日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成29(2017)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会 (問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
※本記事で参考にしたのは皮膚科学 第10版ですが、11版が出ているので上記リンクは新版です
2017 選択問題1〜25の解答解説は下記
-
平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜25
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見出し
- 1 平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 26〜50
- 1.1 選択問題26:解答 2, 4
- 1.2 選択問題27:解答 2, 4 (現在は3以外全て正解)
- 1.3 選択問題28:解答 2
- 1.4 選択問題29:解答 3
- 1.5 選択問題30:解答 4
- 1.6 選択問題31:解答 2
- 1.7 選択問題32:解答 5
- 1.8 選択問題33:解答 1, 2
- 1.9 選択問題34:解答 1
- 1.10 選択問題35:4
- 1.11 選択問題36:解答 1, 2, 3
- 1.12 選択問題37:解答 3
- 1.13 選択問題38:解答 4
- 1.14 選択問題39:解答 4
- 1.15 選択問題40:解答 1, 3, 4
- 1.16 選択問題41:解答 1, 3, 4
- 1.17 選択問題42:解答 2
- 1.18 選択問題43:解答 3
- 1.19 選択問題44:解答 2
- 1.20 選択問題45:解答 1, 4
- 1.21 選択問題46:解答 2
- 1.22 選択問題47:解答 5
- 1.23 選択問題48:解答 2
- 1.24 選択問題49:解答 2, 3, 5
- 1.25 選択問題50:解答 3
平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 26〜50
選択問題26:解答 2, 4
手足口病に関する問題
手足口病
RNAウイルスであるコクサッキーウイルスA16/A10/A6型やエンテロウイルス71型が原因
数日の潜伏期間で、四肢末端や口腔粘膜のびらん・丘疹〜小水疱をきたす
特徴的な臨床像を示す原因ウイルスが存在する
- コクサッキーウイルスA6型:皮膚症状が強く、治癒後数週間して爪甲脱落を起こすことがある
- エンテロウイルス71型:無菌性髄膜炎を合併することがある
- 1. 感染症法で5類感染症定点把握疾患として指定されている(小児科定点医療機関が対象)
- 2. エンテロウイルス71型に対するワクチンが開発中だが、現時点ではない
- 3. 潜伏期間は2〜5日
- 4. ウイルスが便から長期間排泄されるため手洗いを励行するが、全身状態が安定している場合は登校可能
(出席停止措置不要) - 5. コクサッキーウイルス”A6”型による手足口病では、発症後数週間してから爪甲脱落が起こることがある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p506(3・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p782(3・5)
- 選択肢1・2の参考:手足口病とは 国立感染症研究所
選択肢4については下記参照
-
感染症の出席停止期間 学校保健安全法 【プールの可否】
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関連問題
選択問題27:解答 2, 4 (現在は3以外全て正解)
帯状疱疹ワクチンに関する問題
出題時の帯状疱疹ワクチンは小児の水痘ワクチンと同一の生ワクチン(50歳以上で摂取可能)のみであった→2, 4
現在発売されている不活化ワクチンとの比較は下記
-
帯状疱疹ワクチン 生ワクチンと不活化ワクチンの比較
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- 1. 出題当時は生ワクチンのみだが、現在は双方が存在する
- 2. 生ワクチンは小児の水痘ワクチンと同一
- 3. 帯状疱疹の発症および帯状疱疹後神経痛の抑制効果がある
- 4. 接種対象年齢は生ワクチン/不活化ワクチンいずれも50歳以上
- 5. ハイリスク患者では生ワクチンは接種不可、不活化ワクチンは可(要注意接種者)
本問では生ワクチンに限定すれば2, 4が正解だが、不活化ワクチン(シングリックス®)を含めると選択肢3以外は全て正解となりえる
