日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成24(2012)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
選択問題26〜50は下記
-
平成24(2012)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題26〜50
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見出し
- 1 平成24年度(2012年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 51〜75
- 1.1 選択問題51:解答 3, 5
- 1.2 選択問題52:解答 5
- 1.3 選択問題53:解答 1
- 1.4 選択問題54:解答 1, 4
- 1.5 選択問題55:解答 3, 4
- 1.6 選択問題56:解答 1, 2, 5
- 1.7 選択問題57:解答 3, 5
- 1.8 選択問題58:解答 3
- 1.9 選択問題59:解答 4
- 1.10 選択問題60:解答 2
- 1.11 選択問題61:解答 5
- 1.12 選択問題62:解答 3
- 1.13 選択問題63:解答 2
- 1.14 選択問題64:解答 3, 5
- 1.15 選択問題65:解答 2, 5
- 1.16 選択問題66:解答 3
- 1.17 選択問題67:解答 2
- 1.18 選択問題68:解答 5
- 1.19 選択問題69:解答 1, 5
- 1.20 選択問題70:解答 1, 2
- 1.21 選択問題71:解答 2
- 1.22 選択問題72:解答 5
- 1.23 選択問題73:解答 2
- 1.24 選択問題74:解答 1, 2
- 1.25 選択問題75:解答 4
平成24年度(2012年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 51〜75
選択問題51:解答 3, 5
血管性浮腫に関する問題
血清補体C4↓C3→となることが多く、発作予防にトラネキサム酸が用いられる→3, 5
- 1. 遺伝性血管性浮腫ではC1インヒビター活性の低下が見られることが多い
- 2. ACE阻害薬はブラジキニンを不活性化する酵素キニナーゼIIを阻害し、薬剤性血管性浮腫の原因となりえる
- 3. 遺伝性血管性浮腫では血清補体C4低下が多くの場合みられ、スクリーニング検査として有用。C3は正常が多い
- 4. 組織では真皮下層〜皮下脂肪組織の浮腫が特徴。”蕁麻疹様血管炎”では白血球破砕性血管炎(leukocytoclastic vasculitis)がみられる
- 5. 発作の長期予防としてトラネキサム酸や蛋白同化ホルモン(ダナゾール®)が用いられる
遺伝性血管性浮腫 病型分類
遺伝性血管性浮腫(HAE)は3型に分類され、C1インヒビター(C1-INH)の活性/蛋白量や補体C4濃度によって分類される
1型 | 2型 | 3型 | |
補体C4 | 低下 | 低下 | 正常 |
C1-INH活性 | 低下 | 低下 | 正常 |
C1-INH蛋白量 | 低下 | 正常〜上昇 | 正常 |
疫学的には1型が85〜90%、2型が15%程度で3型は稀
C4は3型以外で(発作時も非発作時も)低下し、保険適用で測定可能なためスクリーニングで測定される
選択肢3について。3型ではC4低下が見られないので微妙なところだが、HAEで多くを占める1型・2型ではC4↓となるため正解選択肢と考えられる。選択肢1についても2型であればC1-INH蛋白量が増加してもおかしくないが、その他選択肢と比較すれば誤り選択肢として設定されたものと考えられる。
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p133(1・2・5)/167(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p177(1・2)/218(4)
- 参考:遺伝性血管性浮腫 診療ガイドライン 改訂2019年版 補体57(1), 2020
- 参考(C3値):武田薬品 遺伝性血管性浮腫>血管性浮腫の鑑別手順とポイント
関連問題(血管性浮腫)
- 2022 選択60 / 2021 選択64 / 2019 選択63 (急性発作時の治療)
- 2023 選択60 / 2020 選択87 (薬剤性血管性浮腫の原因, ACE阻害薬の作用部位)
- 2023 選択32 / 2016 選択51 / 2013 選択49 / 2009 選択61 (原因, 病態など)
選択問題52:解答 5
食物アレルギーに関する一般問題
納豆アレルギーは通常の大豆アレルギーと比較して摂取から症状発現までの時間が長い→5
