日本皮膚科学会 皮膚科専門医試験 平成26(2014)年度の解答解説を作成しました
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- 問題出典:試験問題(過去問題) |公益社団法人日本皮膚科学会(問題・写真はリンク先で確認下さい)
- 参考文献:あたらしい皮膚科学 第3版、皮膚科学(マイナー) 第11版でカッコ内は選択肢番号、その他は問題末に各自記載
見出し
- 1 平成26年度(2014年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜25
- 1.1 選択問題1:解答 5
- 1.2 選択問題2:解答 1
- 1.3 選択問題3:解答 4
- 1.4 選択問題4:解答 4
- 1.5 選択問題5:解答 5
- 1.6 選択問題6:解答 4
- 1.7 選択問題7:解答 1
- 1.8 選択問題8:解答 5
- 1.9 選択問題9:解答 1
- 1.10 選択問題10:解答 5
- 1.11 選択問題11:解答 1, 2
- 1.12 選択問題12:解答 1, 2, 5
- 1.13 選択問題13:解答 2, 4
- 1.14 選択問題14:解答 4
- 1.15 選択問題15:解答 5
- 1.16 選択問題16:解答 3, 4
- 1.17 選択問題17:解答 3, 4
- 1.18 選択問題18:解答 3
- 1.19 選択問題19:解答 3
- 1.20 選択問題20:解答 3
- 1.21 選択問題21:解答 3
- 1.22 選択問題22:解答 5
- 1.23 選択問題23:解答 1, 2
- 1.24 選択問題24:解答 2, 3
- 1.25 選択問題25:解答 5
平成26年度(2014年度) 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題 1〜25
選択問題1:解答 5
男性型脱毛症(AGA)の病態を問う問題
毛周期における成長期(anagen)が短くなり、休止期(telogen)にとどまる毛包が多くなることが原因
毛周期と男性型脱毛症(AGA)
毛の成長は3つの期に分かれ、新しく生える毛と抜け落ちる毛が存在しヘアサイクルが形成される
- 成長期(anagen):数年 (85%)
- 退行期(catagen):2週間 (1〜2%)
- 休止期(telogen):3〜4ヶ月 (15%)
接頭語anaは"上"、cataは"下"、teloは"末端"を意味する。catastrophe(大災害)やtelomere(テロメア, 染色単末端に存在し細胞老化と関わる)から類推
前頭部や頭頂部に存在する毛包の毛乳頭細胞は男性ホルモン(とくにDHT*)の影響で成長期が短縮し休止期が延長する
これにより短く細い毛となり(毛包のミニチュア化)、男性型脱毛症を生じる
→治療に5α-還元酵素阻害薬(フィナステリド・デュタステリド)が使用される
*DHT(ジヒドロテストステロン):テストステロンが5α-還元酵素の代謝を受け産生
医療脱毛などで複数回の施術が必要なのも、レーザーが成長期の毛にしか効果を発揮しないことが理由
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p23・370
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p18
- 参考:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版 日皮会誌:127(13), 2763-2777, 2017
関連問題(AGA)
- 2022 選択21 / 2018 選択4 / 2011 選択4 (脱毛症の治療推奨度)
- 2021 選択5 (毛包周期, 伸長速度など)
- 2020 選択88 (5αリダクターゼの作用部位)
- 2019 選択5 / 2017 選択6 / 2015 選択5 / 2010 選択3 (AGA治療薬について)
選択問題2:解答 1
紫外線発癌ではC→Tの塩基置換が生じやすい→1
「隣り合ったピリミジン塩基*のCのどちらかまたは両方がTに変異する」変異は紫外線による特有の変異パターン(UV signature mutation)
皮膚がんや口唇がんの多くは紫外線暴露が関連し、この変異が高率にみられる
*ピリミジン塩基:C(シトシン)とT(チミン)↔対義語はプリン塩基:A(アデニン)とG(グアニン)
選択問題3:解答 4
UVAとUVBの違いについて問う問題
DNA損傷の主な原因となるのはUVB→4
このためUVBは日光黒子や脂漏性角化症をきたす。一方UVAは光線過敏症に関与することが多い
UVA・UVB・UVCの比較
紫外線の種類 | 波長(nm) | 影響部位 | 症状・疾患 |
UVA | 320〜400 | 真皮深層 | サンタン日光弾力線維症 |
UVB | 290〜320 | 表皮〜真皮浅層 | サンバーン悪性黒子 |
UVC | 100〜280 | オゾン層でブロックされ届かない |
- 1. UVBは(UVAと比較して浅い)表皮〜真皮浅層に影響する。一般的な表皮の厚さは約0.2mmのため、2mmは達しすぎ
- 2. "UVC"の多くはオゾン層で吸収され、地表に達しない。UVAは深部まで到達し、真皮に影響を及ぼす
- 3. 太陽光線エネルギーのうちUVAは6.3%。赤外線は54.3%で半分を占める。その他UVB(0.5%)・可視光線(38.9%)
- 4. 細胞のDNA障害は主にUVBが原因となり、C>T変異が特徴