関連問題
- 2022 選択11 (JAK阻害薬内服と水痘ワクチン)
- 2019 選択35(帯状疱疹生ワクチンの特徴)
選択問題28:解答 2
クロモミコーシス(黒色分芽菌症)の原因菌を問う問題
最多はFonsecaea pedrosoi→2
- 1. Sporothrix schenckii:スポロトリコーシスの原因菌
- 2. Fonsecaea pedrosoi:黒色分芽菌症の原因菌で、90%を占め最多
- 3. Nocardia brasiliensis:ノカルジア症の原因菌
- 4. Phialophora verrucosa:黒色分芽菌症の原因菌(稀)
- 5. Cladophialophora carrionii:黒色分芽菌症の原因菌(主に南米・アフリカなど国外)
真菌は再分類により従来最多とされてきたものの名称が変わっているが、書籍では反映されていない場合がある
- 選択肢1:S. schenckii→実は97%がS. globosaだった
- 選択肢2:F. pedrosoi→実は全てF. monophoraだった
なお癜風やマラセチア毛包炎の原因とされてきたM. furfurもM. globosaであったことが判明している
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p542(2・4・5)/541(1)/531(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p878(2・4・5)/875(1)/820(3)
- 選択肢5の参考:黒色真菌症(クロモミコーシス) Med. Mycol. J. Vol. 53, 225 − 231, 2012
- 名称変更の参考:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019 日皮会誌:129(13), 2639-2673, 2019のp2650
関連問題(黒色真菌症)
黒色真菌症は黒色分芽菌症と黒色菌糸症に二分される。両者の違いについては上記関連問題参照
選択問題29:解答 3
爪白癬の内服治療に関する問題
イトラコナゾールでは400mg/日を1週間内服後3週間休薬するパルス療法が行われる→3
爪白癬の治療方法については下記参照
-
皮膚真菌症 抗真菌薬のまとめ【白癬・カンジダ・爪白癬】
続きを見る
- 1. イトラコナゾール(イトリゾール®):100mg/日の連日内服は足白癬や深在性真菌症に保険適用
- 3. イトラコナゾール:400mg/日を1週間投与→3週間休薬を3回繰り返すパルス療法は、爪白癬にのみ保険適用がある
- 4・5. テルビナフィン(ラミシール®):爪白癬に対し、125mg/日を連日内服する。パルス療法は行わない
関連:爪白癬治療薬は頻出, 関連問題は上記カード内の記事参照
選択問題30:解答 4
爪囲紅斑・腫脹を認め、経過が長いことから細菌性(ひょう疽)よりカンジダ性爪囲炎を疑う
診断に有用かつ低侵襲ですぐ結果がわかるのは直接鏡検法→4
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p538
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p866
選択問題31:解答 2
ミコナゾール(フロリード®)ゲルと併用可能なのはインスリン→2
ミコナゾール(フロリード®)
口腔カンジダ症および食道カンジダ症に対して保険適用
CYP3A阻害作用を持つため、これらで代謝される薬剤の血中濃度が上昇する
併用禁忌(一部)
- ワルファリン
- トリアゾラム(ハルシオン®)
- シンバスタチン
- キニジン
- リバーロキサバン(イグザレルト®)
- ルラシドン(ラツーダ®)
- 参考:フロリードゲル 添付文書
選択問題32:解答 5
左鎖骨部で自覚症状を伴わない潰瘍があり、抗酸菌染色で赤紫色に染まる桿菌がみられることから皮膚腺病の診断
耐性菌を作らないために、多剤併用療法が基本となる→5
- 1. 真性皮膚結核の一つであり、ツベルクリン反応陽性となる。真性結核でツ反陰性となるのは粟粒結核
- 2. 肺や頚部リンパ節などの結核病変が、直接波及することで生じる。血行性波及で生じるのは粟粒結核
- 3. 皮膚組織や膿汁から培養/PCR法を行い確定診断する。喀痰検査は肺結核で行う検査
- 4. 加齢や医原性免疫能低下に伴うものが多いが、免疫能低下者でなくても生じ得る
- 5. 結核菌は増殖速度が遅いため、耐性菌予防として多剤併用療法が基本。INH +RFP+PZA+EB or SMの4剤を2ヶ月間内服し、その後INH + RFP or EBを4ヶ月間内服する*