- 1. モモの口腔アレルギー症候群 OAS (花粉-食物アレルギー症候群 PFAS)はハンノキやシラカンバで感作されることが原因
- 2. 魚アレルギーの主要アレルゲンはパルブアルブミン
- 3. FDEIA*の原因食物はコムギが6割を占め最多で、エビ・カニ等の甲殻類は10%程度で2位(全年齢)。小児では甲殻類の比率が高いという報告がある
- 4. FDEIAではNSAIDs投与やアルコールにより発作が誘発されやすくなる
- 5. 納豆アレルギーは摂取後5〜14時間経過してからの遅発性アナフィラキシーをきたす。納豆に含まれるネバネバ成分、PGA*が原因となるが消化に時間がかかるため
*FDEIA:食物依存性運動誘発性アナフィラキシー, PGA:ポリガンマグルタミン酸
- 選択肢1・2の参考:食物アレルゲンコンポーネント コンポーネントを知るとアレルギーが面白い アレルギー 67(8), p996-1002, 2018
- 選択肢3・4の参考:特殊型食物アレルギーの診療の手引き 2015のp2-3
- 選択肢3の参考(小児の原因食物):小児における食物依存性運動誘発アナフィラキシーの誘発試験に関する検討 千葉医学 94:1〜8, 2018
- 選択肢5の参考:動物と経皮感作型食物アレルギー 日皮会誌:131(3), 491-497, 2021
関連問題
- 2022 選択32 / 2020 選択52 / 2019 選択64 / 2018 記述6 (PR-10によるPFASと原因樹木・コンポーネント)
- 2013 選択49 / 2010 選択59 (FDEIAについて, アスピリン投与)
- 2019 選択62 / 2017 選択54 (納豆アレルギーについて)
選択問題53:解答 1
粉製品に混入したダニによるアレルギーに関する問題
お好み焼き粉の中でコナヒョウダニが増殖し、原因となることが多い→1
ダニの経口摂取によるアナフィラキシー (oral mite anaphylaxis)
開封後常温保存された粉製品の中で、主にコナヒョウヒダニが増殖。これを経口的に摂取することで、アレルギー症状をきたす
粉製品の中でも国内ではお好み焼き粉、海外ではパンケーキミックスが多い
小麦粉によるアレルギーと鑑別が必要
- 患者:気管支喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー素因を持つことが多い
- 症状:呼吸器症状が中心で、3/4の患者がアナフィラキシーに進展する
- 検査:摂取した粉製品によるプリックテスト
※小麦アレルギーではないため未開封品では症状なし - 対策:開封後は冷蔵保存する(ダニの繁殖を防げる)
- 1. お好み焼き粉が国内での原因食物として最多※。小麦粉と比較してアミノ酸を含むためダニが繁殖しやすいとされる
- 2. 原因ダニの中ではコナヒョウダニが最多。ヤケヒョウダニも検出される場合はある
- 3. 摂取後60分以内に症状が発症することが多く、早い場合は二口摂取後に症状が出現した報告もある
- 4. 51/59例で呼吸器症状がみられ、皮膚症状(17/59例)より多い
- 5. 室温保存された粉製品7/114例でダニ汚染があった一方、冷蔵保存された13例では見られなかったという報告がある
※pancake syndromeと呼ばれることもあり、海外ではパンケーキミックスが原因食物として多い
- 参考:お好み焼き粉に繁殖したダニによる即時型アレルギーの2例 -Inhibition immunoblot法による原因抗原の検討と粉の種類によるダニ数およびダニ抗原増加の検討- 日皮会誌:120(9), p1893-1900, 2010
- 参考:お好み焼き粉に発生したダニによるアナフィラキシーの双子例 日本内科学会雑誌 104(5), p986-990, 2015
選択問題54:解答 1, 4
薬疹の検査や治療に関する問題
- 1. 原因薬物特定に行う検査ではDLSTやパッチテストが比較的安全に施行可能→○
- 2. DLST*はNSAIDsや乳酸菌製剤で偽陽性となるため、陽性=原因薬剤と断定できるわけではない
- 3. 内服再投与試験は中毒性表皮壊死症のような重症薬疹では危険性が高く、実施必要性を慎重に検討する必要がある
- 4. 重症薬疹では被疑薬中止に加えてステロイド全身投与やIVIG療法を行う→○
- 5. 薬疹とウイルス性発疹は中毒疹と総称されることがあり、臨床・病理像が類似する
*DLST = drug-induced lymphocyte stimulation test (薬剤性リンパ球刺激試験)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p153(1)/83(2・3)/155(4)/151(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p110・303(1・2・3)/304(4)/287(5)