- 5. サンバーン(赤くなる日焼け)はサンタン(黒くなる日焼け)より先に生じる。サンバーンは暴露後12〜24時間、サンタンは数日後
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p1・273
関連問題
選択問題4:解答 4
アトピー性皮膚炎では角層セラミドの発現が低下し、皮膚が乾燥しやすい→4
セラミドは角層(角質)細胞間脂質の主成分(50%)で、その他コレステロール(30%)や遊離脂肪酸がある
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p9(1・2・3)/8(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p13(1・2・3)/152(4)
- 選択肢5の参考:乾癬角層におけるセラミドの異常 西日本皮膚科 72(5), 494-499, 2010
関連問題
- 2021 記述1 (皮膚の保湿に関係する因子)
- 2020 選択85 (層板顆粒の電子顕微鏡写真)
- 2019 選択24 (層板顆粒に存在する脂質輸送蛋白をコードする遺伝子)
- 2016 選択78 / 2011 選択9 (角層細胞間脂質の構成成分)
選択問題5:解答 5
内蔵・血液悪性腫瘍のデルマドロームを問う問題
鱗状毛包性角化症(土肥)は後天性角化症だが、合併疾患はない→5
分布は類似するが1つ1つの皮疹がやや大型(1〜数cm)なのが連圏状粃糠疹(遠山)で、こちらは内臓悪性腫瘍の合併例がある
後天性角化症 | 鱗状毛包性角化症(土肥) | 連圏状粃糠疹(遠山) |
分布 | 腰部・腹部・殿部 | 腰部・腹部・殿部 |
皮疹 | 直径3mm〜1cm大 角化性局面 |
直径1〜数cm大 毛孔一致性の角化 |
デルマドローム | - | 悪性腫瘍(肝癌)や栄養不良など |
- 1. Sweet病:感冒症状後に発熱+有痛性の浮腫性紅斑をきたし、組織学的に好中球浸潤がみられる。MDS*や内臓悪性腫瘍を合併
- 2. Bazex症候群(腫瘍随伴性先端角化症):消化器などの扁平上皮癌に合併する角化症で、四肢末端や耳・鼻に乾癬様の紅色局面をきたす
- 3. 丘疹紅皮症(太藤):多発丘疹が融合して紅皮症をきたすが、腹部など皺の部分を避ける分布(deck-chair sign)を示す。時に内臓悪性腫瘍や悪性リンパ腫を合併する
- 4. 多中心性細網組織球症:関節リウマチ様の多関節炎を伴う、組織球増殖疾患。15〜30%で悪性腫瘍、30%に高脂血症、5〜15%に自己免疫性疾患を合併する
- 5. 鱗状毛包性角化症(土肥):腹部・臀部に3mm〜1cmまでの毛孔一致した黒点が症じ、鱗屑を伴う。デルマドロームはない
*MDS:骨髄異形成症候群
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p299(2・5)/143(1)/149(3)/437(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p366(5)/201(1)/377(2)/209(3)/694(4)
※第10版では選択肢4のデルマドローム比率記載があったが11版で削除されている
関連問題
選択問題6:解答 4
幼少時からの魚鱗癬様皮膚乾燥・亀裂をきたしており、末梢血で白血球の脂肪滴沈着を認める
肝逸脱酵素上昇もみられ、Dorfman-Chanarin症候群の診断→4
Dorfman-Chanarin症候群
魚鱗癬症候群の一つ(常染色体劣性遺伝形式)
ABHD5遺伝子変異により、中性脂肪が細胞質内に蓄積し脂肪滴を形成する
→様々な臓器の障害
- 皮膚(魚鱗癬様紅皮症)
- 肝障害
- 難聴・白内障・眼振
検査:白血球内の脂肪滴沈着が特徴
- 1. Netherton症候群:アトピー性皮膚炎様皮疹・結節性(陥入性)裂毛・曲折線状魚鱗癬が3主徴。SPINK5遺伝子変異が原因(AR)
- 2. Sjögren-Larrson症候群:先天性魚鱗癬・四肢痙性麻痺・精神発達遅滞が3主徴。FALDH遺伝子変異が原因(AR)
- 3. KID症候群:魚鱗癬様紅皮症(Ichthyosis)に角膜炎(Keratitis)と感音性難聴(Deafness)を伴う。GJB2遺伝子変異が原因(AD)
- 4. Dorfman-Chanarin症候群:先天性魚鱗癬様紅皮症様の皮疹と多臓器の脂肪沈着をきたす
- 5. Rud症候群:先天性魚鱗癬様紅皮症にてんかんや精神発達遅滞、成長障害を伴う(AR)
*AD:常染色体劣性遺伝疾患, AR:常染色体劣性遺伝疾患
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p275(1・2・3・4)/276(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p351(3・4)/349(1・2・5)
- 参考・図引用:Chanarin-Dorfman Syndrome: The Enormous Value of a Simple Peripheral Blood Smears in Ichthyosis Saving Time and Money
関連問題
選択問題7:解答 1
中高年男性で思春期以降発症の角化性丘疹が融合している
組織での絨毛形成や異常角化細胞からDarier病の診断で、ATP2A2遺伝子変異が原因となる→1
Darier病
遺伝性角化症の一つで、遺伝性だが思春期以降に発症する
- 原因:カルシウムポンプをコードするATP2A2遺伝子変異で発症
- 症状:間擦部を中心に角化性丘疹をきたし、融合して局面を形成する
- 組織:異常角化や棘融解、絨毛形成がみられる
