日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和3(2021)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会 (問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版、ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
※本記事で参考にしたのは皮膚科学 第10版ですが、11版が出ているので上記リンクは新版です
選択問題61〜90の解答・解説は下記
-
令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90
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見出し
- 1 令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題91〜100 記述問題
- 1.1 選択問題91:解答 3, 5
- 1.2 選択問題92:解答 3
- 1.3 選択問題93:解答 3
- 1.4 選択問題94:解答 5
- 1.5 選択問題95:解答 3
- 1.6 選択問題96:解答 4
- 1.7 選択問題97:解答 3
- 1.8 選択問題98:解答 1
- 1.9 選択問題99:解答 2
- 1.10 選択問題100:解答 1, 3
- 1.11 記述問題1:解答 角質細胞間(角層細胞間)
- 1.12 記述問題2:解答 顔面毛包性紅斑黒皮症 (erythromelanosis follicularis faciei)
- 1.13 記述問題3:解答 アメナメビル, ファムシクロビル, バラシクロビル, アシクロビル
- 1.14 記述問題4:解答 transmitted
- 1.15 記述問題5:解答 leukocytoclastic vasculitis
- 1.16 記述問題6:解答 TIF1-γ
- 1.17 記述問題7:解答 Baxter法(Parkland法)
- 1.18 記述問題8:解答 ankle brachial pressure index
- 1.19 記述問題9:解答 ラパリムス®(シロリムス)ゲル
- 1.20 記述問題10:解答 色素性痒疹
- 1.21 記述問題11:解答 immune-related adverse event
- 1.22 記述問題12:解答 回転
- 1.23 記述問題13:解答 EBウイルス
- 1.24 記述問題14:解答 ダブラフェニブ+トラメチニブ or エンコラフェニブ/ビニメチニブ
- 1.25 記述問題15:解答 エストロゲン, プロゲステロン
- 1.26 記述問題16:解答 爪下外骨腫
- 1.27 記述問題17:解答 血管脂肪腫 (angiolipoma)
- 1.28 記述問題18:解答 pagetoid
- 1.29 記述問題19:解答 p.M492K
- 1.30 記述問題20:解答 β2-ミクログロブリン (microglobulin)
令和3年度(2021年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題91〜100 記述問題
選択問題91:解答 3, 5
セリンプロテアーゼインヒビター関連の遺伝子変異が原因となるのはNetherton症候群および長島型掌蹠角化症→3, 5
- Netherton症候群:セリンプロテアーゼインヒビターの一つ、SPINK5(serine peptidase inhibitor Kazal type 5)遺伝子の変異が原因
角層を剥離するKLK5は本来セリンプロテアーゼにより分解される。Netherton症候群では(インヒビターが働かないため)セリンプロテアーゼ活性が異常亢進し、過剰な皮膚剥離が生じる - 長島型掌蹠角化症:セリンプロテアーゼインヒビターの一つ、SERPINB7(serpin family B member 7)遺伝子の変異が原因
- 1. Meleda病:掌蹠を越える皮疹(transgrediens)を示す、常染色体劣性遺伝形式の掌蹠角化症。SLURP1遺伝子変異が原因
- 2. KID症候群:角膜炎と難聴を伴う常染色体優性遺伝形式の魚鱗癬症候群。ギャップジャンクションの構成成分コネキシンをコードするGJB2遺伝子の変異が原因
- 3. Netherton症候群:曲折線状魚鱗癬とアトピー性皮膚炎様皮疹、結節性裂毛をきたす魚鱗癬症候群
- 4. 線状掌蹠角化症:手指に沿った線状掌蹠角化をきたす疾患。細胞間接着や細胞骨格を担うDSP, DSG1, KRT1遺伝子の変異が原因(原因遺伝子により細分類される)
