日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 令和2(2020)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会 (問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第10版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
※本記事で参考にしたのは皮膚科学 第10版ですが、11版が出ているので上記リンクは新版です
この記事は選択問題31〜60の解説です
2020年度の選択問題1〜30は下記
-
令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題1〜30
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見出し
- 1 令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題31〜60
- 1.1 選択問題31:解答 2
- 1.2 選択問題32:解答 5
- 1.3 選択問題33:解答 5
- 1.4 選択問題34:解答 5
- 1.5 選択問題35:解答 1, 4
- 1.6 選択問題36:解答 2
- 1.7 選択問題37:解答 1, 3
- 1.8 選択問題38:解答 3
- 1.9 選択問題39:解答 3
- 1.10 選択問題40:解答 2
- 1.11 選択問題41:解答 3
- 1.12 選択問題42:解答 2, 4
- 1.13 選択問題43:解答 1, 2
- 1.14 選択問題44:解答 3
- 1.15 選択問題45:解答 4, 5
- 1.16 選択問題46:解答 5(現在はなし)
- 1.17 選択問題47:解答 3
- 1.18 選択問題48:解答 3
- 1.19 選択問題49:解答 3
- 1.20 選択問題50:解答 5
- 1.21 選択問題51:解答 4
- 1.22 選択問題52:解答 2
- 1.23 選択問題53:解答 2
- 1.24 選択問題54:解答 3
- 1.25 選択問題55:解答 5
- 1.26 選択問題56:解答 2, 5
- 1.27 選択問題57:解答 5
- 1.28 選択問題58:解答 2, 5
- 1.29 選択問題59:解答 1, 5
- 1.30 選択問題60:解答 5
令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題31〜60
選択問題31:解答 2
慢性皮膚粘膜カンジダ症の原因遺伝子を問う問題
IL17F遺伝子変異により、慢性皮膚粘膜カンジダ症を発症する
乾癬の生物学的製剤のターゲットとなっているサイトカインとの関連で、真菌(カンジダ)免疫を担う部位を考える
- 1. IL12:阻害作用を持つ生物学的製剤にウステキヌマブ(ステラーラ®)がある
- 2. IL17:阻害作用を持つ生物学的製剤にセクキヌマブ(コセンティクス®)・イキセキズマブ(トルツ®)・ブロダルマブ(ルミセフ®)がある
副作用として、カンジダ症のほか炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)の悪化・発症が報告されている - 3. IL22:アトピー性皮膚炎の病態に関わるとされ、阻害作用を持つフェザキヌマブが開発中
- 4. IL23:阻害作用を持つ生物学的製剤にウステキヌマブ(ステラーラ®)・リサンキズマブ(スキリージ®)・グセルクマブ(トレムフィア®)・チルドラキズマブ(イルミア®)がある
- 5. TNF:阻害作用を持つ生物学的製剤にインフリキシマブ(レミケード®)・アダリムマブ(ヒュミラ®)・セルトリズマブ(シムジア®)がある
副作用として脱髄疾患(多発性硬化症等)がある
慢性皮膚粘膜カンジダ症
Th17に関連する遺伝子であるIL17RA・IL17Fなどの変異により発症
皮膚や粘膜でカンジダ症が出現し、慢性的な経過を取る
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p539
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p870〜871
関連:2019年度 選択問題2(IL17抗体製剤投与中の皮膚カンジダ症)
選択問題32:解答 5
コントロール不良の糖尿病患者で右下肢の感染があり、図10では紫斑を伴っている
WBC 20,000/μL over, CRP 30mg/dL overで炎症反応が強く、収縮期血圧<80mmHgと全身状態も悪いことから、壊死性筋膜炎やガス壊疽などの重症皮膚・軟部組織感染症を考える
対応として優先度が低いのはCTアンギオ→5
- 1. 試験切開:皮下組織の変性や壊死を確認するため施行される
- 2. 血液培養:菌血症に至っているか否か、および原因菌検索のため施行される
- 3. 創部培養:原因菌検索のため施行される
- 4. 単純CT:病変の範囲やガス貯留有無の判定に施行される
- 5.CTアンギオ:急性動脈閉塞症や閉塞性動脈硬化症を評価するため施行される
壊死性軟部組織感染症は初期診断が難しく、試験切開の重要性がよく強調される
一方糖尿病性足壊疽では末梢動脈の血流不全があるとデブリードマンにより壊死や壊疽が拡大する可能性があるため、血流評価を先行することが望ましい。両者の病歴上の違い(壊死性軟部組織感染症は数日単位で急性、糖尿病性足壊疽は数週単位で亜急性)に注意する。
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p526〜527
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p811〜812
関連問題
- 2014 選択81 / 2011 選択30 / 2009 選択65 (壊死性筋膜炎で必要な検査処置)
選択問題33:解答 5
Hansen病についての一般問題
2型らい反応(らい性結節性紅斑)ではサリドマイドが用いられる→5
ハンセン病
抗酸菌であるMycobacterium lepraeによる慢性感染症で、皮膚と末梢神経に症状をきたす
菌数によって少菌型(PB)・多菌型(MB)に分けられる
ハンセン病 病型分類 | 少菌型 | 多菌型 |
らい菌 | 少数/発見しがたい | 多数 |
皮疹の数 | 少数 | 多数 |
