日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成29(2017)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版、ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
※本記事で参考にしたのは皮膚科学 第10版ですが、11版が出ているので上記リンクは新版です
2017 選択問題51〜75の解答解説は下記
-
平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題51〜75
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見出し
- 1 平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択 76〜93 + 記述問題
- 1.1 選択問題76:解答 1, 2
- 1.2 選択問題77:解答 1
- 1.3 選択問題78:解答 3
- 1.4 選択問題79:解答 3
- 1.5 選択問題80:解答 1
- 1.6 選択問題81:解答 2
- 1.7 選択問題82:解答 2, 4
- 1.8 選択問題83:解答 1, 3
- 1.9 選択問題84:解答 2, 3
- 1.10 選択問題85:解答 1, 5
- 1.11 選択問題86:解答 2, 3
- 1.12 選択問題87:解答 2
- 1.13 選択問題88:解答 3
- 1.14 選択問題89:解答 5
- 1.15 選択問題90:解答 2, 3
- 1.16 選択問題91:解答 1
- 1.17 選択問題92:解答 3
- 1.18 選択問題93:解答 2
- 1.19 記述問題1:解答 Wickham(ウィッカム)線条
- 1.20 記述問題2:解答 TPLA
- 1.21 記述問題3:解答 モンドール病
- 1.22 記述問題4:解答 DDS (ジアフェニルスルホン, レクチゾール®)
- 1.23 記述問題5:解答 asteroid body (星状体 or 星芒体)
- 1.24 記述問題6:解答 drug-induced lymphocyte stimulation test
- 1.25 記述問題7:解答 黄色爪症候群 (yellow nail syndrome)
平成29年度(2017年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択 76〜93 + 記述問題
選択問題76:解答 1, 2
神経線維腫症2型(NF2)に関する問題
聴神経鞘腫が主体となり、生命予後はNF1より悪い→1, 2
神経線維腫症2型 (NF2)
メルリンをコードするNF2遺伝子変異が原因の常染色体優性遺伝疾患
- 腫瘍は神経"鞘腫"が中心で、とくに両側聴神経などで生じやすい
→聴力障害をきたす。生命予後もNF1より悪い - NF1のようなカフェオレ斑は数・頻度ともに少ない
- 1. NF1よりNF2のほうが生命予後は悪い
- 2. NF2では両側聴神経鞘腫が特徴
- 3. 神経線維腫はNF1で多発する。NF2では神経"線維"腫は少数で、神経鞘腫が主体
- 4. NF1ではカフェオレ斑が多発し、思春期後に6個以上あると確率が高い(six spots criterion)
NF2では少数にとどまる - 5. 小レックリングハウゼン斑(直径1cm以下のカフェオレ斑)がみられるのはNF1
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p394(ALL)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p547(2・3・4)
選択問題77:解答 1
母趾爪部の色素斑でダーモスコピーでは黒色〜一部褐色の均一構造を認め、Red-black lacunasの像→1
疾患としては爪甲下血腫に該当する
- 1. Red-black lacunas:赤〜黒色の均一構造物で血管腫などの血管病変でみられ、組織学的に拡張血管や赤血球に相当する
- 2. multiple blue-gray globules(多発性青灰色小球):青灰色の色素小球で、組織学的にメラニンに富む小型の腫瘍巣に相当する基底細胞癌の所見
- 3. aggregated globules:メラノサイト病変でみられる色素小球の集まり
- 4. irregular blotches(不規則色素沈着):広範囲の毛包および表皮内でメラニン色素が増生した状態で、悪性黒色腫を示唆する
- 5. Leaf-like areas:褐色〜灰黒色の葉状構造で、基底細胞癌辺縁部の腫瘍胞巣に相当する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p61(1)/59(2・5)
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p162(2)/11(3)/71(4)/160(5)
選択問題78:解答 3
背部色素斑のダーモスコピー像
青灰色の領域がみられ、spoke wheel areas(車軸状領域)に相当する→3
leaf like areasと共に基底細胞癌を示唆する所見
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p59(1・3・5)/62(4)
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p160(3)/168(1・5)/8・48(2)/114(4)
- 参考・図引用:Dermatoscopy for melanoma and pigmented lesions.