関連問題
- 2015 選択40 (DLSTが偽陽性となる薬剤)
選択問題55:解答 3, 4
Stevens-Johnson症候群の眼後遺症を問う問題
眼球癒着やドライアイが晩期症状として挙げられる→3, 4
- 急性期:結膜充血・上皮欠損・偽膜形成
- 慢性期:ドライアイ・瞼球癒着
- 1・2・5. 結膜充血・眼脂・角膜びらん:急性期の炎症所見
- 3. 瞼球癒着:慢性期の特徴的所見(炎症が高度な場合は急性期に見られる場合もある)
- 4. ドライアイ:慢性期の特徴的所見
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p141
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p196・292
- 参考:特徴的な眼所見│【医療従事者専用】SJS/TEN情報サイト
選択問題56:解答 1, 2, 5
点滴漏れ(血管外漏出)時に皮膚障害を起こしやすい薬剤を問う問題
血管外漏出 抗がん剤
抗がん剤によって漏出時の症状が異なり、3つに分類される
原因薬剤 | |
壊死性 | イダルビシン パクリタキセル ビンクリスチン |
炎症性 | シクロフォスファミド シスプラチン エトポシド フルオロウラシル |
弱炎症性 | メトトレキサート ブレオマイシン |
なおアントラサイクリン系抗がん剤(ドキソルビシン・イダルビシンなど)の血管外漏出ではデクスラゾキサン(サビーン®)の投与が有効
- 1. パクリタキセル(タキソール™):壊死性抗がん剤
- 2. ビンクリスチン硫酸塩(オンコビン™):壊死性抗がん剤
- 3. 硫酸ブレオマイシン(ブレオ™):弱炎症性抗がん剤
- 4. メトトレキサート(メソトレキセート™):弱炎症性抗がん剤
- 5. ガベキサートメシル (FOY™):急性膵炎で利用される蛋白分解酵素阻害薬で、皮膚壊死をきたしやすい※
※FOYのみ抗がん剤ではない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p224(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p298(2・5)
- 参考:皮膚科セミナリウム 第58回 化学熱傷と薬剤による皮膚障害 日皮会誌:120(2), 193―200, 2010
関連問題
選択問題57:解答 3, 5
抗菌薬治療中に舌中央部が黒色変化をきたしており、黒色舌の診断
黒色舌
抗菌薬投与による菌交代現象等で生じる
舌乳頭の過角化と、そこに付着したカンジダや細菌が産生する色素(イオウ化合物など)が原因となる
- 1・4. 病因:真菌や菌の産生する色素が病因であり、メラニン産生とは関連しない。緑膿菌感染は壊疽性膿瘡の原因となる
- 2. 金属アレルギーとは関与しない
- 3. 組織学的に角質貯留が見られる
- 5. Candida albicansがしばしば陽性になる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p539(3・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p908(5)
- 参考・画像引用:口腔病理基本画像アトラス 黒毛舌
選択問題58:解答 3
家系図から遺伝形式を推定する問題
健常両親から生まれた子供2人が罹患者であり、父型および母型いずれの家系でも罹患者はいない
上記からは常染色体劣性遺伝形式と推察され、次子が罹患する確立は1/4→3
X染色体劣性遺伝であれば祖父母の代で発症者が存在し、発症者は男となるため考えづらい
- 3. 1/4:常染色体劣性遺伝疾患の場合、保因者である両親(Aa)から次子に原因遺伝子aが伝わる確立が1/2。両親ともから伝わって初めて発症するので、1/4で発症することになる
- 4. 1/2:常染色体優性遺伝疾患の場合、両親どちらか(Aa)から次子に原因遺伝子Aが伝わる確立が1/2。片方の親から伝われば発症するので、1/2で発症することになる
関連問題
選択問題59:解答 4
下眼瞼にみられる丘疹
組織学的にオタマジャクシ様の索状構造がみられ、汗管腫の診断。腫瘍細胞が澄明細胞から構成されており、糖尿病の合併を考える→4
汗管腫(syringoma)
眼瞼部に好発する汗腺系腫瘍で、汗の分泌量が増加する思春期に目立ちやすくなる
組織:管腔の一端に短い尾のような上皮索を付すオタマジャクシ様構造が特徴
組織学的に胞体が明細胞の場合、糖尿病を合併することがある。澄明なのは胞体内にグリコーゲンを含むため
- 1. 甲状腺機能亢進症:脛骨前粘液浮腫を合併する
- 2. 橋本病:汎発性粘液水腫を合併する