皮疹の分布 | 左右非対称 | 左右対称 |
知覚異常 | 高度 | 軽度/正常 |
治療:リファンピシン(RFP)・ダプソン(DDS)・クロファジミン(CLF)を用いた多剤併用療法が行われる
治療やストレスを契機に炎症反応が急性に増悪することをらい反応と呼び、発熱・関節痛・結節性紅斑などをきたす
- 1. Hansen病の原因はM. leprae。M. chelonaeは非結核性抗酸菌であり、土や水中に棲息する
- 2. 本邦での新規発症患者は10名/年以下で、大半が在日外国人
- 3. らい菌は通常培養できないため、皮膚スメア検査や生検組織の抗酸菌染色で確定診断を行う
- 4. 少菌型・多菌型ともにRFPやDDSを用いた多剤併用療法を行う
- 5. 2型らい反応に対しては、NSAIDsや一時的なステロイド内服の他、サリドマイドが保険適用となっている。原疾患治療はそのまま継続する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p552〜555(ALL)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p834〜841(1・2・3・4)
関連問題
- 2021 選択35 / 2019 選択43 / 2013 選択30 / 2010 選択79 (らい菌は培養不可)
- 2012 選択28 / 2009 選択25 (年間発症者数)
- 2019 選択43 / 2016 選択24 / 2010 選択21 (多菌型と少菌型の比較など)
- 2012 選択47 (結節性紅斑を生じる疾患)
選択問題34:解答 5
疥癬治療に関する問題
イベルメクチンはNa+チャネルではなく、Cl-チャネルに作用する→5
- 1. クロタミトン(オイラックス®)は保険適用外であるが、「原則としてクロタミトンを疥癬に処方した場合,当該使用事例を審査上認める」とされている→△
- 2. フェノトリン(スミスリン®)は1回使用後、1週間あけて2回目を使用する
- 3. フェノトリンは昆虫類のNa+チャネルに作用し、脱分極を生じさせる
- 4. イベルメクチン(ストロメクトール®)は2回投与する場合、1週間間隔で投与する
- 5. イベルメクチンは無脊椎動物の"Cl-チャネル"に作用し、過分極を生じさせる
フェノトリン(スミスリン®)とイベルメクチン(ストロメクトール®)の比較
どちらも疥癬治療薬として用いられる
疥癬治療薬の比較 | フェノトリン (スミスリン®) |
イベルメクチン (ストロメクトール® 3mg) |
作用点 | Naチャネル | Clチャネル |
投与方法 | 1週間隔で1回1本を塗布し12時間経過してから洗浄除去
少なくとも2回の塗布が必要 |
200μg/kgを空腹時に服用 (高脂肪食で血中濃度が上昇する) |
その他 | アタマジラミ症でも用いられるが、耐性化が問題となっている | 200μg/kgを目安に投与し、15kg未満の小児には投与しない
肝障害の副作用あり |
関連問題
- 2021 選択79(疥癬の治療薬)
- 2018 選択32 (投与量)
- 2017 選択36 / 2016 選択25 (フェノトリンの適応患者)
選択問題35:解答 1, 4
重症熱性血小板減少性症候群(SFTS)についての問題
マダニが媒介し、皮膚症状よりは胃腸症状が主体となる→1, 4
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
マダニが媒介するSFTSウイルスによって生じる感染症
1〜2週間の潜伏期間を経て、腹痛・嘔吐・下痢などの胃腸症状と血小板および白血球減少、肝機能障害をきたす
- 1. 日本紅斑熱とならぶ、マダニ媒介感染症の一つ
- 2. ウイルス感染が原因であり、リケッチア感染症ではない
リケッチアは細胞内でしか生存できない特殊な細菌で、日本紅斑熱の原因菌Rickettsia japonicaやつつが虫病の原因菌Orientia tsutsugamushiが該当する - 3. 2009年に”中国”で初めて発見された
- 4・5. SFTSでは胃腸症状が出現しやすいが、日本紅斑熱と異なり皮疹は出現しない
関連問題
選択問題36:解答 2
HIV患者で多い皮膚疾患を問う問題
掌蹠膿疱症は一般的ではない→2
- 1. 薬疹:ST合剤による薬疹、ネビラピンによるStevens-Johnson症候群、アバカビルによるアナフィラキシー、逆転写酵素阻害薬やプロテアーゼ阻害薬によるリポジストロフィーなど
- 2. 掌蹠膿疱症:尋常性乾癬の合併は知られるが、掌蹠膿疱症は一般的ではない
- 3. 瘙痒性丘疹(pruritic papular eruption):掻痒感の強い慢性痒疹様皮疹
- 4. 脂漏性皮膚炎:80%以上でみられる
- 5. 好酸球性膿疱性毛包炎:毛孔一致性の無菌性膿疱が出現する疾患で、治療にインドメタシンが用いられる。基礎疾患を伴わない古典型(成年男子)・HIV感染症に伴う型・小児型がある
皮膚科領域でのAIDS指標疾患
- カンジダ症(食道・気管・気管支・肺:口腔内は除く)
- 単純ヘルペスウイルス感染症(1ヶ月以上持続)
- カポジ肉腫
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p510(1・4・5)/266(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p785(ALL)
関連問題
- 2022 選択33 (HIV/AIDSと関連する疾患)
- 2009 記述10 (好酸球性膿疱性毛包炎)
- 2018 選択23(AIDS指標疾患) / 選択34(薬疹について)
選択問題37:解答 1, 3
ベーチェット病(Behçet病)と関連するHLAは、HLA-A26およびHLA-B51→1, 3
- 1. HLA-A26:ベーチェット病患者の30%を占め、とくに日本人で保有率が高い
- 2. HLA-B27:強直性脊椎炎・反応性関節炎と関連する
- 3. HLA-B51:ベーチェット病患者の50〜60%を占める
- 4. HLA-B52:高安病(大動脈炎症候群)と関連し、陽性者で血管炎症状が強い
- 5. HLA-Cw6:乾癬と関連する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p29/175(1・3)/216(2)/282(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p196(2)/190(3)/365(5)