関連問題
- 2019 選択81 (基底細胞母斑症候群のダーモスコピー所見)
- 2016 選択69(leaf like areasのダーモスコピー)
- 2012 選択88 (ダーモスコピー像から病理所見を選ぶ)
選択問題79:解答 3
色素斑のダーモスコピー
皮丘平行な色素沈着と、一部で青灰色部分が見られる
規則的な色素沈着であり、悪性黒色腫の真皮内浸潤より良性の複合型色素性母斑を考える→3
色素性母斑はメラノサイトが表皮基底膜部にある場合(境界母斑)茶褐色だが、深部に存在すると(複合母斑ないし真皮内母斑)青みが強くなる
これをダーモスコピーで観察しているのが本問と言える
- 1. 血管腫:紅色の均一構造(red lacunae)が見られる
- 2. 基底細胞癌:樹枝状血管やleaf like area、blue-gray globulesが特徴
- 3. 複合型色素性母斑:皮丘並行だが規則的な色素沈着と、青灰色の真皮内メラノサイト部分が見られる
- 4. 色素性疣贅:疣贅では点状出血が見られ、治療後の血腫は紅色均一構造となる
- 5. 末端黒子型悪性黒色腫:皮丘に並行かつ不規則な色素沈着がみられ、青灰色部分がある場合は真皮内浸潤を示唆する(blue-whitish veil)
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p378/61(1)/58(2)/63(4)
- 参考書籍:ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 p86(3)/172(1)/158-167(2)/58・154(5)
※p86の写真は本問と同一 - 参考(悪性黒色腫と複合型母斑の鑑別点):足底に発生した複合型母斑の悪性黒色腫との鑑別点 日皮会誌:128(2), 197-203, 2018
関連問題
- 2021 選択81(同一問題)
- 2019 選択78 (メラニンの存在部位と視診)
選択問題80:解答 1
足底で思春期頃発症の鶏眼状点状病変が多発しており、点状掌蹠角化症を疑う
AAGAB遺伝子が原因となる常染色体優性遺伝疾患→1
点状掌蹠角化症
AAGAB遺伝子変異が原因となる、常染色体優性遺伝疾患
遺伝性疾患だが思春期頃発症で他の掌蹠角化症より遅い
- 症状:点状の角化性小丘疹(鶏眼に類似)がみられ、脱落後に小陥凹を残す
- 組織:病変中央部で過角化があり、表皮は下方へ圧排される(図26c)
- 1. AAGAB:点状掌蹠角化症1A型の原因遺伝子(AD)
- 2. GJB3:変動性紅斑角皮症の原因遺伝子(AD)。びまん性掌蹠角化がみられる
- 3. LIPH:先天性乏毛症の原因として、日本人で最多の遺伝子(AR)
- 4. SERPINB7:手背や足背にも皮疹をきたす長島型掌蹠角化症の原因遺伝子(AR)
- 5. SPINK5:曲折線状魚鱗癬や陥入性裂毛をきたすネザートン症候群の原因遺伝子(AR)
*AD:常染色体優性遺伝疾患, AR:常染色体劣性遺伝疾患
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p278(1)/280(2)/371(3)/277(4)/275(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p341(1)/350(2)/724(3)/342(4)/337(5)
- 病理所見の参考:掌蹠角化症診療の手引き日皮会誌:130(9), 2017-2029, 2020のp2022
- 参考・図引用:Punctate palmoplantar keratoderma type 1: a novel AAGAB mutation and efficacy of etretinate Acta Derm Venereol. 2015 Jan;95(1):110-1.
