皮膚科 皮膚科専門医試験対策

平成25(2013)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題76〜86 記述

2022年12月4日

2013-Specialist-4

日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成25(2013)年度解答解説を作成しました

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選択問題51〜75は下記

2013-Specialist-3
平成25(2013)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題51〜75

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見出し


平成25年度(2013年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 76〜86 記述

選択問題76:解答 2, 3, 5

脂腺の成分はトリグリセリド・スクアレン・ワックスエステルなど→2, 3, 5

脂肪酸も含まれる

  • 1. セラミド層板顆粒から分泌される角質細胞間脂質の過半数を占める。角質細胞間脂質には他にコレステロールや遊離脂肪酸(トリグリセリドが分解されて生じる)がある
  • 2・3・5. トリグリセリド・スクアレン・ワックスエステル:いずれも脂腺の成分
  • 4. カロテノイド(カロチノイド):自然界に存在する黄色または赤色色素の総称で、βカロテンやルテインなどが含まれる

選択問題77:解答 4

ヒトiPS細胞の由来を問う問題

ヒト線維芽細胞から作製されている→4

体細胞に4因子をレトロウイルスベクターで導入することで、多分化能を持つiPS細胞が樹立できる

なお山中伸弥氏はiPS細胞樹立の業績で2012年(本問題出題の前年)に、ノーベル医学・生理学賞を受賞している

関連問題

選択問題78:解答 1, 5

免疫抑制剤の作用機序を問う問題

カルシニューリン阻害薬はシクロスポリンおよびタクロリムス→1, 5

免疫抑制薬 機序と皮膚科領域での適用疾患

副腎皮質ステロイド以外の免疫抑制作用を持つ薬を、免疫抑制薬と総称する

作用機序 一般名/略号 製品名 主な適用疾患
カルシニューリン阻害薬 シクロスポリン(CyA) ネオーラル® アトピー性皮膚炎乾癬
タクロリムス(TAC) プログラフ® ループス腎炎皮膚筋炎の間質性肺炎
プロトピック® アトピー性皮膚炎
アルキル化薬 シクロホスファミド(CPA) エンドキサン® SLE
プリン代謝拮抗薬 アザチオプリン(AZA) イムラン® SLE皮膚筋炎

血管炎

(天疱瘡)

葉酸代謝拮抗薬 メトトレキサート(MTX) リウマトレックス® 乾癬関節リウマチ

*SLE = 全身性エリテマトーデス

  • 1. シクロスポリン:カルシニューリン阻害薬でヘルパーT細胞の受容体を介してイムノフィリンと複合体を形成し、転写因子の移行を阻害する。妊婦でも利用可能
  • 2. デキサメサゾン:副腎皮質ステロイドであり、NFκBを阻害することで作用する
  • 3. アザチオプリン:プリン代謝拮抗薬で、プリン塩基合成を阻害しT/B細胞増殖を抑制する。NUDT15遺伝子多型で副作用発現頻度が異なる
  • 4. シクロフォスファミド:アルキル化薬でDNAの転写・複製を阻害し、とくにB細胞増殖を抑制する
  • 5. タクロリムス:カルシニューリン阻害薬で、T細胞やLangerhans細胞の作用を抑制する

関連問題

選択問題79:解答 2, 5

「Dermatuzumab」という命名の生物学的製剤を仮定し、その特徴を問う問題

tuは腫瘍が対象なことを、zumabはヒト化型製剤を意味する→2, 5

抗体製剤 命名規則

モノクローナル抗体製剤は、抗体の由来となる動物種によって命名規則が決まっている

末尾 起源
〜omab マウス抗体 イブリツモマブ
〜ximab キメラ抗体
(定常領域はヒト, 可変領域はマウス)
インフリキシマブ
(レミケード®)
セツキシマブ
(アービタックス®)
〜zumab ヒト化抗体
(可変領域の一部のみマウス)
イキセキズマブ
(トルツ®)
〜umab 完全ヒト抗体
(マウス成分なし)
アダリムマブ
(ヒュミラ®)

※全てに共通するmabはモノクローナル抗体(monoclonal antibody)の略

2014-Monoclonalantibody

参考文献より引用, 赤がマウスで青がヒト。左へ行くほどヒト由来の成分が少ない

末尾の前につく部分は対象を意味する(tuはtumor→腫瘍など)