- 選択肢4の参考:高安動脈炎(大動脈炎症候群) 概要 - 小児慢性特定疾病情報センター
関連:2021 選択59(関連HLA), 2015 選択37 (症状, 関連HLA)
選択問題38:解答 3
四肢で境界明瞭な紅斑局面が複数みられ、組織学的には表皮浅層の所見は乏しく表皮基底膜〜真皮にかけて液状変性やリンパ球浸潤がみられることから円板状エリテマトーデス(DLE)の診断
ステロイドやタクロリムス等の外用薬が無効で検査所見に問題がなければ、抗マラリア薬でもあるヒドロキシクロロキン(プラケニル®)が用いられる→3
- 1. NSAIDs:主に臓器病変のない全身性エリテマトーデス(SLE)治療で使われる
- 2. 免疫抑制薬内服:MMF(ミコフェノール酸モフェチル)やアザチオプリンがSLE治療で使われる
- 3. 抗マラリア薬:ヒドロキシクロロキンは副作用が少なく、DLEを含めた皮膚エリテマトーデス・SLEの双方で用いる。網膜症のリスクがあり投与前〜投与中は定期的な検査が必要
- 4. 生物学的製剤:難治性のSLEに対して、Bリンパ球刺激因子に対する抗体製剤ベリムマブ(ベンリスタ®)やⅠ型インターフェロン受容体拮抗薬アニフロルマブ(サフネロー®)が使われる
- 5. セフェム系抗生剤:皮膚感染症の際に使われる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p197
- 参考:新・皮膚科セミナリウム エリテマトーデス・皮膚筋炎の皮膚病変とその治療 日皮会誌:130(12), 2543-2550, 2020
※本問の写真は図4と同一
関連問題
選択問題39:解答 3
皮膚外科に関する一般問題
頭部腫瘍の切除線は毛流と垂直になるように作図する→3
- 1. 頭頂部では帽状腱膜"下"で剥離可能。帽状腱膜-骨膜間は結合がゆるく、血腫も生じやすい
- 2. 眼瞼の横幅の"1/4"以下の全層欠損は単純縫縮可能
- 3. 頭部腫瘍の切除線は毛流に垂直とすることで、切除線が髪で隠れて目立ちにくくなる(毛流と一致すると瘢痕が目立ちやすい)
- 4. 手指の伝達麻酔ではE"なし"キシロカインを用いる
エピネフリンの意義は血管収縮作用により注入部の出血を減らす&局所麻酔の効果を高めることなので、麻酔部位と術野が異なる伝達麻酔では用いない(浸潤麻酔にて使用) - 5. 頭部は血流豊富なため、可能な限り電気メスではなく結紮止血する
- 参考書籍:皮膚外科学 第1版 p60(1)/350(2・3)/75(4)
関連問題
- 2023 選択89 (皮膚外科について)
選択問題40:解答 2
Limberg皮弁による再建法での縫合線を問う問題
菱形の1辺を柄杓状に折り曲げたような形(下図右)となる
- 参考・画像引用:あたらしい皮膚科学 第3版 p112(図6.17)
選択問題41:解答 3
天疱瘡の重症度判定基準は2つあり、各項目を尋ねる問題
天疱瘡重症度判定基準Ⅱa (Pemphigus Disease Area Index 完全版)には頭皮のびらん・水疱または新しい紅斑が含まれる→3
- 1・2・4・5. Nikolsky現象・水疱の新生数・抗体価・病変部面積:重症度判定基準Ⅰ
- 3. 頭皮のびらん・水疱または新しい紅斑:重症度判定基準Ⅱa
天疱瘡重症度判定基準(PDAI)
従来から用いられていたのはⅠであったが、国際基準に合わせるためにⅡaが併設された
簡易版のⅡbも存在し、判定部位が25箇所→12箇所に減少している
天疱瘡重症度判定基準Ⅰ
全体表面積に対する病変部面積 | Nikolsky現象 | 水疱の新生数/日 | 天疱瘡抗体価 | 口腔粘膜病変 | ||
間接蛍光抗体法 | ELISA法(インデックス値) | |||||
スコア0 | なし | なし | なし | 検出されない | 正常値内 | なし |
スコア1 | 〜5% | 一部にわずか | ときどき | 40倍未満 | 50未満 | 5%以上 |
スコア2 | 5〜15% | 陽性 | 1〜4個 | 40〜320倍未満 | 50〜150 | 5〜30% |
スコア3 | 15%以上 | 顕著 | 5個以上 | 640倍以上 | 150以上 | 30%以上 |
合計スコアに応じて重症度を決定する
- 軽症:5点以下
- 中等症:6〜9点
- 重症:10点以上
天疱瘡重症度判定基準Ⅱa(完全版)
- 皮膚12箇所(耳・鼻・顔・頚部・胸部・腹部・背部/臀部・上肢・手・下肢・足・陰部)
- 頭皮1箇所
- 粘膜12箇所(眼・鼻腔・頬粘膜・硬口蓋・軟口蓋・上歯肉・下歯肉・舌・口腔底・口唇・後咽頭・外陰部)
上記25箇所それぞれで、びらん/水疱または新しい紅斑(粘膜はびらん/水疱のみ)の個数/大きさに応じて、0〜10点で点数をつけ判定
Maxは25箇所 × 10点で250点
なおBPDAI*ではスコアを合計せず、もっとも高いものを重症度として採用するので混同しないよう注意
*BPDAI = bullous pemphigoid disease area index, 水疱性類天疱瘡のスコア
- 参考:天疱瘡診療ガイドライン 日皮会誌:120(7), 1443―1460, 2010
関連問題
- 2016 選択40(天疱瘡の病勢評価項目)
- 2021 選択50 (BPDAIについて)
選択問題42:解答 2, 4
先天性表皮水疱症は病変部によって病型・原因遺伝子が異なり、これを問う問題
- 1. 単純型表皮水疱症 Dowling-Meara型の原因蛋白はケラチン5/14。ケラチン1/10は表皮融解性魚鱗癬の原因となる
- 2. 接合部型表皮水疱症 Herlitz型の原因蛋白はラミニン332(ラミニン5)→○
- 3. 接合部型表皮水疱症 非Herlitz型の原因蛋白は17型コラーゲンやラミニン332。プレクチンは単純型表皮水疱症 筋ジストロフィー/幽門閉鎖合併型の原因となる
- 4. 接合部型表皮水疱症 幽門閉鎖合併型の原因蛋白はα6β4インテグリン→○
- 5. 栄養障害型表皮水疱症 劣性重症汎発型の原因蛋白は7型コラーゲン。17型コラーゲン(BP180)は接合部型表皮水疱症(非Herlitz型)の原因となる
表皮水疱症の病型と原因蛋白
大分類 | 小分類 | 遺伝形式 | 原因蛋白 |
単純型表皮水疱症
(EBS) |
限局型 (Weber-Cockayne型) |
AD | ケラチン5/14 |
中等症汎発型 (Köbner型) |
AD | ケラチン5/14 | |
重症汎発型 (Dowling-Meara型) |
AD | ケラチン5/14 | |