選択問題81:解答 2
表皮水疱症の病型と原因分子を問う問題
接合部型表皮水疱症の原因分子はラミニン332(ラミニン5)→2
先天性表皮水疱症の病型と原因蛋白については下記
-
先天性表皮水疱症の病型と原因蛋白・遺伝形式まとめ
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- 1. 単純型表皮水疱症:ケラチン5/14が原因
- 2. 接合部型表皮水疱症:ラミニン332(ラミニン5)ないしBP180(17型コラーゲン)が原因
ラミニンγ1(p200)は基底膜に存在し類天疱瘡の原因となる。半数で尋常性乾癬を合併するという特徴がある - 3. 筋ジストロフィー合併型:プレクチンが原因。プレクチン遺伝子変異では幽門閉鎖の合併もある
- 4. 栄養障害型表皮水疱症:7型コラーゲンが原因。なお7型コラーゲンは後天性表皮水疱症の原因でもある
- 5. キンドラー症候群:キンドリン1が原因
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p6/238 264(ラミニンγ1)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p10/317
関連:表皮水疱症の原因分子は頻出, 関連問題は上記カード内の記事参照
選択問題82:解答 2, 4
悪性腫瘍を伴いやすい自己抗体を問う問題
代表はTIF-1γおよびRNAポリメラーゼⅢ→2, 4
- 1. 抗CCP抗体:関節リウマチに対してリウマトイド因子(RF)より感度・特異度ともに高く、陽性例は関節破壊が早期に進むとされる
- 2. 抗TIF-1γ抗体:悪性腫瘍を伴う皮膚筋炎の60%で陽性となる
- 3. 抗Sm抗体:SLEに疾患特異性の高い自己抗体(20〜30%で陽性)
- 4. 抗RNAポリメラーゼⅢ抗体:腎クリーゼおよび悪性腫瘍と関連する全身性強皮症の自己抗体
- 5. 抗M3ムスカリン作動性アセチルコリン受容体抗体:シェーグレン症候群の病因抗体と考えられている
乾燥症状に用いるサリグレン(エボザック®)は同受容体を刺激する
皮膚筋炎の自己抗体と臨床症状については下記参照
-
皮膚筋炎 自己抗体と臨床症状 まとめ
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- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p214(1)/208(2)/195(3)
- 選択肢4の参考:抗RNAポリメラーゼ抗体陽性全身性強皮症患者における臨床的特徴:悪性腫瘍との関連を中心とした検討 日皮会誌:125(7), 1419-1423, 2015
- 選択肢5の参考:皮膚科セミナリウム 第52回 シェーグレン症候群 日皮会誌:119(9), 1823―1828, 2009
関連問題
- 2021 記述6(悪性腫瘍を合併しやすい皮膚筋炎の自己抗体)
- 2014 選択30 / 2012 選択32 (RNAポリメラーゼⅢ抗体と関連疾患)
選択問題83:解答 1, 3
ベムラフェニブ(ゼルボラフ®)に関する問題
BRAF阻害薬でBRAF V600変異を有する悪性黒色腫に利用され、重篤な有害事象にQT延長がある→1, 3
BRAF阻害薬および併用で使われるMEK阻害薬については下記
-
BRAF阻害薬とMEK阻害薬 【悪性黒色腫】
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- 1. BRAF V600変異(V600Eが大多数、稀にV600K)を有する悪性黒色腫に保険適用がある
- 2. BRAF変異は白人に多いlow-CSD≒表在拡大型で高頻度だが、アジア人で半数を占める末端黒子型では低頻度
→アジア人では適応患者も少ない - 3. QT間隔延長:2%でみられた副作用で、減量が必要。エンコラフェニブにも同様の記載がある
- 4. 肝で代謝を受け、94%は糞中へ排泄される
- 5. 免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体)では自己免疫疾患の発症頻度が高い(irAE)
ベムラフェニブの重篤な有害事象に皮膚癌(ケラトアカントーマや有棘細胞癌)がある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p486(1)/485(5)
- 選択肢3・4の参考:ゼルボラフ 添付文書
- 選択肢2の参考:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 メラノーマ診療ガイドライン 2019 日皮会誌:129(9), 1759-1843, 2019のp1767
※ベムラフェニブはMEK阻害薬と併用不可で単剤でしか利用できないが、併用のほうが有効性が高く現在はほぼ用いられない
(ので今後本問の類似問題が出る可能性は非常に低いだろう)
選択問題84:解答 2, 3