*INH:イソニアジド, RFP:リファンピシン, PZA:ピラジナミド, EB:エタンブトール, SM:ストレプトマイシン
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p547
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p828
関連問題
選択問題33:解答 1, 2
化膿性汗腺炎に関する問題
化膿性汗腺炎
毛包が閉塞し慢性炎症を繰り返す疾患で、アポクリン腺の多い腋窩・鼠径・肛門周囲・臀部などで病変をきたす
- 広義:臀部慢性膿皮症を含めた毛包の慢性炎症性疾患の総称
- 狭義:女性の腋窩に好発するものを呼び、臀部病変は含めない(臀部病変は慢性膿皮症と呼称)
の2通りの使用方法があるが近年は広義に捉える(臀部慢性膿皮症を含んだ概念)のが一般的
日本皮膚科学会ガイドラインでの定義も広義となっている
- 1. 慢性化し再発を起こしやすく、有棘細胞癌の発生母地となりえる
- 2・3. 化膿性汗腺炎を広義の意味で解釈すれば、日本では男性優位(69%)で臀部型が多い(59%)
狭義に解釈すると、腋窩病変は成人女性に多い - 4. △糖尿病合併率は5〜20%と報告されており、本邦では18%に合併していたという報告がある
- 5. 本態は慢性炎症性疾患であり無効だが、細菌による二次感染をきたしやすくその場合は有効となる
本問では化膿性汗腺炎を広義に解釈すれば1, 2が、狭義に解釈すれば1, 3が正解選択肢となる。日本皮膚科学会のガイドラインでは広義の意味で定義されているため、1, 2が正答と考えた
選択肢4の「糖尿病合併が多い」は定義が曖昧(18%は一般成人有病率よりは高いだろう)で、他選択肢と比較して相対的に間違い選択肢と考えられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p521
(狭義の意味で化膿性汗腺炎が使用されており注意) - 参考書籍:皮膚科学 第10版 p804
(こちらも狭義の意味で使用されている) - 参考:化膿性汗腺炎診療の手引き 2020 日皮会誌:131(1), 1-28, 2021 のp4(2・3)/7(4)/10(5)
関連問題
選択問題34:解答 1
北海道で登山後、マダニ咬着部から広がる浮腫性紅斑で、ボレリアによるライム病を考える
ライム病
スピロヘータ(らせん菌)の一種である、Borreliaによる感染症で、マダニが媒介する
皮膚病変では刺し口を中心に広がる慢性遊走性紅斑があり(第1期)、その後放置すると関節炎や髄膜炎をきたす第2期、中枢神経が傷害される第3期と進行する
第4類感染症のため、診断後直ちに届出が必要
治療にはテトラサイクリン系抗菌薬(DOXY)を用いる
- 1. 病理組織検査を行い、皮膚病変からの分離培養やPCRを行うことで確定診断が可能
- 2. 特徴的な臨床像は診断に有用だが、診断"確定"の根拠としてはやや弱い
- 3. 菌血症/敗血症ではないため、血液培養では診断できない
- 4. マダニ(シュルツェマダニ:山間部や北海道に多い)によって媒介されるが、種類を同定しても診断には結びつかない
- 5. B. burgdorferiの血清抗体検査が施行可能だが、国内ではB. gariniiやB. afzeliiによるものが多くこれらは抗体検査が陰性となり診断に結びつかない場合がある
診断のアタリを付けるには選択肢2 臨床像が最も有用だが、根拠としては弱く、実際感染症法の届出基準は「病原体の検出(選択肢1)」ないし「病原体に対する抗体の検出(選択肢5)」が必要条件である。
日本ではB. burgdorferiに対する抗体検査は陰性となる場合があるため、前者が診断"確定"には最も有用と考える
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p567
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p895
関連問題
選択問題35:4
刺し口を伴い、全身の紅斑や発熱がみられる
潜伏期間が短いことや掌蹠の紅斑、小さな刺し口から、日本紅斑熱の診断
(ツツガムシ病との比較についてはリンク先参照)
重症例ではテトラサイクリン系抗菌薬のミノサイクリンに加えて、ニューキノロン(シプロフロキサシン)を投与する→4
- 1. ミノサイクリン:テトラサイクリン系抗菌薬で、日本紅斑熱およびツツガムシ病の標準的治療
- 2. アモキシシリン:ペニシリン系抗菌薬
- 3. レボフロキサシン:ニューキノロン系抗菌薬
- 4. ミノサイクリン+シプロフロキサシン:日本紅斑熱の重症例では併用療法を行う(ツツガムシ病にはニューキノロンは無効)
- 5. アモキシシリン+クラリスロマイシン:ピロリ菌除菌に用いられる