なお最初の部分(本問での"Derma")は固有名詞であり意味はない

マウス成分はヒトにとって異物となり、下記の様な現象が生じやすい

  • infusion reaction (注射時反応)
  • 抗薬物抗体 (→継続投与で徐々に有効性が低下する二次無効の原因)

例えばキメラ製剤セツキシマブはα-Gal感作(マダニ刺咬症)でアナフィラキシーショックを起こしやすいことが知られている

  • 1. キメラ型製剤:〜ximabとなる
  • 2. ヒト化型製剤:〜zumabとなる
  • 3. ヒト型製剤:〜umabとなる
  • 4. 皮膚疾患を対象:このような略称はない
  • 5. 腫瘍を対象:末尾の前に〜tuがつく

関連問題

選択問題80:解答 4, 5

急性GVHD(graft-versus-host disease)など移植後合併症に関する一般問題

GVHD (移植片対宿主病)

造血幹細胞移植において、移植されたドナーの血球が宿主(レシピエント, 移植を受けた側)を異物と認識して攻撃することによって生じる反応

急性と慢性に分けられる

以前は発症日時が移植後100日以内か以降かで急性/慢性を区別していたが、現在は症状による区別が重視される

ドナー細胞が生着する以前の移植後14日目までに発生するものを超急性GVHDと呼ぶ

生着症候群

移植後早期の高サイトカイン血症により、発熱・皮疹・非心原性肺水腫などをきたす症候群

下記の診断基準が提唱されている(Spitzer)

生着から96時間以内に発症し、急性GVHDを除外した上で、大基準3つ、あるいは大基準2つと1つ以上の小基準をみたすもの

大基準

  1. 非感染性の38.3℃以上の発熱
  2. 体表面積25%以上の非薬剤性皮疹
  3. 低酸素血症を伴う非心原性肺水腫

小基準

  1. ビリルビン2mg/dL以上あるいはトランスアミナーゼの2倍以上の増加
  2. クレアチニンの2倍以上の増加
  3. 2.5%以上の体重増加
  4. 原因不明の一過性脳症
  • 1. 生着症候群は高サイトカイン血症が主病態で、急性GVHDとは異なる(鑑別は重要)
  • 2・3. 脱毛や扁平苔癬様皮疹はいずれも慢性GVHDの皮膚症状
  • 4. 前処置関連毒性:前処置は強力な化学療法を行いリンパ球が死滅するので、必然浸潤も乏しい
  • 5. 超急性GVHDはそれ以外の急性GVHDと比べ、gradeⅢ〜Ⅳの皮膚GVHDが多く見られた(71% vs 50%)という報告がある
  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p160(1・2・3)
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p304(2・3)
  • 参考(選択肢5等):移植片対宿主病(GVHD)と生着症候群 臨床皮膚科68(5 増刊号), p51-53, 2014
  • 参考(生着症候群の診断基準等):造血細胞移植後皮膚病変の病理 診断病理 36(3), p153-161, 2019

関連問題

選択問題81:解答 4

ナンタ母斑は続発性骨形成を伴う母斑であり、悪性を思わせる所見はない→4

色素性母斑 特殊部位

特殊な部位*に生じる母斑は、良性だが下記のような(組織学的にメラノーマでみられる)特徴をもつ

  • 病変が非対称性で、辺縁が不明瞭
  • pagetoid spreadがみられることがある
  • maturationが欠如し、細胞異型が強いことがある
  • メラノサイトの個別性増加が多く、表皮内胞巣の多形性がある

*milk line, 外陰部, 頭頚部(特に耳)など

  • 1. Congenital melanocytic nevus(先天性色素母斑):出生時から存在しときに黒色の剛毛を伴う母斑で、悪性黒色腫の発症リスクがある
  • 2. milk line nevus:milk line*に発生する特殊部位母斑
  • 3. Atypical melanocytic nevus of genital type:外陰部や膣に発生する特殊部位母斑
  • 4. Nanta母斑:続発性骨形成を伴う母斑細胞母斑(複合型・真皮内型)
  • 5. Spitz母斑:青少年に好発し、急速に増大する。色素沈着を伴い悪性黒色腫との鑑別が問題となる。ダーモスコピーでのstarburst appearance組織でのKamino bodyが特徴