矢印では膠原線維が変性し、好酸球顆粒が付着して炎のようにみえる所見(flame figures)が見られる
好酸球が増加する疾患、とくに好酸球性蜂窩織炎(Wells症候群)の特徴→2, 3
好酸球性蜂窩織炎 (Wells症候群)
感染症や虫刺症を契機に、四肢で瘙痒を伴う浮腫性紅斑・水疱をきたす
組織学的にflame figures*が特徴で、末梢血好酸球増多もみられる
治療はステロイド内服・外用が行われる
*変性した膠原線維に好酸球顆粒が付着する所見。Wells症候群の8割に見られるが、虫刺症・水疱性類天疱瘡等でも出現することがある
- 1. Sweet病:白血病などに合併する隆起性紅斑で、組織では真皮血管周囲の好中球浸潤が特徴
- 2. Wells症候群:flame figuresをきたす代表的な疾患
- 3. 虫刺症:flame figuresをきたすことがあり、またWells症候群の誘因になる
- 4. 円板状エリテマトーデス:境界明瞭な類円形局面で、組織では基底膜の液状変性や真皮のムチン沈着が特徴
- 5. IgA血管炎:主に下腿で浸潤をふれる紫斑が出現し、組織では白血球破砕性血管炎が特徴。蛍光抗体法で血管壁周囲にIgAが沈着する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p357(2)/143(1)/196(4)/165(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p62・422(2)/412(4)/204(5)
- flame figuresの参考:Eosinophilic Cellulitisの1例 アレルギー 53(10), 1079-1083, 2004
選択問題85:解答 1, 5
大型の明るい胞体をもつPaget細胞(CK7陽性)が表皮を中心に増殖しており、Paget病の診断
(組織だけでは不明だが)選択肢からは乳房外Paget病と考える
乳房外Paget病 (EMPD)
アポクリン腺由来の腫瘍で、(アポクリン腺のある)外陰部や肛囲に好発し腋窩にも生じえる
組織では表皮内で大型の明るいPaget細胞が増殖するのが特徴
なお消化器癌の浸潤(Paget現象)でも類似した組織像が見られることがあり、免疫染色が鑑別に用いられる
※CK7とGCDFP15が陽性、CK20陰性となるのがEMPDの特徴
- 1. 乳房外Paget病は外陰部が大半を占め、その他腋窩や臍囲に生じることがある
- 2. 腫瘍細胞はCEA・GCDFP15・CK7に陽性となる。S100は神経系細胞が染まる(Langerhans細胞組織球症など)
- 3. 付属器内に進展しても、上皮内癌であれば予後は悪くない。基底膜を破り下層へ浸潤する(Paget癌)と予後不良となる。TNM分類でも腫瘍の厚さと脈管浸潤が関わる
- 4. 放射線感受性が高くはないが、手術不能例では代替療法として推奨されており極めて低いとは言えない
- 5. 進行期病変に有効性が確立された薬物療法はない(保険適用薬剤なし)。low-dose FP(5-FU+CDDP)やドセタキセルが使用されることがある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p456(1・3)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p619(1・3・5)
- 参考:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 乳房外パジェット病診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(2), 225-244, 2021のp240(4)/234(5)
関連問題
選択問題86:解答 2, 3
境界明瞭な真皮内腫瘍で紡錘形細胞の増殖がみられ、神経線維腫の像
免疫染色ではS-100およびCD34が陽性となる→2, 3
その他EMAも陽性
- 1. Neurofilament:神経細胞の軸索で陽性となり、神経芽腫やユーイング肉腫の診断に利用される
- 2. S-100:神経細胞マーカーでありランゲルハンス細胞やシュワン細胞、メラノサイトなどで陽性となる
- 3. CD34:血管内皮のマーカーで、血管肉腫・神経線維腫・隆起性皮膚線維肉腫等で陽性となる。皮膚線維腫では陰性のため、隆起性皮膚線維肉腫との鑑別に利用される
- 4. CEA:汗腺のマーカーで、皮膚科領域では乳房外Paget病で陽性となる
- 5. Adipophilin:脂腺細胞で陽性となり、脂腺癌の診断に利用される
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p34-35・420(2)
- 選択肢3の参考:(旧版)軟部腫瘍診療ガイドライン 2012 | Mindsガイドラインライブラリ Clinical Question 1 診断に有用な免疫組織化学的検査は