- 3. クッシング症候群:コルチゾール過剰によるざ瘡や多毛、皮膚線条をきたす
- 4. 糖尿病:本症のほか、汎発型環状肉芽腫やリポイド類壊死症を合併することがある
- 5. 脂質異常症:黄色腫(眼瞼や腱)を合併する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p412(4)/320(1・2)/321(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p615(4)/453(1)/452(2)/462(5)
- 参考・図引用:Twitter @JRamirezMD 2017/1/5 9:41
選択問題60:解答 2
高齢女性で下腿前面に浮腫をきたしている
組織ではアルシアンブルー染色で染色されるムチンの沈着がみられ、脛骨前粘液水腫の診断
甲状腺機能亢進症(Basedow病)に合併する→2
- 1. 橋本病(甲状腺機能低下症):汎発性粘液水腫をきたし、皮膚所見は類似するが症状は全身になる
- 2. バセドー病:脛骨前粘液水腫をきたす
- 3. クッシング症候群:コルチゾール過剰によるざ瘡や多毛、皮膚線条をきたす
- 4. 糖尿病:澄明細胞汗管腫や浮腫性硬化症をきたす
- 5. アジソン病:副腎皮質機能低下により下垂体前葉からのACTHやMSH分泌が亢進し、色素沈着をきたす。口唇や舌、歯肉の色素沈着が特徴
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p320(1・2)/319(4)/312(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p452(1)/453(2)/455(4)/529(5)
関連問題
- 2014 選択29 / 2011 選択16 (甲状腺機能亢進症に合併:脛骨前粘液水腫)
選択問題61:解答 5
弾性線維性仮性黄色腫(PXE)に関する一般問題
眼症状では網膜血管線条が特徴→5
- 1. 遺伝形式:常染色体劣性(潜性)遺伝であり、伴性遺伝ではない
- 2. 弾性線維の”変性”が特徴で、エラスチカ・ワンギーソン染色で染色される
- 3. 皮膚症状は通常思春期以降に明らかとなる※
- 4. 皮膚症状は頚部や腋窩などに好発する。サルコイドーシスの瘢痕浸潤型は膝蓋など外的刺激を受けやすい部位に好発する
- 5. 網膜の血管様線条は成人期の85%以上に見られる所見
※皮疹は幼少時から出現するが、自覚症状がないため通常気づかれない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p353(ALL)/345(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p493(1・2・3・4)/511(4)
関連問題
PXEは関連問題が多いので下記にまとめた
-
弾性線維性仮性黄色腫 まとめ
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選択問題62:解答 3
乳児の下腿で線状の網状皮斑がみられ、先天性血管拡張性大理石様皮斑の診断
通常自然消退する→3
- 1. 通常孤発例で遺伝性はない(家族例も稀にあり)
- 2・4. 患肢の肥大や浮腫はない。Klippel-Trenaunay-Weber症候群は動静脈瘻や毛細血管奇形をきたし、患肢の肥大延長や脚長差が問題となる
- 3. 自然消退傾向があり、生後2年以内にほとんどが消退する
- 5. 3.のため、レーザー治療の適応とならない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p405(ALL)/401
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p579(ALL)
関連問題
選択問題63:解答 2
胃がん患者の臍部に見られた浸潤・硬結を伴う結節であり、Siter Mary-Joseph’s nodeの診断→2
腹腔内悪性腫瘍(主に消化器癌)の臍転移を指す
- 1. Virchow’s node:左鎖骨上窩リンパ節転移のことで、胃癌や食道癌の転移で生じることが多い
- 2. Sister (Mary) Joseph node:臍部への皮膚転移のこと
- 4. Heberden’s node(へバーデン結節):手指DIP関節に生じる変形性関節症のこと
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p467(2)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p657(2)
関連問題
選択問題64:解答 3, 5
細胞表面マーカーについて問う問題