本例は発熱や炎症反応高値・肝逸脱酵素高値から重症例と考え、選択肢4を選択肢1より優先した
重症例の治療に関しては下記のように記載されている
重症例(1 日の最高体温が39°C以上の症例)ではテトラサイクリン系とニューキノロン系抗菌薬を併用するとされており(中略)この併用療法が実施された症例も少なくないが、その必要性や意義に関しては議論のあるところで、今後のエビデンスの蓄積が必要である。
-新・皮膚科セミナリウム ダニ媒介性感染症 日皮会誌:129(12), 2493-2501, 2019 p2496-
つまり選択肢1も間違いとは言い切れない部分がある
※そもそも「最も適切なもの1つ」でなく「適切なもの2つ」なら明瞭なので、問題として微妙だなというのが筆者の感想
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p570
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p894
- 参考文献:新・皮膚科セミナリウム ダニ媒介性感染症 日皮会誌:129(12), 2493-2501, 2019 のp2496
関連問題
選択問題36:解答 1, 2, 3
疥癬診療ガイドラインでの推奨治療を問う問題
生後2ヶ月以上、体重15kg未満の場合はフェノトリン/イオウ剤/クロタミトン外用が推奨されている→1, 2, 3
体重15kg以上ある場合はフェノトリン(スミスリン®)外用およびイベルメクチン(ストロメクトール®)内服が推奨度Aだが、小児・妊婦授乳婦では推奨が異なる
疥癬 患者ごとの推奨治療薬
患者分類 | 推奨薬剤 | 推奨度 |
体重15kg以上 | フェノトリン外用 | A |
イベルメクチン内服 | ||
イオウ剤外用 | C1 | |
クロタミトン外用 | ||
安息香酸ベンジル外用 | ||
生後2カ月以上 体重15kg未満の小児 |
フェノトリン外用 | C1 |
イオウ剤外用 | ||
クロタミトン外用 | ||
生後2カ月未満の乳児 | フェノトリン外用 | C1 |
妊婦 | フェノトリン外用 | C1 |
イオウ剤外用 | ||
クロタミトン外用 | ||
授乳婦 | フェノトリン外用 | C1 |
よって本問の解答は下記
- 1. イオウ剤:小児および妊婦でも利用可能
- 2. クロタミトン:小児および妊婦でも利用可能。広範囲の部位には使用しない
- 3. フェノトリン:どの対象者でも幅広く利用可能。安全性は確立していないので、十分な説明と同意が必要
- 4. イベルメクチン:15kg以上では推奨度が高いが、その他対象者では利用できない
ちなみに内服量は200μg/kgで、3mg/錠。つまり15kg/1錠に相当する - 5. 安息香酸ベンジル:15kg以上でしか利用できず、推奨度も低い
- 参考:疥癬診療ガイドライン (第3版) 日皮会誌:125(11), 2023-2048, 2015の表5 p2041
関連問題
- 2020 選択34 (フェノトリンの作用機序など)
- 2019 選択47 / 2018 選択32 (イベルメクチンの投与量/対象)
- 2016 選択25 (疥癬治療の1st choice)
選択問題37:解答 3
性器ヘルペスの再発抑制療法として、バラシクロビルが保険適用になっている→3
- 1. ビダラビン(アラセナ®):外用薬・点滴薬があるが、内服薬はない
- 2. アシクロビル(ゾビラックス®):外用薬・内服薬・点滴薬がある
- 3. バラシクロビル(バルトレックス®):内服薬のみ。年6回以上の頻度で再発する性器ヘルペスに対してのみ、500mg/日の予防内服が保険適用となっている
- 4. ファムシクロビル(ファムビル®):内服薬のみ。年3回以上再発を繰り返し一定の条件を満たす場合、1,000mg 2回内服が可能(PIT)
この用法用量は、性器ヘルペスと口唇ヘルペスに保険適用がある - 5. ガンシクロビル(デノシン®):サイトメガロウイルス感染症に対して使われる抗ウイルス薬
-
単純ヘルペス 帯状疱疹 抗ウイルス薬まとめ
続きを見る
- 参考:各種添付文書
関連:ヘルペスに対する抗ウイルス薬は頻出, 関連問題は上記カード内の記事にまとめた
選択問題38:解答 4
手指側面で角化性紅斑がみられ、筋炎と間質性肺炎を伴っていることから皮膚筋炎の診断
本例の皮疹は機械工の手と呼ばれ、抗ARS(アミノアシルtRNA合成酵素)抗体に特異的所見→4
組織学的にも不全角化がみられ、表皮変化があることがわかる
皮膚筋炎の各種自己抗体と臨床症状の特徴については下記
-
皮膚筋炎 自己抗体と臨床症状 まとめ
続きを見る
- 1. 抗SS-A抗体:シェーグレン症候群で感度が高く、診断基準にも含まれる自己抗体
