皮膚科 皮膚科専門医試験対策

アトピー性皮膚炎 サイトカインと生物学的製剤、JAK阻害薬について

2023年1月9日

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アトピー性皮膚炎に関わるサイトカインや治療薬(生物学的製剤・JAK阻害薬)についてまとめました

前半では各種サイトカインや病態・治療薬についてを、後半では関連する皮膚科専門医試験の問題・解答を紹介します

近年治療薬の開発が進み、それに伴い試験での出題頻度も増加している重要項目です

アトピー性皮膚炎 サイトカインと新規治療薬 (生物学的製剤・JAK阻害薬)

アトピー性皮膚炎に関わるサイトカイン

アトピー性皮膚炎に関わるサイトカインで重要なものは下記3つに分類される

(2型サイトカインを分泌する細胞はTh2細胞以外にILC2:2型自然リンパ球という細胞もある)

2型サイトカイン:IL-4/13/31

サイトカイン 役割
IL-4 掻痒感, フィラグリン発現低下
IL-5 好酸球遊走※
IL-13 掻痒感, フィラグリン発現低下
IL-31 掻痒感

※IL-5は掻痒感への関与は(相対的に)少ないとされる

フィラグリン

角層で発現する蛋白で、表皮バリアの形成に重要な役割を果たすためフィラグリン発現低下=皮膚バリア機能低下となる

  • 前駆蛋白質:プロフィラグリンはケラトヒアリン顆粒(下図)として表皮顆粒層に存在
  • 代謝産物:アミノ酸(天然保湿因子 NMF)として保水や紫外線吸収を行う
230109-Keratohyalin

参考サイトより引用, △がケラトヒアリン顆粒

画像引用:9-1.C.1 図1はヒト表皮角層周辺の透過型電子顕微鏡写真である。正しいのはどれか。 | 皮膚科専門医試験勉強されている方、皮膚病、皮膚に関心のある方のためのブログ!!!

ケラチノサイトから分泌されるサイトカイン:IL-33, TSLP

IL-25・IL-33・TSLP

バリア機能の障害されたケラチノサイトからは、これらのサイトカインが分泌される

これらのサイトカインはTh2細胞を誘導する(=引いては上述の2型サイトカイン分泌を増加させる)作用を持つ

TARC (thymus and activation-regulated chemokine)

TARC

活性化した樹状細胞やLangerhans細胞から分泌され、Th2細胞の遊走を活性化する(=引いては上述の2型サイトカイン分泌が増加する)

別名CCL17とも呼ばれ、CCR4がその受容体となる

TARCはアトピー性皮膚炎の病勢マーカーとして、好酸球やLDHより鋭敏で保険適用で測定可能。年齢毎に基準値が異なる

年齢 基準値 (pg/mL)
6ヶ月〜12ヶ月未満 <1,367
1〜2歳未満 <998
2〜15歳 <743
成人 <450

ただしアトピー性皮膚炎だけでなく、下記疾患でも高値となるため注意が必要

  • T細胞リンパ腫 (菌状息肉症など)
  • 薬剤性過敏症症候群(DIHS)
  • 水疱性類天疱瘡
  • 丘疹紅皮症 (太藤)

CCR4

抗CCR4抗体モガムリズマブ(ポテリジオ®)は、下記疾患に保険適用となっている

  • CCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫
  • 再発又は難治性のCCR4陽性の末梢性T細胞リンパ腫
  • 再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫

これらのサイトカイン関連をまとめた図が下記となる

2019-ADIL

参考文献より引用

皮膚科学

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アトピー性皮膚炎 生物学的製剤

特定の分子をターゲットとした抗体製剤を生物学的製剤と呼ぶ

2型サイトカインに対する生物学的製剤は既に複数使用されている

ターゲット 一般名 商品名 発売年
IL-4, IL-13 デュピルマブ デュピクセント® 2018
IL-13 トラロキヌマブ アドトラーザ® 2023
(予定)
レブリキズマブ
IL-31 ネモリズマブ ミチーガ® 2022
IL-5 メポリズマブ ヌーカラ® 2016※