同じくカルシウムポンプをコードするATP2C1遺伝子変異でHailey-Hailey病(家族性良性慢性天疱瘡)を発症(こちらも思春期以降)
- 1. ATP2A2:Darier病の原因。角化性丘疹と組織での異常角化細胞が特徴
- 2. KRT9:Vörner型掌蹠角化症の原因。組織学的に顆粒変性を伴う掌蹠角化症が特徴
- 3. GJB3:変動性紅斑角皮症の原因。幼児の顔面・体幹・四肢で境界明瞭な対称性角化紅斑が多発・融合し出現と消退を繰り返す
- 4. KRT10:表皮融解性魚鱗癬の原因。乳幼児期から刺激部位の水疱形成を繰り返すが、成長に伴い過角化中心となる。組織学的に顆粒変性が特徴
- 5. ATP2C1:Hailey-Hailey病の原因。組織学的に裂隙形成や絨毛形成がみられるが、Darier病と比較し角化に乏しい
本選択肢の疾患はいずれも常染色体優性遺伝形式
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p279(1)/277(2)/280(3)/273(4)/246(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p356(1)/353(2)/363(3)/345(4)/359(5)
関連問題(Darier病)
- 2021 選択19 / 2020 選択55 / 2018 記述1 (症状や原因遺伝子など)
- 2021 選択71 (Darier病とHailey-Hailey病の比較)
- 2016 選択11 / 2010 選択51 (病理)
選択問題8:解答 5
幼少時からの歯牙脱落や皮膚の易感染性を伴う掌蹠角化症であり、Papillon-Lefèvre症候群の診断
原因となるのはカテプシンC(CTSC)遺伝子→5
Papillon-Lefèvre症候群
歯肉炎を伴う掌蹠角化症で、カテプシンCの遺伝子異常が原因(常染色体劣性遺伝疾患)
- 皮疹は乳幼児期からの掌蹠角化症で、潮紅を伴う(Meleda病様)
- 歯肉炎→歯牙脱落
その他皮膚の易感染性や白血球貪食能低下等を合併する
- 1. コネキシン26(GJB2):KID症候群の原因遺伝子(AD)。魚鱗癬様紅皮症(Ichthyosis)に角膜炎(Keratitis)と感音性難聴(Deafness)を伴う
- 2. KRT10:表皮融解性魚鱗癬の原因(AD)。乳幼児期から刺激部位の水疱形成を繰り返すが、成長に伴い過角化中心となる。組織学的に顆粒変性が特徴
- 3. ロリクリン:ロリクリン角皮症や進行性対側性紅斑角皮症の原因(AD)
- 4. GJB3:変動性紅斑角皮症の原因(AD)。幼児の顔面・体幹・四肢で境界明瞭な対称性角化紅斑が多発・融合し出現と消退を繰り返す
- 5. カテプシンC:Papillon-Lefèvre症候群の原因遺伝子(AR)
*AD:常染色体優性遺伝疾患, AR:常染色体劣性遺伝疾患
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p279(5)/275(1)/273(2)/274(3)/280(3・4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p355(5)/351(1)/332(2)/354(3)/363(3・4)
選択問題9:解答 1
出生時より全身に過角化・水疱形成をきたしており、組織では顆粒変性を認める
表在性表皮融解性魚鱗癬の診断で、KRT2e遺伝子変異が原因→1
顆粒変性
表皮の顆粒層〜有棘層にかけて、大型のケラトヒアリン顆粒をもつ空胞化細胞が出現する状態
ケラチンの先天的異常をきたす疾患でみられ、魚鱗癬2つは診断基準でも参考症状に含まれている
原因遺伝子 | 疾患 |
ケラチン9 | Vörner型掌蹠角化症 |
ケラチン1/10 | 表皮融解性魚鱗癬 (水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症) |
ケラチン2e* | 表在性表皮融解性魚鱗癬 (Siemens型水疱性魚鱗癬) |
ケラチン1/10 ※体細胞モザイク |
疣贅状表皮母斑 |
*顆粒層で発現するため、顆粒変性も有棘層上層〜顆粒層に限局的
- 1. KRT2:表在性表皮融解性魚鱗癬の原因。顆粒層に分布するため、顆粒変性が表皮浅層に限局する
- 2. KRT5:単純型先天性表皮水疱症の原因。外力を受ける部位中心に水疱を形成する
- 3. KRT9:Vörner型掌蹠角化症の原因。顆粒変性(+)だが皮疹は掌蹠に限局する
- 4. KRT10:表皮融解性魚鱗癬の原因。1より臨床症状が強く、顆粒変性は有棘層中層〜顆粒層にかけてみられる。KRT10遺伝子変異の場合、掌蹠角化は乏しい
- 5. KRT16:先天性爪甲肥厚症の原因。掌蹠のみで過角化をきたす
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p273(1・4)/239(2)/277(3)/374(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p345(1・4)/327(2)/353(3)/355・781(5)
本問では表皮融解性魚鱗癬(KRT1/KRT10遺伝子変異が原因)も鑑別に挙がるが、掌蹠角化症が強く見られるのはKRT1遺伝子変異が原因となる。KRT10では掌蹠角化が乏しいため、掌蹠角化を伴う本例は、KRT2遺伝子変異が原因の表在性表皮融解性魚鱗癬と考えた
関連問題(顆粒変性)
- 2023 記述11 (顆粒変性の病理)