*milk line:両腋窩〜乳頭〜鼠径〜大腿内側の副乳が生じる線

Nanta母斑以外は良性の経過をとるが、悪性を思わせるdermoscopy所見や組織・細胞学的所見を示す

関連問題

選択問題82:解答 2

保険診療に関する問題

皮膚悪性腫瘍切除術の広範切除はリンパ節郭清を伴う場合のこと→2

  • 1. 第2度熱傷以上の熱傷処置は"初回の処置を行ったときから"2ヶ月間算定可能(その後は創傷処置で算定)※
  • 2. 皮膚悪性腫瘍切除術の広汎切除はリンパ節郭清を伴う場合で、伴わない場合は単純切除(K007-2)
  • 3. アトピー性皮膚炎は「16歳以上で外用療法を必要とする場合」が皮膚科特定疾患指導管理料Ⅱの算定条件
  • 4. いぼ冷凍凝固法は3箇所以下と4箇所以上で点数が異なる(210点/270点)。算定方法の記載はないため「部位」「個数」の解釈は都道府県により分かれる
  • 5. 皮膚科軟膏処置は「同一疾病またはこれに起因する病変に対して行われた場合、それぞれの部位の処置面積を合算する」。なお100平方cm未満の皮膚科軟膏処置は基本診察料に含まれ算定できない

100平方cm未満の第1度熱傷処置は基本診察料に含まれ算定できない(>100平方cmであればOK)

選択肢5について。問題文記載では「同一疾病またはこれに起因する病変」か不明なため、厳密には解答不能(例えば「下肢アトピー性皮膚炎」「臀部褥瘡」と異なる疾病であれば2箇所算定できるはず)。ただ選択肢2が明確に正解なため、相対的に誤り選択肢と考えた

選択肢4について。上述の通り病変個数か発生部位数(例えば手に尋常性疣贅が多発している場合1箇所とカウント)かは都道府県により異なるため、こちらも解答不能。選択肢2と比較すれば相対的に誤りと考えられる

関連問題

選択問題83:解答 2, 3, 4

感染症法の届出義務に関する問題

麻疹・風疹・梅毒は全例届出が必要→2, 3, 4

1〜5類に分けられ、4類までの全疾患と5類の侵襲性髄膜炎菌感染症・風疹・麻疹は直ちに届出が必要

(上記以外の届出が必要な5類疾患は7日以内でOK)

230813-infectious-diseases
感染症法に基づく医師の届出 まとめ

続きを見る

  • 1. 水痘:"入院例は"5類疾患のため、診断後7日以内に届出が必要。外来例は届出不要
  • 2・3. 麻疹・風疹:5類感染症のうち、直ちに届出が必要な疾患
  • 4. 梅毒:5類感染症で診断後7日以内に届出が必要
  • 5. 手足口病:5類感染症だが小児科定点医療機関のみ届出が必要("すべての医療機関"ではない)

関連:感染症法に基づく届出は年1問程度出題されている, 詳細は上記カード内の記事参照

選択問題84:解答 4

学校感染症の出席停止期間に関する問題

風疹は皮疹が全て消退するまで出席停止措置が必要→4

一部の感染症は学校での蔓延を防ぐため出席停止期間が定められており、法律で定まっていない部分については日本皮膚科学会を含む3学会の統一見解が出されている。詳細は下記

感染症の出席停止期間 学校保健安全法 【プールの可否】

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  • 1. アタマジラミ:出席可※
  • 2. 伝染性軟属腫:出席可だが、露出部のものはプール時に被覆/治療が必要※
  • 3. 伝染性紅斑:発熱や関節痛がなく全身状態良好であれば出席可※
  • 4. 風疹:学校保健安全法の第二種感染症であり、発疹が消失するまで出席停止(色素沈着は可)
  • 5. 手足口病:摂食不良や発熱・下痢等がなければ出席可※

※学校保健安全法の規則ではなく、学会の統一見解のみ

関連問題 上記リンク先を参照

選択問題85:解答 2, 4, 5

単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の共通点/相違点を問う問題

  • 1. 感染経路:HSVは皮膚の微小外傷や粘膜からの経皮感染で、VZVは経気道感染(空気感染)
  • 2. HSV・VZVともにα-HSV。HHV1〜3がα/4・8がγ/5〜7がβに分類される
  • 3. △初感染時にはペア血清で抗体価上昇がみられ有用だが、再発時は必ずしも見られず有用性は低い
  • 4. 多形滲出性紅斑を起こしやすい感染症はHSV(感染後1〜3週)やマイコプラズマ。VZVは稀
  • 5. Bell麻痺は顔面神経麻痺で、HSV感染症と関連する。VZVと関連するのはRamsay-Hunt症候群(後者の方が予後が悪い)