※最新版の2020では免疫染色の項が削除されている - 選択肢5の参考:脂腺癌:Sebaceous carcinoma の臨床病理 日医大医会誌 2016; 12(4)
関連問題
- 2023 選択42 / 2019 選択86 / 2014 選択68 / 2013 選択70 (神経線維腫と免疫染色)
- 2014 記述13 (神経線維腫のHE)
選択問題87:解答 2
抗癌剤と特徴的症状について問う問題
ソラフェニブでは手足症候群が生じるが、ざ瘡様皮疹は一般的ではない→2
- 1. 5-FU:光線過敏症がある。その他テガフール(TS-1)でも光線過敏症が生じる
- 2. ソラフェニブ(ネクサバール®):マルチキナーゼ阻害薬であり、手足症候群が生じやすい。ざ瘡様皮疹はEGFR阻害薬であるセツキシマブ(アービタックス®)やパニツマブ(ベクティビックス®)で多い皮膚障害
- 3. シクロホスファミド:色素沈着の他、心毒性や出血性膀胱炎が生じる
- 4. エルロチニブ(タルセバ®):EGFR阻害薬であり、皮膚乾燥やざ瘡様皮疹(61.6%)、爪囲炎が生じる
- 5. ドセタキセル:色素沈着や爪甲剥離症が生じる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p230(1)/152(2)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p280(1)/292(2・4)/230(3)
- 参考:各種添付文書
関連問題
選択問題88:解答 3
タイトジャンクションストランドの主要成分はクローディン→3
タイトジャンクション (密着結合)
上皮細胞間の接着構造で、上皮細胞同士の接着面で最も外層である顆粒層に存在する
クローディンおよびオクルディンによって構成され、特にクローディンが最も重要
- 1. オクルディン:こちらもタイトジャンクションの構成蛋白
- 2. カドヘリン:接着結合(アドヘレンスジャンクション)の構成蛋白
- 3. クローディン:タイトジャンクションを構成する主要な膜蛋白
- 4・5. デスモグレイン・デスモコリン:有棘細胞間のデスモソームを構成する膜貫通蛋白
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p7(1・3・4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p7-9(ALL)
- 参考:アレルギー用語解説シリーズ タイトジャンクション アレルギー 65(8), 1022-1023, 2016
※最終ページに本問の類問が掲載されている
関連問題
選択問題89:解答 5
診療ガイドラインに関する問題
根拠としてエビデンスレベルが高いのはランダム化比較試験(RCT)ないしそのメタアナリシスだが、限定されるわけではない→5
- 1. 患者の価値観や治療に対する希望を十分に反映し、患者と協働して医療行為を行う
- 2. 可能な限り最新版を確認して利用する
- 3. 作成母体により内容が異なる。例えば国内の血管炎ガイドラインは日本皮膚科学会のものと、日本循環器学会・血管外科学会等のものがある
- 4.ガイドラインに記載されている内容が実施されないことをもって、実際の診療にあたる医師の責任を追訴する根拠に資するものではない
- 5. ランダム化比較試験はエビデンスレベルが高いが、限定されるものではない
研究デザインとエビデンスレベル(質の高いもの順)
Ⅰ | システマティック・レビュー/メタアナリシス |
Ⅱ | 1つ以上のランダム化比較試験 |
Ⅲ | 非ランダム化比較試験 |
Ⅳ | 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究) |
Ⅴ | 記述研究(症例報告やケース・シリーズ) |
Ⅵ | 専門委員会や専門家個人の意見 |
希少疾患など症例数が少ない場合、症例報告やエキスパートの意見のみでエビデンスレベルの低いデータしかない場合が多い
(大規模な臨床研究を行ってn数を確保することが困難なため)
→5のように「根拠をランダム化比較試験に限定」していてはガイドラインが作成できなくなる
ex. 好酸球性筋膜炎ガイドラインではエビデンスレベルB以上の治療はない
- 選択肢1・4の参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021
- エビデンスレベルの参考:がん診療ガイドライン│皮膚悪性腫│診療ガイドライン(第2 版)作成にあたって
関連問題
選択問題90:解答 2, 3
保険診療についての問題
- 1. 皮膚切開術の長径は(切開を加えた長さではなく)膿瘍やせつなどの大きさを示す
近接しているものはまとめてカウントする - 2. 腫瘍摘出において露出部は頭部、頸部、上肢にあっては肘関節以下及び下肢にあっては膝関節以下をいう(創傷処理と同一)
:半袖半ズボンではみ出す部位 - 3. 背部は非露出部であり、良性腫瘍切除術K006 12cm以上は8,320点