- 2. 抗SS-B抗体:シェーグレン症候群で特異度が高く、診断基準にも含まれる自己抗体。陽性例で環状紅斑をきたしやすい
- 3. 抗α-フォドリン抗体:シェーグレン症候群で陽性となることがある自己抗体
- 4. 抗ARS抗体:機械工の手および慢性進行性間質性肺炎をきたす、皮膚筋炎の自己抗体。抗細胞質抗体であり、抗核抗体は陰性となる
- 5. 抗M3ムスカリン作動性アセチルコリン受容体抗体:外分泌腺特異的でシェーグレン症候群の病因に関与すると考えられている自己抗体
乾燥症状に対して用いられるサリグレン®は同受容体を刺激する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p207(4)/211(1・2)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p401(4)/419(1・2)
- 選択肢3・5の参考:皮膚科セミナリウム 第52回 シェーグレン症候群 日皮会誌:119(9), 1823―1828, 2009
関連問題
- 2014 記述4 (抗ARS抗体の正式名称:アミノアシルtRNA合成酵素)
- 2013 選択32 (同一選択肢でシェーグレン症候群と関連のないものを選ぶ問題)
- 2010 選択68 / 2009 選択31 (Mechanic's handと間質性肺炎)
選択問題39:解答 4
全身性強皮症に伴う毛細血管拡張症であり、ステロイド外用は無効→4
強皮症と毛細血管拡張症
強皮症の56%でみられ、2013年のACR/EULAR分類基準に含まれる所見
毛細血管拡張症を有すると食道病変や心病変のリスクが上がるとされる
- 斑状型
- くも状血管腫型
- ROW病型 (Rendou-Osler-Weber病)
の3型に分けられ、ROW病型(本例)は限局皮膚硬化型(lcSSc)に多く見られる
現在lcSScに含んで考えられるCREST症候群のTでもある
- C:石灰沈着 (calcinosis)
- R:レイノー現象 (Raynaud's phenomenon)
- E:食道機能不全 (Esophageal dysmotility)
- S:強指症 (Sclerodactyly)
- T:毛細血管拡張 (Telangiectasia)
- 1・2・3・4. 毛細血管拡張症であり、自覚症状はないが自然消退せず外用も無効
- 5. びまん皮膚硬化型(dcSSc)では、斑状型およびくも状血管腫型の毛細血管拡張症が多くみられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p201
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p388
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 強皮症〜血管病変から考える〜 日皮会誌:125(5), 1001-1008, 2015 のp1003
- 参考・画像引用:強皮症に伴う血管病変としての肺高血圧症
関連問題
- 2023 選択21 (CREST症候群)
選択問題40:解答 1, 3, 4
免疫複合体が関連する血管炎を問う問題
IgA血管炎が代表的だが、その他蕁麻疹様血管炎や持久性隆起性紅斑がある→1, 3, 4
血管炎 病態に基づく分類
血管炎分類で最もメジャーなChapel-Hill分類は、罹患血管の大きさ・臓器障害の範囲で分類されている
病態に基づく分類として、下記の分類が提唱されている
発症要因からみた血管炎分類 | |
免疫複合体性血管炎 | IgA血管炎 |
皮膚白血球破砕性血管炎 | |
蕁麻疹様血管炎 | |
持久性隆起性紅斑 | |
クリオグロブリン血症性血管炎 | |
ANCA関連血管炎 | 顕微鏡的多発血管炎 (MPA, Wegener) |
多発血管炎性肉芽腫症 (GPA, Churg-Strauss) |
|
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA) |
|
病的自己反応性 T 細胞が関与する血管炎 | 巨細胞性動脈炎 (側頭動脈炎) |
不明 | 結節性多発動脈炎 (PN) |
ベーチェット病 |
急速進行性糸球体腎炎(RPGN)は蛍光抗体所見によって免疫複合体型・Pauci-immune型(ANCA関連)・抗基底膜抗体型の3つに分類されるが、それと同様と考えると多少わかりやすい
- 1. IgA血管炎:IgA免疫複合体が沈着する血管炎で小児に好発する
- 2. ベーチェット病:原因不明で、様々な太さの血管で炎症が生じる血管炎
- 3. 蕁麻疹様血管炎:免疫複合体性血管炎で、持続する蕁麻疹様皮疹がみられ補体が低下することが多い
- 4. 持久性隆起性紅斑:免疫複合体性血管炎で、四肢の関節周囲に好発する