選択肢3について。血清学的診断は初感染の診断には有用だが、再発例では有用性が低いとされる。もっとも本問題文をどう読んでも「既感染において」と解釈できないわけだが…

なお本年の問題について記載された日本皮膚科学会広報誌 JDA Letter No.17 (2013年9月号)では下記のように記載されている

筆記問題85の意図は、(中略)「HSVとVZV感染症の回帰性感染を鑑別するためには、血中抗体価の変動を検査しても診断的価値は少なく、ウイルス抗原や遺伝子を調べないと真に鑑別することは難しい。」ことを問うことにありましたが、設問で用いた「有用」という言葉の重さをめぐって受験者が混乱したものと考えました。

もし、両者の鑑別に血清診断が「信頼性のある」検査と考えていたら、それは間違いです。

from - JDA Letter No.17 (2013年9月号)-

上記記載からは、本選択肢は誤り選択肢と考えられる

なお下記にリンクした2020 選択25の問題(明確な再発例)では血清学的診断が有用でないという点が再出題されている

関連問題

選択問題86:解答 3

両下腿の紫斑と、蛍光抗体直接法でIgAが血管壁に沈着している所見からIgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)の診断

消化器病変は十二指腸に好発する→3

成人例では十二指腸=小腸>結腸>胃の順番に病変(発赤やびらん潰瘍など)がみられる

小児例では腸重積合併(成人では稀)に注意が必要

関連問題

記述問題1:解答 Jarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー)反応

男性に生じた肛囲の潰瘍で、組織学的に形質細胞*の浸潤が見られることから梅毒の診断

治療開始早期にはJarisch-Herxheimer反応がみられる

*形質細胞は核周囲の明るい部分:核周明庭を伴う

Jarisch-Herxheimer反応

抗生剤により菌体が急速に破壊され生じる中毒反応で、投与開始後数時間で発熱・全身倦怠感・筋肉痛などの感冒症状や梅毒の皮膚病変増悪をきたす

通常1〜2日で自然軽快する

患者が抗生剤に対するアレルギーと考え服薬を中断しないよう、予め説明が必要。一方ある程度時間が経ってから(投与開始8日目頃〜)の皮疹増悪は、本反応でなく抗生剤に対する薬疹を考える必要がある

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p560
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p963
  • 参考:梅毒診療ガイド

関連問題

記述問題2:解答 壊疽性膿皮症

ストマ周囲で潰瘍が多発している

無菌性潰瘍であり、潰瘍性大腸炎の既往から壊疽性膿皮症を疑う

壊疽性膿皮症

主に下腿で生じ初期は痤瘡/膿疱様の皮疹だが、辺縁が堤防状に隆起した潰瘍となる。稀な病型としてストマ周囲に生じるものがある(本例)

潰瘍は無菌性で、組織学的に真皮で好中球浸潤がみられる

治療:ステロイドやシクロスポリンの他、TNF-α阻害薬が用いられる
(現在保険適用はアダリムマブ:ヒュミラ®のみ)

基礎疾患

本症は半数程度で基礎疾患に伴って発症する

潰瘍性大腸炎(46.6%)>>血液悪性腫瘍(17.2%)>関節リウマチ(19.3%)>クローン病(14.3%)>大動脈炎症候群(2.5%)
※カッコ内は基礎疾患全体における比率

関連問題

記述問題3:解答 好酸球性膿疱性毛包炎, 太藤重夫

顔面で紅色丘疹が集簇しており、組織では脂腺周囲の好酸球浸潤がみられることから好酸球性膿疱性毛包炎の診断

太藤(おおふじ)重夫氏が命名した疾患の一つ(他には病変が腹部のシワを避けるdeck-chair signが特徴の丘疹紅皮症(太藤))

好酸球性膿疱性毛包炎

顔面に好発し、無菌性の毛孔一致性膿疱が集簇して紅斑局面をきたす疾患

3つの病型に分類される

病型 特徴
古典型(太藤病) 基礎疾患を伴わず、若年男性に好発*
免疫抑制関連型 HIV感染症/AIDS等や血液悪性腫瘍に合併
小児型 乳幼児の頭皮に好発し自然治癒する