- 4. 皮膚悪性腫瘍切除術1(K007-1)は広汎切除のため、リンパ節郭清が必要
悪性腫瘍切除術2が単純切除に該当する - 5. 面積に依らず全層植皮のほうが分層植皮より点数は高い
植皮術の保険点数
保険点数 | 全層 | 分層 |
25cm2未満 | 10,000点 | 3,520点 |
25cm2以上100cm2未満 | 12,500点 | 6,270点 |
100cm2以上200cm2未満 | 28,210点 | 9,000点 |
200cm2以上 | 40,290点 | 25,820点 |
- 選択肢1の参考:K001 皮膚切開術 | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
- 選択肢2の参考:K005 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部) | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
- 選択肢3の参考:K006 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外) | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
- 選択肢4の参考:K007 皮膚悪性腫瘍切除術 | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
- 選択肢5の参考:K013 分層植皮術 | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと, K013-2 全層植皮術 | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
関連(保険診療)
- 2020 選択97 (真皮縫合加算, 植皮術, 熱傷処置, センチネルリンパ節生検等)
- 2020 選択98 (鶏眼処置, DLST, 皮膚科軟膏処置等)
- 2019 選択100 (鶏眼胼胝処置の算定回数, 熱傷処置, 皮膚切開術の長さ等)
- 2015 選択90 (鶏眼処置, 露出部位の定義, 皮膚切開術等)
- 2013 選択82 (熱傷処置, 皮膚科軟膏処置, 皮膚科特定疾患指導料等)
選択問題91:解答 1
免疫染色で用いられるAE1/AE3抗体に関する問題
AE1がタイプⅠケラチンを、AE3はタイプⅡケラチンを認識する→1
上皮細胞・癌腫細胞で陽性となるため、未分化悪性腫瘍の分化方向決定にも用いられる
- 1. ケラチン:上皮細胞に発現し、角層〜基底層まで幅広く存在する。粉瘤内の粥状物もケラチンである
- 2. アクチン:平滑筋細胞に発現し、代表的な抗体にα-SMA(smooth muscle actin)がある
- 3. ビメンチン:間葉系細胞に存在する中間系フィラメント。未分化有棘細胞癌ではケラチンに代わって発現が増加する
- 4. フィラグリン:角層でケラチン線維とケラチン・パターンを形成し、保湿機能・紫外線防御等を行う。前駆物質のプロフィラグリンはケラトヒアリン顆粒を構成している
- 5. デスモグレイン:有棘細胞間に存在し、デスモソームを構成する膜貫通蛋白
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p49(1・2・3)/
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p48(1・2・3)/
- 参考:抗体データベース - 免疫組織データベース~いむーの Antibody Database – Immuuno
関連:2020 選択81(未分化悪性腫瘍の分化方向決定に行われる染色)
選択問題92:解答 3
医療費助成対象の指定難病認定条件を問う問題
難病法による医療費助成を受けるには、一定程度以上の重症度である必要がある→3
医療費助成を受けるための条件・特定疾患と指定難病
指定難病であり「重症度分類等」に照らして症状の程度が一定以上の場合、医療費助成を受けられる
指定難病の条件は下記
- 発症の機構が明らかでなく
- 治療方法が確立していない
- 希少な疾患であって
- 長期の療養を必要とするもの
- 患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと
- 客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立していること
※1〜4のみだと難病、1〜6全てを満たせば指定難病
特定疾患と指定難病
特定疾患は従来56疾患で、審査をパスすれば医療費が公費負担(都道府県および市町村)となっていた
しかし患者数の増加による予算増加や、指定外疾患患者での不公平感が問題となっていた
そのためH27(2015)年1月から難病法が施行された
- 指定疾患数:56→300疾患以上と大幅に増加
(施行後にも適宜追加されている) - 医療費:一定以上の重症度であれば助成を受けられるが、原則自己負担が必要