- 5. 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症:MPO-ANCA陽性となるANCA関連血管炎で、気管支喘息や好酸球増多を伴う
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p165(1)/174(2)/167(3・4)/170(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p202(1)/190(2)/208(3)/207(4)/212(5)
- 分類の参考:新・皮膚科セミナリウム 病因・病態からみた免疫複合体性血管炎 日皮会誌:125(13), 2419-2426, 2015の表1 (p2420)
関連問題
- 2019 選択52(血管炎のChaple Hill分類)
- 2011 選択38 (免疫複合体沈着がみられない血管炎)
選択問題41:解答 1, 3, 4
有痛性の外陰部潰瘍および両下腿の境界不明瞭な圧痛を伴う紅斑(結節性紅斑)からベーチェット病を疑う
ベーチェット病
急性炎症を繰り返しきたす疾患
原因不明だが、HLA-B51やHLA-A26(日本人に特有)と関連する
主要症状は下記4つ
- 再発性口腔内アフタ
- 皮膚症状(結節性紅斑様皮疹や血栓性静脈炎、痤瘡様皮疹)
- 眼症状(ぶどう膜炎)
- 外陰部潰瘍
特殊型として、消化管(とくに回盲部)・大血管・神経で症状をきたすことがある
- 1. 腹痛:消化器病変(25%)では腹痛や回盲部潰瘍をきたす
- 2. 爪変形:ベーチェット病に典型的な症状ではない。乾癬性関節炎や扁平苔癬で病変が生じ得る
- 3. 視力低下:主要症状の一つで、ぶどう膜炎・霧視をきたす。90%が両側性
- 4. 痤瘡様皮疹:代表的な皮膚症状で、注射部位に一致してみられやすい(針反応陽性)
- 5. 甲状腺機能低下:尋常性白斑や汎発性粘液水腫(non-pitting edema)と関連するが、ベーチェット病とは関連しない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p174
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p190
関連問題(ベーチェット病)
選択問題42:解答 2
両側性の眼瞼腫脹およびステロイドへの良好な反応、抗SS-A/B抗体陰性からミクリッツ病を疑う
IgG4関連疾患の一つ→2
IgG4関連疾患
血清IgG4高値*(≧135mg/dL)と臓器へのIgG4陽性形質細胞の浸潤をきたす疾患
- 涙腺:ミクリッツ病(シェーグレン症候群に類似するが自己抗体陰性)
- 膵臓:自己免疫性膵炎
- 胆道:硬化性胆管炎
が代表
皮膚では形質細胞増多症や偽リンパ腫に類似することがある
- 1. ASO:ASKと同様に溶連菌感染後に高値を示すため、結節性紅斑の診断等に用いられる
- 2. IgG4高値関連疾患では血清IgG4が高値となる
- 3. フェリチン:成人Still病やMDA5抗体陽性皮膚筋炎、血球貪食症候群で上昇し病勢を反映する
- 4. 抗Jo-1抗体:抗ARS抗体に含まれ、機械工の手や慢性進行性間質性肺炎を伴う皮膚筋炎で陽性となる
- 5. 可溶性IL-2R:成人T細胞性白血病リンパ腫や菌状息肉症で高値となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p217(2)/354(1)/214(3)/207(4)/468(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p182(1)/194(3)/401(4)/672(5)
関連問題
- 2019 選択91 (IgGと補体活性能)
- 2018 選択14 (IgG4について)
- 2017 選択12(血中IgGで多いもの)
選択問題43:解答 3
陰圧閉鎖療法の圧を問う問題
-100±20mmHg前後を目安に陰圧をかける→3
よく用いられる機械の設定は下記のようになっている
- V. A. C.®:-100±25mmHg
- PICO®:-80±20mmHg
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p109
- 各機械の数値:添付文書より
選択問題44:解答 2
熱傷における輸液療法開始目安となる受傷面積を問う問題
小児の熱傷では、受傷面積>10%を目安に輸液を開始する→2
熱傷 初期輸液
輸液開始の目安
- 小児:受傷面積>10%
- 成人:受傷面積>15%
*2024年に公開された「熱傷診療ガイドライン 第3版」では≧20%に変更されているため、今後は20%で把握しておくことを推奨
輸液量の目安:Baxter法(Parkland法)