筋ジストロフィー/幽門閉鎖合併型 | AR | プレクチン | |
外胚葉形成不全・皮膚脆弱性症候群 | AR | プラコフィリン1 | |
接合部型表皮水疱症
(JEB) |
重症汎発型 (Herlitz型) |
AR | ラミニン332(ラミニン5) |
中等症汎発型 (非Herlitz型) |
AR | 17型コラーゲン(BP180), ラミニン332(ラミニン5) |
|
幽門閉鎖合併型 | AR | α6β4インテグリン | |
栄養障害型表皮水疱症
(DEB) |
優性型 | AD | 7型コラーゲン |
劣性中等症汎発型 (非Hallopeau-Siemens型) |
AR | 7型コラーゲン | |
劣性重症汎発型 (Hallopeau-Siemens型) |
AR | 7型コラーゲン |
下記も参照
-
先天性表皮水疱症の病型と原因蛋白・遺伝形式まとめ
続きを見る
- 参考・図引用:あたらしい皮膚科学 第3版 p6/238
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p10/316〜317
関連問題:複数あり上記記事参照
選択問題43:解答 1, 2
図13では表皮有棘層の細胞膜間(intercellular contact layerの付近)に矢印があることがわかる
有棘細胞間の接着を担うデスモソーム構成蛋白のうち、細胞外に分布する蛋白として膜貫通蛋白であるデスモグレイン・デスモコリンを選択する→1, 2
- 1.デスモグレイン:デスモグレイン1〜3はデスモソームを構成する膜貫通蛋白
- 2.デスモコリン:デスモコリン1〜3はデスモソームを構成する膜貫通蛋白
- 3〜5. デスモプラキン・プラコグロビン・プラコフィリン:細胞膜内側の接着板を構成する蛋白
"プラ"という単語には細胞内という意味があるので、プラがつかないものが細胞外蛋白と推察できる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p7
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p7-8
選択問題44:解答 3
組織球症(マクロファージもしくはLangerhans細胞の増殖性疾患)に関する一般問題
多中心性細網組織球症ではしばしば進行性多発性関節炎を合併する→3
- 1. Intravascular histiocytosis:血管内で組織球が増殖をきたす疾患で、関節リウマチを伴うことが多い。
多中心性細網組織球症は結節性病変が典型だが、皮膚筋炎類似の皮疹を呈したという報告がある (皮膚科の臨床 第61巻7号 p1155-1158, 2019) - 2. 多中心性細網組織球症:組織球が増殖し、CD68陽性となるがS-100は陰性
- 3. 多中心性細網組織球症:多発性関節炎を合併し、関節リウマチに類似する
- 4. Langerhans細胞組織球症:単臓器単発型ではステロイド外用薬や切除、経過観察(自然寛解することがある)。多臓器型の場合は多剤併用化学療法を行う
- 5. Langerhans細胞組織球症はS-100・CD207(Langerin)・CD1aいずれも陽性となる
組織球症と免疫染色
組織球=マクロファージ
ただし"組織球症"の場合はマクロファージが増殖する疾患(ex.多中心性細網組織球症)だけでなく、Langerhans細胞(樹状細胞)が増殖する疾患(ex.Langerhans細胞組織球症)も含めて呼ばれる
組織球症の 免疫染色 |
CD68 | CD1a | S-100 | CD207 (Langerin) |
組織球 (マクロファージ) |
+ | - | - | - |
Langerhans細胞 | - | + | + | + |
CD68とS-100が双方陽性になる疾患はRosai-Dorfman病くらい
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p437(3)/480(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p661(2・3)/663(5)
- 選択肢1の参考:Intravascular histiocytosisの1例 臨床皮膚科64巻12号 p943-946, 2010
- 選択肢4の参考:ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)│小児がん | 国立成育医療研究センター
関連問題
- 2021選択53 / 2015 選択66 (組織球症と免疫染色)
- 2021 選択16 / 2019 記述15 / 2018 選択47 / 2016 選択13 / 2012 選択71 / 2010 選択35 / 2009 選択12(Langerhans細胞と免疫染色)
選択問題45:解答 4, 5
色素異常症に関する問題
色素沈着+色素脱失の双方をきたすのは遺伝性対側性色素異常症と遺伝性汎発性色素異常症→4, 5
- 1. ashy dermatosis(色素異常性固定紅斑):紅斑から始まり、灰白〜灰青色斑となる。扁平苔癬の一型と考えられており、組織学的色素失調*が特徴
- 2. Dowling-Degos病:角化性丘疹と色素沈着をきたす常染色体優性遺伝疾患で、4型に分けられKRT5・POGLUT1遺伝子などが原因となる※
- 3. 網状肢端色素沈着症(北村):四肢末端の小褐色斑が多発し掌蹠で点状陥凹をきたす疾患で、ADAM10遺伝子が原因となる常染色体優性遺伝疾患※
- 4. 遺伝性対側性色素異常症(遠山):四肢末端で褐色斑と脱色素斑が混在し顔で雀卵斑をきたす疾患で、ADAR1遺伝子が原因となる常染色体優性遺伝疾患
- 5. 遺伝性汎発性色素異常症:全身の皮膚で(4)と類似した色素斑や脱色素斑をきたす疾患で、ABCB6やSASH1遺伝子が原因となる
*組織学的色素失調:表皮基底層の破壊により放出されたメラニン顆粒が真皮に滴落する現象
※2013年に北村の原因遺伝子ADAM10が同定されるまでは北村=Dowling-Degos病の亜型とも考えられていたが、遺伝子同定により疾患概念の独立性が再確認された
遺伝性対側性色素異常症(遠山)と網状肢端色素沈着症(北村)は一見類似して見えることがあるが、北村は色素脱失を伴わない(点状陥凹を色素脱失と勘違いしないよう注意)という点が鑑別点として重要
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p311〜312(1・3・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p509〜511(1・3・4)