*古典型は以前は男性に多いとされていたが、近年の調査では男女比がほぼ同等とされる

  • 組織:毛包・脂腺への好酸球浸潤、毛包破壊が特徴
  • 治療:インドメタシンが著効する

本症では炎症細胞にプロスタグランジン(PG)D2が過剰発現している。COX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害することでPGD2の産生を抑制する(これはNSAIDsに共通の作用)

またインドメタシンは好酸球遊走因子産生を抑制する作用も併せ持つため、ダブル効果で有効性が高いと考えられている

なおインドメタシンカプセルは現在販売中止となっており、代替にインドメタシンファルネシル(インフリー®)等が用いられる

太藤重夫氏が亡くなったのは出題前年の2012/10/18であったとのこと(享年94歳)で、この出題に繋がったと思われる

関連問題(好酸球性膿疱性毛包炎)

記述問題4:硬化性(萎縮性)苔癬

高齢女性の外陰部で白色の萎縮性変化がみられ、組織では表皮突起の消失や真皮上層の浮腫・リンパ球浸潤がみられる

硬化性萎縮性苔癬を疑う

硬化性萎縮性苔癬

主に外陰部で、白色丘疹→集簇して局面を形成→萎縮・皮膚硬化という経過を取る

組織:表皮萎縮や真皮上層の著明な浮腫・膠原線維の均質化などが特徴

女性に圧倒的に多く、10歳以下と中年以降の二峰性に発症する

外陰部では数%で有棘細胞癌に進展することがある

病名については「硬化性萎縮性苔癬」が以前から使われてきたが、必ずしも萎縮を伴わないため近年では「硬化性苔癬」と呼ばれることが多い。本問ではどちらでも正解であったと思われる

関連問題(硬化性苔癬)

記述問題5:解答 (多発性)脂腺嚢腫

胸部・上肢にやや黄色の小結節が多発している。組織では嚢腫壁に脂腺が開口する像がみられ、多発性脂腺嚢腫の診断

2022-Steatocystoma-multiplex

参考文献より引用, 脂腺が開口する像がみられる

ケラチン17遺伝子変異例では多発し、先天性爪甲肥厚症を伴うことが知られる

関連問題(多発性脂腺嚢腫)

記述問題6:解答 皮溝並行パターン (parallel furrow pattern)

細い皮溝部に平行な色素沈着が見られ、皮溝並行パターン(parallel furrow pattern)の像

2018-Parallel-ridge-pattern

参考サイトより引用, 左が皮溝一致・右が皮丘一致

良性の色素性母斑を示唆する所見

手掌足底のメラノサイト病変 ダーモスコピー所見

手掌足底は皮丘・皮溝に分けられる

原則は皮丘部に一致した色素沈着=悪性黒色腫を示唆する所見

色素性母斑
(母斑細胞母斑)
悪性黒色腫
(メラノーマ)
色素沈着部位 皮溝 皮丘
ダーモスコピー所見 parallel furrow pattern parallel ridge pattern
皮溝並行パターン 皮丘並行パターン

ただし皮溝並行パターンのうち、一部の亜型では皮丘部にも色素沈着を伴う場合がある

この場合、色ムラや全体構築から良悪性を判断する必要がある

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関連問題

記述問題7:解答 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

高齢女性の下腿で紫斑・潰瘍が多発し、組織では出血像と血管周囲の好酸球浸潤がみられる

気管支喘息の先行や多発単神経炎の合併から、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)を考える

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

ANCA関連血管炎の一つ

気管支喘息やアレルギー性鼻炎が発症の数年前から先行

→その後末梢神経障害や下腿潰瘍などの血管炎症状をきたす

治療はステロイドやIVIgの他、IL-5(好酸球遊走に関与)のモノクローナル抗体製剤メポリズマブ(ヌーカラ®)が保険適用

以前はChurg-Strauss症候群やアレルギー性肉芽腫性血管炎と呼ばれていたが、2012年の国際会議で名称が変更され現在はEGPAの表記が一般的(本問出題時の2013年は移行期なのでどちらの記載でも正解だったと思われる)

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p170
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p222

関連問題(EGPA)

  • 2022 選択29 (メポリズマブが保険適用)
  • 2016 選択31 / 2010 選択27 (EGPAはMPO-ANCA陽性)
  • 2011 選択37 (EGPAの症状:気管支喘息, 末梢血好酸球増加, 末梢神経障害)
  • 2010 選択62 (EGPAの末梢神経障害はIVIgが保険適用)

