感染症法において届出が義務付けられている疾患についてまとめました
前半は届出が必要な疾患の中で重要なものについてまとめ、後半では皮膚科専門医認定試験の関連問題を紹介しています
感染症法における届出と皮膚科疾患
感染症の派生や流行の調査およびまん延を防ぐための対策として、感染症法で届出が義務付けられている
1〜5類に分けられ、4類までの疾患は全数把握疾患で、診断後直ちに届出が必要。5類感染症は全数把握疾患と定点把握疾患に分けられ、後者は指定医療機関のみ届出が必要
1〜4類 | 全数把握 | 診断後直ちに届出 |
5類 | 全数把握 | 診断後直ちに届出 |
診断後7日以内に届出 | ||
定点把握※ | 週又は月ごとにとりまとめて届出 |
※定点把握は小児科疾患(手足口病や伝染性紅斑)・眼科疾患(流行性角結膜炎)・性感染症(性器クラミジア)などに分類される
皮膚科で主に問題となる疾患は4類と5類が多く、大まかにはマダニやツツガムシなど媒介動物が存在するものが4類、ヒト-ヒト感染するものが5類と分類できる
なおハンセン病は現在感染症法に基づく届出義務はない(1996年に廃止されたらい予防法では診断後7日以内に都道府県知事への届出義務があった)
4類感染症
分類 | 対象疾患(一部) | 媒介動物 |
4類 | 日本紅斑熱 | マダニ |
重症熱性血小板減少症候群(SFTS) | ||
ライム病 | ||
ダニ媒介脳炎 | ||
つつが虫病 | ツツガムシ | |
デング熱 | ネッタイシマカ | |
マラリア | ハマダラカ | |
エムポックス(サル痘) | リスなど |
5類感染症
分類 | 対象疾患(一部) | 届出 |
5類全数把握疾患 | 麻疹 | 診断後直ちに必要 |
風疹 | ||
侵襲性髄膜炎菌感染症 | ||
梅毒 | 診断後7日以内に必要 | |
水痘(入院症例) | ||
AIDS(後天性免疫不全症候群) | ||
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 | ||
薬剤耐性菌による感染症(CRE, VRE, VRSA)* |
*CRE = カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症, VRE = バンコマイシン耐性腸球菌感染症, VRSA = バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症。なおMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症)は定点把握疾患
診断後の届出期間については、ヒト-ヒト感染を起こしやすいものが「直ちに」に分類されていると考えると解りやすい(例えば梅毒やAIDSは性交渉が必要なわけで、すぐにうつることは考えづらい)
分類 | 対象疾患(一部) |
5類定点把握疾患 | 水痘(非入院症例) |
手足口病 | |
伝染性紅斑 | |
ヘルパンギーナ | |
突発性発疹 | |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19) | |
性器ヘルペスウイルス感染症 | |
尖圭コンジローマ |
1〜3類感染症
皮膚科とはあまり関連しない疾患が多いが、大まかには下記のように考えられる
分類 | イメージ | 対象疾患(一部) |
1類 | 致死率が高い | エボラ出血熱 |
ペスト | ||
2類 | 呼吸器感染症 | 結核 |
SARS | ||
鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) | ||
3類 | 消化器疾患 | コレラ |
赤痢 | ||
腸管出血性大腸菌感染症(EHEC) |