- 2021 選択13 / 2021 選択21 / 2017 選択17 / 2013 選択12 / 2011 選択12 (顆粒変性をきたす疾患)
- 2022 選択77 / 2018 選択16 / 2013 選択64 (顆粒変性を伴う掌蹠角化症)
選択問題10:解答 5
汎発性膿疱性乾癬の原因にIL-36RN遺伝子変異がある→5
汎発性膿疱性乾癬と関連する主な遺伝子は下記2つ
- IL-36RN:尋常性乾癬の先行しない病型
- CARD14:尋常性乾癬に続発する病型
※IL36RN欠損=DITRA(deficiency of interleukin-36 receptor antagonist)
DITRAの代表例は汎発性膿疱性乾癬だが、疱疹状膿痂疹(妊娠により発症する膿疱性乾癬の病型)や急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP, 薬剤により誘発される病型)にもDITRAの例がある
なお抗IL-36受容体抗体製剤であるスペソリマブ(スペビゴ®)が2022/9に製造販売承認を取得した(適用は「膿疱性乾癬における急性症状の改善」)
CARD14遺伝子は毛孔性紅色粃糠疹(Ⅴ型)とも関連する
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p287
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p386
- 参考:自己炎症性角化症としての膿胞性乾癬(汎発型) 膿疱形成のメカニズム 日皮会誌:129(6), 1311-1315, 2019
関連問題
選択問題11:解答 1, 2
乾癬内服療法の標的分子を問う問題
カルシニューリン阻害薬やレチノイドがある→1, 2
- 1. カルシニューリン阻害薬:シクロスポリン(ネオーラル®), T細胞抑制作用を持つ
- 2. レチノイン酸受容体/レチノイドX受容体※:エトレチナート(チガソン®), ビタミンAの誘導体
- 3. ビタミンD3受容体:外用薬。マキサカルシトール(オキサロール®)やカルシポトリオール(ドボネックス®)など
- 4. IL12/IL23p40:皮下注製剤ウステキヌマブ(ステラーラ®)
- 5. TNF-α:皮下注製剤アダリムマブ(ヒュミラ®)/セルトリズマブ ペゴル(シムジア®)や点滴製剤インフリキシマブ(レミケード®)
※レチノイドの一種、ベキサロテン(タルグレチン®)は皮膚T細胞リンパ腫に用いられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p102(2)/95(3)/101(4・5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p120(1・2)/123(3)/122(4・5)
関連問題
- 2013 選択78 (作用機序)
選択問題12:解答 1, 2, 5
乾癬全身療法の導入基準として用いられるthe rule of 10sの指標はBSA・PASI・DLQIの3つ→1, 2, 5
これら指標のスコア10点以上は重症に該当する
- 1. BSA(Body Surface Area 罹患体表面積):体表全体に対する皮疹の面積
- 2. PASI(Psoriasis Area and Severity Index):全身を4領域に分け、紅斑・浸潤・落屑・面積でスコア化
- 3. EASI(Eczema Area and Severity Index):アトピー性皮膚炎等の評価に用いられ、全身を4箇所にわけて、紅斑・浮腫・掻破痕・苔癬化・皮疹面積でスコア化
- 4. PDAI(Pemphigus Disease Area Index):天疱瘡の重症度評価に用いられ、全身を25箇所に分けて、びらん/水疱と紅斑でスコア化
- 5. DLQI(Dermatology Life Quality index):最近1週間の皮膚症状がQOLに及ぼす影響をスコア化
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p284(1・2・5)/252(4)
- 選択肢3の参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(13), 2691-2777, 2021のp2706
関連問題
選択問題13:解答 2, 4
生物学的製剤使用中も接種可能な不活化ワクチンは肺炎球菌およびインフルエンザ→2, 4
ワクチン(予防接種)の種類と分類
主なワクチン | 定期接種 | 任意接種 |
生ワクチン |
|
|
不活化ワクチン |
|
|
なお帯状疱疹ワクチンは水痘ワクチンと同じ生ワクチン(ビケン)と不活化ワクチン(シングリックス®)の2種類がある
- 1・3・5. MR(麻疹・風疹)・水痘:生ワクチン
- 2・4. 肺炎球菌・インフルエンザ:不活化ワクチン
関連問題
- 2020 選択27 (不活化ワクチン:A/B型肝炎ワクチン, インフルエンザワクチン)
- 2015 選択24 (ワクチン株による発疹をきたすワクチン)
- 2011 選択14 (TNFα阻害薬とインフルエンザワクチン)
選択問題14:解答 4
生物学的製剤のうちキメラ化製剤を問う問題
インフリキシマブ(レミケード®)が該当→4
抗体製剤 命名規則
モノクローナル抗体製剤は、抗体の由来となる動物種によって命名規則が決まっている
末尾 | 起源 | 例 |
〜omab | マウス抗体 | イブリツモマブ |
〜ximab | キメラ抗体 (定常領域はヒト, 可変領域はマウス) |
インフリキシマブ (レミケード®) |