- 5. 長島型掌蹠角化症:掌蹠を越える紅斑(transgrediens)や短時間の浸水で皮膚が白く浸軟する所見が特徴となる、日本人で最も多い掌蹠角化症(常染色体劣性遺伝形式)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p278(1・4)/275(2)/10・275(3)/277(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p341(1・4)/338(2)/337(3)/342(5)
遺伝子名だけでなく、「Netherton症候群ではセリンプロテアーゼ活性が亢進している」という機能面を理解することが重要
関連問題
- 2020 選択15 (Netherton症候群でのセリンプロテアーゼ活性)
- 2019 記述2(SPINK5遺伝子変異による疾患)
- 2017 選択16 (角質のpeelingをきたす分子)
- 2015 選択14 (長島型掌蹠角化症の原因遺伝子)
選択問題92:解答 3
日本人ノーベル賞受賞者と関連がある業績を問う問題
オートファジー・ニボルマブ・イベルメクチンの3つがある→3
日本人ノーベル賞受賞者 業績(医学・生理学賞)
2022年現在、日本人のノーベル医学・生理学賞受賞者は5名
氏名 | 業績 | 受賞年 |
本庶 佑 | ニボルマブ(オプジーボ®) 免疫チェックポイント阻害薬 |
2018 |
大隅 良典 | オートファジー機構の解明 | 2016 |
大村 智 | イベルメクチン(ストロメクトール®) 線虫(寄生虫)治療薬 |
2015 |
山中 伸弥 | iPS細胞 | 2012 |
利根川 進 | 抗体多様性の原理 | 1987 |
- アダリムマブ(ヒュミラ®):抗TNF-α抗体 ノーベル賞は受賞していない
- イピリムマブ(ヤーボイ®):抗CTLA-4抗体(免疫チェックポイント阻害薬) 2018年、ジェームズ・アリソンが本庶佑と共にノーベル賞を受賞した
- 参考:ノーベル賞 | 京都大学
関連問題(ノーベル賞)
- 2022 選択43 (2021年ノーベル生理学医学賞受賞)
- 2023 選択30 / 2022 選択58 / 2017 選択93 (日本人ノーベル賞受賞者の業績)
- 2012 記述9 (2011年ノーベル賞 自然免疫活性化と獲得免疫における樹状細胞の役割)
選択問題93:解答 3
学校感染症の出席停止期間を問う問題
風疹の出席停止期間は「すべての発疹が消失するまで」なので誤り→3
詳細は下記
-
感染症の出席停止期間 学校保健安全法 【プールの可否】
続きを見る
- 1. 水痘:すべての発疹が痂皮化するまで出席停止
- 2. 麻疹:解熱後3日を経過するまで出席停止
- 3. 風疹:すべての発疹が消失するまで出席停止
- 4. 咽頭結膜熱:主要症状が消退した後二日を経過するまで出席停止
- 5. インフルエンザ:発症した後五日を経過しかつ解熱した後二日(幼児にあっては三日)を経過するまで出席停止
関連問題:複数あり上記リンク先参照
選択問題94:解答 5
医療安全におけるリスクを問う問題
リスクは損害の発生頻度とその損害の重大さの二つで表される→5
- 1・2. リスクとは「目的に対する不確かさの影響」を示し、好ましいものも好ましくないものもあり得る
- 3. 世の中の全ての事象にリスクは付随しており完全回避はできない。安全とはリスクが許容できるものであるという状態をいう
- 5. リスクの大きさは発生した場合の損害の大きさと発生確率で表される
選択問題95:解答 3
急性膵炎に伴い下腿の有痛性紅斑をきたしている
組織学的には脂肪織周囲の炎症に加え、ghost-like fat cellと呼ばれる隔壁が肥厚し核が消失する脂肪細胞がみられ皮下結節性脂肪壊死症の診断→3
皮下結節性脂肪壊死症
急性膵炎や膵癌などの膵疾患に伴い、膵逸脱酵素であるリパーゼやアミラーゼが漏出することで、脂肪織炎をきたす
- 症状:下腿での圧痛を伴う皮下結節
- 組織:脂肪織炎に加え、ghost-like fat cellが特徴
臨床症状は膵酵素と相関する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p358(3)/354(1)/355(2)/174(4)/356(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p503(3)/182(1)/829(2)/190(4)/500(5)
- 参考(ghost-like fat cellの写真あり):新・皮膚科セミナリウム 内臓悪性腫瘍のデルマドローム 日皮会誌:130(4), 569-579, 2020
- 参考・画像引用:Disordered Presentation of Paraneoplastic Pancreatitis, Polyarthritis and Panniculitis (PPP) Syndrome in a Patient with End-Stage Pancreatic Cancer | SKIN The Journal of Cutaneous Medicine