- その他選択肢の参考:新・皮膚科セミナリウム 色素異常症 色素増加症 日皮会誌:129(10), 2125-2135, 2019
- 参考:網状肢端色素沈着症 -原因遺伝子の解明- 皮膚病診療 36(3), p206-212, 2014
関連問題
- 2021 選択55(脱色素斑を伴わない色素異常症)
- 2019 選択60 (網状肢端色素沈着症 北村の臨床問題)
- 2018 選択50 / 2016 選択43 /2014 選択45 (遺伝性対側性色素異常症 遠山 遺伝形式/原因遺伝子)
選択問題46:解答 5(現在はなし)
OCA4型について問う問題
もともとは日本人で2番目に頻度の高い型とされていた(→5)が、近年の疫学調査では日本人で最多の型となり正解選択肢がなくなっている
- 1.OCAは全ての型で常染色体劣性遺伝形式をとる
- 2・4.OCA4型はメラノソーム膜表面の輸送蛋白をコードするMATP遺伝子の異常で発症する。P蛋白の遺伝子異常で発症するのはOCA2型
- 3.チロシナーゼの遺伝子変異で発症し、チロシナーゼ陰性となるのはOCA1型
- 5.OCAの日本人における発症頻度はOCA4型>OCA1型>HPS1型>OCA2型※
※日本人における発症頻度はもともとOCA1型(31.4%)>OCA4型(27%)>HPS1型(10%)>OCA2型(8%)であった(ガイドライン参照)が、近年の疫学調査ではOCA4型(25.3%)>OCA1型(20.0%)>HPS1型(15.7%)>OCA2型(8.4%)となりOCA4型が最多となった
眼皮膚白皮症の病型と原因遺伝子
出生時より皮膚・毛髪・眼のメラニン合成が低下/消失する疾患
全身症状を伴う症候型と、伴わない非症候型とに分けられる
眼皮膚白皮症の主な病型分類 | 病型 | 原因遺伝子 | 補足 |
非症候型眼皮膚白皮症 | OCA1型 | チロシナーゼ(TYR) | 酵素活性により細分類活性が全くないものはチロシナーゼ陰性型(1A) |
OCA2型 | P | ||
OCA3型 | チロシナーゼ関連蛋白1型(TYRP1) | ||
OCA4型 | SLC45A2(MATP) | ||
症候型眼皮膚白皮症 | HPS型 (Hermansky-Pudlak 症候群) |
出血傾向や成人期の間質性肺炎を合併
9型に細分類される |
|
CHS型 (Chédiak-Higashi 症候群) |
LYST | 白血球の機能異常を合併 |
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p302〜304(ALL)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p515〜517(1・2・3・4)
- 参考:眼皮膚白皮症診療ガイドライン 日皮会誌:124(10), 1897-1911, 2014
- OCAの最新疫学調査:Current landscape of Oculocutaneous Albinism in Japan. Pigment Cell Melanoma Res. 2021 Mar;34(2):190-203. のTable2
選択問題47:解答 3
掌蹠膿疱症に関する一般問題
カルシポトリオールは尋常性乾癬にのみ保険適用となっている→3
- 1. グセルクマブ(トレムフィア®)は乾癬(尋常性/関節症性/膿疱性/紅皮症)の他、掌蹠膿疱症に保険適用がある※
- 2. エトレチナート(チガソン®)は掌蹠膿疱症の他、乾癬・魚鱗癬・掌蹠角化症・毛孔性紅色粃糠疹・Darier病等に保険適用がある
- 3. カルシポトリオール(ドボネックス®)は尋常性乾癬にのみ保険適用がある
- 4. 中波紫外線療法が算定可能
- 5. 皮膚科特定疾患指導管理料(Ⅰ)の対象疾患
※2023/5に同じくIL-23p19抗体製剤のリサンキズマブ(スキリージ®)も掌蹠膿疱症に対して保険適用となった
参考:新・皮膚科セミナリウム 掌蹠膿疱症:病態仮説と治療オプション 日皮会誌:130(6), 1431-1437, 2020
ビタミンD(VitD)外用製剤と保険適用疾患
一般名 | 商品名 | 乾癬 | 掌蹠膿疱症 | 掌蹠角化症 | 魚鱗癬 | 毛孔性紅色粃糠疹 | 外用上限 |
マキサカルシトール | オキサロール® | ○ | ○ | ○ | ○ | ✗ | 10g/日 |
カルシポトリオール | ドボネックス® | ○ | ✗ | ✗ | ✗ | ✗ | 90g/週 |
タカシトール | ボンアルファ® | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | なし※ |
カルシポトリオール+
ベタメタゾンジプロピオン酸エステル |
ドボベット® | ○* | ✗ | ✗ | ✗ | ✗ | 90g/週 |
マキサカルシトール+
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル |
マーデュオックス® | ○* | ✗ | ✗ | ✗ | ✗ | 10g/日 |
*尋常性乾癬のみ
※高濃度のボンアルファハイ®は10g/日
参考:各種添付文書
中波紫外線療法が算定可能な疾患
- 乾癬
- 類乾癬
- 掌蹠膿疱症
- 菌状息肉症
- 悪性リンパ腫
- 慢性苔癬状粃糠疹
- 尋常性白斑
- アトピー性皮膚炎
- 円形脱毛症
参考:J054 皮膚科光線療法(1日につき) | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
皮膚科特定疾患指導管理料の対象疾患
皮膚科特定疾患指導管理料(Ⅰ):250点
- 天疱瘡
- 類天疱瘡
- エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)
- 紅皮症
- 尋常性乾癬
- 掌蹠膿疱症
- 先天性魚鱗癬
- 類乾癬
- 扁平苔癬
- 結節性痒疹及びその他の痒疹(慢性型で経過が1年以上のもの)
皮膚科特定疾患指導管理料(Ⅱ):100点
- 帯状疱疹
- じんま疹
- アトピー性皮膚炎(16歳以上で外用療法を必要とする場合)
- 尋常性白斑
- 円形脱毛症
- 脂漏性皮膚炎
参考:B001_8 皮膚科特定疾患指導管理料 | 医科診療報酬点数表 | しろぼんねっと
関連問題
選択問題48:解答 3
図14では辺縁が隆起した楕円形の潰瘍が複数個みられる。抗酸菌感染症や深在性真菌症は否定的であり、組織学的に真皮での好中球浸潤が見られることから壊疽性膿皮症の診断