B細胞ではCD20やCD79aが陽性となる→3, 5
- 1. CD3:T細胞全般で陽性となる
- 2. CD8:細胞傷害性T細胞で陽性となる
- 3. CD20:B細胞(pre-B cell, 成熟B細胞, memory B cell)で陽性となる(形質細胞では陰性)。リツキシマブのターゲット分子
- 4. CD56:NK細胞で陽性となる
- 5. CD79a:B細胞や形質細胞で陽性となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p50
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p48
関連問題
上記以外ではCD1aやCD207(Langerin)がLangerhans細胞で陽性となる点が頻出
選択問題65:解答 2, 5
Mycosis fungoides(MF, 菌状息肉症)の亜型を問う問題
pagetoid reticulosisやGranulomatous slack skinが該当する→2, 5
菌状息肉症の亜型・関連疾患
名前 | 分類 | 特徴 |
毛包向性菌状息肉症 (follicular mycosis fungoides) |
亜型 | 表皮よりも毛包上皮への腫瘍細胞浸潤が目立つ |
Paget病様細網症 (pagetoid reticulosis) |
亜型 | 表皮向性が強く、Paget細胞様リンパ球がみられる |
肉芽腫様弛緩皮膚 (Granulomatous slack skin) |
亜型 | 大きな局面を形成し、腋窩や鼠径部で皮膚が弛緩する |
毛包性ムチン沈着症 | MF合併例あり | 毛包変性と周囲のムチン沈着がみられる |
局面状類乾癬 | 10〜30%でMFへ移行 | 乾癬類似の角化性紅斑がみられる |
- 1. Sézary syndrome:原発性皮膚T細胞系リンパ腫で、紅皮症や掻痒を伴う
- 2. Paget病様細網症:MFの亜型
- 3. Multicentric reticulohistiocytosis(多中心性細網組織球症):組織球系腫瘍で、関節リウマチ類似の多発性関節炎を伴う
- 4. Lymphomatoid papulosis(リンパ腫様丘疹症):未分化大細胞リンパ腫とならびCD30陽性腫瘍の一つ。MFに合併する場合がある
- 5. 肉芽腫様弛緩皮膚:MFの亜型
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p469(2・5)/471(1)/437(3)/476(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p709(2・5)/710(1)/694(3)/712(4)
関連問題
- 2020 選択70 (★同一問題★)
選択問題66:解答 3
悪性黒色腫の病期決定に必要な項目を問う問題
最大径は含まれない→3
悪性黒色腫 病期分類
進行度(ステージング)としてTNM分類が用いられる
名称 | 項目 |
T分類 | 腫瘍の厚さ(TumorThickness) |
潰瘍の有無 | |
N分類 | 領域リンパ節転移 |
in-transit転移, 衛星病巣 | |
M分類 | 遠隔転移 |
血清LDH値 |
- 1. 浸潤の深さ(Tumor Thickness):顆粒層上層から腫瘍最深部までの距離を示しT分類に該当
- 2. 潰瘍の有無:T分類に含まれ潰瘍なしだとT○a、潰瘍ありだとT○bに分類される※。なお潰瘍がある場合、Tumor Thicknessは潰瘍底から測定する
- 3. 最大径:有棘細胞癌ではT分類に用いられるが、悪性黒色腫のステージングには用いられない
- 4. 所属リンパ節転移:N分類に含まれ、転移が1個ならN1、2〜3個ならN2、4個以上ならN3となる
- 5. 遠隔転移:M分類に含まれ、遠隔転移がなければM0、あればM1となる
※T1〜T4まで
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p485
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p732
関連問題
選択問題67:解答 2
隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)でみられるfusion geneを問う問題
COL1A1 - PDGF-β融合遺伝子がみられることが知られている→2
DFSPは免疫染色でCD34(+)となることも重要
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p461
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p667
関連問題