関連問題
- 2016 選択83 (結節性紅斑の臨床問題, 病理)
選択問題96:解答 4
免疫組織化学染色にペルオキシダーゼを使用する際は内因性ペルオキシダーゼを不活化するため、過酸化水素を用いる→4
アルカリホスファターゼの場合は不要
- 1・3. キシレン・エタノール:薄切した切片の脱水処理、およびその後の透徹処理で用いる
- 2. レバミゾール:内因性アルカリホスファターゼ*の除去に用いる
- 5. リン酸緩衝生理食塩水(PBS):pH7.2-7.4の等張液であり、希釈等で用いる
*ホルマリン固定パラフィン切片では固定時に失活するので問題にならない。新鮮凍結切片の場合は処理が必要
選択問題97:解答 3
神経終末器官と受容感覚について問う問題
メルケル細胞は触圧覚を感知する→3
- 1. マイスネル小体:触圧覚を感知する機械受容体で、真皮乳頭部に存在する
- 2. パチニ小体:振動を感知し、真皮深層〜皮下組織に存在する
- 3. メルケル細胞:触圧覚受容細胞で特に掌蹠に多く分布し基底層に存在する。有芯顆粒を有し、電子顕微鏡で観察可能
- 4. ラフィニ(ルフィニ)小体:張力(緊張の度合)を感じ、真皮層に存在する
- 5. クラウゼ小体:冷覚を伝え、指の乳頭部に存在する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p19(1・2)/12(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p41-43(ALL)
関連問題
選択問題98:解答 1
ジントニック摂取後のびらん・紅斑であり、トニックウォーターによる固定疹を疑う。検査としてはパッチテストが有用→1
トニックウォーターによる固定疹
原因物質を摂取後同一部位に繰り返し生じる皮疹を固定疹と呼び、代表例は固定薬疹
食物など薬剤以外のものでも生じ、代表例はトニックウォーター*に含まれるキニーネ
- キニーネ:以前抗マラリア薬として利用されていたが、現在はカクテルの材料に利用されている
紫外線照射で青く光るという特徴がある - 診断:パッチテストや負荷試験が有効だが、皮疹消退から2週間程度は不応期で陽性となりづらい点・陽性率が低い点に注意が必要
*カナダドライ®、シュウェップス®、カナダドライ®など
- 1. パッチテスト:キニーネによる固定疹を疑う際、最も侵襲の低い検査
- 2. HLA抗原検査:ベーチェット病(口腔内潰瘍)を疑う際に有用な検査。ベーチェット病ではHLA-B51やHLA-A26を有する確率が高い
- 3. 細菌培養検査:伝染性膿痂疹を疑う際に有用な検査
- 4. 単純ヘルペスウイルス抗原検査:口唇ヘルペスを疑う際に有用な検査
- 5. 抗デスモグレイン-1および3抗体検査:尋常性天疱瘡などの水疱症を疑う際に有用な検査
- 参考文献:トニックウォーターによる固定疹 臨床皮膚科73巻5号(2019増刊号) p27-31
関連:2018 記述7(ジントニック接種後の固定疹の原因物質)
選択問題99:解答 2
基本再生算数が高い感染症を問う問題
最も高いのは麻疹→2
基本再生算数と実行再生算数
- 基本再生算数(R0):感染症に対して全く免疫を持たない集団の中で、一人の感染者が平均して何名の二次感染者を発生させるか
- 実行再生算数(Rt):感染が拡大している環境下のある時間tにおいて、一人の感染者が平均して何名の二次感染者を発生させるか
平たく言えばR0は病原体の純粋な感染力を、Rtはその時点での感染制御状況を示していると言える
本問の病原ウイルスにおける基本再生算数は下記の通り
- 2. 麻疹:12-18
- 1. 水痘:7-11
- 3. 風疹:5-7
- 4. COVID-19(初期):2-3
- 5. インフルエンザ(スペイン風邪):2-3
※数値は文献によってバラつきがあるがが、麻疹が最も高い点は共通している
- 参考(COVID-19):新型コロナウイルス感染症の感染性 国立感染症研究所 IASR Vol.42 p30-32: 2021年2月号
- 参考(水痘):感染症流行の予測:感染症数理モデルにおける定量的課題 統計数理 第54巻第2号 461–480
- 参考(その他感染症):麻疹排除計画における検査診断の重要性について
選択問題100:解答 1, 3
乾癬の生物学的製剤治療における医療費助成を問う問題
- 1. 70歳以上で年収180万円の場合、外来の自己負担上限額は18,000円/月→○
- 2. 以前支払っていた44,400円/月は多数回該当に該当して上限が下がった金額。今回は多数回該当から外れるため、再開1回目の自己負担額は57,600円となる→×
- 3. 付加給付制度の自己負担上限額が25,000円の場合、差額分が給付されるため実質的な自己負担額は25,000円となる→○
- 4. 難病医療費助成であっても、生活保護者以外は所得に応じて窓口での自己負担額が発生する→×