※メポリズマブは気管支喘息および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)に保険適用だが、アトピー性皮膚炎での皮疹や掻痒に対する効果は証明されていない

一方ケラチノサイトから分泌されるサイトカインに対する製剤で、保険適用のものはない(アトピー性皮膚炎に対して, 国内で)

アトピー性皮膚炎 JAK阻害薬

生物学的製剤は細胞表面にあるサイトカイン受容体に働きかける一方、サイトカインの細胞内でのシグナル伝達に関わるJAK-STAT経路を阻害するのがJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬

生物学的製剤との主な違いをまとめると下記のようになる

生物学的製剤 JAK阻害薬
ターゲット 原則1種類のサイトカイン

細胞表面のサイトカイン受容体

複数のサイトカイン

細胞内のシグナル伝達

分子量 大きい 小さい
用法 定期的な注射 連日の内服・外用

JAKには4種類(JAK1〜3, TYK2)あり、とくにJAK1やJAK2が2型サイトカインの細胞内シグナル伝達に関与する

230109-ADJAK

参考サイトより引用

内服薬として、アトピー性皮膚炎では下記3種類が保険適用となっている

一般名 バリシチニブ ウパダシチニブ アブロシチニブ
製品名 オルミエント® リンヴォック® サイバインコ®
承認(アトピー性皮膚炎) 2020 2021 2021
阻害するJAK JAK1, JAK2 JAK1 JAK1
対象患者 成人
(15歳以上)
12歳以上
かつ30kg以上
12歳以上
用法容量 4mg 15mg 100mg
増量減量 2mgに減量可能 30mgに増量可能 200mgに増量可能
そのほか主な適用疾患 円形脱毛症
関節リウマチ
関節症性乾癬
関節リウマチ
-

一方外用薬としてはデルゴシチニブ(コレクチム®)があり、これは4種のJAK全てを阻害する作用を持つ

用法用量は1日2回で、1回あたりの塗布量は5gまでとなっている。2歳以上で利用可能

皮膚科専門医認定試験 過去問 関連問題

問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会

2022年 選択問題29

2022年 選択問題29

27歳女性。既往にアレルギー性鼻炎がある。6か月前より、下腿に紫斑が出現した。次第に症状は増悪し、手指足指に壊死を伴うようになった(図19a、図19b)。下腿の病理組織像を示す(図19c、図19d)。最も考えられる疾患に、保険適用がある生物学的製剤を選べ。

  1. Rituximab
  2. Belimumab
  3. Anifrolumab
  4. Omalizumab
  5. Mepolizumab

解答:4

アレルギー性鼻炎の既往を持つ血管炎から好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の診断

保険適用があるのはIL-5抗体製剤のメポリズマブ(ヌーカラ®)

2022年 選択問題48

2022年 選択問題48

アトピー性皮膚炎の病態に関与する次のサイトカインのうち、病変部の表皮細胞より産生されるものはどれか。2つ選べ。

  1. Interleukin-4 (IL-4)
  2. Interleukin-13 (IL-13)
  3. Interleukin-31 (IL-31)
  4. Interleukin-33 (IL-33)
  5. Thymic stromal lymphopoietin (TSLP)

解答:4, 5

IL-33とTSLP以外はTh2細胞から産生される

2022年 選択問題80

2022年 選択問題80

成人アトピー性皮膚炎(15歳以上)に使用が限られる薬剤はどれか。2つ選べ。

  1. バリシチニブ
  2. デュピルマブ
  3. シクロスポリン
  4. ウパダシチニブ
  5. 0.5%デルゴシチニブ軟膏

解答:1, 2

バリシチニブ(オルミエント®)とデュピルマブ(デュピクセント®)は15歳以上のみ

JAK阻害薬でもウパダシチニブ(リンヴォック®)は12歳以上となっている

2022年 選択問題87

2022年 選択問題87

JAK-STAT signalを介さないサイトカインはどれか。

  1. IL-4
  2. IL-13
  3. IL-17
  4. IL-23
  5. IL-31

解答:3

IL-17はJAK-STAT経路による直接の制御を受けない

2型サイトカイン(IL-4/13/31)はJAK1とJAK2が関与する

(主に乾癬に関わる)IL-12やIL-23はJAK2とTYK2が関与する

参考:アレルギー用語解説シリーズ JAKキナーゼ アレルギー 67(2), p157-158, 2018

2021年 選択問題10

2021年 選択問題10

フィラグリンとその分解産物について誤っているのはどれか.