セツキシマブ (アービタックス®) |
||
〜zumab | ヒト化抗体 (可変領域の一部のみマウス) |
イキセキズマブ (トルツ®) |
〜umab | 完全ヒト抗体 (マウス成分なし) |
アダリムマブ (ヒュミラ®) |
※全てに共通するmabはモノクローナル抗体(monoclonal antibody)の略
なお末尾の前につく部分は対象を意味する(例Lは免疫系→Nivo"l"umab=オプジーボ®など)
マウス成分はヒトにとって異物となり、下記の様な現象が生じやすい
- infusion reaction (注射時反応)
- 抗薬物抗体 (→継続投与で徐々に有効性が低下する二次無効の原因)
例えばキメラ製剤セツキシマブはα-Gal感作(マダニ刺咬症)でアナフィラキシーショックを起こしやすいことが知られている
- 1. アダリムマブ(ヒュミラ®):完全ヒト*, TNF-α。乾癬の他、壊疽性膿皮症や化膿性汗腺炎にも用いられる
- 2. ウステキヌマブ(ステラーラ®):完全ヒト, IL-12/23p40。乾癬および炎症性腸疾患に用いる
- 3. トシリズマブ(アクテムラ®):ヒト化, IL-6。関節リウマチに用いる
- 4. インフリキシマブ(レミケード®):キメラ型, TNF-α。乾癬や関節リウマチ、Crohn病に用いる
- 5. イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン®):マウス抗体, CD20+RI標識。難治性CD20陽性リンパ腫に用いる
*ヒュミラ(HUMIRA)のHUMはヒト(Human)に由来している(インタビューフォームより)と知っておくと間違いづらい
- 参考:モノクローナル抗体の命名法 Wikipedia
- 参考・図引用:Evolution and emergence of therapeutic monoclonal antibodies: what cardiologists need to know Circulation. 2013 Jun 4;127(22):2222-30.
関連問題
- 2018 選択17 (抗IL-17抗体製剤の比較)
- 2013 選択79 (抗体製剤の命名規則)
- 2011 選択14 (乾癬とTNFα阻害薬)
選択問題15:解答 5
インフリキシマブ(レミケード®)の投与量を問う問題
1回あたりの投与量は5mg/kg→体重80kgでは400mg(4バイアル)
投与スケジュールは初回(0週)、2週/6週/14週/22週…(以降8週間隔)のため、27週までに5回投与となる
よって4 × 5 = 20バイアル投与済み→5
乾癬 生物学的製剤 投与量・スケジュール
乾癬の生物学的製剤について、投与量とスケジュールは下記の通り(2023年時点 11種類)
薬剤ごとに異なるが、大まかに下記のような傾向がある
- インフリキシマブのみ体重換算の投与量(→肥満患者に適すると考えられる)
- IL-17製剤は初期ローディングの投与回数が多い(セクキヌマブが顕著)
- IL-23製剤はいずれも投与間隔が長め(グセルクマブ以外12W間隔)
関連問題(乾癬の生物学的製剤)
- 2022 選択72 / 2017 選択20 / 2013 選択20 / 2012 選択8 / 2010 選択45 (乾癬生物学的製剤の投与スケジュール, ターゲット)
- 2023 選択43 / 2019 選択29 (多発性硬化症とTNF-α阻害薬)
選択問題16:解答 3, 4
ヘルペス属ウイルスと関連するのは伝染性単核症および巨細胞封入体症→3, 4
ヒトヘルペスウイルス(HHV)と皮膚疾患
公式名称 | 略称 | 皮膚疾患 |
HHV1 | HSV-1 | 単純膨疹(とくに口唇) |
カポジ水痘様発疹症 | ||
HHV2 | HSV-2 | 単純膨疹(とくに性器) |
HHV3 | VZV | 水痘 |
帯状疱疹 | ||
HHV4 | EBV | 伝染性単核球症 |
慢性活動性EBウイルス感染症 (蚊刺過敏症, 種痘様水疱症) |
||
Gianotti-Crosti症候群 | ||
節外性NK/T細胞リンパ腫 | ||
口腔毛状白板症 | ||
HHV5 | CMV | 伝染性単核球症 |
薬剤性過敏症症候群(DIHS) ※HHV-6より遅れて再活性化 |
||
巨細胞封入体症 | ||
HHV6 | HHV-6 | 突発性発疹 |
DIHS | ||
HHV7 | HHV-7 | 突発性発疹 |
Gibertばら色粃糠疹 | ||
HHV8 | HHV-8 | カポジ肉腫 |
- 1. 伝染性軟属腫:ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスが原因
- 2. 青年性扁平疣贅:HPV*-3/10が原因。顔面や手背に好発し、しばしば自然消退する
- 3. 伝染性単核症:ヘルペスウイルスの一種、HHV-4(EBウイルス)やHHV-5(CMV)が原因
- 4. 巨細胞封入体症:先天性CMV感染症(TORCH症候群の一つ)の典型例はこのように呼ばれる。フクロウの目と呼ばれる感染細胞が特徴
- 5. メルケル細胞癌:ポリオーマウイルスの一つ、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が原因。CK20が核近傍で点状に陽性となることが特徴
*HPV = ヒトパピローマウイルス, CMV = サイトメガロウイルス
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p498(1)/496(2)/507(3)/43(4)/459(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p789/802(1)/807(2)/797(3)/799(4)/740(5)
