema pallidum latex agglutination, FTA-ABS:fluorescent treponemal antibody absorption test
- 1. TPLAではラテックス凝集法を用いて測定する
- 2. RPRの自動化法では1.0R.U.、1.0Uあるいは1.0SU/mL以上が陽性
- 3. 梅毒治療前後で値が1/2以下(自動化法)、1/4以下(用手法)の低減で治癒と判断する→✗
- 4. TPLAでは10T.U.以上が陽性である
- 5. 用手法ではRPR法がTP抗体法より先行して陽転化することが一般的だったが、TPLA法は早期に陽性となるためRPR法よりも早く陽転化することがある
梅毒検査については下記も参照
-
梅毒 血清学的検査法の比較 STS法 TPHA法(TPLA法)
続きを見る
- 参考:性感染症 診断・治療ガイドライン 2016 日本性感染症学会誌 27巻1Suppl. Page4-170のp46-47より
- 選択肢3の参考:梅毒診療ガイド 2018年 日本性感染症学会 p10 Ⅵ治療効果判定より
TPHAと呼んだ場合、狭義の意味(動物赤血球を用いた方法のみを指す)と広義の意味(TPHA・TPPA・TPLAを含めた総称)の2通りがある。本問では自動化法であり、"Tp抗原"という記載はTPLA法を指していると考えた
関連問題
-
- 2022 選択88 / 2021 選択43 / 2016 選択82 (STS法とTP法の陽転順)
- 2017 記述2(TPLA)
選択問題96:解答 2
女児だが顔面に雀卵斑が多発しており、鼻背部から切除した図33cでは真皮に腫瘍胞巣が配置し、正常結合織との間に裂隙を伴っており基底細胞癌の診断
光線過敏のエピソードを踏まえて、色素性乾皮症を疑い、本例では発達障害・神経障害がないことからC群やV型をとくに考える
診断のためにはMED測定が有用→2
色素性乾皮症の検査
- MED測定:MED低下がみられない病型(C群・E群・V型)とMED低下がみられる病型(A/B/D/F/G群)に分けられる
- DNA合成能測定:V型以外で低下
- 遺伝子検査
- 1. パッチテスト:接触皮膚炎の診断に用いる
- 2. MEDの測定:日本人で最も多いA群ではMED低下が見られるが、C群やV型ではMED低下が見られないことから鑑別に有用
- 3. 温熱発汗試験:特発性後天性全身性無汗症等の診断に用いる
- 4. 色素斑の生検:本症例の診断には直接繋がらない
- 5. TARCの測定:アトピー性皮膚炎の病勢マーカーとして用いられ、皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉症)等でも上昇する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p234〜236
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p269〜273
選択問題97:解答 3
保険診療の規定について問う問題
- 1. 真皮縫合加算は、露出部(半袖半ズボンではみ出る部位)の"創傷処理"を行った場合に加算できるが、腫瘍摘出術には加算できない
※露出部でも頭部・手掌・足底・指趾・眼瞼は認められない - 2. 局所陰圧閉鎖処置は面積により処置点数が異なる
- 3. 全層植皮術は、分層植皮術よりも(同一面積での)保険点数が高く設定されている
- 4. 熱傷処置は初回処置を行った日から2か月間算定可能。それ以降は創傷処置として算定する
- 5. センチネルリンパ節は画像上遠隔転移がなく、所属リンパ節腫大を認めない場合の悪性黒色腫・メルケル細胞癌・乳房外パジェット病(EMPD)・2cmを越える有棘細胞癌で算定可能
※EMPDは2020年から算定可能
局所陰圧閉鎖処置の保険点数
局所陰圧閉鎖処置
入院患者以外 |
保険点数 |
100cm2未満 | 240点 |
100cm2以上200cm2未満 | 270点 |
200cm2以上 | 330点 |
局所陰圧閉鎖処置
入院患者 |
保険点数 |
100cm2未満 | 1,040点 |
100cm2以上200cm2未満 | 1,060点 |
200cm2以上 | 1,100点 |
参考:第2章 特掲診療料 第9部 処置 第1節 処置料 (一般処置) しろぼんねっと
植皮術の保険点数