選択問題68:解答 5
色素性母斑のうち、骨様構造を伴う母斑の名称を問う問題
Nanta母斑と呼ばれる→5
- 1. Fuchs母斑:分離母斑(divided nevus of the eyelids, “kissing” nevus)※のことを、報告者の名前からこのように呼ぶ場合がある
- 2. Spitz母斑:青少年に好発し急速拡大する、MMとの鑑別が問題となる母斑。ダーモスコピーでのstarburst appearanceや組織でのKamino bodyが特徴
- 3. Clark母斑:思春期前後から生じ、不整形・境界不明瞭・濃淡差などの特徴からMMとの鑑別が問題になる良性母斑
- 4. Miescher母斑:顔面に好発し、半ドーム状で軟毛を伴う真皮内母斑
- 5. Nanta母斑:続発性骨形成を伴う母斑
*MM = 悪性黒色腫
※分離母斑:眼瞼部に生じる先天性母斑で、眼を閉じると1つの病変だが眼を開けると眼裂により2つに分離される
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p379(1・2・4)/381(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p557(3・4・5)/555(1)/558(2)
- 選択肢1の参考:Kissing naevus arising from neural crest cells presenting as upper and the lower lid mass J Neurosci Rural Pract. 2015 Jul-Sep; 6(3): 417–419.
関連問題
- 2013 選択81 (悪性疾患との鑑別が問題となる母斑)
選択問題69:解答 1, 5
中高年男性で、思春期の頃から舌および手指に毛細血管拡張症が見られる。鼻出血を繰り返しているという病歴と合わせて、Osler病の診断
合併症として肺動静脈瘻や消化管出血がある→1, 5
Osler病 (Osler-Weber-Rendu病)
常染色体優性遺伝疾患で、血管新生に関与するTGF-β受容体遺伝子(ENG, ACVRL1)変異が原因となる
全身の動静脈吻合部で血管拡張を生じ、様々な症状が見られる
- 皮膚:毛細血管拡張症(とくに舌/口腔や手指)
- 鼻:鼻出血
- 内臓病変:肺動静脈瘻(→喀血), 胃・腸(→消化管出血), 肝臓など
なお強皮症においてもOsler病類似の毛細血管拡張病変がみられることがある
- 1・5. 肺動静脈瘻・消化管出血:Osler病でみられる症状
- 2・3. 内分泌障害・M-蛋白血症:POEMS症候群のEおよびM。同疾患ではS(皮膚病変)として糸球体様血管腫がある
- 4. 脳動脈瘤:脳病変として脳動静脈奇形があるが、動脈瘤は一般的ではない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p404(1・5)/425(2・3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p581(1・5)/685(2・3)
- 参考:難病情報センター オスラー病
関連問題
- 2017 選択59 (Osler病の原因遺伝子や症状など)
選択問題70:解答 1, 2
女児で手指・足底・口唇に色素斑がみられる
色素斑をきたす疾患として、Laugier-Hunziker-Baran症候群やPeutz-Jeghers症候群を考える→1, 2
色素斑をきたす母斑症
色素斑をきたす母斑症は消化管ポリポーシスの合併が多い
遺伝 | 消化管ポリポーシス | 皮膚病変 | |
Peutz-Jeghers症候群 | 常染色体優性遺伝 (半数は孤発例) |
+ | 出生時〜 |
Cronkhite-Canada症候群 | - | + | 中年期以降脱毛や脱色素斑、爪甲異常を伴う |
Laugier-Hunziker-Baran症候群 | - | - | 20〜50代 |
- 1. Laugier-Hunziker-Baran症候群:Peutz-Jeghers症候群類似の色素斑をきたすが、通常中年期以降に発症する(小児例の報告もある)
- 2. Peutz-Jeghers症候群:口唇や四肢末端の色素斑と、消化管ポリポーシスを生じる常染色体優性遺伝疾患
- 3. Klippel-Weber症候群:四肢で単純性血管腫や海綿状血管腫が生じ、患側腫大や脚長差をきたす。動静脈瘻も生じる
- 4. Leopard症候群:カフェオレ斑や多発性黒子("l"entigines)など、頭文字の疾患を呈する。RAS/MAPK変異に伴うRASopathyの一つ