24時間の総輸液量(mL) = 4 (mL) × 受傷面積*(%) × 体重 (kg)
*Ⅱ度+Ⅲ度熱傷でⅠ度熱傷は含まない
+小児では維持輸液を併用する
最初の8時間で総輸液量の50%を、次の16時間に残りの50%を投与する。
輸液には乳酸リンゲル液を用いる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p220
- 参考:創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―6: 熱傷診療ガイドライン 日皮会誌:127(10), 2261-2292, 2017のp2270
※2011年版でも同等の記載
関連問題
- 2023 選択22 (★同一問題★)
- 2021 記述7(輸液量計算法の名称)
- 2014 選択34 / 2012 選択37 (初期輸液の量および組成)
選択問題45:解答 1, 4
皮膚良性腫瘍で行われるopen treatmentについて問う問題
open treatment
病巣を円筒形に切除後、縫縮せずに開放創のまま創収縮・上皮化を待つ方法
上皮化するまでの間はゲンタシン®軟膏などを用いた外用処置が必要
主に顔面の良性腫瘍、とくに色素性母斑が対象となる
- 1. 縫縮により境界線偏位が生じやすい・縫縮が難しいという理由から顔面は最も良い適応
- 2. 通常は長径7〜8mmが限界で、巾着縫合を行うと10mm程度まで対応可能になる
- 3. 円形の切除にはトレパンないしメスを用いる
- 4. 術後は創が乾燥しないように、外用療法やフィルムドレッシングを用いたwet dressingを行う
- 5. 円形に脂肪織の上で切除し、開放創とする(縫合はしない)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p125(1・3・5)
- その他選択肢の参考書籍:皮膚外科学 p236
選択問題46:解答 2
四肢で水疱症の所見がみられ、各種自己抗体(Dsg1/Dsg3/BP180-NC16a)陰性かつ蛍光抗体直接法で表皮細胞間にIgGの沈着を認めることから、疱疹状天疱瘡の診断→2
疱疹状天疱瘡
掻痒感の強い環状小水疱が多発し、Duhring疱疹状皮膚炎(類天疱瘡群の一つ)に類似した皮疹を示す
Dsg1ないしDsg3に対する自己抗体が検出され、落葉状/尋常性天疱瘡に移行することがある。ただし他の天疱瘡群と比べてDsg1/3が検出される割合は50%程度と低く、デスモコリン1/3など通常の保険診療で測定できない自己抗体が陽性の例も多い
組織学的には好酸球性海綿状態が特徴で、蛍光抗体直接法にて表皮細胞間にIgG沈着がみられる
- 1. 伝染性膿痂疹:黄色ブドウ球菌の産生する表皮剥離毒素によりDsg1の結合が切断され、落葉状天疱瘡に類似する。経過の長さから否定的
- 2. 疱疹状天疱瘡:Duhring疱疹状皮膚炎に類似した小水疱が見られ、一部は落葉状/尋常性天疱瘡へ移行する。Dsgに対する自己抗体が陰性の例も多い
- 3. 尋常性天疱瘡:Dsg1/3に対する自己抗体が生じ、粘膜病変を伴う
- 4. 紅斑性天疱瘡:Dsg1に対する自己抗体が生じる落葉状天疱瘡の亜型で、顔面や頬部に皮疹を生じ蝶形紅斑や脂漏性皮膚炎に類似する。抗核抗体陽性になることがある
- 5. 後天性表皮水疱症:7型コラーゲンに対する自己抗体から表皮下水疱をきたし、水疱性類天疱瘡と類似する。蛍光抗体直接法では表皮基底膜でIgGの沈着がみられる(細胞間ではない)
本例では顔面皮疹がないこと、抗Dsg1抗体が陰性なことから疱疹状天疱瘡>紅斑性天疱瘡と考えられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p255(2)/514(1)/247(3)/253(4)/260(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p306(1・2・4)/301(3)/313(5)
- 疱疹状天疱瘡の参考:疱疹状天疱瘡の1例 皮膚科の臨床 62巻2号 p129-133
関連:2009 選択39 (好酸球浸潤が特徴の疾患)
選択問題47:解答 5
水疱性類天疱瘡との関連が指摘されているのは、DPP-4阻害薬→5
DPP-4阻害薬関連水疱性類天疱瘡(BP)の特徴
- ビルダグリプチン(エクア®)で特に多い
- 内服開始から発症までの平均期間は16〜24.1カ月と通常の薬疹より長い
- 臨床的には紅斑や浮腫に乏しい
- 通常のBPはBP180のNC16a領域に対する自己抗体が原因だが、DPP-4阻害薬関連ではBP180全長に反応する自己抗体が生じる
→一般的な検査はBP180のNC16a領域に対する反応を見るため、抗体価が低値ないし陰性となる