保険点数 | 全層植皮術 | 分層植皮術 |
25cm2未満 | 10,000点 | 3,520点 |
25cm2以上100cm2未満 | 12,500点 | 6,270点 |
100cm2以上200cm2未満 | 28,210点 | 9,000点 |
200cm2以上 | 40,290点 | 25,820点 |
参考:J089-2 全層植皮術 しろぼんねっと、K013 分層植皮術 しろぼんねっと
選択肢5の参考:K007 皮膚悪性腫瘍切除術 しろぼんねっと
関連(保険診療)
- 2023 選択54 / 2022 選択2 (センチネルリンパ節生検の適用)
- 2020 選択98 (鶏眼処置, DLST, 皮膚科軟膏処置等)
- 2019 選択100 (鶏眼胼胝処置の算定回数, 熱傷処置, 皮膚切開術の長さ等)
- 2017 選択90 (皮膚切開術の長さ, 露出部位の定義, 植皮点数等)
- 2015 選択90 (鶏眼処置, 露出部位の定義, 切開術の長さ等)
- 2013 選択82 (熱傷処置, 皮膚科軟膏処置, 皮膚科特定疾患指導料等)
選択問題98:解答 3
保険診療上、80平方センチメートルでの皮膚科軟膏処置は基本診察料に含まれ算定できない→3
- 1. 鶏眼処置は月2回まで算定可能(170点)。2018年改訂前は月1回までだった
- 2. 薬剤リンパ球刺激試験は保険請求可能(1薬剤:345点、2剤:425点、3剤以上:515点)
- 3. 100cm2以下の皮膚科軟膏処置は基本診療料に含まれ、算定できない*
- 4. ナローバンドUVB療法は、円形脱毛症に対して行った場合も保険請求可能(340点)。2020年改訂で対象疾患に追加された
- 5. デュピルマブの在宅自己注射指導を行った場合、在宅自己注射指導管理料(650点)を算定可能。導入から3ヶ月間は導入初期加算580点を加算可能。なお在宅自己注射指導管理料と皮膚科特定疾患指導管理料は同一月に算定できないため注意
*200床以上ある保険診療機関は、再診時500cm2未満の軟膏処置は外来診療料に含まれ別途請求できない(初診は100cm2以上あれば可)
ナローバンドUVB (nUVB) の保険適用疾患
保険点数は340点
- 乾癬
- 類乾癬
- 掌蹠膿疱症
- 菌状息肉症
- 悪性リンパ腫
- 慢性苔癬状粃糠疹
- 尋常性白斑
- アトピー性皮膚炎
- 円形脱毛症
- 選択肢1の参考:J057-3 鶏眼・胼胝処置 しろぼんねっと
- 選択肢2の参考:D016 細胞機能検査 しろぼんねっと
- 選択肢3の参考:J053 皮膚科軟膏処置 しろぼんねっと、A002 外来診療料 しろぼんねっと
- 選択肢4の参考:J054 皮膚科光線療法(1日につき) しろぼんねっと
- 選択肢5の参考:C101 在宅自己注射指導管理料 | しろぼんねっと
関連問題
- 2023 選択83 / 2022 選択27 / 2019 選択100 (光線療法の対象疾患)
選択問題99:解答 4
各種宣言についての問題
メジャーな3つは下記のように大きく分類される
- ヒポクラテスの誓い→(継承発展)→ジュネーブ宣言:医師自身の規範(守秘義務・人命尊重など)
- リスボン宣言:患者の権利(自己決定権・情報を知る権利など)
- ヘルシンキ宣言:研究の倫理(インフォームド・コンセントが明記)
- 1・2. 「ヒポクラテスの誓い」は古代ギリシアで制定された医師の倫理についての宣言で、守秘義務や安楽死についての記載を含む
- 3. 「ジュネーブ宣言」はヒポクラテスの誓いを現代風にアレンジしたもので、人命尊重に関する記載がある
- 4・5. 「リスボン宣言」は患者の権利について記載されており、動物実験に関する記載は含まれない
- 4. 動物実験に関する記載はヒトを対象とする研究についての宣言である「ヘルシンキ宣言」に一部含まれる*
*人間を対象とする医学研究は、科学的文献の十分な知識、その他関連する情報源および適切な研究室での実験ならびに必要に応じた動物実験に基づき、一般に認知された科学的諸原則に従わなければならない。研究に使用される動物の福祉は尊重されなければならない。
各種宣言の内容詳細については下記を参照
- 医の倫理の基礎知識 2018年版【医師の基本的責務】A-6.ヒポクラテスと医の倫理|日本医師会
- WMAジュネーブ宣言|日本医師会
- 患者の権利に関するWMAリスボン宣言|日本医師会
- ヘルシンキ宣言|日本医師会