- 5. Addison病:副腎皮質機能の低下に伴い下垂体からのACTH/MSH分泌が亢進し、全身で色素沈着をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p396(1・2)/401(3)/402(4)/312(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p585(1)/584(2)/579(3)/590(4)/529(5)
関連問題
選択問題71:解答 2
ランゲルハンス細胞のマーカーを問う問題
CK20はマーカーではない→2
Langerhans細胞の免疫染色
下記3つが陽性となる
- CD1a
- S-100
- CD207 (langerin)
この中でCD207が最も特異性が高い
- 1・3・4. CD1a・S100・ランゲリン:いずれもランゲルハンス細胞のマーカー
- 2. CK20:メルケル細胞癌において核近傍で点状に陽性となる。直腸癌(Paget現象)でも陽性
- 5. バーベック顆粒:ランゲルハンス細胞において電子顕微鏡で観察される、ラケット状の構造
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p34(1・4・5)/49(2・3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p78(1・4・5)/41(2)/48(3)
関連問題(Langerhans細胞)
- 2021 選択16 / 2021 選択53 / 2020 選択44 / 2019 記述15 / 2018 選択47 / 2016 選択13 / 2010 選択35 / 2009 選択12(免疫染色)
- 2016 選択78 (バーベック顆粒を有する)
選択問題72:解答 5
溶連菌感染と関連が乏しい疾患を問う問題
成年期の浮腫性硬化症は糖尿病と関連するが、溶連菌感染との関連は弱い→5
浮腫性硬化症
項部や上背部で浮腫性硬化をきたし、組織学的にムチン沈着がみられる疾患
小児期と成人期で臨床像が異なる
合併疾患 | 経過 | |
小児期 | 溶連菌感染 | 半年〜数年で自然治癒 |
成人期 | 糖尿病 | 慢性 |
- 1. 多形滲出性紅斑:溶連菌感染の他、単純ヘルペスやマイコプラズマ、薬剤が原因となる
- 2. 結節性紅斑:溶連菌感染後の他、サルコイドーシスやベーチェット病、ハンセン病が基礎疾患となる
- 3. 急性滴状乾癬:尋常性乾癬よりも皮疹が小さく、溶連菌感染にともなって生じ小児に多い
- 4. Henoch-Schönlein紫斑病(IgA血管炎):溶連菌(上気道)感染後に生じることが多い。下腿紫斑の他、関節症状や消化器病変(十二指腸)を合併する
- 5. 成年性浮腫性硬化症:成年性のものは糖尿病と関連するが、溶連菌感染との関連は弱い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p319・332(5)/139(1)/354(2)/287(3)/165(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p455(5)/187(1)/190(2)/381(3)/212(4)
関連問題
選択問題73:解答 2
MPO-ANCA陽性で間質性肺炎を合併、組織学的に好酸球浸潤は乏しいため顕微鏡的多発血管炎(MPA)を考える→2
ANCA関連血管炎
ANCA = 抗好中球細胞質抗体 (anti-neutrophil cytoplasmic antibody)
が検出される血管炎のこと
ANCA関連血管炎では免疫グロブリン沈着はみられない(pauci-immune型)
2種類あり、疾患ごとにどちらが陽性になりやすいかが異なる
ANCA関連血管炎 | 疾患 |
MPO-ANCA (P-ANCA) |
顕微鏡的多発血管炎(MPA) |
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) | |
薬剤関連ANCA血管炎 (プロピオチルウラシル, ヒドララジン等) |
|
PR3-ANCA (C-ANCA) |
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)* |
*日本では欧米(>90%)と比較して陽性率が低く60%
旧名称
- EGPA = Churg-Strauss症候群, アレルギー性肉芽腫性血管炎
- GPA = Wegener肉芽腫症
- 1. EGPA:約50%でMPO-ANCA陽性となるが、組織学的に好酸球浸潤が見られる。呼吸器症状として喘息の先行が重要
- 2. MPA:約60%でMPO-ANCA陽性となり、組織学的に白血球破砕性血管炎(leukocytoclastic vasculitis)がみられるが好酸球浸潤は乏しい
- 3. GPA:PR3-ANCAが陽性となることが多く、病勢を反映する。典型例ではE(上気道)→L(肺)→K(腎)の順に病変が出現する