- 1. ビグアナイド:乳酸アシドーシスをきたすことがあり、造影CT前後で休薬が必要
関連問題
選択問題48:解答 2
Vogt-小柳-原田病の症状出現順を問う問題
脱毛や白斑は回復期に見られるため、最も遅く出現する→2
Vogt-小柳-原田病
メラノサイトに対する自己免疫から、ぶどう膜・皮膚・髄膜で炎症をきたす
時期によって異なる症状を呈する
- 前駆期:髄膜炎症状(感冒症状や頭痛発熱)や内耳症状(耳鳴・めまい)
- 眼病期(数日後):両側性ぶどう膜炎
- 回復期(数カ月後):皮膚症状(白斑・脱毛)やメラノサイト消失に伴う夕焼状眼底
よって、本問の解答は下記
- 1. 眼痛:前駆期ないし眼病期の症状
- 2. 脱毛:回復期の症状
- 3〜5. 発熱・めまい・感冒症状:前駆期の症状
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p307
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p514
選択問題49:解答 2, 3, 5
カフェオレ斑がみられる疾患を問う問題
代表的疾患はRAS/MAPK経路の異常をきたす疾患(RASopathy)→2, 3+NF1
その他McCune-Albright症候群がある→5
- 1. 色素失調症:NEMO遺伝子変異が原因のX染色体優性遺伝疾患で、Blaschko線に沿って紅斑/水疱→丘疹→色素沈着→消退という特徴的な経過の皮疹を生じる
- 2. Legius症候群:NF1類似のカフェオレ斑がみられるが、神経線維腫を伴わない疾患
- 3. LEOPARD症候群:全身の多発性黒子(L)やカフェオレ斑を伴い、その他症状の頭文字から呼ばれる
(心電図異常 E, 両眼乖離 O, 肺動脈狭窄 P, 生殖器異常 A, 成長障害 R, 難聴 D) - 4. Peutz-Jeghers症候群:口唇・口腔粘膜や四肢末端の色素沈着と消化管ポリポーシスをきたす
- 5. McCune-Albright症候群:カフェオレ斑とゴナドトロピン非依存性思春期早発症、線維性骨異形成症をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p389/398(1)/393(2)/403(3)/396(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p561(1・3)/548(2・5)/557(4)
関連問題
- 2023 選択74 / 2019 選択65 (RASopathyに含まれる疾患)
- 2021 選択68(LEOPARD症候群の症状)
選択問題50:解答 3
成人期に脱色素斑がみれる疾患を問う問題
色素失調症の色素消退期では脱色素斑が見られることがある→3
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色素失調症 (Bloch-Sulzberger症候群) まとめ
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- 1. 母斑性基底細胞癌症候群(Gorlin症候群):PTCH1遺伝子変異が原因。若年から基底細胞癌が多発し、黒褐色斑や小結節をきたす
- 2. 先天性角化異常症(Cole-Engman症候群):皮膚の網状色素沈着、爪甲変形、口腔粘膜の白板症様変化の3徴がみられる
- 3. 色素失調症(incontinentia pigmenti):水疱・紅斑→丘疹→色素沈着→消退の経過をとり4〜5歳くらいで消退しはじめるが、約半数で軽度の脱色素性瘢痕を残す
- 4. Peuts-Jeghers症候群:口唇・口腔粘膜や四肢末端の色素沈着と消化管ポリポーシスをきたす
- 5. von Hippel Lindau病:脳や網膜の血管腫・腎細胞癌などをきたす常染色体優性遺伝疾患。皮膚でも血管腫をきたすことがある(5%)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p398(3)/403(1)/405(2)/396(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p561(3)/559(1)/565(2)/557(4)/551(5)
関連:色素失調症は頻出, 関連問題は上記カード内の記事参照
選択問題51〜75は下記
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平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題51〜75
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