50〜70%で炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎/Crohn病)や血液疾患(白血病/MDS:骨髄異形成症候群)、大動脈炎症候群などの基礎疾患がみられる
最多は潰瘍性大腸炎→3
- 1. 腎不全:反応性穿孔性膠原線維症やカルシフィラキシー(透析患者)、皮膚そう痒症の原因となる
- 2. 急性膵炎:膵リパーゼの漏出により、皮下結節性脂肪壊死症を合併することがある
- 3. 潰瘍性大腸炎:壊疽性膿皮症の基礎疾患として最多
- 4. 甲状腺機能低下症:ムチン沈着により脱毛や汎発性粘液水腫(non-pitting edema)、皮膚乾燥、巨舌などをきたす。尋常性白斑の合併も知られる
- 5. 閉塞性動脈硬化症:主に足趾潰瘍の原因となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p138(1)/358(2)/177(3)/320(4)/185(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p175(1)/503(2)/328(3)/436(4)/239(5)
関連問題
選択問題49:解答 3
薬剤性過敏症症候群(DIHS)の原因薬剤のうち、腎障害に注意が必要なのはアロプリノール→3
DIHSの原因薬剤
- アロプリノール:腎障害の程度が強いことが多い
- ジアフェニルスルホン(DDS):黄疸を認めることが多い
参考
アロプリノールは高尿酸血症の治療薬であるが、腎排泄性のため腎障害患者では減量が必要になる
一方新規薬剤であるフェブキソスタット(フェブリク®)は腎障害患者でも減量不要のため、現在は主流薬となっている
("痛風腎"というくらいでもともと腎障害合併患者が多い)
選択問題50:解答 5
若年女性で臀部に色素沈着を認め、生理時期に一致した悪化がみられる
鎮痛剤による固定薬疹を疑い、問診を行う
- 1. 抗真菌薬外用:鏡検にて真菌を確認してから行う
- 2. 血中プロゲステロン測定:autoimmune progesterone dermatitisでは内因性プロゲステロンやエストロゲンにより皮疹が誘発される
- 3. 歯科金属の有無:扁平苔癬や掌蹠膿疱症を疑った際にチェックする
- 4. 生理用品のパッチテスト:皮疹は片側性で生理用品の接触する部位に一致しておらず、また問診より先んじて実施するものではない
- 5. 痛み止めを内服していないか問診:侵襲性もなく、まず実施すべき内容と考えられる
問診結果を踏まえて確定診断するためには、パッチテストが有用。固定薬疹は色素沈着部で陽性/正常部は陰性という特徴がある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p154(4)
- 参考:マルホ皮膚科セミナー 2011/8/18 薬疹の検査方法
選択問題51:解答 4
慢性蕁麻疹の長期的予後に対するステロイドの治療効果に関するエビデンスはないため、内服する場合はできるだけ短期間にとどめるべきとされている
- 1. 既存治療で効果不十分な患者に限る:オマリズマブ(ゾレア®)の特発性慢性蕁麻疹に対する保険適用
- 2. 蕁麻疹に対する健康保険適応は未承認:H2拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、シクロスポリンなど
- 3. 速やかに症状の軽減を図ることが必要な場合:Step2を飛ばして治療強化する
- 4. 1ヶ月以上減量/中止できない場合は治療変更検討:ステロイド内服
- 5. 喘息・アナフィラキシー等に対応できる必要がある:オマリズマブ
- 参考および図引用:蕁麻疹診療ガイドライン 2018 日皮会誌:128(12), 2503-2624, 2018
- 選択肢1の参考:ゾレア 添付文書
関連問題
選択問題52:解答 2
北海道における花粉症は本州で一般的なスギ・ヒノキより、シラカンバ・ハンノキによるものが主体となる
シラカンバ(対応するアレルギーコンポーネントはBet v 1)により感作されることで、リンゴ・モモなどバラ科の食物を摂食した際に口腔アレルギー症候群(花粉-食物アレルギー症候群)をきたすことがしられる
選択肢の中ではBet v 1が該当→2
- 1. Ara h 2:ピーナッツのアレルゲンコンポーネント
- 2. Bet v 1:シラカンバのアレルゲンコンポーネント
- 3. Gly m 4:大豆のアレルゲンコンポーネント
- 4. Cry j 1:スギ花粉のアレルゲンコンポーネント
- 5. Der f 1:ダニのアレルゲンコンポーネント
口腔アレルギー症候群 OAS (花粉-食物アレルギー症候群 PFAS)
特定の花粉に感作された後、交差反応を示す食物を摂取することでアレルギー症状をきたす
消化・加熱により分解されるとアレルギー反応が起こらなくなるため、一般に症状は口囲に限局し加熱などの加工処理で摂取可能となることが特徴
代表的な花粉-食物の組み合わせ | ||
花粉 | 果物・野菜など | |
カバノキ科(シラカンバ・ハンノキ) | バラ科(リンゴ・モモ・サクランボ) | マメ科(大豆・ピーナッツ) |
ヒノキ科・スギ | ナス科(トマト) | |
イネ科(カモガヤ)・ブタクサ | ウリ科(メロン・スイカ) | |
ヨモギ | セリ科(セロリ・ニンジン) |
関連問題
- 2022 選択32 / 2021 選択67 (アレルゲンコンポーネントについて)
- 2019 選択64 / 2018 記述6 (PR-10によるPFASと原因樹木・コンポーネント)
- 2019 選択19 / 2016 選択53 (食物と原因アレルゲン)
選択問題53:解答 2
薬剤と関連する薬疹病型についての問題
- 1. カルボシステイン(ムコダイン®)は固定薬疹の原因となる
- 2. ピルフェニドン(ピレスバ®)は臨床試験で50%以上に光線過敏症が見られた
- 3. ビルダクリプチン(エクア®)などのDPP-4阻害薬は水疱性類天疱瘡の原因となることがある。とくにビルダクリプチンで報告が多い
- 4. プロピルチオウラシル(チウラジール®)は無顆粒球症の他、薬剤性ANCA関連血管炎をきたすことがある
- 5. ロクロニウム(エスラックス®)はアナフィラキシーを引き起こすことがある
固定薬疹の原因薬剤
- アセトアミノフェン
- NSAIDs
- アリルイソプロピルアセチル尿素(総合感冒薬に含まれる)
- カルボシステイン