ただし通常の自己負担上限額よりは低く設定されている - 5. 年収1,300万円の場合、自己負担上限額は252,600円+(医療費-842.000) x1%となる。乾癬の生物学的製剤治療の例として、スキリージ®は3ヶ月に1回投与で薬価が47.4万円→3割負担で14.2万円となり、高額療養費制度の上限額に達しないため自己負担額は軽減されない→×
- 自己負担上限額:年収や年齢に応じて設定される、1ヶ月あたりの医療費支払いの上限額
- 多数回該当:過去12か月以内に3回以上自己負担上限額に達した場合、4回目から多数回該当として自己負担上限額が下がる制度。3ヶ月に1回の通院であれば年4回受診するため該当しえる
- 付加給付制度:健康保険組合独自に自己負担上限額より低い限度額を設定し、それ以上の医療費支払いがあった場合差額を給付金として支給する制度(福利厚生の一環)
一般に大企業では多いが、中小企業で加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)や国民健康保険に同制度はない - 難病医療費助成:汎発性膿疱性乾癬や先天性魚鱗癬など指定難病に含まれる疾患と診断され、一定以上の重症度の場合医療費助成を受けられる制度
高額療養費制度 自己負担限度額
高額療養費制度の対象となる1ヶ月の自己負担限度額は、年齢・所得に応じて変化する
69歳以下の場合
69歳以下 自己負担限度額 | 適用区分 | 1ヶ月の上限額(世帯ごと) |
ア | 年収約1,160万円〜 | 252,600円 + (医療費 - 842,000)×1% |
イ | 年収約770〜1,160万円 | 167,400円 + (医療費 - 558,000)×1% |
ウ | 年収約370〜770万円 | 80,100円 + (医療費 - 267,000)×1% |
エ | 〜年収約370万円 | 57,600円 |
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
70歳以上の場合
70歳以上 自己負担限度額 | 適用区分 | 外来(個人ごと) | 1ヶ月の上限額(世帯ごと) |
現役並み | 年収約1,160万円〜 | 252,600円 + (医療費 - 842,000) ×1% | |
年収約770〜1,160万円 | 167,400円 + (医療費 - 558,000)×1% | ||
年収約370〜770万円 | 80,100円 + (医療費 - 267,000)×1% | ||
一般 | 年収156〜約370万円 | 18,000円 | 57,600円 |
住民税非課税等 | Ⅱ 住民税非課税世帯 | 8,000円 | 24,600円 |
Ⅰ 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) |
15,000円 |
- 参考:高額療養費制度を利用される皆さまへ 厚生労働省保健局 p4(1)/7(2)/5(5)
- 選択肢3の参考:日本製鉄健康保険組合 医療費負担額と給付金
- 選択肢4の参考:難病情報センター 指定難病患者への医療費助成制度のご案内
選択肢5について、スキリージ®以外にコセンティクス®では費用負担シュミレーターがありわかりやすい。下記は最大投与量の300mg/月(1回2本)だが、毎月受診でも3ヶ月に1回受診でもこの年収では高額療養費制度の対象外となることがわかる
一方年収区分ウ・エ(〜770万円)であれば、3ヶ月分をまとめて処方することで高額療養費制度が利用可能となる(1ヶ月分処方では自己負担上限額に達しない)
関連問題
- 2023 選択10 (高額療養費制度について)
記述問題1:解答 角質細胞間(角層細胞間)
皮膚の保湿に関与する因子
- 皮脂
- 天然保湿因子(NMF):顆粒層の構成成分であるプロフィラグリン(ケラトヒアリン顆粒)が分解されて生じる
- 角質細胞間脂質:セラミドやコレステロール、遊離脂肪酸
角質細胞間脂質は有棘層や顆粒層の層板顆粒に蓄えられており、酵素ABCA12がその分泌に関与する(→変異で道化師様魚鱗癬を発症)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p9
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p12
表記についてあたらしい皮膚科学は「"角質"細胞間脂質」、皮膚科学は「"角層"細胞間脂質」となっておりブレがあるが、どちらでも問題ないと思われる
関連問題
- 2020 選択85(層板顆粒の電子顕微鏡写真)
- 2019 選択24 / 2016 選択12 (道化師様魚鱗癬の原因遺伝子)
- 2014 選択4 / 2011 選択9 (角層細胞間脂質の構成成分)
記述問題2:解答 顔面毛包性紅斑黒皮症 (erythromelanosis follicularis faciei)