  1. 紫外線防御に関与する.
  2. 角層の水分保持に重要である.
  3. 角層のpH維持(弱酸性)に重要である.
  4. 2型サイトカインによりケラチノサイトからの産生が増加する.
  5. 前駆タンパク質であるプロフィラグリンはケラトヒアリン顆粒の主要な構成成分である.

解答:4

アトピー性皮膚炎では2型サイトカインの作用でフィラグリン発現が低下する

解説詳細はリンク先:2021 選択10

2021年 選択問題17

2021年 選択問題17

Dupilumabが作用する主要なサイトカインを2つ選べ.

  1. IL-4
  2. IL-5
  3. IL-13
  4. IL-17
  5. IL-22

解答:1, 3

デュピルマブ(デュピクセント®)のターゲットはIL-4/13

解説詳細はリンク先:2021 選択17

2021年 選択問題28

2021年 選択問題28

バリシチニブが阻害するのはどれか.

  1. JAK1.
  2. JAK2.
  3. JAK1. JAK2.
  4. JAK1. JAK2. JAK3.
  5. JAK1. JAK2. JAK3. TYK2.

解答:3

バリシチニブ(オルミエント®)はJAK1/2を阻害する

解説詳細はリンク先:2021 選択28

2020年 選択問題8

2020年 選択問題8

フィラグリンの発現を低下させるサイトカインはどれか.

  1. GM-CSF
  2. INF-γ
  3. IL-13
  4. IL-17
  5. TNF-α

解答:3

2型サイトカインであるIL-13はフィラグリン発現を低下させる

解説詳細はリンク先:2020 選択8

2020年 選択問題12

2020年 選択問題12

Th2細胞について正しいのはどれか.

  1. IL-13を産生する.
  2. IL-33受容体の発現はほとんどみられない.
  3. IFN-γを産生し, 抗ウイルス作用に関与する.
  4. IL-12の刺激によりナイーブT細胞より分化誘導される.
  5. 細胞障害性T細胞を活性化させることで抗腫瘍免疫に作用する.

解答:1

Th2細胞はIL-13等の2型サイトカインを分泌する

またケラチノサイトから分泌されるIL-33の受容体を持ち、同刺激によって活性化される

解説詳細はリンク先:2020 選択12

2020年 選択問題21

選択問題21

TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)が高値となる疾患はどれか. 3つ選べ.

  1. 菌状息肉症
  2. 丘疹紅皮症(太藤)
  3. 毛孔性紅色粃糠疹
  4. 中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis)
  5. 薬剤性過敏症症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome)

解答:1, 2, 5

TARCが上昇するアトピー性皮膚炎以外の疾患として、菌状息肉症やDIHS、丘疹紅皮症(太藤)がある

同じ薬疹でもTENでは上昇しないため、鑑別に有効とされる

解説詳細はリンク先:2020 選択21

2019年 選択問題4

2019年 選択問題4

角層には天然保湿因子(natural moisturizing factor)が含まれている. その主成分はどれか.

  1. 乳酸
  2. セラミド
  3. アミノ酸
  4. 分泌型IgA
  5. 低級脂肪酸

解答:3

天然保湿因子(NMF)はフィラグリンの分解産物であり、アミノ酸から構成される

解説詳細はリンク先:2019 選択4

2019年 選択問題17

2019年 選択問題17

アトピー性皮膚炎の痒みに直接関与すると考えられているサイトカインはどれか. 3つ選べ.