所得に応じて自己負担上限額は変わる - 公費負担者:都道府県および市町村と国が折半
要約すれば、「疾患数を絞り限られた患者に手厚い支援を行う(自己負担ゼロ)より、対象疾患を広げ多くの患者に浅く支援を行う(自己負担アリ)方が公益性が高いのでそのような方向へ変わってきた」といえる
なお旧特定疾患の多くは指定難病へ移行したが、現在でもスモンとヒト由来乾燥硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病は特定疾患として残っている。これは医原性疾患で患者に自己負担を求めるのは酷なので、全額公費負担を継続しましょう、という発想と思われる(筆者の推測です)
上記より本問の解答は下記
- 1. 年齢:関係しない
- 2. 所得:医療費助成における自己負担上限額は所得に応じて変動する
※通常の高額療養費制度よりは低くなっている - 3. 重症度:旧来の特定疾患と異なり、指定難病で医療費助成を受けるためには一定以上の重症度である必要がある
- 4. 確定診断:指定難病であるためには診断基準に沿った確定診断が必要だが、これは旧来から変化していない
- 5. 罹患期間:「長期の療養を必要とすること」は難病の要件
- 医療費助成制度の参考:指定難病患者への医療費助成制度のご案内 – 難病情報センター
- 特定疾患と指定難病の参考:「2015年から始まった新たな難病対策」 – 難病情報センター
関連問題
選択問題93:解答 2
日本人ノーベル賞受賞者の業績を問う問題
黄熱およびその治療法(ワクチン)に関する発見は日本人ノーベル受賞者の業績ではない→2
日本人ノーベル賞受賞者 業績(医学・生理学賞)
2022年現在、日本人のノーベル医学・生理学賞受賞者は5名
氏名 | 業績 | 受賞年 |
本庶 佑 | ニボルマブ(オプジーボ®) 免疫チェックポイント阻害薬 |
2018 |
大隅 良典 | オートファジー機構の解明 | 2016 |
大村 智 | イベルメクチン(ストロメクトール®) 線虫(寄生虫)治療薬 |
2015 |
山中 伸弥 | iPS細胞 | 2012 |
利根川 進 | 抗体多様性の原理 | 1987 |
本問の解答は下記となる(カッコ内はノーベル賞受賞年を示す)
- 1. オートファジーの仕組み:大隅 良典(2016)
- 2. 黄熱およびその治療法:マックス・タイラー(1951)がワクチンを開発した。日本人研究者では野口英世が知られるが、原因同定に至らず研究途中に逝去した
- 3. 抗体の多様性:利根川 進(1987)
- 4. 線虫治療薬:大村 智 (2015)。イベルメクチンは皮膚科領域では疥癬に用いられる
- 5. 細胞の分化万能性:山中 伸弥(2012)
関連問題(ノーベル賞)
- 2022 選択43 (2021年ノーベル生理学医学賞)
- 2023 選択30 / 2022 選択58 / 2021 選択92 (日本人ノーベル賞受賞者の業績)
- 2012 記述9 (2011年ノーベル賞 自然免疫活性化と獲得免疫における樹状細胞の役割)
記述問題1:解答 Wickham(ウィッカム)線条
扁平苔癬に特徴的な白色線条を問う問題
Wickham線条
扁平苔癬でみられる皮疹表面の細い灰白色線条で、ダーモスコピーでは「whitish striae」と呼ばれる
組織学的に顆粒層の楔状肥厚と対応する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p292
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p376
関連問題
- 2022 記述9 (★同一問題★)
- 2021 選択82 (Wickham線条のダーモスコピーと組織所見)
- 2020 選択17 / 2012 選択13 (扁平苔癬の組織学的特徴)
記述問題2:解答 TPLA
TP抗原を用いた方法のうち、ラテックス凝集反応を用いた測定法はTPLAと呼ばれる
梅毒の血清学的検査法についてのまとめは下記参照
-
梅毒 血清学的検査法の比較 STS法 TPHA法(TPLA法)
続きを見る
旧来は「STS法がTP法よりも感染後早期に陽転化」していたが、近年用いられるTPLAはSTSより早期に陽転化することがある
※教科書では旧来の「STS(RPR)法はTPHAよりも早く陽転化する」とのみ記載してある場合が多いので注意が必要
関連問題
記述問題3:解答 モンドール病
モンドール病
30〜60歳代女性の胸部や上腹部で索状の皮下硬結をきたす疾患
男性の陰茎背や冠状溝に生じるとnonvenereal sclerosing lymphangitis of the penisと呼ばれる
病態はリンパ管や静脈の増殖・血栓性閉塞で、胸部手術や圧迫が誘因となる
組織学的に脈管の肥厚と内腔狭窄がみられる
数週間〜数ヶ月で自然消退するため経過観察が基本
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p179