顔面毛包性紅斑黒皮症(北村)
耳前部〜頬にかけて対称性の紅斑性局面を形成し、その上に毛孔一致性の角化性丘疹がみられる
四肢の毛孔性苔癬を合併しやすく(毛孔性苔癬の亜型とされる)、若年男子に好発
治療はサリチル酸ワセリンや尿素軟膏で、また経年経過で自然治癒する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p297
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p352
記述問題3:解答 アメナメビル, ファムシクロビル, バラシクロビル, アシクロビル
帯状疱疹治療に用いられる内服抗ウイルス薬の下記4つから、3つを選び解答する
一般名 | 商品名 |
アメナメビル | アメナリーフ® |
ファムシクロビル | ファムビル® |
バラシクロビル | バルトレックス® |
アシクロビル | ゾビラックス® |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p99
関連:2020 記述4(DNAヘリカーゼ、プライマーぜを阻害する抗ヘルペスウイルス薬)
記述問題4:解答 transmitted
梅毒やHIV感染症などを指すSTIはsexually transmitted infectionの略
以前はsexually transmitted diseasesと呼ばれることが多かったが、diseaseは発症を含んだ表現であるため現在はSTI(感染しただけの状態を含む)の表記が一般的
記述問題5:解答 leukocytoclastic vasculitis
下腿の浸潤を触れる紫斑から生検した組織像で、血管周囲の炎症細胞浸潤を認めleukocytoclastic vasculitis(白血球破砕性血管炎)の像
白血球破砕性血管炎
好中球の皮膚小血管周囲への細胞浸潤・血管壁のフィブリノイド変性・出血像等、血管炎一般で見られる所見をこのように呼ぶ
下記の小血管炎はいずれも類似したHE所見だが、特徴的症状によって臨床分類される
- 皮膚病変だけのもの:皮膚白血球破砕性血管炎
- 24時間以上持続する蕁麻疹様発疹をきたす:蕁麻疹様血管炎
- 蛍光抗体直接法でIgA沈着:IgA血管炎
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p163
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p201
記述問題6:解答 TIF1-γ
皮膚筋炎で内臓悪性腫瘍が多い自己抗体は抗TIF1-γ抗体
皮膚筋炎は自己抗体に応じて臨床症状が異なる。詳細は下記
-
皮膚筋炎 自己抗体と臨床症状 まとめ
続きを見る
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p208
関連問題:複数あり、上記記事参照
記述問題7:解答 Baxter法(Parkland法)
Baxter法(Parkland法)
重症熱傷の初期輸液の算定方法
- 輸液総量(ml) = 4 × Ⅱ度+Ⅲ度熱傷面積(%) × 体重(kg)
開始8時間で輸液総量の1/2を、その後の16時間で残り1/2を投与する - 組成:乳酸リンゲルや酢酸リンゲルなどの等張電解質輸液を用いる
なお小児の場合は維持輸液を併用する
- 体重10kgまでの分:4ml/kg/時
- 10〜20kgまでの分:2ml/kg/時
- 20kg以上の分:1ml/kg/時
※例)25kgの場合10×4 + 10×2 +5×1 =65ml/時の維持輸液を併用
これがいわゆる「4-2-1の法則」
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p222
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p258
- 参考(小児):熱傷診療ガイドライン 日皮会誌:121(14), 3279-3306, 2011の表8(p3290)
関連問題
記述問題8:解答 ankle brachial pressure index
ABIのフルスペルを問う問題
ABI(anke brachial pressure index)
ankle(足首)とbrachial(上腕)の血圧を測定し、足首血圧/上腕血圧で評価する
ABI < 0.9では閉塞性動脈硬化症など動脈狭窄(下肢虚血)を疑う
※健常人は下肢のほうが血圧が高いため0.9〜1.3となる
類似検査にSPP(skin perfusion pressure)がある
SPP
目的部位にレーザードプラーセンサーとカフを装着し、皮膚表面から約1mmの深さの灌流圧(perfision pressure)を測定する。
下肢虚血の診断だけでなく虚血性潰瘍の治癒予測にも有用で、SPP<30~40mmHgでは創傷治癒の可能性は低いとされる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p185