  1. IL-4
  2. IL-5
  3. IL-13
  4. IL-31
  5. IL-36

解答:1, 3, 4

2型サイトカイン、とくにIL-4/13/31は痒みに直接関与する

IL-5も2型サイトカインだが掻痒感への関与は限局的

解説詳細はリンク先:2019 選択17

2019年 選択問題21

2019年 選択問題21

アトピー性皮膚炎の病変部ケラチノサイトから産生されるサイトカインはどれか. 2つ選べ.

  1. IL-4
  2. IL-5
  3. IL-13
  4. IL-33
  5. TSLP (Thymic Stromal Lymphopoietin)

解答:4, 5

ケラチノサイトから分泌されるサイトカインはIL-33とTSLPが代表

解説詳細はリンク先:2019 選択21

2018年 選択問題11

2018年 選択問題11

インターロイキン-5が作用する主な細胞はどれか.

  1. T細胞
  2. B細胞
  3. 好中球
  4. 好酸球
  5. 肥満細胞

解答:4

IL-5は2型サイトカインの一種で、好酸球遊走に関与する

解説詳細はリンク先:2018 選択11

2017年 選択問題14

2017年 選択問題14

リンパ球の皮膚への遊走に関与し, 皮膚T細胞性リンパ腫や抑制性T細胞に高率に発現するケモカイン受容体はどれか.

  1. CCR2
  2. CCR4
  3. CCR5
  4. CCR7
  5. CCR9

解答:2

CCR4はTARCの受容体であり、皮膚T細胞リンパ腫でも高発現していることが知られている

このため治療薬としてCCR4阻害薬モガムリズマブが用いられる

解説詳細はリンク先:2017 選択14

2016年 選択問題77

2016年 選択問題77

分子標的薬と疾患の組み合わせで保険適用があるのはどれか.

  1. Ipilimumab - squamous cell carcinoma
  2. Cetuximab - basal cell carcinoma
  3. Vemurafenib - dermatofibrosarcoma protuberans
  4. Bevacizumab - angiosarcoma
  5. Mogamulizumab - adult T-cell leukemia/lymphoma

解答:5

抗CCR4抗体製剤モガムリズマブ(ポテリジオ®)は成人T細胞白血病/リンパ腫に保険適用

解説詳細はリンク先:2016 選択77

2016年 記述問題2

2016年 記述問題2

Th2ケモカインであるTARC (T○○○○○ and activation-regulated chemokine)の「T」は何の略か. 英語で記せ.

解答:(t)hymus

解説詳細はリンク先:2016 記述2

2015年 選択問題18

2015年 選択問題18

アトピー性皮膚炎の痒みと関係の深いサイトカインはどれか.

  1. IL-2
  2. IL-4
  3. IL-12
  4. IL-23
  5. IL-31

解答:5

IL-4/13/31全てが関与するが、1つのみを選択する場合は(その他への関与が乏しい)IL-31を選択するのが妥当

解説詳細はリンク先:2015 選択18

2015年 選択問題43

2015年 選択問題43

アトピー性皮膚炎に関与する「表皮細胞」が主に産生するサイトカインはどれか.

  1. IL-4
  2. IFN-γ
  3. TSLP
  4. IL-13
  5. IL-31

解答:3

ケラチノサイトが産生するのはTSLP

Th2細胞が産生するのはIL-4/13/31

解説詳細はリンク先:2015 選択43

2015年 選択問題63

2015年 選択問題63

モガムリズマブが標的としている分子はどれか.

  1. CCL17
  2. CCR4
  3. CD4
  4. IL-2
  5. TLR4

解答:2

モガムリズマブの標的分子はCCR4

一方リガンドがCCL17(TARC)

解説詳細はリンク先:2015 選択63

2012年 選択問題77

2012年 選択問題77

アトピー性皮膚炎の短期的病勢を反映する検査値はどれか。3つ選べ。

  1. 血清TARC値
  2. CRP値
  3. 末梢血好酸球数
  4. 血清総IgE値
  5. 血清LDH値

解答:1, 3, 5

TARCは短期的病勢評価に最も鋭敏な指標。好酸球数やLDHも鋭敏さには劣るが、短期的病勢マーカー

一方IgEも高値となるが、短期的な病勢変化は反映しない(長期コントロールの指標)

 

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