光線過敏症の原因薬剤
- サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジド/トリクロルメチアジド)
- カルシウム拮抗薬(ニカルジピン/ニフェジピン)
- ループ利尿薬(フロセミド)
とくにヒドロクロロチアジドはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)やCaブロッカーと配合剤で用いられるようになり、頻度が増加している
DPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡
- 通常の水疱性類天疱瘡(BP)では17型コラーゲン(BP180)のN末端側に対して自己抗体が生じる一方、DPP-4阻害薬関連BPでは17型コラーゲン全体に対する自己抗体が生じる
※通常の検査では抗体価が低値となる - 臨床像では紅斑・炎症に乏しいことが多い
- 原因薬剤:DPP-4阻害薬の中でもビルダグリプチン(エクア®)によるものが特に多いとされる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p154(1)/230(2)/257(3)
- BPの参考:糖尿病治療薬 dipeptidyl peptidase-4 (DPP-4)阻害薬投与中に発症する水疱性類天疱瘡 臨床皮膚科71巻5号 最近のトピックス2017 p10-15
関連問題
- 2023 選択34 / 2021 選択52 / 2017 選択47 (DPP-4関連BPについて)
- 2019 選択61 (固定薬疹の原因)
- 2017 選択8 (配合降圧剤の中で光線過敏症をきたしやすい薬剤)
選択問題54:解答 3
Stevens-Johnson症候群(SJS)の原因として、薬剤性以外に感染症(単純ヘルペスウイルス・マイコプラズマ)がある
特に小児SJSの原因は(薬剤性を除くと)マイコプラズマが68.0%(34/50例)で最多という報告がある→3
一方成人では、マイコプラズマ感染症は単純ヘルペスウイルスと同程度となる
なおマイコプラズマ・単純ヘルペスウイルスともに多形紅斑の原因にもなり得る
- 参考・図引用:小児のStevens-Johnson症候群 - 成人例との比較検討 日皮会誌:115(2), 135-143, 2005 の図2
関連問題
- 2023 選択65 / 2011 選択53 (★同一問題★)
- 2018 選択51(多形紅斑の原因)
選択問題55:解答 5
カルシウムポンプをコードするATP2A2遺伝子変異により常染色体優性遺伝疾患であるDarier病を発症する
特徴的所見として、脂漏部や間擦部の角化性丘疹がある→5
Darier病
CaポンプをコードするATP2A2遺伝子変異により発症
思春期頃に発症して脂漏部や間擦部で角化性丘疹をきたし、組織学的に異常角化(dyskeratosis)や棘融解、絨毛形成など特徴的な所見をきたす
- 1. 難聴:難聴をきたす遺伝性角化症として、GJB2遺伝子変異によるKID症候群がある
- 2・4. ABCC6遺伝子変異により、皮膚の弛緩と視力障害をきたし、組織学的に弾性繊維の変性・カルシウム沈着がみられる弾性線維性仮性黄色腫を発症する
(選択問題59参照) - 3. 皮膚の過伸展性:エーラス・ダンロス症候群でみられる
- 5. 脂漏部や間擦部の角化性丘疹の多発:Darier病の特徴
なお類縁疾患であるHailey-Hailey病もCaポンプをコードするATP2C1遺伝子変異により発症し、症状が類似する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(1)/353(2・4)/351(3)/279(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p338(1)/475〜476(2・3・4)/343(5)
関連問題
- 2021 選択19 (症状, 原因, 症状など)
- 2021 選択71 (Darier病とHailey-Hailey病の比較)
- 2018 記述1 / 2016 選択11 / 2010 選択51 (原因遺伝子や病理)
選択問題56:解答 2, 5
遺伝性疾患や遺伝子診断について問う問題
- 1. 遺伝性皮膚疾患は通常、単一遺伝子の異常によって生じる疾患をさし多因子遺伝病は含まない
- 2. ヒトゲノムは30億塩基対が2セットあり、蛋白質をコードする遺伝子が約22,000個存在する→○
- 3. 胎児皮膚生検では形態学から診断を行うが、主要な遺伝性疾患の原因遺伝子が解明された現在ではほぼ用いられない。絨毛生検や羊水穿刺によるDNA解析が主流
- 4. 常染色体優性遺伝疾患はメンデルの法則に従い、理論的危険率を計算できる
一方先天奇形や染色体異常(ex. Down症候群)などメンデルの法則に従わない疾患は、統計的な数値から危険率を推定する(経験的危険率) - 5. 絨毛生検は妊娠10週頃、羊水検査は妊娠13週頃から可能となる→○
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p573(1・2)/578(3)/577(4)/579(5)
選択問題57:解答 5
水疱・びらんをきたす疾患等の原因分子を問う問題
栄養障害型表皮水疱症と後天性表皮水疱症はともに7型コラーゲンが原因となる→5
- 1. Darier病はカルシウムポンプ(SERCA2)をコードするATP2A2遺伝子変異で発症する。肥満細胞症はDarier徴候(こすった部位に蕁麻疹ができる)をきたし、全身性のものでは病変部でKIT遺伝子変異がみられる
- 2. 水疱性膿痂疹はDsg1*が黄色ブドウ球菌の産生する表皮剥離毒素(ET)で分解されて生じる。SSSS*も同様の病態。類天疱瘡は17型コラーゲン(BP180)に対する自己抗体が原因となる
- 3. 単純型表皮水疱症はケラチン5/14の先天異常で発症する。尋常性天疱瘡はDsg1/3に対する自己抗体が病因となる
- 4. Herlitz型表皮水疱症はラミニン332の先天異常で発症する。落葉状天疱瘡はDsg1に対する自己抗体が病因となる
- 5. 栄養障害型表皮水疱症は7型コラーゲンの先天異常で発症する。後天性表皮水疱症は7型コラーゲンに対する自己抗体が病因となる
*Dsg = デスモグレイン, SSSS = ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