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p239
関連問題
- 2022 記述18 (SPPのフルスペル)
- 2016 記述6(同一問題 ※日本語でも可だった)
記述問題9:解答 ラパリムス®(シロリムス)ゲル
皮膚の3箇所で葉状白斑がみられ、心横紋筋腫や脳上衣下結節を伴っていることから結節性硬化症と確定診断できる(大基準3つを満たす)
顔面皮膚病変である血管線維腫に対して、ラパリムス®(シロリムス)ゲルが保険適用となっている
ラパリムス®(シロリムス)ゲルとmTOR阻害薬
シロリムスはmTOR阻害薬
mTORはTSC1/TSC2の下流に位置し、結節性硬化症(TSC1/TSC2遺伝子変異が原因)ではmTORが恒常的に活性化している
このためmTORを阻害することが治療に繋がり、下記薬剤が利用されている
(LAMもTSC遺伝子変異が原因となり、結節性硬化症に合併する例がある)
一般名 | 商品名 | 保険適用 |
エベロリムス錠 | アフィニトール® | 結節性硬化症の下記症状 |
成人腎血管筋脂肪腫 | ||
上衣下巨細胞性星細胞腫 | ||
てんかん部分発作 | ||
シロリムス錠 | ラパリムス® | リンパ脈管筋腫症(LAM) |
シロリムスゲル | ラパリムス® | 結節性硬化症の皮膚病変 |
なおシロリムスゲルは「皮膚病変」となっているが、白斑・シャグリンパッチ・爪線維腫に対する有効性は確認されていない(添付文書より)
→顔面血管線維腫が主な対象
- 参考・図引用:世界初、結節性硬化症皮膚病変に対する新規外用治療薬の承認 - リソウ
- 保険適用参考:各種添付文書
関連問題(結節性硬化症)
- 2023 選択8 (50歳以上の死因)
- 2022 選択46 / 2022 選択73 / 2018 選択73 / 2015 選択49 / 2010 選択43 (症状や出現順, 原因蛋白など)
- 2011 記述10 (ケーネン腫瘍)
記述問題10:解答 色素性痒疹
若年女性に生じたそう痒を伴う紅斑で、改善後色素沈着を残すという経過やステロイド外用薬が無効なことから色素性痒疹の診断
色素性痒疹
瘙痒の強い蕁麻疹様紅斑として出現し、治癒後に網目状の色素沈着をきたす
若年女性の背部・項部・上胸部に好発
- 原因:ダイエット(絶食)や糖尿病による飢餓状態(高ケトン血症)
- 治療:ミノサイクリン内服やDDSが有効
(抗ヒスタミン薬内服やステロイド外用には反応しない)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p137
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p174
関連問題
- 2018年 選択20(色素性痒疹の誘因)
- 2010 記述8 (臨床問題)
免疫チェックポイント阻害薬は免疫抑制に関わるCTLA-4やPD-1をターゲットとし、腫瘍に対するT細胞免疫を賦活化させる
これに伴い全身臓器で生じる特徴的な有害事象を、免疫関連副作用(irAE)と呼ぶ。通常の薬疹と異なり、投与開始から発症までの期間が長い・中止後にも遷延する場合があるなどの特徴がある
irAEの具体的症状に下記がある
- 内分泌:甲状腺機能障害・下垂体炎
- 肺:間質性肺炎
- 消化器:大腸炎
- 神経:重症筋無力症・神経障害
- 皮膚:水疱性類天疱瘡, 白斑
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p159
- 参考:免疫チェックポイント阻害剤による免疫関連有害事象|大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学
- 参考:ペムブロリズマブ投与後に生じた水疱性類天疱瘡の2例, 皮膚科の臨床 65(1), 23-33, 2023
記述問題12:解答 回転
皮膚腫瘍摘出後の修復術
- 単純縫縮:縫うだけ
- 局所皮弁:皮膚および皮下組織〜筋肉までを切り離さず移植(皮弁自体に血液供給がある)
- 植皮術:表皮から真皮中層(分層)ないし真皮全層(全層)の皮膚を採皮し、固定
この中で皮弁は大きく伸展皮弁・置き換え皮弁・回転皮弁に分けられる
- 伸展皮弁:皮膚の伸展性を利用して皮膚を前進させる。V-Y皮弁が代表例
- 横転皮弁(置き換え皮弁):欠損創に隣接する皮膚を横転させ被覆する。Rhomboid flap(ひし形皮弁)が代表例
- 回転皮弁:欠損創に隣接する皮膚を回転させて被覆する。頭皮の再建でよく用いられる
※置き換え皮弁は一般的に横転皮弁と書かれることが多い
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p112(回転皮弁の記載はない)
- 参考:皮膚外科学 第1版 p150