- 4. クリオグロブリン血症:4℃で沈殿し・37℃で溶解する性質を持ったグロブリンが産生される疾患で、多発性骨髄腫やC型肝炎を背景に持つことが多い。寒冷刺激でリベドや紫斑、潰瘍をきたす
- 5. 皮膚型結節性多発性動脈炎:結節性多発動脈炎(PN)はANCA陰性の血管炎。皮膚型PNは皮膚病変のみで内臓病変を伴わないもの(全身型へ移行する場合がある)
選択肢4・5はANCA関連血管炎ではない
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p169(2・5)/170(1)/171(3)/182(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p216(2・4)/222(1)/219(3)/448(4)/226(5)
- 参考:血管炎・血管障害診療ガイドライン 2016 年改訂版 日皮会誌:127(3), 299-415, 2017
関連問題
- 2016 選択31 / 2011 選択37 / 2010 選択27 (MPO-ANCA陽性疾患)
- 2011 選択38 (免疫グロブリン沈着がみられない血管炎)
選択問題74:解答 1, 2
クリオグロブリン血症の基礎疾患を問う問題
モノクローナル型では多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症が基礎疾患になる→1, 2
クリオグロブリン血症
4℃で沈殿・37℃で溶解する性質を持った異常免疫グロブリンが生じる疾患
免疫グロブリン(Ig)のクローナリティで分類され、背景にIg増殖をきたす原疾患が存在する場合が多い
免疫グロブリン | 原疾患 | 病態 | |
Ⅰ型 | 単クローン性IgM/IgG | 多発性骨髄腫 | 微小血栓 |
Waldenstromマクログロブリン血症 | |||
Ⅱ型 | 単クローン性IgM + 多クローン性IgG |
C型肝炎 | 免疫複合体性血管炎 |
関節リウマチ | |||
Ⅲ型 | 多クローン性Ig (IgM or IgG) |
膠原病 (SLE・Sjögren症候群等) |
免疫複合体性血管炎 |
感染症 (ウイルス性肝炎・伝染性単核球症) |
- 単クローン型=腫瘍性増殖 (ex. 多発性骨髄腫)
- 多クローン型=反応性増殖 (ex. 炎症性疾患)
→Ⅰ型とⅡ・Ⅲ型は原疾患が大きく異なるが、II型とIII型の間の違いは小さい(臨床症状も原疾患も重複する)
- 1・2. 多発性骨髄腫・原発性マクログロブリン血症:形質細胞増多をきたす疾患で、モノクローナル型の基礎疾患となる
- 3. B型肝炎:Ⅲ型の基礎疾患となる。肝炎ではC型肝炎が基礎疾患として重要
- 4・5. 全身性エリテマトーデス・シェーグレン症候群:膠原病は多クローン型の基礎疾患の一つ
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p182
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p448
- 参考:血管炎・血管障害診療ガイドライン 2016年改訂版 日皮会誌:127(3), 299-415, 2017のp331, 369
関連問題
選択問題75:解答 4
電子顕微鏡用材料の固定に用いられる液はグルタールアルデヒド→4
代表的な固定方法は下記
前処理 | |
光学顕微鏡(HE染色) | ホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液) |
蛍光抗体直接法 | 凍結処理 |
電子顕微鏡 | グルタールアルデヒド |
- 1. エタノール(アルコール):痛風でみられる尿酸結晶はホルマリン固定では溶けて流出してしまうので、これらの固定法が診断に有用
- 2. メタノール:エタノールと同様に尿酸結晶を見る目的で用いられる
- 3. ホルマリン:HE染色のための固定法に用いる
- 4. グルタールアルデヒド:電子顕微鏡用材料の固定に用いる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p39(3・4)/335(1)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p448(3・4)/472(1)
- 参考:札幌皮膚病理研究所NEWS 2003/8
関連問題
- 2015 選択85 (蛍光抗体直接法の検体処理法)
選択問題76〜は下記
-
平成24(2012)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題76〜90 記述
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