選択問題100:解答 4
ヘルシンキ宣言について問う問題
「ヒトを対象とする研究を行うにあたり, 国際的規範を第一に考え, 自国の倫理・法律・規制より優先すべき」は不適切→4
- 1. 被験者の保護責任は常に医師またはその他の医療専門職にあり、被験者が同意を与えた場合でも、決してその被験者に移ることはない。(上記9)
- 2. 医学研究は、環境に害を及ぼす可能性を最小限にするよう実施されなければならない。(上記11)
- 3. 研究参加の結果として損害を受けた被験者に対する適切な補償と治療が保証されなければならない。(上記15)
- 4. 医師は、適用される国際的規範および基準はもとより人間を対象とする研究に関する自国の倫理、法律、規制上の規範ならびに基準を考慮しなければならない。(上記10)
- 5. 人間を対象とする医学研究の第一の目的は、疾病の原因、発症および影響を理解し、予防、診断ならびに治療(手法、手順、処置)を改善することである。(上記6)
記述問題1:解答 フェオメラニン
メラニンにはユーメラニンとフェオメラニンの2種類がある
このうち赤毛に関与するメラニンはフェオメラニン
メラニンの色 | 毛髪 | |
ユーメラニン | 黒色 | 黒毛 |
フェオメラニン | 黄色 | 赤毛 |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p11/23
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p18
関連問題
記述問題2:解答 pityriasis lichenoides et varioliformis acuta
PLEVAのフルスペルを問う問題
PLEVAの日本語は急性痘瘡状苔癬状粃糠疹で、英語ではpityriasis (粃糠疹) lichenoides (苔癬状) et varioliformis (痘瘡状) acuta (急性)となる
痂皮・潰瘍を伴う丘疹で新旧の皮疹が混在することが特徴で、組織学的に苔癬状変化(境界部皮膚炎)がみられ表皮ケラチノサイトの壊死も伴う
鑑別疾患に原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖症の一つリンパ腫様丘疹症がある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p291
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p224
関連問題
- 2012 選択79 / 2011 選択58 (PLEVAの特徴)
記述問題3:解答 壊死性遊走性紅斑
図34a〜bでは大腿部〜臀部、下腿にかけてのびらん・環状紅斑があり、中心は色素沈着となり治癒傾向がみられる
組織学的には(図34c)表皮上層の細胞内浮腫や壊死、真皮での炎症細胞浸潤がみられる
環状紅斑+血液検査の低アミノ酸血症から、壊死性遊走性紅斑の診断
壊死性遊走性紅斑
肛門周囲や陰部など間擦部・開口部に紅斑が出現し、膿疱・びらんをきたし環状に拡大する
膵グルカゴノーマに伴うデルマドロームとして知られるが、低アミノ酸血症をきたせば*飢餓や吸収不良症候群で栄養欠乏をきたした場合でも出現するため、血中グルカゴン濃度正常でも本疾患を除外できない。
また亜鉛欠乏症でも同様の皮疹・組織像をきたしえる
*グルカゴノーマではグルカゴン作用過剰のためアミノ酸が分解され糖となり、高血糖・低アミノ酸血症をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p146
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p186
関連問題
- 2018 選択79 (組織像、皮疹の好発部位など)
- 2017 選択52 (亜鉛欠乏症と組織像が類似する疾患:壊死性遊走性紅斑)
- 2014 選択47 / 2010 選択41 (基礎疾患)
記述問題4:解答 アメナメビル
帯状疱疹に対して用いられる抗ウイルス薬のうち、最も新しい薬であるアメナメビル(アメナリーフ®)は作用機序が異なる
- 旧来の薬(ファムシクロビル・バラシクロビル・アシクロビル):核酸アナログであり、ヘルペスウイルスが増殖する際に取り込まれてその増殖を抑制する