- 参考:初心者のための局所皮弁の適応とデザイン法 防衛医科大学校雑誌 47(4), p208-219, 2022
記述問題13:解答 EBウイルス
メトトレキサート(MTX)長期内服中に生じた皮膚腫瘤
組織ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫であり、MTX関連リンパ増殖異常症(MTX-LPD)を考える
同疾患ではEBウイルスが陽性となりやすい
MTX関連リンパ増殖性疾患(増殖異常症) MTX-LPD
とくに関節リウマチ患者における、メトトレキサート(MTX)内服に伴う有害事象
- 投与期間2年以上など長期間投与例に多い
- リンパ腫であるが、皮膚病変(難治性潰瘍)など節外病変が多い(40-70%)
分類上はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 - 組織:腫瘍細胞でEBVが陽性となることが多い(40%)
→組織検体でEBER(EBV感染細胞に発現する低分子RNA)を確認する - 臨床経過:約半数はMTX休薬にともない自然消退する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p479
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 免疫抑制剤とリンパ腫 日皮会誌:126(8), 1433-1438, 2016
- 参考:メトトレキサート診療ガイドライン2016改訂版の要点について 臨床リウマチ, 30:5-11, 2018
補足
現在のWHO分類ではMTX-LPDという概念は存在せず、他の医原性免疫不全関連リンパ増殖性疾患と呼ぶ(MTXそのものによる有害事象というよりは、関節リウマチの活動性なども関与していると考えられているため)がここでは簡略化のためMTX-LPDと表記した
関連問題
記述問題14:解答 ダブラフェニブ+トラメチニブ or エンコラフェニブ/ビニメチニブ
BRAF遺伝子変異(V600EないしV600K)を有する悪性黒色腫に対して、BRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用療法が行われる
- BRAF阻害薬:ダブラフェニブ + MEK阻害薬:トラメチニブ
- BRAF阻害薬:エンコラフェニブ + MEK阻害薬:ビニメチニブ
上記2通りの組み合わせがある(術後補助療法として利用可能なのは前者のみ)
BRAF阻害薬/MEK阻害薬について、詳しくは下記参照
-
BRAF阻害薬とMEK阻害薬 【悪性黒色腫】
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記述問題15:解答 エストロゲン, プロゲステロン
合成プロゲステロン製剤内服後に繰り返す皮疹であり、その後の皮疹は内因性エストロゲン or プロゲステロンにより誘発されたと考えられる
autoimmune progesterone dermatitis
外因性/内因性プロゲステロンに対するアレルギー反応で、多型紅斑・蕁麻疹・湿疹など紅斑を中心とした皮疹が月経周期(≒1ヶ月)に一致して出現。
- 誘因:プロゲステロン製剤の摂取により誘発されることが多い
- 病態:プロゲステロンに対するⅠ・Ⅳ型アレルギー反応
類似疾患にエストロゲンに対する過敏反応であるestrogen dermatitisや月経疹があり、皮内テストが鑑別に有効
月経関連の皮疹 | プロゲステロン | エストロゲン |
autoimmune progesterone dermatitis | + | - |
estrogen dermatitis | - | + |
月経疹 | - | - |
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p175
- 参考(本問と病歴が一致):合成プロゲステロン製剤により誘発された autoimmune progesterone dermatitis の 1 例 日皮会誌:130(2), 233-237, 2020
記述問題16:解答 爪下外骨腫
爪部に出現した有痛性腫瘍で、X線で骨片を伴うことから爪下外骨腫の診断
爪下外骨腫
主に10〜20歳代の第1趾で、骨組織が増生して生じ爪甲の変形を伴う
有痛性腫瘍であり、グロムス腫瘍や血管拡張性肉芽腫、陥入爪との鑑別にX線が用いられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p439
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p644
- 参考・画像引用:爪変形の原因は、“爪”自体の問題ではない│Dr. Kenの “ゼロより1” 日記
記述問題17:解答 血管脂肪腫 (angiolipoma)
図52では組織学的に脂肪の増生が見られる