- 選択肢4の参考:サイトメガロウイルス感染症とは 国立感染症研究所
関連問題
- 2018 選択22 / 2012 選択18 / 2012 選択19 (疾患と原因ヘルペスウイルス)
- 2020 選択28 / 2013 選択24 (疾患と原因HPVウイルス)
- 2015 選択20 / 2010 選択66 (扁平疣贅の原因ウイルス:HPV-3)
選択問題17:解答 3, 4
ウイルス抗原に対する反応を利用するのはC7-HRP法および蛍光抗体法→3, 4
- 1. PCR*:病変部皮膚(や唾液など)から抽出したDNAを増幅して検出する検査法。培養と比較し迅速なため、結核の検査等で用いる
- 2. in situ hybridization:特定遺伝子に反応するプローブを用い、組織での発現(in situ)を調べる検査。EBV感染症の診断に用いるEBERなど
- 3. C7-HRP(pp65):末梢血多核白血球をpp65抗原に対するモノクローナル抗体で染色し陽性細胞数をカウントする方法。pp65抗原はCMV感染早期から出現し、症状発症より早く陽性になる
- 4. 蛍光抗体:塗沫標本でウイルス特異的抗体を用いてウイルス抗原を証明する方法→抗原抗体反応を利用している
- 5. LAMP:PCRと同様に抽出DNAを用い、目的遺伝子を増幅させ検出する方法。PCRより感度は劣るが必要時間が短い
*PCR = polymerase chain reaction, CMV=サイトメガロウイルス, EBV=EBウイルス
PCR法とLAMP法は類似しているが、増幅反応を行う温度に違いがある
- PCR法:温度を変化させ(通常95℃→55℃→72℃)反応を行う
- LAMP法:等温(60〜65℃)で反応を行う
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p88(1)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p112(1・2)
- 選択肢3の参考:皮膚科セミナリウム ヘルペスウイルス感染症 日皮会誌:117(5), 767―776, 2007のp773
- その他選択肢の参考:新・皮膚科セミナリウム ウイルス感染症における診断のための検査法と読み方 日皮会誌:124(8), 1545-1553, 2014
選択問題18:解答 3
癜風の原因菌として最多なのはM. globosa→3
以前は癜風・脂漏性皮膚炎でみられる真菌はまとめてM. furfurと呼ばれていたが、再分類により複数菌種に分けられ、現在は下記のようになった
- 癜風:M. globosa
- 脂漏性皮膚炎:M. restricta
なおアトピー性皮膚炎では上記2菌種いずれも検出される
- 1・4・5. M. dermatis / japonica / obtusa※:ヒト常在真菌のひとつ
- 2. M.furfur:かつて脂漏性皮膚炎や癜風でみられる真菌はこう呼ばれていたが、再分類により現在はアトピー性皮膚炎の一部で検出されるのみ
- 3. M. globosa:癜風で検出される真菌。アトピー性皮膚炎病変部でも検出される
※設問中ではM. obtuseとなっているがM. obtusaのミススペルと思われる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p540(3)/124(2)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p910(3)
- その他選択肢の参考:新・皮膚科セミナリウム 皮膚マイクロバイオームとしてのマラセチア 日皮会誌:131(6), 1503-1509, 2021
関連:2016 選択22 (アトピー性皮膚炎で多い真菌:M. globosa, M. restricta)
選択問題19:解答 3
高齢女性で下眼瞼の難治性潰瘍があり、培地では黒色のコロニー形成がみられ、スライドカルチャーでは花弁状の胞子を伴う菌糸がみられる
上記よりスポロトリコーシスの診断。Wood灯は利用しない→4
スポロトリコーシス
土壌に存在するSporothrix globosa (旧称S. schenckii)が原因の真菌症
S. globosaは菌糸および酵母の両形態をとる二相性真菌の一つ
臨床像としては、手背などの傷から侵入し進展するとリンパ行性に近位側へ飛び石状病変を生じるリンパ管型病変が特徴
その他眼瞼などで単発の病変を生じる固定型(限局型)もある
- 組織:好酸性の星状体(asteroid body)が特徴
- 培養:黒褐色の絨毛状コロニー
- スライド培養:菌糸に花弁状の胞子を伴う像
- 治療:イトラコナゾール内服および温熱療法、ヨウ化カリウム
- 1. KOH直接検鏡:スポロトリコーシスでは一般に検出されない。一方クロモミコーシス(黒色分芽菌症)ではKOHにてsclerotic cellが検出される場合がある(2011 選択57)
- 2. 通常の培養よりやや低い室温(25℃前後)で菌糸型が発育する。35〜37℃では酵母型が発育する※
- 3. Wood灯:紅色陰癬ではピンク色の蛍光がみられる。スポロトリコーシスに特異的な所見はない
- 4. 治療はヨウ化カリウムや温熱療法、イトラコナゾールなどの抗真菌薬内服
- 5. 限局型から広がると、リンパ管に沿って上行性に病変を形成するリンパ管型となる