- アメナメビル:ウイルス増殖の初期で働くヘリカーゼ・プライマーゼ(DNAの2重螺旋をほどく)の活性を直接阻害する
図引用:HZ・Sフォーラム報告 第1回 帯状疱疹の新たな治療選択:アメナメビル〈新規 ヘルペスウイルス-ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬〉の創製 | マルホ 医療関係者向けサイト
関連:2021年度 記述問題3 (帯状疱疹治療の抗ウイルス薬3種類)
記述問題5:解答 陰茎結核疹
亀頭部に有痛性潰瘍が多発しており、組織像ではLanghans型巨細胞がみられることから陰茎結核疹の診断
陰茎部に限局する丘疹壊疽性結核疹*で、陰茎癌との鑑別が問題となる
*丘疹壊疽性結核疹:結核菌そのものではなく、結核菌に対するアレルギー反応が原因となる結核疹の一つ
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p550
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p829
関連問題
- 2012年 記述8 (★同一問題★)
記述問題6:解答 ニキビダニ(毛包虫)
写真は毛包虫(ニキビダニ)を示している
毛包虫
正常のヒトでも毛包内に存在するが、過剰増殖すると酒さ(丘疹膿疱型酒さ)や毛包虫性座瘡の原因となることがある
毛包虫が存在する酒さでは、メトロニダゾール(ロゼックス®)外用が有効とされる
本邦でも2022/5に酒さの効能が追加された
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p364
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p714
- 参考:新・皮膚科セミナリウム ニキビダニ症 -ヒトに寄生するニキビダニ類と関連する皮膚疾患について- 日皮会誌:131(12), 2563-2572, 2021
記述問題7:解答 再発性多発軟骨炎
臨床像では耳介の腫脹がみられ、組織学的には軟骨周囲の炎症細胞浸潤がみられる
採血上抗TypeⅡコラーゲン陽性であることも踏まえ、再発性多発軟骨炎の診断
再発性多発軟骨炎
全身の軟骨組織(TypeⅡコラーゲン*から構成される)にたいして自己免疫が生じる疾患
耳介軟骨が代表的だが、その他鼻・喉頭気管支・関節の軟骨・硝子体等でも症状をきたす
30%ほどの症例でTypeⅡコラーゲン抗体がみられ、病勢を反映する
*真皮に存在する膠原線維はTypeⅠ/Ⅲコラーゲン。TypeⅡコラーゲンは軟骨や硝子体に存在する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p213
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p421
- 参考:再発性多発軟骨炎(指定難病55) – 難病情報センター
関連問題
- 2015年 記述3 (★同一問題★)
- 2022 選択9 (再発性多発軟骨炎+Histiocytoid Sweet syndrome)
記述問題8:解答 trigeminal trophic syndrome
trigeminal trophic syndrome
脳腫瘍切除・帯状疱疹などで三叉神経領域の感覚異常が生じ、慢性的な掻爬によって難治性潰瘍をきたす疾患
鼻翼付近に好発し、基底細胞癌との鑑別が問題となる
掻爬による悪化が原因のため、患者教育や被覆材で覆うことが有効
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p228
- 参考:マルホ皮膚科セミナー 吾診から学ぶ
記述問題9:解答 環状肉芽腫
高齢男性で中心治癒傾向の辺縁が隆起した環状紅斑が多発している(図38a・b)
組織学的には(図38c・d)真皮のムチン沈着や周囲を取り囲む肉芽腫(柵状肉芽腫)がみられることから環状肉芽腫の診断
汎発型では糖尿病に合併する例が多い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p348
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p495
関連問題
- 2020 選択80 / 2019年 記述8 / 2018年 選択46 / 2012 選択43 (汎発型環状肉芽腫は糖尿病合併が多い)