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p233
関連:2014 記述3(ほぼ同一問題, 臨床・病理写真あり)
記述問題4:解答 DDS (ジアフェニルスルホン, レクチゾール®)
体幹部に多数の水疱がみられ、組織学的には表皮下水疱かつ好酸球の浸潤がみられる
蛍光抗体直接法においてIgA/C3の基底膜への線状沈着がみられ、抗Dsg1/3抗体や抗BP180抗体陰性なことから線状IgA水疱性皮膚症の診断
治療ではDDSが第一選択
DDS (ジアフェニルスルホン, レクチゾール®)
葉酸合成阻害作用をもつサルファ剤の一種
IgAが沈着する天疱瘡・類天疱瘡群ではDDSが第一選択となる
具体的には下記
IgA関連の水疱症 | 蛍光抗体直接法(IgA) | 原因抗原 |
IgA天疱瘡 | 表皮細胞間 | デスモコリン1 |
線状IgA水疱性皮膚症 | 基底膜部への線状沈着 | 17型コラーゲン (LAD-1, LAD-97) |
7型コラーゲン | ||
デューリング疱疹状皮膚炎 | 基底膜部への顆粒状沈着 | トランスグルタミナーゼ |
その他ハンセン病や持続性隆起性紅斑、色素性痒疹などの治療に使われる
副作用:溶血性貧血, メトヘモグロビン血症, DIHSなど
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p263/102(DDS)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p313/118(DDS)
関連問題
- 2013 選択35 (線状IgA水疱性皮膚症の蛍光抗体法所見)
- 2010 選択33 (線状IgA水疱性皮膚症の特徴)
記述問題5:解答 asteroid body (星状体 or 星芒体)
サルコイドーシスで特徴的な針状構造を問う問題
サルコイドーシス 病理
乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫(Langhans型巨細胞)が特徴
下記2つの所見もみられる(星状体の方が高頻度)
- 星状体:中心に核を有する放射状の針状構造
- シャウマン小体:好塩基性で円形の層状構造。カルシウム沈着を伴う
なおスポロトリコーシスでみられる真菌胞子から好酸性構造が伸びる像も星芒体と呼ばれる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p346
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p494
関連問題
記述問題6:解答 drug-induced lymphocyte stimulation test
DLSTのフルスペルを問う問題
DLST(drug-induced lymphocyte stimulation test):薬剤性リンパ球刺激試験
採血したリンパ球を培養し、薬剤で刺激してリンパ球増殖に伴うDNA合成量を測定する
主にT細胞の関与する薬疹で原因薬剤の検索に有用
特徴は下記
- 感度が低いため陰性であっても否定できない
- SJSやTENのような重症薬疹では早期から陽性となりやすい
- DIHSでは初期は陰性だが発症4〜6週経過後から陽転化する
- NSAIDsや乳酸菌では偽陽性になりやすい
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p83
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p7-9(ALL)
関連問題
- 2015 選択40(DIHSでの陽性時期, 偽陽性になりやすい薬剤など)
- 2014 選択42(測定原理)
- 2013 選択50 / 2011 選択52 (DIHSでのDLST陽性時期:発症早期は陰性)
記述問題7:解答 黄色爪症候群 (yellow nail syndrome)
黄色爪と下腿浮腫、気管支拡張症から黄色爪症候群(yellow nail syndrome)の診断
黄色爪症候群
リンパ循環障害による後天性の症候群
- ほぼ全爪の黄色化
- 呼吸器疾患(慢性気管支炎・気管支拡張症・胸水貯留)
- リンパ浮腫 (四肢や顔面)
が3徴
30%は自然軽快する
※黄色爪自体は薬剤副作用(ブシラミンやd-ペニシラミン)でもみられる
なお本文中のD2-40はリンパ管に特異性の高い免疫染色
血管・リンパ管と免疫染色 | 血管 | リンパ管 |
CD31 | + | + |
CD34 | + | - |
D2-40 | - | + |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p372
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p741
関連問題
- 2014 記述10(ほぼ同一の問題)
- 2011 選択83/84 (黄色爪の診断と原因薬剤)