※このように温度により形態が異なるため二相性真菌と呼ばれる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p541(2・4・5)/529(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p912(2・4・5)/853(3)
- 選択肢1の参考:スポロトリコーシス Med. Mycol. J 53(3), 163-167, 2012
- 参考・図引用:マルホ皮膚科セミナー 2020/7/27 スポロトリコーシスについて -疫学・診断・治療-
眼瞼発症の"この症例に関する記述として"リンパ行性に進行するか、と言われるとやや謎(本例は固定型のように思われる)だが、選択肢3が明らかに誤りなので正答を譲った。設問が「本疾患について」ならスッキリするが…
関連問題
- 2021 選択37 / 2018 選択25 / 2013 選択28 (手背スポロトリコーシスの臨床問題)
- 2019 選択38 (二相性真菌による疾患:Sporotrichosis)
- 2010 選択18 (菌の生息場所, ヨウ化カリウム等)
選択問題20:解答 3
クリプトコックス症に関する問題
"墨汁染色で"黒染する→3
クリプトコックス(クリプトコッカス)症
土壌やハトの糞中に存在する真菌Cryptococcus neoformansによる感染症
同真菌は厚い莢膜を有することが特徴
皮膚病変は下記2型がある
- 原発性:外傷などから菌が侵入
- 続発性:肺病変から血行性に播種して病変形成
続発性は日和見感染として、ステロイド長期使用者やAIDS患者にみられることがある
- 検査:莢膜が墨汁染色/ムチカルミン染色でそれぞれ黒/赤色に染まり観察される
- 採血:莢膜に阻まれてβ-Dグルカン*が陽性とならない。代わりに抗原/抗体検査を用いる
*真菌細胞壁を構成する多糖体
- 1. 続発性はHIV感染者など免疫不全患者でみられることがある
- 2. 血清中のC. neoformans抗原ないし抗体測定が診断に有用
- 3. 莢膜を有しており、"墨汁染色で"黒色に染まる。ムチカルミン染色では赤色に染色される
- 4. 治療はアムホテリシンBやイミダゾール系抗真菌薬が用いられる
- 5. クリプトコックスは真菌性髄膜炎の原因となる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p544(1・2・3)/40(3)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p918(1・2・3・4)
関連問題
- 2018 選択27 (クリプトコッカス症:ムチカルミン染色写真 ※本例も免疫抑制患者に発症している)
- 2012 選択24 (莢膜の写真)
- 2011 選択85 (β-Dグルカン高値となる疾患:アスペルギルス・カンジダ・ニューモシスチス)
選択問題21:解答 3
抗MRSA薬の種類を問う問題
メロペネムは広域抗菌薬だが、抗MRSA薬ではない→3
- 1. バンコマイシン VCM:グリコペプチド系。抗MRSA薬のなかでも第一選択として用いられる。投与時のred neck症候群に注意が必要
- 2. リネゾリド/ザイボックス® LZD:オキサゾリジノン系。TDM*測定が不要(その他選択肢は全て測定が必要)。骨髄抑制の副作用に注意が必要
- 3. メロペネム/メロペン® MEPM:広域抗菌薬だが抗MRSA薬ではない
- 4. テイコプラニン/タゴシッド® TEIC:グリコペプチド系。聴力障害の副作用に注意が必要
- 5. 硫酸アルベカシン/ハベカシン® ABK:アミノグリコシド系。日本で最初に上市された抗MRSA薬
*TDM = 治療薬物モニタリング
選択肢の抗MRSA薬はすべて点滴製剤
内服薬としてはST合剤やMINO(ミノサイクリン)が用いられる(保険適用なし)
選択問題22:解答 5
乳児で下腹部〜鼡径部にかけてびらんが多発している
出生時では正常であることも踏まえて、黄色ブドウ球菌の表皮剥離毒素(ET)によるブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)や伝染性膿痂疹を考える
ETはデスモグレイン1を切断し、落葉状天疱瘡に類似した表皮浅層(角層下)の水疱形成をきたす→5
両疾患とも病態は同様だが、下記の違いがある
- SSSS:症状が強く発熱など全身症状を伴う
- 伝染性膿痂疹:局所症状中心
- 1. 黄色ブドウ球菌が原因。A群β溶連菌は痂皮性膿痂疹の原因
- 2. 原因となるのはET。TSST-1*も黄色ブ菌が産生し、トキシックショック症候群の原因となる
- 3. Ⅶ型コラーゲンの先天異常は栄養障害型先天性表皮水疱症の原因
- 4. 抗Dsg3抗体は尋常性天疱瘡で認められ、母親が罹患していると胎盤通過性のあるIgG抗体により新生児で一過性の症状をきたすことがある
- 5. デスモグレイン1の分布から、角層下〜表皮上層で水疱をきたす(落葉状天疱瘡に類似)
*TSST-1:toxic shock syndrome toxin-1というそのままの名前の毒素
選択肢3・4は「出生時は健常」という記載から否定的と考えられる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p514・522(1・2・5)/524(2)/243(3)/254(4)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p833・840(1・2・5)/842(2)/330(3)
- 参考:新・皮膚科セミナリウム 毒素関連皮膚細菌感染症 日皮会誌:130(11), 2367-2372, 2020