- 2017年 選択61(糖尿病のデルマドローム)
- 2014 選択69 / 2010 選択34 (臨床問題)
記述問題10:解答 white forelock
KIT遺伝子変異による常染色体優性遺伝疾患はまだら症
前額部髪際でみられる症状はwhite forelockと呼ばれる
まだら症
メラノサイトの表皮への遊走に関わるKIT遺伝子の障害から白斑をきたす、常染色体優性遺伝疾患
とくに前額部〜前頭部にかけての白斑・白毛が90%以上でみられ、white forelockと呼ばれる
組織学的にはメラノサイトの消失がみられる(遊走できないため)
なおWaardenburg-Klein症候群でも同様の皮疹が見られるが、虹彩異色症や先天性難聴を伴う
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p306
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p518
- 参考・写真引用:まだら症 皮膚第23巻3号 p281-282 図1
関連問題
- 2021 選択57 / 2019 選択59 / 2017 選択51 / 2013 選択43 / 2012 選択46 / 2010 選択39 (原因遺伝子やメラノサイト数など)
- 2014 選択40 (Waardenburg-Klein症候群)
記述問題11:解答 deck-chair sign
丘疹紅皮症(太藤)では腹部などの皺の部分を避ける特徴的分布がみられ、deck-chair signと称される
丘疹紅皮症(太藤)
高齢男性に好発する、苔癬状丘疹が融合して紅皮症をきたす疾患
腹部や腋窩など皺の部分を避けるdeck-chair signと呼ばれる所見が特徴的。末梢血中の好酸球上昇やTARC高値を伴い、デュピルマブが有効という報告もある
一部で内臓悪性腫瘍や悪性リンパ腫を合併するが、ステロイド外用内服に反応性がよく予後良好
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p149
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p200
関連問題
- 2014 選択5 (悪性腫瘍のデルマドローム)
記述問題12:解答 紅色皮膚描記症
機械性蕁麻疹では先端が鈍なもので皮膚を刺激すると紅色変化がみられ、紅色皮膚描記症と呼ばれる
なおアトピー性皮膚炎では白色に変化する(白色皮膚描記症)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p77
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p104
記述問題13:解答 復帰変異モザイク
先天性皮膚疾患において、細胞の遺伝子変異が後天的に正常化する現象を、復帰変異モザイクと呼ぶ
復帰変異モザイク
すべての体細胞が変異をきたしている先天性皮膚疾患(ex. 先天性表皮水疱症)において、一部の体細胞で相同組換が生じる結果原因遺伝子が"正常に復帰"すると、その部位だけ疾患症状を呈さなくなる現象
表皮水疱症でこの現象が起こった部位は水疱形成をきたさない正常皮膚となるため、同部位を培養・移植する治療(自家培養表皮ジェイス®)が試みられている
なお魚鱗癬の一種であるichthyosis with confettiで加齢とともに正常皮膚部が増加する原因も、復帰変異モザイクで説明ができる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p580
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p269〜273
- 参考:臨床皮膚科74巻5号 最近のトピックス2020 表皮水疱症の培養表皮シートを用いた治療戦略 p109-113
- 魚鱗癬の参考:遺伝性角化症における体細胞復帰変異発生機序の解明
関連問題
- 2019 記述12(Blaschko線)
- 2016 記述7(体細胞モザイク)
記述問題14:解答 疣状黄色腫
高齢男性で自覚症状のない疣状紅色腫瘤を陰嚢部に認める。組織学的に淡明な細胞質を持つ泡沫細胞(脂質を貪食した組織球)の増殖がみられ、疣状黄色腫の診断