記述問題8:解答 光沢苔癬

女児の体幹で黄白色の丘疹が多発しており、組織では液状変性を伴う肉芽腫性病変がみられることから光沢苔癬を考える

光沢苔癬

若年者に好発し、表面平滑で光沢を伴う丘疹が多発し扁平苔癬の亜型と考えられている

2013-Lichen-Nitidus-1

参考文献より引用, 1〜2mmの光沢丘疹が多発する

自覚症状はないが、50%の症例でKöebner現象がみられる

組織:Langhans型巨細胞などからなる細胞浸潤が特徴で、液状変性*もみられる

*液状変性:表皮基底膜部〜真皮浅層の炎症所見で扁平苔癬の特徴

2013-Lichen-Nitidus-2

参考文献より引用, 真皮乳頭部で巨細胞を伴う苔癬様変化がみられる

予後は良好で、数ヶ月〜数年で自然治癒する

関連問題

  • 2020 選択17 (光沢苔癬ではLanghans型巨細胞がみられる)
  • 2017 選択18 (Köebner現象や予後、好発年齢など)

記述問題9:解答 腱鞘巨細胞腫

手指の皮下結節であり、組織では巨細胞が増殖する像がみられる

腱鞘巨細胞腫の診断

臨床像は直径数mm〜3cm程度で、硬く正常皮膚色となる

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p435
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p662

記述問題10:解答 Touton(ツートン)型巨細胞

黄色肉芽腫の病理

巨細胞がみられ、周囲に明るい細胞質(脂肪を貪食した組織球)がみられることからTouton型巨細胞と判断できる

巨細胞は組織球に由来し、下記3つに分類される

名称 特徴 代表疾患
異物型巨細胞 核の配列が不規則 外傷など
ラングハンス型巨細胞 核が周辺に規則正しく配列 サルコイドーシス, 光沢苔癬, 結核
Touton型巨細胞 核周囲に泡沫状の明るい細胞質 黄色肉芽腫, 黄色腫
2013-Giantcell

参考書籍 p47 図2.22より引用

黄色肉芽腫は免疫染色にてCD68+ S100-となることも重要

  • 参考・図引用:あたらしい皮膚科学 第3版 p47/436
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p64/692

関連問題

  • 2011 選択79 / 80 (黄色肉芽腫の診断とTouton型巨細胞、本問と同一の写真)

記述問題11:解答 皮膚線維腫

病理診断名を問う問題

真皮で太い膠原線維や紡錘形細胞が増殖する像がみられ、皮膚線維腫の診断

皮膚線維腫

太い膠原線維の増生や線維芽細胞・組織球の増殖が特徴

また基底層でのメラニン沈着により、臨床的に褐色調にとなりダーモスコピーでも色素ネットワークとしてみえる(通常色素ネットワークをきたすのはメラノサイト系病変なので、皮膚線維腫は特殊)

一方悪性疾患である隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)では膠原線維が乏しいCD34(DFSPでは陽性, 皮膚線維腫では陰性)も鑑別に重要

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p431
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p658

関連問題(皮膚線維腫の病理)

記述問題12:解答 血管肉腫

高齢男性の頭部に生じた紅色結節で、異型細胞の増殖がみられ血管構造が目立つことから血管肉腫の診断

免疫染色ではCD31, CD34, D2-40などが陽性となる

再発や遠隔転移(肺転移)をきたしやすい悪性腫瘍

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p462
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p689

関連問題

記述問題13:解答 神経線維腫

腹部に生じた柔らかい皮膚腫瘍

境界明瞭な皮下結節で、紡錘形の核を持つ細胞が増生し間質に膠原線維が錯綜することから神経線維腫の診断

その他神経線維腫の病理について、重要な知識は下記

関連問題

記述問題14:解答 顆粒細胞腫

大型で好酸性顆粒(細胞質が明るい)を持つ細胞の増殖が見られることから、顆粒細胞腫の診断

顆粒細胞腫

シュワン細胞由来で、皮膚や口腔・消化器に生じる3cm未満の小腫瘤

皮膚以外に外陰部や舌・肺など様々な部位に生じる

組織学的に胞体が明るく好酸性の顆粒を含む腫瘍細胞がみられ、S-100やNSE陽性となる

有痛性腫瘍(ANGEL)の一つでもある

  • 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p421
  • 参考書籍:皮膚科学 第11版 p738

関連問題(顆粒細胞腫)

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