つまり水疱性膿痂疹と落葉状天疱瘡(尋常性天疱瘡も)は原因分子が同じ、といえる。実際水疱性膿痂疹では抗Dsg1抗体価が軽度上昇することもある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p279・441(1)/514・256(2)/239・249(3)/241・253(4)/243・260(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p343・667(1)/797・308(2)/315・299(3)/319・304(4)/319・313(5)
関連問題
表皮水疱症の病型と原因蛋白
大分類 | 小分類 | 遺伝形式 | 原因蛋白 |
単純型表皮水疱症
(EBS) |
限局型 (Weber-Cockayne型) |
AD | ケラチン5/14 |
中等症汎発型 (Köbner型) |
AD | ケラチン5/14 | |
重症汎発型 (Dowling-Meara型) |
AD | ケラチン5/14 | |
筋ジストロフィー/幽門閉鎖合併型 | AR | プレクチン | |
外胚葉形成不全・皮膚脆弱性症候群 | AR | プラコフィリン1 | |
接合部型表皮水疱症
(JEB) |
重症汎発型 (Herlitz型) |
AR | ラミニン332(ラミニン5) |
中等症汎発型 (非Herlitz型) |
AR | 17型コラーゲン(BP180), ラミニン332(ラミニン5) |
|
幽門閉鎖合併型 | AR | α6β4インテグリン | |
栄養障害型表皮水疱症
(DEB) |
優性型 | AD | 7型コラーゲン |
劣性中等症汎発型 (非Hallopeau-Siemens型) |
AR | 7型コラーゲン | |
劣性重症汎発型 (Hallopeau-Siemens型) |
AR | 7型コラーゲン |
- 参考・図引用:あたらしい皮膚科学 第3版 p6/238
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p10/316〜317
選択問題58:解答 2, 5
両手指のばち状指と前額部の皮膚肥厚がみられ、原疾患を伴わないことから肥厚性皮膚骨膜症の診断
指定難病の一つで、組織学的には真皮の肥厚や脂腺過形成が特徴→2, 5
肥厚性皮膚骨膜症
著明な皮膚肥厚やばち状指(時計皿爪)、骨膜性骨肥厚をきたす遺伝性疾患で、プロスタグランジン過剰が原因とされる
皮膚肥厚ではとくに頭皮にみられる脳回転状皮膚の特異性が高い
脳回転状皮膚や眼瞼下垂に対して形成外科的修復が行われる他、選択的COX-2阻害薬(セレコキシブ)が有用という報告がある
- 1. 遺伝形式は常染色体優性ないし劣性遺伝形式で、後者ではプロスタグランジン輸送・分解にかかわるHPGDやSLCO2A1遺伝子変異が原因
- 2. 国の指定難病となっている(指定難病 165)
- 3. 調査では34.5%に"多汗症"がみられた
- 4. 皮膚・関節症状のほか、胃・十二指腸・小腸で多発性潰瘍をきたすことがある(非特異性多発性小腸潰瘍)
- 5. 組織学的に真皮の浮腫・肥厚と脂腺過形成がみられ、臨床的に脂漏・油性光沢やざ瘡の合併が60%以上にみられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p343(1・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p484(1・4)
- 選択肢5の参考:中学生で診断しえた肥厚性皮膚骨膜症の2例 臨床皮膚科73巻6号 p416-422
- その他選択肢の参考:肥厚性皮膚骨膜症(指定難病165) – 難病情報センター
関連問題
- 2023 記述5 (臨床問題)
選択問題59:解答 1, 5
頚部・腋窩で皮膚のたるみがめだち、黄色調の丘疹がみられる。また心筋梗塞(=血管病変)と網膜血管線状を認めており、弾性線維性仮性黄色腫を疑う
診断のため、沈着カルシウムを染色するコッサ染色や弾性繊維を染色するエラスチカ・ワンギーソン染色が有用→1, 5
弾性線維性仮性黄色腫(PXE)
ABCC6遺伝子変異による常染色体劣性遺伝疾患で、弾性線維の変性と石灰沈着をきたす
皮膚病変の他、網膜-脈絡膜間のBruch膜変化による網膜血管線状や動脈弾性板変化による血管病変(心・脳・消化管)を合併する
-
弾性線維性仮性黄色腫 まとめ
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- 1. コッサ染色:沈着したカルシウムが黒褐色に染色され、PXEの診断に有用
- 2. コロイド鉄染色:ムコ多糖が青色に染色され、ムチン沈着症の診断に有用
- 3. コンゴ-レッド染色:アミロイドが赤色に染色され、アミロイドーシスの診断に有用
- 4. トルイジンブルー染色:ムコ多糖が青色に、脂肪細胞が紫色(異染性)に染色され、肥満細胞症の診断に有用
- 5. エラスチカ-ワンギーソン染色:膠原線維が赤色に、弾性線維が黒色に染色され、PXEの診断に有用※
※エラスチカ・ワンギーソン染色は穿孔性皮膚症の診断にも用いられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p40(ALL)/353(1・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p47(ALL)/475〜476(1・5)
関連問題:PXEに関する出題は多数あり、上記リンク記事参照
選択問題60:解答 5
黄色腫は脂肪を貪食した組織球の集簇が原因となるが、疾患によってトリグリセリド(TG)高値に伴うものと、低密度リポ蛋白(LDL)が高値に伴うものがある
TG↑と関連するのは発疹性黄色腫のみ→5
- 1・3・4. 腱黄色腫・眼瞼黄色腫・結節性黄色腫:LDL高値に伴う
- 2. 扁平黄色腫:LDL高値に伴うものと、先行皮膚病変(リンパ浮腫など)に続発するものがある
- 5. 発疹性黄色腫:TG高値に伴う
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p321〜323
- 参考書籍:皮膚科学 第10版 p446〜448
関連:2022 選択66 (黄色腫に保険適用の高脂血症薬)
選択問題61〜90は下記
-
令和2年度(2020年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題61〜90
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