口腔内や口唇、外陰部に好発する黄色〜赤色調の有茎性結節をきたす疾患で、血中脂質は正常値を示す
発疹性黄色腫は高TG血症と、その他(眼瞼・腱・結節性など)は高LDL血症と関連する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p323
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p450
関連問題
記述問題15:解答 ステージⅢ
有棘細胞癌のステージを問う問題
原発巣の最大径が3cm(→T2)、2cmの単発リンパ節転移(→N1)、遠隔転移は記載なし(→M0)よりStageⅢに該当する
大まかには下記のように把握する
- StageⅠ:原発巣≦2cm
- StageⅡ:2cm<原発巣≦4cm
- StageⅢ:4cm<原発巣 and/or 単発の所属リンパ節転移(≦3cm)
- StageⅣ:原発巣の下床浸潤が強い and/or 複数ないし大型の所属リンパ節転移 and/or 遠隔転移あり
なお有棘細胞癌では原発巣が2cmを越えると、センチネルリンパ節生検が保険適用となる
厳密には下記
有棘細胞癌のTNM分類と病期分類 (UICC 第8版)
Tis | 上皮内癌 |
T1 | 最大径≦2cm |
T2 | 2cm<最大径≦4cm |
T3 | 4cm<最大径
または軽度の骨びらん、もし くは神経周囲浸潤もしくは深部浸潤 |
T4a | 肉眼的軟骨/骨髄浸潤を伴う腫瘍 |
T4b | 椎間孔への浸潤および/または椎間孔から硬膜上腔までの浸潤を含む頭蓋底または中軸骨格浸潤を伴う腫瘍 |
N0 | 領域リンパ節転移なし |
N1 | 単発性のリンパ節転移で、最大径≦3cm |
N2 | 同側の単発性リンパ節転移で、3cm<最大径≦6cm
または 同側の多発リンパ節転移で、すべて最大径≦6cm |
N3 | 単発性リンパ節転移で、6cm<最大径 |
*領域リンパ節以外への転移(対側のリンパ節への転移を含む)はM1
M0 | 遠隔転移なし |
M1 | 遠隔転移あり |
N0 | N1 | N2 | N3 | |
Tis | 0 | - | - | - |
T1 | Ⅰ | Ⅲ | ⅣA | ⅣA |
T2 | Ⅱ | Ⅲ | ⅣA | ⅣA |
T3 | Ⅲ | Ⅲ | ⅣA | ⅣA |
T4a, T4b | ⅣA | ⅣA | ⅣA | ⅣA |
M1 | ⅣB | ⅣB | ⅣB | ⅣB |
※外陰,陰茎,肛門皮膚,眼瞼,頭頸部を除く皮膚原発有棘細胞癌
- 参考:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 有棘細胞癌診療ガイドライン 2020 日皮会誌:130(12), 2501-2533, 2020
記述問題16:解答 青色母斑
ダーモスコピーでは均一の青色構造がみられ、一部で淡い白色となっている
メラノサイト増生が真皮で生じた結果であり(浅層にあれば茶褐色調)、青色母斑を考える
- 参考書籍:ダーモスコピー 超簡単ガイド 改訂第2版 p140
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p382/65
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p535
関連:2019 選択78 (青色母斑の組織像)
記述問題17:解答 色素失調症
図42(a)ではBlaschko線に沿った紅斑と水疱形成がみられ、図42(b)では組織学的に多数の好酸球浸潤がみられる点から色素失調症を考える
色素失調症(Bloch-Sulzberger症候群)
X染色体のNEMO遺伝子変異による疾患で、X染色体優性遺伝であり大部分を女児が占める
Blaschko線に沿って、出生直後から紅斑・水疱→疣贅→渦巻状色素沈着→消退し脱色素瘢痕(学童期頃)という特徴的な経過の皮疹をきたす。
眼病変(30%)や精神発達遅滞を合併する
-
色素失調症 (Bloch-Sulzberger症候群) まとめ
続きを見る
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p398
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p561
関連:色素失調症は頻出であり、上記記事参照