図53で血管増殖が見られること、有痛性腫瘍であることから血管脂肪腫の診断(通常の脂肪腫は自覚症状なし)
有痛性皮下腫瘍 LEND AN EGG (ANGEL)
L:Leiomyoma | 平滑筋腫 |
E:Eccrine spiradenoma | エクリンらせん腺腫 |
N:Neuroma | 神経腫 |
D:Dermatofibroma | 皮膚線維腫 |
A:Angiolipoma | 血管脂肪腫 |
N:Neurilemoma (Schwannoma) | 神経鞘腫 |
E:Endometriosis (Endometrioma) | 子宮内膜症 |
G:Glomus tumor | グロムス腫瘍 |
G:Granular cell tumor | 顆粒細胞腫 |
※ANGELという暗記方法もあるようです
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p640
- 有痛性皮下腫瘍の参考:みき先生の皮膚病理診断ABC ②付属器病変 p216
関連:2011 記述3 (血管脂肪腫)
記述問題18:解答 pagetoid
pagetoid spread
悪性黒色腫(とくに表在拡大型)で初期からみられる、表皮内で異形成のあるメラノサイトが個別性に分布する所見
進行すると個別性ではなく腫瘍胞巣を形成し、真皮へ浸潤するようになる
- 左右非対称性で境界不明瞭な病変
- Pagetoid spreadがあること
- maturation(2019 記述18)がないこと
上記3点は悪性黒色腫に共通する組織学的特徴とされる
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p696
- 参考:皮膚科セミナリウム メラノーマの病理像 日皮会誌:120(12), 2355―2365, 2010
記述問題19:解答 p.M492K
DNAは3つごとに1つのアミノ酸をコードし、1475番目付近では1474番目〜1476番目(3で割り切れる)が1つのアミノ酸をコードする読み枠となる
図55から本来はATGという配列であることがわかる→T(チミン)はU(ウラシル)に対応するため、アミノ酸はAUGであるMet(M)
ここでc.1475T>Aの変異が入ると、ATGがAAGに変化する→アミノ酸はAAGであるLys(K)となる
よって、アミノ酸表記で変異を示すとp.M492K
cはcoding DNA(塩基)の、pはアミノ酸(protein)の頭文字
- 塩基はDNAではアデニン(A), グアニン(G), シトシン(C), チミン(T)が、RNAではA, G, C, ウラシル(U)が含まれる
- アミノ酸は20種類あり、3文字で表記する方法と1文字で表記する方法(本問はこちら)がある
3塩基対で1つのタンパクをコードするため、1〜3番目の塩基対が1番目のアミノ酸をコードする
→本問の例として挙げられている1,000番目の塩基であれば、(997〜999番目までが333番目のアミノ酸をコードするため)1,000〜1,002番目の塩基は334番目のアミノ酸をコードすることになる。1,000〜1,002番目までの塩基配列はCGG > TGG、アミノ酸ではArg(R) > Trp(W)と変化する
記述問題20:解答 β2-ミクログロブリン (microglobulin)
透析アミロイドーシスでは、血液透析によって除去されずらいβ2-ミクログロブリンがアミロイドとして沈着する
皮膚では臀部や体幹部で限局性の皮下結節/丘疹や巨舌をきたし、他臓器では手根管滑膜(手根管症候群)・関節・心臓・血管など
アミロイドーシスと前駆物質
正常では見られないアミロイドが沈着して生じるのがアミロイドーシス
検出にはコンゴーレッド染色やダイレクト・ファスト・スカーレット染色を用いる
アミロイドーシスは病型によって前駆物質が異なる
病型 | 前駆物質 | |
皮膚限局性アミロイドーシス | アミロイド苔癬 | ケラチン |
斑状アミロイドーシス | ||
結節性皮膚アミロイドーシス | 免疫グロブリンL鎖(AL) | |
全身性アミロイドーシス | ALアミロイドーシス | AL ※多発性骨髄腫を合併することがある |
家族性全身性アミロイドーシス | トランスサイレチン | |
アポA1(脂質輸送蛋白) | ||
透析アミロイドーシス | β2-ミクログロブリン |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p318
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p430
関連問題
- 2018 選択57(全身性アミロイドーシスの症状)
- 2018 選択61 (アミロイド苔癬の前駆物質)
- 2014 選択48 / 2013 選択54 (結節性アミロイドーシスの前駆蛋白)
- 2009 選択43 (透析アミロイドーシスの前駆蛋白)