※図4 SSSSの写真は本問と同一
関連問題
選択問題23:解答 1, 2
ペットから感染をきたすのはPasteurella multocidaおよびBartonella henselae→1, 2
- 1. Pasteurella multocida:犬や猫の口腔内常在菌で、引っ掻き傷等から侵入し受傷後24時間以内に蜂窩織炎・丹毒様症状をきたす。猫によるものが多い
- 2. Bartonella henselae:猫ひっかき病の原因菌。感染から数日後、丘疹から始まり水疱・膿疱をきたす。2週間後頃になると有痛性リンパ節腫脹も出現する
- 3. Prototheca wickerhamii:藻類の一種で、皮膚プロトテコーシスの原因。外傷や水との接触部位から感染し、四肢で疣贅状の局面をきたす
- 4. Coccidioides immitis:深在性真菌症の原因の一つ(輸入真菌症)で、限られた地域の土壌に存在する。肺病変(吸入)→血行性播種による皮膚病変をきたす
- 5. Fonsecaea pedrosoi※:黒色分芽菌症の原因となり、自然界に存在する。組織でのsclerotic cell形成が特徴。
※F. pedrosoiは再分類により、現在はF. monophoraと呼ばれる
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p530(2)/545(3・4)/542(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p859(1・2)/884(3)/886(4)/878(5)
- 選択肢4の参考:国立感染症研究所 コクシジオイデス症とは
選択問題24:解答 2, 3
非結核性抗酸菌による感染症はBruli潰瘍およびプール肉芽腫→2, 3
抗酸菌感染症・非結核性抗酸菌
抗酸菌は酸を使った染色法で脱色されない性質を持つ菌のことを指し、Mycobacterium属に分類される
代表菌種と疾患は下記
疾患 | 原因菌種 |
結核 | M. tuberculosis (稀にM. bovis) |
ハンセン病 | M. leprae = らい菌 |
プール肉芽腫 | M. marinum |
ブルーリ潰瘍 | M. ulcerans |
結核菌・らい菌以外の菌種はまとめて非結核性抗酸菌(NTM=non-tuberculous mycobacteria)と呼ばれる
皮膚病変を引き起こすNTMの代表は上記2種だが、肺病変を引き起こすM. aviumやM. intracellulareなどもある
- 1. マズラ菌症(菌腫 mycetoma):深在性真菌症の一型(放線菌が原因の場合もある)。皮下硬結・膿瘍を形成し、瘻孔から顆粒が排出されるような慢性肉芽種性病変をきたす
- 2. ブルーリ潰瘍:M. ulcerans が原因。急速拡大する潰瘍をきたすが菌毒素のため疼痛が軽度で、組織学的にも炎症細胞浸潤が少ない
- 3. プール肉芽腫:M. marinumが原因。皮膚NTM症の中で60%以上を占め最多。菌が水中に存在するため、熱帯魚の水槽などから感染する
- 4. 皮膚腺病:真性皮膚結核の一つで肺やリンパ節の結核病変が経皮的に波及して生じ、頚部に好発する
- 5. フルニエ壊疽:グラム陰性菌や嫌気性菌が原因。男性の陰嚢~会陰部における壊死性筋膜炎のこと
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p543(1)/553(2)/551(3)/547(4)/526(5)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p918(1)/872(2)/871(3)/866(4)/848(5)
- 選択肢2の参考:新・皮膚科セミナリウム ブルーリ潰瘍 日皮会誌:124(1), 23-26, 2014
関連問題
- 2012 選択27 (M. marinum感染症の特徴)
- 2011 選択32(抗酸菌による疾患:尋常性狼瘡, プール肉芽腫, Hansen病)
選択問題25:解答 5
背部で線状の皮疹がみられ、クリーピング・ディジーズを疑う
寄生虫を有する魚などの生食が原因となり、食歴チェックが重要→5
クリーピング・ディジーズ
ヒトを固有宿主としない寄生虫が、皮内・皮下を遊走するため生じる線状紅斑
寄生虫は熱で死滅するため、生食が原因となり摂食数週〜数カ月後に皮疹をきたす
寄生虫 | 生食 |
顎口虫 | 淡水魚・カエル (ドジョウ) |
マンソン裂頭条虫 | カエル/ヘビ・家禽類(ニワトリ/豚) |
旋尾線虫 | イカ・スッポン |
診断:皮疹先端部に寄生虫が存在するため、生検で直接証明する
治療ではイベルメクチン等が用いられる
- 1・3・4. マダニ刺症によるライム病で生じる慢性遊走性紅斑は刺し口に黒褐色の痂皮がみられ、発熱を伴う。治療にはテトラサイクリン系抗生剤(ドキシサイクリン等)が用いられる
- 2. 壊死性遊走性紅斑ではグルカゴノーマや低栄養状態が基盤にある
- 5. クリーピング・ディジーズでは食歴が診断上重要
- 参考書籍:あたらしい皮膚科学 第3版 p572(5)/567(1・3・4)/146(2)
- 参考書籍:皮膚科学 第11版 p944(5)/934(1・3・4)/194(2)
関連:2011 選択33 (アマガエル生食後のマンソン孤虫症 クリーピング・ディジーズ)
-
平成26(2014)年度 皮膚科専門医試験 過去問 解答解説 選択問題26〜50
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