記述問題18:解答 尋常性疣贅
図43aでは角層過角化や表皮肥厚があり、病変部は乳頭状に隆起していることがわかる。図43bでは空胞細胞(コイロサイトーシス)がみられ、HPVウイルス感染による疾患であることが推察される
上記より尋常性疣贅(verruca vulgaris)の診断
強拡大では尖圭コンジローマと類似するが、弱拡大で尋常性疣贅は乳頭状に増殖し縦に長い病変である一方、尖圭コンジローマは丸く鈍な構造を取る
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p495
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p771
- 参考書籍:みき先生の皮膚病理診断ABC ①表皮形病変 p22/28
- 写真引用:ウイルス性疣贅(尋常性疣贅など)|電子コンテンツ|日本医事新報社
関連問題
- 2012年 記述1 (★同一問題★)
記述問題19:解答 CTLA-4
イピリムマブ(ヤーボイ®)は抗CTLA-4モノクローナル抗体として抗腫瘍効果を発揮する
CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte associated antigen-4)
T細胞表面で発現し、CD28(免疫活性化)と競合して抗原提示細胞のもつB7(CD80/CD86)と結合する
この結合によって、リンパ節にて抗原提示を受ける"誘導相"の反応を抑制する
正常のヒトでもTregでこの機構が利用されているが、とくに悪性腫瘍ではこの経路により腫瘍免疫抑制が行われている
→イピリムマブはこの結合を解除し、免疫応答を活性化させる
なおPD-1はT細胞反応の最終段階である"効果相"に関与する。腫瘍細胞はPD-L1を発現することで腫瘍特異的T細胞のPD-1と結合し、免疫反応を抑制させる
→抗PD-1抗体であるニボルマブ(オプジーボ®)やペムブロリズマブ(キイトルーダ®)はこの結合を阻害しT細胞を活性化させる
※腫瘍細胞のPD-L1発現率が高いほど、抗PD-1抗体製剤の有効性が高いと考えられている
(非小細胞性肺癌におけるペムブロリズマブはPD-L1発現率>1%でのみ保険適用)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p103
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p703
- 参考・図引用:新・皮膚科セミナリウム 免疫チェックポイント阻害剤の効果と副作用 日皮会誌:128(6), 1291-1299, 2018
関連問題
- 2016 記述9 (★同一問題★)
- 2019 選択18 (T細胞の機能抑制に関わる分子 CTLA-4, PD-1, IDO)
- 2016 選択79 (T細胞の活性化を抑制する分子:CTLA-4, PD-1)
記述問題20:解答 メタアナリシス(メタ解析)
独立した複数の施設からの研究結果をまとめ、収集・統合して解析する方法をメタアナリシスと呼ぶ
単一の研究と比較して、エビデンスレベル(研究の質)が高いとされる
研究デザインとエビデンスレベル(質の高いもの順)
Ⅰ | システマティック・レビュー/メタアナリシス |
Ⅱ | 1つ以上のランダム化比較試験 |
Ⅲ | 非ランダム化比較試験 |
Ⅳ | 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究) |
Ⅴ | 記述研究(症例報告やケース・シリーズ) |
Ⅵ | 専門委員会や専門家個人の意見 |
- メタアナリシス(メタ解析):複数の研究結果について統計的方法を用いて、効果と信頼性を算出する方法で研究結果を定量的に評価できる研究方法
- システマティック・レビュー(系統的レビュー):学術文献を系統的に検索・収集し類似した研究を選択・評価した上で、明確で科学的な手法を用いてまとめる研究方法。統計学的手法は必須ではない
- ランダム化比較試験(RCT:randomized controlled trial):介入群と対照群にランダム割り付けを行い、介入の実施後にアウトカムを観察することで介入群と対照群を比較する研究方法。
介入の効果を明らかにする上では最も優れた研究方法で、一次研究(患者・健康者を対象とした研究)においてエビデンスレベルが最も高いとされる